本記事は限定公開作品「無自覚極大のソルシエール」のサンプルです。
生意気魔女娘に5㎜サイズに縮められてしまった主人公が、気付かれないまま300倍巨体で翻弄されて無自覚魔女フェロモンで犯されてしまうお話。

【内容】基本300倍
・(椅子シチュ)座り潰し尻メテオ、太ももの間閉じ込めシチュ、脚組み太もも密閉シチュ、ニーソ脱ぎ捨て、踏み潰され
・(お風呂シチュ)入浴に巻き込まれお尻に漂着、スポンジに全身や乳首へこすりつけられるシチュ、尻肉監禁
・(ベッドシチュ)無自覚オナニー見せつけられ、巻き込まれシチュ

無意識に発達途上のむちむち巨体を見せつけられ、翻弄され、入浴やオナニーに巻き込まれ挙句最後は見つかってしまい……というお話です。
久しぶりの長編unawareです。ご興味のある方は是非

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§
 クソガキに呼びつけられたのは、既に夜半に入りつつある頃だった。
 というより、寝る直前だったというべきかもしれない。
 
 森の奥の小さな家に、小生意気な少女の声が響いたのだ。

「ねえ来て! 今すぐ来て。ほら早く! ねえ、ねえねえねえねえっ!」
「わーかった、わかったから叫ぶなっ!!」
 渋面して工房のドアを開く。そして開けた途端、ぬっと現れる黒い塊。まるで黒猫だ。

 見れば、三角帽子をかぶった黒いローブ姿、淡く輝く金髪の下から見上げるのは、キラキラ輝くルビーの瞳。やはり魔女は魔女であり、一種異様な雰囲気を隠しきれない。
 危うく悲鳴が漏れかけたところで、それが我が大魔導士のレイナスその人であると気づくと、俺はきまり悪く咳払いをする他なかった。

 で、当のちんまり美少女魔導士様はというと、三角帽子の下から俺を仰ぎ、
「マヌケな声を出さないで。こっちの頭まで悪くなっちゃう」
 などと、小さな鼻をふんと鳴らすだけ。減らず口を添えるのも忘れない。おそらくこの娘、数多の秘術に通じてその実、朗らかに会話を終わらせる術だけは知らないらしい。腹立たしい。実に実に腹立たしい。
「……風呂に入ろうとしてたんだが」
「何、文句でもあるの?」
 挑みかかるように下から見上げる、ぱっちり切れ長な深紅の瞳。吸い込まれるほどの美しさは相変わらず。髪は豊穣に実った小麦のごとく金色に輝き、幼い顔立ちは天使のごとく。黙ってさえいれば、こいつは一級の美少女だろう。
 とまれ、クソガキはクソガキ。ちんまりした姿は、猫にでも威嚇された気分だった。

「文句が無いとでも思ったか? いいのか? ここで脱いでも良いんだぞ」
「そうしたら私、あなたを丸焼きにして生薬にしてあげるわ」
「教会にあることないこと密告するぞ」
「出来るものなら……、って、違うの! いいから話を聞きなさいっ!」
 キャンキャン叫ぶ魔術師殿下。いかにも魔女娘然とした出で立ちは、なるほど可愛らしくはある。だが年中ハロウィンじみたふざけた格好で、14,5歳の小娘に毒を吐かれるのだから釈然としない。目前で揺れる魔女帽子と、色白の頬。短い赤ワンピースは肩と胸を覗かせているけれど、豊満な膨らみにまでは今一歩。背中で金に煌めく髪は見惚れるほど美しいが、今はどうにもその煌びやかさを素直に喜べずにいた。美貌が、こいつの自信を倍増しにしている気がする。いくら魔女として優れていても、俺にとってはただのクソガキだ。

 おまけにこいつ、次々話が変わっていく。
「あなた、私より年上なんだから落ち着きをもちなさいな。そんなんじゃいつまで経っても私の下間使いよ?」
「俺がいないと料理も作れないレイナス様が言うと凄みが違うなぁ。えぇ?」
「料理まで私に奪われたら、あなた本当に惨めじゃない。これは慈悲よ、魔女の慈悲」
「ぐっ……!」
 なお反駁しようとする俺に、“それはともかく”と背を向けて。
「あなたに見てほしいものがあるの」
 少女は話の主導権を握り返す。口を開けば耳慣れない言葉の嵐と、少女のドヤ顔、そして、あくびをする俺。

 たっぷり、5分は喋り倒していたと思う。

「……をして、ついに古儀の応用に成功したの! どう? すごいでしょ?」
 そう長広舌を締めくくり、得意満面な様子。悪いが微塵も聞いていなかった。

「……で、それになんの功徳があると?」
「…………、あなた、口を開くとそれね。役に立つだけが物事の道理じゃないの。その矮小な秤で私の研究を量らないでくれる?」
 少女は少しむくれて、自分をなだめるように古めかしい杖を撫でる。猫が平静を取り繕って、毛づくろいをしているみたいだ。なぜ私がそんな説明を、といった顔。
 とはいえ凡俗の自分は、他に価値尺度など持ち合わせてはいない。こいつが何をしているのか、理解したい気持ちがなくはない。欠片ほどはある。だが、生きている世界がやはり微妙にズレているようだった。
 片や小魔女様は、どうもなお何か反駁したいご様子。それから一転、何かに気づくとパッと顔色を変えた。そして得意げに、主張の薄い胸を張って曰く。
「でも、そんなあなたに朗報よ。今回はちゃんと、使い道があるんだから!」
 俺の裾を引っ張り、無理やり工房の奥に引き込むのだ。

 袖が伸びるのも業腹なので、渋々テーブルのそばに立たされる。広い一枚板に、散乱する羊皮紙、重厚な装丁の本、その他よくわからない品々。なんだか、見ているだけで呪われそうだ。
「見て頂戴。これから私が……」
「おい」
「……話の腰を折らないでくれる?」
「せっかく淹れてやったのに、冷え切ってるじゃないか」
「だってあなたの淹れる紅茶、渋いんだもの」
「苦いのが良いんじゃないか。お子様め」
「あなただって大人に毛の生えたようなものじゃない」
「なんだって? お前、大人の男ってものを理解させてほしいのか?」
「ほんっとに下品ね! あんまり口が過ぎると子供の姿にするわよ、……って」
 それから、我に返ったレイナスは。

「ああもうっ、なんであなたと話してるとこう脱線するのかしら!」
 青ざめて、頭を抱えてしまう。コロコロ表情が変わって、見ている分には愛らしいのだが。子供っぽく頭を乱暴に掻いて、せっかくのブロンド髪がクシャクシャだ。この可愛らしさを無駄にするまいと、人知れず石鹸やオイルを探しているというのに。俺の努力と老婆心など、小娘は知ったことではない。本当に本当に、知ったことでは無かった。

 しばらく揺れる三角帽子。それが止まると、少女ははぁっと息を吐いた。まあいいわと、短く呟く。
「いいこと? 目を離さないで。あなたは生き証人よ。すっごいんだから、見ててよね? ちゃんと見ててよね!」
 気を取り直したようにテーブルに向き直った小娘。
 それが、珍しく真剣な表情を見せて。
 口の中で何事か呟き、飲みさしのカップに杖を振ると。

 光が灯る。
 カップがコトコト震える。
 そして、一瞬収まって。

 一気に、縮み始めた。
 カップが、ミニチュアサイズへと収縮したのだ。

「おぉ……!」
「どう? すごいでしょ!」
 瞠目する俺へ、誇らしげにふんぞり返る小魔女様。そう言われると素直には肯んじ得ないが、何ぶん動作がいちいち愛らしい。正直、娘に自慢された父親の気分だ。全体的にちんまりとしたレイナスが、自慢げにしているのだから頭でも撫でてやりたくなる。……まあ、手を焼かれるのは目に見えているが。

 それに何より、今目にしたものは驚嘆するに値した。物が縮んだ。それも精巧なデザインを保ったまま、豆粒サイズまで。俺にでもわかる驚異だった。

「なんでこんなことできるんだ? お前、治す方はからきしなのに……」
「なっ!? 治癒と呪詛って同根なんだからね?! 私はただ、理想に近づけるより解体する方が得意というか……」
「黒魔女じゃねぇか」
「もっと褒めていいのよ?」
「褒めてな……、まさか、本当に褒め言葉なのか?」
「バカね、そんなわけないじゃない」
 少女然とクスクス笑って、俺の動揺を上目遣いに揶揄ってくる。その所作に、一瞬ドキッとしてしまうのが情けない。ゆったりとしたローブのせいで、余計に華奢に見える体を折って、面白そうに笑うレイナス。

 ひとしきり笑い終え、満足したのか息を一つつくと。

「じゃあ、次はあなたの番ね」

 真顔でそう宣った。

「…………今、なんとおっしゃいました?」
「だから、次はあなたがこうなる番よ、って」
「悪い、魔女語が理解できない」
 だが、レイナスの顔は実に晴れやかなものだった。
「だってこれ、すごいことよ? それに物で試して成功したんだから、次は人体って決まってるじゃない!」
「んな訳あるか! もう少しステップを踏むもんじゃないのか?! 虫とか鼠とかで始めろよ! それにもし失敗したら……」
「……ああそう言えば、知り合いは助手をスプーンに変えたまま今も戻せてないんだって。それでね? スコーンを食べるときに使ってるって言うの! その助手が作ってたスコーンと一緒にお茶会に使ってるんだって。ホント悪趣味よね♪ しかも一般人が魔女の体液に触れ続けたりなんかしたら、ねえ?」
「“ねえ?”じゃねえ! 笑い事で済むか馬鹿!」
 最悪だった。頭のネジが飛んだおてんば美少女、それが魔女だとこうも手が付けられないのか。
 蒼白になり、ジリジリ逃げようとする俺と、ジリジリ追い詰めてくる小さな魔女。これまで何度もこういうことはあったが、今回は極めつけだ。

「何、私の実験台になるのがイヤだって言うの?」
「良い訳ねぇだろ!」
「大丈夫、魔力を注げば大きさは戻るから」
「形が壊れたらどうするって話をしてるんだ!」
 華奢な体に追い詰められ、ついぞ逃げ場を失くす下男。俺の胸元から、茜色の瞳がキラキラこちらを見上げている。まるで父親にオモチャをねだる娘の顔だ。だが、笑顔は無邪気なのに企図が邪悪すぎる。やはり魔女は魔女なのか。
「いいじゃない。少しよ少し。チクッとするだけだから!」
「絶対嫌だ」
「どうしても?」
「断固拒否する」
「仕方ないわね……」
 お、諦めたか……?
 胸を撫でおろし、重く息を吐く下男。
 だが、レイナスはその鼻先に鋭く杖を突きつけると。
「kjøt i kjøt……」
 おどろおどろしく何か呟き始めた。

「待て待て待て! わかったから、その口を閉じろ!」
 慌てる下男にレイナスは、「最初からそう言えばいいのよ」と言う始末。今、何をされそうになったんだ? 聞いてはいけないものを聞かされかけた気がする。

 こいつ、いつか本格的に締めあげねば。
 そう思って奴を見下ろすと。
 魔女娘は、既に目に妖光を灯していて。
 問答無用で、杖をふるったのだ。
「お、おい待てッ!!!」

 悲鳴と共に静寂が訪れ。
 そして。

 そして。
 何もない。

 何か起こった、気配がない。

「……あれ?」
 怪訝そうに、少女がもう一度杖を振る。二度、三度、やはり変化はない。

「どうした?」
「出ないわ」
「不発か?」
「……の、ようね」
 インクの出ない万年筆でも振るように杖を振り回すレイナス。光が灯ったり、突然リンゴが飛び出してきたりと忙しない。それでも、俺の体は元のまま。
 互いに、顔を見合わせる高名な魔女と小間使い。
 その一瞬は、とても豊かに澄んでいて。

 噴き出すのを、堪えることなんて無理だった。

「不発だって?! あんだけ大見得きっといて? 不発? 天下のレイナス様が? 失敗なされたと!」
 一瞬キョトンとしたレイナスの、素の少女の表情もまた燃料だった。さっきまでただならぬオーラをまとっていたご主人様が、ただの少女に戻ったのだ。安堵も相まって、俺の口が止まる訳がない。
「いやあ何事も儘なりませんなぁ! あれだけのことを言っておいて! 失敗して! 何も言い返せないんですからなあ! ええ?!」
 帽子のつばを引っ張って顔を隠し、それでもこちらを窺うと “ぷっくぅ~”とむくれるレイナス。下男の哄笑がよほど悔しいと見た。人を呪っておいて、この拗ねようだ。その顔を見ていると、さしもの自分も思うところがないではない。一言で言うなら……、

 気分がいい。

 正直、めちゃくちゃ気持ちいい。

 そうか、才ばかり目立つ小娘を悔しがらせると、こんなにいい気持ちになれるのか。
 毎日毎日、使用人のように使われていた身の上だ。いやなに、文句はない。何ぶんこいつは有能で、生活に苦労もなく、世俗の金にも執着がないと来た。給金にしても生活にしても、これ以上の仕事はない。たった一つ、この癪な横暴さを除くならば。
 それも、今となっては過去の話。
 俺は晴れやかな気持ちで、小娘を見下ろした。多少のさもしさを感じなくもないが、散々こき使われたのだ、当然の報酬だろう。何より、あの尊大なブロンド髪の少女が、年相応の素振りで俺を見上げている。むくれて涙目で俺を睨んでいる。罪悪感を抱くほどに可憐で愛らしく、その分俺をいい気にさせた。

「ほら、もう一度どうだ? 今度は成功するかもしれないぞ? ええ?」
「……もういいッ!」
 拗ねた様子で、俺の背を押し無理やり追い出す少女。その仕草はまさしく年頃の娘といった感じで、ひどく愛らしいものだった。今ならこいつの可愛らしさを受け入れてやれる。いつも失敗してくんないかな。
 意気揚々と、部屋を出る小間使い。
 外に出るや否や、背後でピシャリとドアが閉じた。


 ⁂
 ……とまあ、そういう訳で。

 そういう訳で俺は、ようやく一人の時間を得たのだが。

「……やっぱはしゃぎすぎたか」
 きまり悪く頭を掻く。
 もう半刻もたてばさすがに高揚も引く。少し煽りすぎた。レイナスも工房から私室へ引っ込んで以来出てこないし、せっかく入れてやった風呂も冷めてしまう。とはいえ、あれだけ言えばあいつが拗ねないはずがなかった。
「…………静かだな」
 騒々しい家が静まり返っていると、どうもうら寂しさは禁じ得ない。

 浴室で、もそもそと服を脱ぎながら、反省すべきか居直るべきか俺は掴みかねずにいた。
 さすがにやり過ぎたかなと思わないでもない。いや、どちらが悪いかで言うと100%あいつが悪い。だが、やっぱり大人げなかったか? お人好しが過ぎるか。とはいえ、最悪どうなっていたかもわからないのだし。もしカップにされて放置されたりなんかしたら、死んでも死にきれない。
 娘同然の感覚でいた分、拗ねられた時の後味はあまり快いものではなかった。

 ……まあ、ご機嫌取りだけでもしといてやるか。後で、マドレーヌでも焼いてやろう。

 そう思った矢先のこと。
 ガクンと、地面が抜けるような感覚がした。

「……?」
 慌てて踏ん張るが、地に足は着いたまま。だのにもう一度、同じ感覚が襲ってくる。混乱するばかりだ。
「なんだ……?」
 地震か。違う。レイナスか。いや、衝撃は地面からだ。
 なんとか原因を探るうち、あることに気づいた。
 どうも、周囲の光景が上へ伸びている。というより、目の高さがみるみる下がっている。

 間違いない。
 体が縮み始めている。
 あいつの呪文が、今更効き始めたらしい。

「うっそだろ!?」
 この期に及んで慌てるがどうしようもない。しかもあいつ、何度も杖を振ってはいなかったか。おそらく重ねがけ状態。このままじゃ、極限まで縮むんじゃ……!
「レイナス! 来い! 来いったら!!」
 全裸だが仕方ない。必死に魔少女の私室へ駆け出す俺。が、既に手遅れだった。すでに体は元の3分の1以下。今ではあの華奢な少女にも跨ぎ越されるだろう。加速度的に遠ざかる扉ともつれる足。それでも無理に進もうとすればすっころび、伸ばした手の先でドアがどんどん離れ去っていく。

 そして、床が、壁が、天井が四方へ走り去っていって。

 変貌が止まった時。

 俺は絶望的なサイズまで堕ちていた。
 蟻サイズ。いや、それ以下かもしれない。
 目の前に落ちる、馬車のような大きさの麦粒。それと比べるに、おそらく体は300分の1スケール。今の俺は、レイナスの指先でさえ広すぎるほどの大きさだ。

 もう、目視すら難しい。0.5㎝になった気分は、絶望のさらに先にあった。

 そんな豆粒を、底から地響きが突き上げる。
 一度。二度。
 それが、どんどん、近づいてきた。
《……ローブ? ちょっと、何ごと? ローブ?》
 少しローテンションな、レイナスの声が響いてきた。ふて寝していたのかもしれない。少し声がまどろんでいる。
 それから、ガチャリとドアノブがなると、
《ローブ? ローベルト? 聞こえてるの? ねえ、何か言ったらどう?》
 数百メートルもあるドアが、開いたのだ。

 天変地異だった。
 鮮烈な声とともに一枚板が動き出し、大気ごと根こそぎかっさらう。無論俺も例外ではない。埃ともども、薄暗い部屋へと吸い込まれるのだ。巨大な靴の間をすり抜け引きずり込まれる俺の矮躯。竜巻に吸い込まれた気分だ。
 ドアを過ぎれば、空気が一気に柔く甘くなる。
 そして、ボスッとクッションに叩きつけられて。

《……何よ、ローブったら。返事くらいしてくれてもいいのに……》
 轟音を立てて閉じる、地獄の門。天地も知らず目を回す俺の前で、ゆっくり世界が閉まっていく。巨大娘と二人きり、それが良いことなのかどうか。目に映るのは、少女の黒光りする靴の山だけだ。

「く、くそったれ……」
 口もろくに回らない。想像を絶する飛行劇に、目を回し吐きそうなくらいだった。何より、巨大さへの理解が追い付かない。見上げれば、何やら巨大なものが動いているのはわかる。だが暗い室内で、未経験の巨影を前に、どこに焦点を合わせたらいいかすらわからない。
 だってもう、レイナスは身長450mの少女なのだ。
 目の前で、山のように鎮座する黒のとんがり靴。
 そこから伸びるあれは、おそらく長靴下を穿いた脚なのだろう。マットに光沢を侍らせる、ニーソおみ脚。滑らかで悩ましい曲線美は明らかに女性的だが、俄かにはそれが少女の脚だと理解できない。幅30mをくだらない巨塔が、何十メートル、何百メートルと……。どんな建物よりも高い尖塔が2本そびえたち、収斂する先ではスカートの大輪が視界を阻んでいる。

 美少女を床下から見上げ、超ローアングル。
 背徳的なその光景が、轟音を立てながら動き始める。
《……はぁ、居眠りしちゃった。せっかくまとめておこうと思ったのに》
 ふわふわとしたクセっ毛ブロンドを掻きながら、大地を穿ち歩く300倍魔女。とっくにとっぷり暮れた室内は、窓から夜闇が注ぎ込み、卓上のランプ一つばかりが輝いている。俺に無視されたとばかり思った仔猫は、それすら気に入らないらしい。
《……もうっ、カーテンくらい閉めてくれればいいのに!》
 そう口にしつつ、ぞんざいに指を一振り、二振り。それに合わせカーテンが閉まり、もう一振りするとランプに灯が灯る。指を振る度に本が宙を舞い、羊皮紙が整えられ。ああ、こんな簡単に掃除が済むなんて。俺なんか本当に要らないんじゃないか? 何かと俺の手を煩わせたがる少女の手によって、鮮やかに部屋が整えられて行く。

 続いて少女の指が、ピタリと俺の方を指差せば。
 俺を乗せたクッションが、滑らかに、浮かび上がり。
 そのまま、椅子の方へと飛び回り始めてしまった。

「お? ……おおおッ?!」
 浮遊感とともに浮く大地。しがみつきつつ俺は、あれよあれよと連れ去られてしまう。
 目指す先は、レイナスご愛用の椅子の上だ。

「わ゛ッ??!」
 ドスッと座面へ放り出され、よろけながら立ち上がり。
 見上げると、目の前には黒ストと太ももの艶めかしい境界線。レイナスの太ももの前に立たされ、ご自慢の絶対領域を見せつけられていた。
 全力で走っても10秒はかかる太さの美脚が二本。
 その光景は壮絶だった。
 むっちり食い込んだ太ももが、300倍のスケールで肉感を主張する。すぐ上空には、予想外にデカい少女の尻。それが、水平線の向こうからこちらへ丸く張り出しているのだ。

 だが、畏怖している場合ではない。今なら或いは声が届くかもしれないと、一縷の望みを抱いて跳ね叫んだ。
 一方レイナスは、フリフリと尻を揺らしているだけで、
《はぁ……、どうして私がこんな雑事……》
 帰ってくるのは、呪詛ともつかない小言ばかり。
 とはいえ、どうも俺の不在に当惑しているのは本当らしい。
《ねえ、本当にいないの?》
「ここだっつってんだろ!」
《いないの? 本当にいないの? …………ローブのバカ! 凡俗! 朴念仁!》
「おまっ!? お、覚えてろよ!!」
 地を揺るがす大音量で、くだらない言葉を言い放ち、それでも返ってくるのは静寂だけ。俺の怒号に身構えていたレイナスも、そっとドアの隙間から外を窺ったり、“ね、ねぇ……?”と心細く問いかけたり。当の俺が、自分の太ももの巨大さに怯えているとも知らず。
《ちょっと、返事くらいしてくれたっていいじゃない……》
 ドアから外を覗き込み、尻を突き出す美少女。臙脂のワンピースからデカ尻を覗かせ、豆男に無意識にむちむちを見せつける。お前の探し物はすぐそこだと、言うにもやはり近すぎ、遠すぎた。小間使いの視界から横溢する、黒ニーソのむっちり膨らむ光沢感。見上げれば絶対領域が、風車のようなその肌色で断崖からそびえ立っている。300倍美少女の太ももは、女神的ですらあった。

 それが歩き、悠然と俺の前を通り過ぎ。
 柑橘に似た香りの暴風を立てて、俺を翻弄すると。
《いないわね……》
 誰にともなく、一人ごちる。
《ちょっと……、やりすぎちゃったかな……》
 しおらしく言うレイナス。驚くべきことに、少ししょげているらしい。相変わらず目に映るのは果てしのない巨塔。だが、その雰囲気は天気のように明らかだった。あの小生意気な娘が、こんな姿を見せるなんて。

《はぁ……。また私ったら……》
 帽子を置き、肩を落とすレイナス。
 疲れた言わんばかりに、どっかと椅子へと腰掛ける。

 もちろん。

 もちろん着座地点は、俺の上だ。

「……は?」
 頭上に、パッと咲く赤ワンピースの花。
 それに彩られた、満月のようなデカ尻が頭上を埋める。黒地のショーツが尻に食い込んで、存外に色っぽい。フリルのついた黒下着が空を覆い、凄まじいエロパノラマで頭上を埋め尽くした。
 バカだ。その色気に、一瞬足を止めてしまった。

 直後なだれ込んできたのは、生暖かな空気塊で。
「ぐッ?!」
 逃げ遅れた俺は、革張りの座面へと風圧で押し付けられてしまう。見えない手で押さえつけられたかのように俺は、座面に釘付け。14,5歳の育ちかけ巨尻が、天体的なスケールで世界を圧倒する。少女らしいフリルショーツと膨満感あるデカ尻の立体感が空を覆い尽くすのだ。満月が降ってくれば、きっとこんな光景なのだろう。
 そのあまりの威力に、俺もついぞ吹き飛ばされかけた、ところで。

 小娘巨尻メテオに、爆砕されてしまうのだ。