まるで砂丘を眺めているかのようだった。
砂粒のようにきめ細やかな肌。
黄みがかった肌色の斜面。
刻まれたシワが、深い陰影をつけている。

その手前には、ぷっくりと膨れあがった山が5つ。
ひとつとて同じ山はなく、大小さまざま、高さも硬さも見るからに違う。
山間には隙間があったが、どこも行き止まり。
うす暗く、ほぼ垂直。まさに切り立った崖のごとくだ。

そんな風に「千春の足裏」を観察していると、遠くから本人の声がした。

「そろそろ位置についたかなー?」
「おーう」
「じゃあさっきも言ったとおり、
 掃除とマッサージ、よろしくねー」

……いや、よろしくされても。
目の前に鎮座する千春の両足を眺めながら、俺はどうするべきかと悩んだ。
片足だけでいいなんて指示を受けていない以上、両方やることになるんだろう。
一番の難点は、その両足間の移動だった。

橋なんかない以上、登って降りてまた登るか。
もしくは、千春のふくらはぎや太もも、尻を経由して移動するしかない。
後者は大変魅力的ではあるが、ぶっちゃけ面ど…………。

「……ちょっとー、なにやってるのー?」
「なんでもねぇーよー!」

焦れた千春が暴れだす気配を察知して、大声で返事する。
とにかくやるしかない、と自身を奮い立たせる。
ちなみに、さっきの答えは楽な前者にした。
本当に……本当に! 惜しいけど!!

とりあえず登らないと始まらない。
どの指から登るかはすぐに決まった。親指だ。
平たく皮も硬いから、ほかの指に比べて登りやすいだろうという安直発想だった。

その目論見は成功した。
ここが入口とばかりに、指の下に伸びる爪。
その裏に乗り、岩肌のような親指のシワに手や足をかけたら、すんなり登れた。

なんとか入口に立てた俺は、その先に続く足裏を見て、言葉を失った。
千春の足裏のあちこちに、埃や糸くずがついていて、想像以上に汚かったのだ。
ただ、自分と同じ縮小された男子生徒がこびりついていなかったことには、ほっとした。
死体処理はさすがに専門外だからな。
…………しっかし。

「さすがに、臭いな……」

千春に聞こえないようにボソッと呟いた。

いつも以上に臭気がすごい。
歩きづめで大量に掻いた汗、千春の体臭。
その汗を吸いとって張りついていた靴下。
さらに、それらが染みこんだ外靴や上履き。
すべてが混ざり合って、刺激臭を放っていた。

蒸れ具合はそうでもない。
時間が経っているからだろう。
けど、それゆえに、より熟成されたチーズのような臭いだった。

なのに――。

(なんで反応してるんだよ……)

俺のイチモツが、いつの間にか6割がた勃起していた。
こんな状況なのに興奮しているのか、と。
こんな状況だから興奮しているんだ、と。
そんなジレンマが胸の中に渦巻いていた。

(と、とりあえず上から順に)

ホコリは高い場所から、を鉄則に踵からはじめようと一歩踏み出す。
瞬間、俺はつまづいた。
表面は硬く中身は柔らかい、ぶにっ、とした感触。
しかも、汗で湿っていて、逃さんとばかりに吸いついてくる。
まるで彼女の好物であるシュークリームが、そのまま体の一部になっているようだった。

ゆっくり立ち上がった俺は両腕を広げ、なんとかバランスを取る。
綱渡りみたいな格好になりながら、その湿地帯をちびちびと歩いた。

「く、ふっ……ふふ……く、くすぐったい……!」

ぷるぷると地面が小刻みに揺れる。
動かしたい気持ちと我慢しなければという気持ち。
その間で葛藤しているのが手に取るようにわかった。
が、立ってるのがやっとで先に進めない。

「おい! このぐらい我慢してくれよ!」
「わかってる! わかってるけどぉ……くはっ」

どこか弱々しさすら感じる千春の声。
それだけで必死に堪えているのが伝わってくる。
……正直、くすぐってやろうかと思った。
でも、そんなことすればどうなるか簡単に予想できたから、俺はおとなしく登り続けた。

ただでさえ女子の平均的なサイズよりも大きな千春の足。
それを、やっとの思いで登りきる。
踵まで到達した俺が見たのは、まさしく絶景としか言いようがない景色だった。

汚い足裏と同じ人とは思えないくらい、綺麗な肌色をした脚。
その脚が一本の道にように伸びている。
手前には、ぷっくりと膨れ上がったふくらはぎ。
膝裏を超えた先には、むっちりとした太ももがある。
元バレーボール部員なだけあって、実に健康的な脚だ。

しかも、そのさらに先には、パンティに包まれた巨尻があった。
くすぐったさに堪えていたからか、ふるふると小さく波打っている。
さっきまで、俺を潰そうしていたもの。
だから憎いはずなのに、目に映して湧いてくるのは情欲だけだった。

けど、そうも言っていられない。
俺は落ちないように踵にしがみつきながら、千春に問うた。

「おーい、具体的な指示をくれー!」
「はぁ、はぁ……えー?
 綺麗になってればそれでいいよー」

アバウトすぎる。

「雑巾もないんだが」
「ちょっと、床掃除じゃないんだよ!?」
「そりゃそうだ(俺にとっては似たようなものだけど)」
「もぉ」

悪かったと口だけの謝罪をして、改めてどうしようかと悩んだ。
そのとき、千春から注文が飛んできた――。

「あ、でも汗は舐め取ってねー」
「…………おー」

率直に、舌が疲れそうだと思った。
振りかえって、眼下に広がる千春の汚い足裏を見る。
同時に、さっき以上に反った自身のイチモツが目に入った。
痛いまでではないが、確かに脈打ってる。
オーダーを受けた瞬間、嫌がるよりも先に興奮してしまったのだ。

すっかり慣れてしまった体に自己嫌悪しつつ、俺は作業に移る。
まずは、踵周辺からだった。

大きな塊や糸くずなどを丁寧に掴みとる。
それらをある程度集めたら、まとめてベッドに放り捨てた。
ごみ箱なんてないし、そもそも遠すぎる&届かないのだから、これぐらいはいいだろう。

目立ったごみを取り除いたら、今度は細やかなごみの除去だ。
塵みたいな埃は手で払い……というか、叩き落とした。

「なにー?」

しかし、千春は呼ばれたと勘違いしたようだ。

「なんでもない。お前の足についた埃を払い落としてるだけ」
「なーんだ。一瞬あてつけかなって思ったよ。
 『彼氏にこんなことさせんじゃねぇ!』的な」

…………まあ、ぶっちゃけそういう気持ちがまったくないかと言えば嘘になるが。

「そんなことするかよ」
「ふふっ、だよねー。むしろご褒美?」

その発言はスルーした。
認めたくはないが、否定しても信じてもらえないだろうと思ったのだ。

おとなしく作業に戻る。
はたき落とせなかったもの、もっと具体的に言えば。
シワや指紋? の間に入り込んだものは、爪で掻き出した。
千春が一段とくすぐったそうな声をあげたが、無視した、徹底的に。

そうして、まるで巨大娘専門の清掃業者みたいだと思いつつ。
表面のほとんどを綺麗にした俺は、四つん這いになった。
顔を近づけると、ツンっとした臭いが鼻をつく。

汗やら靴下、靴の臭いが凝縮された、千春の足の臭い。
普段はフローラルなシャンプーやボディソープの香りを漂わせてるくせに。
女の子らしい甘いフェロモンを匂い立たせてるのに。
あの千春から、こんなにもクサい臭いがするのが信じられない。

だけど、どんな現実逃避をしても、この臭さはやはり千春のもので。
それを認めると、否が応でも興奮してしまう。
臭いのに、嗅げば嗅ぐほど、据えた千春の臭いがもっと欲しくなっていた。

もうまともな男子には戻ってこられなくなりそうな、一抹の不安。
でもそんな踏みよどめてくれるその恐怖心も、男の本能の前には無意味だった。

千春の足裏に口づける。
女の子のものとは思えないほど固い肌に、舌を這わした。
途端に、熟成された汗の塩辛さが口に広がる。
衝撃的な風味に思わず顔をしかめた。

足臭に脳天を直接揺さぶられ、思考がふき飛ぶ。
けれど、口は澱むことなく、むしろそうすることが自然とばかりに、勝手に動いた。
舐め、吸い、なめ、スイ、舐め、すい、ナメ、吸い…………。
まるであからじめプログラムされていたかのように、千春の足裏を貪った。

「ふふっ、ちろちろって、くすぐったい♪」

楽しそうな千春の声がする。
きっとによによ笑っていることだろう。

「どう、彼女の足の味は?」

たぶん「美味しい」と言わせたいのだろう。
興奮する、と正直に答えそうになった手前、なんとも言いづらい。

そうこうしているうちに、先を取られた。

「まあ答えなくたってわかるけどね~♪
 舐めるのに夢中になってるし。それとは別に、なんか、硬いのあたってるし」

はっとした。
言われてみれば確かに、勃起したチンポを俺は千春の足裏にこすりつけていたのだ。
恥ずかしさと罪悪感から腰を浮かせる。しようとした。
けれど、やはり本能にはあらがい難かった。
それならむしろ、と開き直って、俺は作業を続行した。

「へぇ無視するんだ?
 それだけ私の足に興奮してるってことだからいいけどね、この変態チビ!」

タイミングよく、ソーセージから肉汁が飛び出した。
巨大な足裏の、まだ汗を舐め取れていないところを、白い汁が汚す。
荒い呼吸をくり返しながら、どうするべきか悩む。

ぶっちゃけ、自分の出した子種を舐め取るのは、なんか嫌だった。
でも、舐めることができる部分が……。
特に千春から指示は下りてきていないし、いまもない。
残念な気持ちをしまい込み、今後は気をつけようと俺は心に誓った。

かかと周辺を終えて、下へ。
今度は土踏まずの部分だった。
地面と接することがまずないからか、かかとよりも皮が柔らかい。
それでも他の部位よりは固めで、ぶにぶにしていた。

ちなみに千春の反応はかかと以上だった。
ぴくっぴくっと跳ねるときが増えた。
ツボやら神経が多く通っているせいだろう。
でも、笑い声はそうでもない。
慣れはじめたのだろうか?

「くっ、ふふ、ほんと、くすぐったい……!
 必死に舐めちゃって……、そんなに美味しいの? 私の足」
「……………………」

千春の問いに、俺は答えられなかった。
最初こそ、臭いや塩辛さで顔をしかめるほどだった。
が、風味に慣れてしまったいまでは、嫌悪感なんて微塵もない。
それ以上に、もっと舐め続けたい気持ちのほうが大きかった。
そういう意味では、美味しい、と言ってしまっていいのだろうか……?

葛藤しながらも舐め続ける俺。
それをどう解釈したのかわからないが、千春は面白そうに声をあげた。

「うふふっ、夢中にしゃぶりついちゃって、ホントかわいい♪
 そうだよねー。優香ちゃんとか私とか、自分よりも巨大な女の子たちに
 何度も踏み潰されそうになっては、そのたびに興奮してたチビだもんねー」

講義してやろうかと思った。
けど実際その通りだったので、俺はなにも言い返さず続ける。
…………代わりに股間が反応した。

「なら、いまは楽園なんじゃない?
 私の部屋だから他の娘に襲われる心配なんてないし。
 その私も寝転んでてうっかり踏み潰しちゃうこともないから、
 命の危険なんて、いまは考える必要ないもんね~?
 それに、普段は上履きのままとか靴下履いてとかだったけど、
 貴重な私の生足を、自分の好きなように堪能できるんだもんね~?」
(やめろ、女の子が生足なんて言うな。興奮するだろうが!)

そんなツッコミを入れたがったが、「でも事実でしょ?」とか言って
やり込められる可能性が高いことを瞬時に悟る。
俺はおとなしく土踏まずから拇指球へ移動した。
感触的には、かかとと土踏まずのちょうど中間くらい。
肉厚でまるでぷりっぷりの海老みたいな……。

「あっそうだ! じゃあこれからはさ、時間をつくって、
 デートのたびにこうして私の足の裏を舐めさせてあげようか!
 彼女の生足をじっくり味わえるし、そのほうが嬉しいでしょ?」

……せっかく、苦心して、意識をそらそうとしていたのに。
千春のその魅力的な提案に、思考が停止した。

「というか、嬉しくないわけないよねー。
 デートすれば、掃除の代わりに彼女の大きな足を好きにできるんだから。
 安全のまま、舐めたり抱きついたり寝転んだり――。
 足好きのヘンタイ彼氏にはたまらない、過ぎたご褒美じゃない?
 そんな彼氏を持った彼女の私はたいへ……あ、ちょ、待って!
 あはははははははっ!!」

デートして掃除すれば、その見返りに千春の足を好き放題?
確かにそれは超魅力的だし、実際したいとすら思った。
足が好きなのは本当だし、ご褒美なのもそのとおりでほとんど的を射ている。
でも、ただ単純に、図に乗りすぎてる気もした。

なので、オシオキ敢行(本当は図星なだけ)
足の中心線に沿った、拇指球のふもとあたり。
汚れが溜まりやすく、土踏まずと同じくらいくすぐったいはずの場所だ。
そこを高速に、入念に舐めてやる。

結果、返ってきた反応は想像以上。
俺がいる足は流石にやめてくれたが、もう片方の足をバタつかせるほど。
足の甲をベッドに叩きつける勢いなので、正直怖いくらいの音がしている。
だけど、ここでやめるわけにも行かず、俺はいじり続けた。

結局、千春が悲鳴を上げるまで、俺は千春の足を舐め回したのだった。

感想:あごが疲れた……。