縁結びの神様 —大怪獣ミコドン襲来!—   BY まんまる

「ミコちゃん・・・」
「ハ、ハイ、何ですか、アキラさん?」
慌てて嬉しそうに返事したミコ、頬が薔薇色に染まる。
早朝の境内、寒い季節には辛い掃除もミコには辛くはなかった。
毎朝、ジョギングにやってくる青年と会えるから。
だが、青年は悲しそうに鳥居の向こうに見えるビルを指差した。
「今晩、俺・・・お見合いするんだ。あのレストランで。」
せわしく竹箒を振っていたミコの手が止まった。
「そ、そうですか。相手の方、良い人だといいですね。」
明らかな作り笑いに、平静さを欠いた口調。
「いい人だそうだ、親父が完全調査済みの名家の一人娘さ。」
彼の父親は経済界の裏の顔役とも噂される人物だった。
「で、では、上手くいきますように当神社で祈祷を・・・」
「必要ないさ、上手くいくことは決定済みの政略結婚なんだ。」
自嘲気味の笑顔でアキラはポツリと言った。
ミコは返す言葉も思いつかなかった。
「さようなら。もう、ここへは来ない。今まで、ありがとう。」
肩を落として去って行くアキラ。
ミコは何も言えずなかった。
ただ、竹箒を握り締めた指先を涙の雫で濡らしていた。
**********
「他人の縁結びの祈祷はうまくいくのになぁ・・・・・」
一日泣き続けて、もう涙さえ出ない。出るのは溜息だけだった。
ピカッ!「えっ?」
その時、神鏡がいきなり太陽のような光輝を発した!
「なにごと・・・」
『我が名はヤマトエニシヒメ。当神社の祭神である。』
声なき声は厳かにそう告げた。
人よりも霊感の強いミコには分かった、話しかけてきたのは人間ではない。神霊、それも極めて高い位の・・・
「ははっ!」
ミコはその場に平伏した。
『ミコ、おぬしの誠心誠意の祈祷により、数多くの娘たちが良縁にめぐり合うことができた。まことにご苦労であった。』
「ははっ、もったいなきお言葉、ありがたく・・・」
『褒美としておぬしにも良縁を授けようと思い、天下った!』
「ありがとうございます!しかし、残念ながら私には・・・」
脳裏に浮かぶ面影を打ち消して、ミコは縁結びを断ろうとした。
『案ずるに及ばぬ。我ら天の神には全てお見通しじゃ。』
「駄目です!アキラさんはいずれは経済界を背負う大人物。
貧乏アルバイト巫女の私なんかじゃ・・・釣り合いません。」
再び、ミコの瞳に諦めと失意の涙が溢れた。
『よかろう!おぬしが望むなら、我が神通力を貸してやろう。』
「ヤマトエニシヒメ様の・・・神通力を?」
『おぬしには日の本の国をお造りになった大いなる神の一人の血が流れておる。その血に我が神通力を加えれば、おぬしをアキラ殿に匹敵する大人物にするなど簡単至極!』
「私に・・・神の血が?」
『では最後にもう一度だけ聞く。かの男との縁結びを願うか?』
「・・・・・ね・・・願います!」
パァッ・・・鏡の光がひときわ増した!
神社の一角から金色の光の噴水が噴き上がった。
地面がグラグラと揺れ、本殿の柱がへし折れて斜めに傾いた。
**********
「・・・・・ん、何があったの?」
ミコは天井を見上げたが、見えたのは暗くなりかけた空だった。
だが、足元を見下ろした時に異常に気がついた。
「なにかしら、これは?」
足元に半ば壊れた神社の模型が転がっていた。
精巧な模型らしく、細かな飾り細工まで見事に再現されている。
そればかりか見まわせば神社の周囲の森や小川、遠景の摩天楼に至るまで完璧に再現されている。
「まるで広い箱庭の中にいるみたい。ここは一体どこなの?」
『箱庭ではないぞ、これ皆、全て本物じゃ。』
驚くべきことに、答えはミコ自身の口から発せられた。
「い、今、私の口が勝手に?まさか?私、悪霊に憑依・・・」
『我は悪霊にあらず、縁結びの神である!』
またもやミコの唇が勝手に動く!
『神通力を貸す為に、おぬしの体に神懸っておるのじゃ。』
「では、貴方様はヤマトエニシヒメ様・・・」
『我の名は『エニシちゃん』と呼んでくれればよい。
実はな、神様ぶった堅苦しい喋り方は、どーも苦手でのう。』
「そうだったんですか・・・でもこの模型みたいなのが本物?」
『言葉どおりの意味じゃよ、それは本物の神社なのじゃ。』
「???なんで、神社を縮小しちゃったんですか?」
『ちがうちがう!神社が小さくなったのではなくて・・・』
「・・・・・まさか、私の体の方が・・・・・」
『ピンポォーン!おぬしの体を百倍に大きくしたのじゃ!』
言葉の意味をミコが理解するまで十数秒の間があった。
「・・・・・???な・ん・で・すってぇぇぇぇ!?!?」
『おぬしの先祖はダイダラボッチ様と言ってな!
日本列島を泥よりお作りになられた、えらーい巨神様なのじゃ。
アキラ殿がいかほどの大人物かは知らぬが、これで互角!』
「『大人物』と『巨大人物』とじゃ意味が違ぁう!はぅっ?」
ミコの右手がいきなり勝手に動いて胸に突っ込まれ、ブラジャーの上から乳房をいじり出したのだ。
「は・・・あ・・・何、私の手が勝手に・・・?」
『フム、発育がイマイチじゃな。』
「ほ、ほっといてください!ああ・・・」
『じゃが、感度良好!これなら楽しい仕事になりそうじゃ。』
「・・・・・?どーゆー意味ですか?」
『細かい事は気にするな!さあ、出陣じゃ!』
「わ?わ!わわわ、私の体が勝手に動く?」
『ミコ殿からアキラ殿への告白、我が手伝ってやるぞよ!』
ミコ、いやミコを操るエニシは落ちていた竹箒を拾い上げた。
すると竹箒はズズズン!と、ミコと同じ位に巨大化した!
ズシン!巨大な草履が白い砂利を敷き詰めた参道に、大きな一歩を記した。
ズシン!ズシン!山全体が鳴動し、鳥や兎が驚いて逃げ出した。
ガラガラガラ!
緋袴の裾が大鳥居に絡みつき、倒壊させてしまった!
「あああ、この鳥居、重要文化財だったのに!」
『まあ、気にしない!気にしない♪』
ミコは真っ青になったが、エニシの方はどこ吹く風であった。
『いざ、赴かん!見合い会場の『れすとらん』とやらに!』
「ちょ、ちょ、ちょっと!こんな姿で街へ行ったら大騒ぎに!」
* *********
「おい、なんだ?ありゃ!」
「じ、神社の巫女さんみたいに見えるけど・・・」
「あんなでっかい人間がいるわけないだろ!!」
ズシン、ズシン、ズシン!
都市を震撼させてのし歩く巨大巫女さんの出現で、街は大騒ぎになった。
『ふーむ、近頃の都は昔と随分変わったのぉ?家と言えば昔は木でこさえておったものじゃが、今は白い岩でできた四角い箱の中に住んでおるのか。』
ミコの手の下で、堅牢さを誇る20階建耐震構造高層マンションはグラグラと揺れ、崩れはじめた。
「ねえ、お願い!エニシちゃん、今日は遅いから帰りましょ!」
一瞬、巨大巫女さんの表情が泣き顔になり、懇願した。
だが表情はすぐに、やたらと気楽な笑顔に戻る。
『慌てずとも、物見遊山していってもよいではないか。』
エニシは縁結びのついでに人間界を見物していくつもりらしい。
ズズゥン!ズズゥン!重々しい足音が響くたびにアスファルトで固めた道路が2〜3メートルは陥没していく。
ミコが歩いた足跡で道路は寸断され、あちこちに地割れが口を開け、破裂した水道管から水を吹き上げている。
「そこの巨大巫女さん!止まりなさい!!」
ミコに向かって警官がパトカーから拡声器で怒鳴った。
『この都の警護の者か。我に何の用じゃ?』
警官に怒鳴りつけられて、エニシはムッとしようだ。
「ただちに退去しなさい!さもないと発砲・・・」
『あーっ!うるさいわい!』
バゴォン!パトカーはミコの足払い一発で飛ばされ、横転した!
「あーっ?おまわりさん大丈夫ですか!」
『この忙しい時に邪魔するからじゃ!さっさと行くぞ!』
「さっきまで都を見物して行くって言ってたのクセに。」
『さっきはさっき、今は今じゃ! 』
ズシン!ドカーン!ズシン!ドカーン!
踏み潰した自動車を爆発炎上させながら、ミコは突き進んだ。
横転したパトカー内では、負傷した警官が無線機を掴んでいた。
「ううっ、巨大巫女さんは・・タワー・レストランを、襲う・・・模様・・・至急、自衛隊に出動・・・」

ビルの最上階に設置された電光掲示板にニュース速報が流れた。
『本日未明、都内に出現した巨大巫女型生物は『ミコドン』と命名されました。進行方向の住民に避難・・・』
そこまで表示して電源が切れたらしい。ビル全体が停電した。
『ほほう、ミコ殿は『ミコドン』と呼ばれておるのか?』
エニシが感心したように言った。だが当の本人は・・・
「私が怪獣扱いされている・・・」泣きそうであった。
『なんのなんの、ミコドンとは可愛らしい愛称ではないか!それにしても、道がこんなに入り組んでいては面倒じゃのう・・・』
エニシはうんざりとした様に街を見下ろした。
目的地の展望レストランは目の前なのだが、いくつものビルが邪魔で真っ直ぐには行けないのだ。
『・・・誰も見ておらんな?少々はしたないが・・・』
ミコの右足が高々と上がった!手前のビルに慎重に狙いをつける。
『そりゃ!!』
ドシン!突き出した右足がビルを蹴飛ばした!ビルはゆっくりと傾き・・・ドシン!向かいのビルを直撃!そのビルも倒れ・・・
ドシン!ドシン!ドミノ倒しの様に直線上のビルが倒れて行く!
「ああ〜!なんてコトを!」
『よぉーし、これで一本道じゃあ!』
サッサッサッ!瓦礫を竹箒で片付けつつ、ミコは直進した。
『ん?なんじゃ、あやつらは?』
展望レストランのあるビルの前に数十両の戦車が集結していた。
当然、砲身は全てミコに向けられている。
「自衛隊だわ!私を退治にきたんだわ!」
真っ青になったミコを司令官らしき軍人が戦車の上から睨んだ。
「ゴジラと戦う前に、巨大な巫女さんと戦うとはな。
目標、巨大巫女型怪獣・ミコドン!撃てェー!」
ズドン!ズドン!ズドン!ズドン!ズドン!ズドン!ズドン!
集中砲火が浴びせられた!ミコの全身が炎と煙で覆い隠される。
「撃ち方やめ!ミコドンの生死を確認する。」
「無意味ですよ。ゴジラだってこれだけ直撃くらえば・・・?」
煙が晴れた後に、ミコはキョトンとした顔で突っ立っていた。
襟や袖に多少の穴や焼け焦げはあるが本人にはかすり傷一つない。
『なるほどっ!これは『花火』とかいう奴じゃな!』
「あ、あれぇ?砲撃されたのに私、全然怪我してないわ?」
『今のおぬしはダイダラボッチ様の力が復活しておるからのう。
日本列島を壊すくらいの力でもなければ傷一つつけられん。
それにしてもこやつら、花火は人に向けてはならぬと教わらなかったのか?』
エニシは攻撃されたとさえ、思っていないようだ。
「隊長、ミコドンが向かってきます!」
「砲撃再開だ!これ以上近づけるな!」
ズドン!ズドン!ズドン!再び夜の闇が爆炎に照らし出される。
だが、ミコは気にせずに進み、戦車部隊の前に来た。
そして手にした竹箒を構えた!
『我は仕事で忙しい。おじゃま虫どもよ、静かにしておれ!』
バサッ!バサッ!竹箒が路面を往復した。
「ウワァッ!」「ギャーーーッ」
ドォン!ドカン!バァン!
巨大な竹箒が重戦車を枯葉のように掃き飛ばした!
路面に落下した戦車は原型を残さずにひしゃげ、砲塔が竹箒に絡まった戦車は空中でバラバラに分解した。
宙を飛んでビルの真ん中に突き刺さった奴もいる。
『さてと、掃除は済んだ。』
「もう、いや・・・・・(涙)」
ゴウゴウと燃え盛る炎と煙を背景に、ミコは展望レストランの前に立った。
回転する円盤状の最上階はミコの顔より少し高い位置にあった。
『よっと!』「きゃあ!そんな乱暴しちゃ中の人が!」
ミコの両手が円盤状の最上階を掴む。
メリメリメリ!
エニシは力ずくで引き剥がしたレストランの中を覗いた。
『さてと!アキラ殿は・・・?誰もおらんではないか!』
「よかった・・・避難したんだわ。」
安堵するミコ。だがエニシは悔しそうだった。
『ええい、我が手より逃げおおせると思うか!』
「悪役のセリフだわ・・・」
『地の果てまでも追い詰めてミコ殿と結ばれてもらうぞ!』
「もー、いいですから!あれ?この音・・・・・」
キィーーーーン!
空から空気を裂く轟音がいくつも聞こえてくる。
そして炎上する帝都の紅に染まった空に十数機の銀色の機影!
「目標・ミコドンを確認!全機、直ちに攻撃!」
ガガガガガ!機銃掃射がミコの全身を叩く!
「やったか!」「いや、まだだ?意外としぶといぜ!」
銃弾の豪雨にさらされながらも、ミコは平然としていた。
ブォン!バッコーーーン!
すれ違いざまに巨大な平手打ちを受け、1機が叩き落された。
ブゥン!ドカーン!
振りまわされた竹箒がさらに2機を撃墜した。
「接近しすぎるな!相手はモンスターなんだぞ!」
「距離をとれ!安全な距離からミサイルを撃ちこむ!」
シュバッ!シュバッ!ドコォーン!
銀の矢と化したミサイルが白い衣をオレンジ色の炎に包む。
だが・・・炎の中からミコの巨体はやはり無傷で現れた。
着ていた白衣も緋袴もボロボロになってはいたが。
「クッ・・・ミサイルでも効かんのか?」
大怪獣ミコドンはかなり不機嫌になったらしい。
戦闘機編隊をギロッと睨み、手近にあった自動車を拾い上げた。
「何をする気だ?」
ミコはポン!と、自動車を真上に放り上げた。
そして、竹箒を握り直してバットのように構え、フラミンゴのようにヒョイと片足を上げたそのフォームは!
「まさか?あれは!・・・・・一本足打法!」
そう!『背番号1のスゴイ奴』のバッティング・フォーム!
カコォーーーン!落下してきた自動車を竹箒が打ち上げる!
「うわぁぁぁ!避けきれん・・・」
ヒュルルル・・・ドカン!
『ふっ・・・天界のホームラン王の猛打をお見せしよう!』
不敵な笑みのエニシ!天界にも野球中継はあったのであろうか?
楽しそうにノックを続けるエニシの手で全機撃墜されるまで、大した時間はかからなかった。
『さてと、お邪魔虫を片付けたところで・・・』
「あああ・・・私これで、本物の怪獣だわ。グスン・・・」
『アキラ殿とやらを捜さねば仕事にならぬのう・・・』
「もう、勘弁してぇぇぇ・・・」
『案ずるなミコ殿!このエニシ、どのような卑怯な手を使ってでも縁結びを成就させてみせるわい!ワハハハハハ!』
豪快かつ不吉な笑い声が燃える帝都を震わせた。
『では、神通力『運命の赤い糸』!!』
ミコの小指から赤く光る一筋の糸が踊るように流れ出した。
**********
地下鉄の構内を揺るがしていた地響きと爆発音が止んだ。
突然の『大怪獣襲来!』人々は地下鉄の駅に避難していた。
その中にアキラの姿もあった。
「あれは・・・本当にミコちゃんなのか?
何故あんなに大きく?それに何のためにここへ来たんだろう?」
頭を抱えて考え込んだが、分かるはずもない。
「ん?なんだ、この・・・赤い糸みたいなものは?」
アキラの左手の小指に赤い糸のようなものが絡みついていた。
『おおっ、ここの地面の下にアキラ殿がいるのじゃな!』
嬉しそうな大声で地下全体がビリビリと振動した。
「な、なんだ!あの怪獣か?」
避難していた人々が騒ぎ出す。
「アキラさん!逃げて!」
「その声は・・・やっぱりミコちゃんなのか?」
『フハハハッ、見つけたわ。逃がしはせぬぞ!アキラ殿!』
楽しそうなエニシの声が天井を振動させる。
ビキッ!天井のコンクリートに亀裂が入った!
ビキビキビキ!亀裂が広がり天井が崩れ始めた!
「ミコちゃん!君なのか?どうしてこんな・・・」
パニックに陥る群衆の中でアキラは天井に向かって怒鳴った。
「違うのよ、アキラさん。私じゃなくて!」
『このエニシ様からは逃げられはせんのじゃあ!』
メリメリメリ!落下寸前だった天井は一転して引き上げられた。
引っぺがされて大穴の開いた天井から覗き込む巨大な泣き顔。
「グスン・・・アキラさん、大丈夫?」
**********
地下に避難していた人々をエニシが追っ払い、巨大なミコと小さなアキラだけがその場に残った。
「つまり、エニシとか言う神様に体を乗っ取られているのか。」
アキラはミコの手の平の上に座りこんで、話を聞いていた。
『乗っ取るとは罰当たりな言い方じゃな。』
泣き顔のミコの表情に高飛車なエニシの表情が入れ替わる。
『我はそなたたちが結ばれるよう努力しているだけじゃ。』
「えっ?僕たち二人を?」
アキラは思わず驚き、ミコを見上げた。ミコは顔をそむけた。
「ア、アキラさん、お見合いの方どうだった?」
「相手の方が僕を見捨てて、さっさと逃げたみたいだね。」
「ごめんなさい!私のせいなのね。」
「気にしなくていいよ。破談になってせいせいしたしね。」
アキラはニッと笑った。ミコは一瞬嬉しそうな笑顔を見せかけて、
慌てて神妙な顔を取り繕った。
『ほれ、ミコ殿!今じゃ、今こそ告白の時じゃぞ!』
「でも・・・私は・・・」
『えーーーい!面倒じゃ!ホイ!』
ミコの手が襟首をつかみ、大きく胸元を開けた。
ちぎれかけていたブラジャーがショックで外れて落ちる!
「キャッ!!」
「ミ、ミコ・・・ちゃ・・・」
小振りな胸がアキラの視野一杯に広がる。小振りとは言ってもちょっとした家一軒分くらいはある巨大な柔肌のドームである!
「わわっ!」
アキラは胸の中に放り込まれた!ゼリーのように柔らかく震える乳房から滑り落ちそうになり、必死にしがみつく。
「ア、アキラさん、そこは・・・あぁ・・・」
ミコはついつい、悩ましげな声を出してしまった。
アキラはちょうど乳首にしがみついていたのだ。
「ミ、ミコちゃん!動かないで!」
はだけた衣の下からアキラの声が聞こえてくる。
「で、でもそんなとこを触られたら・・・ん・・・」
『どうじゃな、聞こえるじゃろう?ミコ殿の胸の高鳴りが!
伝わるじゃろう、アキラ殿への熱い思いが!』
エニシの言葉に合わせるように鼓動が乳房を激しく揺らし、肌が熱を帯びてくるのがアキラにはハッキリと分かった。
乳首がアキラの腕の中で堅くなり、倍以上に膨れ上がった。
「ええ、まあ、その、スゴく、伝わってきます!(動揺)」
「アキラさん・・・・・恥ずかしい。(赤面)」
『よしよし、では次はアキラ殿の心を伝えて貰おうかのぉ。』
シュルン・・・
「えっ?エニシちゃん!何すんのよ!」
ミコの手が緋袴の帯を解いてしまったのだ!
パサッ。ずり落ちた袴は広い道路さえ覆い隠すほどの大きさ!
『もちろん、アキラ殿の思いを伝えていただくのじゃ。』
ビリビリビリ!
ブツブツ言いながらエニシはパンティを破り捨ててしまった!
「キャーーー!アキラさんの前で何するのヨォ!」
「ウワッァァァ!」
航空機騒音を遥かに越える絶叫に、アキラは思わず乳首から手を離してしまった!襟から落下した先は高さ100m以上の路面!
「ウワァァァ・・・・・」
「アキラさん!」
だが、死のダイビングの一歩手前で大きな手が彼を受け止めた。
「アキラさん!大丈夫?」
『あぶなかったのう。気をつけねばいかんぞ!』
落ちついたエニシの声だが、転落の原因を作ったのも彼女だ。
ズシィン!ミコは腰を下ろした。
そしてアキラを乗せた手を・・・黒い恥毛の草原へと下ろした。
「ああ、そんなところへアキラさんを!」
『アキラ殿、おぬしはミコ殿をどう思っておる?』
ミコの抗議を力ずくでねじ伏せてエニシは尋ねた。
「ど、どうって・・・その・・・」
『言葉で答えるには及ばぬ。行動で示して欲しいのじゃ。』
慈愛に満ちた優しい言葉であった。それが彼を決心させた。
「アキラさん!え?エエッ!」
アキラの行動はミコを驚かせた。
彼は何も言わずにいきなり上着を脱ぎ捨てたのだ。
上着だけではない、シャツもズボンもパンツさえも!
「ミコちゃん・・・これが僕の気持ちだよ!」
アキラは背丈より高く生い茂る黒い藪に分け入った!
「アキラさん、そこは・・・やめて!アッ!イヤッ!イ・・・」
ミコの体は動かなくなった。エニシが金縛りをかけたのだろう。
「これがミコちゃんのクリト・・・でかい・・・」
黒いねじくれた藪の途切れたところにそれはあった。
スイカ並みの大きさのツルリとしたものが顔をのぞかせている。
アキラは恐る恐るそれに触れた。
「アッ・・・」ズズズズズ!
足元がグラグラと揺れ、アキラはミコの体から落ちそうになり、手近な恥毛に必死につかまった。
「感じているのか、ミコちゃん。」
アキラは数本の剛毛を命綱がわりに体に巻きつけった。
「文字通り、命がけの・・・愛撫というわけか。」
再び慎重に這いよって、スベスベした表面に顔を近づけた。
「やめて、アキラさん・・・アッ・・・アッ!」
別の、新しい感触が走った。舌だ。
小さな舌先が敏感な部分を這いまわっている。
「あああ!や、やめ・・・あ、う・・・」
『ぬうぅぅぅ?人間にしてはなかなかのテクニシャン!』
グォン!ミコの腰が凄い勢いで跳ね上がる!
大通りの左右の崩れかけていたビルがガラガラと崩壊していく。
アキラも空中に放り出されそうになり、必死に剛毛のロープにしがみつく。
「クッ・・・振り落とされてたまるもんか!」
猛烈な臭気が、すぐ下の亀裂から蒸気とともに噴出してくる。
アキラは蚤の気分を味わいながらも引き下がらなかった。
「嫌・・・こんなことをするアキラさんなんて・・・」
『ミコ殿、それは違うぞ。』
初めて聞くエニシの真剣な声であった。
『アキラ殿はただ欲望のままに動いているのではないぞ。
我に命じられたからでもない。全てミコ殿のためじゃ。』
「私のため・・・?」
『ミコ殿を喜ばせたい一心で危険もかえりみず、こうして精一杯頑張っておられるのじゃ。』
「命がけで私を・・・」
ミコは自分の秘所を覗いた。絡み付く恥毛の中で悪戦苦闘する小さくて、かよわくて、懸命な男の姿を。
「アキラさん・・・」
ミコは小さな虫を捕まえるように、アキラをそっと摘み上げた。
「わっ?ミコちゃん・・・」
アキラの目の前に大きな唇があった。ゆっくりと、力強く小さな全身が大きく柔らかなくちづけを受けた。
「ん、アキラさん・・・」
「わぁ・・・ミコ・・・」
巨大な舌がアキラの全身をくまなく舐めとり、味わった。
(ん、アキラさんの汗と私の愛液の混じりあった味・・・)
ズル・・・巻きついた舌が上半身を唇の内側に抱きこんだ。
濡れた粘膜がアキラをしっかり捕らえ、鍾乳洞を思わせる口腔の奥から湿った、暖かい甘い吐息が吹きつけてくる。
(ミコちゃんになら・・・このまま食べられてもいい・・・)
危険な考えがアキラの頭をかすめた。
(アキラさん、誰にも渡したくない!
このまま食べちゃってひとつになりたい・・・)
猛烈な独占欲がミコの精神に芽生え始める。
だが、アキラは食われることなく再び口の外に戻された。
「ずっと言えなかったけど・・・好きです、アキラさん。」
「僕こそ言えなかったけど、今は言えるよ。愛してる・・・」
アキラの小さな体が巨大な黒い瞳に映っていた。
『縁は無事、結ばれそうじゃのぅ。』
エニシの満足そうな声で二人はハッと我に帰った。
「無事かどうかは分かりませんがね。」
照れ笑いするアキラの目には壊滅した首都の廃墟が見えていた。
「あの、縁結びは終わったのでしたら私を元の大きさに・・・」
さっきまでの強烈な欲望に抵抗できる自信はミコにはなかった。
早く元に戻してもらわなければ、自分を押さえきれなくなる。
『いや、まだじゃな。』
エミシは首を横に振った。
「えっ?」
『仕事は最後まできっちり確認せんとな。』
「最後って・・・あ、あれ?」
アキラをつまんだミコの右手がまたも動き出した。
再び、秘所に向かって!
『もちろん、子宮の疼きをアキラ殿に体感していただかねば!』
「ちょっと、それは無理よ!」
「第一、僕とじゃ大きさが『太平洋に針』じゃないですか!」
『まあまあ、ここは経験豊富な我に任せておけ!』
アキラの目の前に剛毛に隠された巨大な粘膜の亀裂が迫る!
「ウワァァァ!ブッ!」
蒸気を上げるホカホカした粘膜に押し付けられてもがくアキラ。
ガシッ!呑みこまれる寸前でミコの左手が右手首を掴んだ!
『ミコ殿!何ゆえ邪魔をいたすか?』
「私の中に入れたら、アキラさん、窒息しちゃうでしょ!」
『大丈夫じゃ、ミコ殿の胎内は今、神気に溢れておる!
十日や二十日は中で元気に頑張れるわい!』
「十日も二十日も私がやってらんないわよ!」
『これだけが楽しみで地味な縁結びの仕事しとるというのに!
しまった!つい、本音が・・・』
「他人の体を使って楽しまないでよ、もう!」
『どうしても駄目か?』
「当然でしょ!」
『・・・・・すごく気持ちいいのに・・・』
「えっ、本当なの?」
気を取られた一瞬、左手の力が緩んだ。
『しめた、隙あり!』
「あっ、しまった!」
「うわぁぁぁ・・・」
ズポッ。アキラのちっぽけな体はミコの内側へと押し込まれた。
「・・・・・入っちゃっ・・・た!た、助けなきゃ!」
呆然としていたミコだったが、自分の中へ指を突っ込もうとした。
『待て!むやみに指を入れては危険じゃ!
アキラ殿を押し潰してしまうやもしれんぞ!』
「で、でも、このままじゃ・・・」
『心配は要らん、後はアキラ殿に任せるのじゃ!』
「任せるって・・・ん?あっ・・・」
ミコの内側で何かが動き始めた。とても小さな何かが・・・
**********
「ここが・・・ミコちゃんの中なのか?」
アキラは驚きと興奮を隠せなかった。
最初は混乱したものの、危険はないとすぐに感じた。
灯りは『入り口』の亀裂から差しこむ外の光だけ。
肉のトンネルの内側を流れ落ちる愛液が光を反射し、ヌラヌラした柔らかな壁がゆっくりと膨張・収縮している。
ドォン、ドォン、ドォン!
規則正しい太鼓のような音は心臓の鼓動。
ゆっくりとしたうねりはミコの呼吸であろうか。
そっと壁に耳を当てると、ゴウゴウと血液が流れる音がする。
恋人の膣を内側から見ることになるとは考えたこともなかった。
「いけない、とにかく外へ・・・ワッ!」
ツルッ!ビチャッ!
粘膜の表面は滑りやすく、足を取られて転んでしまった。
「気をつけなきゃ歩けな・・・何だ、この揺れは?」
ゴゴゴゴゴ!トンネル全体が揺れに揺れた!
肉襞が急速に膨張し、トンネルは半分くらいに狭まった!
「悦んでいるのかい?ミコちゃん!」
当然ながら答えはない。だが返答の代わりに・・・
ドドドドド!興奮した壁面から滝のように愛液が流れ出した。
* *********
「あ、あ、あ、アキラさん!」
ミコは自分の秘所を押さえてアキラの名を呼んだ。
入り口付近にいた小さな存在が少しずつ奥へと進むのが分かった。
「アフ・・・・・ウウッ!」
小さなアキラが襞を掻き分けて奥へと進む度に快感が生じ、ミコはのけぞった!
ドゴン!ズゴゴゴゴゴ・・・・・
ミコの背後にあったビルは巨大な背中に押されて崩れさった。
「き、気持ちよすぎる!ア・キ・ラさん!」
『そ、その調子じゃ、アキラ殿!ミコ殿も悦んで・・・!!』
ミコは立ちあがろうとビルに手をかけたが、ビルの方が数万トンに達したミコの体重に耐えきれず、ガラガラと崩れ去った。
『オ・オ・オ!アキラ殿!も、もっと暴れておくれ!』
「あああ、アキラさん、お願い!もっと強く!」
ひとつの唇から二人分の喘ぎが漏れた。
思わず手近にあったビルを抱きしめた!
瞬時に窓ガラスは砕け、壁が砕け、ビルは粉々になった。
ドグォン!ミコが悶える度に大地震が首都圏全域を襲った。
あちこちで耐震構造の筈の高層ビルが傾き、へし折れ、巨大娘を中心に首都は廃墟と化していった。
* *********
「ミコちゃん、感じるよ!君の子宮の疼きを!」
アキラは光も届かぬ女体の最深部に到達していた。
指先に触れる粘膜の感触を頼りに力の限り肉の壁を愛撫した。
そのたびに生きたトンネルは過剰なまでに反応した。
ミコの興奮がダイレクトに膣壁を通してアキラの全身に伝わる。
激しい呼吸は嵐のように粘膜の床をうねらせ、高まる鼓動は爆発音のように反響し、上昇する体温が空気を熱し、噴出した大量の愛液は大洪水をもたらした。
目の前に隆起した肉塊をアキラは抱きしめた。
つかみどころのない粘膜を抱き、頬擦りし、キスし、舐めた。
その瞬間、最大級の地震が首都と膣内を直撃した・・・・・
* *********
無人地帯と化した都市の廃墟に、ミコは横たわっていた。
『ミコ殿?アキラ殿?疲れて眠ってしもうたか。」
エニシはミコの手を動かして下腹部をさすった。
『堪能したわい、久々に楽しい仕事であったのう。
名残惜しいがそろそろ天に帰らねばならぬのう・・・おや?』
ふと、見上げた空に流れ星のような物が見えた。
だが、それは流れ星ではなかった。
10個以上の光点がミコたちを囲むように四方から降ってくる。
『?また、人間どもの花火かのう?』
ピカッ!ゴゴゴゴゴゴ………
光点が弾けた。それは太陽よりも眩く熱い輝きとなった!
同時に地上でもあちこちから同じ輝きが10個以上出現した。
熱い輝きが一つに溶け合い、生まれた光の塊が上昇していった。
キノコ型をした、黒く大きな雲が首都を覆い尽くして行った。
**********
円盤状の大型レーダーを背負った偵察機は、成層圏まで達する巨大なキノコ雲の周りを旋回していた。
「やりすぎじゃないのか?一国の首都で核兵器使用なんて!」
「我々だけじゃない!これは世界の総意なんだとさ。」
パイロットの独り言に観測員が無愛想に答えた。
「それより、例の怪獣!ミコドンの消滅は確認できたのか?」
「現在、核爆発に伴う電波障害で確認できません。」
「確認なんて必要ないだろ?爆心の瞬間最高温度千二百万度。
加えて、致死量の数万倍の放射能の嵐の中なんだぜ。
悪魔だって蒸発しちまってるよ。」
パイロットが言うように、生物どころか物質でさえ残らない状況の筈であった。だが、観測員が妙な顔をした。
「変だな?放射能が急速に低下しているぞ。」
「機械の故障じゃないのか?電磁波でイカレたとか・・・」
「いや・・・それに温度も急速に下降してきたぞ?」
・ ・・きよめたまえ・・・
「何か聞こえなかったか?」
・ ・・はらいたまえ・・・
「声だ・・・女の声・・・」
・ ・・きよめたまえ!はらいたまえ!
「キノコ雲の中に何かいる!ワッ?なんだあれは!」
キノコ雲を突き破って巨大な塔のような物体が飛び出してきた!
渦巻き状の文様の壁が偵察機の進路を一瞬で遮断した。
「ぶつかるぞォッ!」ドグォォォ・・・ン!
出現した肌色の巨塔が東京ドームを乗せられるほどの巨大な指先だと気づく暇もなかった。
衝突した偵察機は指紋の溝に小さな赤い炎の花を咲かせた!
『気持ちよく余韻に浸っておったというのに・・・』
キノコ雲が清浄な風に吹き払われた。
無傷の、竹箒を担いだ全裸のミコがそこにいた。
ゆっくりと立ちあがる彼女の頭部は、上空の雲を、成層圏を突き抜けて、真空の宇宙空間にまで達していた。
頭を優雅に一振りすると、長い黒髪が無重力空間に花のように広がって日本の空の半分を覆い尽くした。
艶やかな黒髪の流れに軍事衛星がいくつも巻きこまれ爆発した。
推定身長1600kmの巨大女神の突き刺すような不機嫌な視線が、宇宙空間から地上を見下ろしていた。
ズ・・・シ・・・ン!
何気ない一歩が大気をかき乱し、暴風と竜巻を発生させた。
素足が踏み下ろされた瞬間、日本列島は計測不能な大地震に見舞われ、地球そのものが激しく揺さぶられた。
『ええい、腹の立つ!こんなにお邪魔虫がウヨウヨしおっては、ミコ殿が安心して愛を育めぬではないか!』
ズ・・・シン!ズ・・・シン!
エニシはブツクサ言いながら、たったの二歩で日本列島を破壊しながら横断した。
日本海も彼女にとっては、雨の日の水溜りと変わりがなかった。
小さな水飛沫を上げながら彼女は大陸へ上陸した。
その水飛沫=大津波により幾つもの都市が壊滅した。
竹箒を振り回しながら前進する全裸の女神の歩みは、日本列島をへし折り、地球を揺るがし、世界中の火山を噴火させた。
『こうなったらアフターサービスじゃ。ミコ殿とアキラ殿が目覚める前に、この世のお邪魔虫どもを一掃してやろう。』
そして、大怪獣ミコドンは進撃を開始した!
若き恋人たちのために、小さな愛の世界を守るために!
・ ・・・・世界を踏み潰しながら。
—完—