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ですから18歳未満は立ち入り禁止です!
未成年の方は今回は申し訳ありませんが、お引取りください。
旅はおまかせ!シルフィナ観光!!
−湯煙突入戦・18禁−
BY まんまる
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「お茶を一杯」
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古びた旅館の一室、窓に腰掛けて物憂げな表情で雪景色を眺める、浴衣姿のエルフの娘。
銀色の長い髪を頭の後ろで束ね、ライトグリーンの瞳はボンヤリと暗い夜空を見上げた。
「シルフィナ?」
宿の女将、まだ若々しい長い黒髪の着物美人が呼びかけた。
「なあに、オユキちゃん?」
「あんたたち・・・子供まだなの?」
「・・・・・努力はしてるのよ!」
シルフィナと呼ばれたエルフ娘は、少し不機嫌になった。
「私も早く、貴方の娘のコユキちゃんみたいな可愛い子供が欲しいだけど。」
「ヤルことやってんの?デュークさんと・・・」
オユキは自分で注いだ湯飲みを手に、チラリとシルフィナを見た。
「やってるわよぉ、ちゃんと!故郷の親父も『子供はまだか?』ってうるさいし・・・」
少し苛立ちながらシルフィナは答えた。
「あんたの実家のあるエルフの村も出生率低下で苦しんでるからねぇ・・・
生命力の強い人間の血を継ぐ子供が沢山欲しいだろうよ。」
一息ついてオユキはお茶をすすった。そして言葉を続けた。
「あたしもね、ウチの旦那が元気なうちにあと10人は生むつもりだよ。」
「10人も?!」
「雪女一族もこの国じゃ、あたし一人だからね。
少しでも増やさなきゃ冬山の管理もできないよ。
・・・・・あんたもそのくらいは生まなきゃ駄目なんだよ。」
親友の厳しい一言に、シルフィナはシュンとなった。
「しかし・・・あの方法でも妊娠しないとなるとキツイかもしれないねぇ・・・」
オユキは溜息をついた。
「なによ、『あの方法』って?」
「えっ?つかぬことを聞くけどさ、デュークさんはどうやってあんたを抱いてるの?!」
驚いた表情で聞き返すオユキ。
「どうやってって・・・普通に抱いてるもらってるわよ。」
「・・・・・あんたが人間の大きさになってかい?」
「他にどういうやりかたがあるのよ?本来の大きさなら300倍以上の体格差なのよ。」
「やれやれ・・・極悪妖精族グループのヘッド『皆殺しのシルフィナ』ともあろう者が!」
オユキはガックリ肩を落とした。
「まあ・・・あんたは恐れられすぎて男は一人も近寄らなかったからねぇ。」
「『血も凍る恐怖のオユキ』にいわれたかないわよ。で、どうゆう方法があるってのよ?」
言いながらシルフィナはオユキの目の前に正座した。
オユキは着物の懐から一冊の本を取り出した。手帳くらいの大きさの古い本だ。
「なに?この本。何々・・・『小さな恋人との交わり』!?!?」
「あんたの死んだお袋さんから借りてた本だ・・・今、あんたに返すことにするよ。」
「母さんから!?」
「とにかくだ、その本の第3章を読んでみな。」
言われるままに本を開くシルフィナ。その彼女の顔が・・・真っ赤に染まった!
「何よ!何なのよ?この・・・・・『胎内潜入受精法』って!」
「何って・・・言葉どおりの意味さね。
旦那に・・・妊娠しやすい位置まで入り込んでもらって精を受け取るのさ。」
こともなげにオユキは答えた。
「それってあたしの体の中に潜り込んでもらうって・・・」
「そう。」
「その・・・デュークが?」
「他に誰がいるんだね?」
「・・・・・何処から入るの?」
「子作りの時に入る入り口といえば決まってるじゃないか。」
オユキはさも当たり前といったふうに受け答えした。
シルフィナは耳の先まで真っ赤になった。
「でも・・・でも、私のお腹の中で窒息しちゃったら?」
「そうならないように、こーゆーモンがある!」
彼女は懐からお茶らしき物の入った小さな布袋を取り出した。
袋ごと急須に放り込み、湯を注ぐ。
急須から薔薇の花と林檎の果実を合わせたような甘い香りが立ち昇った。
「オキシ草のハーブ・ティーだよ。これを飲めば体内の空気が浄化され続けるから、一晩くらい体内に人間がいても平気だよ。」
「オキシ草って確か・・・特別な儀式以外じゃ使っちゃいけないはずじゃないの!」
「だから・・・これがその『特別な儀式』なんだよ。」
「ええっ、そうだったの?!」
驚きで呆然とするシルフィナを尻目に、オユキは急須の中身を湯飲みに注いだ。
「人間と結ばれた妖精族なら誰でもやってることさ。
まっ、どうするかは自分で決めるんだね。」
湯飲みをシルフィナに渡すと、オユキは立ち上がって部屋を出ていった。
残されたシルフィナは困惑しながら、本と湯飲みをかわるがわる見つめた。
**********
数分後、シルフィナはオユキが番台に座る脱衣場にやってきた。
「あっ、シルフィナおばちゃ・・・おねえちゃん、いらっしゃい!」
籠を片づけていた5〜6才位の女の子が駆け寄ってきた。コユキちゃんだ。
「コユキちゃん、元気いいわね。」
「うん!あれ・・・シルフィナおねえちゃん、いいにおいがする?」
「えっ?」
「バラのおはなみたいな・・・リンゴみたいな・・・こうすい?」
「う・・・うん、そう香水なの。」
慌てて取り繕うシルフィナ。そんな彼女にオユキが近づいてきた。
「決心ついたようだね。」
「・・・・・」
オユキが耳元でささやく。
「後であんたの旦那を呼んできてあげるわ。
真夜中から先、露天風呂はあんたら夫婦の貸し切りだよ。」
「・・・・・」
顔を赤らめたシルフィナは何も答えなかった。
**********
「お風呂で遊ぼ!」
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「ふう〜・・・、大きい風呂ってのは気分いいねえ。」
デュークが大きく体を伸ばしてのんびりした口調で話し掛けてきた。
「えっ?ええ、そ・そうね。」
いきなり話し掛けられて、シルフィナは焦って答えた。
海と見紛う程の広大な露天風呂。(なにせ水平線が見えるのだ!)
他の客は露天風呂から引き上げて、旅館の大広間での宴会に直行した。
残っているのはシルフィナとデューク、ドラゴン娘のフレイナと巨大ハーピーのレビィだけだ。
現在、シルフィナは風呂の縁から50リムル(約五千メートル)ばかり沖合い、水深(湯深?)は2〜3リムルの所で肩まで湯につかっていた。
そんな沖合いまでは到底泳いでいけないデュークは浅瀬でのんびりくつろいでいる。
レビィとフレイナは広いお風呂にすっかり喜んではしゃぎまくり、泳ぎまくっている。
「お父さん!ほーれ大雨だよー!」
バシャッ!バシャッ!ドザーン!
「うわっぷ!こ・こら、やめないか!」
フレイナが大量の水飛沫をぶっかけたのだ。
人間の子供なら水遊びで済むのだが、人間の10倍もある半人半ドラゴンの娘がやれば、さながら大豪雨である。
「まったく、もお・・・いつまでたっても子供なんだから・・・
おい、レビィ!君まで一緒になって水をブッかけるコトないだろ!」
「アッハハハ・・・広い風呂、水かけゴッコやる。コレ常識ネ!」
レビィはそう言って巨大な漆黒の翼を広げて、湯船に大津波をおこした。
「のわああああ!」
あっさりデュークは津波の押し流されてしまった。
「・・・楽しそうね。」
そう言いながらもシルフィナの心中は穏やかでなかった。
(これじゃ、いいムードどころか・・・仲良し家族旅行じゃない!
せっかくオユキに露天風呂を貸し切りにして貰ったのに・・・
でもフレイナちゃんやレビィに『出て行け』とは言えないし・・・)
念入りに磨き上げたお肌も、香水入りシャンプーも無駄になってしまう。
可愛がってもらおうと思って、念入りに念入りに胸もお尻も洗ったのに・・・
ううん、胸だけじゃない、アソコだって・・・
「あら、レビィ?」
ふと、上げた視線がレビィの視線と合った。
何を思ったのかレビィはウインクした。
「さあ、フレイナちゃん、もうあがるいいネ!」
「えーっ?あたしもう少し・・・」
レビィはフレイナを抱き寄せ、そっと耳打ちした。
「パパとママ、二人きりにすル!。フレイナに弟か妹できるネ!」
「それ本当?」
「嘘違ウ!私の婆様から教わったネ!」
真顔でコソコソと話すフレイナとレビィ。
「何してんだぁ?フレイナ!」
「あっ、パパ!何でもないの。私・・・もう、あがるわね!」
「そうか、じゃあ俺も・・・」
「部長サンはもう少しユックリしてく、いいネ!今日忙しかっタし!」
「そうかい、レビィ?じゃあもう少し暖まっていくか・・・」
湯から上がろうとしていたデュークは肩まで湯につかりなおした。
(社長サン、がんばるネ!)
レビィはシルフィナにウインクすると湯煙の向こうに消えた。フレイナも後に続く。
「あれ・・・」
デュークはようやく気がついた。
水平線が見えるほど広大な浴槽に、シルフィナと二人きりになったことに。
**********
気まずい沈黙が続いていた。
いざ、二人きりになると、どう声をかけていいやら分からない。
「・・・・・あの。」
「・・・・・えっと。」
タイミングかかちあって言葉が続かない。
「えっと・・・いいお湯だね、シルフィナ。」
「ええと、そうですわね・・・・・」
かみ合わない会話しか出てこない。新婚旅行じゃあるまいし・・・
「あ・・・そろそろ・・・あがろうか?」
「え?あ・・・そうね、そろそろ・・・」
あがってしまったら、何しにきたんだかわかりゃしない!ちょうどその時だった。
「酒と肴をお持ちしました。」
「わっ!?」
デュークの耳元で声がした。
思わず驚いたデュークの横で、和服姿の女性がかしこまっている。
「あ、あなたは?」
「お気になさらずに。この温泉の精霊のタン・サーンと申すもので・・・
おや、お客様は先ほどの・・・?」
「ああ、いや、その話はちょっと・・・」
つい先ほどまで覗き魔のドラゴンたちと一緒にいた、とシルフィナに知られると怖い。
「・・・なるほど、奥様と一緒に入りたくてあんなに積極的に・・・」
タン・サーンは羨ましそうにシルフィナを見た。どうやら誤解しているようだ。
「そういうことでしたら私も、おかたいことは言いませんでしたのに。」
「いえ、あのそういうわけでは・・・」
「では、酒と肴はあちらに・・・」
タン・サーンが手を差し出した方には、一隻の船が停泊している。
その後ろに繋がれた巨大な筏の上に、何か巨大生物の串焼きらしきものと、ロマリア王宮の見張り塔よりも巨大な徳利が乗っかっている。
「お酒って?あたしたち頼んでないわよ!」
シルフィナも驚いている。
「女将よりのサービスでございます。」
「オユキったら・・・」
シルフィナはポッと赤くなった。
「では旦那様、奥様のところへ持っていってあげてくださいまし。」
「えっ、でも俺は船の操船は・・・」
「いえいえ、あれは船にして船にあらず。
一種の精霊でして、舵を握っていきたい方を思えばそちらへ進みます。」
「で、でも・・・」
「では私めはこれで・・・邪魔が入らぬよう今度こそしっかり警備いたしますので・・・」
そう言い終わった時には既にタン・サーンの姿はなかった。
**********
ぎぃ、ぎぃ・・・
デュークの乗る船はシルフィナの背後までやってきた。
透けるような肌の肩越しにシルフィナと視線があった。
「じゃあ、ここに置いていくから。」
「あっ、・・・待って。」
デュークが筏をつなぐロープを外そうとした時にシルフィナが声をかけた。
振り向くとシルフィナはジッとデュークを見つめている。
肩まで湯につかったその姿はまるで小島のように大きく見えた。
肩から下は水面下だが、そのふくよかな乳房のラインはクッキリと見える。
彼は自分の妻でもあるエルフをまぶしく思った。
「ねえ、一緒に食べましょ!」
デュークはチラリと皿の上を見た。
この地方の郷土料理『蛇の串焼き』である。
ただし普通の蛇ではなく、ガッと開いた口で人馬を一飲みにしてしまうという大蛇である。
人間なら百人がかりでも持ち上げられそうにない一串を彼女はヒョイと摘み上げた。
黒焼きにされた大蛇のうつろな目を見て、デュークはちょっとたじろいだ。
「い、いや、どうも蛇は・・・それに浅瀬まで戻らないと。」
「どうして?」
「このあたりじゃ俺には深すぎてさ。」
確かに身長5リムルはあるシルフィナが肩までつかれるくらいの水深なのだから・・・
「一応俺の足でも立っていられるくらいのとこじゃなきゃ危険だし・・・」
「立っていられる場所もあるわよ。」
「?どこだい、そんな場所・・・ワッ?!」
キョロキョロするデュークをシルフィナが船から摘み上げたのだ!
「ここよ・・・」
ポチャン!
デュークはお湯の中に落下した。
「ぷはぁっ???確かに足がつくけど・・・ここは?」
お湯の中で踏みしめる足元は妙に柔らかい。
見上げると視界一杯にシルフィナのほんのりと紅潮した顔が広がっていた。
左右は、白い柔らかな壁の曲面が続いてる。
「ここって・・・あの?」
シルフィナは黙ってうなずいた。デュークも思わず赤面する場所。
シルフィナの・・・・・胸の深い谷間。
少し背を傾けた彼女の胸の斜面にデュークはいたのだ。
「あ、あの・・・・・」
「一杯やりましょ!」
シルフィナがニッコリ笑うと、デュークはもう反論できない。
「・・・ふう、それにしても・・・」
洗面器のようなお猪口になみなみと注がれた地酒を抱えながら、デュークはしみじみと言った。
「・・・・・絶景だなあ。」
遠景の雪を頂く山々と輝く満天の星。
頭上には町一番の器量良しと言われたエルフの顔。
左右は素晴らしく大きくて、とっても綺麗で、ふかふかと柔らかい巨大な乳房。
少し離れたところに見える肌色の小島ふたつはシルフィナの膝だ。
「何か言ったの、デューク?」
「あ?いいや、何も・・・」
「・・・ほら、お月様が昇ってくるわ。」
「へぇ・・・見えないなあ!」
デューク程度の大きさでは露天風呂の縁が邪魔で地平線は見えない。
ザバッ!
水飛沫が飛び散った!シルフィナが両腕を湯から出したのだ。
「何するんだい?シル!」
「こうすればあなたにもお月様が見えるわ。」
彼女は両腕で自分の乳房を抱きかかえるようにした。
「おいおい!」
デュークの体は巨大なふたつの乳房の間の小さな(といってもちょっとした池くらいの)水溜りの中に浮いていた。
ザアァァァ・・・
シルフィナはそっと立ちあがった。大切な夫が目を回さないように。
お湯が滝のように彼女の体表を流れ落ちる。
「どう?これなら見えるでしょ?」
「ああ・・・よく見えるよ。」
腰から上を湯から突き出した巨大な裸身。
見ている者がいたなら、彼女の壮大な美しさに圧倒され心奪われたことだろう。
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「では、本題に・・・」
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「ねえ、すこしのぼせちゃったわ。しばらく上がっていいかしら。」
「そ、そうだね。俺も少し風にあたりたくなったよ。」
どうも今夜は勝手が違うな、とデュークは当惑していた。
なんだか今夜のシルは妙に、その・・・・・積極的だ。
ザブン、ザブン、ザブン!
デュークを乳房の間の水溜りに入れたまま、シルフィナは巨大露天風呂の岸辺に向かった。
両足の間でお湯は大きな渦を巻き、彼女の歩いた白波の航跡が延々と続いた。
「ふう・・・」
ドズゥン・・・
地震のような揺れを起こして、彼女はフロの縁に腰掛けた。
「おい・・・シル!そろそろ降ろしてくれよ!」
「あら、ごめんなさいね。すっかり忘れてたわ。」
なんだかわざとらしい笑顔でシルフィナは答えて・・・乳房を抱きかかえていた腕の力をいきなり緩めた!
ドザザアァァァ!
「うわあっ!?」
デュークのまわりのお湯は堰を切ったように流れ出した!
慌ててデュークは何かにつかまろうとしたが、スベスベお肌にはつかまれるところはない。
彼の小さな体は乳房の間を通りぬけ、広大なお腹の上を流れ落ちていった!
「プワッハァ!ひどいじゃないか、シル!」
おヘソのへりにしがみついて難を逃れたデュークは抗議した。
「ウフフフ、ごめん、ごめん!」
シルフィナは可笑しそうに笑った。
「ほんとにもう・・・」
怒りながらデュークはシルフィナのおヘソの穴に腰掛けた。
オヘソの穴でさえ、小さな家なら一軒くらいは収まりそうだ。
「お詫びに、酒風呂を用意するわね。とっても健康にいいんですって!」
「そうかい、じゃあ頼もうかな・・・」
言った途端に目の前にヌッと巨大な徳利が差し出されて、デュークはギョッとした。
(なるほど、熱燗してあるお酒をどこかの窪地へ注いで即席の湯船を作るつもりか。)
だが・・・シルフィナは窪地の上ではなく、自分の体の正面で徳利を傾けた。
ドドドドド・・・
滝のように流れ落ちる酒の行き先を目で追ったデュークは呆気にとられた。
酒はシルフィナの腰と太股が作り出す三角地帯へと注がれていたのだ!
「シル!どういうつもり・・・わっ?」
ドボォーーーン!
「あら、気が早いのね。」
うっかり足を滑らせたデュークは酒の池にまっさかさま!
水柱を上げて酒の池の底まで潜った。
「ウッ?!」
目に映るは海底のように神秘的な景色・・・
柔らかくなだらかな岩肌。
ジャングルのように繁茂した銀色の『海草』の林。
そして、その奥に潜む、巨大な二枚貝・・・!
デューク君は必死にもがいて水面、いや酒面に出た。
「どぉーお?オユキちゃん直伝『わかめ酒風呂』の気分は?」
「シル!悪ふざけにもほどが・・・」
怒鳴られて、シルフィナはシュンとなった。
山よりも巨大なはずの裸身が縮こまり、頼りなげに見えた。
彼女がゆっくりと両足を開くと、大量の酒が流出して腰のまわりに広がった。
デュークも酒と一緒に床石の上に降りられた。
「・・・・・ごめんなさい。」
「ま、まあ、分かればいいんだ。」
それにしてもとデュークはしみじみと思った。
(こんなでっかい嫁さんと結婚するなんて子供の頃は想像もしなかったなあ。)
彼の目の前の女性は座り込んでいてさえ、人類が建設したいかなる建造物よりも大きい。
それに美人だし、バストも立派だし、それに・・・
頭上からだんだん下がってきた視線は正面で停止した。
先ほどの銀色の『海草』の林は艶やかに濡れた密林と化して目の前にあった!
そして、その下には・・・神秘の洞窟が口をあけて・・・
「デューク?デューク!」
「はっ?!な、なんだい、シル?。」
一瞬、ポウとなっていたデュークは我に返った。
「コユキちゃんって可愛いわよね・・・」
「うん?そうだね。」
「あたし、欲しいな・・・」
「えっ?」
「コユキちゃんみたな可愛い女の子が・・・」
「・・・・・」
「あなたそっくりな元気な男の子もいいな。」
色っぽい目でデュークを静かに見下ろすシルフィナ。
「・・・・・シル・・・今夜、いいかな?」
「うん!」
「じゃあ、部屋へ戻ってさっそく・・・」
「待って。」
キョトンとするデュークにシルフィナは言葉を続ける。
「今夜はこの露天風呂をオユキに貸し切らせてもらったの。」
「じゃあ・・・ここで?」
「ええ・・・オユキの好意に甘えさせてもらいましょ。」
シルフィナは恥じらいの表情を見せていた。
夫婦とはいえ、まだまだ新婚に近いふたりであった。
「うん、じゃあ君の体を小さくしておくれ。」
だが、シルフィナは首を横に振った。
「おい、いくらなんでも今の君と俺との体格差じゃ・・・」
「この体格差じゃないとできないの・・・妊娠成功率の高い『やり方』は・・・」
デュークは不可解な顔をした。
「どういうことだい?」
「・・・・・」
シルフィナは無言で指先を銀色の密林のさらに下に押し当てた。
「まさか・・・」
「入ってきて欲しいの・・・私の体の奥へ・・・」
**********
「真夜中の侵入者」
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デュークは呆気にとられていた。
シルフィナが何を言っているのか、何を望んでいるのか分からなかった。
「何をして欲しいって?」
「入ってきて欲しいの、私の体の中へ。」
「それから・・・何を?」
「妊娠しやすい位置まで進んだら、あなたの精を貰うの。」
「どこから入るの?その・・・君の体の中へ。」
「・・・分かってるクセに・・・」
はにかむ妻の前でデュークは硬直した。
「あ、あのさ・・・」
「大丈夫よ、体の中でも呼吸ができるようにしてあるし!」
「で、でも・・・」
「昔から妖精族の女の子はこうやって人間と愛しあってきたって本に書いてあったし!」
「そ、その・・・」
「恥ずかしがることないわよ!今までだって貴方は何度も私の中へ入ってきたじゃない!
い・・・一部分・・・だけだけど。」
最後のセリフは流石にちょっと恥ずかしかったのか、シルフィナは黙り込んでしまった。
二人の間に気まずい沈黙の時・・・
(ど、どうしよう?)
デュークは焦った。逃げたほうがいいかな?とも思ったが・・・
背後はシルフィナにとってはただの風呂の縁だが、デュークにとっては水面まで数十メートルの断崖絶壁。
左右は山脈のように連なる、巨大なふとももで遮られている。
そして正面は銀色の『ジャングル』と、その下の・・・神秘への『扉』。
「・・・・・ごめんね、デューク。」
「えっ?」
「無理を言ったのがいけなかったのね。」
「あ、いや、そんなことは・・・」
「貴方は普通の人間ですものね。こんなやり方・・・変よね。」
「・・・・・」
「ごめんなさい、もう二度と無茶は・・・」
顔をそむけて声を詰まらせるシルフィナ。そう、これが彼女の決め技だった!
「やるよ。」
「えっ!」
シルフィナはデュークをマジマジと見つめた。
「いいのよ、無理しなくても。」
「いいや、無理なんかしてないよ!」
「でも・・・」
「妖精界じゃ、フツーのやり方なんだろ?簡単なモンさ!」
「・・・・・」
「まあ・・・任せておけよ。」
デュークは照れくさそうに下を向いた。
だから、この時シルフィナが(してやったり!)という楽しそうな笑顔で、ペロッと舌を出しながら、両手でVサインしてたなんて気づいていない。
「さあ、乗って。」
彼女はデュークの前に手を差し出した。
デュークは黙って巨大な人差し指に向かって歩いていく。
人差し指一本といえど、岬の灯台の倍は太くて、港の埠頭よりも長いのだ。
「よぉし!」
意を決したデュークは人差し指によじ登り始めた。
指紋の溝を足がかりにして、岩山でも登るかのように。
「ふぅっ!」
「じゃあ、しっかりつかまっててね。」
シルフィナをゆっくりと手を持ち上げた。
そして、デュークの乗る指先を自らの両足の間へと運ぶ。
「す、すごい・・・」
デュークは圧倒された!
ずんずんと接近してくる、巨大な粘膜で構成された『扉』の迫力に。
ビチャ・・・
シルフィナの指先が粘膜に接触した。
暖かな空気と脈打つ振動がデュークにも伝わってくる。
ヒョイとデュークは皮膚の上から粘膜の上へ飛び移った。
「おっとっと・・・」
濡れた滑りやすい表面に足をとられかけて慌てて手近のロープにつかまった。
彼が唯一、身に着けていたタオルが外れて、ヒラヒラと眼下へ落ちて行く。
「気をつけなきゃ、俺の大きさじゃここから落ちたら即死だぜ。」
「もう!ヘンなトコつかまないでよ!」
「えっ?」
デュークは改めてつかんだロープを見た。
いや、こんなトコロにロープがあるわけはない。
当然、しっかりと握っていたのはロープくらいの太さの銀色の剛毛・・・
「ああ、これは、こんなつもりじゃなくて・・・」
「いいから、早くお入りなさい!」
言われて初めて彼は『入り口』を見た、否、見上げた。
(すげぇ・・・)
彼の足元から十数メートルの高さまで肉の亀裂が伸びている!
人間一人くらいなら潜り込めそうな隙間はあるのだが、あまりの迫力に思わず尻込みしそうになった。
「どうしたの?」
「いや、その・・・(怖いなんて言えないし・・)」
「ああ、入り口が閉まったままじゃ入れないわよね。待って・・・」
天から2本の巨柱が降りてきた!シルフィナの人差し指と中指だ。
ズン。
亀裂を挟むように2本の指が柔肌の崖を押さえる。
「ん・・・」
グゴゴゴゴゴ・・・
デュークの目前で巨大な扉が徐々に開かれていく。そして・・・
「う・・・ん」
ジュッ。
もう片方の手の中指が半開きの『洞窟』に突っ込まれた。
そして粘膜の天井ををググッと持ち上げる。
「うっ・・・」
むぁぁぁっ。
暖かい湿った風が洞窟の奥から吹きつける。
顔を上げたデュークは見た。巨船すら一呑みにするであろう牙なき口を。
内部は雨のように透明な液体が滴り落ちている。
「さあ・・・」
恥じらいと期待で紅潮したシルフィナの頬。
だがデュークは足がすくんで動けない!
そんな彼に一陣の風が吹いた。
ふあっ。
(あれ?何だろう・・・いい香りだ。とっても・・・甘い。)
薔薇のような香りを吸い込んだとたんに、彼の頭がボウッとして思考が停止した。
「じゃあ、閉めるわよ。頑張ってね!」
「・・・えっ?!」
我に返った時デュークは既に『洞窟』の中にいた!
甘い香りに誘われるように禁断の場所に足を踏み入れていたのだ。
じゅるじゅるじゅる!
頭上の肉天井を支えていた巨大な中指がすごいスピードで引き抜かれた。
ズズズズズズ・・・
指を離したのであろう、入り口が支えを失って閉じていく。
「うわあ、待ってくれ?!」
慌てて外へ出ようとしたデュークだが足元が滑って転んでしまった。
彼の目の前で扉は閉じた。それでも隙間から這い出ようとしたが・・・
外からのぞきこんでいるシルフィナと視線が合った。
「・・・・・お願いね、デューク。」
「お?おう、任せてくれ!」
デュークは入り口に背を向けて、奥へ向かって歩き始めた。
・・・とことん乗せられやすいタイプであった。
**********
「深淵の恐怖」
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「ふふふ、単純よねー、デュークって。」
自分の秘所をのぞきこんでいたシルフィナは顔を上げて嬉しそうに笑った。
「男って皆そうなのかな?でもそこがカワイイのよね。
おっと、こんなコト言ってる場合じゃなかったんだ。」
シルフィナは自分の豊かな銀髪の中に手を入れた。そして一冊の本を取り出した。
例の『小さな恋人との交わり』という本である。
「えーっと、『私たちのお腹の中に灯りはありません。』当たり前よね。
『これでは体の中で貴方の恋人が進めなくなってしまいます。』ふむふむ。
『それに誘導がなければ迷子になって最悪の場合には胎内遭難ということも!』
冗談じゃないわよ!!『そこで以下の術式を参考にして・・・』えっと・・・
光の粒子よ、集い来りて形を成し・・・」
**********
「ふうふう、かなり進んだと思うけど・・・ここはシルフィナの体のどのあたりだろ?」
神秘の洞窟を進むデューク君。柔らかな肉の壁に手をつき、暖かい粘膜の上を這い進む。
最初は入り口から差し込む月光を頼りに進んでいたのだが、ここまで来れば外の光は全く届かない。
後は生ぬるい粘液に濡れた指先の感触と、遠くから地震のように響くシルフィナの心臓の鼓動の方角だけが頼りである。
「こっちが奥かな、いやこっちか?」
盛り上がった壁の隙間に滑り込みながらデュークは焦った。
「真っ暗で何がなんだか・・・」
羽根布団を100枚も重ねたような柔らさの床の上を這いまわり、重いカーテンのような肉の襞をかきわけて進むうちに、自分が今、上を向いてるのか下を向いているのかさえ分からなくなってきた。
「やばいかなぁ・・・ん?」
少々不安になってきた彼の背後から何か光るものが近づいてくる。
「何だろう?」
目を凝らしてみると、それは人の形をしていた。
「デューク!そこにいるのね!」
「シル?!」
光の正体はシルフィナだった!
「なぜ君がここに?いや、そもそも、ここは君の体の中だから??」
思わず差し出したデュークの手は輝くシルフィナの体を突き抜けた!
「これは?」
「この姿はね、本当の私じゃないの。魔法で作り出した分身なの。」
ニッコリ微笑むシルフィナの幻。
「真っ暗で貴方が困ってるといけないからね、ランプの代わりよ。」
幻が光輝を増した。洞窟の闇が追い払われて全てが光の中に浮かび上がった。
「おおっ・・・」
デュークは息を呑んだ。白い光に照らし出されたそこは別世界であった。
壁は純白の大理石のように輝き、床は光を反射して星を敷き詰めたよう。
天井には鍾乳石を思わせる大きな襞がいくつも連なり、その間から透明な雫が滴り落ちる。
「・・・・・やだ。」
「えっ?」
「私のお腹の中ってこんなだったの!」
「どうしたんだ、シル?」
「こんな不気味な場所だったなんて・・・知ってたら貴方に見せたりしなかったのに!」
シルフィナは恥ずかしくなった。本に書いてあるままに、ついデュークを入れてしまったものの、自分の内側を見られるのがこんなにも恥ずかしいとは思ってもみなかった。
「不気味だなんて、そんなことないよ。」
「でも、こんなにヌラヌラしてるし、ナマコかなにかみたいで気持ち悪いし・・・」
「とんでもない!ナスカ山麓の鍾乳洞より立派で美しいじゃないか!」
「でも・・・」
「それに、暖かくて居心地もいいし。」
「本当に?」
「ああ!一生ここに住んでみたいくらいさ!」
二人とも沈黙してしまった。
(俺、ちょっと変なこと言っちゃたかな?)
そう思いながらもデュークはシルフィナを抱きしめ・・・ようとしたが空しく空を切った。
「あっ、そうか。これは幻だって・・・わっ?!」
いきなり盛り上がった左右の柔軟な壁にデュークは挟まれた。
「そう言ってくれて・・・とっても嬉しいわ。」
「そ、そうかい・・・」
ムギュッ。洞窟全体が活発に波打ち、デュークの小さな体を熱烈に抱擁した。
「と、とにかく離してくれないか?このままじゃ動けないよ。」
「あっ、そうだったわね。」
生きている『洞窟』はおとなしくなり、デュークは熱烈な抱擁から開放された。
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「そこ気をつけて。滑りそうだわ。」
「OK!・・・ふぅ、進むのは結構、大変だな。」
シルフィナの中に入ってからかなり時間が経ったが、まだ目的地は見えない。
「ちょっと待ってて!進みやすい方法がないか調べてみるから。」
シルフィナは自分の体の外に意識を戻した。
急いで本のページをめくる。
「えっと・・・これだわ!『体の内側は人間にとって移動しやすい場所ではありません。』
ワアォ!図解入りで説明されるとなんかスゴイわね。
『そこで食べ物を飲み込むような感じで入り口から奥へ向かってゆっくり締めてみたり。』
こ、こうかな?えい!・・・ん!」
ギュッ・・・
グゴゴゴゴゴ・・・!
「わっ?!な、なんだ?」
突然の大地震にデュークは慌てた!入り口の方を振り返った彼が見たものは!
「つ・・津波?!」
盛り上がった粘膜が巨大な肉の波と化して迫ってくる!
「わぁーーー!」
逃げる暇も避難する場所もなくデュークは大波に弾き飛ばされた!
「それから『少し強引ですが指で押し込んでみたり、』・・・大胆ね!」
自分の内部での夫の災難など露知らず、シルフィナはさらに過激な行動に移った。
「こ、今度は何だ?」
天井から垂れ下がる襞にしがみついて難を逃れたデュークの身に新たな危機が訪れた。
入り口から巨大な肌色の物体が突入してきたのだ!
ドン!
「うわぁーーーーー!!」
粘液にまみれた彼の体はシルフィナの指先に貼りつき洞窟内を突進した!
ボチョッ!
「グェッ?!」
そのまま彼は粘膜にめり込まされて身動きもできなくなった。
災難はさらに続いた。シルフィナがめくった次のページにはこう書かれていた。
「お次はと・・・『貴方の小さな恋人が体の中心に落下するように逆立ちして』なるほど。
よっと・・・」
ヴォン!ドズン!
旋風を巻き起こしてシルフィナは跳躍し逆立ちで着地した!
ビキッ!
衝撃で硬い岩盤に亀裂が入り、露天風呂が激しく波打った!
実に見事な身軽さとバランス感覚だが、内部のデュークは堪らない!
「ワァァァ!!」
洞窟全体がグルグルと回転し、何度も柔らかな床や壁に叩きつけられた。
挙句に深遠な縦穴と化した洞窟の奥底に落ちそうになって、大きな肉の突起にしがみつくはめになった。
「それから・・・『ちょっぴり腰をふってみたり』・・・」
ブン、ブン、ブゥン!
「ヒェェェ・・・」
濡れて滑りやすい肉の突起から振り落とされて、デュークは暗黒の深淵に落ちていった。
「・・・『などの行為は胎内の恋人がたいへん危険ですので絶対おやめください!』・・・
そりゃそうよね・・・ってなんて書き方するのよ!!デューク?デューク!大丈夫?」
「あ、ああ、大丈夫だよ・・・目が回ったケド・・・」
幸いにもクッションの効いた女性の『内部構造』に助けられたようだ。
「それにしてもどこのどいつかしら?こんなふざけた本を書いたのは?」
シルフィナは裏表紙を読んでみた。
「・・・・・著者『ルウリア=スタン』・・・って妖精界の女王陛下のォ?!」
ルウリアさんについて詳しくは前作『ある少年兵の帰還』を参照のこと!
**********
数々の苦難を乗り越えたデューク君の旅はいよいよ中盤にさしかかった!のだが・・・
「・・・困ったな。」
「・・・困ったわね。」
「どうしよう。」
「どうしましょう。」
彼らの目前には洞窟の終点である突き当りの壁と次のステージへの入り口である壁の凹面が見えていた。それは問題なかった。
問題は・・・
「深そうね。」
「俺の背丈よりは深いみたいだ。」
透明な『愛の液体』をたたえた神秘的な小さな湖。
『洞窟』のスケールからすれば小さな水溜りがデュークの行く手を塞いでいた。
デュークは腰をかがめ、澄んだ液体を手の平にすくってみた。
指の隙間から糸を引いている。思ったより粘り気があるようだ。
「私が姿勢を変えれば流し出せるかも!」
「駄目だよ、俺まで押し流されちゃう。」
「そっか・・・」
「やっぱり泳いでいくしかないか。」
シルフィナはデュークの無謀な言葉に驚いた。
「無茶よ!普通のお水じゃないのよ!」
「大丈夫さ!・・・・・多分。」
山育ちのデュークだったが、泳ぎには自信があった。
シルフィナの制止を振り切って水面に身を躍らせた!
「やめて!危険よ!!」
ドボン!
鈍い水音が上がった。デュークは力一杯泳ぎ出した!だが・・・
「うっ!お、重い!」
粘性のある液体は想像以上に重く、体に絡みついてきた!
腕が!足が!鉛のように重くなっていく。
「早く引き返して!」
だが遅かった!小さな湖の中央まで泳いでいたデュークのスピードがガクンと落ちた。
そして力尽きたように沈み始めた!
「デュー・・・」
蒼白となるシルフィナの目の前、いや内側でデュークは水中に消えた。
「た、助けなきゃ、は、早く・・・」
おろおろするシルフィナ。しかしその時!
バシャッ!
向こう岸のそばで水中から右腕が突き出された。
続いてずぶ濡れの青年が頭を水面にだした。
「ふぅ〜、参った参った。」
呑気な声を出しながらデュークが向こう岸に這い上がった!
「泳ぐより水底を歩いたほうが速くてね」
「デューク・・・」
「これがホントの『女に溺れた』ってヤツかな?・・・あれ?」
「・・・・・」
デュークの傍らに半泣き顔のシルフィナの幻がいた。
「デューク、デューク・・・心配させるなーーー!!」
「うわわあ!!」
洞窟全体が大揺れに揺れまくり、デュークはもう少しで水面に落っこちそうになった。
**********
「ここを通りぬけるんだね、シル?」
「うん!」
デュークは柔らかで巨大な臓器の表面の窪みに腕を差し込んだ。
両腕はズブリと粘膜の隙間に呑みこまれた。
そのまま進むと頭が、胸が順々に呑み込まれて全身がソフトで暖かな空間に吸い込まれた。
「よっと・・・」
柔らかな表面を傷つけぬように注意深く、肉の隙間をかきわけながらデュークは腹ばいになって進んだ。
「ん?」
両腕が空を切った。粘膜の間隙を通りぬけたようだ。
数秒後、デュークは開けた空間にいた。
「ここは?」
「ここが子宮、生まれる前の赤子が育つところでございます。
人間ならば十月十日つまり270日の間、胎児はこの世に生まれるべくここで待つのでございます。
生まれる時には先ほどご覧いただきました膣が産道となり、小さな命をこの世に送り出すのでございます。」
「シル、今は観光ガイドじゃないんだから・・・」
「ああっ?!つい本業の癖が!」
自分の体の中で大ボケかますところは余裕と言えるかもしれない。
「やれやれ、次はどうするんだい?」
「うーん、もう少しで到着なんだけど・・・一休みしましょ!少し冷えてきたし。」
「そうだね、慌てなくてもいいか。」
デュークは腰を下ろした。まるで真綿のようの地面?に体が半分沈み込む。
ドクン、ドクン、ドクン・・・
(ふーーーっ・・・世界一のクッションだなぁ。)
遠雷のように響き渡るシルフィナの鼓動を聞きながらデュークはくつろいだ。
グゥゥゥン!
「なんだ?」
体全体が持ち上げられるような感覚がした。
「シルフィナ?立ち上がったのかい?」
「あっ、驚かせちゃった?冷えてきたからお風呂に入りなおそうかと思って!」
彼女の一歩ごとにズウゥン、ズウゥンと空洞全体が揺れる。
やがて沈み込んでゆくような感覚。おそらく腰を下ろして湯につかったのであろう。
「不思議ね。」
「えっ?」
「今、私のお腹の中に貴方がいるなんて・・・奇妙な気分だわ。」
暖かな温泉につかりながら、シルフィナは自分の下腹部を愛しげに撫でた。
それから何気なしに、例の本のページをめくる。
あるページの逸話が目にとまった。
「ふうん、こんな人もいたんだ。」
「なんだい?」
「うん、今から200年くらい前のお話なんだけどね。
エルフの妻の体の中に住んでた人間の夫がいたんだって。」
「体の中って・・・今の俺みたいに?」
「そうよ。」
「どうしてそんなことに?」
シルフィナは次のページを見た。
「ええとね、沐浴中のエルフの娘の裸を覗いた罪で死刑になるところを、覗かれたエルフ娘との結婚を条件に助かったみたいね。」
「身につまされる話だな。」
実はデュークとシルフィナの結婚もこのパターンであった。
シルフィナが水浴びをしていた湖に道に迷ったデュークが迷い込んだのである。
「でも、彼が人間の町へ帰りたがって何度も脱走するので、怒った奥さんが自分の胎内に幽閉したらしいわ。奥さんが許可しなければトイレにも出して貰えなかったって。」
「・・・・・なんか、すごい。」
「子供ができると脱走しなくなったみたいだけど、そのままずっと奥さんの胎内で暮らしたみたいね。」
「うーーーん、確かに居心地はいいけど、一生とは・・・
それに奥さんだって体の中にいつも旦那さんがいたんじゃ大変だったろうしな。」
「確かにそうね。でも奥さんの気持ちが分かる気もするわ。」
「へえ?」
「貴方をここに閉じ込めていれば私を置いて何処かへ行ってしまうことはない。
他の素敵な人間の女に奪われることもない・・・」
「・・・えっ?」
いつになく真剣な妻の声にデュークはギクッとした。
「そう、分かるわ。愛しい人を永遠に守りたい気持ちが、ずっと一緒にいたい気持ちが、独占した気持ちが・・・」
「・・・・・シル?」
「えっ?あっ!分かってるわよ。今はそんなことはしないから!」
「・・・そうかい?俺は君の胎内なら・・・・・」
そのまま二人は黙ってしまった。
「さ、さあ!続きをやりましょ!」
「お?おう!頑張らなきゃな!」
二人は垣間見た互いの本音を誤魔化すように、大げさに立ち上がった!
**********
「終着の地」
**********
露天風呂の傍らには湯あたりした客を介抱するための小さな休憩室があった。
小さい。といっても山脈をくりぬいて造られた直径12リムル(1200m)の大人工洞窟である。
シルフィナは岩盤から削り出された簡易ベッドに腰を下ろした。
「次はどう進むんだい?」
デュークはまわりを見まわしたが、緩やかな粘膜壁の曲面が続くばかりで、次へ扉らしきものはない。
「上を見て。」
シルフィナの幻像が輝きながら小鳥のように上昇していく。
「上?」
シルフィナの幻像を目で追って見上げると、高い天井付近の左右に窪みが見えた。
「あれかい?」
「そうよ。」
「登っていくのかい?」
「いいえ、私が姿勢を変えて近くまで行けるようにするわ。」
ロマリアの首都だって隠せそうな広大な毛布を羽織ると、シルフィナはベッドにうつ伏せになって寝転んだ。
「おっ・・・?」
ツルツルツル・・・
滑らかな肉の斜面となった床をデュークは滑り降りていった。
「・・・よっと・・・」
シルフィナはさらに腰をヒョイっと上げた。
「おっとっと・・・これで到着か。」
デュークはさらに滑り降りて、ようやく平らな部分に着地した。
見上げるとさっきまで自分がいた『入り口』付近は斜め上に見えた。
先ほどまで天井だった部分が今度は床になったのだ。
視線を落として横を見た。
中心に向かって絞り込まれたような窪みがあった。
反対側にも同じ形の窪みがある。
「入り口は左右に二つあるけど・・・次はどっちだい?」
「今調べるわね。」
シルフィナはパラパラと本のページをめくった。
「『生命波動の反応を魔法で探り、反応が強い方へ進ませてください。』・・・
えーっとね・・・反応が強いのは・・・こっちね!」
同時に胎内の彼女の分身が一方の窪みを指し示す。
「こっちが最後の扉よ!」
「よぉーし!気合を入れて突入だ!」
「うん!がんばって・・・?!」
シルフィナの口調がなぜか乱れた。
それは次のページに書かれた『注意事項』を読んだためだった。
「どうしたんだい、シル?」
「うっ・・・ううん、何でもないの!さあ、気合入れていきましょ!」
「?」
妙な気がしたがデュークはとにかく進むことにした。
「んんっ、子宮に入る時よりも硬いかな・・・」
再び肉壁の僅かな隙間を懸命に這い進むデューク。
「ねえ、デューク。」
「な、なんだいこんな時に?」
「向こうへ着いたらさ、ちょっとビックリするかもしれないんだけど。」
「気にしなくていいよ。もう十分ビックリすることばかりさ。」
「・・・何があっても私のこと嫌いにならないでね・・・」
「変なことを言うね。君の体の中に何があっても、嫌いになったりするもんか。」
デュークは微笑み、シルフィナは嬉しさに頬を顔をほころばせた。
デュークは再び肉の横穴に突入した。
「ううっ、さっきよりも狭くてきつい・・」
身を捩じらせて懸命に粘膜の間を突き進む。
それもすぐに終わった。
「さあ、出たぞ!」
**********
「・・・ふうん?」
デュークは内部をぐるりと見まわした。
これまでに比べればやや狭いトンネルだった。
壁全体を藻か、触手のようなものが被い尽くし、ウネウネと蠢いている。
足元を暖かい水がユルユルと流れている。
「確かに少し変わってるけど驚くほどじゃないよ。」
「デューク・・・」
「こんなことくらいで嫌いなったりしないから、安心しろよ。」
「・・・何が起きてもなされるがままでいてちょうだい!」
「えっ?!」
「危険はないから!」
「何を言ってるんだい?」
一歩、群生する触手の川に踏み込んだ瞬間、変化は起きた。
「ん?」
デュークの足首に触手が一本巻きついた。
「なんだい・・・ワッ!!」
触手を外そうとした彼の腕に他の触手が数十本巻きついた!!
同時に洞窟内も一変した。
全ての触手が数倍の長さに伸び、一斉にデュークに向かってくる!
たちまちデュークの全身に触手が絡み付き引きずり倒した!
「クッ!?シル、なんとかしてくれ・・・」
「心配ないわ、貴方に危害を加えることはないから。」
ちょっと恥ずかしそうに言いきるシルフィナ。
デュークは目を丸くした。
「?!・・・シル!」
「これはね私たち妖精やエルフ特有の反応なの。」
「は・・・反応?」
「交配を望む異性が侵入してきたらね・・・交配の成功率を高めるために・・・
まず受精しやすい位置まで相手を強制的に送り込むようになってるの。」
「きょ、強制的ィ?!」
「次に出来るだけ大量に精を放出させる為に、あらゆる手段で交配相手を刺激するの。」
「あらゆる手段ってそんな・・・!!」
「後は私の体が自動的にやってくれるから案内はここまでね!」
「そんな・・・ちょ、ちょっとタンマ!」
「頑張ってね、ア・ナ・タ!バイバーイ!!」
「シ、シルぅ〜・・・・・」
シルフィナの(無責任な)声援に送られて、デューク君は触手の大河に押し流されて暗い深〜い闇の中に消えていった。
*********
「ん・・・着いたみたいね。」
毛布に包まってジッと待っていたシルフィナはつぶやいた。
両手をわき腹にあて、更に時を待つ。
体の中で何かが動き出している。最初はゆっくり小さく、だんだん大きくうねるように。
「熱い・・・」
ドクン、ドクン、ドクン!
内部が活性化したことにより、体温が上昇し鼓動が高鳴った。
熱くなった血が全身を駆け巡る。
「つ、次は・・・?」
震える指先で最後のページをめくる。
『貴方の恋人がゴールに到着すると性的興奮を促進する成分が貴方の胎内で分泌されます。
これにより胎内の恋人の性的興奮が高まり、受精率がアップするのです。
しかしながら、この成分は彼方自身にも強烈に作用します。
快楽の虜となって過激な行動に走り過ぎないよう頑張って耐えてネ!』
「ああ・・・」
自分の内側に愛する人の存在を感じながら彼女は耐えた。
「駄・・・目・・・」
だが・・・耐えきれず両手が勝手に動き出した。
「駄目・・・なのに・・・」
左手がもどかしげに這い進み、ふくよかな乳房を乱暴に掴み取った。
指先が乳首を挟み、こねくり回す。
「ごめん・・・デューク・・・もう、私・・・我慢できない。」
ためらいつつも右手が両足の間に滑り込む。
「奥まで・・・行っちゃったんだから・・・ここは・・・もう安全よね?」
グッ・・・グチュ・・・
音さえも粘り気と豊潤さを伝えてくる。
「フ・・・ウッ!」
広大な毛布の下から透明な液体が流れ出し、ベッドの上に広がった。
液体はベッドの縁から溢れて、糸を引く滝となって岩盤を流れ下る。
パサッ・・・
本が床に落ちた。最後のページにはこう記されていた。
『まあ、奥まで入っていれば少しくらい楽しんでも、(多分)だいじょーぶだから!
あとは二人で頑張るのよ!ファイト!!
貴方たちの大先輩 ロイフォード&ルウリアより』
「はぁ・・・・・・・・・・・・・あっ・・・」
シルフィナの体が一瞬、極限まで反り返り、直後に綿のように脱力した。
「ハァハァハァ・・・・・あっ・・・きた!」
体の奥深くで何か小さなものが弾けたような感覚。
今、デュークの精も放たれたのだ。
「あ・・・また・・・」
またしても同じ感覚。少し間を置いて弱まりつつも、もう一度。
「あ・・・」
最後に消え入りそうに・・・・・
「ひい、ふう、みい・・・4回か。頑張ってくれたのね、デューク。
・・・・・これなら子供、できたかも。」
それからまるで宝物のように自分のお腹を撫でまわした。
「・・・愛してるわ・・・」
**********
「迷宮よりの帰還」
**********
朝が来た。亜空間とも言うべき場所であるこの露天風呂にも日は昇る。
眩しい日差しがエルフ娘の顔に差した。
「ん・・・・・もう朝なの?」
目をこすりながら山脈並みに巨大な上半身を起こす。
「デューク、早く起きないと仕事に遅刻・・・」
そこまで言って思い出した。愛する夫(兼 従業員)はまだ自分の体の中だ。
「デューク?起きてる?」
「ん・・・ああ。今、起きた。」
『用件』が済んだ後、デュークは解放された。
卵巣付近から子宮内まで流し戻されたのである。
「うーーー・・・夕べは散々な目にあったなあ。」
デュークは暖かい湿った空気の中で大きく伸びをした。
流石に数千本の触手に愛撫されたのは効いた。
「私の体の中、そんなにひどかった?」
「あ、いやそんなにひどくも・・・少し気持ちよかったし・・・」
「少し・・・だけ?」
「え・・・その・・・すごくよかった・・・・・」
シルフィナは嬉しそうに自分のお腹を抱きしめるよう両手を腰にまわした。
「そのさ、シル・・・これで赤ちゃんできたかな?」
「分からないわ、成功率は40%くらいだそうだし。」
「できてなかったらさ、また・・・このやり方でやろうか?」
「そうね・・・うん!そうしましょ!!」
どうやら二人とも、この『やり方』気に入ってしまったようだ。
「あっ、そろそろ部屋にもどんなきゃ!一番風呂のお客さんとかちあっちゃう!」
シルフィナは毛布を跳ね除けると、簡易ベッドから降りようとした。
「オ、オイ!その前に俺を出してくれよ!」
胎内に閉じ込められたままのデュークが慌てて声を出す。
「そうだったわね。今、出してあげるわ。」
シルフィナはベッドに腰掛けて両足を少し開いた。
「さあ、赤ちゃんができたかどうかわかんないけど・・・
デューク、今は貴方を生んであげる!」
数十秒後、デューク君は大量の生暖かい液体の流出とともに、この世に生まれ出た。
**********
「あ、オユキ。」
「オユキさん、おはようございます。」
部屋に戻る途中の廊下で二人は宿の女将・オユキとすれ違った。
「おはようございます・・・・・夕べはどうだった?」
二人ともオユキの問いには答えなかった。
しかし真っ赤な顔は雄弁に昨夜の経過を物語っている。
オユキはにんまりとした。
「当旅館のサービスを気に入っていただけたようで幸いですわ。」
「からかわないでよ!ところでオユキ・・・相談なんだけど。」
するとオユキはシルフィナの耳元で囁いた。
「オキシ草のハーブ・ティーは本館1階土産物売り場にて注文を承っております。」
「・・・・・割引ある?」
「特別ということで・・・これだけ。」
「高ぁーい!3割引にしなさい!!」
「当方も商売ですので・・・1割3分。」
「そんなに買い手がある品じゃないでしょ!2割8分!」
「いえいえ、引く手あまたでして・・・1割5分。」
「親友じゃないの!2割7分!」
「商売はべつよ。・・・1割6分。」
白熱する値切り合戦をデューク君はぼんやりと見つめていた。
(女って・・・わかんないなぁ。)
−完−