一万倍サイズの女の子が小人の国に上陸して自由奔放に歩き回り、小人を食べてみたり、
やりたい放題してしまった後、学校の課題のために小人の首都のど真ん中でパンツを下ろしてしゃがみ、お尻の下で逃げ惑う小人をよそに特大のモノをひり出して、支配した証のモニュメントを立ててしまうお話になります。
(全36375文字)
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1.超巨大少女上陸

 有史以来、人々は己の偉業を称えるために、モニュメントと称して様々な石碑や建造物を建て、その称賛と功績を後世に伝えてきた。
 やがて、モニュメントは形を変え、より大きく、より高く、そして何処よりも巨大で偉大なモノを競うように造るようになった。
 人々もいつしか、巨大建築物を賞賛し、造り出す権力者や偉人を賞賛するようになっていった。

 そして、時代が過ぎ去り高度な機械文明によって繁栄した現代でも形を変え、高層ビルやタワーなど、その経済力と技術力を余すことなく織り込んだ巨大構造物は、街のランドマークとして、多くの人々の賞賛を浴び続けている。
 巨大建造物が建ち並ぶ街は、まさに人類の繁栄の証なのだ。そして同時に、そんな巨大構造物は往々にして権力の象徴であることを教えてくれる。

 そう、いつの時代も巨大な建造物は、多くの人々の心を魅きつけ、繁栄のモニュメントでもあるのだ。

***

 その日、最初に異変に気付いたのは領海内を哨戒中の船舶だった。

 10m先さえ見えないほどに深い霧が立ち込めたこの日、任務中の哨戒艦はレーダーに写し出された巨大な影を発見したのである。
 それは巨大な船のようにも思えたが、船にしてはあまりにも大きすぎる。かといってこの辺りには島と呼べる陸地などは海図に載っていない。

 直ちに本国へこの事態を報告し、哨戒艦は全速力で正体不明の巨大な影の調査をすることにした。
 しかし、事態は恐るべき速度で進行していた。なんとその巨影は信じられない速度で移動していたのだ。
 艦内が得体の知れない超常現象に浮き足立つ中、甲板から外を監視していた船員が深い霧の奥から迫り来る巨影に気付き、その正体がなんであるか目を凝らして確認してみた。

 影は長い塔のように海面から突き出て、厚い雲の中に続いている。ここからだとはっきりとはわからないが、距離から換算すると、その巨大な塔の幅はこの船よりもずっと大きいと思われる。
 どう見ても人類が造り出した構造物には思えないその塔は、なんと2本もあった。しかも、交互に動いてこちらに近づいてきているのだ。

 船員は、慌てて上官に報告しようとしたが、その巨影はあっという間に哨戒艦の至近距離に迫ると、激しい衝撃と共に哨戒船を一瞬で海の藻屑に変え、ザブザブと大波を立てながら霧の中へと消えていったのだった。

***

 海沿いの街では、海の向こうから周期的に訪れる不穏な振動を感じ取りざわついていた。その振動は次第に大きくなり、誰しもが刻々と近づいてくるソレに得体の知れない恐怖を感じていた。

 そしてついに街に振動の元凶が現れる。それは、塔と思ってしまうほどに巨大な太ももだった。
 ザブザブと海を割りながら迫ってくるのは、間違いなく太ももだ。だが、その大きさはあまりにも大きすぎる。
 大きすぎて、太ももから上は雲の上に隠れてみることが出来ない。街の誰もがその太ももが何を意味しているかに気付き、パニックに陥った。
 遠くの巨大な塔のような脚を持つ巨人が港に向かってきているのだ。

 迫り来るソレは、水平線の向こうから海を掻き分け、雲を蹴散らし、悠々と進んできていた。
 その距離はみるみると縮まっていく。
 そして遂に、巨大なの太ももが街へと近づくにつれ、巨人が歩いて引き起こした波濤が街に襲いかかり、船は転覆して丘に打ち上げられ、港湾施設は迫り来る津波によって破壊される。

 巨大構造物が街に接近すればするほど、人々はパニックに陥っていく。
 街中に響き渡る轟音と共に迫り来る巨大な脚を見ては誰もが絶望し、狂ったように逃げ惑うしか出来なかったのだ。
 しかし、そんな人々の真上に巨大な影が差した。全員が上を見ると、そこには想像を絶する存在が迫ってきていた。
 それは、あまりにも巨大な脚の裏。海から引き抜かれた足が、大量の海水を滴らせながら、人々の真上に振りかざされたのだ。

「うあああああああああ!!!」

 人々は逃げ惑うのを止めた。その代わりにまるで神でも崇めるかのように恐怖の眼差しで空を見上げる人々がいた。中には涙を流して拝む者もいた。
 しかし、そんな地上の事など省みず、その場所へ巨大な足が無慈悲に迫ってくると、その巨体に見合うだけの質量を持った巨大な足裏が大地に衝突した。

 ズドオオオオオオオオンンン!!!
 壮絶な地響きと共に、数千人を超える街の人々が一瞬にして地上から消え失せてしまうのだった。

***

「ふぅ~やっと着いたかな?」

 グレー色の制服と思われるブレザーを着たカナンは足裏の感触が変わったことを感じ取り、長い時間海を歩いてようやく丘に上がってこれたことを実感していた。

「ちょっと雲が多いかな?でも、こうすれば問題なさそうだね♪」

 そう呟いたカナンは、太もも付近に広がる分厚い雲を左足でサッとなぞると、それだけで太陽の光を遮っていた雲は散り散りになり、地表が見えてくる。

「~♪」

 あとは、残った雲を掻き消すために左足をぐるぐると回して風の渦を作り出せば、あっという間に地上は眩しい日射しが照りつけるようになった。

 そして曇天から姿を見せたそこは、1万分の1の極小サイズのミニチュア都市がところ狭しと広がっていた。

「思ったより小さいかな?でもここならなんとかなりそうだね♪」

 鼻歌混じりに独り言を呟くと、眼下に広がる大都市に向かってカナンは語りかけた。

「小人の皆さんこんにちは。学校の課題で小人の国を征服することになりました。そこで皆さんには申し訳ないですが、私に支配されちゃってください♪」

 カナンが言い終わると、砂粒のような街のあちこちでパニックになっているようだ。
 巨大すぎる彼女からは、この大陸の小人たちの動きは小さすぎて目に入らないが、わらわらと小さいながらも言葉に出来ない恐れと戸惑いが渦巻いているのが感じ取れる。
 しかしそんな小人の事情などお構い無しにカナンは話し続ける。

「もっと貴方達の街を見てみたいから歩くね♪踏み潰されたくない人は早く逃げた方がいいよ?」

 そう言った瞬間、カナンが歩き出した。
 ズウウウンン!!一歩踏み出す毎に大地は揺れ動く。大陸が沈み込んでしまいそうなほどの巨大な足裏がが下ろされてゆき、小人達は慌てて走り出すが、もちろん逃げられるようなスピードでは決してない。

 体長15kmのカナンの足のサイズは2kmを軽く越える。その超重量級の足が踏み下ろされたとたん、大地には轟音と激震が響き渡り、その過程で生まれた衝撃波は踏み潰しを免れた周囲のビルや逃げ遅れた者達をそのまま消し飛ばして跡形もなくしてゆく。

 しかし、そんな彼らに対して罪悪感を感じるでもなくカナンは歩き続ける。カナンにとってはただ歩いているだけなのだ。カナンが一歩進むごとに小人の街の大半が沈んでゆく。
 巨大な存在による被害の規模は想像を絶しており、彼女の目の前に広がる街並みは瞬く間に踏み潰されて消滅してしまっていた。

「んふっ、この街は私のもの~♪そう思うと、こんなにちっさい街でも可愛く感じるから不思議だね♪」

 一方的な宣言で自分の物にした小さな街の上を鼻唄を歌いながら、闊歩するカナン。しかし、その足元には人がいないわけがない。彼女に支配宣言を受けた街は、逃げ惑い混乱する人々で溢れかえっている。だが彼女から見れば、砂粒のように小さい人間たちの事など素足の裏ですら感じ取ることが出来ない存在でしかない。

 彼女が、歩いただけで街の一区画は足裏に消え去り、人間の痕跡は跡形もなく圧縮された大地と同化してしまう。
 人口30万人を越す中核都市であっても、彼女から見たら灰色の地面が広がるばかりで、そこにいる人間などはまともに見えない。
 天高くそびえ立つ高層ビルでさえ、たかだか1〜2センチ程度の突起物にしか見えない彼女が歩けば、どこに足を下ろしても小さな人間たちの街を踏み潰してしまうのは当然の事だった。

「えへへ、みんなちっちゃくて可愛いなぁ~」

 自分が歩くだけでサクサクと潰れて、奇麗な足跡に変わる様子を、カナンは無邪気に楽しんでいた。
 そして、また街の一区画が足の裏で圧縮される。そんな楽しくも残酷な蹂躙劇は彼女の気まぐれで続けられていく。

「あれ?みんな私から逃げてるのかな?んふふ、健気だね~、ほら頑張って♪」

 カナンは、足元を逃げ惑う小人達を蹂躙すべく、左足を高く振り上げると、小人たちの真上に街の残骸で汚れた足裏を見せつけながら、そのまま大地を踏み潰した。

 ズシィイイイイイイイイイイイイイン!!!!
 たった一踏みで数万人の命を無慈悲に奪っていった彼女の脚は100m近くも地面にめり込むほどの質量を持っている。
 踏み潰した部分は地形が変わるほどに陥没し、足の周囲は押しやられた土砂で盛り上がり、新たな山脈を産み出した。彼女の足裏で潰されただけでなく、周りにも及んだ災害の範囲は計り知れない。

「こうやって足跡が綺麗に残ると気持ちいいよね~♪」

 自分の作った足跡が気に入ったのか、カナンは小さく笑いながら街の跡をまじまじと見ている。
 彼女が歩いた痕跡はクレーターとなり、彼女の足の形に街が押しつぶされている。巨大な足型がくっきりと浮かび上がり、その圧倒的な質量による破壊のすさまじさが伝わる。

 もちろんその足型の形は小人の住んでいる街だけではなく、永い年月をかけて形成された河川や丘陵すら巻き込んでおり、この大陸が長年をかけて培った地形とは明らかに規模の違うものとなっていた。

(はぁ~♡ちっちゃな街に私が来たんだぞ♡って、踏んづけちゃうの、ゾクゾクして気持ちいい~♪)

 今まで自分の脚に踏みつけられてきた小人達の事など1mmも考えず、カナンはただ単に素足で街を潰しながら歩いて、その街に消えることのない巨大な足跡を刻む、マーキング行為の楽しみを噛み締めていた。
 もちろん彼女の脚は、そこに何人の人間が取り残されていようとも、無慈悲に歩みを止めることはない。

「うん!もっと私のものだってことをいっぱい教えてあげなくちゃ♪」

 そう呟いたカナンは、ズシンズシンと足を踏みならしながら、まだ無事だった街へと迫り始める。

***

 近くの空軍基地から飛び立った戦闘機たちは、蹂躙劇を繰り広げる大巨人にミサイル攻撃をしようとしていた。
 世界最高峰の霊山を軽く超える体長15kmの巨人は、栗色のセミショートヘアをなびかせながら楽し気に歩いている。あんな超巨大少女であっても、彼らが装備している兵器を放てば、ダメージを与えることは出来るだろう。

 射程距離に入った戦闘機から一斉にミサイルが発射される。目標は地上で暴虐の限りを尽くす巨大少女だ。
 幾百のミサイルや機関砲の弾丸が彼女に襲いかかり、焼け焦げた空気の匂いが辺りに立ち込める。
 だが、少女は傷を負うどころか、小さな虫でも払いのけるかのように煩わしそうにするだけで、彼女の身体に触れたミサイルは何一つとしてダメージを与えることは出来なかった。

「きゃっ!なに?なんか飛んできたよ?」

 突然自分に飛来した物体に気付いたカナンが驚いて周りを見渡すと、顔のあたりから腰までの高さをうろついている戦闘機の大群を見つけた。

「も~、ちっちゃいくせに攻撃してくるんだね~」

 言葉とは裏腹にカナンは怒ることもなく、むしろ少し楽しそうな様子で笑うのだった。

(この子達、頑張って自分の街を守ろうとしてるんだ……。すっごく弱い癖に一生懸命頑張ってるんだよね? そんなことされたら、応えてあげたくなっちゃう♪)

 ズウウンン!! 巨大な少女の一歩が戦闘機の編隊に向かって踏み出され、大地を揺るがす。ただそれだけのことで発生した振動は、大地を震え上がらせる。
 こちらを見つめながら、動き出した1万倍の巨大少女の動きに、思わず動揺してしまう戦闘機たち。

「んっふふ~」

 カナンは自分が踏み出しただけで、動揺してしまうホコリのような戦闘機たちを見て上機嫌になると、まずは少し手加減してちょっかいをかけてみることにした。

「ほらほら~♪もっと速く逃げて私を楽しませてよね?」

 ズウウンン!!ズウウンン!!ズウウンン!!!
 巨体に見合う巨大な歩幅の速度から生み出される暴力的なスピードで小さな戦闘機たちを追い回す様に、右手を伸ばして手軽に振り回す少女。その長く伸びた手先に触れてしまった機体は、一瞬にして巻き込まれて、無惨なまでに叩き潰されてしまう。

「あはは♪結構すばしっこいんだね~♪」

 小さな機体から放たれたミサイルをデコピンで撃墜しながら、カナンは楽しそうに笑っている。

 巨大な少女が、戦闘機を追いかけ回す度に、巨大な脚が地表の街並みを踏みにじっていく。
 あの山のような素足の前では、高層ビルも普通の家も人間でさえ関係なしに、それらをぐしゃぐしゃに踏みつぶし、周囲に膨大な砂煙を巻き上げて、あの巨大な足裏に張り付く汚れのひとつに変えてしまう。

 しかし、そんな彼女は自分の一踏みで数千人の命が一瞬にして失われたことなど微塵も気にしていない様子だ。
 続いて脛の辺りを彷徨いていた編隊をまとめてズシン!と足を降ろして、街のなかを逃げてゆく数千を越す小人ごと戦闘機を踏みつけるカナンだが、そこには少しも悪びれた様子はなかった。
 しかし小人達からすれば、それは情け容赦のない一撃に違いはない。そんな理不尽な仕打ちを受けながらも何とか攻撃を続ける戦闘機たち。

「もっともっと逃げなきゃダメだよ?じゃないと私のおもちゃになっちゃうんだから♪」

 楽しそうに呟くカナンは、懸命に戦う戦闘機たちをさらに嘲笑うかのように上体を反らして胸を張り、付き出した胸先で戦闘機を跳ね飛ばした。

 ズドン!と胸先で爆撃機が跳ね飛ばされて大爆発を引き起こす。しかし、その爆炎と残骸は彼女のブレザーをほんの少しだけ汚した程度にとどまる。

「あははっ♪おっぱいの勝ちー」

 そういって軽く笑いながら、胸元を軽く叩けば、散った戦闘機の痕跡は跡形もなくなくなってしまう。
 そして、そのまま残った戦闘機とも戯れるため、戦闘機を追いかけ始めた。

「ほらほら、私のおっぱいで潰されちゃう前に逃げてみて?がんばれ♡がんばれ♡」

 そんな小人を馬鹿にしたような応援をしながらカナンは自分の乳房を両手で持ち上げて、その下にいるちっぽけな存在を見下すのだった。
 最大推力で加速する戦闘機に対して、ただ普通に歩くだけで追いついてしまう巨大少女。
その足元では、巨大な足が振り下ろされる被害が拡大してゆく。
 ドゴォォンン!と轟音が鳴り響き、過ぎ去った脚の下には足跡に置き換わった都市の跡だけが残る。
 人々の懸命な逃避行動も虚しく、数十キロも離れたはずの巨足が持ち上がると、一瞬で数十キロの距離を移動した少女の素足が、人間たちの頭上に翳され暗い影を落とす。
 見上げれば、薄汚れた素足の裏からパラパラと埃や小さな残骸が舞い散り、地表に叩きつけられれば、巨大な瓦礫となって小人たちの街に降り注ぐ。

 その後、カナンの片足が振り下ろされれば、街の一区画分のビルをなぎ倒し、車は踏みつぶされ、人々は蒸発する。
 少女の足裏が通り過ぎた後に広がるのは瓦礫の山か、あるいは踏み下ろした衝撃波でズタズタにされた道路や建物の残骸か。
 どちらにせよ、そこにいたはずの数百数千の人間たちのことなど、巨大少女は気にも留めない。
 いま彼女が夢中になっているのは、目の前をふらふらと飛び回るちっぽけな存在だけだ。

「ほら、頑張って逃げて♪」

 そんなことを呟きながら、足元を逃げ惑う戦闘機に手を伸ばし、指先で機体に触れる。たったそれだけのことで小人の機体は大爆発を起こし、爆炎を発して燃え盛りながら地表に落ちてゆく。

「あはは♪脆いなぁ~♪」

 そんな墜落機のことも意に介さず笑い声を上げるカナンの下半身では今も爆撃機や戦闘機が決死の覚悟で攻撃を仕掛けている。
 しかし、そんな攻撃が通用する相手ではなかった……。

***

「あ~あ、みんないなくなっちゃった……」

 気付けば、カナンの回りにいた戦闘機はほとんど撃墜されたか、弾切れで帰投してしまい、すっかりと小人の戦闘機は姿を消してしまった。

「つまんないなぁ~」

 そんな独り言を呟きながら、カナンは新たなおもちゃがないか、地表を見渡してみる。辺りは、彼女が歩き回った証拠の巨大な足跡がいくつもついており、見渡す限りの巨大なクレーターと化していた。

「あれ?何してるのかな?」

 カナンが見渡してみた先には、郊外の開けた空き地と思われる地区に、黒い砂粒のようなものが集まっていた。
 それは地上部隊が集結している地点であった。
 大きな盆地になっているその場所に所狭しと大型の戦車や装甲車が展開している。

「あはは、なにそれ。今度はそれで、私と戦うつもりなの?」

 大音量の嘲笑が世界を揺るがす。今度は、カナンは彼らに明確な興味を示し始めていた。

(んー、どうやって遊んであげよっかな?)

 そんな事を考えているカナンは、地上から雄大に見える様に自分の巨体を見せつけながら、ゆっくりと戦車がいる盆地に迫ってゆく。

 ズシン!ズシン!と歩く度に、地表の地形は変えられてゆく。それでもお構いなしに彼女が歩む足を踏み下ろす度に、踏み付けられた砂粒のような小人がすり潰されていく。

 巨大少女が近づいたのを契機に、地上部隊の砲火が一斉に始まった。数十門の戦車砲から発射された砲弾はカナンの足の指先や指の股に降り注ぐが、そのどれも彼女の肌にかすり傷すら負わせられない。

(わ~♪必死な所が可愛い~♪)

 意に介さない様子で足元を覗き込んでいるカナンは、今も砲撃を加えている戦車を見つけると、ちょんと足の指先で突いた。

 ズウゥン!!凄まじい衝撃波と共に一区画丸ごと消し飛びクレーターが出来上がる。
 そんな攻撃をされた小人の戦車は跡形もなく吹き飛び、周りにいた車両も衝撃で横転するなど、甚大な被害が出ている。
 しかし、カナンはそれでも懲りずに砲弾を送り込んでくる戦車をいとおしく思い始める。

「あはは♪頑張って抵抗してるんだね?んふふ~いいね~♪」

 既に壊滅に近い損害を被っている地上軍だが、そんな彼らでも必死になって義務を果たそうと果敢に攻撃を加える軍隊を見ていると、可愛いと感じ始めたようだ。

「ほらほら、そんな攻撃じゃ私は倒せないよ?もっと頑張ってよ♪」

 カナンの楽し気な応援を受けて、地上部隊もどうにか攻撃を続行して戦車から砲弾を次々に発射する。
 そんな小人軍の熾烈な攻撃が続く中で、カナンは攻撃の殆どが彼女の膝より上に届いていないことに気付いた。

「あっ、そっか、私がおっきすぎるから、攻撃が届かないんだね。じゃあこうしてあげる」

 そう言って、カナンは瓦礫の山脈のような巨体を屈めていく。そして、両ひざを軽く広げしゃがみ込んだ姿勢になって、地上の攻撃をより生身に近いところで受ける形に移行した。
 巨大な足が、住宅地や道路を踏み潰しながらしゃがんでいく姿は凄まじい迫力と破壊をまき散らしている。

「ほ〜ら♪これで届くよね?ちゃんと当てないとひどい目に遭うよ?」

 巨大な少女の姿勢変更に気圧された地上軍もすぐに持ち直し、ポツポツと光を放ってカナンを攻撃してきている。
 しかし、その攻撃は捲れたスカートから現れた巨大パンツの繊維に遮られ、彼女の美しい身体を汚すことは叶わない。

「あはは♪なんだかくすぐったいな~」

 そう言ってクスクスと笑うカナンは、総力を挙げ自分を攻撃してくる地上の攻撃を目の前にしてご満悦だった。
 そんな光景を見下ろしながら、悠長に攻撃の当たっている太腿の付け根をポリポリと掻いている。
 大量の人間たちにスカートの中を見られているのに、恥ずかしさを全く感じることすらなかった。こんな微生物レベルの人間ごときに見せても、毛の一本にも恥ずかしいと思うことなどないのだ。

「もう~♪このパンツお気に入りなんだからあんまり汚さないでよね!」

 そんなことを言いながらぷりぷりと怒る彼女だが、とても楽しんでいるようにも見える。
 そして、今度は指先で戦車を軽々と掴んでしまう。掴まれた戦車は巨大な指から逃れようと必死に指の間でキャタピラを回すが、カナンの圧倒的な握力の前には無意味であった。

「あれれ?こんなに簡単に捕まっちゃっていいのかな〜?みんなを守る大切な戦車でしょ?あはは♪」

 そう言いながら、カナンは摘まんだ戦車を嘲笑を込めた目付きで観察するように見下ろす。

「あは♪みんなちっちゃいね~♪私の指だけで潰れちゃいそう♪」

 そう言ってカナンは突如、戦車を口元へと運び……口に放り込んでしまった。

「んちゅ、ぅむ……♡」

 味を楽しむように口に含んだ戦車を舌で転がしてみる。大して味のない極小の戦車の中に、微量な塩っけが混じり合って絶妙に美味しい。
 いや、美味しいというよりも、この世界では精強な戦車も、彼女の口内では飴玉以下にしかならない。その優越感が彼女を昂らせて、ますます上機嫌になっては、次々に戦車を口に運んでいく。

「んぐんぐ……♪ちゅぱぁ……♡んっふふ~♪美味し♡」

 地上最強の戦車部隊といえども、巨大な彼女の口に放り込まれてしまえば逃げられない。
少女の舌の動きで身体を磨り潰されながら飲み込まれるのを待つしか無いのだ。

「はふ……」

 その後は戦車だけに留まらず、目の前にいた兵士や車両も二口、三口とまとめて摘まんでは口にいれて、咀嚼したのち、カナンは上を向いて大きく伸びをした。

「んっ、ふぁぁ……ごちそうさまでした♪」

 まるで食事を終えたような言い方をしたカナンだが、地上では彼女が食い散らかした部隊の成れ果てしか残っておらず、その報告を聞けるものはいなかった。

「でもまだ、足りないかな……?」

 大量にいた地上部隊も巨大な彼女からしたら、シュガースティック一本分程度のカロリーでしかない。
 この程度では彼女を満足させることは出来そうになかった。

(もっと美味しいの、食べたいなぁ)

 再びカナンは周りを見渡してみる。地上の街は最初に比べて大分数が減ってはいるものの、まだ結構な数が残っている。
 一先ず、破壊され尽くしたこんな所ではなく、もっと人が多い場所に移した方がいいかもしれない。
 カナンは立ち上がり、自らの躰の大きさに相応しい速度で移動を始める。一歩を踏み出すたびに、地震のように大地が震え、更に遠くのビル群が崩壊する。

 ズウゥン……ズウゥン……。
 そんな地響きを鳴らして歩み出したカナンは、次の目的地を定めて再び歩き出したのだった。

***

 一方地上では多くの市民が逃げ惑い、地下へと避難している。ここは都市の中心に位置した地下鉄の駅だ。
 都市の中心部ともなると、地下への入り口も広く、複数の路線に乗り入れるために複雑に入り組み、広大な地下街も形成されたのだが、今の市民にとってはここが防空壕代わりのシェルターになっている。

 ズウゥン……ズウゥン……。
 足元からは定期的に振動が伝わってくるが、それは超巨大少女が歩いたり身体を動かしたりするときの地震の揺れによるもので、現実離れした巨大な侵略者の存在が夢ではないことを突きつけて来る。
 だが、ここにいれば足元の少女に踏みつぶされることは今のところ免れている。

 しかし、少女は時折立ち止まって何かを探すような仕草を見せたあと再び何処かへと歩いてゆく。それは恐らく新たな獲物を探しているのだと思われた。
 遺伝子の片隅に記憶された捕食者に狙われる恐怖が呼び起こされ、市民たちの精神を少しずつ蝕んでゆく。

 そんなことを考えつつ避難民たちはじっと息を潜めて身体を丸める様にして侵略者の行進が過ぎ去るのを祈っていた……のだが。

 ズウゥン……!ズウゥン……!!
 突然先ほどよりも強く振動が伝わってくるようになると、頭上からパラパラと埃のようなものが落ちるのを感じる。
 少女の巨大な体躯が確実にこちらに近づいて来ているのだ。

 どうか、見つからずに通りすぎてくれ……!そう願わずにいられない。
 ズウゥン!!一際大きい衝撃と揺れが地下を襲い、人々の不安と恐怖が臨界点を超えてしまう。

「いやだ!!死にたくない!!」

 そんな市民たちの悲鳴が地下通路に木霊する中、ガラガラガラ……という崩れていく瓦礫の音が聞こえてくる。
 そして次の瞬間、今度は天井に亀裂が走ったかと思えば、瞬く間にそれが広がってゆき、頑丈だと信じていた天蓋が激しい裁断音と共に取り払われ、代わりに巨大な少女の笑顔が現れた。

「あはは!みーつけた♪」

 地上からの天使のような笑顔が、地下に犇めき合うひ弱な人間たちを見下ろしていた。そんな彼女の片手には小さな瓦礫のようなものが握られており、それが先ほどまで天井を覆っていた天蓋ということは直ぐに分かった。

 避難した地下街は皮肉なことに、超巨大少女カナンにとっては小さな人間が大量に蠢くだけの食料庫でしかなかったのだ。

***

「んっふふ~♪みんな小さすぎて見えにくいよぉ♪」

 そういって、カナンは足元の人間たちを見下ろしながら巨大な口から舌なめずりをして見せる。
 そんな彼女の動きは、地下街にいた人間を怯えさせるには十分すぎるほどの恐怖を与えて、地下シェルターに逃げ込んだ市民たちもその振動や轟音に怯えて身を寄せ合う様に固まって震えていた。

「わぁ~♪これ、皆可愛い~♪食べちゃうのもったいないなぁ~あはは♪」

 そんな様子を遥か上空から見下ろしていた巨大な瞳がギラリと輝いて、口元からは舌が垂れる。まるで獲物を見つけた獣のような飢えた視線だった。

「あはは、嘘だと思った?本当に食べてあげるからね?」

 カナンは言い終わると同時に四つん這いになると、顔を地面に近づける。
 その姿はまるで巨大な犬のようで、人々は一層恐怖に身を縮こまらせて震えていると、次の瞬間には、彼女の吐息で一気にむわぁっと蒸れた熱気があたりに充満する。

「あはは♪小人さんの臭いでいっぱいだぁ〜。すっごい興奮するなぁ……」

 広大な口の中を震え上がる人々に見せつけるように大きく口を開けると、つやつやと濡れた赤い口腔内が何処までも深く広がっている。それは体の一部と言うよりも、一つの巨大な生き物のような、そんな圧倒的なスケールを感じさせる。

 そして、その口からゆっくりと唾液が糸を引いて、人が集まっている場所に滴り落ちてくると、たちまち人々の膝下までヌルっとした生暖かい唾液が包み込んだ。あまりにも桁違いな唾液の量に、震え悲鳴をあげ暴れる人々。

「あーん♡」

 世界すら飲み込んでしまいそうに思える巨大な口から赤く濡れた巨大なクジラのような物体がぬっ、と這い出てきた。
 それは巨大な少女の舌。長さは数百メートルをも軽く越える。舌だけで地上に存在するどんな建物よりも巨大な怪物に見えた。
 そんな高層建築物よりも巨大な舌は地表の邪魔な構造物を薙ぎ倒して蹴散らしながら、地下に囚われた人々に襲いかかる。
 舌の直撃を受けた建物は瓦礫も残らないほど溶けて消えていき、運悪くビルに取り残された人々は跡形もなく消失していた。

 ズウゥン……!!と再び地下に振動が響き渡る。どうやら巨大な少女の舌が地表に触れたようだ。
 しかしそれは小さき人間からすれば死を呼ぶに等しいものでもある。人々は必死になって舌先から逃げ出そうと駆け出した。
 そんな人々を追い立てるかのようにカナンは、はしたなくも唾液を垂れ流しながら追撃を行う。

「んっふふ~♪逃げちゃダーメ♪」

 舌は人々が集まってる場所や、地下空間の天井の崩落した部分をピンポイントで狙ってくる。
 舌が地表に近づくと人々は悲鳴を上げて体を投げ出すようにして避けようとするが、圧倒的な質量とスピードの前にはどうしようもない。
 少女はそんな人々の恐怖などお構いなしに、舌全体を眼下の地下街ごとべちゃべちゃと舐めまわしていく。

 舌乳頭で覆われた細かい無数の突起が人間を捕らえ、唾液の粘着力で完全に絡めとる。その巨大さ故に、舌の捕食行為から逃れられるのは困難であり、人がいたであろう痕跡など微塵も無かった。
 そんな圧倒的な暴虐に、人々は為す術もなく翻弄されるしかない。
 地表の人々を蹂躙しながら舐めとり、カナンは満足げな表情で舐めとった跡地を見つめていた。

「ん……♡小人さんたちの味がする……美味しい……んっ……♡」

 そして、彼女は舌を器用に動かして地表をペロペロと舐めていく。それに伴って地上にいた人々の命は蹂躙されていくのだった。

「ん~~♡やっぱり天然モノはひと味違うね♪」

 お皿に残ったソースを味わうように再び舌を動かして地上を舐め回し始めるカナン。
 普段の生活ならこのような品のない食べ方は絶対にしないが、周りには砂粒より小さな人間しかいないのだから気にすることもない。

 そんな蹂躙劇が暫くの間続けられたのち、少女は一息つくために舌先の蹂躙を止め、人間や街の残骸を撒き散らしながら、巨大な舌が空にかえってゆく。

「んぐんぐ……」

 カナンは頬に手を当てて舌で絡め取った人間や街の残骸を味わうように口の中で咀嚼しては、舌で転がしていた。
 咀嚼する度に、口の中では何万人もの市民たちが自らの運命に絶望しながら死んでいっていることだろう。
 そんな様子を思い浮かべてはクスっと笑いを漏らしながら彼女は、地下街だった舐め取ってドロドロの廃墟になった地下街を見下ろして、口に残った獲物を味がしなくなるまで堪能した後、口に残ったモノを喉を鳴らして吞み込んでしまう。

「えへへ♪全部食べちゃった……ご馳走様でした♡」

 そう言いながらカナンは立ちあがり、片手をおでこに付けて遠くを見つめるようなポーズをとる。

「ん~……他に小人がいっぱいいそうな所ないかな~、まだ全然足りないよ……」

 先ほど数万人も貪ったカナンだが、彼女のサイズからしたらまだほんの小腹を満たす程度にしかすぎない。
 もっともっと食べ応えのある獲物はないのか?再現のない食欲を満たすべく、超巨大少女は新たな食料を探している。

「おっ?あそこなんか、良さそう♪」

 カナンが見つけたのは、一際大きな公園だった。公園の中央には人工的に作られた大きな溜め池があるほか、野球場やテニスコートなどもあるようだ。
 これだけ広い敷地に何十万人もの人々が避難していた。
 そんな彼らを上から眺めるカナンの表情には、これから起こるであろう出来事に期待する、淫猥な笑みが浮かんでいたのだった。

「えへへ♪じゃあ、お邪魔しまーす♡」

 カナンは地上の人々に見せつけるようにわざと足を滑らせながら公園の中へと踏み込んで行く。

 ズウゥン……!ズウゥン……!!と大きな音を轟かせつつ巨大な足によって地面が掘り返され、付近一帯をクレーター状にしてしまう。
 公園に避難していた人々は巨大少女の狙いが自分たちだと理解し、急いでその場から逃げようとしたがすでに遅かった。
 逃げようと走り出したところで、全長23kmもある巨大少女の素足からは逃れられない。その凄まじい質量から繰り出される一歩は、まさしく天災といっても過言ではなく、逃げようと公園から脱した人々に容赦なく襲いかかり次々と踏みつぶしていった。

「うんうん、さっきの所よりもいっぱいいるね~♪」

 足元にわらわらと蠢く小さな点たちを見下ろしながらカナンは楽し気に笑う。
 先ほどと同じように四つん這いになって、上体を倒してその巨大な舌で公園に避難していた人々を食べ始めた。
 その際、公園の周辺にあったホテルや雑居ビル群が、彼女のまるっこい乳房に押し潰されたのだが、これから起こる蹂躙劇の前では些細なことだった。

「あーむ♪」

 一舐めで数千人が飲み込まれる巨人の一口はあまりにも大きく、僅か数回の舐めとりで公園の殆どを嘗め尽くしてしまい、人々がいた場所はべちゃべちゃに汚れ、緑豊かだった公園は唾液で汚される。

「んっ、ずちゅ……んっく、あむ……」

 そうやって数万人もの人々を嘗めつくした超巨大少女は、最後にのどの渇きを潤すため公園のため池にも手を付ける。
 巨大少女の唇が開き、池に唇をあてて、ゴクゴクと音を立てながら冷たい水を飲み始める。

「んっく、んく……っぷはぁ!」

 瞬く間に巨大少女の喉に水が流れ落ちてゆく。流石に小さな池の水量程度では、彼女の渇きを癒すことなど出来るはずもなかったが、それでもいくらかは胃袋に清涼感をもたらすことができた。
 ズウゥン……!と再度その大きな体を立てながら街を見下ろし仁王立ちするカナン。

「ふぅ……、ご馳走様。ふふっ、あんなにいたのに全然お腹いっぱいにならないなぁ〜。よし、あなた達が降伏するまでとことん食べちゃうから、覚悟してね♪」

 超巨大少女はそう言うと、再び唇から下を出してペロッと舌なめずりをして見せる。
 その姿を見た人々は、今度は自分たちが捕食される番だと気づくと一目散に逃げ出し、必死に走り続ける。
 カナンはそんな人々の抵抗を楽しむようにゆっくりとした足取りで彼らの後を追い始めるのだった。

***

 結局、この国の降伏宣言が下る前に、カナンが捕まえて味わった人数は10万人を軽く超えていたとされる。もっとも、その遺体すら見つかっていないのだから正確な数字は測れていない。

 流石にそれだけの人間たちを食せばお腹いっぱいなるかと思ったが、彼女からしてみれば大した量ではないため、まだ満足できる状態ではなかったらしい。
 もし、降伏せず無駄な抵抗をしていたらどうなっていたのだろうか。
 彼女に捕食される以外にも、巨大な足で踏み荒らされた被害はさらに甚大で、踏み固められた跡地からは遺体を掘り起こすことは困難な上、さらに跡形もなくズタズタに引き裂かれているので、100万人以上の死者・行方不明者が発生していた。
 そんな巨大少女の規格外な食事風景はあっという間に世界の人々が知ることになり、恐怖した国々が続々カナンの支配下に置かれていったという。

 巨大な足跡だらけの跡地は、彼女の恐ろしさを際立たせるにはこれ以上にないほどの爪痕と言えよう。
 この凄惨な惨状をもって、大自然すら容易く凌駕してしまうほどの巨人の恐怖と圧倒的な力を見せつけた傷跡は人類にとって未来永劫、忘れられない記憶となって刻まれる……。

 誰もがそう思っていた。数日後に、またあの巨人が友人を連れてくるまでは……。