(概要)
縮小バレンタインの1ヵ月後。
お返しのホワイトチョコレートを用意した僕は、ホワイトチョコレートごと、彼女の口の中に…

7000文字位

20分の1位

1.バレンタインのお返し?

うちの学校の校舎裏、何故か一本だけ生えている大きな桜の木。
その前で告白したカップルは、末永く幸せになれる…と言った伝説は、その桜には特に無い。
というわけで、誰も見向きもしない桜の木は、学校の放課後に、ちょっと待ち合わせしたりするのに都合が良かったりする。
今日は3日14日。
僕は同級生の神名さんを、何の伝説も無い普通の桜の木の前に誘っていた。
「何か、考える事はみんな同じみたいですよ?」
「う、うん…」
神名さんは、かけている眼鏡に手をかけて周りを見回しながら、くすくすと笑った。
周囲には、ぱっと見ただけで、学生服姿の3組程のカップルが居て、ちょっとだけ気まずい。
多分、僕達と同じような事を考えていたんだろう。
「ま、まあ、僕たちは僕たちという事で…」
「そうですね。周りの皆さんも、お互い見ないふりみたいですし」
女の子にプレゼントを渡す姿を見られるのは少し恥ずかしい気もするけれど、周りにいるカップルも同じなので、まあ何でもいいやという気もする。
今日は3月14日。ホワイトデー。
バレンタインのプレゼントを返す日だ。
僕は、その辺で買ったホワイトチョコレートをカバンから取り出して、神名さんに手渡す。
「はい、よくできました」
神名さんは満足そうに言うと、子供の頭でもなでるように、僕の頭をなでた。
彼女の身長は160センチ程で、僕より少し低いが、そんな事は気にしていないように、僕の頭をなでる。
「まあ、お返しはしないとね…」
バレンタインの出来事を思い出しながら、僕は苦笑いする。
神名さんは、確かに僕にバレンタインにチョコレートを持ってきてくれた。持ってきてくれて…
「そうですね。
 バレンタインの時には、私、恥ずかしい事をされちゃいましたもんね。
 ちゃんと、お返ししませんとね?」
…恥ずかし事をわれちゃいました?
ん? あれ? 何か僕の記憶と違うような?
僕はバレンタインの時の出来事を思い出す。
神名さんは僕のバイト先…縮小カフェにやってきた。
縮小カフェは、縮小された店員が女の子におもてなしをするお店。
神名さんは、そんなお店の常連でもあった。
ただ…やっぱり、僕の記憶とは違う。
「恥ずかしい事をされたって?」
「ええ、私、お尻や足にチョコレートを塗られて舐め回されちゃったんですよ。
 これって、恥ずかしい事ですよね?」
「ん、そ、それは、何か違うような」
僕が言うと、神名さんは、
「あれ? どう違うんですか?」
からかうように、少し顔を近づけて僕の顔を見上げてくる。
神名さんは、こういう悪い笑顔が良く似合う。
顔を近づけられて、僕はちょっとドキドキするが、股間に何かが触れるのを感じた。
神名さんの手が、僕の大事な所を下から鷲づかみにして、軽く握ってきたのだ。
「大きくなっちゃってますよ。
 悪い子ですね?」
確かに、バレンタインの事を思い出して、僕の股間の男の子は少し元気になっていた。
「何が違うのか、私に教えてくれますか?」
僕の股間の感触を確認するかのように軽く揉みながら、神名さんは言った。
そうか、神名さんは僕に言わせたいんだ…
僕は彼女の思いのままに振舞う事にした。
「小さくされて…踏みつけられて…足とお尻に塗ったチョコレートを舐めさせられちゃった」
口に出して言うのは恥ずかしい。神名さんは、それを言わせたいのだ。
…ほんと、よく、色々な意地悪を思いつくな、神名さん。
「はい、よく言えました。
 恥ずかしい事されちゃったの、あなたの方でしたね?」
神名さんは、僕の股間を撫でながら、ほめてくれた。
からかわれている、遊ばれている事はよくわかる。
だめだ…色々、我慢の限界だ。
「たまには、ほんとにお返しするぞ?」
僕は目の前にある神名さんの顔にささやくように言うと、そのまま抱きつく。
背中に手を回して、荒っぽく。
「うわ…これは予想外ですよ?」
神名さんの少しあわてる声。
こういう神名さんも悪くない。可愛い。
あ…このまま、本当に押し倒したりしてみたいかも?
僕は、欲望に身を任せそうになるが…
「もう…ここ、学校の中ですよ?」
ささやくような神名さんの声。
それから、僕の股間を握っている彼女の手に力が籠った。
僕の大事な玉が2つ、彼女の手の間で容赦なく締め上げられたので、僕は動きを止めた。
「ご、ごめん…」
「からかったのは私ですから、別に良いですよ?
 でも…学校の中は、まあ…流石にね?」
彼女は特に怒った様子も無く微笑んでいたが、僕の股間を握る力は緩めてくれない。
確かに、いくら人があんまり居ないと言っても、学校の中はだめだな。周りには他のカップルも、居ないわけじゃないし…
彼女のお仕置きは、当然と言えば当然でもある。
僕が彼女の身体から離れて無抵抗になってからも、神名さんは僕の股間をしばらく握り続けた。
「どうせ、お店行くんですから…ね?」
神名さんは、少し苦しそうにしている僕に優しく言った。
まあ、確かに彼女の言う通り。
この後は2人で縮小カフェに行く予定で、彼女は予約を入れていた。
神名さんの、お相手の縮小店員は、もちろん僕である。
「縮小化の技術が、もっと一般化すると良いんですけどね?
 そうしたら、お店に行かなくても簡単に遊べるのに」
「なんか、犯罪とか増えちゃいそうだね」
「そうですね。謎の失踪事件とか増えちゃったりして?
 …まあ、多分、その第一号はあなたになると思いますけど」
神名さんが小声で何か言っていたが、僕は聞こえなかった事にした。
とても、冗談には聞こえなかった。
でも、それも良いかもと少し思ってしまう自分を、何より忘れたい。

2.ちょっと怒ってる?

「はい、ここなら誰も居ないんで襲ってきても良いですよ。
 私の事、襲ってみたかったんでしょ?」
神名さんは、僕に顔を近づけて、にっこり微笑んだ。
ただ、その顔がとても大きかった。
ここは縮小カフェの個室。
いつものように…いや、いつもより、さらに縮小されて、僕は店員として彼女と向き合っている。
今の僕は20分の1サイズの小人。
カフェのテーブルに載せられていても、彼女の顔は大分頭上に…あったのだが、彼女はテーブルに手をついて、見下ろすように僕に顔を近づけてきた。
いつもは10分の1サイズに縮小される事が多いから、その半分。
「ごめんなさい…」
僕は、にっこり微笑む巨大な顔に謝った。
彼女の眼鏡の下の目は笑ってる…けど、それは、どうやって目の前の小人を弄んで楽しもうかと考えて笑っているんだ。
やっぱり、神名さんは、少し怒っているんだと思った。
「いえいえ、謝る必要は無いですよ?
 ほら、私を押し倒してみたかったんでしょ?
 どうぞ遠慮なく。私、抵抗しませんから」
やれるもんなら、どうぞ?
と、ばかりに神名さんは首を傾げた。
20分の1に縮小された僕の身体は、細くてきれいな彼女の指よりもさらに細いし、彼女の人差し指よりも背が低い。
彼女に抱きついて押し倒すどころか、指を押し倒せるかもかなり怪しい。
縮小カフェでのアルバイトには慣れているつもりだったけど、これ位縮小されると、やっぱり少し怖い。
神名さんは、にっこり微笑んだまま右手を上げると、笑顔のまま、平手でテーブルを叩いた。
バチン!
彼女の平手は、僕のすぐ側に叩きつけられる。
多分、神名さんは軽くテーブルを叩いただけなんだろうけど、それは僕を虫みたいに潰すのに十分な迫力だった。
「あ、ごめんなさい。
 テーブルに虫が居たと思ったら、あなたでしたね」
腰が抜けて動けない僕を見て、神名さんは少し満足したようにも見える。
「虫じゃなくて人間の男の子だったら、少しはがんばってみましょうね?」
言いながら、神名さんは、微笑んだまま、再び手のひらを上げる。
だめだ、まだ怒ってるみたいだ。
もちろん、本当に僕を虫みたいに潰してしまうつもりは無いんだろうけど、手元が狂う可能性だって0じゃない。
「わ、わかった!
 がんばる!」
何をがんばれば良いか、よくわからないが僕は言った。
「はい、良く出来ました。
 じゃあ、これで許してあげましょうかね?」
神名さんは、今度こそ満足そうに言うと、手のひらをテーブルに叩きつける代わりに、テーブルの上に頬杖をついてあごを乗せた。
「指一本位なら、押し倒せますか?」
言いながら、反対の人差し指を僕に近づけてきた。
「で、出来るかな…」
10分の1サイズの時でも、少し力を入れられると彼女の指一本に力では敵わなかった。
このサイズでは、例え無抵抗な指一本でも、どうにか出来るか怪しい。
とはいえ、僕が全力でがんばらないと、神名さんは許してくれないだろう。
僕に突き出された指は、僕の身体よりも大きい。
女の子を抱くというより、柱か何かを運ぶような気分だ。
それでも、僕は突き出された人指し指に、上から覆いかぶさるようにして腕を回し、押し倒そうとしてみた。
…だめだ、動かない。
柔らかい柱の上にでも乗っているような気分だ。
「ふむふむ、20分の1サイズになると、そんなもんなんですね。
 思ったよりも、さらに小さくて弱いですよ?」
僕を指の上に乗せた神名さんは、僕の事を観察して調べているようだ。
「重さも全然感じませんね。
 …なるほど、やっぱり10分の1よりも小さくなると、遊ぶのも危険が大きくなりますね」
神名さんは僕を乗せた指を、上下左右に軽く振った。
僕は体重をかけるようにして、上から彼女の指を押さえているつもりだったけど、全く彼女は意に介していないようで、弄ぶように僕を乗せた指を振っている。
「神名さん、そろそろ許してくれよ。
 僕が小さくて虫みたいなのは、よくわかったでしょ?」
「あはは、そうですね。
 まあ、実はさっき、大事な所を強めににぎにぎさせてもらったんで、別にもう怒ってなかったんですよ?」
む、怒ったふりだったのか。
神名さんは、僕を指から降ろしてくれたが、怒ってないとわかると、僕の方が少し腹が立ってきた。
「…やっぱり、ホワイトデーのお返し、返してもらおうかな」
「あら、返して欲しいんですか?
 別に良いですよ?」
神名さんは、にっこり微笑んだ。
…あ、これは、また悪い事考えてる。
と、神名さんは先ほど学校で僕があげたホワイトチョコレートの包みを取り出すと、無造作に僕の上に置こうとする。
なるほど、そう来たか。
小さなホワイトチョコレートの箱も、僕にとっては身体よりも大きな箱。
押しつぶされるほどじゃないけど、支えるには重い大きさだった。
「降参、降参。
 返してなんて言わないから、もう許して…」
必死に頑張れば、ホワイトチョコレートの箱の下から抜け出す事は出来るかもしれない。
でも、それを神名さんが許してくれるとは思えなかったから、僕は素直に降参した。
「うふふ、自分が小さくて虫みたいだってわかってるのに、逆らおうとする姿勢は嫌いじゃないですよ?」
言いながら、神名さんはホワイトチョコレートの箱をどかしてくれた。
「それじゃ、そろそろ、開けてみても良いですか?」
神名さんはホワイトチョコレートの箱を示しながら、微笑んだ。
これは、普通に微笑んでいる。ホワイトチョコレートの中身を楽しみにしている笑顔だと思った。

3.あなたごと、いただきます

「なるほど、ほんとに、その辺のコンビニで買ったやつですね、これ?」
「う、うん、学校に来る途中に…」
あれ? また怒らせちゃったかな?
そういえば、神名さんは、一応、自分で加工したチョコレートをバレンタインの時に持ってきてくれた。
僕が用意したのは、文字通り、学校に来る途中で適当に買ったもの。
倍返しとは言わないまでも、ある程度等価に近いお返しにするべきだったのでは?
コンビニで一番安いやつを買ったのは、流石に良くなかったんじゃないかと思った。
「後悔してますか? 適当に安物買ったりして?」
神名さんが、にやにやと笑っている。
「わかっちゃう?」
「ええ、私が怒ってないか、怯えてるあなたの様子がかわいいです。
 かわいいから…OKです」
どうやら、神名さんは、怒っていないようだ。
「では、お茶もありますし、いただいても良いですよね?」
そういえば、ここは縮小カフェ。持ち込みの飲食も許可されている。
「そら、もちろん。どーぞ、どーぞ」
「良いんですね、それでは遠慮なく」
…ん?
神名さんは、ホワイトチョコレートの箱を開けているが、何だかちょっと違和感が?
まあ、楽しそうにしてるから良いか。
神名さんが楽しそうにしているのは悪くない。
「ホワイトチョコレート、元はチョコレートと同じカカオ豆なんですけど、白いのはちょっと不思議ですね?」
「へー、同じなんだ」
「ホワイトチョコレートにはカカオバターって言いう、カカオ豆から抽出した油が入ってるらしいです。
 白いのは、その色らしいですよ?」
「そーなのかー」
などと話しながら、神名さんは包装を開けて、包み紙の上に小さなホワイトチョコレートを幾つか並べた。
小さな…とは言っても、20分の1サイズの僕にとっては、かなりの大きさだ。
「今のあなたから見ると、岩みたいな大きさですね?」
「うん、大きいな」
僕の腰位の高さがある巨大な白い塊。ホワイトチョコレートを軽く叩いてみたが、岩のように固いと思った。
「さて、それじゃあ、いただきますね?」
神名さんは、そう言って、包み紙の上のホワイトチョコレート…を摘ままず、代わりに僕に指を伸ばした。
僕の身体はあっという間に摘み上げられ、彼女の口ほどまで運ばれる。
「うわ、ちょっと…」
急に摘み上げられ、僕は悲鳴を上げるが、
「『いただいて良い』って言いましたよね?
 私に食べられたいなんて、あなたは、相変わらずの変態さんですね」
神名さんは、勝ち誇ったように微笑むだけだった。
「さすがに、ほんとに飲み込まないから大丈夫ですよ?
 でも、今のあなたの大きさなら、お菓子と一緒に口の中で転がすのに丁度良いなーって」
神名さんは、わざとらしく舌なめずりをして、赤く濡れた舌を僕に見せつけてきた。
それから、手際よく僕の服を全て、はぎ取ってしまう。
確かに、小指サイズ位の僕を飲み込もうと思ったら、本気で『食べようとする』必要があるだろう。
誤って飲み込むには、僕の身体は少し大きいなとは思った。
「はあ…お客様の、お望みのままに」
僕を摘み上げている巨人の同級生の女の子に、僕はため息をついた。
「では、遠慮なく?」
神名さんは、小首を傾げながら、僕を摘まむ右手の下に左手を広げて、少し上品な感じで口を開けた。
…いや、上品な感じと言っても、やろうとしている事は小人を食べようとしている下品極まりない事なんだけども。
彼女の巨大な舌と、真っ暗な口内を見せつけられると、捕食されようとしている事を感じて、全身に鳥肌が立つ。
…うわ、やっぱり怖い。
僕を転がすのに充分と思われる巨大な口元に運ばれると、いくら可愛い神名さんの口でも怖いと思った。
恐怖と、変に暴れたら逆に危ないという思いで、僕は石になったように動かず、身を任せた。
神名さんの舌が僕の胸元に触れる。
僕が、いつもより小さくされたせいだろう。彼女の舌の圧力と匂い、唾液に押しつぶされるように感じた。
神名さんは僕を摘み上げたまま、何度か舌先で僕の胸元から顔の辺りまで、なめ上げてきた。
優しく、優しく…
それでも、いつもより小さくされた僕にとっては、舌に押しつぶされるような感覚だった。
徐々に僕の身体は、舐め回されながら口の中へと押し込まれていく。
やがて、彼女の指が僕の身体を離した時には、僕の身体は彼女の口の中に捕らえられていた。
女の子の口の中は、少し息苦しい。
暗くてよくわからないが、二度、三度と、舌で口の中を左右に転がされた。
恐ろしい事に、柔らかい女の子の舌…神名さんの舌の感触自体は心地良かった。
全身を激しく舐め回されているようで、気持ち良くなってしまう。
それでも、暗くて息苦しい事は怖かった。油断すると、彼女の唾液が鼻や口から無限に流れ込んで来ようとする。
…と、不意に明るくなった。神名さんが口を開けたみたいだ。
出してくれるのかな?
嬉しいけど、少し残念な気もする。
そんな彼女の口内が、ホワイトチョコレートの甘い匂いに包まれた。
どうやら彼女が口を開けたのは、ホワイトチョコレートを口に入れるためだったようだ。
岩のような巨大な白い塊が、歯の間から口内に入ってくるのを感じた。
神名さんは、器用にチョコレートと僕を前歯の上の方に運んだので、背中の辺りに彼女の巨大な前歯を感じる。
それから、彼女は食べ始めた。
彼女の巨大な歯がチョコレートと違うのは、硬さまで岩のようだという所だ。
上からも、巨大な前歯が落ちてくる。
う、うわ、噛み砕かれる。
岩に挟まれるようなものだと思った。
神名さんは遊んでいるだけ…と思いつつ、唾液まみれの僕の身体は震えていた。
巨大な白い岩…彼女の歯は、やはり、器用に僕を避けるように、ホワイトチョコレートを噛んだ。
岩のようだと感じた巨大なホワイトチョコレートも、本当に岩のように固い巨人の歯の前では、単なるホワイトチョコレートだった。
噛み砕かれたホワイトチョコレートが、彼女の唾液と一緒になって口の中に広がり、僕も唾液の海に飲み込まれていく。
チョコレートを噛み砕くために激しく動く彼女の歯に巻き込まれると、時々僕の口も開いてしまい、そのたびに唾液が口の中に入ってきて苦しい。
だめだ…気が遠くなってきた。
酸欠気味だった所に唾液を飲まされ、苦しくなってきた。
ああ…食べられるって、こんな気持ちなのかな…
意識が遠くなっていくのがわかる。
気づかないうちに…僕は神名さんに食べられてしまったのかもしれない…な…
神名さんの口に捕らえられた僕は、彼女の舌に弄ばれ続けた。
時間にしては、ほんの数分のはずなのに、それは、とても長く感じられた。
「もし、お望みでしたら、本当に食べてあげても良いですよ?」
やがて、僕を口から出して見下ろす神名さんは満足そうに言ったけど、返事をする元気が僕には無かった…

(完)