(概要)
ザクロちゃんとざくろさんは、地球人Aの家に入り浸っていた、地球人の100倍サイズの地球外生物。

今日のザクロちゃん達は、1000分の1サイズ位の街を破壊する動画を撮ってみる事にします。
地球人Aは逃げ遅れて巻き込まれます。

めでたし、めでたし


9500文字位(9000文字位まで無料で見れます)

1000倍サイズ位 

街破壊
放尿



1.そうだ! 街を踏み潰そう!

「ザクロちゃんて、決まった姿は無いんだよね?」
「うん。無いよ。
 イメージさえ出来れば、大体何でも、姿を変えられるよ。どうだね? すごいだろ?」
「ふーん。それで、核が無事なら、手とか切られても大丈夫なんだっけ?」
「うん。『手』っていうのも、この擬態の概念に過ぎないからね。首とか切られちゃうと、ちょっと治すの大変だけど。どうだね? すごいだろ?」
「ほー、それで、ガチ戦闘用の擬態を用意すれば、地球を滅ぼす事も、そんなに難しくないんだよね?」
「うん。時間はかかるけどね。
 まあ、地球人の立場に例えると、『その辺のアリの巣を滅ぼすのは、やれば出来るけど面倒だし意味が無いからやらない』っていうのと同レベルかな。
 どうだね? すごいだろ?」
「なるほど。もう、完全に能力が悪の宇宙人だな。
 やっぱり滅ぼした方が良いのでは?」
「そうですね、デカイゼ人は凶悪な宇宙人として宇宙警備隊的な組織でも認定されてますからね。
 …滅ぼしますか?」
「ひどい! だましたな! 誘導尋問! ざくろさんまで乗らないで下さい!」
いつものように、ある休みの日、僕とざくろさんがザクロちゃんをいじっていたら、ザクロちゃんが泣き始めた。まあ、多分ウソ泣きだろう。
僕たちは、いつものように、ざくろさんの部屋に居る。
まあ、あんまりしつこいのも良くないから、ザクロちゃんいじりも、これ位にしておこう…と思ったが、
「そうですか? ザクロちゃんの能力、ヒーロー側の能力でも、全然アリだと思いますよ。ちょっとずるい気もしますけど」
部屋に居た流華さんが、特に動じた様子も無く、ザクロちゃんに味方した。
彼女は地球人のイラストレーターで、下の階に住んでいる、同じアパートの住人だ。最近、ざくろさんの部屋に入り浸るようになっている。
「地球人Bよ。貴方が神か!」
ザクロちゃんが感動している。良かったね。
「はいはい、デカイゼ人と、地球の微生物の皆さん。
 そろそろ動画が届きましたたので見てみませんか?」
僕達が無限に無駄な時間を過ごしていると、ざくろさんが、タブレットの画面を僕達に見せてきた。
今日、流華さんまで呼んだのは、撮影した動画を見るためだ。
「なんか、恥ずかしいなー…」
ザクロちゃんが恥ずかしそうにしている。動画に映っているのはザクロちゃんだ。
…うむー、ザクロちゃんの姿、ちょっとかっこいいなと思ってしまった。
動画の背景は真っ暗。宇宙空間である。
映っているのは、宇宙の暗闇に溶け込むような影だった。
それは、ロボットアニメに出てくるような黒いロボットの姿をしている。
ガチ戦闘用の擬態というやつだ。
しばらく前の事である。
ザクロちゃんとざくろさんが地球に住みついた頃から、何故か地球には宇宙怪獣もやってくるようになった。
そういう事もあり、ザクロちゃんとざくろさんは、何となく宇宙怪獣を退治したりしている。
特に最近は、ざくろさんが宇宙警備隊的な組織に連絡して、地球の周辺を監視してくれている。『宇宙怪獣なんて地球に来る前に宇宙でやっつけちゃえ作戦』というわけだ。
そういう事があり、ザクロちゃんは宇宙に行って来いと言われて、飛んで行ったわけである。
「あの擬態、可愛くないから、あんまり見ないで欲しいんだけどなー」
「そうですか? 控えめに言って最高だと思いますけど?」
恥ずかしそうにしているザクロちゃんを、流華さんが目を輝かせて慰めている。
流華さんは、なかなかのレベルのアメコミヒーローおたくで、仕事で描いているイラストもそっち系が多いらしい。地球人ばんざい。
「地球人の姿を維持したまま、ガチ戦闘用の擬態作るの難しいんだよなー…
 …地球人A、君はどう思う? あれでは本当に君の言う悪の宇宙人みたいじゃないか?」
ザクロちゃんは恥ずかしそうにしている。
「い、いや、正直、ちょっとかっこいいなと・・」
「ほー、かっこいい? そうかそうか。どうだい? 私をすごいと思ったかい?」
僕が口を滑らせると、ザクロちゃんは調子に乗り始めた。
不意に、無数の手が僕の周囲に現れ、僕の身体を撫で始める。これも、ザクロちゃんの擬態だ。
なんだかペット扱いでもされてる気がするが、まあ、怪獣退治とかしてくれてるし、好きなようにさせてやろう…
動画の方を見ると、ザクロちゃんロボは無数の光弾のような物を宇宙に浮かべて、それで宇宙怪獣を攻撃するようにしている。
流れ星みたいで、少し綺麗だ。
「どうだ、あれ、すごいだろ?
 君のマッサージしてる時に思いついたんだぞ?」
ザクロちゃんが自慢気にしている。
なるほど、ザクロちゃん、無数の手を擬態として操るのが、そういえば得意だけど、それを光弾という事で応用したのか。頭悪いのに、よくがんばったな。
「すいません、職業柄、肩が凝るんで、お世話になってます」
「いえいえ、いつも騒がしくてすいません、地球人Bさん」
見れば、流華さんはザクロちゃんが浮かべた手に、肩を揉んでもらっている。
再び動画の方を見ると、戦いというには一方的な感じで、無数の光弾は宇宙怪獣的な相手をバラバラにするまで襲い続けて、動画は終わった。
「はい、おしまいです。
 まあ、これは宇宙警備隊的の資料用動画ですので、そのまま私の配信では使えませんけど」
動画が終わった所で、ざくろさんが首を傾げている。
「そうですねぇ、これを公開しても、何だこれってなっちゃいますし、騒ぎになるから公開は出来ませんよね」
「そもそもざくろさん、全く映ってませんしね」
僕と流華さんは、動画の感想を述べた。
今日、流華さんにも来てもらって動画を見てもらったのは、ざくろさんの為でもあった。
ざくろさんは地球で動画やライブの配信をやっているのだが、地球人とは感性がずれているせいか、全く人気が無かった。というか、僕とザクロちゃん、最近だと追加で流華さんを含めた3人位しか視聴者が居ない時がする…
そんな、ざくろさんの為に、動画の案を考えようというわけである。丁度、ザクロちゃんが宇宙怪獣を退治した時の動画が届くので、それでも見ながらという感じで。
「宇宙警備隊的な組織では、この動画、結構人気だったらしいです」
「えへへ、そっかぁ」
ザクロちゃんは、もう一度、最初から動画を再生しなおしている。ほめられて嬉しいらしい。
「そうですね、いっそ、そういうのも良いかもしれませんね」
そんなザクロちゃんに構わず、流華さんが話はじめた。
「自分の得意な事を生かして、特定の視聴者向けに配信をするっていうのも良いかもしれませんね。
 ザクロちゃんもざくろさんも、本来は100メートル以上の巨人みたいな大きさなんですよね?
 いっそ、街でも踏み潰すような動画でも撮ってみるのはどうです? そういうの好きな人も、結構いるみたいなんで」
何やら流華さんが怪しい事を言い始めた。
「む、地球人の街を踏み潰すなんて簡単だけど、踏み潰しちゃっていいの?」
「街ですか…私はどちらかというと、星ごと握りつぶす方が…」
ザクロちゃんとざくろさんは、何やら戸惑っている。
「その辺りは、宇宙警備隊的な組織の科学力とかで、何とか、こう…」
「あー…そういえば、宇宙警備隊的な組織で、小人の星での戦闘を想定したシミュレーターみたいなのがあったような。
 微生物サイズ…失礼、地球人サイズの街を模していて、AIをで動く人間型のロボットも居たりします」
「おー、それなら踏み潰しちゃっても良いですね。ざくろさん、一緒に暴れちゃいましょう!」
ざくろさんとザクロちゃんが、何やら盛り上がっている。
僕は何だか悪い予感を覚えながら、ザクロちゃんとざくろさんは盛り上がっていた。


2.何がAIだ。そんなもん踏み潰してやる(イラストレーターの怒り)

少しオシャレな感じのカフェに僕たちは4人は居た。
1人は、普通の新入社員…というか僕。
1人は、毎日ゴロゴロしながら、動画ばっかり見ている宇宙人。
1人は、動画の配信が趣味で、基本的に家に居る宇宙人。
1人は、おうちで仕事するイラストレーター。
「ふむ…落ち着かないですね、こういう賑やかな所は」
ざくろさんが、僕たちの気持ちを代表して呟いてくれた。
眩しすぎるんだ…僕達に、オシャレなカフェは。
そういえば、ざくろさんと初めて会った時も、こんなオシャレなカフェだったな。
だが…
「そうですか? 私、おうちより、カフェの方が仕事進みますけど?」
流華さんが言ったので、僕たちは一斉に彼女の方を見た。
仲間だと思っていた流華さんは、僕達とは別の存在だったらしい。
「いやー、でも宇宙的な科学って凄いですねー。
 これ全部シミュレーターで、周りの人も全部AIなんですよね?」
流華さんは、僕たちの様子に気づく事も無く、楽しそうに周りを見回している。
それは、確かにそうだ。
ぱっと見回しても、カフェには10人以上の人が居るし、窓から見える街並みは10階建て以上のビルが立ち並ぶ市街地だった。
ここがシミュレータで用意された空間だとは、全くわからなかった。
「これ、全部、めちゃくちゃにしちゃって良いんですか?
 私、最近、AIって聞くだけで、ちょっと腹立つんで」
何か、流華さんの目がヤバい。
「はい、本来の使い方と違いますが大丈夫です。
 本当は、被害状況を計測しながら、街を効率良く怪獣から守る訓練をする事が目的なんですけどね」
「よし、地球人Bさん、どっちが沢山、人を踏み潰せるか競争しよう! ていうか、地球人Bさんもやるのか!」
「そうですね、今日はリハーサルですし、私も一緒に」
ザクロちゃんとざくろさんは、元々ヤバい上に、流華さんもやる気だ。
正直、あんまり関わりたくない…
「じゃ、じゃあ、がんばってね…」
僕は街を破壊する気満々の女の子達に少し引きながら、先に街を離れる事にした。
もうすぐ、このシミュレーターの街は彼女達に破壊しつくされるのだ。女って怖い。
僕は3人と一旦別れて、歩き始める。
よく出来ているんで、忘れそうになるけど、ここは1000分の1サイズの街。歩いている人々もAIで動いているロボットだ。
早く逃げないと、ザクロちゃん達に、この街ごと踏み潰されてしまう。
しばらく歩いた後、僕は、このシミュレーター空間に入った入口である、ざくろさんのアパートを模した建物に着いた。
これで、ざくろさんの部屋に入ると、本物のざくろさんの部屋に繋がっているわけだ。
地球に帰ったら、ザクロちゃん達が街を蹂躙する様子でも見物するかな。と思いつつ、僕はざくろさんの部屋のドアを開けた。
…あれ?
ざくろさんの部屋の中は空っぽだった。
元々、質素なざくろさんの部屋だったが、本当に何も無い空き部屋だった。
僕はあわてて、外に出る。それから、もう一度、部屋に入ってみる。
部屋の中からドアを開けて、顔だけ外に出したりしてみた。
だめだ…部屋の中は、ただの部屋の中。空間を移動したりしていない。
シミュレーターの空間に閉じ込められてしまったらしい。
何かの不具合だろうか?
背筋が寒くなる。
早くザクロちゃん達に伝えないと、巨人になった彼女達に、街ごと踏み潰されてしまう。
まだ、さっきのカフェに居てくれるだろうか?
僕は、あわてて、ざくろさんのアパートを出て、走り始める。
少し走った所で…
どーん!
何かが落ちてきたような轟音と、揺れを感じて立っていられなくなった。
音がしていた方向を見ると、ビルを押しつぶすようにして、巨大な肌色の柱が数本立っていた。
ザクロちゃん達の足だ。
3人は足に何も着けておらず、裸足だった。
そればかりか、衣服も白い下着だけ身に着けた、女の子にしては無防備な姿である。
もちろん、無防備だからといって、1500メートル程のサイズの大巨人になった彼女達を脅かす物は、このシミュレーターの世界には存在しないだろう。
「うわぁ、私達が踏み潰してるの、さっきまで居た街なんですねぇ」
口に手を当てて、驚いているのは流華さんだ。
「58って数字が見えてるのは、殺した人数ですか?」
「そうですね、流華さんが元のサイズに戻った時に、足元に、それだけの人が居たんでしょうね。
 うふふ、どうです? 微生物を見下ろす気分は」
「いやぁ、一言じゃ言えないですけど…ざくろさん達から見ると、地球人って、こんな感じなんですねぇ」
流華さんはざくろさんに答えながら、軽く足を上げると、別のビル群の上に足を下ろして丹念にすり潰すようにしている。
「ふふ、それじゃあ、3人で勝負しようね!
 最初に地球人AのAIを潰したら勝ち!」
ザクロちゃんは足元を見る事もせず、適当にビル群を踏み潰している。
 おーい、地球人AのAI、聞こえてるかね?
 今から5分後に、私達は街の蹂躙を開始する。好きな所に逃げるといい。
 まあ、君を踏み潰すまでゲームは終わらないけどね」
ザクロちゃんが右手を腰に当てて、小さな街を見下ろしている。その姿は、悪の宇宙人そのものだ。
ざくろさんまで一緒になって、何て酷い事を考えるんだ…
AIの偽者とはいえ、僕を標的にしているのだから、良い気はしない。
これでは、彼女達に近づいて声をかけても、AIと間違われて踏み潰されてしまう。
全長1500メートルの破壊神となっている彼女達を見上げて、僕は震えた。
『いーち、にーい、さーん』
ザクロちゃん達は楽しそうに、声を合わせて数え始めた。
3人は、完全に遊び感覚だ。
街は、突然現れた巨人達を見てパニックである。
これが、本当にシミュレータなんだよな?
僕は、僕を殺す事を目的にしている女の子の巨人達を見上げて絶望していたが、すぐに思い直した。
彼女達の目的は、僕を模したAIのロボットを潰す事。
僕よりも先に、僕のAIが殺されれば、彼女達の目的は達成される。
その後だったら、話も通じるはずだ。
僕は、来た道を帰って、ひとまず、このシミュレータ世界の、ざくろさんの部屋に隠れる事にした。
ビルを踏み潰すサイズの巨人の女の子達から逃げる事なんて不可能だ。
いっそ、ざくろさんの部屋なら、気兼ねして踏み潰すのを後回しにしてくれるんじゃないかと思った。
『さんびゃくいーち、さんびゃくにー』
ざくろさんの部屋に入って、窓から見上げると、3人の下着姿の女巨人が、声をそろえて楽しそうに数を数えているのが見える。
数十メートルはあると思われるビルも、彼女達の足指と同じか、少し大きい程度だ。
彼女達の大きさと可愛さに、僕は少し見とれてしまった。
数分後…
『ごひゃく!』
3人の女巨人は、元気良く数え終わった。
「おらぁ! AI共め! みんな私が踏み潰してやるわよ!」
流華さんは右足を振り上げて勢いをつけると、思いっきりビル群を蹴り飛ばした。
彼女は、最近、AIの話題になるとピリピリしている。AIをイラストに悪用するのが気に入らないらしい。
AIが悪いんじゃなくてAIを悪用する人間が悪いんじゃないかと思うけど、現役のイラストレーターの彼女は、発狂寸前な位にストレスが溜まっているらしい。
無数のビルが、流華さんの足に蹴とばされて、冗談のように飛んでいった。
数百人以上が虫のように消し飛んだ事だろう…。
そうして、3人の巨人は、無力な小人の街を蹂躙し始めた。


3.何を言ってる? お前はAIだろ? はは、騙されないぞ。微生物め

「まあ、AIとはいえ、地球人Aの考える事なんて、お見通しかな。
 どうせ、ざくろさんの部屋にでも隠れているんだろう」
いきなり、絶望的な事を言ったのは、ザクロちゃんだ。
「そうなのですか?」
「うん。地球人Aなら、そんな風に考えるよ、きっと」
ぐ…バレてる。ザクロちゃんめ。
ずしん…ずしん…
ザクロちゃんは、ざくろさんに微笑みながら、こちらに向かって歩いてきた。
一歩、歩くごとに地面が揺れる。
ほんの数歩で、彼女の巨体は、ざくろさんの部屋の頭上までやってきた。
空が彼女の股で覆われて暗くなる。
まだ、地面が揺れている。
彼女が立っているだけで、その足は地面を数十メートルはえぐり、形を変えていた。
「ふむー、小さくて、よくわからないな」
言いながら、ザクロちゃんが屈みこんできた。
その身体の動きが起こす風圧で、僕が隠れている部屋が揺れている。
僕の身体どころか部屋よりも大きな彼女の瞳が、きょろきょろと動いて、見下ろしていた。
その瞳は、僕の部屋を向いているようだったが、小さすぎて僕を認識できないのかもしれない。
恐ろしい…
彼女達にとって、文字通りに自分が微生物並みの大きさ、存在である事があかる。
ザクロちゃんには日常的に小人にされて玩具にされているけれど、いつも手加減はしてくれている。
でも、今日は違う。いつもよりも、さらに大きな身体で、僕をすり潰そうと探しているのだ。
あまりの恐怖に、僕は窓から離れて部屋の隅に隠れた。
「おーい、地球人Aよ。居たら、出てきたまえ。
 そうしたら、一瞬で楽にしてあげるよ」
ザクロちゃんの巨大な口が動くと、轟音と風圧が周囲を襲った。ざくろさんの部屋の窓は割られ、周囲の窓も割られる。
僕は恐ろしくて震えるしかなかった。
「うーん、ここには居ないかな?」
ザクロちゃんが残念そうに言う声が聞こえた。
そーっと見上げると、残念そうに首を傾げている。
それから、ザクロちゃんは無造作に手を上げ、手のひらを開いて、下ろしてきた。
…潰される!
もうだめだと思った。
今までとは比較にならない轟音が周囲を襲い、部屋が傾いたのが分かる。
窓の外に、どこまでも続く肌色の壁…ザクロちゃんの指が見えた。
この部屋は、ザクロちゃんの指の間に、丁度挟まれているらしい。
彼女の指は残念そうに、地面をえぐって弄んでいたが、やがて地面を離れた。
「まあ、居ないみたいだし、ざくろさんの部屋を潰すのは最後にしようかな。
 シミュレータとはいえ、やっぱり潰すのは抵抗ありますね…」
「うふふ、ありがとう」
ザクロちゃんは、再び轟音を立てて歩きながら、ビル街の方に戻っていった。ざくろさんも、少し嬉しそうだ。
ひとまずは、助かったらしい。
巨人の姿が少し離れただけだが、僕は、ほんの少しでも生き延びた事が嬉しかった。
窓から見ると、3人の巨人は思い思いに街を蹂躙し始めていた。
ザクロちゃんと流華さんは、勢いを付けてビル群を踏み潰したり、手のひらで叩いて叩きつぶしたりしている。
ざくろさんは特に表情も変えず、淡々と、事務的に足を下ろしてから、ぐりぐりと一帯を踏みにじるという動作を続けていた。
3人の巨人が隙間なく、ビルを踏みにじって街を蹂躙していく光景は、宇宙怪獣が街を破壊していた時よりも遥かに力強く圧倒的だった。
「そうだ、踏み潰すのも良いですけど、こうすると面積も広くなるし、漏れも無くなりますよ」
何かを思いついたかのように、流華さんは言うと、僕に背を向けるようにして街の上に腰を降ろした。
彼女のお尻の下で、無数のビル群が消えた事だろう。
流華さんは、そのまま街に手をついて、身体を支えるようにして、お尻を地面に擦り付けるようにして、下敷きにしているビルをすり潰していった。
「お、お尻に敷いて潰しちゃうのって、シミュレータの街でも、さすがにかわいそうなんじゃ…
 地球人の考える事は怖いなぁ」
「まあまあ、そんなこと言わず、ザクロちゃんもやってみましょうよぉ。
 これだけで、1000人位、殺害数増えますよ?」
「それじゃあ、私もやってみるとしようかな…うわ、ほんとに1000人位増えた!」
ザクロちゃんも流華さんと並んで街の上座ると、一緒にお尻を擦り付けて、面白そうにしている。
「私が言うのもなんですけど、シミュレータとはいえ、同じ地球人をお尻に敷いて大量虐殺するとは、すごいですね、地球人Bさん。
 …あ、ほんとに1000人位増えた」
「あはは、AIなんて、みんな滅んじゃえば良いんですよ」
ざくろさんも2人に並んで腰を降ろすと、尻の下の感触を楽しむようにしている。
下着姿の女の子達がお尻を並べている光景だが、その下では数千人の人間がすり潰されているのだ。
3人はしばらく仲良く座っていたが、やがて、街の蹂躙を再開した。
もう、街の大半は彼女達の身体によって廃墟に変えられていた。
「なんか、あそこの建物、人がいっぱい居るんじゃないかな?」
ザクロちゃんが、30階建て程の、大き目のビルを指さし、3人はビルに近づいていった。
彼女達の足首位の高さはある高い建物だが、彼女達がその気になれば、一瞬で蹂躙されてしまうだろう。
3人はビルを取り囲んで、地面に這うようにして覗き込む。
「そうですね、何か動いていますね」
「あはは、虫けら以下ですねぇ」
ざくろさんと流華さんが、ビルを観察しながら言った。
ザクロちゃんも含めて、どうやって玩具で遊ぼうか考えている残酷な女子の目だった。
「そうだ、水攻めにしちゃいましょうか」
口を開いたのは、流華さんだ。
流華さんはビルを跨いでしゃがみ込むと、下着を降ろし始めたので、思わず見とれてしまう。
僕の居る所からは、流華さんの女の子が丸見えになった。
「えーと、地球人Bさん? 何をするおつもりで?」
急に下着を降ろしてしゃがみこんだ流華さんを見て、ざくろさんは驚いているようだ。
「おしっこしたいなーって。
 男の子も見てないし、良いですよね?」
恥じらいも無い様子で、流華さんは股間の割れ目をビルの上空に向けて狙いを定め始めた。
彼女の巨大な女性器は小さく震えて、排せつ物を放出する準備をしているように見えた。
「ま、まあ、地球人Bさんが良いなら良いけど、動画は編集しとくね」
むしろ、ザクロちゃんの方が彼女の様子を見て、少し引いているようだ。
流華さんは、恥ずかしがる様子は一切なく、満足そうにビルを見下ろすと、恍惚の表情で、排せつ行為を始めた。
彼女の股間の割れ目から、勢い良く放出された液体はビルを揺らしながら、まき散らされる。
「うわービルの中は、地球人Bのおしっこでいっぱいだな…」
「200人位、殺害数増えました。ビルの中、結構詰まってましたねー」
ザクロちゃんは呆れたように言ったが、流華さんは勝ち誇ったように、腰を揺らして、残った尿を絞り出そうとしている。
やりたい放題の3人の巨人を、僕は震えながら見ているしかない…
それから、街が完全に破壊しつくされるまで、1時間もかからなかっただろう。
「はて? 地球人AさんのAI、見つかりませんね?」
「やっぱり、ざくろさんの家に居たのかな?」
流華さんは、もう生き残っている者も居ない街をまだ踏みにじっていたが、ざくろさんとザクロちゃんは話しながら、僕が居る部屋に近づいてきた。
街はもう、すっかり廃墟なのに、まだ、僕のAIは見つかっていないのか?
一体、僕のAIはどこに隠れているんだ。
ずしん…ずしん…
数キロはある距離も、彼女達にとってはほんの数歩だ。
「ザクロちゃん! ざくろさん! 僕は本物だ!」
僕は恐怖に震えながら、声にならない声を上げるが、彼女達の大き過ぎる足音にかき消されてしまう。
ずしん…ずしん…
巨人達の無慈悲な足音は、すぐに僕の頭上に迫ってきた。
「私の部屋ですし、私が踏み潰しますね」
最後に聞いたのは、淡々としたざくろさんの声だった。
最後に見たのは、ざくろさんの綺麗な足の裏だった。
虫けら以下の存在に対して、ざくろさんは容赦が無かった。
僕の悲鳴は、最後まで彼女達の足音にかき消されたままだった。
…ぷち。


4.いつからお前は本物だと錯覚していた? AIなんて滅んでしまえ

(以下有料版)