(概要)<br class="upld" />
ザクロちゃんとざくろさんは、地球人Aの家に入り浸っていた、地球人の100倍サイズの地球外生物。<br class="upld" />
<br class="upld" />
今日のザクロちゃん達は、1000分の1サイズ位の街を破壊する動画を撮ってみる事にします。<br class="upld" />
地球人Aは逃げ遅れて巻き込まれます。<br class="upld" />
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めでたし、めでたし<br class="upld" />
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9500文字位(9000文字位まで無料で見れます)<br class="upld" />
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1000倍サイズ位 <br class="upld" />
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街破壊<br class="upld" />
放尿<br class="upld" />
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1.そうだ! 街を踏み潰そう!<br class="upld" />
<br class="upld" />
「ザクロちゃんて、決まった姿は無いんだよね?」<br class="upld" />
「うん。無いよ。<br class="upld" />
 イメージさえ出来れば、大体何でも、姿を変えられるよ。どうだね? すごいだろ?」<br class="upld" />
「ふーん。それで、核が無事なら、手とか切られても大丈夫なんだっけ?」<br class="upld" />
「うん。『手』っていうのも、この擬態の概念に過ぎないからね。首とか切られちゃうと、ちょっと治すの大変だけど。どうだね? すごいだろ?」<br class="upld" />
「ほー、それで、ガチ戦闘用の擬態を用意すれば、地球を滅ぼす事も、そんなに難しくないんだよね?」<br class="upld" />
「うん。時間はかかるけどね。<br class="upld" />
 まあ、地球人の立場に例えると、『その辺のアリの巣を滅ぼすのは、やれば出来るけど面倒だし意味が無いからやらない』っていうのと同レベルかな。<br class="upld" />
 どうだね? すごいだろ?」<br class="upld" />
「なるほど。もう、完全に能力が悪の宇宙人だな。<br class="upld" />
 やっぱり滅ぼした方が良いのでは?」<br class="upld" />
「そうですね、デカイゼ人は凶悪な宇宙人として宇宙警備隊的な組織でも認定されてますからね。<br class="upld" />
 …滅ぼしますか?」<br class="upld" />
「ひどい! だましたな! 誘導尋問! ざくろさんまで乗らないで下さい!」<br class="upld" />
いつものように、ある休みの日、僕とざくろさんがザクロちゃんをいじっていたら、ザクロちゃんが泣き始めた。まあ、多分ウソ泣きだろう。<br class="upld" />
僕たちは、いつものように、ざくろさんの部屋に居る。<br class="upld" />
まあ、あんまりしつこいのも良くないから、ザクロちゃんいじりも、これ位にしておこう…と思ったが、<br class="upld" />
「そうですか? ザクロちゃんの能力、ヒーロー側の能力でも、全然アリだと思いますよ。ちょっとずるい気もしますけど」<br class="upld" />
部屋に居た流華さんが、特に動じた様子も無く、ザクロちゃんに味方した。<br class="upld" />
彼女は地球人のイラストレーターで、下の階に住んでいる、同じアパートの住人だ。最近、ざくろさんの部屋に入り浸るようになっている。<br class="upld" />
「地球人Bよ。貴方が神か!」<br class="upld" />
ザクロちゃんが感動している。良かったね。<br class="upld" />
「はいはい、デカイゼ人と、地球の微生物の皆さん。<br class="upld" />
 そろそろ動画が届きましたたので見てみませんか?」<br class="upld" />
僕達が無限に無駄な時間を過ごしていると、ざくろさんが、タブレットの画面を僕達に見せてきた。<br class="upld" />
今日、流華さんまで呼んだのは、撮影した動画を見るためだ。<br class="upld" />
「なんか、恥ずかしいなー…」<br class="upld" />
ザクロちゃんが恥ずかしそうにしている。動画に映っているのはザクロちゃんだ。<br class="upld" />
…うむー、ザクロちゃんの姿、ちょっとかっこいいなと思ってしまった。<br class="upld" />
動画の背景は真っ暗。宇宙空間である。<br class="upld" />
映っているのは、宇宙の暗闇に溶け込むような影だった。<br class="upld" />
それは、ロボットアニメに出てくるような黒いロボットの姿をしている。<br class="upld" />
ガチ戦闘用の擬態というやつだ。<br class="upld" />
しばらく前の事である。<br class="upld" />
ザクロちゃんとざくろさんが地球に住みついた頃から、何故か地球には宇宙怪獣もやってくるようになった。<br class="upld" />
そういう事もあり、ザクロちゃんとざくろさんは、何となく宇宙怪獣を退治したりしている。<br class="upld" />
特に最近は、ざくろさんが宇宙警備隊的な組織に連絡して、地球の周辺を監視してくれている。『宇宙怪獣なんて地球に来る前に宇宙でやっつけちゃえ作戦』というわけだ。<br class="upld" />
そういう事があり、ザクロちゃんは宇宙に行って来いと言われて、飛んで行ったわけである。<br class="upld" />
「あの擬態、可愛くないから、あんまり見ないで欲しいんだけどなー」<br class="upld" />
「そうですか? 控えめに言って最高だと思いますけど?」<br class="upld" />
恥ずかしそうにしているザクロちゃんを、流華さんが目を輝かせて慰めている。<br class="upld" />
流華さんは、なかなかのレベルのアメコミヒーローおたくで、仕事で描いているイラストもそっち系が多いらしい。地球人ばんざい。<br class="upld" />
「地球人の姿を維持したまま、ガチ戦闘用の擬態作るの難しいんだよなー…<br class="upld" />
 …地球人A、君はどう思う? あれでは本当に君の言う悪の宇宙人みたいじゃないか?」<br class="upld" />
ザクロちゃんは恥ずかしそうにしている。<br class="upld" />
「い、いや、正直、ちょっとかっこいいなと・・」<br class="upld" />
「ほー、かっこいい? そうかそうか。どうだい? 私をすごいと思ったかい?」<br class="upld" />
僕が口を滑らせると、ザクロちゃんは調子に乗り始めた。<br class="upld" />
不意に、無数の手が僕の周囲に現れ、僕の身体を撫で始める。これも、ザクロちゃんの擬態だ。<br class="upld" />
なんだかペット扱いでもされてる気がするが、まあ、怪獣退治とかしてくれてるし、好きなようにさせてやろう…<br class="upld" />
動画の方を見ると、ザクロちゃんロボは無数の光弾のような物を宇宙に浮かべて、それで宇宙怪獣を攻撃するようにしている。<br class="upld" />
流れ星みたいで、少し綺麗だ。<br class="upld" />
「どうだ、あれ、すごいだろ?<br class="upld" />
 君のマッサージしてる時に思いついたんだぞ?」<br class="upld" />
ザクロちゃんが自慢気にしている。<br class="upld" />
なるほど、ザクロちゃん、無数の手を擬態として操るのが、そういえば得意だけど、それを光弾という事で応用したのか。頭悪いのに、よくがんばったな。<br class="upld" />
「すいません、職業柄、肩が凝るんで、お世話になってます」<br class="upld" />
「いえいえ、いつも騒がしくてすいません、地球人Bさん」<br class="upld" />
見れば、流華さんはザクロちゃんが浮かべた手に、肩を揉んでもらっている。<br class="upld" />
再び動画の方を見ると、戦いというには一方的な感じで、無数の光弾は宇宙怪獣的な相手をバラバラにするまで襲い続けて、動画は終わった。<br class="upld" />
「はい、おしまいです。<br class="upld" />
 まあ、これは宇宙警備隊的の資料用動画ですので、そのまま私の配信では使えませんけど」<br class="upld" />
動画が終わった所で、ざくろさんが首を傾げている。<br class="upld" />
「そうですねぇ、これを公開しても、何だこれってなっちゃいますし、騒ぎになるから公開は出来ませんよね」<br class="upld" />
「そもそもざくろさん、全く映ってませんしね」<br class="upld" />
僕と流華さんは、動画の感想を述べた。<br class="upld" />
今日、流華さんにも来てもらって動画を見てもらったのは、ざくろさんの為でもあった。<br class="upld" />
ざくろさんは地球で動画やライブの配信をやっているのだが、地球人とは感性がずれているせいか、全く人気が無かった。というか、僕とザクロちゃん、最近だと追加で流華さんを含めた3人位しか視聴者が居ない時がする…<br class="upld" />
そんな、ざくろさんの為に、動画の案を考えようというわけである。丁度、ザクロちゃんが宇宙怪獣を退治した時の動画が届くので、それでも見ながらという感じで。<br class="upld" />
「宇宙警備隊的な組織では、この動画、結構人気だったらしいです」<br class="upld" />
「えへへ、そっかぁ」<br class="upld" />
ザクロちゃんは、もう一度、最初から動画を再生しなおしている。ほめられて嬉しいらしい。<br class="upld" />
「そうですね、いっそ、そういうのも良いかもしれませんね」<br class="upld" />
そんなザクロちゃんに構わず、流華さんが話はじめた。<br class="upld" />
「自分の得意な事を生かして、特定の視聴者向けに配信をするっていうのも良いかもしれませんね。<br class="upld" />
 ザクロちゃんもざくろさんも、本来は100メートル以上の巨人みたいな大きさなんですよね?<br class="upld" />
 いっそ、街でも踏み潰すような動画でも撮ってみるのはどうです? そういうの好きな人も、結構いるみたいなんで」<br class="upld" />
何やら流華さんが怪しい事を言い始めた。<br class="upld" />
「む、地球人の街を踏み潰すなんて簡単だけど、踏み潰しちゃっていいの?」<br class="upld" />
「街ですか…私はどちらかというと、星ごと握りつぶす方が…」<br class="upld" />
ザクロちゃんとざくろさんは、何やら戸惑っている。<br class="upld" />
「その辺りは、宇宙警備隊的な組織の科学力とかで、何とか、こう…」<br class="upld" />
「あー…そういえば、宇宙警備隊的な組織で、小人の星での戦闘を想定したシミュレーターみたいなのがあったような。<br class="upld" />
 微生物サイズ…失礼、地球人サイズの街を模していて、AIをで動く人間型のロボットも居たりします」<br class="upld" />
「おー、それなら踏み潰しちゃっても良いですね。ざくろさん、一緒に暴れちゃいましょう!」<br class="upld" />
ざくろさんとザクロちゃんが、何やら盛り上がっている。<br class="upld" />
僕は何だか悪い予感を覚えながら、ザクロちゃんとざくろさんは盛り上がっていた。<br class="upld" />
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2.何がAIだ。そんなもん踏み潰してやる(イラストレーターの怒り)<br class="upld" />
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少しオシャレな感じのカフェに僕たちは4人は居た。<br class="upld" />
1人は、普通の新入社員…というか僕。<br class="upld" />
1人は、毎日ゴロゴロしながら、動画ばっかり見ている宇宙人。<br class="upld" />
1人は、動画の配信が趣味で、基本的に家に居る宇宙人。<br class="upld" />
1人は、おうちで仕事するイラストレーター。<br class="upld" />
「ふむ…落ち着かないですね、こういう賑やかな所は」<br class="upld" />
ざくろさんが、僕たちの気持ちを代表して呟いてくれた。<br class="upld" />
眩しすぎるんだ…僕達に、オシャレなカフェは。<br class="upld" />
そういえば、ざくろさんと初めて会った時も、こんなオシャレなカフェだったな。<br class="upld" />
だが…<br class="upld" />
「そうですか? 私、おうちより、カフェの方が仕事進みますけど?」<br class="upld" />
流華さんが言ったので、僕たちは一斉に彼女の方を見た。<br class="upld" />
仲間だと思っていた流華さんは、僕達とは別の存在だったらしい。<br class="upld" />
「いやー、でも宇宙的な科学って凄いですねー。<br class="upld" />
 これ全部シミュレーターで、周りの人も全部AIなんですよね?」<br class="upld" />
流華さんは、僕たちの様子に気づく事も無く、楽しそうに周りを見回している。<br class="upld" />
それは、確かにそうだ。<br class="upld" />
ぱっと見回しても、カフェには10人以上の人が居るし、窓から見える街並みは10階建て以上のビルが立ち並ぶ市街地だった。<br class="upld" />
ここがシミュレータで用意された空間だとは、全くわからなかった。<br class="upld" />
「これ、全部、めちゃくちゃにしちゃって良いんですか?<br class="upld" />
 私、最近、AIって聞くだけで、ちょっと腹立つんで」<br class="upld" />
何か、流華さんの目がヤバい。<br class="upld" />
「はい、本来の使い方と違いますが大丈夫です。<br class="upld" />
 本当は、被害状況を計測しながら、街を効率良く怪獣から守る訓練をする事が目的なんですけどね」<br class="upld" />
「よし、地球人Bさん、どっちが沢山、人を踏み潰せるか競争しよう! ていうか、地球人Bさんもやるのか!」<br class="upld" />
「そうですね、今日はリハーサルですし、私も一緒に」<br class="upld" />
ザクロちゃんとざくろさんは、元々ヤバい上に、流華さんもやる気だ。<br class="upld" />
正直、あんまり関わりたくない…<br class="upld" />
「じゃ、じゃあ、がんばってね…」<br class="upld" />
僕は街を破壊する気満々の女の子達に少し引きながら、先に街を離れる事にした。<br class="upld" />
もうすぐ、このシミュレーターの街は彼女達に破壊しつくされるのだ。女って怖い。<br class="upld" />
僕は3人と一旦別れて、歩き始める。<br class="upld" />
よく出来ているんで、忘れそうになるけど、ここは1000分の1サイズの街。歩いている人々もAIで動いているロボットだ。<br class="upld" />
早く逃げないと、ザクロちゃん達に、この街ごと踏み潰されてしまう。<br class="upld" />
しばらく歩いた後、僕は、このシミュレーター空間に入った入口である、ざくろさんのアパートを模した建物に着いた。<br class="upld" />
これで、ざくろさんの部屋に入ると、本物のざくろさんの部屋に繋がっているわけだ。<br class="upld" />
地球に帰ったら、ザクロちゃん達が街を蹂躙する様子でも見物するかな。と思いつつ、僕はざくろさんの部屋のドアを開けた。<br class="upld" />
…あれ?<br class="upld" />
ざくろさんの部屋の中は空っぽだった。<br class="upld" />
元々、質素なざくろさんの部屋だったが、本当に何も無い空き部屋だった。<br class="upld" />
僕はあわてて、外に出る。それから、もう一度、部屋に入ってみる。<br class="upld" />
部屋の中からドアを開けて、顔だけ外に出したりしてみた。<br class="upld" />
だめだ…部屋の中は、ただの部屋の中。空間を移動したりしていない。<br class="upld" />
シミュレーターの空間に閉じ込められてしまったらしい。<br class="upld" />
何かの不具合だろうか?<br class="upld" />
背筋が寒くなる。<br class="upld" />
早くザクロちゃん達に伝えないと、巨人になった彼女達に、街ごと踏み潰されてしまう。<br class="upld" />
まだ、さっきのカフェに居てくれるだろうか?<br class="upld" />
僕は、あわてて、ざくろさんのアパートを出て、走り始める。<br class="upld" />
少し走った所で…<br class="upld" />
どーん!<br class="upld" />
何かが落ちてきたような轟音と、揺れを感じて立っていられなくなった。<br class="upld" />
音がしていた方向を見ると、ビルを押しつぶすようにして、巨大な肌色の柱が数本立っていた。<br class="upld" />
ザクロちゃん達の足だ。<br class="upld" />
3人は足に何も着けておらず、裸足だった。<br class="upld" />
そればかりか、衣服も白い下着だけ身に着けた、女の子にしては無防備な姿である。<br class="upld" />
もちろん、無防備だからといって、1500メートル程のサイズの大巨人になった彼女達を脅かす物は、このシミュレーターの世界には存在しないだろう。<br class="upld" />
「うわぁ、私達が踏み潰してるの、さっきまで居た街なんですねぇ」<br class="upld" />
口に手を当てて、驚いているのは流華さんだ。<br class="upld" />
「58って数字が見えてるのは、殺した人数ですか?」<br class="upld" />
「そうですね、流華さんが元のサイズに戻った時に、足元に、それだけの人が居たんでしょうね。<br class="upld" />
 うふふ、どうです? 微生物を見下ろす気分は」<br class="upld" />
「いやぁ、一言じゃ言えないですけど…ざくろさん達から見ると、地球人って、こんな感じなんですねぇ」<br class="upld" />
流華さんはざくろさんに答えながら、軽く足を上げると、別のビル群の上に足を下ろして丹念にすり潰すようにしている。<br class="upld" />
「ふふ、それじゃあ、3人で勝負しようね!<br class="upld" />
 最初に地球人AのAIを潰したら勝ち!」<br class="upld" />
ザクロちゃんは足元を見る事もせず、適当にビル群を踏み潰している。<br class="upld" />
 おーい、地球人AのAI、聞こえてるかね?<br class="upld" />
 今から5分後に、私達は街の蹂躙を開始する。好きな所に逃げるといい。<br class="upld" />
 まあ、君を踏み潰すまでゲームは終わらないけどね」<br class="upld" />
ザクロちゃんが右手を腰に当てて、小さな街を見下ろしている。その姿は、悪の宇宙人そのものだ。<br class="upld" />
ざくろさんまで一緒になって、何て酷い事を考えるんだ…<br class="upld" />
AIの偽者とはいえ、僕を標的にしているのだから、良い気はしない。<br class="upld" />
これでは、彼女達に近づいて声をかけても、AIと間違われて踏み潰されてしまう。<br class="upld" />
全長1500メートルの破壊神となっている彼女達を見上げて、僕は震えた。<br class="upld" />
『いーち、にーい、さーん』<br class="upld" />
ザクロちゃん達は楽しそうに、声を合わせて数え始めた。<br class="upld" />
3人は、完全に遊び感覚だ。<br class="upld" />
街は、突然現れた巨人達を見てパニックである。<br class="upld" />
これが、本当にシミュレータなんだよな?<br class="upld" />
僕は、僕を殺す事を目的にしている女の子の巨人達を見上げて絶望していたが、すぐに思い直した。<br class="upld" />
彼女達の目的は、僕を模したAIのロボットを潰す事。<br class="upld" />
僕よりも先に、僕のAIが殺されれば、彼女達の目的は達成される。<br class="upld" />
その後だったら、話も通じるはずだ。<br class="upld" />
僕は、来た道を帰って、ひとまず、このシミュレータ世界の、ざくろさんの部屋に隠れる事にした。<br class="upld" />
ビルを踏み潰すサイズの巨人の女の子達から逃げる事なんて不可能だ。<br class="upld" />
いっそ、ざくろさんの部屋なら、気兼ねして踏み潰すのを後回しにしてくれるんじゃないかと思った。<br class="upld" />
『さんびゃくいーち、さんびゃくにー』<br class="upld" />
ざくろさんの部屋に入って、窓から見上げると、3人の下着姿の女巨人が、声をそろえて楽しそうに数を数えているのが見える。<br class="upld" />
数十メートルはあると思われるビルも、彼女達の足指と同じか、少し大きい程度だ。<br class="upld" />
彼女達の大きさと可愛さに、僕は少し見とれてしまった。<br class="upld" />
数分後…<br class="upld" />
『ごひゃく!』<br class="upld" />
3人の女巨人は、元気良く数え終わった。<br class="upld" />
「おらぁ! AI共め! みんな私が踏み潰してやるわよ!」<br class="upld" />
流華さんは右足を振り上げて勢いをつけると、思いっきりビル群を蹴り飛ばした。<br class="upld" />
彼女は、最近、AIの話題になるとピリピリしている。AIをイラストに悪用するのが気に入らないらしい。<br class="upld" />
AIが悪いんじゃなくてAIを悪用する人間が悪いんじゃないかと思うけど、現役のイラストレーターの彼女は、発狂寸前な位にストレスが溜まっているらしい。<br class="upld" />
無数のビルが、流華さんの足に蹴とばされて、冗談のように飛んでいった。<br class="upld" />
数百人以上が虫のように消し飛んだ事だろう…。<br class="upld" />
そうして、3人の巨人は、無力な小人の街を蹂躙し始めた。<br class="upld" />
<br class="upld" />
<br class="upld" />
3.何を言ってる? お前はAIだろ? はは、騙されないぞ。微生物め<br class="upld" />
<br class="upld" />
「まあ、AIとはいえ、地球人Aの考える事なんて、お見通しかな。<br class="upld" />
 どうせ、ざくろさんの部屋にでも隠れているんだろう」<br class="upld" />
いきなり、絶望的な事を言ったのは、ザクロちゃんだ。<br class="upld" />
「そうなのですか?」<br class="upld" />
「うん。地球人Aなら、そんな風に考えるよ、きっと」<br class="upld" />
ぐ…バレてる。ザクロちゃんめ。<br class="upld" />
ずしん…ずしん…<br class="upld" />
ザクロちゃんは、ざくろさんに微笑みながら、こちらに向かって歩いてきた。<br class="upld" />
一歩、歩くごとに地面が揺れる。<br class="upld" />
ほんの数歩で、彼女の巨体は、ざくろさんの部屋の頭上までやってきた。<br class="upld" />
空が彼女の股で覆われて暗くなる。<br class="upld" />
まだ、地面が揺れている。<br class="upld" />
彼女が立っているだけで、その足は地面を数十メートルはえぐり、形を変えていた。<br class="upld" />
「ふむー、小さくて、よくわからないな」<br class="upld" />
言いながら、ザクロちゃんが屈みこんできた。<br class="upld" />
その身体の動きが起こす風圧で、僕が隠れている部屋が揺れている。<br class="upld" />
僕の身体どころか部屋よりも大きな彼女の瞳が、きょろきょろと動いて、見下ろしていた。<br class="upld" />
その瞳は、僕の部屋を向いているようだったが、小さすぎて僕を認識できないのかもしれない。<br class="upld" />
恐ろしい…<br class="upld" />
彼女達にとって、文字通りに自分が微生物並みの大きさ、存在である事があかる。<br class="upld" />
ザクロちゃんには日常的に小人にされて玩具にされているけれど、いつも手加減はしてくれている。<br class="upld" />
でも、今日は違う。いつもよりも、さらに大きな身体で、僕をすり潰そうと探しているのだ。<br class="upld" />
あまりの恐怖に、僕は窓から離れて部屋の隅に隠れた。<br class="upld" />
「おーい、地球人Aよ。居たら、出てきたまえ。<br class="upld" />
 そうしたら、一瞬で楽にしてあげるよ」<br class="upld" />
ザクロちゃんの巨大な口が動くと、轟音と風圧が周囲を襲った。ざくろさんの部屋の窓は割られ、周囲の窓も割られる。<br class="upld" />
僕は恐ろしくて震えるしかなかった。<br class="upld" />
「うーん、ここには居ないかな?」<br class="upld" />
ザクロちゃんが残念そうに言う声が聞こえた。<br class="upld" />
そーっと見上げると、残念そうに首を傾げている。<br class="upld" />
それから、ザクロちゃんは無造作に手を上げ、手のひらを開いて、下ろしてきた。<br class="upld" />
…潰される!<br class="upld" />
もうだめだと思った。<br class="upld" />
今までとは比較にならない轟音が周囲を襲い、部屋が傾いたのが分かる。<br class="upld" />
窓の外に、どこまでも続く肌色の壁…ザクロちゃんの指が見えた。<br class="upld" />
この部屋は、ザクロちゃんの指の間に、丁度挟まれているらしい。<br class="upld" />
彼女の指は残念そうに、地面をえぐって弄んでいたが、やがて地面を離れた。<br class="upld" />
「まあ、居ないみたいだし、ざくろさんの部屋を潰すのは最後にしようかな。<br class="upld" />
 シミュレータとはいえ、やっぱり潰すのは抵抗ありますね…」<br class="upld" />
「うふふ、ありがとう」<br class="upld" />
ザクロちゃんは、再び轟音を立てて歩きながら、ビル街の方に戻っていった。ざくろさんも、少し嬉しそうだ。<br class="upld" />
ひとまずは、助かったらしい。<br class="upld" />
巨人の姿が少し離れただけだが、僕は、ほんの少しでも生き延びた事が嬉しかった。<br class="upld" />
窓から見ると、3人の巨人は思い思いに街を蹂躙し始めていた。<br class="upld" />
ザクロちゃんと流華さんは、勢いを付けてビル群を踏み潰したり、手のひらで叩いて叩きつぶしたりしている。<br class="upld" />
ざくろさんは特に表情も変えず、淡々と、事務的に足を下ろしてから、ぐりぐりと一帯を踏みにじるという動作を続けていた。<br class="upld" />
3人の巨人が隙間なく、ビルを踏みにじって街を蹂躙していく光景は、宇宙怪獣が街を破壊していた時よりも遥かに力強く圧倒的だった。<br class="upld" />
「そうだ、踏み潰すのも良いですけど、こうすると面積も広くなるし、漏れも無くなりますよ」<br class="upld" />
何かを思いついたかのように、流華さんは言うと、僕に背を向けるようにして街の上に腰を降ろした。<br class="upld" />
彼女のお尻の下で、無数のビル群が消えた事だろう。<br class="upld" />
流華さんは、そのまま街に手をついて、身体を支えるようにして、お尻を地面に擦り付けるようにして、下敷きにしているビルをすり潰していった。<br class="upld" />
「お、お尻に敷いて潰しちゃうのって、シミュレータの街でも、さすがにかわいそうなんじゃ…<br class="upld" />
 地球人の考える事は怖いなぁ」<br class="upld" />
「まあまあ、そんなこと言わず、ザクロちゃんもやってみましょうよぉ。<br class="upld" />
 これだけで、1000人位、殺害数増えますよ?」<br class="upld" />
「それじゃあ、私もやってみるとしようかな…うわ、ほんとに1000人位増えた!」<br class="upld" />
ザクロちゃんも流華さんと並んで街の上座ると、一緒にお尻を擦り付けて、面白そうにしている。<br class="upld" />
「私が言うのもなんですけど、シミュレータとはいえ、同じ地球人をお尻に敷いて大量虐殺するとは、すごいですね、地球人Bさん。<br class="upld" />
 …あ、ほんとに1000人位増えた」<br class="upld" />
「あはは、AIなんて、みんな滅んじゃえば良いんですよ」<br class="upld" />
ざくろさんも2人に並んで腰を降ろすと、尻の下の感触を楽しむようにしている。<br class="upld" />
下着姿の女の子達がお尻を並べている光景だが、その下では数千人の人間がすり潰されているのだ。<br class="upld" />
3人はしばらく仲良く座っていたが、やがて、街の蹂躙を再開した。<br class="upld" />
もう、街の大半は彼女達の身体によって廃墟に変えられていた。<br class="upld" />
「なんか、あそこの建物、人がいっぱい居るんじゃないかな?」<br class="upld" />
ザクロちゃんが、30階建て程の、大き目のビルを指さし、3人はビルに近づいていった。<br class="upld" />
彼女達の足首位の高さはある高い建物だが、彼女達がその気になれば、一瞬で蹂躙されてしまうだろう。<br class="upld" />
3人はビルを取り囲んで、地面に這うようにして覗き込む。<br class="upld" />
「そうですね、何か動いていますね」<br class="upld" />
「あはは、虫けら以下ですねぇ」<br class="upld" />
ざくろさんと流華さんが、ビルを観察しながら言った。<br class="upld" />
ザクロちゃんも含めて、どうやって玩具で遊ぼうか考えている残酷な女子の目だった。<br class="upld" />
「そうだ、水攻めにしちゃいましょうか」<br class="upld" />
口を開いたのは、流華さんだ。<br class="upld" />
流華さんはビルを跨いでしゃがみ込むと、下着を降ろし始めたので、思わず見とれてしまう。<br class="upld" />
僕の居る所からは、流華さんの女の子が丸見えになった。<br class="upld" />
「えーと、地球人Bさん? 何をするおつもりで?」<br class="upld" />
急に下着を降ろしてしゃがみこんだ流華さんを見て、ざくろさんは驚いているようだ。<br class="upld" />
「おしっこしたいなーって。<br class="upld" />
 男の子も見てないし、良いですよね?」<br class="upld" />
恥じらいも無い様子で、流華さんは股間の割れ目をビルの上空に向けて狙いを定め始めた。<br class="upld" />
彼女の巨大な女性器は小さく震えて、排せつ物を放出する準備をしているように見えた。<br class="upld" />
「ま、まあ、地球人Bさんが良いなら良いけど、動画は編集しとくね」<br class="upld" />
むしろ、ザクロちゃんの方が彼女の様子を見て、少し引いているようだ。<br class="upld" />
流華さんは、恥ずかしがる様子は一切なく、満足そうにビルを見下ろすと、恍惚の表情で、排せつ行為を始めた。<br class="upld" />
彼女の股間の割れ目から、勢い良く放出された液体はビルを揺らしながら、まき散らされる。<br class="upld" />
「うわービルの中は、地球人Bのおしっこでいっぱいだな…」<br class="upld" />
「200人位、殺害数増えました。ビルの中、結構詰まってましたねー」<br class="upld" />
ザクロちゃんは呆れたように言ったが、流華さんは勝ち誇ったように、腰を揺らして、残った尿を絞り出そうとしている。<br class="upld" />
やりたい放題の3人の巨人を、僕は震えながら見ているしかない…<br class="upld" />
それから、街が完全に破壊しつくされるまで、1時間もかからなかっただろう。<br class="upld" />
「はて? 地球人AさんのAI、見つかりませんね?」<br class="upld" />
「やっぱり、ざくろさんの家に居たのかな?」<br class="upld" />
流華さんは、もう生き残っている者も居ない街をまだ踏みにじっていたが、ざくろさんとザクロちゃんは話しながら、僕が居る部屋に近づいてきた。<br class="upld" />
街はもう、すっかり廃墟なのに、まだ、僕のAIは見つかっていないのか?<br class="upld" />
一体、僕のAIはどこに隠れているんだ。<br class="upld" />
ずしん…ずしん…<br class="upld" />
数キロはある距離も、彼女達にとってはほんの数歩だ。<br class="upld" />
「ザクロちゃん! ざくろさん! 僕は本物だ!」<br class="upld" />
僕は恐怖に震えながら、声にならない声を上げるが、彼女達の大き過ぎる足音にかき消されてしまう。<br class="upld" />
ずしん…ずしん…<br class="upld" />
巨人達の無慈悲な足音は、すぐに僕の頭上に迫ってきた。<br class="upld" />
「私の部屋ですし、私が踏み潰しますね」<br class="upld" />
最後に聞いたのは、淡々としたざくろさんの声だった。<br class="upld" />
最後に見たのは、ざくろさんの綺麗な足の裏だった。<br class="upld" />
虫けら以下の存在に対して、ざくろさんは容赦が無かった。<br class="upld" />
僕の悲鳴は、最後まで彼女達の足音にかき消されたままだった。<br class="upld" />
…ぷち。<br class="upld" />
<br class="upld" />
<br class="upld" />
4.いつからお前は本物だと錯覚していた? AIなんて滅んでしまえ<br class="upld" />
<br class="upld" />
(以下有料版)縮小授業

(概要)

男性が1/20サイズに縮小されて、生殖の道具として管理されている世界。
ある日、少女達の性教育の実験台として男達が教室に連れてこられました。

20倍サイズの巨人とはいえ、初めて会う少女達に少し憧れていた男達。

先生は笑顔で女生徒たちに言いました。

「みなさーん。まずは最初に、どれでもいいから、一匹潰しましょうねー。
 そうすると、他の男も素直に言う事を聞きやすくなりますよー」

彼女達は、小人サイズの男を、同じ人間とは思っていませんでした。

めでたし、めでたし


10000文字位(9000文字位まで無料で見れます)

20倍サイズ位

残酷



1時間目

・20倍サイズの女達の街は危険です


昔、女の子達は、僕達と同じ位のサイズだったらしい。
今となっては信じられない話だ。
どういう事情があって、男性達の体格が女性達の20分の1程度になってしまったのか、今では、よくわからない。
噂は色々ある。男性の間で身体が小さくなる縮小病が流行った事がきっかけとも言われているし、子供を産むメスに比べて、オスの体が小さい方が生物として自然な姿だからとも言われている。
ともかく、女の子というのは、僕達のような男と比べて、20倍位の体格の巨人で、1メートル60センチもある巨人なのだ。
そんな巨人サイズの女達に比べて、男の僕達は身体が小さ過ぎるので、一緒に住む事は危険である。
子供の女の指の太さでさえ、大人の男の足よりも太い位なのだ。虫と間違えられて叩かれたら、文字通りに男は虫のように潰されてしまうだろう。
なので、男と女は居住区もわけられ、特別な理由…生殖等…が無ければ、行き来する事も出来なくなっている。
そんな風に、女というのは、信じられないような大きさの巨人で、実物を見るのも初めてなのだが、その可愛らしい姿には、憧れてしまう…
多分、男というのはそういう風に女に惹かれる生き物なんだろう。
今日、僕は、他の男達と一緒に、生まれて初めて女と会う事になっている。
僕達…数十人の男達は、女達の居住区にバスで移動していた。
バスに乗せられているのは、僕を含めて若い男達ばかりだ。
周りを見回すと、みんな、そわそわして、落ち着かない様子だ。
初めて会う、女達について考えているんだろう。
僕も、確かに少しドキドキしている。
僕達が向かっているのは、女達の中学校である。中学生の少女達に、男という存在を教える為…所謂、性教育の実験台というわけだ。
ある意味、巨人の少女達の見世物のようになるわけだから、少し怖い気もする。
バスの窓から外を見てみると、当たり前なのだが、女達の街は巨人の街だった。
家も、道も、歩いている女達も…何もかもが20倍サイズである。
こんな巨人の街では、恐ろしくて男が1人で歩くのは不可能だろうと思う。
窓から見える、女巨人達の街の景色に僕は興味津々だったが…
ふいに、バスが急ブレーキをかけた。
シートベルト越しに、座席が揺られる。かなりの急ブレーキだ。
前を見ると、前方のフロントガラスが何かで覆われているようだった。
バスの中は騒然とするが…
「皆さん、大丈夫です。落ち着いて下さい!」
すかさず、運転手さんが言った。
それから、横の窓ガラスも、何かの影で暗くなる。
黒い…巨大な瞳だった。
女の巨大な瞳が、僕の横の窓ガラスを覗き込んでいるのが見えた。
僕の顔よりも大きい位の瞳。女の瞳だ。
巨大な女の顔が、横になるようにして、覗き込んでいるようだ。
その顔つきは、巨大だが、丸っこくて、随分と幼く見えた。
そういえば、さっき、幼稚園児と思われる巨人の女の子達が、引率の先生に連れられて歩いてるのが、すぐ横の歩道に見えた。
あの幼稚園児の一団の1人だろうか?
「わー、小人さんのミニカー! 小人さんが動いてるー」
バスの窓を覗き込んでいる幼稚園児の声が、轟音となって響いた。
幼稚園児といっても、身長10センチ未満の僕達にとっては、数倍以上の体格がある巨人だ。その可愛らしい声も轟音として響いてしまう。
よく見れば、バスの前方を塞いでいる影は、彼女の手のひらなのだろう。
ずしん…ずしん…
彼女の声を合図にするように、バスの周囲に何かが落ちてくるような轟音が複数響いた。
恐らく、幼稚園児たちの足音だろう。
「えー、ほんと!」
「私、初めてみるぅー!」
たちまち、バスは女児たちに取り囲まれてしまった。
複数の巨大な女児の瞳が、窓越しに覗き込み、興味津々といった様子で、幼い口調でしゃべっていた。
知っていた事だけれども、やはり女というのは恐ろしい大きさだ。
バスを取り囲んでいる女児たちですら、怪獣の群れのようだ。
それから、バスが揺れて、地面から浮き上がるのを感じた。
バスに乗っている若い男達の何人かが、悲鳴を上げた。僕も叫ぶ寸前であった。
バスの正面を見ると、女児の1人が楽しそうに笑っている顔が見えた。
左右の窓ガラスには、彼女の手と思われる、肌色の柱も見えるので、多分、女児の1人がバスを面白半分に掴んで、観察しているんだろう。
幼稚園児なのに、何という力だろうか。
数十人の男達を乗せた僕達のバスは、女児1人の手によって玩具のように持ち上げられて、観察されているのだ。、
「わー、チビ虫だー」
「動いてるー」
女児たちの巨大な瞳が、バスを取り囲んでいた。
幼い子供達だけに、何をしでかすかわからない。例えば、このまま投げ捨てられたらどうしようもない…
巨大な幼稚園児達に、成す術も無く玩具にされる恐怖を僕達は味わっていたが、時間にしては数十秒ほどだったろう。
「こら、小人さんのバスに触っちゃだめですよ」
女児たちの様子に気づいた引率の先生らしき女性が、彼女達が玩具にしていた僕達のバスを取り上げて、元の道に置いた。
「ごめんなさいね、運転手さん。
 みんな、男を見るのが初めてなんで」
先生らしき女性は、にこやかに言った。
彼女は僕達と同い年位の若い女性のようだが、今の出来事を特に気にした様子は無かった。
僕達にとっては命に係わる事でも、彼女にとっては女児達がミニカーに悪戯していた程度の事なのだ…。
やはり、20倍の体格差というのは、ちょっとした事が命の危険になってしまう位には恐ろしい体格差だ。
「ここでは、よくある事なんで、あんまり気にしない方が良いですよ」
バスの運転手さんは、慣れている様子で、それでも、ため息をついていた。
それから数時間、僕達は女達の巨大な街並みを見上げながら、子供の女達が集まる中学校へと向かった。


2時間目 

・まずは、立場をわからせましょう

当然の事なのだけれど、女達の中学校は、とてつもない大きさだった。
彼女達の体格に合わせて、全てが20倍サイズだ。
ただ、建物の構造は男達の学校と大して変わらないので、まるで僕達が20分の1サイズの小人にでもなってしまったような気分だ。
中学校の校舎の入り口で、僕達はスーツを着た上品そうな若い女に出迎えられた。多分、僕と同じ位…20代前半位の若い先生のようだが、彼女が履いている革靴だけでも、僕達のバスより少し小さい位の大きさである。
彼女は、優雅に屈みこむと、バスから降りた僕達に微笑んだ。
地面に居る僕達から見上げると、スーツのスカートの間から、中が見えてしまいそうだったが、彼女の大きさに圧倒され、そんなエッチな事を考える余裕は無かった。
「初めまして、教師の諸永玲夏(もろながれいか)と申します。
 私達の中学校へようこそ、男の皆さん。
 長い付き合いになるか、身近い付き合いになるかわかりませんが、子供達に色々教えてあげて下さいね」
片膝を付くようにして、諸永さんが一礼する姿に圧倒されながら、僕達もそれぞれに礼をする。
「それでは、教室までお連れしますね。
 私がお運びしますので、皆さん、おとなしくしてて下さいね」
諸永先生は、笑顔を絶やさずにそう言うと、手にしている箱…と言っても、僕達のバスよりも大きい…を地面に置くと、僕達の方に指を伸ばしてきた。
彼女は、慣れた手つきで僕達を摘み上げては、箱に入れていった。
「…ひっ!」
僕の隣の男は、明らかに怯えた様子を見せながら、彼女の指に摘み上げられた。
諸永さんは黒髪ロングでおしとやかな感じに笑顔を絶やさない人なのだが、それでも男の僕達に比べて大き過ぎる。
そんな彼女の巨大な指に摘み上げられるのだから、恐怖の悲鳴を上げてしまう者もいるのはわかるが…
次は、僕の番だった。
諸永さんは、僕の胴体に指を回して摘み上げた。
…う、胴体が締め付けられて痛い。
笑顔と裏腹に、思ったよりも彼女の力は強くて荒っぽく感じた。
まるで床に落とした小物でも拾うような…物として扱われているように僕は感じてしまった。
彼女は笑顔のまま、僕を荒っぽく箱の中に放りだした。
箱の中には、僕のように放り出された男達が、あちこちに転がっていた。
ちょっと…扱いが悪いんじゃないか?
少し怒りが込み上げてきたが、笑顔で次々に男達を摘み上げる彼女の巨体を見ていると逆らうのが怖くなってしまった。
そう…彼女は笑っているが、その笑顔は僕達の方を見ていないようにも思えた。慣れた手つきで機械的に男達を摘み上げていく彼女の姿には、何か違和感があった。
彼女は歩き始める。箱の外からは、車が走り出すような音が聞こえた。僕達を乗せてきたバスが、女達の都市を離れて帰っていこうとしているのだろう。
正直、そのバスに僕も乗せてもらいたい位だ
…と、ふいに空が暗くなった。箱の上から、諸永さんの巨大な顔が覗き込んでいるのだ。
相変わらずの笑顔…少し不気味に感じる…を、浮かべていた。
「それでは、教室まで、お運びしますね。
 危ないですから、おとなしくして下さいね。
 もし、箱から廊下に落ちてしまうと、子供たちに踏み潰されちゃうかもしれませんよ?」
諸永さんは悪戯っぽく言ったが、笑い返せる男は誰も居なかった。
彼女は、やはり僕達の反応を楽しむように見回すと、箱のふたを閉じた。
それから、箱が空へと持ち上げられ、動き始める。
先程まで、バスに乗ってい運ばれていた数十人の男達は、今は僕と年も変わらなそうな女の子に運ばれている。
…本当に、女というのは、僕達と同じ人間なのか?
女達の身体は大き過ぎて、その力は強すぎる…
少し荒っぽく、箱に入れられた僕達は諸永さんの手によって運ばれていった。
しばらくすると、少女達と思われる賑やかな声が聞こえてきた。
何人もの巨大な少女達が騒いでいると思われる声に、僕達は圧倒されてしまう。
やがて、ドアを開けるような音が響き、僕達を入れた箱のふたが開けられた。
可愛らしいが巨大な、無数の少女達の瞳が見下ろしていた。
「わー、男だー!」
「あたし、動いてるの見るの初めて!」
僕達が挨拶をする間もなく、中学生の少女達は僕達を見下ろして騒いでいた。
「はい、皆さん、落ち着いて。
 男の人達の小さな体では、逃げる事は出来ませんから、あわてなくても大丈夫ですよー」
諸永さんが言うと、少し少女達の騒ぐ声が小さくなる。
「それでは、1人が2匹づつ、男の人を持って行って下さいねー」
次に諸永さんが言うと、巨大な少女の群れは、興奮した様子で箱の中の僕達に手を伸ばしてきた。
…な、なんかやばい。
本能的に恐怖を感じた僕は、少女達の巨大な手から逃れようと箱の隅の方へと逃げた。
他の男達も同様で、何かおかしい事を感じているのだろう。僕と同じように箱の中を逃げ回っている。
でも…
そんな事をしても何の意味も無い。
「ひぃぃ!」
すぐに、男の1人が、悲鳴を上げながら、彼の身体よりも大きな少女の手によって握りしめられた。
多分、恐ろしい力で全身を握りしめられた叫びだろう。
「あらあら、そんなに握ったら死んじゃいますよ?
 男は皆さんが思っているよりも小さくて弱いので、気を付けましょうね」
諸永さんの声が聞こえるが、少女達に伝わっているのかわからなかった。
僕は箱の隅の方で、少女達の手が周りの男達を摘み上げていく様子を見て震えていたが、やがて、1人の少女が僕を見下ろしている事に気づいた。
可愛らしい、巨大な目が僕を見下ろしている。
おとなしそうな、長い黒髪の少女だ。
どうせなら、この子に捕まろう…
彼女が僕に指を伸ばしてくるのを、僕は受け入れる事にした。
黒髪の少女の指は僕の胸を摘み上げるようにして、持ち上げた。
苦しい。恐ろしい力で摘まみ上げられ、僕は、あっという間に、彼女の顔の近くまで運ばれた。
彼女は何も言わずに、僕を不思議そうに観察していた。
それから、彼女は僕を胸のポケットに入れると、男をもう一人、同じように摘み上げ、自分の席の方に歩き始めたようだ。
ずぅん…
彼女が制服のスカートを抑えながら椅子に腰を降ろすと、地震のような振動を感じた。
大き過ぎる…やっぱり、女というのは大き過ぎる。
僕よりも10才近く若い、小娘のような少女ですら、これほど圧倒的なのだ。
僕達は彼女の手によって、机の上に並べられた。
周りを見ると、他の少女達の机でも同じように、男が2人、置かれている。
「い、いきなり何をするんだ!」
抗議の声を上げている男も居たが、諸永さんも教室の少女達も、全く相手にしていない。
諸永さんは、僕達の様子など気にしていないように、教室内の少女達に向かって笑顔を見せながら言った。
それは僕達にとって、恐ろしい宣告だった。
「みなさーん。まずは最初に、どれでもいいから、一匹潰しましょうねー。
 そうすると、他の男も素直に言う事を聞きやすくなりますよー」
『はーい!』
教室中に、少女達が返事をする声が響いた。
「わー、どっちを潰しちゃおうかなぁ、悩むなぁ?」
「あはは、前から男を踏み潰してみたかったんだー!」
楽しそうに話す巨人の少女達が、値踏みをするように僕達を見下ろしていた。
中学生らしい無邪気な様子なのかもしれないが、話している内容は恐ろしい。
僕を運んできた、おとなしそうな子も、少し恥ずかしそうな笑みを浮かべながら、僕ともう一人の男を交互に見ている。
当然、男達は、『人権がなんだ、犯罪がなんだ』と抗議の声を上げている。
そりゃそうだろう。いくら体格差があるからといって、同じ人間だ。
虫でも扱うように、女が男を簡単に殺したりして良いはずがない。
だが、諸永さんは、冷たい笑みを浮かべながら言った。
「そうですね、男の皆さんにも人権は存在します。同じ人間ですもの、当然です。
 ですが、男の皆さんの人権は、あくまで男の皆さんの間での事」
それから、諸永さんは僕達を見下ろしながら、からかうように言い始めた。
「見ての通り、女と男では体格を始めとして能力の差が大きすぎます。
 言い方を変えると、私達から見ると、男なんてゴミ同然です。
 だからね、私達、女達の都市では男達の人権は適用されないんですよ。残念でした」
絶望的な諸永さんの宣告だった。
そんな話は聞いた事が無い…無いが、すでに僕達を玩具として消費しようとしている少女達の姿を見ていると、冗談には思えなかった。
諸永さんが言い終えても、周りの男達は騒いでいたが…
「…うるせーぞ、虫けら共!
 おとなしくしねーと、全員まとめて金玉握って、踏み潰すぞ!」
今までとは違うドスの聞いた声で諸永さんが怒鳴ると、僕を含めて全員静かになった。
耳が痛い。鼓膜が破れていないか心配になるような、女巨人の怒声だった。
「…ほら、私が少し大声を出しただけで、男の皆さんは怖くて動けないでしょ?
 まあ、言う事を聞いてくれれば、半分は生き残れるかもしれませんよ」
諸永さんは、また、元のように静かに言った。
もう、逆らう男は居なかった。
「あはは、どっちの子をいじめちゃおうかなー?」
僕の隣の席では、ツインテールの小柄な少女が机の上の男2人を眺めていた。
「んー、こっちの子、私の方を見てて元気がいいね」
数秒後、彼女は元気が良さそうな男の方に手を伸ばすと、摘み上げた。
男は何やら手足をバタバタとさせていたが、ツインテールの少女は気にした様子も無く、彼の頭を摘まんだ。
…グキ
何か重い物が折れるような鈍い音が響いた。
ツインテールの少女の巨大な指は、摘み上げた男の頭を180度捻って、後ろに向けていた。
つい、数秒前まで抵抗していた男の身体は動かなくなった。
「うわー、思ってたより、男って小さくて弱いなー」
ツインテールの少女は、男の頭を摘まんだまま捻じ切って、その様子を笑いながら観察している。
さらに周りを見渡すと、別の長髪の少女は男を床に床に降ろし、その上に、20センチ以上…僕達の身体の倍以上…の巨大サイズな上履きを履いた足を下ろしていた。
彼女は椅子に座ったまま足を組んで、片足を男の上に乗せていた。
身長10センチにも満たない僕達にとっては、少女達の片足でも大き過ぎる。
体重をかけられなくても、足の自重だけでも潰されかねないだろう。
…ぐしゃ
何かが潰れる嫌な音がした。
男の上に乗せられたいた少女の上履きは、しっかりと床を踏みしめ、その間から赤黒い液体が漏れていた。
踏み潰したんだ…虫みたいに…
どこを見ても、そんな光景が広がっていた。
少女達は、みんな、どれだけ、男というのが小さくて無力な存在かを確認するように、様々な方法で弄んでいた。
これが、彼女達の『性教育』だというのだろうか?
少女達の様子を見るに、男を虫のように殺している罪悪感のようなものは皆無のようだ。
圧倒的な体格差と力の差の前に、男達は成す術もなく少女達に蹂躙されていったが、それは他人ごとでは無かった。
「あなたも、あんな風にされたいの?」
頭上が暗くなる。
僕を摘み上げて机に連れてきた、おとなしそうな少女の顔が、頭上から見下ろしていた。
僕が答える間もなく、少女の指が再び僕を摘み上げた。
胴に回された彼女の細い指は、絶望的な力強さだった。
すぐに、彼女の胸の辺りまで、僕は摘み上げられる。
「このまま胴体を握り潰して欲しい? それとも首を捻ってあげてもいいのよ?」
少女は、恥ずかしそうに微笑みながら言った。
天使のような…女神のような…とても可愛らしい笑顔だと思った。
そんな笑顔で、彼女は僕を虫のように潰そうとしている。
嫌だ…どっちも嫌だ…
「い、嫌だ。助けて下さい」
僕は、ぶるぶると震えながら彼女に言った。
「死にたくないの?
 でも、見せしめに殺せって先生が言ってたからだめなの…
 …あ、潰すのは、もう一人の子でも良いのか、別に」
彼女は不思議そうに首を傾げていたが、机に居たもう一人の男を摘み上げた。摘み上げられた彼も、悲鳴を上げる。
僕も、もう一人の男も、握られた手の間から、頭だけを出すようにしっかりと少女に握られていた。
文字通り、手も足も出ない。
それ程には彼女の手から圧力を感じなかったが、それでも、彼女の手は壁のようにびくともしなかった。
「うーん、どっちの子にしようかな?」
彼女の瞳が、両手に握りしめた僕と別の男を見比べている。
僕か、この男か、どっちかが…確実に彼女の手によって握りつぶされる。
嫌だ…死にたくない…
僕は、自分より遥かに年下の巨人の少女を、すがるように見上げていた。
「じゃ、やっぱり、君にしようかな」
やがて、彼女が僕の方を見ながら微笑み、僕を握る彼女の手に力がこもった。
握り潰される!
少女の手によって握りつぶされる恐怖で僕は叫びそうになったが…
「助けてくれぇ!!」
それよりも先に、彼女の反対の手で握られている男が叫び始めた。
少女の巨大な手が、渾身の力を込めているように震えている。
その余波で、反対側の僕を握る手にも力が入っているようだ。
男の恐ろしい絶叫が響き、すぐに聞こえなくなった。
彼は握りつぶされたんだろう…
僕は恐ろしくて、そちらを振り向く事が出来なかった。
「あはは…思いっきり握っちゃった。ほんとに男って弱いんだな。
 良かったね、君、生き残れたよ?」
頭上から響く少女の声に見上げると、彼女は少し興奮したように微笑んでいた。
彼女は、男を1人、握り潰した事に興奮しているものの、やはり罪悪感は無いように見えた。
同じ人間として…少なくとも、対等の存在として、彼女が男を見ていない事は明らかだった。
比較的おとなしそうに見えた彼女でも、この様子である。
それから、僕は彼女の手によって机の上に降ろされる。
彼女はニコニコしながら、手に着いたゴミでも拭くように、男を握り潰した手をティシュで綺麗にしていた。
ゴミ…
僕達、男という存在は彼女達にとっては玩具かゴミなんだ…


(以下有料版)