§
 僕らは互いに手をつないで、小さな体を寄せ合って、広い世界を前に立ち尽くしていた。赤毛の僕と、黒髪の少女。10歳にも満たない僕らはまだまだ子供で、自分が何でどこに行くかも知らなかったんだ。一緒に見た夕陽をまだ覚えている。それはもう遠く過ぎ去った日。時間にすればほんの少しの間。それでも僕らは、きっと、どこまでも一緒だった。
 僕は彼女に一目惚れし、初恋してしまったのだ。

 それは、幼少の頃。
 春。
 施設に入った、ばかりのころ。

 まだ何も知らずにいた僕は、ある時塀の一部に穴を見つけ、忍び出ることに成功した。
 もちろんあたりは森の道、なにかあるわけでもない。
 けれどそれが子供の胸をどれほどときめかせたかなんて、想像するまでもないだろう。僕は、初めての冒険に乗り出した。鬱蒼とした森、見知らぬ生き物に初めて知る土の香り。そのどれもが目を奪い、いや、自分だけの時間があるだけで無常の喜びだった。四六時中監視の目に囲まれて育った僕に、初めて訪れた一人の時間。自由な、手仕事と管理ばかりの日々に、突如秘密の時間が与えられたのだ。知らないほうがよっぽどよかったほどに、それは楽しいひとときだった。
 森の隅々まで見て歩いた。葉っぱを拾い集めて樹洞に隠し、初めての所有物に心を踊らせた。それは誰しもが通る小さな冒険、けれど、生まれてからこの方罪人の如く扱われていた僕に、それはかけがえのない経験だった。
 
 もちろん、小心者の僕がそんな冒険を長く続けられるはずもない。
 なにより、森の陰は濃く暗く、日が暮れ出せばあっという間に闇に沈む。二、三度抜け出したあと、幼い蛮勇にも陰りが見えた。何より、待ち受けるであろう罰が怖かった。
 もうやめようか。
 そう思い、最後の散策の時。

 不意に僕は、見知らぬ人影に気がついた。

 施設の者かと恐れたのは無理もない。見つかれば、どんな罰が待っているかなんて考えたくもなかった。
 けれど、振り返ったその姿はあまりに幼い。
 僕とは違う、黒い髪。よく手入れされたそれは二つ結びに縛られて、木陰の僅かな光にもきらめいていた。上質な服、小さな背丈。可愛らしいのは一目瞭然だ。その魅力に誘われ、僕はやっと木の陰から出てくることができた。
「君はだれ……?」
 突然の呼びかけに、ビクリと肩を震わせた少女。恐る恐るこちらを振り返れば、黒曜石のように煌めく黒髪がふわりと広がる。
 そして、小さな声で。
「し、システィーヌ……」
 と、一言。
 真正面に僕を見て、それから、息を漏らすようにクスリと笑うと。
 ようやく僕らは一緒に笑い合うことができたのだ。


 それからの日々は、人生で一番の時間だった。
 システィーヌと言ったその少女は、きっと学舎の近くに住む子供だったに違いない。丁度同じ年この頃合い、恐ろしく美しい女の子が彼女だった。
 透けるように白い肌、対照的に黒くどこまでもなめらかでしなやかで。それをツインテールに結っていた。その髪飾りが可愛らしく、何より、そのとびっきりの美貌に僕は一目惚れだった。唇の端にひとつつけたホクロが愛らしかった。

 僕は彼女をティナと呼んだ。
 僕はミヌと名乗った。
 その時、僕の胸にはぐさりと罪悪感が突き刺さっていたけど。

 ……僕は嘘つきだ。
 それは本当の名前じゃない。
 ちゃんとした名前なんてないのだもの。数字名なんて、とてもじゃないけど言えなかった。

 だって、嫌われたくなかったんだ。
 退行種、衰退種、矮人、劣等種。マナもなく、ちからもなく、衰微していく僕らは後退種と呼ばれていた。施設で飼われているのも、奴隷になるための下ごしらえ。第二次性徴を境に縮んでいく出来損ないが、僕らだった。
 一般種のように生まれたままの体を保持することもできず、況して拡大種、発展種のように大きくなれるわけもない負け犬人種。他の人種はそのまま育ち、或いは大きく、或いはさらに大きくなるというのに。僕らはそうした上位種には到底及ばない、惨めな存在だった。
 彼らから見て、唯一縮む僕らはどのように見えるだろう? 檻に入れられ、縮み出すのを待つばかりの僕。そんな子供に、恋い焦がれたティナへ自ら素性を明かすなんて度胸、あるはずもない。 

 嘘つきと美少女は、一緒に幼い日々を重ねた。
 それが僕の、たった一つの宝物。第二次縮小が始まりかけたころの思い出。
 僕は縮んでいく体を騙し騙し、彼女と遊びに出かけていった。
 果たして彼女が何者なのか。聞くことなんて出来もせず。
「どうしたの?」
 それでも僕はティナと遊んだ。
「ううん。なんでもない」
 そう言って、離したくない手を握って。
 内気に思えた彼女が、徐々に親しげな笑みを浮かべるようになるのが、嬉しくて仕方ない。弟とでも思っているのか、僕をからかいクスクス笑う、それが恥ずかしいやら嬉しいやらで、僕は困ったように笑ったまま頬を掻く。
 身長が縮んでいると、気づかれないよう祈りながら。

 一緒に森を歩いた。木の実を拾って見せ合った。
 過酷な施設の暮らしを忘れられる時間。ここでは鞭打たれることも罵倒されることもなく、大好きな女の子と笑っていられる。
 ティナは知らないものを見せてくれて。
 上品な笑みで、僕を笑って。
 
 そして、ある日。
 

 ある日、穴は塞がれていた。


 僕はむせび泣いた。
 壁にすがって泣いた。
 背を丸め、地面を叩いて泣き続けた。
 けれどそれは、出たかったからじゃない。どうあってもこの檻から逃げられないと悟ってしまったからだ。
 自分の立場というものをほんとうの意味で知ったのは、その時かもしれない。
 もうその頃には、初めにあった時より20cm、僕は縮んでいた。

 また会えるかな。
 会えるといいな。
 もしかしたら彼女も縮小種かもしれない。おとなになってもティナの美しさは約束されている。甘い記憶とともに、幼い恋心はどこまでも膨らんでいった。なんどこの腕に抱きとめたいと考えたかわからない。記憶と想像の糸を結い合わせ、なんとか今の姿を思い描こうともしてみた。
 けれどその度思い知るのは、隔たった時間と会えない現実。彼女がどこにいるのか、いや、誰なのかすら僕は知らないのだ。

 彼女が縮小種なら、施設でまた会えるかもしれなかった。ティナも僕と同じように抜け出していたのかもしれない。そうでなくても、もしかしたら、もしかしたら……。
 もちろん、それは全く根拠のない願望だった。だって、僕はこれから先、どこに行くのか、何をされるのかも知らされていなかったのだから。
 手仕事を繰り返す日々、それは緩やかな地獄だ。もちろん、友人はいた。余暇も与えられた。自由はないにせよ、時間はあって。けれど、それだけ。それだけの息苦しさだ。だからこそ膨らむ空想は、僕をどこまでも記憶の中のベアトリーチェへ導いていく。いつしかそれは生きるために必要な希望にさえ成っていった。


 けれど、僕はもっとよく考えるべきだったのだ。
 その髪の色が示すもの。
 彼女がなぜ、そこにいたのかを。

§

 果たして、僕の日々は変わらなかった。
 ついに縮むべきところまで縮んでからは、仲間たちと来る日も来る日も虚しい仕事。刺繍や縫い付け、細かな不備、汚れの検査。サイズを活かした、繊細さだけが取り柄だった。とはいえ、いくら体が小さくても模様を縫うのは難しいのだ。ステッチだってしばしば歪んだ。全体を見れるほど僕の体は大きくないから……。

 単純な仕事と押し殺した葛藤の中で、心まで小さく、幼くなっていく気がした。それでも僕は勤勉に働く。優秀であれば、ここを出て遥かかなた、彼女のいる場所に用立てられることもあるかと思ったのだ。
 会いたかった。多分無理だと、僕も薄々わかってたと思う。でも、ひたすらティナを求めた。ひたすら。ひたすら。

 そして、あの日から十余年が経ち。
 今日。
 まだ、太陽がてっぺんにも届かない頃合いに。

 突如、けたたましいサイレンが街を苛んだ。
 仕事場で、一斉に僕らの手が止まる。
「……なに? この音……」
「訓練なんて、あったっけ?」
「とにかく、どうにかしないと……」
 僕らは友人らと話し合う。こんなことは初めてだった。判で押したように同じ日々の中、突然挿入された珍事だったのだ。作業場に集まり、手仕事を教わり、仕事を続け。それ以外の何も、僕らは知らなかった。
 だから、僕らは避難した。みんなと一緒に、日常から外れていったんだ。部屋を出れば騒々しく道を埋める、黒山の行列。何も知らずそれについていけば、行き先は避難所だった。
 これなら安心だ。とにかくみんながいるなら、安心だ。誰でもあって誰でもない僕ら。レミングスのような群衆は、漠然とそう思った。
 とはいえ、誰もどうすればいいかなんて知らなかった。数百はいる人影たち。全員、何から避難しているかなんて知るはずもない。若い子どもたち、集められて散らばって、広い多目的施設、その箱物の中で立ち尽くす様は亡羊そのもの。警報で吹き飛んだ現実感の中、浮動した時間が流れていた。なんとか時間にすがりつこうと、友人を見つけて話し合う。
 訓練かしらと話しあった。けれどこんなこと、今まで一度も無い。何人寄っても、文殊の知恵には遠く及ばず。
 不安な時間。
 ……その宙吊りになった空気に、一片の高揚もなかったなんて嘘はつかない。日常が壊れる瞬間をどこか待ちわびない人間なんていないだろう。僕らに至っては尚更だ。恩赦願望はひとしおだった。連れ出して、あわよくばあの日までと、期待したのは確か。けれど、それは別に大した罪じゃないだろう、そう思った。

 世界の方は、そうは思って居なかったみたいだけれど。

 始まりは小さな異変。
 全ては不意に始まった。
「……揺れてない?」
「ちょっと、なにか聞こえるんだけど……」
「地震!?」
 不安が一気に膨らみ始め、半ば騒然とする仲間たち。
 ここも安全じゃない。いくら堅牢な施設とは言え小人用、地震など来たらひとたまりもないだろう。
 そう思った僕が、大きなドアを開け放つと。
「……え?」
 黒光りする大きな塊が、ドアさえパンパンに塞いで行く手を阻んでいた。

 僕を見下ろす、不思議なオブジェ。
 滑り台のように奥へ尚高くなっていくなにか。

 それが、ハイヒールを模したものだと気づいた時。

 背後で悲鳴が沸き起こった。
 見れば分厚い天井が、ベニヤ板のごとくにへこみ出していたのだ。まるで、巨大な鉄槌が叩き込まれたかのような振動。照明が落下し、波打つ地面に皆は転げ回る。
 そして、雷が直撃したような爆音が響けば。
 天井を貫通したのは、電柱に似た黒い棒。それがグリグリと左右に穴を広げ、また奥へ戻っていく。
 そして変わって穴から現れたのは。
 キラキラと光る大きな瞳だった。
「あはっ♪ いましたよアンリさま! 律儀にみんな集まってました。ばっかみたい♪」
 大音響で響く舌足らずな声。その声が、脅威は一人ではないと僕らを絶望させた。
 その瞬間パニックが破裂する。
 巨人?! でも、こんなに大きな人は見たことがない。だって、僕は縮み出してからはずっと隔離の身。自分がどれほどの大きさかさえ、知らずにいたのだ。
 これが、最上種? 崇高種とさえ言われる人たち? 出口に殺到しようとすれば巨大なハイヒールに恐れをなし、震えながら抱き合えばクスクスと女神の視線にさらされた。
 そんな蜂の巣をつついたような恐慌の頭上、白い手袋をまとった指先が穴に忍び込む。
 そして、むりやり屋根を引っ剥がすのだ。既に大部分が破損していた天井は、巨大幼女の指先からさえ僕らを守ってはくれなかった。トラックが引き裂かれるようなとんでもない音を立て、屋根があれよあれよと破壊されていく。

 少しずつ僕を照らし出す外の光。眩い空はどんどん広がり、そしてついにすべてが取り払われると。
「わぁっ、ちっちゃー♪」
「蜂の巣みたいで気持ち悪いです」
 僕らを見下ろす、2人の巨大幼女が姿を現した。エプロンドレスにフリルスカート、絹糸のような長い銀髪には、カチューシャを添えている。そのメイドの出で立ちは、貴人の存在を暗示していた。僕らが想像もつかないような、巨人たちの社会がどこかにあるのだ。知らされていなかった真実が、なお僕らの胸に突き刺さる。
「もう少し上品に振る舞えまってはどうです?」
 そして背後に現れる、尚巨大な女の影。そびえるやや年長の美少女メイドが、呆れたように言った。ショートの銀髪を揺らし、とはいえどこかどうでも良さそうにも見える。
「あはっ♪ 矮人種にそんな配慮必要ありませんって」
「お嬢様の侍女として、ですよ?」
「以後気をつけます♪ それより、居ますか?」
「……見えないですね。下級メイドを連れてくるべきでした」
 はるか上空、小人たちを無視して飛び交う会話。その非現実的な様子に、僕は呆然と立ちすくむほかなかった。
 それから、幼いメイドが紙を取り出す。ふんふんと頷いて、一言。
「さんびゃく……308番。いますね? あ、矮人種って数字分かりましたっけ。……大丈夫みたいですね♪」
 ざわめきとともに、僕から離れていく級友たち。ぽっかり空いた円の中心、途方に暮れているのはもちろん……。
「友人も簡単に売り渡すなんてさすが虫どもね」
 円の中心にいる僕。覆い尽くす手のひら型の影が、矮躯目指して飛び込んでくる。
 駆け出した時にはもう遅い。
「みーっけ♪」
 真っ白な細い指、直径50cmもの大蛇が2本僕に巻き付く。白手袋の、すべすべとした肌触り、ついで確かな肌の熱が僕を包み、万力のような力で僕を締め上げた。
「ぐぅう……!」
「ふふっ、矮人なんて久しぶり♪ 私の指先も押しのけられないのね。ちっちゃいって可愛そうだわ♪」
 クスクス笑う2つの幼い表情。12歳程度の小さなメイドは、虫けらを弄ぶように僕をせせら笑う。瓶も満足に開けられない指先なのに、全力で押しても石柱みたいに動かないのだ。そんな僕が面白いに違いない。ロリメイドは笑いながら、クリクリと指先を動かしてみせた。人指程度の小人など、少し力を込めれば潰せるのだと言わんばかりに。

「アンリさま、残りはどうしますか?」
 僕をこねくり回しながら、その幼女は指示を仰ぐ。振り返る拍子に広がる髪、上位種特有の銀髪が、僕を襲い鞭打った。軽やかに、しかし確かな重みで僕をむち打ち、幼女の髪が甘い香りで小人を包む。そんな細髪にさえ体の芯を打たれた時、僕は年下の巨人に完全な無力を悟らされた。
 問いかけに、ふむ、と思案する年上メイド。同じく銀髪を揺らし、しばし考え。
「そうですね、どちらでも良いのですが……」
 ”掃除しておきましょうか”、と。
 メイドは子供たちに言った。

 クスリと笑みをこぼした幼女2人。顔を見合わせ、いたずらっぽい笑顔を交わす。
 それから、高く高くパンプスを振り上げると……。

「「死ーねッ♡」」

 一気に、小人めがけ振り下ろしたのだ。
 無論、箱の中には仲間たち。それを守ってくれるはずの屋根は、細い脚でいともたやすく突き破られた。タイツに傷すら付けられず瓦礫となってはね飛ぶ瓦礫。まるで葡萄でも踏むがごとく、少女の足は爆撃となって同胞たちへと降り注ぐ。
 瞬間湧き上がる、悲鳴、悲鳴、悲鳴。
 しかしそれを覆い隠すのは、キャッキャと楽しげな幼女たちの声だった。
 僕からじゃ中の様子は見えやしない。いや、見えなくて幸いだったかも知れなかった。そこにあるのは、まるで蟻の巣を突くように虐殺される友人たちなのだ。
 メイドの白手袋の上、僕は泣き叫びながら虚しくあがいた。仲間たちに腕を伸ばし、なんとか止めようとした。そして、手は指の幅さえ越えられないのだ。為す術なく僕は少女の手の中、無邪気な殺戮を見せつけられるだけだった。
「キャハハっ♡ たっのしー! このウジ虫ども! えいっ、えいっ、潰れちゃえ!!」
「ぷちぷち潰れて、葡萄みたいです♪ さすが劣等種、踏み甲斐のない虫けらですね」
 ケラケラ笑いながら、あどけない2人は足を振り鳴らす。大人の手のひらに収まるようなパンプス、それも50倍メイドのものとなれば、長さ10メートル、重さ何十トンもの巨大建造物だ。そんなトラックさえ見劣りする物体を、数千トンはあろうかという幼女が踏み降ろす。その一撃で、小人など何千人だって殺されてしまえた。逃げ惑う小人たち。それを虫程度にも思わず、彼女らは踏み潰す。僕が見てる前で、わざと、ゆっくりと。
 地響きすら起こすロリメイド達の乱舞。20階建てのビルにさえ勝る巨大幼女の、あどけない蹂躙。それを前に、僕は何をすることも出来ない。出来るのはただ、スベスベと暖かく柔らかい指先の中、友人らがどれほど重く硬い足で粉砕されているか、戦慄することぐらいだった。
 幼女らのくるぶし程度の壁の中。そこでどれほどの惨劇が繰り広げられているのだろう。気持ちよく、良い香りがする白手袋の中、考えれば考えるほど、無力感の募るばかりだった。

 破壊的な足音、そこからかすかに聞こえる小さな絶叫。
 それも、すっかり静かになった時。
「さて、お嬢さまのところへ戻りましょうか」
 クスクスと笑みを漏らし、60メートル級の美少女たちは笑いあった。


§
「アンリ、今戻りました」
「あら、早かったのね」
 外の世界、くぐもった声が肌を震わせる。
 それを僕は、くたびれた心で聞いていた。
 どこかもわからない、なぜ連れ出されたのかもわからない。
 ただわかるのは、周囲にいるのはすべて巨人種女性だということだけ。そして、柔らかな衣摺れの音の向こう、巨人用の生地さえ貫通するその声に、僕は縮こまるのだ。
 いや、もう縮こまる気力さえ残っていなかったのかもしれない。
 僕は消耗しきって、アンリというメイドの乳房の下敷きにされていたのだから。

 彼女らの帰路、僕は胸ポケットの中に詰め込まれていた。動くことも出来ず、巨大バストの膨らみに磔にされていたのだ。
 最上位の豊かな乳房はとてつもなく大きくて、まるで気球の上に乗せられたような心地で……。そんな物体が一歩ごとに揺れるのだから、生きた心地がしなかった。直径何十メートルもありそうなおっぱいだ。中身がしっかり詰まった乳房は、分厚いシャツさえ押しのけ僕に襲いかかる。確かなハリは、柔らかくもパンパンにに膨らんで、呼吸さえ苦しくなるほどだ。シャツの中から漏れる女の人の香りと熱に茹でられて、このままおっぱいの染みに成ってしまうんじゃないかとさえ恐怖した。
 おっぱいの揺れと、重圧、香りに熱。さらに流れ込んでくるのは、巨人が巻き起こす様々な音だ。
 巨大なメイドの服の中、それがこんなにたくさんの音で溢れているなんて思いもしなった。フリルが揺れる音、肌と擦れる音、体から直接響く少女の声に、巨体が空を切る高い音。そのすべてが、今自分は別世界にいるのだと思い知らせる。僕は、なんとかもがいて逃げようとした。助けを求めようと、話を聞いてもらおうと叫び続けた。しかし、そんな声が届くはずもなく、シャツにさえ阻まれエプロンドレスから先へ漏れることはない。どころか、周囲から飛んでくるのは幼女メイドの声と、それに応えるアンリの声。そのどれもが背骨ごと僕を揺してやまなかった。僕はさっきまで、友達と静かに談笑していたというのに、今じゃひとりぼっち、巨大美女に囲まれ心細く丸まることしかできない。

 そして少しして、彼女らの屋敷にたどり着いた時。
 僕は巨乳メイドの胸の下。すっかり茹で上がり死にかけていたのだ。

 それでも、巨女ひしめく部屋に入った時。
 ヒリつくほど感じる巨人たちの気配に、僕はなお恐怖を感じずにはいられなかった。
「自由なものね、行き先も告げず。……どこに行っていたのかしら?」
「あらあら。私はいつでもお嬢様の忠実なメイドでございますよ? ……それに今日は変わった品が手に入ったので、お嬢様もお楽しみいただけるかと」
 クスクスと笑い合う巨人主従。周囲がかしこまる中で、どうもこのメイドだけは特別らしい。
 何が起こるのかもわからない不安。50倍メイドのバストに抱きつくような姿勢のまま、僕は為す術なく震えていた。こんなにも女の人のエッチな場所にくっついているのに、それが同時にこれ以上なく恐ろしかった。
 そんな僕を求め、アンリは胸ポケットをこじ開ける。
 まっくらな空に三日月型の亀裂、そこから見下ろすのは、あの美女メイドの瞳だ。そして、無感情に指を突っ込むと、クタクタになった僕を引き抜いた。

「……生きてますか?」
 棲んだ少女の、訝しげな声。
 僕は雪原のような場所に寝かされて、久方ぶりの外気を力なく吸い込んだ。ぐったりと寝そべると、柔らかさ、暖かさ、スベスベと白い手触りが染み渡る。
 もう、動きたくもない。
 そんな心持ちのまま、ぼうっと視線をさまよわせ。
 僕を凝視する、特大の瞳と目があった。巨人に凝視される、その恐怖に思わず飛び上がる。
「死んではいないようですね」
 手のひらに乗せ、そんな僕を見つめるアンリ。白手袋の上で僕を転がし、具合を確かめる。ダイスを弄ぶような、軽い素振りだ。だのにそれだけで、僕は大波に呑まれたように振り回される。
「ふふっ、不憫なものですね。私の指先にも満たない姿で、生きなければならないなんて」
 クスリと漏らす吐息が僕を包んだ。それだけで僕は吹き飛ばれそうになり、それがなおアンリの微笑を呼んでしまう。
 いや、アンリだけではない。聞こえてきたのは、周囲から沸き起こる、淑やかな笑い。
 アンリ1人でいっぱいいっぱいだった僕は、ようやく背後を振り返る。

 そしてその異様さに、住む世界の違いを思い知るのだ。

 それは、権力と耽美の空間だった。
 まるで王宮のような空間に居並ぶのは大小様々なメイドたち。その中心、ゆったりとソファにくつろぐのはこの屋敷の令嬢に違いない。パーティドレスを着て、それがなお耽美的な雰囲気をまとわせる。ひと目見てわかる、その気高さと美しさ。しかし数百メートルはありそうな距離と逆光にぼやけてしまい、その顔はよく見えなかった。
 次いでその背後にいるのは、街を蹂躙した幼女たちだ。他のメイドたちが厳粛な顔をする中、2人ニヤニヤとこちらを見つめている。思わず僕は白い手の上でビクついて、それがさらに彼女らの嘲笑を買った。でも、仕方ないだろう。フラッシュバックする、あの巨大な姿。箱に覆いかぶさり僕らを見下ろした2人の威容。それが今は、大人たちの間にちょこんと佇んで、単なる生意気幼女に化けていた。ソファの影に隠れ、見えるのは肩から上だけ。あの街を断罪したパンプスなどその遥か下方、見えるべくもなかった。
 1人だけでも街をベッドにしてしまえる巨人。それが立ち並ぶ様は巨大な神殿にも似て、あまりのスケールに目眩がした。しかしそれも、豪奢な室内の中ではどれも華奢な少女に過ぎないのだ。ここは王侯貴族の館なのだろうか? 重厚な本棚、豪華なシャンデリア。そのどれもが少女らを小さく感じさせる。
 ……しかし、彼女らは紛れもなく巨人だった。
 だって、彼女らは遥かに小さなメイドを従えていたからだ。はじめ犬かなにかと思ったもの。周囲に散らばるそれを見れば、それもまた巨人だった。おそらく20倍はあろうその体を、巨人メイドのスカートに隠しこちらを見上げている。そしてさらにその足元に僕の5倍はあろうという巨大メイドを見出した時、思わず僕は乾いた笑いさえ催した。あの小人らに比べたら、部屋にふさわしい彼女らは間違いなく巨人。そして、その最も小さなメイドの靴にさえ、僕は負けてしまう身の丈なのだ。
 ここは、50倍、20倍、5倍、三重の巨人が織りなす異世界、すべてが桁違いな空間に他ならなかった。薄く香るのは香木か、しかし同時に漂う少女たちの香りが芳しく、直感的にここが女性の園であることを証し立てる。

 だから、アンリがその女主人へと進み出た時。
 僕がどれほど恐怖したかわかるだろう。
「ご覧になっては? なかなかおもしろい一品かと」
 白手袋の上、恐怖のあまり僕は必死にその掌底へ向けて駆けだした。ふっくらとした女性の母子球、柔らかな丘目指して走り出したのだ。しかしおしとやかなメイドの一歩は50倍、その僅かな激震に脚を取られ、スベスベとした大地に幾度となく打ち付けられては跳ね返される。
 そのうち、影が差して。
 見上げれば、令嬢の御尊顔が上空を覆っていた。

「……矮人? 虫を飼う趣味はないわよ?」
「虫は虫でも、お嬢様もご存知の虫でございます」
「……虫になんて覚えはないわね」
 モノクルで、50倍娘が僕を覗き込む。
 僕など、虫眼鏡で観察される蟻同然だ。柔らかな指先でつまみ上げられながら、僕は苦々しく頭上を仰ぐ。見えるのは、レンズで拡大された宝石の如き瞳。けれどそのガーネットのような瞳に、燃えるような虹彩が、魔法のように僕を魅入らせてしまう。
 僕は気恥ずかしくって、思わず目を伏せた。
 それはパーティドレスのような、真紅の服を纏う貴族の令嬢。背も胸元も大きく開き、ガーターストッキングの色気と相俟ってどこまでも艶めかしい。なにより目を引くのはその豊乳。ドレスの薄布から零れんばかりの爆乳は、アンリに勝るとも劣らない。
 僕の眼差しは釘付けだった。僕なんてその乳首にも負けてしまうかもしれない。小人をその重量だけで1000人は粉砕できてしまうおっぱいだ。みっちりせめぎ合う谷間に入れば、僕はどうなってしまうだろう? 家より大きくマッシブなおっぱいは、水着同然の面積しか隠されていない。そして輝く肌で僕の視界を犯すのだ。
 このおっぱいになら、圧死されても良い。
 おもわず僕は、生唾を飲み込んだ。

「矮人なんて久しぶりね。こんなに小さかったかしら。……こっちを向きなさいよ。ああもうっ! 小さすぎて見えないわ!」
 片眼鏡を小人メイドに渡し、バカバカしいと言わんばかりに少女は垂れた髪を払った。ばさっと広がる髪。初めて見えた素顔。ひらひらと手を振って、僕をアンリに手渡そうとする。
「何が言いたいのかしら? 小人なんて見たくもないのだけれど」
 汚らわしげに少女は吐き捨てる。

 けれど、僕はその絶対君主の相貌から目を離せずにいた。

 たおやかな黒髪に、とびきりの美貌。
 そしてなにより。
「き、君は……!?」
 口の端にホクロを見出した時。
 僕は、思わず叫び出す。

 それは、かつて共に育った、システィーヌ、その人だった。

 僕はティナちゃんの手の中、懸命に彼女に手を振った。歓喜の瞬間だった。夢にまで見た幼馴染の美少女、それが、高潔な美女となって眼の前にいる。巨人種の貴族だったなんて。その身分には驚くけれど、巨人は恐ろしいけれど、でも、それでも、あのティナちゃんが何不自由無い暮らしをしている。それは僕自身の喜びだった。
 様変わりした彼女への戸惑いはある。ここまで変わってしまった関係は少しつらい。何より、恐怖の対象でしか無い巨人の、よりによって貴族の令嬢になってしまった事実。耽美的な色彩を帯びたその女性は、けれど、一気に僕の幸福と祝福の女神に変わった。

 だから僕は喜んだのだ。この幸せを分かち合った。
 想いのままに快哉を叫んで。
「僕だよ、ミヌ、ミヌだよ! 幼馴染の! ねえ!」
 そして、言ったのだ。

「ティナちゃん!」


 その瞬間。
 水を打ったような沈黙に、ただ僕だけが置いていかれていた。
 メイドたちの息を呑む音、痺れるような緊張の糸。その中で何か言えたのは、システィーヌただ一人だった。
「……もう一度聞くわ、アンリ。この、虫は、なに?」
 低く、重く、言葉を紡ぐ。
 わかってないんだ、僕が誰か。ただただ小人種と思って、そのフィルターが僕を隠してる。きっと分かれば、かつてのティナちゃんに戻ってくれるはず。僕は、胸の張り裂けそうな不安と高揚をもって叫んだ。
「ティナちゃん、僕だよ! 昔一緒に過ごした、ミ……」
「ミヌとかいう矮人でございます。本名はたしか、308番、でしたっけ? お嬢様の旧友かと。この日のために探し出して飼わせておいたのですが、いかがでしょう?」
 僕が言い終わらないうちに、しとやかで控えめな、しかしよく通る巨人の声が小人の叫びをかき消した。

 俄かにメイドたちは慌て出す。
「あ、アンリ様! いくらなんでもそれは悪趣味過ぎます!! こんな、お嬢様の古傷を抉るような……」
 畏まりながらも、50倍メイドはなんとかアンリに抗議する。
 その非難に他のメイドも追随しようとした、その時。
 小さく漏れ出した、クスクス笑い。
 全てを縫って漏れ響くのは、他ならぬシスティーヌの笑い、それだった。全てを制し場を支配し、押さえるように漏れ出した笑い。それが耐えきれなくなると、システィーヌはついに声を立てて笑いだした。鈴を転がすように笑う令嬢。おかしくてたまらないといったその様は、どこか若い魔女を思わせさえした。
 呆気にとられるメイドたち。その中で唯一人、アンリだけが微笑んでいた。ただアンリとシスティーヌだけが通じ合っているのだ。
「し、システィーヌ様……?」
 恐る恐る訊ねるメイドを気にも留めず、システィーヌは笑いの余韻を味わっている。
「素敵、素敵よ! それでこそ私の侍従ね。まったく……ふふっ♪」
「恐悦の至りでございます」
 冗談めかし、うやうやしく頭を垂れるアンリ。けれどその実、悪戯を主人をからかう愉悦が笑みの節々から漏れている。やってくれたわねというシスティーヌの視線も軽く受け流し、飄々とした態度を崩さない。
 侍従には、それなりの高貴な家の出である者も少なくない。ここにいる小人だって、大半は相当の出自だろう。となれば、アンリが主人とそう違わぬ身分であっても、何も驚くことではなかった。
 もちろん、アンリを除いた全てのものは、ここでは下僕程度の立場であるものの。
 ここはどこまでも、2人だけの空間。身分の違いに、僕は隔絶感だけを思い知る。

「無理を押して貴女を残した甲斐があったわ♪ こんなサプライズ、他のメイドじゃ思いつかないもの。ふふっ♪ ……で、これがあのミヌ、ねぇ。久しぶりに矮人種をみたわ。ここまで小さくなるなんてね。いえ、成長というのはこういうものなのかしら?」
 そして、僕を膝の上に乗せる。改めてしげしげと僕を見やり、笑いの余韻をかみしめながらも、古い記憶を洗い出しているらしい。
 そこに一瞬、かつてのティナちゃんの面影があったのは、確かだった。
 あの時、同じ背格好で笑いあった僕ら。
 今じゃその指先にも満たない体だけど、それでも僕は”ミヌ”なのだ。ストッキングのスベスベとした質感、その奥から感じるむちむちの太ももが、彼女の成長を物語る。その顔は、僕を陰に隠す巨乳に遮られ、ほとんど見えやしない。でも、それでも! 再び出会えた幼馴染2人。等身大だった旧友も、今や50倍の超巨大女神になってしまったけど、世界の最下層の身分と最上位の令嬢の関係になってしまったけれど、この瞬間、僕は喜びで爆発しそうだった。

「ずいぶん小さくなったものね。種の違いというものを久々に思い知った気分。こういうのも悪くないわ。そうね、久しぶり、というべき? 元気だったかしら?」
 どこか優しげな口ぶりに、僕は安堵した。覚えていてくれた! 僕をミヌと認めてくれた! それだけで僕は嬉しくて、はにかみながら頷いた。嬉しかった。会えただけで良い。言葉に出来ないくらい、嬉しかったんだ。
 僕の微かな素振りは、システィーヌには届かない。一般種のメイドが耳打ちして、ようやく彼女は僕の返答を知ったようだった。
「そう。それはなにより。思えば私も何も知らない子供だったわ。懐かしいというのも変な気持ち。そうね、じゃあ……」
 顎に手を当て、足元に転がる豆粒大の生き物に微笑みかける。
 そして、クスリと笑うと。

 パシッと。
 手で僕を、膝の上から払い落とした。

「……え?」

 眼の前に広がる真っ白な手。
 綺麗だな、なんて思って。
 それから、意識を叩き潰す衝撃に襲われる。でっかい指5本に体当りされ、豆粒のようにはたき飛ばされたのだ。高層ビルさえ届かないような膝の上から叩き落とされ、宙を舞い、何もわからなくなる。そして、疑問だらけの頭の中。未だ表情を緩めず、笑い続けるティナと目があった。ゾッとするほど美しく冷たい微笑み、傑作だと言わんばかりの目が、僕を射抜いていたのだ。

「うぎゃッ!?」
 そして、鈍い音を立て僕は絨毯の中へ落下する。
 死んではいない。高級絨毯の、極上の繊維にかろうじて命を救われたのだ。
 けれど、それだけだった。
 猛烈な痛みからは守ってくれない。少女の指型に痛む体を丸め、僕は転げ回った。自分より背の高い繊維から這い出てきたのは、しばらく経ってからだ。
「て、ティナちゃん……?」
 ゼイゼイと掠れた声で呼びかける。けれど、地面から見上げても椅子の底面しか見えはしない。ゆったり組んだ美脚が、塔のようにどこまでもそびえるだけ。
「まったく、くだらない生き物もいたものね」
 そして、大きく、大きくヒールを脱いだおみ脚を振り上げたのだ。
「待っ……!」
 足裏が、僕の上に飛び出してくる。僕を乗せてもびくともしなかったストッキング。それが透けてしまうほどに、ティナちゃんの足は強靭だった。振りかざされる綺麗な足。けれど、その小指でさえ僕じゃ抱えきれないようなサイズなのだ。そんな幼馴染の足が、いま、125万倍になった鉄槌と化して襲いかかる。

「バカな話ね。矮人が、何の用かしら。ねぇ?」
 そして、足を下ろし笑ったのだ。

 きっとそれは、外から見ればポンと足をおろしただけのことだったろう。
 そもそも僕は、絨毯に転がったコーヒー豆のようなもの。見えない粒など、踏んでいるのかどうかさえわからなかったに違いない。見惚れるほど美しいおみ足、その小指にさえ満たない小虫がどこにいるか、見えたものはいないはずだ。

 しかし、僕にとっては。
 僕にとっては、山が落ちてきたに匹敵する天変地異だった。
 暴風を立て叩きつけられる足。僕と一緒に山を歩いた幼い足、それが美女の巨足となって落下する。軽い足踏み一つで巻き起こる風はダウンバーストとなって僕を押しつぶし、みるみる濃くなる影は逃げられないぞと嘲笑った。僕は大きすぎる足裏を、ただ涙目になって見上げることしか出来ない。アーチの輪郭や細かな起伏、そしてついに、ストッキングの繊維の奥にうっすら肌色が見えた時。

 僕が居た一帯全てを、美少女の足が粉砕した。

「まったく、久々に驚かされたわ。……ミヌ、ね。言われるまで忘れたけれど、そんなのもいたかしら」
「どうしますか? お気に召さなければ虫の餌にでもいたしますが」
「いいわ、放し飼いになさい。囲ってもいいわよ。好きにしていいわ。……ふふっ、昔のよしみで愛でてもらえるとでも思ったのかしら。何も知らない子供が、虫を愛玩していたようなものなのに。虫なんて大人になれば触れもできなくなること、貴女たちなら知ってるわよね?」
 嘲笑を漏らして主人に応える侍従たち。そんな僕を足先でこねくり回しながら、女主人はクツクツと喉を鳴らした。面白いオモチャが手に入ったと思ったのか、かつての日々に皮肉な思いを寄せているのか。僕より多くを見聞きし、学んできた才女の思考など僕などにわかるはずもない。身も心も遥かにオトナに、巨大になった彼女と僕とじゃ、存在の格が違うのだ。
 何もかも変わってしまった僕らに、接点など少しも残っているはずがなかった。

 だのに僕は、過去にすがりつくのだ。
 システィーヌの足の下。
 足裏で作られた密閉空間にプレスされ。
 僕は、ティナちゃんの名前を呼び続けた。
 嬉しかったのだ。僕はティナちゃんの大きさを噛み締めた。自分より大きな足指にしがみつき、その重さ、大きさに魅入られる。ストッキングの質感に頬を擦り寄せ、夢にまで見たティナちゃんの、存在に近付こうとあがいたのだ。今まさに自分を破裂させんとする暴力的な少女のつま先。超重量がどこまでもその存在感を思い知らせる。
 逃げも隠れもせず、いや、僕を圧倒してくれるほどティナちゃんがいる。
 ティナちゃんが、ここで、今、僕を踏んでいるのだ。
 僕は、嬉しさのあまりおかしくなってしまったのかも知れなかった。
 指先一つ動かさせてくれない巨人種少女の、でっかい足裏。それに僕は感謝していた。自分を踏み潰そうとしているのに、これ以上ない侮辱と絶望を与えているのに、僕は、それすら感動を覚え歓喜せずにはいられなかったのだ。
 ティナちゃんがいる!
 ティナちゃんがいる!
 ティナちゃんが踏んでくれてる!!
 僕は潰された顔をストッキングの中にうずめて、何度もキスをした。いい匂いがした。暖かかった。怖いほどに重くて、骨は今も軋んでいる。それが嬉しいのだ。
 また会えた。
 僕はなんて幸せなんだろう。

 この時初めて、僕は本物の劣等種になったのかもしれない。
 巨女さまに踏まれる喜びに、今すぐ殺されてもいいとおもってしまったのだから。

 だって、暖かいんだ。重かった。怖かった。熱いほどに少女の肌は若さを発散し、みちっと詰まった柔肉が僕を押しつぶす。おまけに扇情的なガーターニーソ、その質感が、隔たった時の流れとなって僕に吸い付いてきた。
 これが、女の子の足。
 僕は歓喜とともに湧き上がった欲情で、すっかり芯からしびれてしまう。
 ヒールに押し込まれ、濃縮したアロマが香り高く立ち込めた。繊維に絡んだ僅かな汗が生々しい。そして、全身くまなく圧迫する肌の気持ちよさ。もう、僕は耐えられない。
 上位の存在となった幼馴染に踏まれ、僕は惨めなモノを足にこすりつけていた。ピンと張ったストッキングを突き破り、ティナちゃんの足裏に擦り寄せようとしていたのだ。もちろん巨人用のストッキングは分厚くて、繊維の隙間に食い込みはせど破くなんて夢のまた夢。けれど気持ちは、タイツ一枚隔てたなめらかな肌へ向かって苦しいほどに突き進んでいた。
 ティナちゃんは、親指一つで僕を何人も乗せられるんだ。そんなドでかい足指に、指の股に、僕は全力でハグしようとしていた。頬を擦り寄せキスを惜しまず、成長した体でなんとかその喜びを分かち合おうとしたのだ。
 けれど、僕のペニスなんて2ミリ程度の汚い棒。そんなもの認識してももらえずに、ティナちゃんは僕を踏みつけた。指先で弄び、汚らしいと言わんばかりに床へグリグリ押し付けた。

 そんな、すれ違い届きもしない思いの中で。
 僕のペニスは、崇高なほどでっかい足裏に揉まれ。
 小さく、弾けたのだ。


§
 等身大だった世界。
 日常。
 同じサイズの仲間たち。
 住みよい家。
 それが一挙に剥ぎ取られ、放り投げられたのは。

 特大少女、巨大少女、極大少女のひしめく恐怖の世界だった。
「きゃははっ! 自分よりちっちゃいのがいるって最高ね!」
「あらあら、何が起こってるかもわからないって顔ね。自分が縮小種ってこともしらなかったわけ?」
「ずーっと箱の中で暮らさせられて、来る日も来る日も上位種さまのために働かされて……。なのに自分がどこにいるかも知らなかったなんて、飛んだお笑い草♪ 矮人種は脳まで空っぽなのね♪」
 5倍の、金髪メイドたちの罵声が飛び交う。
 しかしそこに、僕の声は上がらない。
「なんとか言いなさいよ劣等種♪」
 くぐもる男の声。
 それは、ぺたんと座るメイドの下。尻に挟まれたクッションから漏れる、苦悶の声だった。
 最下級の一般種メイドたち、初めて自分より下位の存在に触れた彼女らに、僕は最初の洗礼を受けていたのだ。クッションにされ太ももとお尻の間でプレスされた僕は、一ミリの隙間もなく少女の体に押し潰されていた。
「だいたい生意気なのよ。どうして自分の立場も知らずに生きてきたわけ? 私達なんてずっと巨人さまのために生きてきたのに……! 何も知らずのうのうと! この! このっ!!」
 僕の上に座る小柄な娘、しかしその体はすでにむっちりと女性的で、僕は嫌というほど巨尻の重圧に伸されてしまう。白タイツのお尻、そこにうっすら浮かび上がる黒ショーツ、その起伏すべてが僕を押し潰すのだ。
 それだけではない。僕を乗せる巨女の脚は、ストッキングから溢れる太ももでみっちみち。ピチッとくっつきあって空気ももらさず、僕を包み込んで離さない。まるで、女の子で出来た真空パック。安産型のどっしりムチムチヒップに肉座布団にされて、僕は人間の形さえ忘れそうだった。

 周囲からは女の子たちの楽しげな声。わずかに太ももの間から出た僕の下半身を足先でいじくり回し、こねくり回し、普段の鬱憤を僕に撒き散らすのだ。
 それは、無理からぬ事ではあった。一般種なんて、いくらでもいる。掃いて捨てるほどいる。一山いくらで売られた、粒ぞろいの美人たち。いくら僕にとっては巨大でも、彼女らはここでは単なるペット。館はあまりに巨大でとてもじゃないが住みよくはない。上位種メイドに支えられ、ペットとして飼われることで働き暮らすことが出来たのだ。主人のもとにメイドがいて、その下にさらに無数のメイド、館を覆うヒエラルキーは絶対だった。動かしようの無い格差、だって、巨人がいなければ椅子にさえ登れないのだ。巨人種だってそれは同じ。最上種でなければ、オトナでなければ、なにも出来ないたんなる動物。
 だからこそ、身を粉にしてメイドは働く。
 巨人の脚を、すり抜けて。
 そんな自分の足元に、小さな男。
 面白くない訳がない。
 もとより己の小ささだけを意識してきた分、彼女らに手心などはなかった。一般種は僕を虐げる。自身の巨大さを、気にもとめずに……!

「あははっいい気味ね♪」
 ぐいぐいと尻を僕に練り付け、限界までその感触を叩き込む。パン生地をこねるように、丁寧に丁寧にお尻で潰して引き伸ばし、巨尻に埋まる僕を笑っているのだ。ロングスカートにこもった女の子の匂い、程よくしまった柔尻の、ムチンとした丸まり。そのどれもが極上の拷問具となって僕を押しつぶす。もがく僕の足は、若々しい内股を蹴っては跳ね返され、暴れるほどに荒くなる呼吸、肺の奥まで吸い込んでしまうメイドの香りにクラクラとしてしまう。
 その上、股間を容赦なくこねくり回すメイドの足先。タイツの肌触りに任せ、スリスリとペニスを弄ばれていた。美少女の巨尻に足先、両者の快感に襲われて僕は混乱と快感の極みだった。

 コリコリと亀頭をでっかい足指でこねくり回され、ズシズシとお尻をバウンドされ。メイドによる顔面騎乗と足コキの同時攻撃。
 耐えられるわけがない。
「ははっ、イッちゃったイッちゃった♪ ざっこ♡」
「ねえちょっと、こいつ気絶してない?」
「あなたのお尻で窒息しちゃったんじゃない?」
「な、何よ失礼な! ほら、起きなさいってこのっ!」
 女の子のお尻の下、足の下。
 惨めな格好で、僕はペニスの中身を吹き出させた。
 こんなひどい目に遭わされ、侮辱され。だのに、これまでないほどに、射精してしまったのだ。

 暗転した視界。
 辛うじて届く少女らの会話。
 次に襲いかかったのは、鉄槌と化した美少女の巨尻だった。僕を叩き起こそうと、むちゃくちゃに跳ね回るのだ。
 ビクビクッと痙攣しながら叩き起こされ。
 湧き上がる少女らの嘲笑。
 そして、女の子の間をたらい回しにされ。
 何度も何度も、辱められた。

 それから先、何時間エッチなオモチャにされたかなんて。到底、覚えていることではない。

 けれど、それはほんの序の口。
 軽い洗礼だということを、僕はまだ知らなかった。


§
 重層的なメイドの関係。愛し、愛され、愛玩され、虐められ、崇拝し。どこまでも甘く香る女の園。
 その中に一粒僕という異物が投入された時。
 析出するのは美しくも歪んだ宝石だった。僕は琥珀に取り込まれた虫、水晶の中の水滴。逃げられず、山のような無数の女体に囲まれ、そして。
 食い尽くされるのだ。
 異世界と化した巨大女神さまの世界。来る日も来る日も辱められ、ただひたすらその崇高さに涙し。そして、虐げられるのを待つ他ない。

 ……それでも、優しくしてくれる人はいた。
 あるメイドが飢えている僕を見つけ、食事を与えてくれたのだ。或いはいらない布を携え、ベッドを作ってくれた。20倍少女の彼女は、僕やティナと同年代か、それより下か。スラリとした長身に、おとなしげな表情にふわふわとした金髪が可愛らしく、優しい人なのだろう、僕を放ってはおけないようだった。
「どうですか? 残り物ですが」
 僕の前に、残飯と思しきものを差し出す。飼い犬にされた気分だったが、少なくともお皿に乗せられた食事というだけで嬉しかった。巨女さまからいただく厚意。それがこんなに心を温めてくれるなんて。
 僕はすっかり彼女に懐いていた。
 
「あれー、何してるの?」
「す、すみませんっ」
 背後からの呼びかけ、その声量だけで、少女は相手の身分を悟ってしまう。そして振り返れば、50倍幼女、その膝に視線がぶつかるのだ。
「虫、ですか? こんな虫の相手をして、もうお掃除は終わったんです?」
「違うんです、これは……」
 しどろもどろに白タイツの細脚へと語りかけるメイド。いくら20倍の巨女さまとはいえ、上位種を前にしてはペット同然の存在だ。幼いメイド、しかしその体躯は年上女性の3倍はくだらない。まだ肉も付ききらない細脚なのに、履いているのは年上メイドの寝袋としてさえ大きすぎるニーソックス。子供用のパンプスを履いた白い塔が4つ、中級メイドを囲み立ち並んでいた。
 最高位の、けれどまだ成長期にすら入りかけな幼女がそびえ立つ。しかも、2人も。生意気な笑みを浮かべて長身女性を見下ろしながら、クスクスと笑い合っていた。
 そして、その哀れな小人メイドの靴の影。
 震える僕のことなど、前後の2人には見えてもいないだろう。

「ダメじゃないですか遊んでちゃ♪」
 口ずさみ、幼女の一人がしゃがみ込む。
「違うんですこれは……!」
 身を折る幼女と、ようやく顔を合わせられた女性。それでもなお、幼女の胸にも届かない。そんな下位種の少女は、なんとか弁解を試みる。
「へぇ、口答えするんだ~チビのくせに♪」
「っ……! その……」
 挟むように後ろへしゃがんで、囁くもうひとりの幼い声。舌足らずな高い声が、少女の前後でさざめいた。
 ヒールを履いた白い巨柱と、前後にそびえる小屋のような大きなパンプス。そんな巨人の世界で、僕に何ができるだろう? うろたえる少女の足踏みに悲鳴を上げ、絨毯の茂みに脚を取られ、20倍少女と50倍幼女の靴ばかりにおびえるばかり。幼女より小さくたって、ふたりとも超のつく巨人なのだ。不穏な音を立ててきしむ革靴の影、女神たちの会話に僕は入れない。
「あはっ♪ 悪い子には~。お・し・お・き、しないとね♪」

 そして、後ろから軽く抱き込むと。
 幼い腕で少女の体は、完全に拘束されてしまった。
「や、やめてください! ッ……! 離して、苦しいです、離してください!」
 幼女の膝の上で、彼女は巨大幼女に羽交い締めにされる。そして足首を押さえられれば、磔にされた少女は動けない。倍ある体格の年下メイドに押さえつけられて、ただ恐怖に目を見開くだけだ。
 だのに幼女2人は、イタズラ中といった程度の軽い素振り。その姿は猫を愛でる子供のようで、年長メイドの頭を撫で頬を突き、その反応を楽しんでいるに過ぎなかった。
「そーんなにこの虫が可愛いの? ヘンなの」
「なら、たーっぷりこの虫の使い方、教えてあげますね♪」
「違うんですっ! 私はお嬢様のメイドとして、やめて、くださいッ!!」
 クスクスと年上少女を笑う幼女2人。白タイツを穿いた細い腿に彼女を寝かし、もう1人は彼女の足を掴んで。そして僕を、脚の間におろすのだ。20倍スケールのM字開脚、8メートルはくだらない長い脚に見下され、遥か彼方から不安げな表情のメイドに見下され。そして前後では40メートルもの高みからあどけない顔が僕を笑っていた。

「ほら虫ケラ! 飼い主さまがお待ちよ。助けてあげなさいな」
 ニマニマと笑いながらロリメイドが言い放つ。その声だけでビリビリと僕を揺さぶる巨大さ。その力が、二回りも年上の娘を赤ん坊よりたやすく押さえつけ、無力化しているのだ。
 そんな2人から、どうして彼女を助けろって?
 僕は途方に暮れて、ただふらふらと言いつけどおり歩き出す。

 しかし続いて飛んできたのは、縛り付けられたメイドの悲痛な叫びだった。
「やめてっ! 来ないで、汚い、やだ、嫌よ嫌!」
「……え?」
「やめて、来ないで、来ないでぇッ……!」
 そして、バタバタともがき僕を蹴飛ばそうとあがくのだ。 今まで優しくしてくれていたはずのお姉さん、それが幼女2人に羽交い締めにされ、僕を嫌悪の眼差しで睨んでいた。これまでの柔和な表情からは考えられない鋭い視線。キッと目を細め僕を睨めつけるのだ。まるでフナムシを見たような顔。そんな嫌悪の視線が、きっかりこちらを射抜いていた。
 そんな素振りに、悟らざるを得ない。
 システィーヌさまのメイドとして。その自覚が、僕を放っては置かなかった。
 だけど本当は、誰より僕を嫌悪していたのだ。

「あははっ嫌われちゃった♪ あんたなんかに優しくしてくれるわけないじゃない、バーカ♪」
「期待しちゃいましたか? まーだ自分がどういう存在かわかってないんです? あはっ、バカなんですね? ばーかばーか♪」
 大気を揺らし大音量で鳴り響く幼い罵倒。舌足らずな声が圧倒的説得力を持って僕を踏み潰す。暴れ汗ばむ女の人の香りと、居るだけで醸し出されるロリの香り、その中に1人佇んで、3人の視線に愚弄されるのだ。

「そうね、人間以下のゴミ虫だってこと直々に人間さまが教えてあげる♪」
「それと、貴女も口答えしちゃダメですよ? わるい子には、おしおき、しないとね♪」
「な、何をするんですか?! ごめんなさい、私が悪かったですから……!! ごめんなさい! やめてっ! おやめください!!」
 怯えた目で上位種ロリを見上げる女性。ロリメイドはからかうように、僕を持ち上げ振ってみせる。
 そして、乱れたスカート、その中に忍び込ませると……。
「やめて!? いやよ、やだっ、やめ、やめてぇえええ!!」
 スリスリと、僕をディルド代わりに股間をなで始めたのだ。

 まるで洞窟のようにぽっかり空いたスカートのドーム。その中で美脚はぴっちりタイツを貼り付け白く輝き、その中央、ほんのり黒いショーツが透けていた。まるで大きな橋のようにアーチを描く、その根本へと。僕は差し込まれてしまう。
「ふふっ、だーめっ♪ 力を抜かないと、気持ちよくなれないわよ?」
「むちむち柔らかい太もも……。これならウジ虫も大喜びですね♪」
 スカートの中にこもった、むんわりと柔らかな暖気。そこに少しの緊張が混じり、嫌な汗をかいているに違いない、蒸し暑さが混ざり始める。そこにロリの手が突っ込まれば、彼女は一気に暴れだした。道路を丸々占領してしまうようなぶっとい太ももが、左右で藻掻いて大気をかき乱す。けれど、最上位ロリメイドの手はガッチリ固定して、僅かな身じろぎしか許さなかった。
 丸めた布団のように太い、幼女の指先。その先端で、僕はもがいた。女の子の中に入っていく感覚、そして、左右で暴れる太ももが怖かった。なにより、彼女にこれ以上拒まれたくなかったのだ。これまで優しくしてくれた巨女さま、その嫌悪感に胸は抉られていた。それでも、せめて。なんとかこれ以上、彼女を傷つけないよう、ロリの魔の手から抜け出さなければならなかった。
 それでも、白手袋はスベスベとした柔らかさで僕を締め上げる。まるで巨岩に押しつぶされたようなその力。叩いても叩いても、モスっと分厚い薄布の生地に拳は沈むばかり。

 そうこうしている間にも、エッチなお股はどんどん近づいて。
 女の子の、エッチな場所へ。
 その、スジをなぞるように、僕を押し付けた。

「やめてぇえええ!!」
「ふふっ、やーだよっ♪」
「それに、これから良いことしてあげるんですよ? きっと気にいるはずです♡」
 長身女性の抵抗も意に介さず、2人はねっとりとした手付きで、僕をお股の膨らみになすりつけた。ふにぃっ……と柔らかな感触が僕の顔を包み込む。少しばかりの汗と、圧倒的なメスの香り。20倍巨女のお股に押し付けられ、少しずつ、少しずつ、メス肉をほぐす道具にされるのだ。
「ッ……やだ……んッ……やめてぇ……!」
「まあ、かわいい声が出てるわよ? これなら虫も報われるんじゃなくて? ふふっ、ウジ虫以下の存在でも役に立てるのね♪」
「ふふっ、可愛いですよ♪ お人形みたいに綺麗なお顔、もっと可愛がらせてください……♡」
 そして、2人がかりで幼女は女性を犯すのだ。
 しっとりし始めた恥丘、そこにねちっこくねちっこく人間ディルドを押し付けて、ロリは彼女にオトナの快感を教え込む。上位種による調教、その圧倒的体格差に耐えられるわけがない。直に物足りなさげに腰が浮き出した。

「だめッ……ッ……こんなことされて……私……私……ッ! んッ……! やめてください! お願い、ッしま、す……ッ!」
「ふふっ嘘おっしゃい♪ もうトロトロで顔もとろけて、気持ちよさそうよ?」
「虫は嫌ですよね? でも虫だから余計感じちゃう、そうでしょう? 触られるたびピリピリしてますね? もっと欲しくなってきたんじゃないですか?」
 幼女のタイツを握りしめ、涙目で彼女は喘ぎだす。もう股間はタイツさえ濡れるほどに完熟していて、自家製ローションが余計に快感を増していた。子どもたちの繊細な手付きと巨大さ故の力強さが混ざり合い、耐えようもない性感を醸し出すのだ。
 けれど、僕にとって。
 それは、巨体エッチへのご奉仕以外の何物でもなかった。

 ねっとり絡みつくエッチな蜜。20倍少女から分泌される愛液の洪水に、僕は払っても払ってもまとわりつかれた。そして、押し返しても押し返してもおまんこの絶壁は僕を包み込む。白タイツにショーツはくっきりうかびでて、ヒクつくスジにさえしっかり食い込んでいた。僕を舐め回す女の子のお股、湯気立つような生々しいメスの香り。大きすぎるおまんこにしゃぶられて、脳髄まで僕はトロトロに蕩かされていく。
 ロリメイドはワレ目に押し込んで、無理やりなぞりあげられる。そうすれば、でっかいお股のリップは僕の頭を咥え込み、ムニムニ蠢いては窄まった。頭蓋骨を押しつぶされそうなほどに強い締め付け。同時に感じる、大陰唇の柔らかさ。押しのけようと暴れまわれば、それがより彼女を喜ばせた。
 時に内股に押し付けられ、下腹部へ、お尻の谷間を撫で回し。メイドたちは僕のことなどバイブ程度にしか思っていない。もう彼女は、自発的に僕へお股を擦り付けていた。もっと気持ちよくなろうと、喘ぎ声は更に切なくなる。ニチチッとエッチな水音は止まらない。そして、もっともっとと腰を振るのだ。

「気持ち、ッいい……気持ちいいッよぉ……♡ ありが、んっ、ありがとうございます……気持ちい、んんッ……♡」
 幼女の膝の上、そこには性感に酔うメス猫の出来上がりだった。ロリのおままごとのような悪戯に喘がされ、涙を流しながら突っ伏してその太ももに顔をうずめるばかり。お尻を突き出す姿勢に変わって、ただひたすら上位種幼女の猛攻に感謝する。ぶっとい子供の脚にしがみつき、なんとか快感を噛み殺そうとしては、気持ちよさに涙をながすのだ。
 小人を使ったロリレイプに、すっかり調教された長身女性。グイグイと腰を動かして僕に襲いかかり、背骨が折れるほどナカまで僕をねじ込もうとする。幼女の手で仔猫に変えられてしまった女性は、もう止まらない。

 そして。
「ヤっ……くるッ……キちゃ……やだ……あッ、や、あ、ッ~~~!!!」
 それは突然の出来事。
 猛烈な絶頂が彼女を襲った。
 決壊したメイドおまんこ。そこから吹き出した潮は、タイツさえすり抜け僕にぶちまけられた。でっかい指先に摘まれ、僕は逃げることも出来ず正面からエッチな噴出に穿たれる。あんなに優しくしてくれたお姉さん、それが僕を肉ディルドと認識し、むちゃくちゃに聖水をぶちまけているのだ。ロリメイドに陥落しメス猫に落とされ、お遊び感覚で犯されて。
 そして悦びのあまり、劣等種を粉砕しかけていた。

「はッ、んっ、はぁ……はぁ…………」
「いいこいいこ♪ ちゃーんとエッチ出来たみたいね♡」
「上位種に無理やりされて、気持ちよかったでしょ? 貴女たちなんて、私たちでいくらでもイかせられるんだから。もう貴女は私達の性奴隷♡ クセになって、何度も何度もせがむエッチな動物にされちゃったんです♡」
 スカートの中にこだまする喘ぎ声。
 それを幼女の声が覆い隠す。

 ロリメイドは手慰みにクリクリ僕をこねくり回し、それから手袋を脱ぎ捨て。

 失禁した年上メイドの聖水が、丸まった手袋ごと僕を襲った。
 ショロロロ、と悦びの失禁。
 愛液と小水でグズグズになった手袋の中で、僕は痙攣しながら、彼女のおまんこを見上げていた。
 そして、惨めさに射精すると。
 一気に弛緩して、気を失ってしまうばかりだった。


§
 重い体を引きずって、僕は自分のねぐらに戻っていった。
 ……無論、ねぐらと言っても、巨人種の使うマッチ箱にすぎない。ベッドもなく床に寝そべる僕に、邪魔だからとあてがわれたのがそれだった。とはいえそんなマッチ箱も、僕にとっては高さ1メートルはある巨大な箱。キングサイズのベッドを、2台も3台もしまえてしまう代物だ。そしてそんなものが、僕の唯一の安息の地だった。

 しかし、控えの一室。箱のあるべき場所に、果たして目当てのものはなかった。

 そこに訪れる、猛烈な地響き。バウンドする地面にへたり込む僕を、巨大な影が包み込む。
「まぁ、お部屋が無くなってしまったのですか?」
 見ずとも解る。この、圧倒的存在感、巨大感。振り返れば、背後には50倍メイドたちが数人並び、優越感に満ちた笑いで僕を見下ろしていた。
「それは大変ですね。わたくしめが責任持ってお探し致しましょう」
 クスッと上品な笑みに邪気を滲まし、大人びたメイドは言った。しかし遥か上空、しゃがみもしない直立の彼女とは、目線すらよく合わない。覗き込むように下を見つめる、巨大な彼女の目に、僕はどう映るだろう? 対して僕には、眼の前に鎮座するハイヒール、そして天まで伸びるフリルスカートだけがメイドの姿だった。

 そんな女神が、ぐぐぐっと腰を折って僕をつまみ上げる。
 そして、そばのテーブルにおろすと。思わせぶりに他のメイドへ目配りを一つ。
 応え、笑む侍従。

 それから、わざとらしい素振りで言うのだ。
「あはっ、見つけました♪」
 ズイッと突き出される尻。白タイツに覆われ月面のように真ん丸な球面が、僕の目と鼻の先にまで迫りくる。そして、スルリとタイツを脱ぐと。
 むわぁ……、と蒸し暑い芳香。気圧されるほど巨大なお尻が、透明感ある白さを輝かす。日々の勤めにうっすら汗ばんで、女の子らしい香りは巨大になった分より濃厚だった。
 半脱ぎになった臀部、わずかにショーツにのみ隠された生尻が僕の前に現れる。その大きさは、尻たぶ一つでも家屋を粉砕できてしまうほどだ。直径15メートルの豊臀は、僕の小屋を一撃でぺしゃんこにできるサイズだ。僕など、巨人種の足指と背くらべしても負ける大きさ。そんな小人にどデカいお尻を見せつけるのだから、その迫力は圧巻の一言に尽きる。
 みっちり詰まったお尻はいかにも重そうで、僕の何万倍あるのだろう、引力さえ感じるほど。ベッドシーツのようなパンツさえピチピチに食い込んで、お尻に挟まり見えなくなっていた。
 そして、食い込みの最も強烈な谷間にめりこむなにか。
 ……それは、ベッド代わりのマッチ箱だった。
「ほら、あなたのためにわざわざ取ってきてあげましたよ? ありがたく受け取ってくださいませ♪」
 クスクス笑いのさんざめく中、わずかに尻を開いて中を見せつける巨大メイド。そこには、3メートルを超えるベッドが挟まっている。僕には幅だけで十分すぎる箱、屋根裏部屋みたいに大きな箱が、今じゃほとんど見えなくなって女の子のお尻に挟まっているのだ。
 それは、あまりに度の過ぎた愚弄、侮辱だった。およそ貴人の侍女とは思えない破廉恥な行い。僕のことを彼女らがいかに蔑んでいるか。嫌というほど思い知らせた瞬間だった。

 けれど、なおメイドは僕をからかう。
 早く取れと言わんばかりに尻を振る巨女メイド。
 あれを取れって? あんな圧搾機みたいなエッチなお尻の中へ? 冗談じゃない。
 でも、巨人種の言うことは絶対だ。ニタニタ笑う無数の巨人に囲まれ、テーブルの上に逃げ場はない。そして目前にある尻は、物言わず僕に命じるのだ。メイドが尻を振って見せれば、巨尻はブンと重い音を立てて目前をかすめ、タイツでこもっていた香りを芳しく振り乱す。
 自分の安全を脅かされる恐怖、尻なんかに蔑まれる屈辱、僕の顔は真っ赤に火をこぼす。けど、拒めない。拒んだりなんかしたら、あのお尻は一瞬で僕をパンツのシミにしてしまう。
 涙目になって、僕は絶望の門に踏み出した。なんでこんな目に合わなきゃいけないんだろう。小人の世界から出なければ、幸せだったのに……。

 僕は突き出された50倍ヒップに向かって、ぴょんぴょんと飛び跳ねた。もちろん、ベッドを2つも3つも並べたようなデカブツ、受け取れるはずがない。何より、マッチ箱は女の子の巨大ヒップにほぼ完全に埋まっているのだ。イチモツだってたやすく隠し切るむっちりヒップは、僕の隠れ家をほとんどまるごと飲み込んでしまっている。
 でも、取り返さなきゃいけなかった。だってあれは、僕の唯一の持ち物。踏み潰される心配が無いのはあれのおかげ。それを奪われて、僕はどこにいけばいい?
「ふふっ、惨めですね♪ 侍女においどを見せつけられてベッドを挟まれて、しかもこんなに近づけてるのに届きもしないんですか? 半分乗せてるって言うのに♪ 早く取ってください。じゃないと……んっ♡」
 そして、己の尻を鷲掴みにすると、
 グシャリと。
 僕の隠れ家は、あっけなく豊臀で粉砕されてしまったのだ。
「あ、あぁぁ……」
 天体級のどでかいお尻は、今やぴっちりと閉じられてしまっていた。無論、ショーツの間、僕の住処はあっけなくその犠牲になる。そして、今なお悲鳴を上げて圧縮されていくのだ。むにむにとヒップをこすり合わせ、煽るようにメイドは箱がクラッシュされていくのを見せつける。あんなに大きなねぐらが、その10倍はあろうかという少女の豊臀に挟み潰されていくのだ。
「あはっ♡ すっかりぺったんこ♪ あっけないものですね?」
 みちぃ……と彼女はお尻を開いてみせる。
 そうすれば、グシャッ、と音を立てて放り出された残骸。
 僕は近寄り、震える手で屍に手をやった。箱からは、ホカホカと立ち上る体熱、湯気立つ女の子の香り。すっかりひしゃげたマッチ箱を、僕はなんとか戻そうとした。けれど厚いボール紙は鉄板のようで、びくとも言わない。触れれば表面はしっとりとしていて、タイツで蒸れたお尻の汗が、しっかり染み付いているのがわかった。元の形を無視したぐちゃぐちゃな姿。その尻圧に、思わず震えてしまう。
 そんな僕の姿を、周囲のメイドたちも笑うのだ。

「浮かない顔をしてどうされたのですか? あらあら、せっかくのお部屋が台無し♪ おいたわしゅう♪ それでは、卑しいメイドめが貴方のベッドになって差し上げましょう♡」
 背後の僕へ振り返り、メイドは上品な笑みを浮かべた。そしてペコリとお辞儀をすると。

 再びお尻を突き出し、みっちりヒップをこじ開けたのだ。
 眩いばかりの白い尻肌。それをくぱぁっと広げれば、その谷間の奥まで視界はお尻でいっぱいだ。ご自慢のショーツを見せつけるように、デカデカと僕へ覆いかぶさる爆尻の影。重みだけでガスタンクを粉砕できるような、巨大な美尻がガバッと手で広げられている。そんなえっちなムチ尻を見せつけられて、僕は呆然と見上げることしか出来ない。
 尻肉に埋もれる指、もっちりと引っ張られる尻肌がえっちだった。閉じ込められた香りが一気に放出されて蒸し暑く、それでいてムンムンとした女性フェロモンが心をざわめかす。あんなに硬い箱をぺったんこにしたお尻、なのにそれはどこまでも柔らかそうに指から溢れ、乗り出すようにこちらへ顔を近づけているのだ。
 僕など、そのアナルよりも小さい存在。まるで月面のような表面に見下され、動くことも出来ずその美肌に照らし出される。透き通る白い肌、うっすら汗を纏ったムレムレのお尻。その生々しいほどの吐息に包まれ、僕は魅了されてしまっていた。触れたいと思った。潰されたいと思った。それが、巨大なお尻の魔力とも知らず。
「さ、召し上がれッ♡」
 それがヌッと近づいたと思った、
 次の瞬間。

 ”ズドンッ!”と巨尻は辺り一帯を踏み潰す。
 振り下ろされたメイドヒップ、それが起こす激震は衝撃波さえ立ちかねないほど。空を切り落下してくる超質量ヒップは目にも留まらぬ速さで僕を粉砕し押しつぶす。そして”ぶるるんっ♡”と揺れては閉じ込めた僕を殴り倒し、とどめの一撃を食らわすのだ。ただでさえずっしり重く柔い女の子のお尻。それが50倍、重さ125000倍となって投下されるのだから僕など一撃だった。一瞬でお尻の奥の奥までねじ込まれた。猛烈な尻圧で粉々にされた。それでもトロトロと女の子の柔らかさに助けられ、生かさず殺さず小虫はえっちなお尻に密閉されてしまうのだ。
「ぅんっ……♡」
 微細な感覚に、ゾクゾクと背筋を震わせる巨大メイド。そのわずかな震えでさえ、たっぷりとした尻肉はミチミチッと音を立てて揺れ、僕に追撃を食らわせる。
 そして、ゆっくりお尻を上げれば。
 そこには、もはや完全にお尻にめり込んだ小人の姿があった。外から見えるのは、わずかにその指先だけ。それを見た瞬間の、メイドたちの黄色い歓声すら僕には届かないほどだった。
「ふふっ、ちっぽけな虫ですね♪ わたくしめの住心地はいかがですか? 一日歩き回ってすこし蒸し暑いかも知れませんが、柔らかさは保証しますよ?」
 尻に埋没する僕を周囲に見せつけながら、メイドは僕を嘲った。
 そして、タイツをスルリと引っ張り上げると。
「それでは、メイドホテル、一日ご堪能くださいまし♪」
 パチンッと、白タイツでお尻を覆ってしまった。一気に尻圧が高まり、外からの音もくぐもってしまう。より密着することで聞こえる血流の音、体内を通して伝わる呼吸や声が、少女の中に閉じ込められてしまったことを生々しく感じさせた。
「あらあら、随分他愛のないこと。全然感じないけれど、落としてしまったのかしら? お尻の割れ目にさえ入ってしまえるなんて、本当に虫ね♪ このまま力を入れたらきっと……♡」
 メイドは周囲の笑いを呼びながら、たしっと己の臀部を一つ叩いてみせる。そうすれば、海がかき乱されたような、ぶるるんっと重い揺れ。おっぱいの揺れに似て、けれど遥かにみっちり詰まった尻揺れに、僕は脳の奥底までシャッフルされる。既に限界までプレスされているのに、僕の占める僅かな空間まで占領しようと尻肉が一気に押し寄せるのだ。

 からかうように、僕の隠されたお尻をつつくメイドたち。
 そこに、突如アンリの声が響く。
「皆さん、夜会の準備の時間ですよ? 何を、……手慰みは後でも出来ますから、今はお仕事を」
 聡明なメイド少女は、その場の様子に何があったかを察したに違いない。クスリと笑みを漏らしながらそういった。
 それは鶴の一声、アンリの促しに応え、メイドたちは一斉に仕事に取り掛かろうとする。
 僕を慰みものにしながら。

「はい、アンリさま」
 その声とともに、僕を包むヒップの主が応えた。
 ビリビリと背骨まで揺るがす大きな声。彼女の中から聞く声に、まるでそれが自分自身から湧き出すような錯覚を催す。
 そして、俄に尻肉がねじれだしたと思うと。

 大きく一歩、メイドは足を踏み出した。
 ギチチっとタイツの引っ張られる音。
 ニチニチと尻肉同士の擦れ引っ張られ合う音。
 それとともに訪れたのは、気を失うような激震だった。縦横無尽にお尻の中でシャッフルされ、まるで嵐の中の枯れ葉になった気分。ぶるんっと重量感ある尻揺れが、左右から僕に襲い来る。その度僕は尻壁のなかにめり込んで、反対の壁に弾き飛ばされ、その繰り返し、繰り返し。

 左右に足を進めるたび、リズミカルに巨尻は僕をこねくり回した。白タイツの中、僕のことなど1ミリだって見えはしまい。それほどにみっちり僕を包む爆尻が、メス肉津波となって僕に遅いかかるのだ。女盛りの豊満な臀部、見れば思わず顔を埋めたくなるむちむちヒップ、その中に閉じ込められて、ただで済むはずがない。お尻にショーツ、汗にまとわりつかれ、ミンチになるまで尻愛撫に晒される。
 吸い付くような肌。汗で更にもっちりとして、全身にくっついてくるその滑らかさ。
 ずり落ちそうになれば、彼女はクイッと指で僕を押し戻す。ショーツへグイグイと押し込んで、ついにはその隙間からお尻の中に、ねじ込んでしまう。直接触れるお尻の中。軽い動作で彼女は、僕を尻肉地獄へ放り込んでしまったのだ。

 みっちみちの尻牢獄。
 女体の中に監禁される、6時間。
 それが、どれほどの苦痛か、快楽か。過酷さは想像を絶したものだった。どこまでも詰まった真ん丸ヒップは肉厚で、左右にバウンドしては僕を圧縮し続ける。熟した巨尻の肌触りは極上で、締まった肉が波打つたびに体中を弄られた。
 そんなエロ肉津波が僕を襲う。
 気持ちよくなるまで、何度も、何度も。
 そんなのおかしかった。だって僕は、お尻の中に閉じ込められているんだ。まるでアナルビーズみたいにねじこまれて、誰にも助けてもらえずクスクス嗤われるばかり。メイドの誰もがマナーと尊敬を行動原理にしてるのに、僕は汗まみれでお尻に挟まれたまま。しかも、無意識のうちに気持ちよくさえさせられて……!
 でも、止められっこなかった。
 女の子に触れる、それだけで気持ち良いのだ。だのに、高貴な巨人種侍女さまのムチムチヒップ、そのもっとも内側に擦り付けられ、全身くまなく挟み付けられている。そんなエッチなお仕置きをされれば、どうしようもなかった。一歩ごとに、地面の割れるような振動が僕を襲った。そして、みちっ……みちちっ……と尻肌に擦り付けられる。スカートを押し広げるほどパンパンに詰まった豊臀、そんな圧搾機にニチニチと転がされまくるのだ。

 頬ずりしてしまった。
 キスしてしまった。
 お尻の内側なのに、尻汗に濡れているのに、舐めて、塗って、スカートの中、ショーツの中の特濃アロマを吸い込んだ。変態だ。巨女さまに、こんなことしちゃいけないんだ。なのに、やめられなかった。体を擦り付け、卵肌に全身で奉仕した。崇高なお勤めにさえ思えるお尻への崇拝。巨大メイドさまのヒップに、どこまでも、どこまでも溺れていく。

 巨大なぷるぷるリップに食まれている感覚だった。でっかいお尻にもみくちゃにされ、リズミカルなバウンドを叩き込まれ、そのたび僕はちんちんをこすりつけてしまう。ダメだ、ダメだと思いながら粗相してしまった。みっともないと思うだろうか。でも、こんなに気持ちいいことされて、平気でいられるはずがない! いつお尻でぺちゃんこにされるかもわからなかった。あんなに硬いマッチ箱を粉砕した爆尻だ。そんな肉鈍器に挟まれて、恐怖のドキドキは徐々に興奮のそれに変わってしまう。
 尻汗と柔肌に、ねちっこくペニスをこねくり回された。波打つ白肌に亀頭を責められ、キスする尻肌にはビンタされた。
 そして、沁みるようにエッチな汗がちんちんに入り込んできて。

 その痺れに、僕はイッてしまう。
 ビリビリと脳髄まで媚薬に侵食された。メイドのメス尻に、エッチな感電を何度も何度も教わるのだ。躾けられた。陵辱された。

 そして、彼女が椅子に腰を落とした時。

 グチャッと、最上級の射精の中で。
 僕は意識さえ踏み潰されてしまったのだ。


§
 もちろん労苦からは逃げられない。
 だって僕はモノ。
 道具なら、巨女さまに仕えるのは当然だった。
 いや、巨女さまなんてもったいない。
 僕がご奉仕するのは、そのショーツだった。

 僕は下着の上に跪く。
 服の微細なほつれや埃を調べる、それが僕の言いつけられた仕事だった。
 もちろんここは、女の園。立ち並ぶ大中小の下着は全て女性のランジェリーだ。そのうえ上位種や主人の気を引くために、それらはなるべく上品に、しかし同時に扇情的に作られていた。
 そんな、特大ショーツに這いつくばって。
 繊維の目の奥そこまで、目を凝らすのだ。

 とはいえ、それは想像以上の重労働だった。
 5倍少女の下着でさえ、机いっぱいになるほどの大きさ、軽いはずの生地もずっしり重く、それが数十枚はくだらない。まるでベッドカバーを慎重に調べるような作業。けれどそれは女の子のパンツにブラ。これまでろくに見たこともないランジェリーに、今じゃ溺れるほど囲まれている。
 女の子らしいラインを象った下着は、どれもとてもセクシーだった。色とりどりのショーツにレースが走り、スパンコールや凝った刺繍、そのいちいちを裏まで指でなぞって、何もくっついていないか調べるのだ。
 洗い物に染み付いた、女の子らしい香りが立ち込める。それだけでくらくらしてしまうのに、両手いっぱい広げても足りない大きさが心を揺さぶった。自分の腰と比べてみれば、膝はクロッチにさえ届かない。僕の下着なんて、その股布よりも小さいだろう。
 タオルケットのようなセクシーショーツ。それを、1枚、2枚、と続けていく。

 けれど、それで終わりじゃ、もちろん無い。
 布団みたいな一般種ショーツ。
 それをなんとか積み終えて、彼方を見やれば。
 そこに山と積まれたのは、巨人種のランジェリーにほかならない。
 本当の仕事はこれからだった。この、部屋いっぱい分の絨毯みたいなショーツを見るのも、僕の役目。広い部屋、床に傷がないか丹念に調べるように、僕は女の子のパンツやブラに這いつくばるのだ。うんと顔を近づけて、頬がふれるほどにくっついて。巨尻で引き伸ばされた生地は、洗われてなおうっすらヒップの形を残している。そこに乗っかっても、僕の重さじゃへこみもしない。そんなエロい特大パンツに、僕は五体投地でご奉仕するのだ。
 デカデカと視界を埋める、エッチな装飾。バラや模様、紫にピンクとそのランジェリーは、見るだけで興奮してしまう。だって、巨女さまを誘惑するためのランジェリー。僕なんかが見て良い代物じゃないのだ。
 でも、僕はおパンツさまにご奉仕をやめない。
 使い込まれた女物の下着。フリルをなぞり、指先にフェロモンが染み付くのを感じてしまう。汚れがないか見極めて。染みがないかも見逃さない。幅6メートルの特大ショーツ、その中に潜り込み、股間部や尻の食い込み部分に張り付くのだ。そこはとりわけ危険な場所。女の子のもっとも秘密の場所に、べったりくっつき舐めるようにまさぐり倒す。静かな部屋に、荒い吐息と衣摺れの音。僕は、興奮を隠しきれない。

 おパンツさまと向き合う孤独な時間。それを何時間も何時間も続ければ、僕はいろんな女の子の匂いに染まってしまう。

 その頃に、やっと一番の難所を迎えるのだ。

 僕は、一歩進み出る。
 まるでおっきな池みたいに、どこまでも続くショーツと。
 こんもり山のごとくそびえるブラと。
 それは、50倍巨女の、下着の山。
 そのショーツは幅15メートル、小人の家さえいくつも入ってしまえるスケールだ。ブラは気球と変わりない。そんな化物ランジェリーに、僕はご奉仕しなくちゃいけなかった。

 もう、近づくだけでエッチな香り。他のショーツとは比べ物にならない面積は圧巻で、僕は惹きつけられるように布の海へと潜り込む。女の子の、小さなお股を隠す布。それが僕には、無限の草原みたいに見えるのだ。だって僕は小人、マッチ箱ですら持て余し、アナルと背くらべするほど小さな虫だ。きっと外から見れば、下着に虫が這っているように見えただろう。フリルの幅にさえ劣る虫。それに引き換え、おパンツさまはなんて大きいんだろう。
 そのフリルだけで道路みたいだ。ランジェリーの紐さえ電柱のよう。なめらかなのにぶっとい繊維に指を食い込ませて。そうすれば、巨大女神の香りが肌の奥まで染み付いてくる。お股やお尻でパンパンに伸ばされ、糸の太ささえわかってしまうサイズ感。クロッチは大きな橋のよう。そこからブワッと広がるパンツの生地は、とても、とても崇高だった。
 
 もう、耐えられない。
 僕は頬ずりして極大おパンツさまに抱きついた。舌を絡ませキスを惜しまず。潜り込めば、その重さだけで潰れてしまう。それでもなんとか這いずり回って、僕はその様々な部位を探し求めた。
 ブラも同様。僕は這い登ってブラを堪能した。二階よりさらに高い場所まで進めば、怖くて足が震えてしまう。それでもレースにしっかり指を食い込ませ、おっぱいの力を、ミルクの残り香を探し求めるのだ。
 まさにガスタンク、気球にすら勝る巨大なカップ。比較すれば自分がその乳首にさえ負けてしまうのがよくわかる。まして、今そこにふれる、自分の胸。それが、レースの太さにさえ負けてしまえば、50倍の凄みは直感的に襲ってきた。
 僕はその繊維をなぞりあげるようにペニスをこすりつけた。繊維の隙間に入ってしまうような僕のちんちんじゃ、おパンツさまには無力だった。でっかいショーツ、その模様のように張り付いて、下着相手にセックスするのだ。どれほど歩いても尽きないような下着の海、その女の子成分を感じながら、何度も何度も亀頭をこすりつけた。

 あまりに惨めなオナニー。
 気づかれて、叱られないかと恐れた。
 けれど、それは無意味なことだ。
 僕の粗相など、気づいてなんてくれなかった。どんなに汚したって、真正なおパンツさまには無いも同然。まして巨女さまが気づいてくれるはずもない。どころか、僕の汚いものは繊維に弾かれ、染み通りもしなかった。僕は、そこに痕跡すら残せられないらしい。そう思うと悲しくって、ショーツにうずくまりひっそり泣いた。
 叱られたかった。
 躾けられたかった。
 こんなにひどいことをしているのに、まるで気づいてももらえず、なかったことにされるのだ。ささやかな復讐? とんでもない! むしろそれは自嘲だった。生地に弾かれる僕の汚いもの。それを処理するのは自分だ。拭い去れば、煌めく下着は汚れ一つなく元通り。巨女さまの、下着一つ汚せない。それほど無力な存在が僕だった。
 自分にさえ裏切られる感覚。だけど、女神さまの下着は僕を誘惑して、エッチすぎて耐えきれなくて……。
 だから何度も、僕はおパンツさまに礼拝してしまう。
 誰も居ないのに。下着だけで、欲情させられ。
 うっとり喘ぎながら、涙をこぼして。
 そして、繊維一つさえ汚せず。
 このまま着られて潰されたいと、呟いてしまうのだ。




§
 メイドたち、僕以外のすべての人間は、脅威そのものだった。
 最も小さなメイドだって、僕をまるごと踏み潰せる巨大さなのだ。まして中級メイドは手のひらに僕を乗せられて、最上種に至っては足指でさえ僕より大きい。一般人には人形大、拡大種にはガム同然で、最上種にとっては豆粒以下。
 そんな僕が、最上位種の館に一人、寄る辺もなく彷徨う日々。

 それが、苛烈でないはずがない。
 僕は毎日メイドたちの餌食になった。
 踏まれた、犯された、汚された。
 悪戯で靴に下着に隠され、一日中肉体と下着の間に監禁されるのだ。或いは愛し合う大小のメイドが、僕をディルドにして無茶苦茶にねじ込み合った。お股の中に一日隠されたままだったことも少なくない。
 皆競って僕を性玩具にした。
 隠れたって無駄だ。僕よりずっと賢い少女たちの目から、どうやって逃げおおせるだろう? 泣き叫びながら僕は追いかけ回され、その先に待ち受けるのはでっかい手か、下着か、開かれた口か。どうしようもない恐怖だけが僕を待ち受けた。
 大中小の手が僕に伸びる。昼夜問わず僕を貪り尽くす。それが、巨大女神の殿堂に住まうということだった。羽の生えた天使たちの足の間、僕が虫以下の存在であることを、飽くことなく叩き込まれた。

 もう、女の子の匂いは僕に染み着き離れない。

 そんな中でも、僕はティナを求めて彷徨をやめなかった。
 馬鹿だ。助けてくれっこないのに。
 いや、どうせ穢されるならティナ様に、と思ったのかもしれない。いっそ殺してくれるならティナ様に、と。もう、僕自身わからなかった。
 どちらにせよ、巨女となってしまったかつての内気な女の子には、なかなかお目通り叶わなかった。僕が四六時中犯されている間、システィーヌ様はアンリ様と一緒。それだけ一層、僕はティナへの想いは高じていった。

 そんな、ある日。

 僕はメイドたちの手を逃れ、屋外を歩き惑っていた。
 逃げる内、そばを通った少女に蹴飛ばされ、無意識の間に放逐されてしまったのだ。
 たどり着いた土臭い草原。それは、館の中よりはるかに危険な場所だった。早く戻らねばならない。けれど、戻ればまた恐怖が待っていて……。生い茂る緑の中、哀れな虫はトボトボ歩いた。
 ある種のパニック。
 僕は無我夢中で歩き回る。
 そしてツルリと黒いものにぶつかるまで、僕は頭の中と足元にばかり夢中で、自分がどこにいるか考えもしなかったのだ。

「痛っ……!?」
 そびえ立つ黒い物体。高さ数メートルを超えるそれに、僕は隠しきれない既視感を覚える。
 磨き上げられた表面はエナメル質。そこに映る自分自身さえ僕は知っていた。
 たらりと流れる嫌な汗。
 恐る恐る見上げれば。
「…………」
 ”ジッ……”と温度のない眼差しで、僕を見下ろすアンリと目があった。しゃがみ込み、いつから見ていたのだろう、読めない表情の巨大メイドが小虫を観察していたのだ。
 そして、ようやく気づく。
 空には色とりどりの花、ここはアンリが趣味で営む花壇に違いない。綺麗に整えられた巨大な植物は極相林の如く、その間から遥かにそびえる主の影は、あまりの高さに霞んでいた。

 アンリの花園など、禁足地以外の何物でもない。それを侵したとなれば、ただで済むはずがなかった。
 反射的に僕はうずくまる。血の気が引き貧血の余り震えさえする始末。
 彼女が花を掻き分けた時、その恐怖はピークに達した。

 訪れる、しばしの沈黙。
「……?」
 促されるように顔を上げれば。
 そこにあるのは、怒気のない表情。
 それどころか、微笑んでさえいる!
 目を白黒させたのは当然のこと。

 そこに他のメイドが訪れた時、僕の混乱はいよいよピークを迎え始めた。
「あっ、アンリ様!」
 声に促され、優雅に立ち上がる高貴なメイド。
 その立つ間際に、ふわりと僕を摘み上げ。
「なにかご用です?」
「いえ、大したことではないのですが……。あの虫、ご存知ありませんか? どうも逃げ出したらしくて」
「そうですね……」
 全ては彼女の胸三寸。僕は白手袋の細指にぎっちり包まれてなお、ビクリと震えを禁じ得ない。
「私は見ておりません。……食料庫は探しましたか? 虫は、そういうところに集まるものでしょう?」

 そうですね、と去っていく小さなメイド。

「さて……」
 それを見届けると、アンリはゆったりと手を開き。
 いつかのように、僕を胸ポケットにしまった。


 そして、何事もなかったかのように裏庭から立ち去ると、日々の仕事へと戻っていったのだ。


§
 その後も、アンリの奇妙な恩寵は続いた。

 僕は彼女の私室、化粧品箱の中に住まわされた。
 大木のようなルージュに塔のような化粧水の瓶、化粧の匂いは立ち込めていたけれど、それはかつてのマッチ箱より遥かに贅沢な住処。快適といえる場所ではなかったが、安全な居場所、食事が与えられ、何より他のメイドから匿われる平穏はこの上ない恩恵だった。

 裏があるのではと疑うのは、無理もない。
 けれど少なくとも、今与えられる幸せは確かで、それが綻ぶことはなかった。きっと、僕のことなど裏切るに値する相手とも思ってないに違いない。なにより、最上位の存在に情けをかけられるだけで、どれほどの光栄か。それが気まぐれであれなんであれ、アンリにすべてを委ねたい。そう思った。
 救われた。
 その思いが、どれほど僕の胸を打ったことか。
 拷問のような日々に、突如差し込まれた平穏。
 文字通り、彼女が女神に見えるのも無理はなかった。こんな救済を得れば、誰であれすがりつくだろう。

 美しく崇高な女性。高貴な佇まい、どこまでも巨大なその御姿に、僕は心酔していった。
 最上位の存在を示す髪色に心奪われた。一般種と中級メイドの金髪さえ見劣りするほどの銀髪は、ティナの持つ同じく黒髪とよく映える。もっとも崇高な女性らの持つ、銀糸の髪色、流れる緑の黒髪を前に、くせ毛の僕はただ見惚れることしかできなかった。
 しずしずとした足音が響き、地面が揺れれば、一気に溢れ出る光、空いっぱいに広がるメイドの上半身。その姿に何度崇高を見出したかわからない。その比較を絶した巨大さ、美しさが僕を救い生かす光だった。ショートボブの前髪の奥、ティナと同じガーネット色の目が、僕を見下ろす。まるでものを見るような眼差しに、けれど僕は感動を隠しきれない。
 そこに、巨大な女神がいる。アンリ様が見てくださっている。その事実だけで十分だった。
 僕を摘む白くすべらかな指先。絹で編まれた布の海は、命を吹き込まれて柔軟に動き、僕を繊細につまみ上げる。僕を見つめる虹彩は燃えるように煌めいて、読めない瞳でジッと僕を射抜いた。しばし眉を寄せ、モノクルをかけて僕を観察し。それから机におろすと、食事を与えるのだ。
 その行動の意味を僕は知らない。そもそも、僕を匿う眼目すらわからない。僕じゃ抱えきれない大きな指先、そこに宿る不可解な意志だけが僕をくすぐる。
 それでもよかった。もとより、神意は計り知れないのだから。

 上位種に庇護される幸運。しかし、幸いはそれだけではなかった。
 彼女は、ティナの半身。彼女についていけば、ティナに会えるのは間違いない。
 それは非常に大きな希望だった。

 それから、幾日の後。
 僕はついに、ティナの部屋へ忍び込む機会を見つけた。

 それは宵口、アンリが私室へ戻った時のこと。
 システィーヌ様がお呼びですと、声がかかった。
「急用で?」
「”相談”、とのことです」
「……わかりました」
 その声に僕の心は沸き立つ。化粧くさい箱から這い出して、すぐさま僕はエプロンの裾に飛び乗った。
 その服に掴まれば、後はあっけない。
 静かな足音。巨大女神によって、僕はたやすく約束の地まで一尾枯れる。
「アンリです」
「……入りなさい」
 ドアから漏れる、あの、愛しい声。ついに僕は、ティナちゃんの部屋にまで入りおおせたのだ。
 
 臆病者の僕も、このときばかりは行動的だった。ベッドへ飛び移り、絨毯の海へ滑り降り。おっきなヒールの下をくぐり、すぐさま物陰へと隠れるのに成功する。絨毯の海を掻き分け、ソファの下。ティナの見える場所にまで、苦慮して進み続けた。

 令嬢は、晩酌中のようだった。
 お酒なんて、そんな贅沢品を僕は見たこともない。対してご令嬢は、いかにも高級そうなシャンパンをテーブルにのせ、優雅にフルートグラスを傾けている。
「貴女も少し付き合いなさないな」
「まだご奉仕は終わっておりませんよ?」
「うふふっ♪ 白々しい嘘は言うものじゃないわよ?」
「では、ご相伴に……」
 僕に背を向け、アンリが腰掛ける。そのせいで、2人の姿は椅子に隠れ見えなくなってしまう。目に映るのは、すぐそこにそびえる白タイツの塔、はるか先、ガーターストッキングのおみ足。

 それから、2人だけの大人の時間が始まった。

 日々のこと、仕事のことに、他愛ない冗談。
 羨ましい距離感で、少女2人は語り合った。
 流れる会話、織り合わされる2人の声が美しい。

 同時にグラスに口をつける主従。
 ちょっとした沈黙。

 それで、と。若い主人は切り出した。
「それで、虫は?」
「と、おっしゃいますと?」
「他のメイドが居ないって騒いでるわ。貴女、飼ってるんでしょう?」
 ああ、とアンリは頷いた。
「手入れが必要かと。棲み着いた虫とはいえ、お嬢様のお持ち物であることには変わりませんから」
「そう。てっきり飼うつもりだったのかと思ったわ」
「ふふっ、お戯れを♪」
 ここに来てメイドは破顔し、主人の冗談を笑い飛ばした。
「最低限の振る舞いです。最近くたびれて来たので、少し手入れしているだけですよ。それがお嬢様のメイドとしてふさわしいかと。……それに、メイドたちのオモチャに留めておくのも勿体ないでしょう?」
「さあ、どうかしら。あれきりほとんど見てないものだから」
 興味もないけれど、と言ってグラスに口をつける。
「貴女が世話をしている方がよほど不思議だわ」
「強いて言えば、気まぐれです」
 
 僕の前で揺らめく、美女たちの巨大な足。2色のタイツが、右で、左で、語らうに表情豊かに揺れていた。
「だけれど、よく見つけたわね?」
 ”虫ですか?”とアンリは言い、
「まぁ、ずっと飼っていましたから」
 そう続けた。
「飼っていた?」
「えぇ。……まあ、本来アレは葡萄や織物を管理させるためのものです。商いのことですので、お嬢様が知らないのも無理からぬことかと」
 そう言いながら、手慰みにワイングラスの縁をこする。
 高く、澄んだ音を鳴った。

 僕の世界を掘り崩す、崩壊の音色が。







「殖えたので他所では間引いていたのですが、お嬢様とお会いになった虫ですから、一応」
「変なことを言うわね。そもそもあの場所を教えたのは貴女でしょう?」
「あはっ♪ そうでしたっけ? いえいえ、箱入り娘のお嬢様が無知になりはしないかと心配だったもので。虫の存在を知っておくのも、お嬢様に必要なことかと思っただけです♪」
 酔ってきたのか、跳ね始めるアンリの口調。
 それと共に明かされるのは、かつての日々の舞台裏。僕だけが知らなかった、僕の全てだった。
「これだから貴女は! 全部貴女の仕組んだことじゃない。いつもそうよ、酔わせないと本性を見せないんだから」
「まあ人聞きの悪い。お嬢様のメイドとしてですね……」
「い・い・え! 昔からそう! ツンと澄ました顔をしてアレコレ吹き込むんだわ。子供の頃物怖じするのは私の方だったんだから」
「あははっ♪ そんなこと言って、もう誰も信じてはくれませんよ?」
 クスクス笑いながら、幼少の頃を舌で転がすようにアンリは目を細める。そこに映っているティナの姿がどのようなものか、僕にはわからない。

「あの頃のお嬢様も可愛らしかったですよ?」
「やめなさいよ白々しい」
「それに、虫に会わせたあの時! あんなに控えめなお姿、他にありません」
「本当に口の減らないメイドね! ……矮人が居るっていうから、どんな蛮族が出てくるか恐ろしかったのよ。……あまりにも無知なので、ついつい騙ってしまったけれど」
「慣れないことをするから勘違いされるのです。……”幼馴染”でしたっけ? アレが幼馴染なら、一緒に育った私は何になるんでしょうね?」
 普段とは違った、ややねちっこい声でアンリは笑った。 
 そして、気軽に僕の全てを踏みにじるのだ。

 運命の出会いはハリボテだった。何一つ、何一つ計算外のことはなかったのだ。唯一の誤算は、僕の一目惚れだけ。それすら錯覚で、空虚。だったら、僕に何が残るのだろう。

「大したマッチポンプだわ。虫を飼って、会わせて、連れてきて。それで今は、貴女の手の中。さぞ懐かれてるんでしょうね?」
「どうでしょう、懐いているのか、餌をやる人間に擦り寄っているのか……。あまりに思考が単調なので、判じがたいですね」
「そんなこと、小人のメイドにでも任せておけばいいのに。それとも、なにか気になることでも?」
「まさか。……矮人はどこまで堕ちた存在なのか、興味があったのは確かですけれど。おかげで、随分楽しませていただけました」
 クスクスと笑いを忍ばせて、記憶の中の僕を弄ぶ。その目に映る豆粒、手の中で餌をくらい何も知らず懐く虫が、彼女にはどれほど滑稽に映ったか。実験動物が、毒を試さんとする科学者に懐くようなもの。ヤプーだって、ここまで惨めではない。
 同じ人間? 主人と幼馴染? それは大層悪い冗談だった。
 そもそも彼女らは、かろうじて人間と呼べる生き物を、特別に、ペットとして、飼っているだけなのだ。
 自身の膝にも届かない中級メイド、それは成長しきれなかった未熟児だった。自身の手袋にすら収まる常人のメイド、それは正常に成長出来なかった不良品だった。せいぜい人間に囲われることで価値を持つ、ペット程度の存在だ。自分が大きいのではない。下位種が小さいのだ。幼い頃は、等身大のテディベアを肌身離さず持ち歩いたこともあったろう。けれど今、小人らはコレクションとして生かされるだけの、たかが動くぬいぐるみ。それを囲うのはいわば、動物愛護の慈善事業なのだ。

 そこに、豆粒のような虫が?
 人間? 幼馴染?
 かつて遊んだダンゴムシ、それがある日現れて、”ずっと愛してました”、だなんて。
 いまさら出てきた話す虫が、面白くないはずがない!

 僕の滑稽さにクスクス笑みを漏らす美少女主従。
「不遜にもお嬢様の名を呼び散らして、何度握り潰してやろうと思ったことか」
「インコの音真似のようなものよ。放っておきなさい。第一、少し会っただけで惚れ込むなんて。最初に見たものを親と思う鳥と同じね」
「理解に苦しみます。同じ時間に居合わせたとて、共に生きたことにはならない。そんな当たり前のことも、虫にはわからないのでしょう」
「思考どころか種族も弁別できない、こんな下等な生き物が同じ姿をしているなんて、屈辱もいいところだわ」

 それから一通り笑ったところで。

 メイドは、静かに立ち上がった。

「さて……」

 そして、周囲が一挙に照らし出されたと思うと。
「お掃除の時間といたしましょう」
 高貴なる巨大メイドは、床に転がる虫へ手を伸ばし。

 柔らかく雪原に似た手が僕に向かって広げられ。
 雪崩の如く襲いかかった。





§
 ぴっちり指に張り付く白手袋、その先端。
 そこで僕は、絶世の美女2人の眼差しに晒されていた。

「気づかれないとでも思ってたのかしら?」
「もとよりそんな知性はないかと」
 2人の甘い吐息の混ざる、その間。僕は泣きそうになりながら、少女の指先で藻掻いていた。
 こんな時の感情表現を僕は知らない。ただただ無知な僕は、初恋の少女と思慕した少女の嘲笑の中、虚しくメイドの指を叩くだけ。薄い皮膚、繊細な指、少女のきめ細やかな指は、万力のように僕を挟み、もう下半身の感覚さえ奪い取ってしまっている。対して僕の拳は、指に張り付く布地へ力なくり下ろされるだけ。
 ……この指は、僕を裏切った巨人の指なのだ。僕は今、敵の、敵の指先に摘まれて、動くことも出来ず囚われている。
 絶体絶命だった。もうアンリさえ、僕をイジめる恐ろしき巨女神そのもの。救いはない。ここを出ても、そこは巨人種メイドの巣窟。どこにも行き場はなくて、誰も僕を助けてはくれなくて。そして今、自分の体一つ自由にはさせてもらえない。

 僕は両手で身を押し上げようとした。キュッと肌に吸い付く白手袋の中でもがき苦しみ、まるで雪に埋まった下半身を取り戻そうとするようだ。けれど、真っ白な布地の奥に感じる肌の気配、繊細な脈拍は、どこまでも女の子の色彩で彩られている。目を転じて、ぼんやり霞む世界の向こう、僕を見つめる少女の顔立ちを見た時、僕は一層の恐怖に身を震わせた。
「……やっとまともに虫の顔を見たわ」
「お覚えですか?」
「……そうね、少なくとも、人間の顔をしていることはわかったわ」
 片眼鏡越しに、2人はもがく僕の姿を観察していた。恐怖と苦痛に歪む小さな生き物、ほんの少しの力加減で高い悲鳴を上げる虫けらを、しっかりその眼で捉えようというのだ。レンズ越しに感じる巨大美女の視線が、僕を焦点にして焼け焦がす。ヒリつくような強い眼差しに、本能的な恐怖を禁じえない。
 ガラスの奥、権力と美に輝く虹彩が僕を覗き込む。前なら、僕のかつての面影を探しているのだと錯覚したろう。けれど、違った。今も昔もその視線は同じ。劣等種を、人間未満を見下す女神のそれだった。ティナちゃんが僕を見下ろす。同じ顔、同じ瞳で。どう愉しんでみようか思案するような、あまりの惨めさに哀れんでさえいるような、悩ましく、艶っぽっく絡みつく、美女の視線。指先でこねくり回す仕草すら嗜虐的で、サディスティックな色気さえ感じさせた。

 僕は恐れた。そびえ立つ2人の超巨人、まるで美しい城のようなスケールの、崇高な女神様たち……。その間にいて、声も出ないで、ただただその美貌を前に畏怖した。
 だのに。
 僕は、奇妙な歓喜に襲われてしまう。
 意味がわからなかった。だって、僕は今すぐにでも殺されてしまうような境遇だ。裏切られて、裏切られて、辱められて、辱められて。なのにあまりの巨大さは、彼女らの美しさを崇高に見せた。何度も夢に見た美少女が、今や引力さえ感じる巨大さで現れている。それだけで、もう、どうにかなりそうなほど嬉しかったのだ。
「ティ、ティナちゃん! システィーヌ様! 僕です、み、ミヌです! わかりますか!?」
 実際、僕はもうどうにかなっていたのかも知れない。
 どうしても僕は、歓喜の声を抑えられなかった。

「……ここまで来るといっそ愉快だわ。ここまで次元の違う存在なのに、どういう思考なのかしらね?」
 意表を突かれた女神様は、一瞬の沈黙の後、呆れることも出来ず呟いた。
「僭越ながらお嬢様、思考と呼べるほどのものはないかと」
「それもそうね。でもなんでかしら、ちょっと興が乗ってきたわ……♪」
 このような状況でも歓喜する僕は、彼女らの眼には未知の生き物となって映ったろう。貴族の娘たちはクスリと笑った。この虫は少なくとも、肥え太った庭の観賞魚よりは楽しませてくれるらしい。

 アンリが僕を下ろしてくれる。
 重厚なテーブルクロスに沈み込む足、それとともに感じる、ティナちゃんの存在感。
 見上げれば、そこには彼女の手のひら一つ分の距離にまで迫った、ご令嬢の姿があった。
 ティナが、口角を上げこちらを見る。見ている。見てくれている! 僕はあまりの歓びに感涙さえ浮かべ、一歩、一歩と近づいていった。
 テーブルの地平線、そこからそびえる真っ赤なお城のようなお姿。彼女もまた、こちらに注意を向けてくれる。
「じっくり話すのはこれが初めてかしらね? お久しぶり。懐かしいわ」
 そして、少し身を乗り出したと思った時。

 激震とともに、おっぱいが降ってきた。

「……え?」
 テーブルの上に乗る物体、それに顔を近づけようとすれば、ティナはその爆乳を机上に乗せざるを得なかった。結果、地面に乗り上げる特大の乳房。自重でむにぃ……と広がり、弾力でそびえ立つこと、実に5メートルを越した。
「どうしたのかしら? 友達でしょう? 気を遣う必要なんてないわ」
 頬杖を付き、ティナが僕に顔を近づける。乳を机に乗せ、けだるげにこちらを見下ろしながら。見えるのは、薄い微笑、下目遣い。至近距離にあって、けれどその姿もおっぱいの影にほとんど隠れてしまっていた。
 こんなに巨大な女の子相手じゃ、距離が近すぎるのだ。もう僕じゃ、適切に近寄ることすら出来ないらしい。
「ふふっ、胸の影に隠れて見えないわね。私より背の高かったミヌはどこに行ったのかしら?」
 クスクスと笑うたび、ユサッ……ユサッ……と重々しく乳が弾む。その流動的な動き。薄布一枚の中に、どれほど柔らかなものが詰まっているかよくわかる。その柔らかさに、今にもドレスの間から溢れ出してしまいそうだ。谷間や横乳もほとんど丸見えのドレスじゃ、その豊満な貴族おっぱいは隠しきれない。肩紐さえ千切れそうで、そうなれば雪崩れる数百トンおっぱいで、僕は間違いなくぺしゃんこだ。
 粒人間は、ドギマギしてその威容を見上げた。ドレスの繊維さえ克明に見える距離感だ。漂ってくる上位種の体熱や香り、それに当てられるだけで幸せだった。
 欲を言えば、今すぐ飛びつきたい。このおっぱいにしがみつき、あわよくばドレスの隙間から忍び込んで、その猛烈な重圧に圧死したい。そうすれば、僕はどんなに報われるだろう。
 そう思えば思うほど、ティナの引力は増していく。
 僕は、崇高なおっぱい様を前に立ち尽くした。
 舐めるように見上げ、味わって。それから、眼前にいるティナちゃんがいるのを、噛みしめるのだ。
 そこにあるのは、重そうな曲線、限界まで張り詰めたドレス。
 その奥、ツンとした乳首の輪郭が浮き出ているのに気づき、思わず僕は赤面してしまう。ずっしりしたおっぱいの曲線、その頂点に慎ましやかに立つ、小さな乳頭。しかしそれに見下される豆粒は、乳首の先端にさえ乗る大きさだった。薄布に身を預け、ティナちゃんのオトナ乳首が眠っているのだ。ドレスに浮かび上がる大きさ、美しさは一級の果物を思わせる。着飾った美少女、肉感的でありながら芸術品のように完成されたその姿に、一点隠された生々しさだった。

「あら、怖がらせてしまったかしら? 当然よね? だって、あなたにとって私達の大きさは50倍。こうして近づけば、自分がどれほど小さいかよく分かるでしょう?」
 そう言って巨人種の美女らは笑う。見せつけるように爆乳を揺らし、巨大さを誇ることも忘れない。立ち尽くす僕を、己の巨躯に打ちのめされたと思いながら。

 けれど、僕は呆然としていたのではない。
 見惚れていたのだ。

 ヒリつく恐怖が、彼女の存在を確かに僕に思い知らせた。見上げるその威容が、彼女の美しさを事細かに伝えてきた。もう彼女への憧憬と熱情は骨の髄まで染み込んで、汎ゆる不条理を突破してしまったのだ。

 彼女が僕を脅かすたび、ティナちゃんを鮮烈に感じられて僕は歓喜してしまった。
 
 思いもせず女神様が施した、絶対的マゾ調教。
 僕は、その犠牲にされていたのだ。

「ティナちゃんが……! ティナちゃんがいる……! おっきくて、美しくて、恐ろしくて……」
 うわ言のように叫んだ時、きっとティナは何が起こっているか知らなかったろう。
 それは僕が、巨大女神に狂う崇拝者、調教済みのマゾ虫に成り果てた瞬間だった。

 そして、愛慕のあまり駆け出したのだ。
「やっと、やっと見てくれた……! ティナちゃん! 僕、僕だよ!」
 遥かに巨大な女性。近づけるのはわずかに、その胸元だけだった。コレほど近くにいながら、僕にはその頬に触れることさえ出来ない。ただ、その鎮座するどでかおっぱいに近づいて、なんとか、その注意を向けてもらおうと必死だった。
 だから、頬杖を付く、その肘へ僕は手を触れたのだ。
 触れてはいけない、高貴な肌に。

「このっ……!」
 体に触れられた嫌悪感が、一瞬ティナの背筋を震わせた。
 貴女は嫌悪感に鳥肌を立たせ、それから取り乱すのを一気に押さえる。
「ええ、いいわ。それなら、そうね……」
 冷たい笑みを浮かべる。
 それから、己の乳房を手のひらで持ち上げ出した。

 それは、変幻自在に動く巨乳の暴力。初めスルリと滑り込まされた手を飲み込んだと思うとグググッと持ち上げられて大きく撓み、白い手のひらの上に押し広げられる。巨人種をもってしても重そうなそのおっぱいは、少女の手から溢れそうになりながら指に食い込むばかり。そして高く掲げられれば光をことごとく奪い一面に影を落として、小人の直上、その丸さを見せつけ……。

「私の体、思う存分、味わうといいわ……ッ!」
 そして、一挙に振り下ろされるのだ。

 周囲の空気を巻き込み、天を踏み割って落下する巨女おっぱい。それが辺り一帯を爆砕するのに寸秒もかからなかった。激震を走らせティナの爆乳が世界を揺らす。ズドンッと地を打ち、どぷんッとミルクを波打たせ、凶悪おっぱいの全重量を叩きつけたのだ。衝撃にぶるるんと揺れる乳肉。華やかな貴族のおっぱいが、物々しく地面に鎮座する。
「うふふ……、無断で触れるなんていい度胸ね? いいわ、存分に味わいなさい。わかる? これが私の乳房よ。この、巨大で、莫大で、崇高、この惑星みたいな存在が、私の、乳房♪ わかる? わかる!!? これでもまだ古馴染みだと? いいわ、特別に、直々に教えてあげる。これがあなたの触れた高貴な乳房。虫けらなんか触れるだけで殺してしまえる乳房よ。自分の立場、思い知りなさい!」
 それはティナたちにとって、せいぜい10センチ程度の落下に過ぎない戯れだった。どさっと重々しい音を立てて紅茶の水面を揺らし、けれどそれだけのこと。身分を思い知らせるための、単なる名誉刑。性的な部位に下敷きにすることさえ厭わない、なんて。それは貴族社会では、何より屈辱的な戒めだったろう。
 けれど今、ティナちゃんの下乳にめり込む僕にとって、それは苛烈極まる身体刑だった。踏み潰されたガムのようになって尚死ねないまま、12万倍の乳重を一身に叩き込まれていたのだ。

「ふふっ♪ 女の乳房に下敷きなんて、これ以上の屈辱はないわね? 私のバストだけで半殺しの目に遭って、これでいい加減こりたかしら」
 嘲笑を漏らしてお嬢様は言い放つ。その度タプンタプンとミルクを揺らし、なおのこと小虫を踏みにじりつつ。

 均等に分散する重圧と分厚いテーブルクロスに挟まれて、僕は命だけは許してもらえた。
 けれど、それだけ。いっそ気絶させてくれればよかった。けれど、あまりに過酷なおっぱいプレスは気絶すら許してくれない。なくなる空気、出口のない下乳の中。バストの下敷きにされて、僕は錯乱しながらティナちゃんに助けを求める。この巨大乳肉こそ、ティナちゃんなのに。

「ティナちゃん! 助けて! どこに居るの!? やだ、怖い、怖いよティナちゃん!!」
「気持ち悪い虫ね。どういう了見なの? ちょっと昔会ったからって、馴れ馴れしくティナティナって……」
 劣等種を相手にする義理はない。この際惨たらしく殺して、一時の暇つぶしに供しようか。どちらにせよ、最上種の気分を害した罪は重い。ここで死ぬのが定めだ。
 自慢のバストを上げ、不逞の虫を殺しにかかるティナ。
 地にうずくまる虫をつまみ上げようとした、その時。
「ティ、ティナちゃん……!」
 ゴキブリじみた生命力で、僕は初恋の人と触れ合えた歓びに震える。ここまで強烈に存在を誇示してくれる。その幸福に、僕はもう壊されてしまっていた。

「このッ……! 汚い口で、私の、名前を……!」
 再び振り下ろされる12万倍おっぱい。運動エネルギーが加算され、その威力は跳ね上がった。空気を裂き振り下ろされ、ぐちゃぐちゃに僕を叩きのめすのだ。”ズダンッ”と叩きつけられれば衝撃にバウンドし揺れるバスト。
 それが、一撃、二撃……。
 そして、静謐が訪れる。
「流石に死んだかしら」
 品のない行為にクスクス笑い合いながら、己の胸を持ち上げる貴人。
 その下乳にべったり張り付いた小人が、剥がれ落ちる。

 それでも、僕は這いずって。
「ティ、ティナちゃん……」
 熱に浮かされたように、想い人に感謝したのだ。

 虚を突かれたように少女は瞠目した。
 試しに指を差し出してみる。
 そうすれば小人は、自分より太いそれに抱きつき、頬ずりし。
 嫌悪感に、グリグリとにじり潰されても尚、存在だけで小人は喜んでいた。
 その様を見れば、さしもの彼女とて興味が湧く。
 まとわりつく壊れた小虫を、ゴミのように指で弾き飛ばすと。
「これは少し、面白いかもしれないわね」
 美少女は、仄暗い笑みを浮かべた。


§
 慰みモノとして興味を持った時、ティナの虐待は更に苛烈なモノになっていった。
 従順な崇拝者、いくら虐げられても壊れたようにすり寄る虫。それが人の形をとっているのだから、愉快でないはずがなかった。

 ティナの部屋に放し飼いにされた僕。この下等動物は、幾多の無視と虐待とを繰り返されていた。
 いや、アンリがいない時以外、僕はティナに眼さえ向けてもらえない。間違って出てきでもすれば、殺されることさえ在り得た。
 ティナが僕に意識を向けてくれるのは、わずかにアンリとの逢瀬の時だけだ。

 たとえばそれは、ティーブレイクの頃。
 テーブルを囲み2人が親しげに話し合う。
 時に手を握り、頬を撫で、脚を絡ませ。

 戯れに、僕を踏みにじりながら。

 僕は巨大女神が座る椅子の間に投げ出され、4本もの巨柱の間を逃げ惑っていた。
 逃げる僕。それを、おっきなハイヒールが小突いては跳ね飛ばす。電柱のようなヒールを煌めかせ、電車さえ軽々一踏みできる足がじゃれついてくるのだ。メイドヒールの漆黒の革、ティナの履く真っ赤なエナメル。硬そうな生地も崇高種の女性の足に押し広げられ、ギチギチと悲鳴をあげている。そして、艶かしく照り輝いて、磨き上げられた表面を僕に襲いかかった。
 2人の足は、爪先だって高さ数メートルはある存在だ。それが、汚い靴裏で僕を踏みつけ、甘噛するように踏みにじり、交互に僕を汚しまくる。ほとばしる激痛、容赦無い嘲笑。幼馴染の女の子が僕を道端のガムのように靴で踏みつけ、最愛のメイドと共に残酷な笑い声を立てるのだ。それはアンリも同じだった。遥か頭上、テーブルの向こうではクスクスと高貴な笑みを浮かべるばかり。
 僕から見えるのは、椅子から伸びた美脚だけ。椅子の底面、テーブルの裏に阻まれて、顔はおろかお尻さえ僕には見えなかった。それでも僕は、無機質なハイヒールの猛獣に襲われながら2人の美女に助けを呼ぶんだ。助けて助けてって叫びながら、当人のエッチなヒールに虐められる。靴に染み込んだ、ほのかな2人の体温が怖かった。厚い靴底が、セクシーなつま先が怖かった。でもやめてはもらえないで、埃だらけになるまで2人の足で転がされるんだ。
 やめてくださいって何度もすがりついた。テラテラした表面にキスをして、何度も何度も慈悲を乞うた。どこまでも伸びる高い壁、磨かれた女の子の靴を舐めてキスして、泣きながらティナちゃんの名前を呼んだ。けれど返ってくるのは暴力的な踏みつけ。ギャッと叫んで僕はメイドの靴までひとっ飛びだ。そして、つま先で転がされ、嫌というほど硬い靴底を思い知らされ、舐めて、キスして、助けを求めた。
 それが、何度繰り返されたか。

 それが止んだのは、すっかり僕がボロボロになった頃だった。
 2人はまだ、僕のことは見てくれない。遥か上空、隔てられた世界で2人だけの遊びに高じていた。
 こっそり、足先でエッチなイタズラを続けながら。

 ぐったり絨毯の海に沈む僕。
 重い体を、とんでもない爆風と轟音が弾き飛ばす。
 スルリと脱ぎ捨てられたヒール、その墜落に吹き飛んだのだ。エッチな足が脱ぎ捨てた抜け殻、それは、乗用車なんか何台でも詰め込まれてしまえる巨大な靴。数十トンはくだらないその脱皮だけで、僕はノミのように飛ばされてしまった。
 そこへ忍び寄る、でっかいでっかい女の子の足。
 ストッキングを纏いぴっちりした足裏が、辺り一帯に影を落とすのだ。
 すけすけエッチなストッキング、皮膜のような下着に覆われた、ティナちゃんの巨足。物言わぬおみ足が、天高く空を覆い尽くした。
 それが、どんなに綺麗な足裏だったか。
 ミルク石鹸のように白い裸足、それが薄布をぴっちり纏ってラインを浮かび上がらせ、艶かしく足指をくねらせて……。心臓が止まりそうなほどの恐怖と媚態。女の人の足が、こんなに美しいなんて。背筋のようにアーチを描く輪郭。ふっくらと柔らかそうな指の付け根。むしゃぶりつきたくなるような、美味しそうな足が、12メートル。視界から横溢する暴力的な光景に、僕は確かに興奮していた。踏まれたい。踏まれたくない。踏まれたい。踏まれたい……。エッチな足裏の魔力にかかって、僕は動揺するばかりだ。
 からかうような足指の蠢き。ストッキングの擦れる音、指同士の擦り合う音が胸をくすぐる。チラリチラリと垣間見えるペディキュアの赤にさえ、性的な興奮を隠せない。

 そのおみ足が、一気に降ってきた時。
 僕は全身で、ティナちゃんの美足を受け止めようとした。

 そして、グシャッ、と。
 ミチッ、と。

 一瞬で僕は足肉の暴力に包まれる。まるで天災。神罰。腕を伸ばした僕など居ないが如くに踏み潰し踏みにじり、しっとりすべすべの高貴な足が辺り一帯を踏み殺す。どさっという音とともに訪れる、蒸れた繊維と良い香り、暖かさのご褒美。
 須臾の間。それに遅れてやってきたのは。
「ぐッ……あ、あ゛あ゛っ~~~~~~!!!」
 猛烈な、巨大女神様の質量だった。
「失望ね、いるのかもわからないわ。ここかしら? ここ? ……ふふっ、いた♪」
 踏みつけたまま、周囲を弄る女神様のおみ足。僕が泣き喚きながら黒タイツの天井を叩き、敏感な肌はやっと僕を感じてくれる。指股に食い込んで、蒸れた空気を嫌というほど吸い込んで。そのまま惨めに、僕は幼馴染の足裏にめり込んでいたのだ。
 ぐにぐにと足指が波打つ。思いっきり握りしめて柔肌に閉じ込めたり、ぐりぐり付け根の膨らみを押し付けたり。そうすれば足裏越しに、見えないティナちゃんの確かな意志が伝わってきた。ゴミ虫に立場をわからせようと、えっちなお仕置きを叩き込むのだ。僕の何倍もでっかい指で虐げて、小虫にしっかりトラウマを植え付ける。

 けれどそれが、どうしようもなく嬉しかった。
 かつて、僕よりちっちゃかったティナちゃんのあんよ。それが今、僕を小指だけで踏み潰せるおみ足様になっているのだ。50倍、重さ125000倍の超重量が僕に成長を思い知らせる。恋い焦がれたティナちゃんが僕を踏んでくださる。同じ足なのに、僕の足などそのシワにさえ収まってしまうだろう。相対的に米粒のような僕の足と、列車さえ重さだけでクラッシュできるティナちゃんの足。これが、十余年を経て再開した僕らの格差だった。
 女王様が、容赦なく僕をお踏みになる。ストッキングの油を弾くような、指に吸い付くような独特の感触が、顔を、体を、尊厳も思い出も全部全部全部踏み潰す。極上のすべすべ感が僕を襲った。動くたび角度が変わり、独特の光沢と共に透けた肌の白が流れていく。
 ありがとうございますと僕はキスした。なんて光栄。ティナちゃんが貴族の娘となって僕を踏んでくれてる。ぎっちりとした重みは存在の証。高貴なストッキングは身分の証。そして、夢にまで見たティナちゃん、思い焦がれたちっちゃなティナちゃんが、僕をむごたらしく踏みつけ夢じゃないと教えてくれるのだ。こんなに、こんなにおっきなおみ足になって!

 僕は、ご令嬢の足に抱きついた。小指にすら腕は回らない。いや、その半面も抱きしめられなかった。小指の一関節だってキングベッドより大きいおみ足だ、当然だった。でも僕は、嬉しくって頬を擦り寄せキスを惜しまず、懸命におみ足さまにご奉仕したのだ。足なのに。ヒールで蒸れた足裏なのに!
 それでも僕はやめられず、ちんちんはすっかり勃起して何度もそのタイツに擦り寄った。気持ちよかった。いい匂いがした。キュッと薄膜の張り付く素足を求めて求めて、ミチっとした足指にちんちんを押し付けた。

「あら? どこに行ったのかしら……」
 そして少しティナが少し足を上げた時、僕は懸命にその小指に捕まったまま、腰を擦り付けていたのだ。
 ツンと上を向けられた足指の上、僕は小指様の第一関節というキングベッドに床ズリを続けていた。大窓のような爪、ペディキュアの塗られた爪に捕まって、なんとか落下を免れる。そしてそのまま、丸々とした膨らみに大の字にひっつく小虫が僕だった。
「ありがとうございます! ティ、ティナちゃん! システィーヌ様! ありがとうございます! ありがとうございます……!!」
 けれど、微生物の感謝が女神様に伝わるはずもない。
 このおみ足の先、天界ではなお女神さまたちは語らい合って、いるかもわからない僕への虐待をお茶請けに愛し合っていた。
 そしてそっと唇を合わせようと身を乗り出した拍子に、僕は淫らな楽園から振り落とされる。

「いいのですかお嬢様? ”ご親友”をお踏み潰しになってしまいますよ? ……んっ♡」
「ッ♡ ……ふふ、ウジ虫なんかどこかにいってしまったわ♪ ねぇアンリ、舌を……♡」
「んぅ……っ♡ それはいけませんね、きっとお嬢様の足が汚れてしまいます………ん♡ お嬢様、もっと……♡ アンリめがお探しいたしますので……」
「んっ♡ あら、貴女の手を煩わせるつもりはない、わ……っ♡」

 頭上から聞こえる濃厚な女神様たちのキス。愛し合った女性たちの、快楽の時間。

 しかしそのテーブルの下、4本の脚が絡み合うその草原では。
「う、わ、わああああ!!!??」
 巨大なおみ足に追いかけ回される、小人の姿があった。
 ヒールを脱いだ少女らの足が、僕を探して動き回っていたのだ。それはまるで、4つのクジラが泳ぐ海だった。白黒2色の艶めかしい足先が、あたりを探るように揺れ動いていたのだ。
 もちろんそれは、少女らが仄かに互いの足先を突くだけのこと。脱いだ足で密かに互いをくすぐり合い、小さな足指の僅かな接触で想い人を確かめているだけ。
 しかし、僕にとって。
 その時間は、12メートルに匹敵する巨獣が僕に食らいつく悪夢の瞬間だった。草原のような絨毯をなぎ倒し、黒タイツのお嬢様の足、白タイツのメイド足が飛んでくるのだ。
 走り出す僕を、背後からティナちゃんの足指が跳ね飛ばす。転げ回れば、そこには真っ白なアンリの足指。ほんのり肌色の浮かぶ白い気球にのしかかられ、転がされ、さっきとは違う女の子の香りに潰される。控えめに、おしとやかに、しかし奥からぎゅむっと押し寄せてくる圧倒的質量。そうして、メイドの足にめり込み無力化される僕に、光沢あるストッキングの魔手が襲いかかるのだ。

「ふふっ、捕まえた♪」
「この豆粒が”ご友人”ですか? ふふっ、なんともあっけないこと……♪ 藻掻いていらっしゃいますね? 私達の指より小さいのに、健気なことです♪」
 くねりながら、互いの指を絡ませんとする女神たちのつま先。ピンと張った白黒タイツが、僕をみっちり包み込む。絡ませる指の股に挟み込ませ、僕をぎっちり指の肉にうずめてしまうのだ。女の子の足にめり込まされる、その光栄。ホカホカとした暖気と、油を弾くようなストッキングの質感で全身を揉みしだかれる。そうすれば僕は、あまりの屈辱に酩酊し、2人の蒸れた足にキスし、忠誠を誓い、うずく股間を押し付けずには居られなかった。
 気球のような女の子の足指、極上の肌触りが互いに互いを揉みしだき、ブルーベリーのように僕を潰そうとする。揉まれ、ほぐされ、いい匂いのする大地に体をこすり合わせ、地獄のような天国の寝心地。

 そうして、しばし舐め尽くすと。
 互いに薄膜とでっかいつま先を練り込んで。
 女の子たちの足は、ぽとりと僕を産み落とす。
「ああ、お嬢様……」
 それは、2人の世界が僕をはじき出した合図だった。

 互いに唇を重ねる2人。
 騒がしくなる頭上の世界。
 そのはるか下方。
 脱ぎ捨てられた巨大ヒールに囲まれて、僕は。
 死にかけのカエルのように痙攣し。
 だらしなく、股間を濡らして、ひっくり返るだけ。
 頭上、甘い世界から放逐された、用済みの虫が僕だった。


§
 僕の人間性が壊されていく。
 ティナとアンリの、秘密のおもちゃにされていく。

 僕はもう、2人だけの性玩具に引きずり堕ろされてしまっていたのだ。

「ふふっ、無様なものね。女の股からも逃げられもしないなんて♪」
 スリスリとティナが太ももをこすり合わせる。たっぷりでむっちりした貴人の太もも。ガーターニーソから肉が溢れて、なお柔らかく僕を包み込む。そして、そのすべすべのお肌で僕をこねくり回すのだ。
 令嬢にあるまじき行為、それが尚周囲の笑いを誘った。屈辱的な仕打ちだと、そう思っていたのだ。
 けれど、そうは思わない者が一人いた。

 波のように押し寄せるティナのエッチな腿肌に、僕は心の奥まで襲われていた。黒いニーソックスから垣間見える処女雪の如き肌、見るだけで頬ずりしたくなるエッチな太ももが、僕をまるごと包んで挟み付けていたのだ。豊満な太ももは、ただでさえぴっちりくっつきあう肉付き加減。それが尚すり合わせられるのだから、僕が通る隙間もない。みっちり吸い付く肌が、体温が、膨大なまでに押し寄せてくるのだ。
 脚を動かすたび、左右でガーターベルトのラインが撓む。背後では太ももの曲線に合わせ、ニーソのレースが揺れ動き、スリスリと擦れ合う音を奏でた。そして、目の前に広がるのはティナちゃんのスカートの中。仄暗い中、チラリチラリとショーツが覗いては消え、僕の胸をくすぐってやまなかった。
 
「お嬢様、虫にそのような褒美など……」
 なお僕を押しつぶそうとする主人を止める。無表情な顔、しかしわずかに眉を寄せて不満げだ。
「なに、妬いてるのかしら?」
「そんなこと……」
 クスクス笑うティナの視線から顔を伏せ、少し赤面するメイド。それをティナが見逃すはずもない。
「少し口元が寂しいわね」

 つまみ上げた僕で、ティナは自身の艶めかしい唇をなぞりあげる。ねっとりと、その輪郭を示すように、弾力を見せつけるように、僕を押し付ける。
 そしてアンリを挑発するのだ。
 
 主の意を汲むメイドは、肩をくすめ困ったように笑った。その実、既にその頬に朱を浮かべ、視線に艶があるのを隠しながら。
 それから平静に、努めて平静に令嬢の口に唇を寄せていく。
 
 ふたりのリップが僕に迫る。
 ルージュを引いた、女性的で肉厚な唇。それはぷるんっと瑞々しく、熱帯のバラの花弁を思わせた。より煽情的なティナの赤、慎ましやかだが上品なアンリのピンク、その色彩が視界を奪うのだ。ねっとりと舌が滑れば、その光沢は更に色っぽく輝いた。
「アンリ……♡」
 その花弁から漏れるのは、湿っぽい息遣い。抑えようという気持ちと抗いきれない気持ちがせめぎあい、悩ましくも熱い吐息だった。
 どんどん強くなっていく暴風。甘酸っぱい女の子の吐息が鼻を耳を犯す。コクリと鳴る喉の音、胸元から立ち上ってくるフェロモン。既に下では爆乳同士がぶつかりあって、ズシッと重々しく抱擁している。
 目の前に迫った唇はいよいよ大きくなって、ついにフッと暗くなると。

 むにぃ……っと。
 2人の唇が押し広がった。

 聞こえなくなる僕の声。
 それとともに訪れたのは、至福の瞬間だった。
 なんて柔らかいんだろう、ウォーターベッドに包まれたような感触。生チョコを思わせる濃厚な柔らかさに、おっぱいのような確かな弾力が混ざり合う。うっすら走るシワがアクセントを添えて、互いにせめぎあい刻々と形を変えていた。
 これが、女の子同士のキスなのか。
 未知の触感がここにあった。

 二人のキスは、初めこそ軽く、しかしすぐにその接吻は熱を帯びて、激しく、強くなっていく。エッチな水音が響き、喉奥からは快の声が漏れた。
 その狭間にあって、僕は半ば唇に乗せられ、食まれたり、舐められたり。ぷるぷるリップの暴力は、過酷に僕をついばんだ。互いに互いの唇を食むたび、僕もまとめて咥えられるのだ。
 それでもなんとか、僕も2人の唇に奉仕しようとした。唇の幅より小さい僕、そんな虫のカサカサな唇で、なんとか美女の唇に報いようとしたんだ。
 でも、2人の唇がどんなにおっきいか。特大のハンモックよりも巨大な女の子の唇に、僕は時折吸い付くだけ。
 たったそれだけのこと。それだけで、僕は思わず股間を熱くしてしまうほどに興奮するんだ。
 それは恐ろしいほど甘く柔らかな唇だった。オトナの肉厚なリップ、僕の唇に踊る柔らかさが気持ちいい。2人の唾液が口を犯した。舌に感じるシワにゾクゾクした。
 次の瞬間、泣きながらピンクの肉に押しつぶされようとも。

 2人が色っぽいルージュで僕を塗りたくる。半端なキスマークで全身真っ赤だ。それが、より2人の大きさを思い知らせる。だってここは、小顔な2人のほんの一部。今、押しつぶされつつ重ねる自分の口を思えば、巨大さに尚興奮を隠せくなる。

 ”チュッ”と、”ジュルッ”と、淫らに水音が鳴った。
 ”んッ……”と、”んむ……”と声が漏れた。
 甘い甘い2人の吐息が混ざりあう。
 そして、互いに貪るようにディープキスを始めれば。
 僕は、すっかり2人の口内へ押し込まれてしまった。

 そして世界は一変するのだ。

 甘美なキスは、生々しく生理的な粘膜の密室に変わっていた。もみ合う舌、淫靡な粘膜の巨獣。その絡み合いに放り込まれ、僕は5メートルを越す舌を目の当たりにする。一面に広がる美味しそうな絨毛、つるりと光沢のある口内、どれもが女の子の内側だ。
 そして、レモン型に切り取られた外界からは、開かれたエッチな口の中、そして、僕ごと口内を犯そうとしているもう1人の怪獣が控えていた。

 あとはもう、グチャグチャな口内レイプの時間。

 僕は生物的な洞窟に何度も何度も押し込まれた。
 エッチな舌肉同士のセックスに巻き込まれたも同じ。グチュグチュッと絡みつく真っ裸の粘膜は、時にエッチで、時にグロテスク。絨毛の毛布に寝かされ、背中のような起伏に挟まれ、うねる舌の光沢を見た。舌の上、時折唇の形に光が差しては、すぐさまでっかいベロがねじ込まれるのに泣きわめくのだ。
 僕は舌ベッドにしがみつこうとした。でも、それは横幅だけで数メートルもある特大胃サイズ。ヌメる表面で転がされて、僕は軟口蓋や内頬にプレスされたり、唾液漬けにされたり……。問答無用でペニスを刺激され、女の子たちの口の中、メス犬のような声を上げさせられるのが関の山だった。
 お互いの口に吸いつく女神様たち。その度僕は、ギュゥウッと空気のなくなる密室に押しつぶされる。よだれの一部だと言わんばかりに、2人の口の間を行ったり来たり。何十回も舌の塊に踏み潰され。歯に噛み潰されるんじゃないかと怖くて怖くて必死に這いずり回って。
 
 舌先のキスでイかされた。
 ずっしりのしかかる舌に泣かされた。
 
 それが、トラウマになるまで続くのだ。

 最後に。
 突然せり上がるヌルヌルの大地。
 口内から溢れそうになる2人の蜜が押し寄せてきて。
 喉奥がすぼまり。
 喉が僕を包んで。
 奥へ奥へと押しやって。

 コクン、と喉が鳴った。

《ん……ッ。……ふふ、呑み込んでしまいました♪》
《それよりアンリ、続きを……♡》
《もちろん……♡》

 グネグネと波打つチューブを下りながら、そんな声が聞こえた。そこはまさに声帯の隣。轟音と化した少女の囁きさえ怖くて、僕は叫んだ。
 そんな絶叫が、アンリの喉奥から微かに漏れたろう。
 しかし唾液と共に飲み込まれ、少しも外に出ることはない。
 
 そして、少女のお腹の中で水音が立ち。

 メイドによる、体内監禁が始まったのだ。


§
 アンリ様に食べられるなら。
 そう思いもした。
 システィーヌ様じゃないのは残念だけれど、女神様の一部にされるならそれも本望だと、そうも思った。

 だけど。

 始まったのは美女の体内を遍歴する無限の旅路だった。


 なにか薬剤を飲んだに違いない。すぐに溶かされることはなかった。或いは巨人様たちにとって、小人を体内で飼い殺しにすることは一般的なことなのかも知れない。とにかく、僕は美女メイドの胃袋に着水して、すぐには殺してもらえないことに気づいたのだ。
 その瞬間の、恐怖たるや。
 キュルキュルとした音、生々しく生物的な蠢動の中。外から聞こえる女性らのきらびやかな会話から疎外され、僕は女の子の内臓に1人うずくまる。周囲を見れば絶望はひとしお。入ってきた穴は遥か上空、続く壁はツルリとしていて、入ったら最後絶対に出られないことを思い知らされるだけだ。
《お嬢様……♡ 早く、もう待ちきれません♡》
《ダメよアンリ、まだ……♡》
 外界から聞こえる二人の世界。いや、まさしく僕はその中に居るはずなのだ。僕をお腹に閉じ込めた美女は愛しの美女と抱き合って、ベッドにもつれ込もうとしている。ジャバジャバとかき乱される少女の湖で揉まれ、その一挙一投足が僕にはわかってしまった。それはまるで、生きながらにして女の子の部品にされたような気分。そして彼女が身を捩らせるたび、声を上げるたび、焦がれてやまないティナちゃんとの時間を見せつけられるのだ。精神的苦痛はいや増した。

 そして。
 漏斗状に窄まった底の穴、それが突然広だり出すと。

 大波のようにくねる肉の壁、僕を巻き込み内容物は奥深くへと押し流される。

 続く、女体の牢獄。
 広がる、絨毛の海。
 次に僕を襲ったのは、どこまでも続く肉の毛布だった。限界まで養分を吸い取ろうと、無数の絨毛が僕に絡みついてくるのだ。それ自体としては、極上の肌触り、柔らかさ。しかしそれがギュウゥ……っと包み込み、絡みつき、蠢動すれば。閉塞感と圧迫感、生物的な意志を持った触手の舌遣いに、僕は泣き濡れ恐怖するだけだった。
 払い除けても払い除けても、美女の触手は僕に吸い付いてくる。濡れた高級毛布のようにしっとり密着し、粒人間を締め上げてやまない。そして限界まで舐め回すと、キツキツの穴の中を、奥へ奥へとゆっくり押し込んで行くのだ。
 それがペニスの奥深くまで侵入してくるのだから、恐怖はいや増す。
 口もアナルも美少女触手に犯される。たかが腸壁の絨毛なのに、一本一本が僕よりずっと強いのだ。そんな肉ヒダに揉まれれば、否応なくエッチな気持ちはたぎり出す。それから、敗北の射精を強要されるのだ。
 無意識な調教。食べられて、お腹の中で熟成されつつ。無数のヒダに埋もれて僕は、女の子の内臓に躾け倒される。

 そうしている間にも、メイド様のテキパキとした歩みは世界全体を震わせた。その澄んだ静かな声は、豪雨のように腸内に鳴り響いた。
 次いで、訪れるティナとの夜伽。
 喘ぐとも呻くともつかない濃厚な喉声と、微かに聞こえるティナの声が僕を更に打ちのめす。この、分厚い壁の向こう、しっかり詰まった美女のお腹の向こうには、ティナちゃんのお腹がまた広がっているのだ。愛し焦がれてやまない少女。それが今、僕を閉じ込め虐げ、無意識に絶望を叩き込み続ける美女牢獄と愛し合っている。
 僕は必死に腸壁を叩いてティナちゃんの名前を呼んだ。それが肉寝袋を刺激して、ギュギュッと僕を締め付けて。
 涙が枯れるまで、ティナ様に、アンリ様に、救いを求め泣き叫ぶ。

 けれど、出られはしないのだ。

 女の子の淫靡な肉洞窟、それを最後まで辿りきらねば、僕は決して出られない。その事実が僕を絶望させた。一瞬一瞬絡みつき、全身くまなくねぶり倒す触手寝袋に、あと僕は何十時間凌辱されればいい? 一秒一秒が恐怖と射精の試練。気持ちよくって仕方ない。発狂しそうなほどイかされた。女の子の腸なのに。うんちを作るための内臓なのに。だのに僕は、アンリ様の中で、メス犬のように喘ぎ、腸内レイプで躾けられ、際限なく泣き叫び、徐々に徐々に、アンリ様のものにされて……。


 それから、一晩の後。

 女の子の内臓で揉み込まれ、無限の無力と絶望の中に閉じ込められて。
 僕の人間性は、メイドの中に溶け出してしまったようだった。

 僕はあの、凛とした少女の姿を思い浮かべる。ショートヘアの銀髪少女、その、細くくびれたお腹。
 そんな中に、僕はいるのだ。
 肉のトンネルに抱きしめられ、まるで重さを感じさせず運ばれていく。僕は今、腸管のヒダにひっかかった豆粒も同然だ。10メートルもある縦穴を、蛇に呑まれたようにゆっくり押し上げられる。麗しき蠕動の大波、艶めかしき内臓の女体美。グロテスクにも思える生理活動は、仄暗い耽美さで僕を包み込んだ。
 怖かった。怪物のような生物的な世界。動物的な肉を感じさせる内臓の内側。僕はお腹の中泣き叫んだ。お腹の片隅で、この上なく悲痛な絶叫を上げた。そして、しっかり詰まったお腹の密度に、すべてなかったことにされてしまうのだ。
 ハリある腸壁を叩き、その強靭さに絶望した。どこまでも続く女の子の内臓に恐怖した。もう一生出られないんじゃないか? このヌルヌルと蠢く長い寝袋は暖かくて、とても少女の中身だとは思えない。太さ3メートルはあろうかという大空洞、それがむぎゅっと僕に吸い付き撫で回し、グングン奥へ奥へと押し出していく。女体という大洞窟を隅々まで遍歴させ、ゆっくりゆっくりその偉大さを思い知らせるのだ。綺麗なサーモンピンクの管、筋肉や肉、脂肪や肌が分厚い壁となって大事に僕を覆い隠していた。美少女メイドの内の内、豆粒を閉じ込める独房がどれほどおっきくて、恐ろしくて、エロティックだったか。
 美しくすべすべとお腹の中、そこにこんな世界を秘めていると思うと、特殊な興奮が湧き上がる。引き締まった、白磁のようなお腹の奥に、ネトネトと蠢く怪物的でエロティックな触手の海。しっかりつまったお腹の中に引き締められて、僕はひたすらそのなかを押し流される……。

 僕は、美少女メイドのうんちにされちゃうんだ。

 無数のヒダに埋没し揉みしだかれながら、小さく僕は悟る。
 もう、虫ですらない。食べられて、生きながら消化されて、人間性と尊厳を搾り取られた残り滓。僕は爆乳女神様のうんちにされている。美女の体内で、内臓に揉まれ、一部にされて、用済みになったら排泄される。
 それが、たまらなく幸福に思えた。
 アンリ様の排泄物として、聖別されつつあるのだ。
 そう思うと、ぎっちり詰まった絨毛にうずもれたまま僕は射精した。
 にっちりふかふかの寝袋にくるまり、その壁に体を押し付け、何度も何度もヒダの奥にちんちんをねじ込んだ。全方位から僕を押しつぶす美女のお肉。それすら愛おしい。お腹の中の狭い隙間で押しつぶされて、美少女うんちになりかけの僕は、幸福な射精に酔いしれる。
 そうだ。
 僕は、美麗なるメイドのお腹で熟成されたおやつだった。ゆっくりゆっくりほぐされて、一部に融合されてくだけの存在だ。溶かしてすらもらえない。けれど確実に、アンリ様の偉大さは染み通っていく。消化されないのが悔しいほど。こんなにでっかい女神様の中にいて、閉じ込められて、ぐちゃぐちゃにされて。直径二十メートルにギュッと詰まった女の子のお肉はまるで怪物。全身でのしかかってくる生々しい重みが僕を喜ばす。

 上へ、下へ。
 次第に壁はコリコリとしたものへ変わった。
 後は、産道を通るだけだ。


 外の世界。
 巨尻を鷲掴みにして、アンリはお尻をこじ開ける。タイツに押し込められ蒸れたお尻は、ほんのり蒸気を漂わせて色っぽい。そんなみっちみちにつまった極大ヒップが、僕を押し出そうと力んでいた。スカートを押し広げるほどドでかいヒップ、それがアナルさえ見えるほど惜しげなく割れ目を広げ、キツキツアナルから僕が産み落とされるのを待っていたのだ。
 上品な女性の、ヒクつくアナル。淫靡なピンクの窪みが蠢く。

 そして、ニチチッ、と艶かしく喉を鳴らすと。
 独特な音とともに黒いものを覗かせた。

 ぬぷりと現れる小人の頭。括約筋に全力で締め上げられ、明滅する意識に性的絶頂さえ覚えかけていた。
 しかし首から下、メイドに埋没する体は肩をアナルに阻まれなかなか姿を現さない。若々しく引き締まったアナルは、おいそれと獲物を手放さないのだ。たっぷりねぶり倒し熟成した作品を、解き放ちたくないらしかった。
 逆転した天地、そんな僕から見えるのは丸々と巨大な女の子のお尻の山。自分を排泄しようという極大美女の肛門に突き刺さったまま、座薬のような醜態を晒すばかりだ。雪山のように透き通った肌、ほんのり色付くえっちな穴から顔を出し、湯解立つ蒸気に頬を撫でられていた。

 頬ずりしたくなる少女のアナル。その繊細なシワがわずかに震える。

 それから、ひときわ大きな波が体の奥から押し寄せてくると。
 くぱぁっと広がったお尻の穴は、一気に僕を放出した。

 女の子の体内ローションで穢されきった、極小の忌み子が排泄される。思いっきり下ろされたお尻、その10階分はあろうかという高さから産み落とされる。名残惜しい美少女メイドの体温は失われ、ぬとーっと粘液の糸を引かせ、ティーカップの窪地へと吐き出されるのだ。
 産声の代わりに鳴り響くのは、女神たちの高い嘲笑。

 ティーカップの底、僕はアンリに産み直されたまま、動けはしない。
 ゼイゼイと喘ぎながら、天を仰ぐだけ。
 見えるのは、アンリ様の白い豊臀。自身の臀部を鷲掴みにし、メイドが僕に巨尻を見せつけていた。たった今しがた通り抜けてきたアナルで僕を見下ろして、スカートの中、タイツの、ショーツの中に秘めたおいどを、惜しげなく晒すばかり。
 メイドとして、貴人として、ありえないほどはしたない姿。けれどそれは、排泄物の視点だからこそ得られる光景だった。

 ティーカップの中で、少女らの笑声は湾曲し輪郭を得ない。
 それがなお幻想的な情景を成して、僕はある種の多幸感さえ催した。
 50倍の女神様から産み出された。そう思うだけで、ペニスが静かに痺れ始める。
 そんな姿を、女神様もご覧になったろう。降り注ぐ嘲笑がカップの中に飽和する。

 そして、押し寄せてきたのは高貴な聖水。
 轟音、激震、ムッと跳ね上がる蒸し暑さと香ばしい空気。金色の水壁が、逆巻き津波となって押し寄せる。
 あとは一瞬だった。
 僕は、高貴な美女の聖水に粉砕された。
 メイドの排尿に巻き込まれた、埃一粒が僕。
 排泄され、排尿され。
 完全にメイドの排泄物にされたあとは、もう、人間であることさえ思い出せそうにはなかった。


§
 夜。
 吐息。
 ティナの部屋。

 ベッドの上には、絡み合う2人の少女の姿があった。
 煌めくのは黒髪、長い髪を垂らし、背後から銀髪の娘に抱きつく少女の姿。メイドはベッドに腰掛け、その体に背を預けるばかり。
 そして、無表情な顔を幸福そうにほころばすのだ。

 ティナはアンリの体を感じていた。真っ赤なドレスを熱帯魚のように漂わせ、モノクロのメイドへ手をかけて。それに銀髪の娘は身を任せる。背後の主人の頬を撫で、主人の手を撫で、肩越しにキスをしながら、2人の時間におぼれていた。
「今日は、随分熱っぽいのね?」
 アンリは恥じるように顔を背け、紅潮した頬を隠す。その隙に首筋に吸い付かれ、情感的な声を漏らしてしまう。
「……お嬢様は意地悪です」
 余裕の無さ気な声を漏らすアンリ。応えることなく、そのスカートにティナが手を伸ばす。
 拒むメイドの手をすり抜け、裾を掴んだ。
 そしてスカートをたくし上げれば、一気に現れる真っ白な美脚。むっちりとした太ももは白タイツを引き伸ばし、白地に肌の赤みを浮かび上がらせる。黒いスカートの中一層映える白と僅かな朱、その中に、ティナの白い手が忍び込む。
 声を殺すアンリ。それでも時折喉から漏れる切ない声に、主従ともども興奮は隠せない。
 ストッキングを通した繊細な感触が敏感なところをくすぐる。直接に。命ぜられたままに直穿きで、アンリはショーツを身に着けてはいない。白タイツは一日の奉仕で馴染み、すっかり恥部に食い込んでいた。それを刺激されるのだから、耐えられるはずもなかった。

 徐々に濡れ、肌色を浮かび上がらせていく直穿きタイツ。
 その食い込みに一部、盛り上がりが出来ていた。
 人型で、肌に張り付き蠢くなにか。
 それは、白タイツに囚われた小人。

 僕が、アンリのお股に貼り付けられていたのだ。

「もがく小虫はどうだったかしら? ちっちゃい生き物が股間に直接……、さぞよく感じられたでしょうね?」
「やめてください……。お嬢様は困った人です。歩くたび動くのですよ? こんなちっちゃいものにくっつかれて、不快でなりません。しかも、不躾にも一日中お嬢様の名を……」
「それは貴女が濡れるからでしょう? ふふっ、もうタイツ越しでもこんなにトロトロ……♪ 貴女の恥部、小虫にはどう見えたかしらね? 自分の何倍もある恥部にくっつけられて、逃げようとすれば蜜を漏らし、逃げなければ蜜漬けにして……。あはっ♪ 想像するだけで興奮するなんて、酷いメイドだわ♪」
「お、お嬢様ッ!」
 日頃は常に尊敬されるべき侍女、泰然自若として淡々と執務をこなし、ティナからさえ一目置かれる高級メイドが、今では羞恥に顔も真っ赤だ。涼しげなショートボブ、普段どおりの薄い表情でも、しっかり頬は染めていた。
「お嬢様、……早く取ってください! もうダメです、ヘンなところに当たって私……っ!」
 執拗に周囲をなぞる令嬢の手。
 思わず、腰が浮き上がる。

 僕を、大陰唇に貼り付けたまま。


 アンリの白タイツにねじ込まれたときから、僕は猛烈な少女の体熱の中に晒されていた。気温36度強、それだけで既にうだるような暑さだ。それが今、ぴっとりと女の子の肌にくっつき服の中、徐々に上がっていく湿度、フェロモン。それは想像を絶する過酷さだった。単なる女の子の下着の中、だのに、そこには小虫を蒸し殺すに十分すぎる空間が隠されていたのだ。
 白タイツでぎっちりと巨大まんこに押し付けられて、少女の秘める巨獣と共に、10時間。歩くたびに、女の子のアソコが柔軟に揺れ動く。時には引っ張られてシワを寄せ、時にはかがんでギュッと僕を押しつぶし。座れば左右から迫りくるむっちりとした太もも、それに、それに……。目まぐるしく動く股間という場所に貼り付けられて、メイドの忙しい一日を体感させられる。僕の、たった2、3センチの体を監禁し、巨大メイドが歩き回るのだ。
 わずかに透けた白タイツ、見えるのは真っ暗なスカートの中と、延々と下へ伸びる長い美脚。歩くたび、かがむたび、太ももが近づき、丸まり、ぷにっとふくらはぎを押しつぶすのを見た。もし滑り落ちれば、あの長い脚を伝ってヒールの底まで引きずり込まれてしまうだろう。そう思うだけで僕は震えて、しっかりタイツにしがみつく。
 けれど、そんな簡単に終わるはずもない。
 白タイツの気持ち良い肌触りは、すぐ生々しいものに変わっていった。動く上で自然と生まれる汗、若々しい代謝により湧き出す蒸気があたりをサウナに変えたのだ。働く女の子の醸し出す熱気が僕を襲った。動くたび、タイツの隙間からエッチな空気が押し出され、吸い込まれ、繊維の隅々にまでアンリの香りが染み付いていく。しかも、お股の一番濃い空気を。
 酸欠は必至だった。なにより、ここは忙しく歩く少女の股関節。歩くたびお股のあちこちへ叩きつけられたり跳ね返されたり、キュッと寄ったシワに挟まれればエッチな膨らみを押し付けられて、とてもじゃないがしがみつく暇もない。足先へ通じる底なしの坂に押しやられれば、僕は必死でよじ登った。お股に挟み潰されそうになれば、なんとかそこから逃げようとした。そうして、たかが白タイツのダイヤマチ、その中を僕は無我夢中で這い回ったのだ。

 それがいけなかった。
 生まんこに貼り付けられたまま、ジリッ、ジリッと動く小虫の感触。どんなに少女を刺激しただろう。僕は、どんなに不快で、些細で、生々しい刺激だったろう。はじめ、叱りつけるように巨躯の主は僕を叩いた。動くなと、さり気なくおしおきをした。けれど、それが一層僕を苦しめるのだ。肉厚おまんこに叩きつけられれば、僕は苦痛でのたうち回った。もちろん、鼠径部の外へはじき出されそうにもなる。叱れば叱るほど逆効果。まるで、刺激した虫が動くようだったに違いない。そうと気づいた後、アンリはひたすら耐えることを選んだらしかった。
 微かな性感。
 時折、アンリは痺れたようにピクッと背筋を震わせた。
 けれど、持ち前の精神力で態度には出さず。
 じっとりと。
 人知れず、恥部を濡らし続けていた。
 丸一日、僕を挟み込んだままで。

 異物が直接恥部に当たるだけで大変な刺激のはず。けれどそれは、異物にとっても同じだった。全身を押しつぶす肉厚まんこ、それが不意にキュウゥッ……っと身をすぼませて僕を挟み込むのだ。嫌な汗と共に、エッチな香りがムンムン立ち込めた。割れ目の奥から、ニチッと湿った音が漏れ出した。
 そして、スジの下端から蜜が漏れると。
 僕は否応なく、人間バイブにされてしまうのだ。
 あとは地獄。全貌も見えないほど巨大な女性器が、性を求めてくねりだす。エッチなキスで僕をトロトロにした。僕を女性的な膨らみに侍らすのだ。女神様のおまんこはおっきくて、動くたびあちこちで僕を蹂躙する。
 まるで、アソコを刺激する指先になったような時間。ぷにっとした膨らみと、スジの始点。そこからゆっくり下れば、むっちりとした果実が僕を舐めあげる。そして恥丘の底で、ずっしりとした巨尻が顔を出す。

 そんなエッチな目にあって、冷静でいられるはずがない。
 僕は抱きつけるはずもないでっかいおまんこにしがみついて、夢中でその感触を確かめた。ほんのり色づいた土手に張り付き、蜜でまみれたおまんこ様をなんとかお掃除しようとした。そして跳ね返されたり、押しつぶされたり。アンリが脚を踏み出せば、タイツごと割れ目に食い込みかけた。そうなれば、こんなキツキツ巨大まんこはあっという間に僕を粉砕するだろう。そして咥えこまれた腕を抜こうとしていると、アンリにタイツの食い込みごと直される。
 トロトロになった直穿き白タイツ、その中で、僕はふやけるほど恥丘に潰された。
 極上の女性器に、僕は全身で奉仕する。タイツだって気持ちいい。ただひたすら酔いしれて、ペニスを切なくして、恐怖に怯む。
 そして、ティナの手が僕ごとアンリの恥部を刺激した時。
 僕は耐えようもない重圧とともにアンリの大陰唇に押さえつけられ、射精したのだ。


 そして今、僕は巨大女神様の夜伽の現場にいる。
「虫を隠してこんなに濡れるなんて、ふふっ♪」
 アンリはストッキングをずりおろすと、アンリの陰部に口をつけた。
「駄目ですお嬢様、そんな、……ッ♡」
 攻めたてる主人の下にビクッと肩を震わせる。それを嘲笑うよう下品な水音は強まった。
 ティナの頭を押し返そうと、密着させようと、アンリの腕が揺れ惑う。そして、僕の体をコリコリとクリトリスに奉仕させるのだ。
 僕は女の子の舌に包まれ、巨大まんこに押し付けられていた。グチュグチュと唾液と愛液にまみれながら、押しても押してもおまんこ様は僕に吸い付く。上下にこすりつけられ、まるでおまんこ専用の掃除道具の気分だ。
 メイドのおまんこ様が僕を襲う。美少女2人のエッチに食い殺される。
 そのまま、全力で潮を吹きかけられるまで、そう時間はかからなかった。

「あら、主人の顔に粗相するなんてわるいメイドね♪」
「ん、はぁ……はぁ…………ッ……♡ まったく、お嬢様には困らせられます……♡」
 ティナは舌に乗せた僕を、アンリに見せつける。小さな舌に乗る肌色の豆は、メイドのタイツで蒸され、愛液に漬けられ、見るも無惨な姿だ。それは、淑女による凌辱の後。自分の恥部でこれほど汚したのだと、自分の巨大なまんこで蹂躙したのだと、ティナは笑う。もはや僕はグチャグチャだった。アンリを赤面させるほど。

 ねっとりと僕を舐め回し、愛液の残滓を舐め取る。
 いやらしい舌遣いで、アンリを誘惑しているのだ。
 そして、すっかり僕を自身の唾液で掃除すると。
 舌を出し、僕を垂れ落とす。
 突き出された舌、サーモンピンクの飛び込み台のようなそれを、滑り落ちていく。それだけで、どれほど恐ろしいか。女の子の舌から落ちるだけで、僕は死んでしまう。幼馴染、愛した少女の舌先で弄ばれて、僕は死の恐怖を味わわされるのだ。ティナちゃんの舌の上、なんとかしがみつこうとした。でも、甲斐はない。

「ティナちゃん、た、助けっ……!」
 ぬとーっと糸を引いて、尖らせた舌先から落ちていく僕。
 その先にあったのは、けれど、この上なく柔らかい弾力だった。
「ふふっ♪ まだ貴女の体温が残ってるわ♪」
「……やめてください、お嬢様」
 いよいよ顔を赤くしてティナは言葉を絞り出す。けれど、ちらりちらりと目を遣るのは、美女の胸元。
 その、大きく張り出したバスト、谷間の上に、これ以上なく汚された小人の体があった。指1関節分、その程度の大きさの”ご旧友”が、豊かな乳房に挟まっていたのだ。

「無様なものね。これほどの目に遭えば立場なんてわかりそうなものなのに。まだ私の名前を叫んでるのよ? あはっ♡ このまま潰してしまおうかしら♪」
 谷間の僕を指先で突き、ケラケラと笑う女王様。ゆっさゆっさとバストを揺らし、自身の上で響く悲鳴を愉しむ。
 少し笑うだけ、揺れるだけで敏感に叫ぶのだから、巨女様にとってはさぞ面白いはず。
 しかし、僕はどこまでもなめらかなおっぱいに乗っかっているだけの単なる添え物。今に滑落しないとも限らなかった。面積の少ないドレスから、乳房はほとんど丸見えだ。僕から見れば一面の球面が広がっているに過ぎない。乳重でピンッと張った肩紐は、ロープウェイの架線のように一直線に首筋から左右に走っていき、山体の向こうへ消えてドレスは見えない。そして、眼下、凹んだV字の斜面の先は空。白い肌と相まって、スキー場のてっぺんに居るような気分だ。谷間からとて、滑り落ちれば命はない。
 みっちり詰まったおっぱいの上、僕はようやく繋いだ命を尚その巨体にもてあそばれる。女王様は細い顎先を反らせ笑ったまま、僕のことなど見てもくれない。
 一生懸命ティナちゃんの名前を叫びながらも、僕はスベスベおっぱいの上を滑り始めていた。重々しく空気を掻き揺れるおっぱいを、上下に揺られて止められない。恐怖のあまり悲鳴を上げれば、アンリさえそれを笑う始末だ。
「あははっ! なんて惨めなのかしら♪ いっそ死ねばこんな屈辱も味わわずに済んだのにねぇ? ここからなら死ねるんじゃないかしら? 女の胸から墜落死♡ 虫だってそんな死に方は出来ないわ♪ でも、このままならもーっと惨めに遭うって、わかるでしょう? ……そうね、昔会ったよしみで今なら手伝ってあげてもいいわ♪ ほら、私の乳房を断頭台になさい♪」
 クスクス笑いながら、僕ごと乳を寄せ上げるティナ。両手で持ち上げられたおっぱい、その上から、飛び降りて死ねと言うのだ。

「……」
 少し、ほんの少し身を乗り出してみる。
 そして、真っ白なおっぱいの丸みの先、どこまでも続く奈落を見た時。
「ッ~~!!」
 僕は残酷な女神様のおっぱいの上を、涙目になって駆け上がったのだ。
「やだ、死にたくない、ティナちゃん、助け、助けてぇええ……!!」
 2人の女神様を吹き出させられたのだから、或いは幸せだったかも知れない。
「……ぷっ、ふふ、アハハハハッ! いいわ、それでこそ虫けらね♡ 矜持も勇気もない生き物なんて、虫、いえ、動く腐肉だわ♪ なら、私たちに嬲り殺されるのを心待ちにすることね♪」
 そして、僕を谷間にねじ込むのだ。
 僕の全身と変わらない大きさの人差し指、そんなものに押しつけられれば僕は無いも同然。あれほどぴっちり閉じていた谷間も、侵入を許してしまうのだ。
 まるで海が割れたようだった。そしてそのまま指で押し込めば、僕はズブズブとおっぱいの中に沈められていく。
「ふふっ、あっけないものね♪ 少し揺らせばこのまま潰れてしまうんじゃないかしら?」
 胸を揉みしだくティナ。そのトプトプと揺れるおっぱいにもみくちゃにされて、荒波に襲われたようだ。肌の奥、おっきな母性が上下に揺れる。左右に揺らせば、交互に押し寄せる300トンおっぱいの猛威。なのにティラミスのように柔らかく、どこまでも気持ちいい。肌に伸び広がる女の子のフェロモン、しっとりとした香り、ビロードのようになめらかな乳肌に包まれて、これ以上のご褒美なんてありえなかった。
 僕はティナちゃんの惑星おっぱいに抱きついた。どこまでも続いていくような白い肌、重さに大きく撓む丸々とした乳腺の塊。その間に挟まれて、どうにかほくろ一つ分だけの面積に、張り付こうとした。けれど、つるりとしたその肌に指がかかるはずもない。何より、おっぱいの海は荒々しく波打つ。襲いかかる凶悪な乳肉。それとともに訪れる絶望感を、とてもあのティナちゃんが与えているとは思えない。

「あらあら、随分と怯えておいでのようですね?」
 乳肌の陰影と、そこに蹲り震える僕を黒い影が塗りつぶす。仄かな微笑をたたえ、近寄る爆乳メイドの影だ。舌先でゆっくり唇を潤し、その目は仄かに歪んでいる。
「そうですね……、私めが落ちないよう支えて差し上げましょう♪」
 そして、ティナの腰に手を回し、抱きしめる。
 おっぱい同士を押し付けあって、巨乳で僕を包囲しようというのだ。
 美女メイドの爆乳が、みるみる近づいては僕を脅かす。ティナの胸と接したと思えば、むにぃ……っと押し広がった。隆起する柔肌おっぱい。ぶるんっと震え、僕は衝撃で2人の間に滑り落ちてしまう。
 4つの爆乳がぶつかりあう、その中心。僕は谷間の交点に閉じ込められ、身動き一つ許してもらえなかった。既に興奮し少女の肌は灼熱。二種類の熱気に挟まれて、目眩さえ催す暑さだ。周囲10メートルは肌色の海。大きく胸元のあいたメイド服、その生地と肌の境界を押し付けられる。かたや丸々としたむき出しの肌。小人を挟む爆乳娘のバストに、小人の体は悲鳴を上げた。

 さんざめく女神たちの笑い。
 そして目配せし合うと、メイドが身を離す。
「アルコールは初めてかしら? 最期に一度くらい味わうといいわ」
「わっ!?」
 突然降り注ぐ膨大な微発泡の酒。ギュッと寄せられた谷間に、シャンパンを注いだのだ。
 僕を水底に沈め、一挙に作り上げられたおっぱいの湖。ティナちゃんの汗とフェロモンの溶け込んだ、特製のカクテルに溺れさせられる。
 しかし、その盃を仰いだのは僕ではなかった。
「お嬢様、こぼれてしまいますよ?」
 巨大メイドが谷間に口をつけ、一挙に吸い上げたのだ。
 僕が完全に沈んでしまうような水位、それも50倍メイドにしてみれば一口に満たない。カクテルオリーブのような僕ごと、おっぱいのグラスを飲み干してしまった。

 そして、酔ったメイドは一気に主人を押し倒す。
「ふふっ、私の恥部を崇めることね♪」
 ショーツを脱ぎながら、令嬢がせせら笑う。
 その声と共に、目前に現れる美しいおまんこ。長さ2メートルを超える縦スジが、姿を見せる。そうすればメイドは股ぐらに顔を寄せ、アルコールを漂わせたキスで忠誠を誓うのだ。
「うふふっ♪ 私達の体でミンチにして差し上げます♡」
 僕を舌に乗せたまま、ネロリと一舐め。それから、見せつけるように主人の性器へ舌を寄せると、一気に巨大美まんこに舌を押し付ける。
「でっか……! やめて、ヤだ、入っちゃう、入っちゃうよ! 助けてティナちゃん! 助けて……!!」
 腕を伸ばしたって覆いきれない肉厚まんこ、それを前に僕は震えた。すでにヒクヒクと蠢き、嗜虐心を丸出しにしている。押し付けられればみっちりと弾力に受け止められ、ニチっとその間に腕を飲まれる。それだけで、圧迫感は血流が滞るほどだ。
 こんなものにねじ込まれたら……!

 しかし、強引にティナがメイドの頭を押し付ければ。
 ニチチッと僕は大陰唇の門を越え。
 ねじ込まれたアンリの舌に、奥へ奥へと押し込まれてしまった。
「助けて! 怖いよティナちゃん! 助けてよぉ!!」
 グチュグチュとおまんこに揉まれながら、僕は悲痛に叫んだ。まっくらな肉穴、その膣圧に骨さえひしゃげそうだった。剰え、溺れるほど溢れる女の子のエッチな蜜と、肉ヒダの蠢き。
 これがティナちゃんのナカ? こんなエッチな、グロテスクなほど淫靡な空間が? 重苦しいほどの閉塞感、生々しくエッチな香りに僕はもうクラクラだ。
 叫んでも、ヌッチヌチの膣壁に声は虚しく吸収されてしまう。拳を叩きつければ、キュウゥッと窄まって僕を更に揉み込んだ。
 出られないんじゃないかという恐怖。それと同時に、でもどうしようもなくこみ上げてくるのは歓喜だった。絞め殺されそうなほど、僕にティナちゃんの媚肉が絡みついてくれる。6000トンの巨体が、全方位から僕を包み込んで一部にしてくれている。ここにあるのは、ティナちゃんの仮借ないまでの実在感だ。恐怖すればするほど、僕はその切実さに疼いた。

 膣肉ベッドに潜り込み、僕は泣き叫びながら懸命にちんちんをこすりつける。吸い付くご令嬢まんこに喘ぎ喘がされ、肉壁へ何度も腰を振るのだ。ティナちゃんの一部にされながら、なおティナちゃんの奥底へ分け入ろうと肉襞をかき分ける。そしてグチャグチャに犯されながら、巨人種おまんこ様に射精した。
 鳴り響く女神様たちの嬌声が鼓膜を引き裂く。求めあう巨体のせめぎあいが僕を振り回す。圧倒的なエッチ、そのスケールを感じては、ティナちゃんの中で僕はイッた。

 後に続くのは、生き地獄の歓び。

 アンリ様に吸い出されては、巨大なクリに奉仕させられた。
 こすりつけ合うコリコリ乳首に挟まれて、ミンチにされかけた。
 お尻に挟みつけられたり、2人の口の中で泣くまで舌に巻き付かれたり。
 全裸の女神様たちは僕をイジめ倒して止まらない。汗まみれになって抱き合って、おっぱいを、お股を、刺激し合うのだ。
 そんな激しい巨人セックスに巻き込まれて僕が無事なわけがない。2人の愛液プールに死にかけた。おまんこプレスで死にかけた。気絶した僕を人間ディルドにしてねじ込み合い、乳首の刺激の足しにされ、その度失神しては叩き起こされる。恋に壊れた僕なんて、いつ壊れていい小さなおもちゃ。横恋慕する劣等種に巨大セックスを見せつけ叩き込、嗜虐感の足しになればいい。そして僕の恐怖を貪って、2人の愛欲は加速した。

 無茶苦茶なエッチは夜通し続く。
 
 巨人に恐れ、感謝と悦楽に溺れて。
 僕の心が、壊れるまで。


§
 早朝。
 全裸の美女2人が目を覚ます。
「お嬢様、朝です」
 シーツで胸元を隠しながら、努めて冷静にアンリは言った。
「……来なくていいわそんなもの」
 貴族とても朝の訪れは止められない。恨めしげに顔を伏せる。
「今朝食を用意しますので、どうかお座りになってお待ち下さいませ」
「……」
 頭の起きないティナは言われるがまま、素直にメイドの言葉に従った。
 アンリに促され、椅子へと身を移そうとする。

 女帝も、朝には弱いらしい。
 ぼうっと目をさまよわせながら、ベッドから這い出した。幼い動作に反し、艶めかしい裸体がくねる。

 ティナは知らない。座る拍子に零れ落ちた何かなど。
 股間に閉じ込めたままの僕のことなんて、或いは忘れてしまったのかも知れなかった。

 ……あれから僕は、2人の恥部に貪り食われ、瀕死のままティナのナカに閉じ込められていた。
 そして、動く拍子にヌルリと産み落とされ。
 僕を座面に放り出したのだ。
 今まさに、腰を落ち着けようとしている椅子の上に。

「まったく、なんで朝なんて来るのかしら」
 腰を下ろす美女。

 落下する生尻。ご令嬢のみっちりとした臀部が降ってくる。無意識に、何も知らずに。今、自分がどこに座り込もうとするかなどまるで知らず、裸体の美女は腰を下ろそうとしていたのだ。

 影をまといつつ迫りくる、真っ白な生尻の天空。
 それを前に、僕は冷水をかぶったような恐怖に襲われた。
 これが、かつて一緒に過ごした女の子のお尻だなんて。
 べた凪の人生に唯一方向を与えてくれた女の子。求め、ただ求めるだけの人生に変えてしまった女の子。そしてすべてを与え全て裏切り、巨人と成って僕を踏みにじったのだ。
 そんな冷酷な女神様が今、こうして、巨尻で僕を粉砕しようとしている……!
 呆然と僕は立ち尽くした。大きすぎて思考さえ踏み潰された。お尻の巻き起こす轟々たる気流の中で、涙ながらに女の子の爆尻を見上げ、殺されようとしているのだ。
 そこで幻視したのは走馬灯。これまでの日々、感情、僕のスカスカな人生が凝縮して僕の中に流れ込んできた。小人種に生まれつき、飼われ、歪められ、辱められ。それだけの人生。それでもかけがえのない、僕の人生。
 それら全てをあざ笑うがごとく、でっかい巨尻が押し寄せてきた。
 突き出されたお尻が、お尻の奥まで見せつけながら、日々を一つ一つ叩き割り僕に襲いかかる。自分の何万分の1ものか弱い虫、無力無抵抗な虫に巨体を叩き込む。視界からみるみるあふれるお尻はエッチで、ぎっちり詰まった密度が目にも艶めかしい。
 しかしそれは、僕を粉砕する肉鈍器にほかならない。

「あら、雨かしら?」
 トスッと、軽く音が立つ。バウンドする爆乳。

 そして潰れる、僕の体。

 巨尻は一瞬で僕を押し倒し、転げたところを一気に超質量が食らいつく。はじめ尻肉の間で辛うじて圧死を免れたと思いきや、すぐさま豊臀がみちっと押し潰れて小人に密着した。
 どっしりした大きなお尻に座られればひとたまりもなかった。僕はヒップで真空パックされてしまい、しっとりした尻肌で押し花にされてしまう。ギチギチと不穏な音を立てて体が潰れる。骨格さえ歪んだ。
 それでも、全生命で受け止めるティナちゃんの超重量に、僕は独特の興奮に酔いしれてやめられない。全身で感じる激痛、重量、お尻の感触。抵抗できない巨大質量が魂を揺さぶった。めり込んでしまえるほど上質な脂肪が僕を包み込む。ひしゃげていく体が、快哉を叫んだ。
 尻爆乳に閉じ込められ、僕は圧迫感の、閉塞感の、暗さ、重さ、柔らかさに暗さ、激痛の先を見た。6,000トンの女体に轢き潰されつつ恍惚を得たのだ。ティナちゃんの巨体で圧縮されていくこの矮躯。今はもう、痛みも感じない。


「陰鬱な朝は嫌ね」
 気だるく背もたれに体を預ける少女。
 体重がかかる。

 ギシッと、椅子が鳴った。

「雨もいいものですよ?」
 体の冷めぬよう、主人に布を被せながらメイドは言った。
 そんな、メイドの裾を、少女が掴む。
「それよりアンリ、続きを……」
 そして、ベッドに這い登り。
 座面に染みを引きずる。

 シーツに飛び込む少女たち。
 汚れなく、身を重ねる。

 静かに、雨が窓を打っていた。