俺が目指していたのは、妹・友美の部屋だ。
何度も通っているうちにすっかり迷わなくなった俺は、彼女の部屋の前に立っていた。
目の前にはいつも通り、固く閉じられたドア。
だけどドアと床の境目に、微妙な隙間があるのだ。
縮小化されたコビトであって、ギリギリ通れるような隙間だ。
中にはコビトがどこから侵入してくるかを考えて気づく女子もいるが、大半は気づいていないだろう。

…………そこ、気持ちはわかるがGみたいだとか言わない。

ともかく、俺は一目散に彼女の部屋に忍び込んだ。
――狭いトンネルを抜けた先は、女子の部屋でした。

室内に入った瞬間、どこか華やかな香りが鼻孔をくすぐる。
寮の廊下よりも濃密な、女子の匂い。
慣れているはずなのに、兄なのに、ひと嗅ぎ目はやっぱりドキッとする。

部屋の主はすぐに見つかった。
我が妹は机の前に座って、なにやらうんうん唸っている。
どうやら勉強中のようだ。珍しいこともあるものだ。
……いや、勉強はあまり好きじゃなかったはずだから、宿題中だな、そうに違いない。

(それにしても――)

遠くから友美を眺める。
斜め後ろ向きの、しかも座っているだけだが……潰れた大きなお尻と、椅子に支えられた太もも。
それらは、見てるだけで柔らかそうだと思わせてくれるほど、実にむっちりとしている。
机に手を伸ばしているので、女性らしい豊かな丸みを帯びた横乳が、脇の下から顔をのぞかせていた。

すっかり大人の女性らしくなった妹は、兄として感慨深い。
同時に、昔を知っている分、どこか寂しさを感じてしまうのは仕方ないだろう。

「うーんっ……」

そんな友美は苦戦しているのか、仕切りに唸ったり首をひねったりしている。
まじまじと、惚けたように見つめていた俺は頭を振った。
ドアから離れて妹へと近づいていく。
振り返った勢いで潰されないような距離を意識しつつ、大声で呼びかけた。

「おーい! 友美ー!」
「ん? あっ、お兄ちゃん!」

俺に気づいた友美が、ぱぁっと顔を輝かせて立ち上がる。
勢いづけたせいか、キャスター付きの椅子がものすごい勢いで下がった。
…………よかったー、真後ろから声をかけなくて。最悪、滑車に轢き殺されてたぞ。

兄の胸中なんていざ知らず、友美がこちらへ体を向ける。
ぶぉんっ! と妹の足が空を切った。

「う、ぉっ……」

それで発生した風に煽られながらも、俺は目の前に立つ妹の全貌に息を呑んだ。
……呑まざるを得なかった。

シミひとつないほど綺麗で、生命力あふれる巨大な両足。
その先にある肉づきのいい太ももが、ショートパンツへ吸い込まれていく。
細い腰つきも、色香を感じるほど女らしくなっている。
ダンス部に入っているからか、遠目からでも引き締まっているように見えた。

そんな下半身とは対象的に、上半身は柔らかそうだった。
服のすそからお腹が覗いている。
友美も女子だからダイエットを気にしているみたいだったが、正直いらないと思う。
太りすぎてはいないし、ぷにぷにとして男としては触り心地良さそうだ。

(多分、ぷにぷにの時点で女子としては許しがたいレベルだろうから、言わないが……)

そして何よりもその上にある、爆乳としても差し支えないほど豊満な胸!
Tシャツを押しあげるどころか、飛び出さんばかりの妹乳がぶるんっと震える。
おっぱいで影ができる光景は幾度となく見てきたはずだが、友美のは一線を画していた。
これまでのは薄暗かったのに対し、真っ暗なのだ。

(千春や優香よりも大きいんじゃないか……?)

こんなこと、当人たちには言えない。言ったら殺される、間違いなく……!

男として思わず生唾飲んでしまう景色の先には、遠いのに大きな妹の顔。
双丘に口元が隠れてしまっている。まるで双子山の太陽。
でも、細められた目はまっすぐ足元の俺に向けられている。
ちゃんと見えているらしい、ついでになぜかにやにやと笑っているようだ。

「えへへ~、相変わらずちっちゃいね、お兄ちゃん♪」
「うっさいわ!」

売り言葉に買い言葉を返すと、友美の表情が歪んだ。
彼女のトレードマークともいえるツインテールの毛先が揺れる。

「あー、そんなこと言っていいのかなー?」

ズッッシイイィィインンっっっっっ!!!

友美が一歩、踏み出した。そう、たった一歩。
なのに数十、数百メートルの距離をいとも容易く超えて、近づいてきたのだ。

すぐ目の前に妹の巨大な足が振り下ろされる。
さっきの廊下の女子と比べて、とてつもない爆音が響く。
それと同時に、床が震度5レベルで揺れた。
突然のことに驚き、俺は尻餅をつく。

腰をさすっている暇もなく、影がさした。
見上げると、頭上には友美の、大きな足裏が――。

「あははっ、やっぱり! これでわかったよね?
 いまのお兄ちゃんは妹の足にも勝てないくらいちっちゃいんだよー」

そう言って、友美はふり上げた足を上下に動かした。
ホコリや髪の毛などで汚れた足裏が近づいては遠のき、近づいては遠のきをくり返す。

「ほーらほらっ! 友美の足に簡単に隠れちゃうし、
 その気になればいつでも踏み潰せるんだよー?」

興が乗ってきたのか、すごい楽しそうな声がする。
実際に俺を潰したことがあるなんて、気づいても知らされてもいない様子だ。

対照的に、俺は唇をかたく引き結んでいた。
本人にそのつもりがなくても、恐怖は覚える。
だけど、俺はそれ以上に……興奮していた。
濃密な汗と妹はいえ女の香りが、下降するたび漂ってくるから。

(――って、アホか俺は! 相手は妹だぞ! いくらなんでも……)

理性が必死にそう訴えるが、本能もとい煩悩は正直だ。
ズボンの中にあるイチモツは痛いほど勃起している。

しかし、始まりと同じく、終わりも唐突に訪れた。
頭上でひたすらに上下していた足が引っ込められたのだ。
着地とともに、またすごい轟音が鳴る。
その主はといえば、鼻をふんっと鳴らすほど非常に満足げな顔をしていた。

生殺しのお預けを食らった俺は少し……いやかなり、残念だった。
もうちょっとでもいいから続けてほしいと、そう思ってしまった。

「これで、自分の身の丈を思い知ったよね、おチビちゃん♪」

そういって、今度はしゃがみ込んできた。
豊満過ぎる胸も巨大な顔も、一気にドアップになる。
足どころか、全身が迫ってくるような錯覚だった。

ショートパンツだから結構際どい格好になっている。
折りたたまれたふくらはぎと太ももが互いに押し合い、潰れている。
その奥には、より大きさと柔らかさを主張するように垂れ下がったおっぱいが。
……お兄ちゃん、ちょっと妹が無防備すぎて心配です。

兄のそんな心情を知らずに……。
濃い影を落とした友美は、にまにまと優越感に浸った笑みで手を伸ばしてきた。
俺を容易く包み込める手のひらが、捕縛ネットのように落ちてくる。

そして、柔らかくも太い指に摘まれた。
友美の顔の前まで持ち上げられる。
視界一面、妹の無邪気な顔。

「えへへー、ほんとちっちゃいねー」

笑って、ぷらぷらと俺を揺らしたり。
ぐりんぐりんとした瞳で、じろじろと俺を観察したり。
流石に力加減はしてくれていたが、それでも無遠慮に好き勝手だった。

兄だから、という気安さもあるのだろう。
じゃなければ、勘違いする男子が続出するに違いない。

それとは別に、重大なことがある。
俺の勃起がいまだに治まってないのだ。
男として恥ずかしい、より、兄としてのプライドが刺激される。
絶対にバレるわけにはいかない。

そう思って身をよじろうにも、万が一落ちてしまってはマズい。
けど、意図して腰を引いたら、あからさますぎて逆に伝えるようなもの。
…………あれ、もしかしなくても詰んでる?

兄の葛藤なんぞ知らずに、友美の行為はエスカレートしていく。
口をすぼめて、ふーっと息を吹きかけてきたり。
もう空いている手の指で俺をつんつくと突いてきたり。
艶かしく生々しい吐息やぷにぷにの指が、愚息を鎮めるどころかより一層煽ってくる。

なんか、さっきよりも笑みが深まってる気がするし……バレてるかも。

「そういや、ちょうどよかったってなにがだ!?」

追及を避けるために、俺はわざとらしく大声をあげて話題を変えた。

「あ、そうだった! すっかり忘れてた!」

ノってくれた、否、本気で忘れてたらしい。
というか、いまや巨大娘のお前は大声を出すなと言いたい……。
体格差のせいで肺活量も違うから、近距離で叫ばれて耳がキーンとする。

聴力を奪っているとは露とも思ってないのか。
兄が顔をしかめているのに気づかないまま、友美は立ち上がった。
机へと戻り、まずはつまみ上げた俺を机の上に置き、下がりすぎた椅子を取りに行った。

降ろされた俺は辺りを見渡して、ああっと納得した。
放り出され、無残に転がったシャーペン。
すっかり角が取れて丸くなった消しゴムと、散乱する消しカス。
そして――空白だらけの答案用紙。

全然進んでいないのは目に見えてわかった。
加えて「ちょうどよかった」の意味も。

「よいしょっと」

遠ざかっていた妹の足音が再び大きくなった。
振り向けば、戻ってきた友美がちょうど椅子に腰かけたところだった。
地平線が、友美の上半身で埋まる。
大きく突き出した爆乳が、正面にあった。

左右に伸びるシャツを含めて思わず見惚れていると、ぱんっと破裂音が響いた。
友美が両手を合わせた音だ。

「お願い! 宿題教えて!」
「そんなこったろうと思った……」

拝み倒す巨大妹の姿に、俺は嘆息した。
そうじゃないかと予見していたこともある。
が、拒否したところで逃げられるわけでもない。
仮に逃げても、怒りを買って潰されるかもしれない。
要は、最初から拒否権なんて俺には存在していないのである。

「どこがわからないんだ?」

俺の答えに、友美はぱぁっと表情を輝かせた。

「ありがとう、お兄ちゃん! えっとね~、んしょっと」

ずぅぅぅんっと、すぐ真後ろで落下音が響いた。
机がわずかに揺れ、たたらを踏む。
何事かと振り返ってみると、その正体はすぐにわかった。
友美が椅子を引いて、巨大な爆胸を机に乗せたからだ。

柔らかそうな胸が机の上にずっしりと乗っている。
Tシャツから飛び出てきそうなほど膨らんだ、はち切れんばかりの乳房。
その大きさはまさしく山の如しだ。
友美が身じろぎする度に、ぷるぷると揺れる。
なめらかな曲線が艶めかしく映った。

魅惑的な光景に思わず目が釘付けになる。
が、友美は気にした素振りすら見せない。
机の上に乗せるのが当たり前になっているのだろう。
ただ、兄とはいえ男が目の前にいるんだから、少しは気にしてほしい……。

そんな俺の視線に気づいたのか、友美が声を上げた。

「あ、ごめんね、お兄ちゃん。びっくりさせちゃったよね。
友美のこれ、重たくてつい乗せちゃうんだ~」

おもむろに、友美が自身の右胸の下に手を入れた。
そして、今の俺ではとても歯が立ちそうにない乳山をいとも容易くすくい上げてみせる。
巨大な妹の手を以てしても手に余るほどの乳肉が、重力に従って垂れ下がる。
まるでこね終わったパン生地のようだった。

すると、友美が持ち上げていた手をぱっと離した。
支えを失い、豊かな乳房が急降下してくる。
そしてパン生地の空気を抜くかのように力強く、右乳が机を叩いた。
ダァンっと轟音が鳴り響き、地面を震撼させる。

(もしあそこに縮小された人間がいたら、
今のたった1回で何人が潰されたんだろう……?)

俺は目の前にある無自覚殺戮兵器を呆然と見上げながら、そんなことを考える。
机の上に戻った乳房は、しばらくぷるぷるぽよぽよと震えていた。
目に映るおっぱいはどこか嬉しそうで、もし本当に小人がいたら無邪気にすり潰してるんじゃないかとすら思えた。

「それでね、お兄ちゃん。わからない問題なんだけどぉ」

兵器をぶら下げていることに気づいていないのか。
当の妹は兄の恐怖心など露知らず、呑気に宿題に取り掛かっていた。

ガンッガンッと音が響き、地面が小刻みに揺れる。
ふり返ると、答案用紙の一部にシャーペンが突き刺さるように当てられていた。
俺はため息をひとつ残し、兵器の前から離れてその地点へと向かった。

俺の何十倍もある、友美の手。
等身大であれば柔らかく小さな手なんだろうが、このサイズだと肉壁でしかない。
その手に握られているシャーペンは、それ以上に高い。
まるで、巨人がピサの斜塔を掴んでいるような光景だった。

わからない問題の位置にたどり着くと、友美がシャーペンを退かす。
影がなくなったことに感謝しつつ、俺は問題文を読み始めた。

すると、後ろからくすくすと転がる笑い声がした。

「えへへ、文字に沿って歩かないと
 問題が読めないお兄ちゃん……かわいい」

やかましいわ、という言葉は飲み込み、俺はため息混じりに言った。

「はいはい。勉強するぞー。
 この問題は……」

直接答えは言わないよう意識して、解説する。
幸い、難しい問題ではなかった。
友美は初歩中の初歩でつまづいてたわけじゃない。
が、この程度もわからないなんて……と妹の頭がちょっと心配になるレベル。

解説を進めていくと、友美は「ああ」と納得の声を上げた。

「そっか、私わかったかも!」

なんとか理解してもらえたようでホッと息をつく。
……けれど次の瞬間、肝が冷えた。

友美が早速空欄を埋めようとシャーペンを伸ばしてきたのだ。
迫りくる芯の先端をみて、巨大な針に襲われるような恐怖を覚えた。
その尖った炭素の塊が、近くに落ちてくる。

しかしながら、友美にとっての「書く」作業はまだ終わっていない。
シャーペンの先が、答案用紙を滑り始める。
いや、滑るなんて生易しいものではない。
芯と紙、どちらが削られているのかわからない、ガリガリという音が響き渡る。
併せて、微弱な振動が地面を揺らす。

ガンッガリガリ、ガンッガリガリ、と近づいては遠のくを繰り返すシャーペン。
それを眺めながら、肝っ玉が縮み上がるような恐怖を抱いていた。

「あ、間違えちゃった」

そんな俺の心などいざ知らず、友美が消しゴムと取ろうとペンを離す。
無造作に放り出されたプラスチックが、大きな音を立てて転がる。
幸い、俺の方には倒れてこなかったものの、背筋が冷える思いだった。

だが休む間もなく、今度は角の取れた巨大な消しゴムが答案用紙を蹂躙する。
ゴシゴシと一箇所を擦るたび、地面が大きく揺れる。
そのせいで、俺は尻餅をついた。

「ふぅ、よしっ」

消し終わったのか、消しカスを手で払う友美。
巨大な指が地面を這い、小さなゴミを払い飛ばしていく光景にぞっとする。
すると、さっきのシャーペンの要領で、友美が持っていた消しゴムを手放した。

妹にとっては本当に何気ない、いつもの調子だったのだろう。
だが、消しゴムはシャーペンのように止まらなかった。
バウンドを繰り返し、複雑な軌道で俺に襲いかかってきたのだ。

「うおおっ!?」

あらぬ方向から飛んできたそれを、俺は体を張って受け止める。
……が、いくら消しゴムとはいえ、今の俺にとっては巨大なブロックに等しい。
結果、呆気なくも俺は文房具如きにのしかかられた。

「あ、ごめんね! 大丈夫? お兄ちゃん」

すぐさま、友美が俺の上に乗っていた消しゴムを退けてくれる。
……死ぬかと思った、とは、あまりにも情けなくて口には出せなかった。
そんな、心臓バクバク状態の俺を睥睨して、友美が言った。

「消しゴムにも勝てないなんて、ホントひ弱だよね」
「ぐっ!」

言い返したかったが、まったくもってその通りだった。
悔しさの言葉を呑み込み、「気をつけてくれ」と懇願するしか出来なかった。

「んー、でも面倒くさいし……」
「おいこら」
「そうだ! いいこと思いついた!」

何を、と口にする暇もなく、俺は摘み上げられた。
それほどではない高さを空中遊泳。
クレーンゲームの商品みたいな気持ちだった。

そして降ろされたのは――友美のおっぱいの上。
降り立った瞬間、確かに地面はあった。
なのに、触れた途端にその感触は淡く消えた。
まるで一晩寝かしたシチューの膜みたいな感触。
その柔らかさだけを記憶に残し、妹の巨大な乳房は俺の足を呑み込んでいく。

膝に届かないまで沈み込むと、今度は押し返してきた。
バランスを崩して俺は前に手をつく。
同じく手のひらが乳肉に埋まる。
が、それほど深くは沈み込まなかった。
二本足で立ったときとは違い、全体重が乗っていなかったからだろう。

結果として俺は、手首と足首が埋まる四つん這いの体勢をとっていた。
落ち着いて膝をつけると、頭上から声が降ってきた。

「えへへ、そこからなら消しゴムとかに襲われる心配もないし、
お兄ちゃんも安心でしょ?」

妹の胸とはいえ、女の子の胸という思春期男子特有の戸惑いはあったものの。
友美の言う通りだったので、俺は素直にうなずいた。
高さもあるので、問題文も見やすい。
おまけに触ってるだけで幸せになる心地よさもあり、良いことずくめだった。

「次の問題をお願いね、お兄ちゃん!」
「……わかってると思うが、答えは教えないぞ?」
「ええっ!? いいじゃん~。
 妹とはいえ女の子のおっぱいに乗せてあげたんだからぁ」
「はぁ……わかった。じゃあ次の問題だけな」
「えへへ、やったぁ!」



――続く