本記事は「蜂蜜漬けと薬草酒」一話のサンプルです。
巨人の国へ使節として向かった一行が、途中で行き倒れてディアンドル姿の村娘に拾われるお話。

【内容】※すべて50倍
・生爆乳見せつけ、載せ乳母乳責め
・乳首舐めさせ、手ブラ乳揉み
・寝ころびおっぱい乗せ、無意識鼓動責め
・揉み潰し責め
以上です(19000字)

純朴で優しい50倍ディアンドル美少女に介抱してもらっていたと思ったら、実は愛玩物として可愛がられていて、愛情表現として感覚を一体化され精神が壊れるまで快楽責めされたい方は是非!

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 §
 一行は国を辞して既にひと月、予定を大幅に超過してなお目的地には届かない。元より故国の地を再び踏めるとは思っていなかった4人も、よもや行き着きさえしないとは思っていなかった。もはや焦燥も使命感も薄れ、飢餓と諦念が漂い始める。それでも前へ進む気力はあったが、体がついていかなかった。
 行き倒れるのも、いよいよ秒読みであった。

「申し訳ない。責任の取りようもない……」
 大使として、団長として、慙愧の念を漏らす男。精悍な顔つきも声も、やつれてこそいないがひどくくたびれ、巨漢が静かに、“クルツ殿のせいでは……”とだけ応えるのみ。他の2人とて彼を責めてはいない。クルツが忸怩たる思いを抱くのも当然だが、同罪といえばみな同罪であった。ただ、紳士としての礼節を重んじたというよりは、既にそうした時間は通り越し、今や労苦に喘ぐ他しようがないとも言える。どこまでも続く森は広く長く、先行きはやはり杳として知れない。一国の使節としては惨憺たる有様であった。

 無論、才人、巨漢、商才の人に狡知の人、4人の男が無策で国境を渡った訳ではない。
 なにぶん、目指すは上位の存在の住む国であって、その実態を知るものはおらず、本来人選に手の抜きようがない。とはいえ逆に言えば、能力で選ぶ以上の道がなかったのも事実であった。対策しようがないために、ポテンシャル頼みの勝負。無策ではないが無謀ではあり、ここまでの少数精鋭も、あたら才人を失う危険を恐れてのことだった。
 
「ヴィスさん、水源は近くに……」
 学者に指示を仰ごうにも、彼は行軍に精魂尽き果て一段のはるか後方、足を動かすのがやっと。馬が倒れて以来、商才の人も彼と一緒に青色吐息。巨漢のオストだけは着実に歩みを進めているが、行くべき道は知らなかった。汗をぬぐい、クルツは行く道を睨む。が、何も見えない。数メートルもの高草に視界を阻まれ、太陽を拝むことでかろうじて方角を知るのみ。
 まさか、これほどかの国が過酷だとは。
 奇妙だった。無論、ハードな旅路であることはもとより承知、学者も商人もついていけない人間を選んではいない。だが、今やまるで外出に疲れ切って歩けない子供だ。明らかに、何か余計な消耗を強いられている。それはヴィスが既に指摘したことだった。

 何か思い違いをしていたのかもしれない。
 帰らぬ者たちは、上位種に捕らわれたのだと思っていた。ではなぜ誰も帰ってこないのか。地理についてすらろくに情報がないのはどういうことだ? 上位存在だからと片付けていたが、偵察に行った者すら若干名しか帰っては来なかった。小人相手に、そこまで捜索の網を広げるだろうか。

 では、何故?
 何か、不穏な疑念がクルツの脳裏をよぎった時。
 
 遠雷のような音が響き始める。ゆっくりと、等間隔で、地響きが鳴り響く。
 そして、ふっと空が暗くなった。
 上空、樹冠の向こうに浮かぶ、くびれたパンのような何か。

 15m近い大きさの、足、人間の巨大な足だった。

「皆さん! 退────」
 須臾の間もなかった。
 森の中にめり込んだ靴底が木々を薙ぎ払い目前に無骨な姿を見せる。汚れた靴底は豪邸ほどの大きさ、それが二つ前後に叩き込まれては地表を張り付け引き剝がし、遥か彼方へもう一歩を穿ち込む。

 巨人の闊歩を辛くもかわした4人に、言葉はなかった。
 失禁しなかった、それだけが唯一の誇りだったかもしれない。

「彼らの集落も、近いのかもしれませんね……」
 嘆息する。
 やはり、土台無理な行軍だった。
 この、体力を削る不可解な土地だけではない。
 寧ろ一番は住人の問題であり、上位種がそれであり、彼らの訴えるべき相手であり、問題の原泉でもあった。身の丈50倍の存在が、その頂点が、彼らの行きつくべき先だったのだから。
 
 恐怖の対象。いや、恐怖の象徴、恐怖そのものと言うべき上位存在。小人にとってそれは、人の形をとった一つの災厄だった。指でさえ大男より強靭な手、地を踏めば岩盤を砂のごとく崩し去る足。天を覆い太陽を奪う彼らには、もはや表情を窺う余地すらない。知性を持った津波となって村を襲い、声だけが響く中何か悲劇が起きていく。国境を跨いだものは、ほぼすべてが帰ってこない。僅かな帰還者は、理性をほとんど失っていた。
 
 今も大地を震わせながら、巨人が去っていく。
 あんなものを相手にしなければならないのか。
 とはいえ、当座の危機は去った……。

 そう思った時、クルツは力を失う。緊張の糸が切れ、精神の糸も切れかけた。
 そして、ばったり横に倒れてしまう。
 一行で意識を失った、4人目の男だった。

 そこに、もう一つ。
 ゆっくり近寄ってくる遠雷。
 それがふと足を止め。
 次の瞬間、4人を根こそぎ握り掴んでしまったことを、クルツたちは知らない。


 ⁂
 別世界の人間が残した爪痕は、服飾や食事、いくつかの芸術に見られる。
 だが最も大きな痕跡は、最も無力な存在、劣等種を措いて他になかった。

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 クルツが目を覚ました時、既にオストは目を覚ましていた。
「お気づきになったようで、よかったです」
 深成岩を思わせる風貌は、異常な世界で唯一変わらないものだった。紳士然とした勇士。はじめはとっつきにくく思われたその実直さも、今となっては安心感さえ覚えさせる。
 されど彼とて平気ではないはず。僅かに読み取れるようになった彼の雰囲気は、疲弊している。というより、朦朧としている。酔っているようにさえ見えた。
 理由は明白だ。
 暑い。うだるように暑い。おまけに爛熟した百合のような香りが濃く満ちて、むせ返るほどだ。南国のような精気。横溢するマナは、疲弊した一行には過大すぎる。クラクラと脳が揺れ始めた。生命力が爛溢して細胞が耐えきれそうにない。溶ける。異様な空間だった。何か、生命の噴出口でもあるかのようだ。
「オストさん、ここは一体……?」
「私も、今起きたところですので……」
 見回せば、一面の白。そこからゆっくり沈降していき、対岸に同じ丘陵が見えている。渓谷の底は見通せない。頭上は布に覆われて薄暗い。なんだここは。

「クルークさん、起きてください。出発します」
 商人を揺り動かす。ふわふわとベージュのクセ毛が揺れ、子供のような顔をしかめた。起き上がれば、酩酊感に心地よさそうな表情。ぼうっとクルツたちの顔を見て、蕩けたため息を吐いた。
「夢だったら、良かったんですけどね」
「いいから、起きなさい。それと、彼も起こしてください」
「はぁ」
 金髪学者が目を覚ます。周囲を眺め、いきなり立ち上がろうとするものだから、ふらつくのを巨漢に支えられる始末。
「ウィズさん、こういった場所に心当たりは?」
「……自分の魯鈍さに、嫌気がさします」
「ろど……? とにかく、先を急ぎましょう」
 立ち上がり4人、のろのろと歩き出す。だが、状況は何も変わらない。むしろ悪化してさえいる気がする。この香りと精気はいかんともしがたい。蒸留酒が充満しているかのようだ。思考が形を得ない。力の出し方さえわからなかった。力が出ないのではない。うまく制御できないのだ。ぼんやりとした焦燥だけを彼らは共有していた。

 各々、見るともなしに周囲を見る。さしあたり光の方へ歩いてはいるが、合っているのかどうか。ただ、彼らに思考の余裕も余力もない。注意を散漫にしたがばかりに、いつしか力も抜けてしまったらしい。惚けたように谷底を見つめていた商人が、ぐらりと体幹を揺らした。

 そして、真っ逆さまにそこへ落下すると、

『ひゃんっ?!』

 可憐な声が、どこからともなく響き渡った。同時に閉じる渓谷。商人の姿が一瞬で乳白色の中に消える。ついで、響き渡る男の甘い絶叫。世界が呼応するように、動き出した。

 一斉に降り注ぐ光。
 突如突風が吹き込み男たちが舞い上がる。それを巨漢が掴むも今にも体が浮き上がりかねない。何より、大地が滑らかすぎて踏ん張りようがない。もう数秒暴風が続けば、3人まとめて谷間に落ちていたかもしれない。

 そこに、影が落ちる。何か、太いものも垂れ落ちてきた。茶色の大蛇が3匹絡み合う、豊かな茶色。それが、太い三つ編みであることに気付き、上空を見上げれば。
『…………』
 巨人がこちらを見下ろしていたのだ。

 男たちがどよめいた。そして沈黙した。絶望したからだ。
 125000人分の質量を持つ存在。一つの都市が少女の形を取ったも同然であり、単純に存在自体が暴力だった。少女の巨躯は軍団なのだ。その真ん中にたった4人取り残される。恐怖に脳漿の干上がる思いだった。

 失神しそうになる学者を抱え才人を背後に収め、けれど勇士とて恐怖しない訳にはいかない。まさか死に場所が、少女の脚の上、少女の胸の下とは思わなかった。覚悟を決め、余人を逃し、突撃さえ決意した時。

 走り出す勇士を、いや、4人まとめて、細指が摘み上げた。
 載せられた先は手のひら。女神の前に座す浮遊大陸に立たされ、一向はその面前に立たされる。茶髪で、頭に頭巾のような被り物をして、どこか童話めいた雰囲気をしている。美少女だ。ただそれが身の丈が80mともなれば、恐怖するなという方が無理な話だろう。神々しささえ思わせる巨人が、青い瞳でこちらを見つめている。そして、しばらくして。

『……でよろしいでしょうか?』
 喋った。落ち着いていて、かつ若々しい声だ。大きさのあまり聞き取れない。緊張しつつ、再度その声を待つと、
『まずは、お食事でよろしいでしょうか?』
「…………は?」
 拍子抜けだった。まさか、取って食おうというのか。養分にするには、1000匹単位で数が少ない気がする。男らの反応に、動揺したのはむしろ80m娘の方だった。
『あの……、どうされましたか? もしかして、言葉が通じてないんでしょうか……』
「いえ、そうではなく……」
 どうも、彼らが自身に恐怖していることも気づかないらしい。大人びていて純朴な声は透明で、男の覇気と緊張を解くに十分だった。少なくとも害意は感じられない。

「失礼するが……、いや、ここは団長殿に」
 身を引く勇士を引き継ぎ団長が口を開くも、彼同様あまりのことに言葉が見つからない。
「……お目汚し失礼致します。その、使節として貴国へ参上しているクルツと申します」
『まあ! お役人様なのですね!』
「いえそういう訳では、……はい、おっしゃる通りでございます。して、……単刀直入に申しますと、恥ずかしながら状況を理解しておらず……」
『えっと、倒れていたところをお助けしただけですよ?』
「見ての通り矮人の身なのですが、それでも?」
『倒れている人を見捨てる理由にはならないでしょう』
 基本的に、彼らに巨人という存在の理解は乏しい。半ば冒険的な方法でしか接触を図れない対象だ。ゆえに、同じ人間性を持っているということすら俄かには信じられなかった。傲慢で強大で悪魔的、幾つか残る事実からは、そういったイメージしか浮かばない。それが、言葉どころか心まで通じるとは。妖怪にでも化かされているのではないか。

『お話よりまずは、お食事が必要でしょう。作っておいたので、こちらを』
 四人衆を机に置くと、麦の殻を四つ、何か白いペーストを一滴ずつ。
『たくさんありますので、ご遠慮はいりませんよ?』
 一瞬、互いに顔を見合わせる。話がうますぎる。毒、罠、諸々の可能性が脳裏へよぎるが、どうにも解せない。が、餓死寸前の身でそれを待てるはずがなかった。
 群がり、一斉に食事にありつく男たち。ミルク粥だろうか。優しい甘みが広がってくる。どこか懐かしく、あまりに舌を喜ばす美味。何よりマナに富んでいるのが嬉しい。魔法か薬草が使われているに違いなかった。生命力が全身に染み入る。

 男らは美少女に見つめれながら、獣のようにそれらを平らげた。
 

 ⁂
 一行は使節であった。待遇改善を申し出る使節だった。何も収奪が行われている訳ではない。ただ、国境を国境と気付かず踏破する巨人、踏み荒らされる大地、時には虫同然に誘拐されるものさえいる。そして帰ってこない。有り体に言えば、それをやめてくれと言うのが彼らの使命だった。

 困難は織り込み済みで、彼らの実態は決死隊。小人らの始祖は別世界の人間であり、勝手に殖えたのだから巨人らに構う余地はない。上位種とて、姿かたちこそ同じだから無視もしないが、かといって尊重するでもないのが現状だった。小人の土地を併呑しないのも、そもそも対話相手として認めていないからに過ぎない。何よりその土地は貧弱で狭隘であるから、極寒の地に住む変わった鼠くらいの認識だった。いくつかの物好きな慈善家や思想家たちが、彼らのすべてを保証していた。

 だから、まず彼らに頼り、それから王宮へ、というのが4人の算段だったのだが。

 歯車が狂って今、彼らは巨大な肌色の中にあった。

『先ほどは失礼いたしました。すっかり眠ってしまって……』
 4本指のように並ぶ男たちへ、そう詫びる上位種娘。そのサファイア色の瞳が、視界いっぱいに広がり大きく目を瞬く。長い睫毛に髪を扇がれ、男衆は言葉も出ない。

『ベアテと申します。目が覚めて安心しましたが……。皆様、お怪我などありませんか?』
 恭しく言う上位種に、各々驚くほかない。恐怖の対象としか思えなかった存在が、このような対応をするなんて。それだけで当惑には十分だった。
 だが何より、美しすぎる。深海のような瞳と赤みがかった長い茶髪、16,7歳ほどのうら若い少女は、純朴な雰囲気を漂わせていた。加えて、ワンピース様の何か。こうした要素が、少女の素朴な雰囲気を愛らしいものにしている。
 
 不思議な恰好だった。ただ、知識としては知っている。
 ワンピースドレスにコルセットをはめたような出で立ちは、この世界を来訪した者たちがディアンドルと呼んでいたものだ。彼女たちにも伝わっていたのか。大きく胸元を露出した、異国情緒と中世的趣を備えた服装。完璧な着こなしは、彼女には恐ろしいくらいに似合っていた。
 コルセットで締め付けられた胴から、一気に溢れ出す胸元。凄まじいボリュームが、目前に重々しく揺れている。目に毒だったが、視界を占領されては無視することもできない。ただ、正視するにはインパクトが強すぎる。
『あの……、皆さん?』
 男たちの視線に、キョトンとするディアンドル娘。紳士たちは銘々咳払いしたり、かぶりを振ったり。人間離れした美しさと恐ろしいまでの肉感に、自失していたのを取り繕う。
 そして、思う。
 少しだけなら。
 少しだけなら、治るまで、そう、治るまでは、ここに留まってもいいかもしれない。もとより、旅程は狂っていたのだし。
 厳かな話し合いの末、彼らはベアテの厄介になることにした。

 たまさか見つけた、楽園のようであった。
 異国の奥地で行き倒れ、あろうことか上位種に介抱されたのだから。
 それも、飛び切りの美女に、まるで、愛された子供のように。

『皆様、すっかり元気になられたようでよかったです♪』
 数日ののち、驚異的な速度で回復していく体力。絶望し餓死の恐怖に喘いた心身に、最良の加護が与えられたのだ。何より、死地に赴く覚悟で入った巨人の国で、当の巨人に暖かくもてなしてもらえたのだから。ベアテは実に女神であった。

 となれば俄然、前途への希望も湧いてくるというもの。
「我々はかの学者殿にお目通り願いたく思っているのですが、ベアテさんは何かご存じですか?」
『え……? 私はただの村娘ですし、そんな学者さんになんか会えませんよ? ただの一般人なので』
 半ば勘づいていたことではあった。が、初めてまともに相対した巨人種は、もはや神々しさをまとっているようにしか見えない。それが、村娘? 上流階級のものとして美女には少なからぬ縁があった──堅物のオストは別にせよ──彼らを、一瞬で魅了したのが一回の村人だなんて。ここまで存在の差を見せつけられて、自分たちが恥ずかしくなるくらいだった。

 絶世の美少女、身長80mの、むちむちとした肉体。
 そんな女神に介抱されるのだから、男として、ほだされない訳がない。ある意味、心の急所を突かれていたともいえる。
 騙されているのだろうか? だが誰だって、騙されるなら悪魔よりも天使の方が良い。
 奥深い青色、深い海のように美しい青の瞳。純朴そうな顔だちは、いつも優しげに微笑んで卑小な自分たちを許してくれている。この目元に見つめられただけで、どれほど嘉されてしまうかわからない。それほどまでに、ベアテの笑みは慈しみ深い。

 ただ、さしあたり彼らの視線が逢着するのは顔より肉体だった。雪原のような太ももだった。流れる栗色の髪だった。満月のように輝く乳房だった。その巨大さは、視野に収めるのも難しい。大の大人4人が、少女の顔一つ扇げないのだ。

 本来、一介の村娘などお呼びでもない地位の4人だ。礼節と成熟した精神を備えた、一級の大人であるはずだった。夜な夜な、帝都に至る算段は話し合っている。政治談議も尽きない。幸い安心材料が出来た今、前途に希望は見えていた。あとは出発するだけだ。こんな、ただの小娘相手にしている場合ではない。

 それは、それとして。

『出発はまだ難しいですね。もっとこの土地のものを召し上がる必要があると思います』
 餅は餅屋と言う。この地に住む人間にそう言われて、敢えて無視する理由を彼らは知らなかった。知者に一瞥くれれば、判断できないと首を振るだけ。動く植物、生き返る動物、燃える水、不可解なことは山ほどある。判断の保留も一つの叡智だと知っているからこその反応だった。
『ですから、もう少しお世話させていただきますね』
 その言葉に、天上から燦々と降り注ぐ光に、彼らは抗えない。何か、思考の弁が緩んでいく。体が自然に、美少女の指先へと動いてしまう。強靭な意志を持った男たちだ。だが、少女の声はあまりに透明で、存在の差が浸透圧となり声を脳に染み入らせる。

 そして、ディアンドル娘のされるがままになっていた。

 一体、いつぶりの母性だろう。

 一人一人大事に洗ってもらえる、食事を指先で与えてもらえる。今ここに、地位を支える物も、地位を参照する者もいない。メンバー同士は別にせよ、それも風俗店に共に入る時のような気まずさ程度のもの。何より現地民に制止され、他にしようがないのだから拒む理由がない。

 男たちは、1人の少女の掌上に生かされる。
 彼女の、素朴で裏表ないところが心地よい。
 唯一困りものと言えば、少し抜けているところがあるところか。すぐさま小人を見失ってしまうのだ。太ももの間に閉じ込めたり、スリッパの中で履いてしまったり、尻の下敷きにしていたり。4人のうち1人が、入れ替わり立ち替わりベアテの女体の犠牲になる。ある種の単独化だった。独り巨大美少女の豊満さに圧倒され、気付かれてすらいないのに存在の差を思い知らされる。

 夢のような、かつどこまでも恐ろしく気持ちいい、上位種女性の肉体。近づけば近づくほど感じる魔力の波動は、男らの生命力を内側から掻き立てた。奇妙だ。ただ肌があるだけのはずなのに、ジンジンと体の底から力が湧き上がるような何か。美酒の香り漂う中、太ももの輪郭が、居並ぶ足指が、どうにも崇高に思えて仕方ない。
『あら? クルツさんはどこでしょう』
 今まさに自分を破壊しようとしている存在に、罪悪感を覚えながら興奮してしまう。知力も膂力も忘れて、村娘の肉体に興奮してしまう。その奇妙さに誰も気づかない。
 ただ目前にある、おみ足に、豊臀に、バストに、魅入られるだけ。

 無意識だからこそ彼女の大きさを思い知らされた。意思が宿ればこそ安心できるその巨体が、125000人分の重さを持つ存在が、今剥き身の力を見せつけている。自分を粉砕できてしまう絶対的な力。無意識のせいで、肉感がいや増す。

「ベアテさん! ここです、ここなんです……!」
 気づいてもらおうと足先に、太ももに、哀訴する。至近距離どころか密着して、存在にすら気づかれないなんて。ただでさえ肉体の一部しか視野に収められない存在は、もはや一面に広がる乳白色そのもの。そこにあるのは、ただただ気持ちよさそうな色香と弾力。できれば、触れたい。雄として根源的な欲求がこみ上げてくる。紳士として身に染みついた振る舞いが、メッキのように剝がれてしまう。
 なぜって、充満する香りは、彼らの思考を奪うから。
 微視的スケールで見上げる肉体。微生物の身に感じる巨大娘のフェロモンは、彼らにはあまりに過大だった。本来上位種存在を惹きつける花石鹸のような香りが、全身に浴びせかけられるのだ。無意識に、容赦なく。そんなもの、小人の体には酷。サイズの合わない質と量のフェロモンが、鼻腔に、肌に、脳髄に、染み込んでくる。それを助長する、年頃の娘のむちむちな太ももの壁。
 少女の無意識が、男らの意識を捻じ曲げた。

 常に先頭を歩くことへのプレッシャーなど、村娘の女体が打ち砕く。この存在になら、どんな惨めさを晒しても仕方ない。その感覚を、巨体が強制的に思い知らせる。
 ……野心家としてのプライドが薄れていくことに彼らは、焦燥を覚えていた。

 そして、気づく。
 すっかり快癒したが、ベアテの様子が変わらない。相変わらず病人相手、というより子供相手だ。

『うふふ♪ 今日はお菓子を焼いたので……。召し上がってくれますよね? 特製の甘い魔法、かけておきましたから♪』
 にっこり笑って言わせるがままにする、その笑顔に魅了されてしまう。どうも、言葉がうまく出てこなくなる。正面切って反駁するには、彼女の庇護欲の重力は強すぎた。

 だから、彼らは。
 共通の危機感のもと、ベアテの家を去ることにした。


 ⁂
 ある夜。夕飯まで、少女が午睡にまどろんでいた頃のこと。

 そっと巨人の影から離れる4人。一宿一飯では済まない恩への礼、それへ返すもののない非礼と、帰国の暁には必ずや恩に報いる旨、一筆したためてのことだった。

 ベッドの上健やかな寝息を立てる少女。一つの都市と同じ質量のそばで、小男たちは知恵をより合わせて一計を案じ、床へと降り立った。

 静まり返った、支配者のいない部屋。道具というより物体となって鎮座する今、家具の巨大さは圧倒的に映った。雄大な寝姿の山脈を見上げつつ、息を殺して、室内を歩く。ただの一室が、無辺の異世界のようだった。冒険としか言いようのない逃避行に、一同そわそわと緊張を隠せない。無謀じゃないと言えば嘘になる。ただ歩くだけで困難なのだから。床板のわずかな起伏や境を、ほとんど登山者の心持ちで進んでいく。この調子では、とてもじゃないが旅路はおぼつかない。

 実際、彼らは上位種の生活空間に対して無力で。
 ダメだ。ドアが開かない。抜け出る隙間など、どこにもない。そうするうち時間は夜へ傾いていき、ついには闇に落ちて何も見えなくなってしまった。

 途方に暮れていたころだった。

『どちらへお向かいでしょう?』
 暗闇の中、声が聞こえる。だがこちらからは何も見えない。まさか、暗闇でも目が見えるのか? こちらは目の前に何があるのか、闇の揺らぎの中で何も見えない。

『ふふっ♪ 危ないですよみなさん♪ 暗いところだと、私にまとめて踏み潰されてしまいますよ? プチって、一踏みで♪』
 途端、目の前に落下する巨大なもの。その気配が上空に上がると、暗闇から4人を押し倒し、ゆっくりなぞりあげる。続いて、ギュッと踏み潰すと、全員を足裏へ貼り付けてしまった。
『あはっ♡ こうなったら危険ですよね? ですからみなさん、ちゃんと安全な場所にいましょうね♪』
 足裏から4人、一国の使命を負った男たちが剥ぎ取られる。暗闇の中、柔らかな大地に立たされていることだけはわかった。ふにふにの地面に足を取られ、クルークの倒れる呻きがクルツの耳に届いた。

「やめてくださいベアテさん! 私たちはもう、行かないといけないんです。国では同胞たちが……」
『ですが皆さん、本当に逃げたい訳ではないみたいですよ?』
「え?」
『これ、大事なものだったのでは?』
 そう言って、マッチの光が迸れば指先には小さな袋。親書の入った袋だった。

『私に見つけて欲しかったんですよね? 見つかって、なら失敗してもしかたないって、安心したかったんですよね? 大丈夫、皆さんの考えてることは全部わかってあげられます。だって私、上位種なので♪ うふっ♪ 筒抜け♡ ですよ〜♡』
「何を言って……」
『皆さんの声が、物理的に私の耳に届くと思いますか? 蟻同然なのに?』
 蟻呼ばわりされ言葉のない使節の一団に、一介の村娘はクスクス笑うばかり。

『うふっ♪ 上位種が劣等種のこと、分からないはずないじゃないですか♪ 皆さんがどう考えててどうしたいのか、分かってるからお世話できるんですよ? 支配する存在に、それくらい出来て当然です♪』
「で、ですが私たちは……!」
 クルツは団長として、滔々と自身の使命を訴える。聴衆が聴衆であれば、名演説に聞こえたかもしれない熱弁。それらは本物で、ベアテの耳にもしっかり届いた。

 だが、ディアンドル娘はまどろみの残滓に目を擦り。
 ふと、時計に目をやると。
『一度ご飯にいたしましょう。お喋りはその後でも逃げませんし』
「お喋りとおっしゃいますか……」
 ベアテはそれを聞かない。男どもを机の上に乗せると、何やら身じろぎを始める。服の胸元へ、手を差し入れているのだ。

『今準備いたしますので……』
 なぜだか知らないが、服の中に手を突っ込み乳房の位置を直すような仕草をしている。そして、不意に、もぞっと服の中の丸みが動き始めると。

 ばるんっ、と、勢いよく。
 爆乳をぶちまけた。
 妙齢の少女が、自身の片乳房を晒しだしたのだ。