本記事は「サッフォーの右の手の上で」のサンプルです。
縮小病の退院祝いとして親友女子たちの家に呼ばれ、途方もない二人の大きさに衝撃を受けつつもこれまでと同じ関係が続いていることに安堵していた主人公と、気の強い隠れM女子と毒舌清楚娘の百合カップルのお話。ふとした瞬間に思い知る2人の巨大さや縮んでしまった体を無意識に反応させるフェロモンにあてられ、帰ろうとしても心配した2人に離してもらえず寧ろ巨体で包みこまれて看病されてしまい、二人も自分達が母性的/嗜虐的に振る舞い始めていることに気づかず……という内容です。(前編です)

【内容】
~~初日~~
・おっぱい下敷き
・美脚誘惑
~~二日目~~
・二日目(中間サンプル)
・口内見せつけ、お口レイプ
~~五日目~~
・ダブル乳プレス、巨乳揉み見せつけ、乳揉み巻き込まれ
・貝合わせ巻き込まれ
・(おまけ)初日キス挟み
以上です(30000+3000字)

 親友巨百合カップルの無意識巨大娘ムーブや意識的巨大娘プレイに巻き込まれたい方は是非。来月はお風呂シーンなど予定しております。

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 §
 中庭の大イチョウの下で時間を潰していた折、紗耶香(さやか)と詩葉(うたは)は俺に気付いたのだった。

 ゴールデンウィーク明けのキャンパス、人もまばらになった頃合いで、二人連れ立ってのお出ましだった。

「何たそがれてるのさ」
「眠いんだよ」
「なら寝ればいいじゃない」 
「これからゼミだって分かってんだろ……。……わっ?!」
 紗耶香が手元の袋を投げて寄越す。開ければ地ビールの瓶。およそ投げて寄越して良いものじゃない。
「どこ行ってきたんだ?」
「上高地」
「二人で?」
「二人で」
 まだまだ寒かったろうに、紅茶色の髪の才女は、これ以上言うべきことはないと言わんばかりに口をつぐむ。切れ長の目でこちらを見据え、むしろこちらにコメントを求めているようにさえ見えた。背の伸びるというかなんというか。
「河童はいたか」
「いてもまだ冬眠中」
 落第、とばかりに肩をすくめる紗耶香。肩元まで伸びた茶髪がかすかに舞い、初夏の陽に煌めいた。その応対を、詩葉が静かに見つめていた。それから、一言。
「紗耶香、この人にギャグセンスを求めるのは酷です」
 黒髪の頭を傾げ、“何でそんな無駄な真似を?”という風に紗耶香に言うのだ。
「そんなのわかってる。こいつが勝手に言っただけ」
「泣き叫んでもいいんだぞ」
「冗談ですよ」
 淡々と言うものだから冗談に聞こえない。この詩葉とかいう娘、清楚な見た目に反し掴みにくいところがある。紗耶香より10㎝は背が高く、黒髪は長く艶やか。物静かに毒舌を吐く、独特の存在感を漂わせていた。おまけに人の顔をジッと見つめる癖があるものだから、見透かされたようで落ち着かない。

「……ともかく行くぞ」
 ぞろぞろと教室に向かう一団は、傍目に見れば両手に花。そんなの謬見も良いところ。二人は俺に微塵の興味もなく、誰かの手に収まる人間でもない。こちらが興味を持たない限りにおいて、友好的でいてくれるだけ。気を許しても警戒は解かない。まどろっこしい。
「終わったら飲みに行かんか」
「私はいいけど……、詩葉は?」
「わたし? どうでも……」
「ご挨拶だな。ま、ん、いや…………」
「どうしたの?」
 口を開け、閉じ、それから唸る。
「なんか、言葉が出ん」
「脳卒中じゃなかろうね」
「20代でそ……」

 ──────ん?

 それは?

 それは、なんだ?

 今、誰が考えている? 私は誰でここはどこだ? 今ここってなんだ? いや、今はここか。じゃあ、それはどこにある?

 一瞬、曼荼羅を見たような気さえした。

 そんなサイケな光景もやがて醒め、存外に軽く目が開いた時。

「……起きたね」
「ん、起きた」
 果たして俺は、ベッドに寝かされた自分を見出した。

「うた、は……? と、さやかか……、ここは……?」
「おや、こいつ物を話すようだよ」
「俺は魔物か」
「紗耶香、こいつ魔物のくせに生意気な口を聞きますよ」
 病院らしき場所、恐らく倒れて運び込まれたのだろう。それでこの物言いなのだから敬服する。ある意味安心した。
 
 ため息混じりに窓外に目をくれる。そして、瞠目した。落葉している。二人も冬服だ。
 大方の察しはついていた。
「今日は何日だ」
「まだ年は越してない」
「マジか。……待て、お前ら、半年ぶりに起きてその無感動さなのか?」
「辞書にない単語は使えない。第一、こっちは半年待ったんだもの。諸々の覚悟はしていたよ」
「そうかい……。それで、病名は?」
 珍しいものを見た。二人が言い淀んでいる。
「お二方?」
「あー……。そうだね。ちょっと、手、伸ばしてみて」
「手? なんで?」
「いいから」
 言われるがままに腕を伸ばす。そこに紗耶香の手もやってきた。
 細く小さな、女性の手。それを握ろうとして、空を切った。一方、みるみる大きくなる、紗耶香の手。それが視界を丸ごと覆って、ようやく俺の手の平に指先を重ねた。だが掴み切れない。指先だというのに、腕のような太さを持っていた。
 言葉を失う。 
 悟らざるを得ない。
 あれか。くだんの。縮小病というあれか。
「まああんたならわかるでしょ」
「……残念ながら」
 奇病だがそれゆえに有名な奇病。とはいえ奇病は奇病。変身という訳だ。こんなことがあってたまるか。

 ため息が出る。言葉も失う。ただ、それ以外にするべきことを俺は知らなかった。
「思ったより落ち着いてるね」
「取り乱してほしいか?」
「そしたら帰ります」
「つれない奴め」
 ただ、これほど気が楽になることもない。起きていきなり涙ぐむような奴じゃなくてよかった。
「……で、どこまで縮んだんだ」
「27cm」
「え?」
「27cm。6分の1……♪」
 詩葉だった。即座に答え、とらえどころのない声で囁く。そして俺の手を取ると、指先で振って微笑んでいた。何を考えているのかわからないが、ある意味平常運転なのは変わらない。……さすがに、その大きさで触れられるのは落ち着かないが。目の前で、胸が揺れるのだ。

 ともかく、体のサイズ以外、何か極端に変わったわけではなさそうだ。とてつもない違いにも思えたが、同じ関係が続くだけでありがたい。

 となると色々聞きたいこともあるわけだが。
「縮んでる途中って……、どうなってたんだ?」
「あー……」
「知らないほうが、いいと思うかな」
 俺の言葉に、2人は目を逸らした。
 言いづらそうに目を合わせ、絞り出したのは一言。
「さなぎってさ、ドロドロになるんだよね。中身溶けて」
「……いい、いい、みなまで言うな」
 むしろそちらの方がよほどグロテスクな答えにも思えるが、紗耶香はこういう人間だった。
「何事も経験だね。ご家族は結構ショックだったらしいけど」
「ショック?」
「だって君、溶けちゃったらねぇ」
「治療を続けるかも悩んだはずですよ。ご家族だけだったら、折れてたかもしれませんね?」
 参った。二人が命の恩人になってしまったのか。返しきれない貸しが出来てしまった。
「まあ、向こうも心の準備がいるからさ。それまでは私たちが預かるよ」
「それに、貴方も心の準備も必要でしょう。ご家族よりはわたしたちの方が楽だと思います」
「俺の……?」
「体に引っ張られることって多いからさ。私たちはよく知ってるけど」
「あ、あぁ……」
「とにかく、ちゃんと記憶が繋がってるなんて、奇跡みたいなものなんだよ。障害がないだけでホームランなんだから」
 頭の回転が良い分、つらつらと話し続ける。こちらが寝ている間に、磨きがかかっているような気さえした。そして、最後に。

「ま、退院祝いしてあげるから。前の約束の続きをしよう。うちにおいで」、と。


 §
 紗耶香と詩葉が、恐らくはかなりの配慮をしていることは伝わってきた。
 半年のギャップがあり、6倍のギャップが生まれた中で同じようにふるまっている。ただ、紗耶香は嘘をつかないし、詩葉は嘘つきだがつけない嘘はつかない。変わらない態度で遇するという判断には、それなりの自信があったのだろう。友人が、……俺は親友だと認識している間柄の人間が、フィギュアサイズに縮んだ。それを半年かけて咀嚼したからこそ平常心でのふるまいが出来ているのだろう。

 とはいえ、俺にそんな覚悟はない。
 瞼を閉じて開くまでの間に、須臾の間もありはしなかった。だのにすべてが変わってしまったのだから。

 それを実感させたのは、精神よりもまず肉体だった。
 端的に言えば、俺は気絶してしまった。
 まったく、ひどい有様だった。
「うお……っ?!」
 ベッドから降りた瞬間、強烈な違和感に身を貫かれたのだ。
 当たり前だ。6分の1の姿になって、おまけに半年ぶりの起立。サイズのせいで筋力は心配なかったが、ふわふわとした自分の軽さが余計に気持ち悪い。
 ぐらりと揺れた体を壁に寄り掛け、なんとか立ち上がろうとする。が、壁がぐにっとたわむものだから慌てて見やれば果たして紗耶香の脚。すまんと言って身を引けば今度は詩葉の脚へ。そして女性二人の足に囲まれながら三半規管を振り回され、脳が状況を処理できない。あまりのことに、俺は伸びてしまったのだった。

 それを忘れ、目が覚めた時。

 左右にそびえる巨人に、俺は恐怖を隠しきれなかった。

「ひぃっ?!」
 悪夢に似た遠近感の狂い。覗き込まれている恐怖感。おそらく睡眠の中でもごちゃごちゃ考えていたのだろう、目が覚めた瞬間の取り乱しようと言ったらなかった。強がっていたが、やはり6倍の体格差というのは相応に恐ろしい。
 
 それを、巨人が摘まみ上げると。
「こら、落ち着け」
 タートルネックの胸に、封じ込めるように。
 “ぎゅううぅッ……“と、抱き締めた。
 いや、抱き潰した。
 その、216倍になった巨乳で。
「う゛うぅッ??!」
 凄まじい感覚だった。柔らかく大きなものに包まれる。大人になればスキンシップなど恋人くらいとしかしない。おまけにこのサイズ。常人の抱擁とは質も量も違う。何かが脳から吹き出る。ただ、それこそ、辞書にない単語は使えない。消化しきれないほどの優しさを注がれた気分だ。

 そして、手を離されて。
「? ? ?」
 俺は、何が起こったかもわからず、突っ立っているしかなかった。

「どう? 怖くなくなった?」
「あ、ああ……」
 言いたいことはたくさんある。なぜそんな行動が自然と出てきたのか。なぜそれが効いたのか。変なマニュアルでも読んだんじゃないか。こちらとしては何もかも突発的な行動に、理解が追いつかない。
「……お前、スキンシップというものを覚えたのか」
「私は君と違って物覚えが良いからね」
 悪態もつきたいところだが、取り乱した手前飲み込む他ない。恐らくは紗耶香の部屋、ローテーブルを囲む女性二人の間で、持ち上げられるばかり。身長1000㎝の美人に囲まれて悪い気はしないが、きまりの悪さはぬぐえない。
「まあ、初回に限りお金は取らないで上げよう」
「そりゃどうも」
 降ろしてもらってようやく、二人を見上げる。

 そして思わず、ゾクっとした。

 2人が、親友たちが、デカい。遠近法で歪むほど、もう、顔が遠すぎて見えないほど。いや、太ももだけで視界が埋め尽くされているくらいだ。当たり前だが、同じ地面に立たされると迫力が違った。地から伸びる4本の美脚も、布団を丸めたような太さだ。
「ん、何?」
「いや、いやぁ……、なんというか……」
 つくづくと二人を見上げられる。初めて、フルサイズの二人を見たかもしれない。
「私たちがデカいって言いたいんでしょ」
「女性にそれを言うのは気が引ける」
「私たちはあんたがどうしようもなくチビに見えるけどね」
 腰を折って、正座する詩葉と横座りする紗耶香、それを腰の高さから見上げる俺。なんというべきか、盗撮動画を見ているようだ。非現実的な構図と少々際どい光景を、どんな顔をして眺めたものか。
「そこじゃ顔が見えない。こっちおいで」
 不思議な光景の向こうから、手が伸びる。現実に大きな手が侵入し、俺を持ち上げた。異界に引きずり込まれた気分だ。

「……もう少しチビを驚かせない接し方はないのか?」
「慣れてもらうしかないかな」
「簡単に言ってくれるな」
「じゃなかったら、生まれ変わるしかない」
「小人として?」
「よくわかってるじゃん」
 困るのは、それが何も間違っていないことだ。考えてどうにかなるものではないが、かと言ってウダウダ言ってるわけにもいかない。
 これはもう、体に慣れさせるしかない。
「……ちょっと手を出してもらって良いか?」
「こう?」
「いや……、いや、すごいな。座椅子くらいある」
「女性の手になんてことを……。座ってみる?」
 かすかに目を丸くしたのは、俺が言われた通りに手に腰を据えたからだ。
「……まさか本当に乗るとは思ってなかったな」
 片手でスマホでも見るように、俺を見る。無意識なのか、親指を摺り寄せて、手触りを確かめてもいた。頬を撫でられ、反応に困る。こちらとしては、細指の背もたれの間からすり抜けないかが不安だ。親指にでもしがみついていたいところだが。足もたなごころからブラブラ揺れていて、文字通り地に足がついた心地がしない。
「……まあ、会話はしやすいかな」
「君と話すことなんてないけどね」
「俺にはあるんだよ」
 ふぅんと言って、なお俺を親指でいじる。フィギュアになって遊ばれてる感覚だ。ぞんざいにもう一人へ手渡しされれば、その感覚はいや増した。
「ほら、詩葉も慣れておこ」
「うん」
「おわっ?!」
 両手を広げて自分を受け取る。ハンモックのようにすっぽり収まり、安定感は紗耶香の比ではない。暖かみを感じる手が、軽く上下すると、
「これは……りんごひとつ分ですね」
「そんな、マスコットじゃないんだから」
「小さめのとうもろこしもこのくらいです」
「……食べ物に例えないでくれないか」
 そして、詩葉を見上げると。
「……♪」
 まるで、掌中に捉えた獲物を見るような目をしているのだ。それも、こちらに顔を傾けると柔和な笑みに変わった。が、唇の弧は一ミリも動いていない。巨大な存在に感じる威圧感のせいか、光の加減か。この大きさ自体が、どうも認識を歪めている気がしてならない。
「……本当に食べたりしないよな?」
「食べてあげましょうか?」
 小さな口から小さな舌が、“れっ”と顔を覗かせる。実際、このまま顔を埋められたら、俺はどうなるかわからない。両掌で包まれているのも、なんだか逃げられないようにされているみたいで落ち着かない。

「あ、降りちゃった」
「照れたんですよきっと」
「どうかな」
 机に落ちてベッタリ張り付き、胸をドキドキさせつつ後退り。そんな俺を2人は微笑ましく見守っている。巨大になった自分たちの所作が、俺にどう見えているかなど想像だにするまい。まして自分たちが上位者のように見えたなど。呆れて笑われるのがオチだ。胸にしまうほかない。
「ともかく、二人暮らしが三人になってもうちらは気にしないよ」
「そうかもしれないが……。……待て、二人で暮らしてるのか?」
「そうだよ。一人暮らしで小人の世話はできないでしょうに」
「まあ……、わかりますよね?」
「いつからだ」
「ずっと」
「おやおやおや……」
 勘づいてはいた。だが知らなかった。何事もそんなものだが。
「まあ、気兼ねする必要はないよ。何が変わるでなし」
「そんなもんかね」
「だから、場違い感を覚える必要はないかな」
「……気づいてたか」
「女の園と思ってるわけじゃないからね。あんたにとっては巨女の園だろうけど」
 そう言われても、落ち着かないものは落ち着かない。そもそも、女性だけが住む部屋というだけで慣れないというのに。机なんかに座っていいんだろうか。ワンルームほどもある空間に、ベッドサイズのパソコンや電柱のようなライトが並んでいる。
 所在なく、リモコンの巨大なボタンを撫でる俺。

 そして、ふと2人を見上げれば。
 2組の、規格外の爆乳が揺れていた。
 
 思わず、低い声が漏れそうだった。
「……ちょっと、ここはまずいんじゃないか?」
 巨乳の間に挟まれて、とてもじゃないが落ち着かない。さすがに親友の、いや、女性の胸しか視界に入らない状況はまずい。端的に言ってセクハラだ。だが、二人は俺の声が届かないらしかった。
「「え?」」
 巨乳に隠れた顔が、ぬぅっとこちらに近づいてくる。ゾクッとした。何か、観察されているような、独特の感覚。虫かごの中に閉じ込められて、覗き込まれた気分だ。
「いや、だから、……その、すまん……」
「ん、何が?」
 キョトンとした顔をする才女。珍しい。ちょっと可愛いが、見上げれば見上げるほど紗耶香のローアングルを拝んでしまう。当たり前のように視線をバストで遮られ、気にもしていないのだ。少し前までは、絶対にあり得なかったことだ。
 ただ、詩葉の方は気付いていたらしい。
「別に私はなんでもいいですけどね」
 ジト目ともつかない流し目でこちらを見ると、元の姿勢に戻る。おそらく普通に座っているだけだろうが、胸を張っているように見えるほどその丸みは圧迫的だった。
 
 紗耶香も、俺の挙動不審さで気づいたらしい。
「あは。胸見て興奮しちゃった?」
 からかうように机に胸を載せる紗耶香。だが、どっぷり乗っかる乳房すら大玉のよう。恋人に倣って、無表情のまま詩葉もずしっと地面を震わせる。前後にそびえるダブル載せ乳。そして、上からは美人二人が覗き込んでくる。
「まあ仕方ないかな? うちらは別に怒らないよ。っていうか、見てるか小さすぎてわからない。それに、こんなチビに見られても別に……」
「チビ言うな」
「たしかに、キミにとってはうちらがデカいんだろうけど?」
 肘をつき、横からイタズラっぽい顔で覗き込んでくる紗耶香。喫茶店でよくしていた素振りだ。頬杖をついて、斜めにこちらを見る。だが、小人相手では横乳を突きつけているのと一緒だ。
 それに紗耶香も気づいたらしい。
「あはっ♪ もう揉むどころか抱き着くことすらできないね?」
 ニマニマ笑いながら、タートルネックおっぱいを掬い上げて、落とす。“どぷんっ♡”と弾む様はまるでガスタンクのよう。胸板に押し潰され、量感豊かにたわむ巨乳。巨乳は横乳ですらまん丸だった。それが、これまでの216倍。潰されたらと思うだけで怖くなるくらいだ。

「触ってみる? 今なら埋もれられると思うよ?」
 二の腕を上げると、横乳を突いて見せる紗耶香。指が深く沈み込み、ぽよんと弾ませる。本当に何とも思っていないのか、明け透けに俺にデカさを見せつけてくる。ここまで煽られたらこちらとしても退きようがない。
「そっちがそう言うなら俺は遠慮しないぞ」
「いいよ、こっちも遠慮しないから」
 そんなことを言う奴じゃなかったはずだが、下心と好奇心には従っておきたい。第一、こんな機会そうそうあるものではないだろう。……詩葉に後で詰められたりしないだろうか? だが思慮深い犬のような娘は、読めない顔でこちらを見ている。この顔はおそらく、何も考えていない。

 ただ、小心者なので、紗耶香の影に移動すると。
 その横乳に、深く埋もれた。
 すごく、バカみたいな声が出た。
「うわ、ヘンな声出さないでよ……」
 全身で、横乳に抱きつく俺。一度どむんっと深くたわんで、乳肉がどぷどぷと揺れる。全身を余裕で挟み込める巨乳の横乳に張り付くのだから、気持ち良くない訳がない。二の腕の下、丸々とした膨らみに埋もれる。ウォーターベッドのように揺れる乳感が気持ちよく、クセになりそうな独特のどっぷりとした感覚だった。これはまずいかもしれない。一度知るとダメになるタイプの柔らかさだ。
 
「あーあー、またなんてだらしない声を……」
 影に隠れた俺の姿を、腕を上げて覗き込む紗耶香。上空にふんにりとした腕が掲げられていて、形の良い影を俺に落としていた。
 それが、降りくると。
 俺を、胸と二の腕で挟みつけたのだ。
「ぶっ?!」
 二の腕で俺を挟みつける。ふにふにと独特の感触と、どっぷり揺れる乳房、その両者で揉み潰されるのだ。

「バカ野郎!!」
「あはは、バカにバカって言われてもね」
「人を腋に挟む奴はバカだ」
「これも持ち上げられないくせに?」
 自身の巨乳を持ち上げ、そのボリュームを見せつける。全身でも抱ききれない、直径1m超えおっぱいだ。片乳に引っ張られ、もう片方も重そうにむちぃっと持ち上がっている。だが、細指が下乳に深く食い込み重量感は一目瞭然。
 まさかと思った時には、既に紗耶香は笑っていて。
「ほら、試してみなよ。すごいと思うよ」
 手渡すように、爆弾巨乳をこちらへ落としてきた。

 その瞬間の、衝撃といったら。



~~~~~~~(中間サンプル)~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 §
 他に道がないことはわかっていた。
 あるとすれば、実家か。とはいえ、今の実家に居場所がある保証はない。何より、治療を諦めかけたと聞いて少なからず思うところはあった。他人ではないからこそ、その姿が耐え難かったのだとしても。

 俺は他に行き場所がない。それを嘆く気はない。
 一応彼女らとは親友だったし、勉強や趣味に関して話も合ったからだ。どのみち同じことが起こる。そうと割り切るほかない。

 だから翌朝、俺は自分の判断の答え合わせをすることになったのだが。
「最終的にはどうあれ、数日はここにいてもらうことになる」
「ああ」
「特典はあれだね。シェリー、本、あとバロックのCD多数」
「どれもお前の趣味だろ……」
 若干のスノビッシュさはともかく、その口ぶりにほっとする。以前と同じものが続いているのはこの状況ではやはりありがたい。
「まあ本を読むのも大変かもしれないけど。A4サイズはキミにとってダブルベッドくらいだからね」
 シャッターポーズでA4の大きさを示しつつ、紗耶香は淡々と続ける。スマホ、タブレット、書台、使えそうなものを並べ、俺に試させる。後ろでは詩葉が目玉焼きを突きながら、ほとんど寝かけていた。

「私に頼むか詩葉に頼むか……。まあ、詩葉はイタズラするかもしれないけど」
「現にされたぞ」
「度を過ぎたら言うんだよ。私もこの子のイタズラには苦労させられたから」
「何があったんだ……」
 ただ、紗耶香はそれには答えず、ツンツンと眠り姫の頭をつつく。
「それで、昨日これと話したんだけど」
「はい」
「君の部屋は今日からこれだ」
 ドンと箱を置く。どう見ても小動物用のケージだ。
 急に風向きが変わった。
 これだから病身は困る。
「冗談は性格だけにしてくれ」
「まあしょうがないでしょ。こっちだって探し回ったんだよ? ヒーターがあって、大きすぎず小さすぎず……。まあ……」
 寝落ち寸前の詩葉のスカートを摘まむと、バッと開いてしまう。
「ここに住みたいって言うなら止めないけど」
 いきなり変なことをされて、バチっと詩葉の目が開く。それから、また眠そうに瞼をおろし始めた。
「……遠慮しておく」
「意気地のない人ね」
 なお詩葉は船を漕ぎ始める。

「まあそれより、何をおいてもまず服が困るね」
「それだよ。いつまでこんな病院服のようなものを……」
「それが無くてねぇ……。赤ん坊より小さいし、小人のサイズはまちまち。まさか起きるとは思ってなかったから、オーダーしようにも時間がないし。しかも、体のサイズに反比例して体温調整は難しくなる。ベルクマンの法則を思い浮かべてもらえば良いよ。だから、服がない訳にはいかないの」
「服を着ろというだけで何分話すつもりだ?」
「だからまあ、何を着せられても怒らないでほしいってこと。この世界はもう君のサイズには合わないんだから」
「まあ、実感はしているよ」
 間に合わせの服を眺め、つくづくと二人を見上げる。度重なる無意識の洗礼と、明らかな感覚の変容。2人が意識していない分露骨な変化に、一夜で分からされてしまった。
 
「今だって寒いくせに」
「寒いって言ったらどうする」
「こうする」
 再び、詩葉のスカートをめくりあげた。娘が目を開く。けれど睡魔がそれに勝った。
「……」
 この朝の弱さで、よく一限を落とさなかったものだ。

「ってわけだから。大人しく湯たんぽにでも抱きついておきなさい」
「……しゃあないな」
 不承不承頷く。
 背後で、詩葉が机に頭をぶつけていた。

 ……諸々の問題を考える上で、多少の、多少の困難はあれど彼女らは適役だった。賢く、男女のいざこざを断ち切っている。別の問題はあったが。贅沢は言ってられないか。
「という訳で私は買い出しに行ってくる。何かあったら……そこのバカに言って」
「起きるのかこれ」
「知らない」
 机に突っ伏す頭を揺らし、2人してため息をつく。

 かくして、紗耶香はコートを羽織ると、去り行き。
 一人残された俺は、テーブルから降りられない。
「どうしたもんかな」
 兎にも角にもこいつに起きてもらわねば。して、何気なく詩葉に目を遣ると。

 髪の奥から、大きな目が輝いていた。
「うわびっくりした」
「うるさいなぁ」
「起きてたのか」
 寝そべったままこちらを見上げる。

「髪踏んでる」
「すまん」
「まったく……」
 文句を言いながら、ようやく身を起こす。艶やかなロングが机を這い、重そうに滑り落ちた。足元をさらわれ、まともに頭を打つ。詩葉はふんと鼻を鳴らすだけ。
「絡まらないことですね。髪1本で36本分……、首に締まったら死にますよ。これだけで、もう動けなくなるんですから」
 数本の髪でキュッと手首を縛ると、俺をぶら下げる。藻掻くも黒髪のロープはほどけない。確かに危険だが、いきなり実演されると肝が冷える。
「お前、見かけによらず……」
「キミが気付かなかっただけだよ」
「この化け猫め」
 その言葉に、詩葉もくすりと笑う。悪い気はしないらしい。
「わたしよりあの子の方が優しいって、もうわかってるんじゃない?」
「怖い人に怖いって言うほどバカじゃない……ちょっ、やめ」
「ふふ♪ 本当に怖い目に遭わせちゃうぞ♪」
 指先で軽く押すと、ぶらぶら揺らして悲鳴を奏でる。女性の髪縄はしなやかで、手首に食い込み痛いくらいだ。体毛にすら勝てないのか。

「俺だって一応思うところはあるんだぞ」
「余計なことを考えすぎるのが良くないところ。2人でよく言ってました」
「と言ったって性質ってのは簡単には……」
「大丈夫、すぐ考えられなくなる」
「どういう……わっ?!」
「考えてる暇なんてなくなるから♪」
 手のひらで俺を押し倒す詩葉。体を起こし妙に甘い笑みで見下ろしている。座椅子サイズの手で拘束された俺を、指先でくすぐり、トントンとつつくのだ。
「何を……」
「あの子は無意識だけど、わたしは違うからね? キミを可愛い生き物にするんだ……♪」
「お前は悪魔か?」
「ふふっ♪ もちろん本命はキミじゃないよ? 無意識にキミを翻弄するあの子、本当にかわいいんだ♪」
 もしかしたらこれは惚気だったのかもしれない。珍しく、不思議少女の直接的な自己表現を聞いた気がする。だが俺にとっては、開戦前に勝利宣言を聞かされたようなものだ。
「何をするつもりだ」
「大丈夫。わたしからは何もしませんよ。それに抗いたいなら、まずその目をよそに向けたらどうです?」
「……はて」
 とぼけた顔をするが手遅れだ。頬杖をついて呆れた顔をする。生理的嫌悪感を覚えないのは、寛容だからか俺を人と思ってないからか。
「気づいたら200倍になってたんだ。目に映るもの何もかも珍しい。その、なんだ、……許せ」
「ずっと見ないようにしてたの、縮む前からバレバレでしたけどね」
「今は良いのか」
 詩葉は、「どうでもいい」とだけ言った。

「わたしたちは半年貴方が縮むのを見てるんです。貴方のことをすっかり小人だと認識してる。あの子は賢いけど察しのいい方じゃないから、自分の無意識に気づいてないけど」
「……俺にしてみればどっちも脅威だが」
「ふふ、あの子の無意識が暴走しそうな時は助けてあげますよ。本当は、わたしの方が危険なのにね♪」
「俺だって男だってのに……」
「バカ。もう生き物としての格が違うんだよ」
 黒髪娘が、机に胸を押し付けるように身を乗り出す。目の前に現れる巨大な美貌。
 それが、突然唇を大きく開くと。
 べろぉっと、生々しい口内を見せつけるのだ。

「ひっ?!」
「肩まで口に入る大きさかな。そういう生き物は自然界では捕食対象だよ。入ってみる? あったかいよ。ヌルヌルすると思うけど」
 びっくりした。大胆すぎる行動にも、目の前に広がる大口の淫靡さにも。ピンク色の額縁の中、ぬらぬら照り輝く粘膜、柔らかそうな舌。友人の口に、恐怖と高揚を覚えるなんて、普通じゃない。
「……いや、遠慮しとく」
「なんだ」
 淫靡な口を閉じ、澄ました顔に戻る詩葉。こちらは動悸が止まらないというのに。ぬらりとした光沢がまだ目に焼き付いている。
「そ、それ、やめてくれないか? 心臓に悪い」
「これ?」
「ひっ?!」
 唇がぐぱっと開き、蠱惑的な口内が照り輝く。足がすくんだ。かつ魅入られた。形の整った、長く艶めかしい舌が濡れている。口内の揺らめく光沢が淫猥だった。くねる口蓋の形、喉奥の粘膜。会話のための記号ではない。捕食、生命活動の剥き身の道具。脅迫や威嚇を超えた、示威行為だ。