(概要)
ザクロちゃんとざくろさんは、地球人Aの家に入り浸っている地球外生物。
地球人Sを縮小したりして、毎日楽しんでいます。
宇宙怪獣が現れた時は、戦ったりもします。

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10分の1位、1000倍位
ハエたたき


1.お前もハエたたきにしてやろうか?

何だろう?
慣れっていうのいうのは怖いのかもしれないな、と、ちょっと思った。
見上げると、同じ目をした巨大な瞳が2組…二人の巨大な女の子が、僕を見下ろしていた。
ここは、僕の部屋。あんまり広くない1DKのアパートだ。
彼女たちは慣れた手際で僕を縮小してテーブルの上に載せている。なんだか、縮小して僕を玩具にするのが当然の事のようになっている。
今日は、玄関を開けた瞬間に待ち伏せしていたザクロちゃんに縮小銃で撃たれた。服も一緒に縮小されたので、裸じゃないのが、まだマシな位だ。
…やっぱり、慣れって怖いな。
そんな2人の、巨大ながらも可愛らしい顔でも、全く同じ顔が2つ並んでいると、ちょっと気味が悪い…と思ったのも最初の頃だけで、やっぱり慣れてしまった。
一応、頭が悪そうに見える方がザクロちゃんで、頭が良さそうに見える方がざくろさんと、名前がある。
ザクロちゃんは自分の姿を持たない不定形の生き物。地球のネットでアイドル風の何かをしているざくろさんに憧れて、自分の姿をざくろさんと同じにしている。何故か僕の家に住み着いている。何でだっけ?
ざくろさんは、宇宙警備隊的な組織に所属していた…いや、今も所属しているかも…宇宙人的な人。なんか、本来は身長10km位らしい。何故か地球でアイドルっぽい事をやりたくて、今は2日に1回位、僕の家に入り浸っている。
2人共、気分で人間を縮小出来るような力をもった地球外生命体…と考えると、ちょっと怖くなってきた。
改めて見上げれば、頭悪そうな顔と、おとなしそうな顔の巨人が2人、僕を見下ろしている。
そうだ、これが正常な感情だ。
1人で地球を踏みつぶして回れるような宇宙人が2人も身近に居るんだぞ? 恐怖を感じなくちゃ。
僕が正気を取り戻そうとしながら、2人を見上げていると…
「な、なんだ。
 そんなに見つめないでくれないか?
 私でも照れるぞ」
ザクロちゃんが、何故か照れている。
…だめだな。やっぱり怖くない。
「はぁ。
 それより、今日はどうしたんですか? ザクロちゃん?
 何か人形とか置いてありますけど」
ザクロちゃんと僕の様子を見ながら、他人のふりをして紅茶を飲み始めながら、ざくろさんが言った。優雅なものだ。ここは僕の家なんだけども。
確かに、ざくろさんが言うように、テーブルには女の子のフィギュアが1体、不自然に置いてある。
ごく普通の可愛い系の女の子のフィギュアだが、僕は買ってない。ザクロちゃんが買ったんだろうけど、なんだこれ?
「うん。
 地球人Aは、そのフィギュアを生きた女の子と思って襲ってくれないか?」
地球人A…と、ざくろちゃんは僕の事を呼ぶ。僕の本名、何だっけかな…
というか、ざくろちゃんが何をしたがっているのか、いつもながらさっぱりわからない。
「襲う??」
僕は尋ねる。
「殴ったり、蹴ったり暴行するって事だよ」
「いや、それはわかるけど」
「性行為とか始められると、流石に引くから、それは無しでお願いしたいな」
「いや、まあ…」
テーブルに置かれたフィギュア15センチ程で、僕にしてみたら等身大のフィギュアだ。性行為とか言われもなー・・
何かわからないけど、とりあえず言う通りにしてみるか。
「お、おらー、おとなしくしてないと、やっちまうぞー(棒)」
モヒカン頭の悪役にでもなったつもりで、僕はフィギュアの女の子の髪をつかみ、棒読みで、すごんでみた。
…人形相手にアホみたいだけど、ちょっと楽しいな。
次はどうしようかと悩んでいると、頭上からザクロちゃんの怒ったような声が聞こえた。
「『かっこぼう』とか、口に出すのは、やめなさい!」
同時に頭上が暗くなる気配を感じて顔を上げると、ザクロちゃんが手のひらを開いて、僕に叩きつけようとしているのが見えた。
巨大なザクロちゃんの姿…巨人が、思いっきり振りかぶって、虫でも叩き潰そうとするかのような姿は絶望的だった。
彼女の巨大な手のひらは恐ろしい速さで、僕の頭上に叩きつけらる。
…これは、怖い。シャレにならない。
久しぶりに、僕はザクロちゃんを怖いと思った。
彼女の大きさと怒声、叩きつけられる手のひらにひるんだ僕は、何も出来ず、ハエたたきに叩き潰されるハエのようだ。
バチン!
ザクロちゃんの手のひらは、容赦なくテーブルに叩きつけられた。
僕にとっては、地面…テーブルが、ザクロちゃんのハエたたきの一撃で震えていた。
「ザクロちゃん…あのロボットアニメ、見たんだろ?」
僕は、かろうじて声を絞り出した。
大きく広げられた彼女の指は、器用に僕を間に挟むように叩きつけられていた。
「うん。
 悪い奴を叩き潰すの、かっこ良かったね。
 地球の軍事資料は、最高だよ」
ザクロちゃんは、満足そうだった。
放っておくと、ザクロちゃんは一日中、地球の動画サイトを見漁っている。
この前放送してた、ロボットアニメの最終回を気に入ったようだ。
…などと冷静に分析する余裕は、実際のところ、僕には無い。
まだ、ザクロちゃんの可愛らしいけど巨大な指は僕を挟むように両側にそびえている。
頭上から高速で迫ってきた巨大な手のひらの残影と、叩きつけられてテーブルを揺らした彼女の力に、腰が抜けたままだ。
「ねーねー、もう一回やっていいかい?」
ザクロちゃんは目を輝かせて言うが…
「やだ」
僕は首を振った。
「ん? なんだい? 怖いのかい?」
ザクロちゃんは、にやにやしている。
「うん。怖い。無理」
「え、えーと、それはガチのやつ?」
「ガチのやつ」
「そ、そっか。ご、ごめんね」
僕が本気でおびえている事に気づくと、ザクロちゃんはあわてだした。ザクロちゃんは、素でこんな感じなのがずるい…
どうしよう、間が悪い。何を言って良いかわからない。
「そ、そうですね。
 私も少し引いてます…」
ザクロちゃんの奇行に、まだ慣れていないざくろさんも、引いているようだ。ナイス助け舟
「私も宇宙警備隊的な組織に居た頃は、都市ごとハエたたきとかやってましたけど、微生物一匹にそんなにしなくてもって…」
ざくろさんは、小声で何か言っている。
忘れてた。ざくろさんも、ザクロちゃんと違う方向に頭おかしいんだった。
本来の姿は身長10キロ以上になる、宇宙警備隊的な組織の隊員の考えることはよくわからない。
「まあ、でも、お2人に話ししたい事もありますんで、茶番はこれ位にして、ちょっと良いですか?」
よくわからないが、ざくろさんは、何やら話があるようだ。
どうして良いかわからない雰囲気になっていたので助かった。

2.未来永劫、お前の家は私の物だ

「結論から言うと、宇宙警備隊的な組織に、がんばってザクロちゃんの事を話しておきました。
 協力者って事で、ザクロちゃん、堂々と地球に滞在して大丈夫です」
「ほ、ほんとですか、ありがとうございます。ほんと、ありがとうございます」
ザクロちゃんは、ざくろさんの話を聞くと、秒で床に土下座した。
「傷も治ったし、そろそろ地球から出てかないと本気で怒られるかなーって思ってたんですよー」
「そうですね。『微生物保護法』的に、無許可での地球滞在は、よろしくないですからね。
 特にデカイゼ人さんは、それだけで危険な存在として目をつけられてますし…」
宇宙人同士で、何やら納得しあっているようだ。
確かに、ごく自然に居座っているので忘れそうになるけど、ザクロちゃんは本来はアルバイトで一時的に地球に立ち寄っただけだ。
とある事件で重傷を負ったので、そのまま僕の家に居たのだが、その傷も、もう治った。。
「この前も、ちょっと話しましたけど、デカイゼ人が地球に居るって事で、結構騒ぎになってましたんで、私、ちょっと、がんばりました」
ざくろさんは、がんばった事を強調している。
あんまり積極的に話すのは得意そうではない彼女なので、実際にがんばってくれたんだろうな。
でも…そっか。ザクロちゃん、このまま地球に居るのか。
ざくろさんが、その辺りの話をつけといてくれるような事は前に言ってたけど、実際に決まると、ちょっと、安心してしまう。
安心して、ザクロちゃんの方を見ると、彼女が口を開いた。
「あ、あのー、地球人Aさん?
 というわけで、私、引き続き、こちらに居ても良いでございますでしょうか?」
ん? 何言ってんだ? この子。
「家主を縮小して、ハエたたきで叩き潰そうとするような子はちょっと…」
面白いな、ちょっとからかおう。
「な、何言ってるんだい、そんな事するわけないじゃないですか。
 足でもなんでも、おなめしますから、よろしくお願いしますよ。えへへ…」
ザクロちゃんは言いながら、僕を摘まみ上げると、目を閉じて舌を伸ばしてきた。
僕の胴体を指で摘まんで逃げられないようにして、まずは、ゆっくりと顔に舌先を押し付けてくる。
顔全体が彼女の柔らかい舌に包まれ、生温かい彼女の唾液の匂いが鼻をついた。
悔しいが…気持ち良い。
さっきまでハエたたきの玩具にされていた事も許せてしまう位に。
それから、ザクロちゃんは僕をしっかりと指で押さえつけて、全身に舌を這わせた。
文字通り、頭のてっぺんから、つま先まで。
う…これは、からかうつもりが、からかわれてるのか?
勃起している僕の股間は、きっと服越しにも明らかな事だろう。
「ほらー、こんなに元気になるまで、ご奉仕とかしてあげてるんですよ? 地球人A様?
 こんな良い子は、おうちに置いておいた方が、お得でございますですよ?」
ザクロちゃんは勃起している僕の股間を見下ろして、勝ち誇ったように、にやにやしている。
ぐ、ぐぅ…からかわれているのは、こっちで間違いない。
ザクロちゃんにスイッチが入ると、力では当然かなわない。人形サイズに縮小されては、なおさらだ。
無駄な抵抗はやめて、快楽に身を任せる事にするか。
「じゃあ、今日は、シンプルに舌でやってしまうかな。
 どうだい? ざくろさんも見ている前で、巨大な舌で責められる気分は?」
う、それは、恥ずかしい…
だが、彼女の巨大な指から逃げる力も精神力も、僕には無かった。
服を舌ではぎ取られ、僕の股間の男の子も舌で責められ…
ざくろさんは、そんな僕の姿を興味津々の様子で見ていた。
なすすべも無く、僕は、ざくろさんの目の前で射精させられてしまう。
満足気に、僕が放出したアレを舐めとるザクロちゃんに、恥じらいとかは無いようだ。
「まあ、こんなザクロちゃんが、地球で一人でやっていけるとは思えませんし、このまま置いてやって頂けませんか?
 あんまり悪ふざけをするようだったら、私が言ってあげますんで」
堂々とエッチな事を始めた僕たち(多分、主にザクロちゃん)に呆れるように、ざくろさんが言った。
まあ、ザクロちゃんに出てけとも言えないよな…
射精後も、引き続きザクロちゃんの舌で弄ばれながら、僕は嬉しいようなあきらめたような、不思議な気分だった。
「えーと…すいません、お楽しみ中の所、申し訳ないんですけども、実はもう一つ話がありまして…」
お、どうやら、ざくろさんの話は続きがあるようだ。それならばと言うわけで、僕はザクロちゃんの舌から解放される。
「実は、こちらの話が、急ぎの話なんです。
 以前にザクロちゃん、元の大きさに戻って怪獣退治をした姿を動画に撮られた事、覚えてますよね?」
僕とザクロちゃんが会うきっかけになった事件だ。もちろん、僕もザクロちゃんも覚えている。
「私の姿って、ザクロちゃんと同じじゃないですか?
 だから、私、疑われちゃってるみたいなんですよ、地球警備隊的な組織の人たちに」
「むむ…私の擬態、完璧ですもんね」
ザクロちゃんは納得している。自分に自信があるのか無いのか、よくわからない子だ。
地球警備隊的な組織っていうのは、警察とか公安とかそんな感じかな?
そりゃまあ、怪獣を踏み潰した全長1000メートル位の女の子と、同じ姿をした子が顔出しで普通に動画配信してたら目立つよな…
「ですので、今度怪獣が出たら、また退治して欲しいんです。
 私は目立つように、別の場所に居ますから」
なるほど、アリバイ作りに巨力しろと。
「ええ、そんなの、私に任せちゃってください、ざくろさん!」
ザクロちゃんは、文字通りに即答した。
まあ、次に怪獣が出る事なんてあるのかわからないけど、それで良いんじゃないかな。
僕は納得しかけたが…
『実は、こちらの話が、急ぎの話なんです』
ざくろさんが、先ほど言っていた言葉を思いだし、違和感を覚えた。
それを彼女に聞こうとしたが…
僕たち三人のスマホが、同時に、けたたましい音を上げた。
辺りの家でも、スマホの鳴る音が幾つか聞こえる。
『緊急速報です! 空から巨大な飛来物です! 〇〇市周辺の方は速やかに避難してください!』
機械音声も、やはり、いくつも同時に聞こえた。
「あら、地球防衛隊的な組織も、微生物にしては優秀なようですね。
 というわけで、ザクロちゃん、お願いしますね」
ざくろさんは、にっこり微笑んだ。
彼女は知っていたのだ。宇宙からの怪獣が地球に近づいていた事を…
その辺りの事も聞きたいが、どうやら時間の猶予はないらしい。
というわけで、ザクロちゃんは久しぶりに怪獣退治をする事になった。
「ええ、もう、私に全部任せちゃってください!
 地球人Aと、ざくろさんを困らせる虫は叩き潰しちゃいますから!」
そう言って、ザクロちゃんはもう一度、僕がいる辺りをハエたたきの要領で勢い良く叩いた。
怖いから、それ、やめて欲しい…
ともあれ…
僕たち3人の怪獣退治は、唐突に始まった。



3.お前の家、もう無いから

(以下有料版へ)