処刑したりしなかったり その5

(概要)
ヴィルの街の盗賊ギルドに所属する盗賊のヴォレは、ある日ギルドの幹部の女、ルウに呼び出しを受けます。
最近がんばっているので、幹部にしてもらえるのかと思っていたヴォレでしたが、『裏切り者』と呼ばれ、縮小されて弄ばれます。
処刑人の女盗賊達に、踏みにじられ、雑巾代わりにされます。
めでたし、めでたし



8000文字位

20分の1位

鞭の部分(6000文字位)まで無料で見れます。


1.飴と鞭

ヴィルの街の盗賊ギルドに所属する盗賊のヴォレ。
彼が居るのは、ヴィルの街の酒場。
この酒場も、盗賊ギルドが裏で運営している酒場だ。酒場の中を見渡せば、盗賊やら冒険者やらが昼間から集まっている。
…さて、どうしたもんだかなぁ。
ヴォレは、少し悩みながら、自分が所属する盗賊ギルドの事を考えていた。
この街…ヴィルの街の商人達は、街の防犯組合に入ると安心である。
防犯組合に入って毎月会費を納めて防犯のサポートを受ければ、盗賊たちに店を襲われる心配が無くなる。
逆に、防犯組合の誘いを断った商人は盗賊たちに襲われてしまう。
…何の事は無い、よくある防犯組合…のふりをした、盗賊ギルドの手口である。
ギルドに上納金を納めなければ、ギルド所属の盗賊たちに好き放題に狙われるというわけだ。
…まあ、でも、ここのギルドは基本的には他の街より良心的だよな。
ヴィルの街の盗賊ギルドの構成員であるヴォレは考える。
まず、この街の盗賊ギルドの良い所。
ギルドの上納金は他の街に比べれば安めだ。さらに、金さえ払えば、結構真面目に盗賊対策をしてくれる。よほど腕の良い盗賊か、防犯の罠の内容を知っていない限り、盗賊ギルドが守る商人たちの家に盗みに入るのは困難だろう(もちろん、盗賊ギルドの人間は、自分たちが構築した防犯システムについてよく知っている)。
逆に、この街の盗賊ギルドの怖い所。
この街では盗賊ギルドを裏切った者は、無惨な死体となって街の外れに捨てられる。
ある男は、何か圧倒的に重い物の下敷きになったか、巨人にでも踏み潰されたかのように、全身を潰された状態で見つかった。
別の男は手や足、首が引きちぎられた状態で見つかった。それこそ巨人に人形遊びの玩具にされたかのようだった。
明らかに盗賊ギルドの仕業なのだが、街の外れで誰にも見られず、どうやったらそんな風に始末する事が出来るのかがわからない。
…ま、まあ、俺はギルドを裏切るような事をしてないし、大丈夫だよな。
ヴォレは、そんな風に色々考えながら、一杯だけ安いエール酒を飲んだ。
今日、彼は盗賊ギルドの幹部に呼び出しを受けていた。
呼び出しの理由はわからない。
ただ、悪い呼び出しの心当たりがない事だけは確かだった。
飴をもらえるのか、鞭で叩かれるのか…
多分大丈夫だろうと思いつつ、ヴォレは町はずれでたまに見つかる、惨殺死体の事が頭から離れなかった。


2.鞭

酒場の2階は冒険者その他のための宿屋になっている。家が無い冒険者や、酒場の酔っ払いなど、誰かしらが部屋を占拠している。
また、酒場の3階は盗賊ギルドの事務所兼、仕事場になっている。
酒場の3階には盗賊ギルドの構成員が常駐していて、盗賊の技を磨いていたり、地味な事務作業をしているいわけだ。
ヴォレが呼ばれたのは3階。盗賊ギルドの事務所がある部屋である。
彼を呼んだのは幹部は、ルウ。
見た目は不自然な位に普通の街娘に見える娘だが、盗賊ギルドの女幹部だ。
幹部として何をしているか、ギルド内でもあまり知られていない彼女だが、それは彼女が気配を消す術に長けているという事でもある。
だから、ヴォレはルウの事を怖いと思っていたし、誰もはっきりとは言わないが、『ルウは怖い』という事はギルドの中でも認識されていた。
そんな彼女に呼び出されたヴォレは、緊張しながら、酒場の3階、盗賊ギルドの事務所をノックする。
コンコン。
木扉を叩く乾いた音が響く。
「やる気あるの? 足音が階段を登る時から聞こえてるわよ」
聞き覚えのある、少し不機嫌そうな女の声が聞こえた。幹部のルウだろう。
これは、入った良いという合図でもある。
「あ、いえ、忍び足で事務所に来るのもどうかと思ったんで…」
ヴォレは言い訳をしながら部屋に入ると、部屋の中を見回す。
机が3つとベットが1つある位の質素な部屋だ。
ベットの方を見ると、見覚えのある女が2人、腰かけてこっちを見ている。
この2人にも見覚えがある。2人とも盗賊ギルドの構成員で、ルインとバラリノだ。
バラリノは、ギルドが運営している酒場で踊り子をやっている。ルインの方は、街の中で仕事をするより、冒険者として街の外に行く事が多い印象だ。
2人は何故かルウに気に入られているようで、3人で一緒に酒場に居るのは、よく見かけるが…
「よう、ヴォレ。お前、何で呼ばれたかわかってるか?」
ルインが微笑みながら声をかけてきた。彼女は、おとなしそうな見た目に似合わず、妙に口が悪い。
「何で呼ばれたんでしょうねぇ?」
バラリノの方は、何を考えているかわからない笑みを浮かべているが、彼女の場合はあんまり頭が良くないので、よくわからなく見えるだけのように思える。
『何で呼ばれた?』
それは、ヴォレが聞きたい位だった。
部屋には、ルウの他に、この2人の盗賊ギルドの娘が居る。
少し部屋が暗いのでわかりにくいが、よく見ると3人共セクシーな感じの衣装を着ている。
ルウは普段着に近い服だが、胸元がよく見える感じで布の面積が少ない服を着ている。ルインはビキニの水着のような露出度が高い衣装を着ているし、バラリノ至っては紐のような物で大事な所を隠しているだけの、ピンク色の踊り子の服をそのまま着ている。
3人共、夜の酒場で男を挑発しようとでもしているような姿に見えた。
「な、なんか良いお知らせだったりしますか?」
ヴォレは、恐る恐る言った。
ここは盗賊ギルドの事務所である。
可愛らしい格好をしている、構成員の娘達の姿は逆に不気味でもあった。
「ふーん、何か心当たりでもあるの?」
ルウは、少し微笑みながら首を傾げた。
「さ、最近がんばってるし、幹部にしてくれたりとか…」
ヴォレはルウの顔色を伺うように言った。
なんだ、これは?
やっぱり、何かおかしい。
上手く言えないが、ヴォレは何か恐ろしい予感がした。
ヴォレがルウの様子を伺っていると、彼女は何も言わずに机の脇にある酒瓶のような瓶から、飲み物を器に注いだ。
それから、微笑んだまま、
「飲みなさい」
と、小さく言った。
得体の知れない飲み物を出されて、ヴォレは少し戸惑ったが、
「飲みなさい」
ルウは、もう一度、魔法か何かで繰り返したかのように繰り返した。
ルインとバラリノも、笑みを浮かべたまま、こちらを見ている。
2人の可愛らしい笑みが、何故か邪悪なものにも見えてしまう。
…飲まないと殺される。
ヴォレは、3人の女盗賊に見つめられ、ほとんど直感的な恐怖を感じて、ルウに言われた通りに謎の液体を飲んだ。
それから…
ヴォレは急速に気が遠くなっていく。
やはり…普通の飲み物では無かったのか。にやにやと邪悪な笑みを浮かべる盗賊ギルドの娘達の顔を見ながら、ヴォレは意識を失った。
どれ程、時間が流れたかヴォレにはわからない。
…どーん!
硬くて巨大な物が落ちてきたような轟音と…
「いつまで寝てるの?
 さっさと起きなさい」
冷たい女の声…ルウの声で、ヴォレは目を覚ました。
背中が冷たい。どうやら床に寝ていたらしい。それに、自分が服を着ていない事にも気づいた。ルウ達に脱がされたのだろうか?
だが、そんな事はどうでも良い。
目の前には、異様な壁のような巨大な物がそびえ立っていた。
大き過ぎて、すぐにわからなかったが、それは女盗賊達が履く革のブーツの形をしていた。ルウの靴である。
ただ、その大きさが、足どころか、人間が丸ごとは入れる位に大きかった。
先程の轟音は、この靴が床を踏みしめた音なのだ。
こんな靴の下敷きになったら、文字通りに虫のように踏み潰されてしまうだろう。
巨大な女靴を目の前にして、ヴォレが虫にでもなったような錯覚を感じていると…
「あはは、虫みたいになっちゃいましたねぇ。
 ヴォレさんは、もう、おしまいでーす」
バラリノの陽気な声が頭上から聞こえた。
声に気づいたヴォレが周囲を見ると、巨大な靴は一足だけでは無かった。
革のブーツがもう一足、踊り子用のサンダルがもう一足。
それらの巨大な靴を履いている巨大な女の足が頭上に伸びている事に、ヴォレは気が付いた。
バラリノの姿をした女巨人の顔が、無邪気に笑いながら見下ろしていた。
ルウの姿をした巨人は冷たく立っていたし、ルインの姿をした巨人は腰に手を当てて、覗き込むように中腰になって見下ろしていた。
うわ…すごい。
どうやら、自分は10センチ程の小人サイズに縮小されてしまったようだ。
女巨人達の大きさは、指で簡単に自分を摘み上げられる位の大きさに見えた。
その姿に圧倒されながらも、ヴォレは彼女達の姿を美しいと思い、興奮してしまった。彼の股間は自然に元気になっている。
「虫みたいじゃないわ。虫よ。
 どう? 身の程がわかった?」
ルウの姿をした巨人が言うと、目の前にあった巨大な靴…彼女の靴がヴォレの方に向かって動いた。
楕円形の丸みを帯びた巨大な塊が、目の前に近づく。
「うぁ!」
巨大な女の靴は容赦なくヴォレの身体を弾き飛ばし、ヴォレは悲鳴を上げた。
自分の身体より巨大な女の靴が間近に迫るのは初めてだし、虫のように吹き飛ばされるのも、もちろんヴォレは初めてだ。
「あはは、よく飛ぶなー!」
「ゴミみたいですねぇ」
ヴォレが上を見上げると、ルインとバラリノが無邪気な笑顔を浮かべて見下ろしているのが見えた。
全身の痛みに耐えながら、ヴォレが身を起こすと、その頭上にバラリノが屈みこんできた。
「あはは、私もやっちゃえー」
彼女は言いながら、ひとさし指を立てて、指先をヴォレの頭上に近づけてきた。
相変わらず、バラリノは無邪気な笑顔を浮かべている。
踊り子の細い指はヴォレの頭に触れ、そのまま押し倒そうとした。
ヴォレは自分の胴回り程ある、彼女の指を掴むが、身体の大きさが違いすぎた。
すぐに押し倒され、頭を指先で硬い床に押し付けられた。
…潰される!
頭の骨が、彼女の指の圧力で歪んでいるのがわかる。
ヴォレは逃れようともがくが、踊り子の巨大な指の前に、抵抗は全く無駄だった。
「おー、そろそろ潰れるかな?」
「こらこら、いきなり潰しちゃだめよ?」
ルインとルウが、軽く笑っているような声が聞こえた。
…3人は、俺を殺す気なんだ!
ヴォレは、自分がこのまま、虫のように盗賊ギルドの娘達に殺される事を理解した。
ルウ達3人は、酒場でおしゃべりするような感覚で、遊び半分に小人…自分を指先で潰そうとしている。
慣れているのだ。小人を弄んで殺す事に。
3人共、男を縮小して弄びながら殺す事に、罪悪感も異常な高揚感も無いのだ。
「た、助けて下さい…幹部になりたいなんて、調子に乗ってすいません…」
バラリノの指の下で、ヴォレは命乞いをするしかなかった。
そんな風に、今にも遊び半分にヴォレの頭を潰してしまいそうなバラリノの指だったが、ルウはそれを手で制した。
頭に鈍い痛みが残っている。もう少し力を籠められたら、本当に指と床の間でヴォレの頭は潰されてしまっただろう。
見上げると、盗賊の娘達は冷たい笑顔で見下ろしていた。
ヴォレの様子を特には憐れむ様子も見せず、ルウが冷たい声で口を開く。
「まあ、お前みたいなゴミが幹部になりたいなんて調子に乗ってるわよね。
 …でもね、そんな問題じゃないのよ。心当たり、あるでしょ?」
ルウの目は、恐ろしく冷たかった。
それは裏切り者を処刑しようとしている、盗賊ギルドの女幹部の目だった。
心当たり…
巨大な女盗賊の瞳に見下ろされなが、ヴォレは考えた。
無い。全く無い。
盗賊ギルドを裏切ったような覚えは、ヴォレには全く無かった。
…知らないうちに、はめられたのか?
自分を縮小して弄ぶ盗賊ギルドの娘達を見上げて、ヴォレは恐怖に震える。
「ル、ルウ、俺、ほんとに何の心当たりも無いんです、お願いだから助けて下さい!」
ヴォレは言うが、ルウたち3人が彼を見る目は変わらなかった。
「ヴォレ、この街の外れに、たまに死体が捨てられてるのは知ってるでしょ?
 あれ、どうやってるかわかる?」
ルウが淡々と言った。
…え? どういう事だ?
「思ったより簡単なんだよなー。小人を引きちぎったり、すり潰したりするのって…」
ルインが低い声で言ったので、ヴォレは理解した。理解して、全身に寒気を感じた。
「はーい、ここで問題でぇす。
 私達はどうして、秘密をヴォレに話したと思いますかぁ?」
バラリノは、相変わらず無邪気に笑っている。
ヴォレは理解した。秘密を話すのは相手が仲間か、これから殺す相手だからだ。
この3人は、自分を生かして帰す気は無い。だから、秘密…裏切り者を縮小して始末しているという事…を自分に話したのだ。
恐怖に震えるヴォレは何も言えなかった。
だが、ルウはヴォレの言葉に興味も無いように、彼を見下ろしたまま、威圧するように椅子に腰かけなおして足を組んだ。
それから、足を組んだままルウはもう片方の足をを上げた。
…どん!
ルウはかかとを立てて、ヴォレの頭上から叩きつけた。
ヴォレは必死で避ける。直後に彼が居た場所に、彼女の巨大な革のブーツがかかと落としのように落ちてきた。
ルウは、本気で踏み潰す気だった…
目の前にある、自分の身体よりも遥かに大きな女の靴の裏を見上げて、ヴォレは恐怖に震えた。
「綺麗にしなさい」
ルウの冷たい、淡々とした声が頭上が響く。
綺麗に? 靴の裏を綺麗にしろという事だろうか? でも、こんな巨大な靴をどうやって?
ヴォレが戸惑っていると、
「綺麗にしなさい」
ルウは、もういちど冷たく、淡々と言った。
ゴツン。
彼女の靴が少しだけ浮いて、イライラするようにかかとで床を叩いた。
言う事を聞かないと踏み潰される。そう感じたヴォレは、怯える虫のように歩き出そうとするが…
「あーあ、使えねー虫けらだなー。
 仕方ねーな。俺が手伝ってやるよ」
ルインが可愛らしい声に似合わない残酷な言葉を吐きながら、ヴォレの身体を荒っぽく摘まみ上げ、そのままルウの靴の裏に押し付けた。
「別に舐めたりしなくていいぞ?
 全部、俺がやってやるからな」
ルインは言いながら、ヴォレの胴をつまみ、背中を押すようにルウの靴の裏に押し付けて、彼の身体でルウの靴の裏を磨き始めた。
「わぁ、ルイン、手伝ってあげるなんて優しいねぇ」
バラリノの何も考えていないような笑い声が響いた。
…何で、俺がこんな目に?
身体を雑巾の代わりにされて、巨大な女の靴に押し付けられて抵抗する事も出来なかった。
女盗賊達に人間としての扱いをされずに弄ばれている事に、悔しさと恐怖でいっぱいだった。
でも…
どうせ死ぬなら、こんな風に人形サイズに縮小されて、可愛らしい女盗賊達の玩具になってなぶり殺されるのも悪くないかもしれない…
ルインはヴォレの身体を荒っぽく…しかし丁寧に使って、ルウの靴を磨き続けた。
どれ程の時間、雑巾代わりにされて巨大な靴の裏を磨かされただろうか?
ヴォレが解放された時には、全身を革のブーツに擦り付けられたせいで、皮膚が剥けかけて痛い。
「どう、自分が虫けらだって事、よくわかった?」
ルウは、相変わらず、かかとを立てたまま、足元でうずくまる虫を見下ろしていた。
「はい…俺は虫けらです…」
ヴォレは力なく答えた。
「ふふ、よく、幹部になりたいなんて言ったわね?
 お前はこれから、一生、虫けらとして生きていくのよ」
ルウの冷たい言葉を聞いて、ヴォレは下を向いたまま、これからの人生を想像して震えた。
そんな様子を見下ろしながら、女盗賊達は笑っていた。
ヴォレの目の前には、女盗賊の靴がそびえ立っている。自分を見下ろ巨大な彼女たちの顔を見上げる気には、なれなかった。
自分は虫だ。
多分、残りわずかな人生を、女盗賊達の足の下で、、踏み潰される事に怯えて過ごすんだ…

(有料版に続く)