雨の中、傘に遮られていた視界に突然なにかが飛び込んだ。
「……?」
 ダンボール箱。そこに、「ご自由にどうぞ」の文字。中を覗き込んで、合点がいった。
「生きてる?」
 中には人がうずくまっていた。50センチほどの、小さな人影。男の子だった。
 もそっと影が動いて、弱々しい瞳がこちらを見上げた。捨て犬の目。まさに彼は、捨て犬だった。
 あの病が世界に広まって、世界が女性だけのものとなった時、もう男の子の使い道なんてペットしかない。当然、捨てられるのも一瞬のこと。
「た、助けてください……!」
 雨に打たれていれば、疲弊するのはもちろんのこと。ボクという女性を主人にできなければ、もう命が尽きるのは間違いなかった。
 ボクはしげしげと彼を見下ろした。男の子を飼ったことはない。だって、男の子だ。人間のくせに愚鈍で、そう、自分を人間だと錯覚する程度には愚鈍。まだ犬の方が賢い。メリットなんて一つもなかった。
「お願いです……。なんでもします。お願いします。お願い……」
 男にお似合いの貧相な語彙で、哀願を繰り返すばかり。でも無力さを痛感している分、まだマシなようだ。
 彼の首根っこを掴んで、ボクは首を傾げる。ミディアムショートの髪が、さらりと肩にかかった。

 女性から捨てられたのだから、女性に怯えるのは必然的。家に迎え入れられ、彼は隅の方ですっかり縮こまっていた。せっかく拾ってあげたというのに。でも、ボクは優しい人間だからこれしきのことでは怒らない。にっこりと微笑んでやった。
「とりあえずお風呂にでも入ろうか」
 ボクがいれてあげるよ、と声をかける。捨て犬の目は潤みがちにこちらの顔色を伺うと、この人は大丈夫なのかも知れない、と少し表情に光が差す。
 そして猫のように摘まれて、素直に風呂場へと連れていかれた。
 ボクはまずボロ切れのような服を剥ぎ取り、次いで自分の服をたくし上げた。足元で彼は戸惑っているらしい。以前の飼い主はわざわざ風呂を別々にしていたのだろうか? そういった扱いが重荷になって、彼を手放したのかも知れない。
 特段男の子に恥じ入る感性はボクにはないので、構わずぽいぽいと服を脱いでいく。子供でさえ女湯に入れるのに、なんで男の子相手に恥じる必要があるんだろう。膝のあたりでうろたえている小人を見下ろしながら、ボクは訝しんだ。
 まあ、彼には別様にボクが見えていたのかも知れない。風呂場に進ませてみて、そう思った。
 鏡に映ったボクらの姿はちょっと面白い光景だった。
 ボクだって若い女の子だから、すらりと体の線は滑らかだし、肌は一点のくすみもない。ボクの体つきには自信があったし、健康的な肉付きは十分に女性的で、胸の大きさだってそれなりのもの。対して、太ももの膨らみにさえ届かない彼の体は幼い男の子そのもので、美しさなど微塵もない。その三倍以上ある体格差は歴然としていて、ひまわりの側に生えた猫じゃらしのようなサイズ感だ。ボクたちにしてみれば桜の木を見上げるようなものだから、その威圧感や存在感はボクの想像よりずっと強烈なのだろう。その分、ボクのいわゆる女体美というものに圧倒されるのも、しかたないことかもしれなかった。
 膝に乗せて体を洗ってやりながらそんなことを思う。もちろん彼の貧相な性器は興奮していたけれど、いつまでも元気になられていても困るので手早く処理してしまう。幾分おとなしくなって一石二鳥だ。体が温まれば緊張もほぐれるので、風呂に浸かってしまうと、射精の疲れもあってか、ボクの胸にもたれ眠ってしまった。
 この頃、なんとなく物足りない気持ちが募っていたボクだから、飼ってみるのも悪くないか、そんな風に考え、胸元のそれに湯をかけてやった。

「さ、お食べ」
 冷蔵庫に残っていたケーキの残りをくれてやると、彼は嬉しそうにそれにありついた。空腹を通り越し飢餓状態の彼が、体に対して多すぎるほどのケーキ半切れを食べ終えるのにそう時間はかからない。満腹になり感謝の言葉をボクに述べながら、その頃にはすっかり懐いたそぶりを見せていた。
「そうだ、名前をきめなくちゃね」
 食器を片付けてボクはいう。そして、膝立ちになって彼のそばに近寄った。ボクの太ももの長さほどの小さな体を、ボクはにっこり笑って見下ろす。
 少し思案してみる。彼はボクに期待の眼差しを向けながら、新たな名前を心待ちにしている。そんな様にクスリと笑うと、
「ポチ、なんてどうかな?」
「……え?」
 唖然とする彼に、ボクは再度にっこりと微笑む。
「ポチ、うん、ぴったりだね。さ、ポチ、お返事は?」
 戸惑いながらも、ボクの笑顔に促されて彼は「は、はい」と答える。どう呼ばれようと、今までの扱いが彼を頷かせたようだ。
「じゃあポチ、きちんと誓いを立てなくちゃね」
 そう言って、彼の元へ膝立ちのまま歩み寄る。
 だんだん大きくなるボクの影。そして、ポチがすっかりその中に呑まれる。
 が、なおも笑んで近寄るボクに怪訝な表情を浮かべると、その顔は次の瞬間には苦悶へと変わっていた。
「ふふっ、ボクのおもちゃになってよ。ね、ポチ?」
 小人の頭をスカートの中に手繰り寄せ、ボクの股間に押し付ける。丁度いい高さにあったその顔は、すっぽりとショーツの中に埋もれてしまった。
「あれ、嫌なの? 嫌なわけないよね? ね、ポチ?」
 しばらく抵抗を試みるも、息苦しさにポチの意識が朦朧としてくる。
「ポチは誰のお陰で今生きてるのかな? ね、ポチが生きていけるのはボクのおかげ、そうだよね? でもボクがポチを飼うメリットなんてある? ボクは犬の方が好きだな。キミよりずっと可愛いし、賢いもの。キミはペットとしては犬以下だよ? だから、犬にできなくてキミにできることだけがポチのメリット。そのとおりでしょ? じゃあ、おもちゃ以外にポチの存在理由なんて、ないよね! 違う? 違う訳ない。そうでしょ? だってポチは何もできない。自力じゃ生きてもいけない。ボクの役にも立てない。唯一できるのは、奉仕だけ。当たり前だよね。ほら、お返事は? まさかお返事もできないの? 違うならこのまま、バイバイだよ?」
 擦り込むように擦り込むようにボクは言い聞かせる。なんでわざわざこんな当たり前のこと教えてやらなきゃいけないんだろう。ふがふが言うポチの動きが当たってちょっと気持ちいいから許してあげるけど、そうでなければとっくにポイだ。
 そろそろ生命の危機を感じたのか、ポチはコクコクとうなづいた。
 押さえつける手を少し緩めてやる。途端に深く息をすい込むと、スカートの影から目を白黒させてボクを見上げた。
「ほら、誓いのキス。これから仕える場所に、挨拶してね?」
 にっこり微笑みかける。ヒッと息を飲んだポチは、ボクの女の子の場所に再び顔を埋めた。自発的だけれど、再び顔を押し付けられる恐怖に屈したからだろう。男なんてこんなもの。
 ボクのふわふわとした股間の膨らみに、ポチが誓いを立てる。何度もそこに唇を寄せ、もう恐ろしい思いをしないようにと哀訴する。
 まあ、ボクにはもの足りないのだけれど。
 机の角でするように、ボクはポチの顔にあそこを押し付けた。いい具合の場所に当たるよう、しっかり頭を押し付ける。所詮ボクの腿にさえ劣るような小さな体で、ボクを満足させられる訳ないんだ。だったら、使ってやるほか利用価値はポチにはなかった。だんだん衣摺れの音が湿っぽくなっていく。ポチの顔が濡れ始め、泡が現れ始めた。
「アハッ! 嬉しいでしょポチ? ちょっとはボクの役に立ってるよ? 嬉しいね? これから毎日毎日こうしてあげる。それだけがポチの生きる意味だもん。勘違いしないでね。生きる理由も生きる糧もボクに与えられてるんだよ? ボクに使ってもらって初めてポチは生きるのを許されるんだよ? ボクに使われて嬉しい、それは当然のこと。ほら、嬉しいって言って? 幸せって言ってよポチ!」
 もうボクの蜜で顔全体を覆われたポチが、なんとか声を発しようとする。ボクのあそこに向かって、言葉を漏らしているらしい。
「聞こえないなあ」
「……しあ、幸せ、です……」
 少しのいとまを与えてやると、辛うじて彼はそんなことを絞り出す。
「アハッ! すっごく気持ち悪いよ♡ 今すぐ捨てちゃいたいくらい! でも許してあげる。ポチがボクにちゃんと使われるなら、飼ってあげるよ」
 そうして、ボクはその小さな体に何度も何度も契約を叩き込み、気絶するまで、彼はボクのおもちゃとして使われ続けた。

 ポチは精一杯務めを果たそうとした。それだけが生きていく道、だから、ものの見事にボクは彼を服従させることに成功した。
 でも、つまらない。
 だってたかが一匹、しかもボクが押し付けるだけじゃ、ほかのおもちゃを使うのと何も変わらない。
 たしかに、足にキスさせたり顔に座ってやったりするのは、ちょっと面白かった。お尻が大きいのを少し気にしていたけれど、今は少しよかったと思える。おっきなお尻で彼の体を飲み込み、股の間からみっともなく伸びた下半身を眺めるのはとても優越感を与えてくれる。お尻の肉でパツパツに張ったショーツに顔を押しつぶされ、とてつもない重量で下敷きにされるポチが哀れで哀れで仕方ない。それがとても嗜虐心を掻き立ててくれた。
 でも、その程度。
 もう少し、もう少し刺激が欲しい。
 ボクは、もう一匹飼ってみることにした。
「ま、名前はコロでいっかな。犬っころ。ちょうどいいね」
 新たに連れてこられた小人を前に、ポチは不安げな表情を浮かべた。飽きられ、捨てられるのではないかと思ったのだろう。にっこりとボクは微笑んでやる、
「今日からこの子と一緒にお仕事するんだよ」
 仲良くね、と言いそえる。協働しないと捨てられるのは自明だから、ポチとコロも互いを尊重せざるをえないだろう。それよりも、二人が見上げてくる、その光景がボクを満足させた。
 おもちゃが二つに増えたことで、ボクの一人遊びの幅も少しは広がった。
 例えば、裸で寝そべって、二匹をお腹の上に乗せる。すると二人は両方の乳房にしがみついて、甘噛みしたりこねくり回したりとそれなりの働きをしてくれるのだ。ボクはしばらくそれを眺める。自分と同じくらいの重みがある乳房の山に必死にまたがって、全身全霊で格闘する小人が二匹。たかがボクのおっぱいだというのに必死だ。そうするといじめてやりたくなって、乳首に二人の顔を押し付けてやったり、あそこに無理やり押し入れたりする。あるいは太ももの間に挟み付けて、顔だけを股間の前から出してやることもあった。そうすれば身動きが取れない中、唯一できるのは口での奉仕。そうして二匹の顔ごとマメをこねくり回したりする。
 二匹に足を舐めさせるというのは単純に気分がいい。一匹よりも、より確かな優越感があった。ボクの美しく圧倒的な肉体に下敷きにし、何気ない動きで悶絶させ、ボクの偉大さを叩き込む。男の節張って作りの悪い体の隣に立つだけで、自分の体が引き立てられるのもよかった。男はそんな動物だった。
 でもボクは男の愚鈍さを理解しきれていなかったのかもしれない。
 当然二人は折り合いをつけるものと思っていた。でも、それは思い違いだった。
 男は愚鈍で無意味な生き物だ。
 そのことをボクはついつい忘れてしまった。かつて鼻息荒く闘争と競争に高じた下等動物など理解できるわけがない。だから、二人が互いの上下関係を巡って争っているのを、最初ボクはさっぱり理解できなかった。
 どうしても個体差で大きさに多少の違いが出てしまうのは仕方ない。けれど、それが序列の物差しになってしまうなど、ボクには考えつきもしなかった。男は競争しなければ頽落するだけと本気で思っている、虫のような存在だ。戦争したり、格差を産んだり。小人たちは本質的に人類のガン。だから、ボクから見ればまさにどんぐりの背比べのような力の差で、相手に優越感を覚えようとしているようだった。
「ダメじゃないか、喧嘩しちゃ」
 ボクは腕を組んで座っていた。お説教の時間。でも、ボクの目の前に小人はいない。
「君たちはボクのペットなんだよ? なのに勝手に上下関係を作ったりイジメたり……。二人まとめて捨てられちゃいたいのかな? ボクは怒ってるんだよ」
 ボクは喋り続ける。不安定な椅子に座って。もちろんその椅子は、コロとポチ。二人の背はストッキングに包まれたボクのお尻で大きくたわんで、突っ張る腕は今にも折れそうだ。震えながら二人はボクの話を聞いている。それどころではないかもしれないけれど、お尻からきっとボクの声は嫌でも直接彼らに響いているはず。
「ねえ、ボクは怒ってるんだよ?」
 そして腰をひねって二人の方を見ようとした途端。
「キャッ!?」
 二人はあっけなく崩れ落ちた。ボクのお尻が、二人を下敷きにしてドスンと床に落ちる。
「イテテ……」
 手をついて身を起こす。お尻を浮かして見ると、二人はボクのお尻に押し潰されて伸されていた。
 もう、この大きさも飽きたかな。
 グリグリとお尻を動かしてみつつ、そんなことを思う。
 そしてまた、例の注射器を探す。
 そしてお目当てのものを手に取ると、二人の元へと戻る。ポチとコロはようやく立ち直り、どこか互いを哀れむように何事か話し合っていた。躾はうまくいったみたいだ。二人は愚鈍だから、調教するのが楽で助かる。ボクの足音に一つに飛び上がり、おそるおそるこちらを見上げるのもまた面白かった。
「良い子になったキミたちにご褒美をあげよう。ほら、おいで?」
 しゃがみこみ、犬を向かえるように腕を広げる。従順に近づく二人。けれど、ボクの手の中で光るものを見つけた時、悲鳴を飲み込んで一目散に走り出した。
「ダメな子たちだね、ご主人様がご褒美をあげるって言ってるんだよ? ありがたく頂くのが役目じゃないか」
 立ち上がりながらボクは言う。部屋から出ようとする二人。でもノロマなペットが、逃げられるわけない。わざと大きく足音を立てて二人の後を歩く。足を振り下ろすたびに跳ね飛ばされそうになるのが楽しい。そして、一方の背中を蹴飛ばし、もう一方をまるごと蹴倒した。
「ダメじゃないか逃げちゃ。そんなの無礼だよ? ふふっ、でもボクは優しいから許してあげる。さ、約束のご褒美だよ!」
 黒くすべすべのストッキングで背中を踏みにじりながら、ボクは言う。でも、往生際の悪いのが男というもの。蹴飛ばされて丸まっていたポチが這いずり尚も距離を取ろうとする。
「そんな風に背中見せて、誘ってるのかな?」
 コロの上に馬乗りになりながら、手でポチの背中を押し倒す。グエッと息を押し出され虫のようにもがくポチ。そんなか弱い背中を、嬉々としてボクは地面に押し付けた。注射器を掲げて、勢いよく突き立てる。つんざく悲鳴。その声に合わせて、縮小剤を注入する。中身を、全部。
「アハッ♡ これでキミはもっとボクのおもちゃになれるね。幸せでしょ? そうだよね? 言ってごらん?」
 絶叫に声を枯らしゼエゼエと息を吐きながら、優しい声に威圧されたポチは口をパクパクと動かす。
「……し、幸せ、です……」
「へー。本当に豚みたいみたい。無理やり縮められて感謝するなんて。さすがポチだね」
 クスクス笑いながらボクはそう口にする。そして、今度はコロの番。徐々に縮み出した同胞に蒼白となって、もう力なくもがくことしかできない。股の間にいるそんな彼の目前で、もう一つ隠しておいた注射器を振ってみせる。
「ほら、目の前でお友達が縮められてってるの、見える? ポチは一足先にもっと良いボクのおもちゃにされてってるんだよ? いいの? キミはこれでどうされたい?」
 笑いを滲ませながらボクは囁く。哀れな犬は呆けたように同胞と注射器を見て、
「ぼっ、僕も……、縮めて、くだ、さ、い……」
「うんうん、そうだよ、ねっ!」
 台本通りに言えた彼に、ボクはすぐさま針を突き立てる。
 そして縮み行く二人を膝に乗せ、ぎゅうっと体全体で包み込んでやった。まるで体を押し縮めるように。二人はボクの巨体に囲まれ、自由を奪われ、ボクの力によって縮小させられているように感じたはず。圧倒的なボクの下腹部や太もも、腕に押し潰されて、徐々に膨らんで行くボクの肉体を感じ、骨の髄までボクの大きさと自分の矮小さを感じる。それはきっと倒錯的な服従感を覚えさせたことだろう。のしかかる腕はどんどん重くなり、ボクの血流や心音、体熱は容赦なく体の中に流れ込んでくる。ボクの香りで息をし、大きさを奪われて行く恐怖の中、ただボクの嘲笑だけを聞かされるのだから、服従させられないわけがない。ボクはさらなる絶対的な優位を楽しんだ。楽しくないわけがない。愉快に黒いつま先を振って二人の縮小の完了を待つ。けれど溶ける氷のように儚くなっていく二人の体は、だんだんいるのかも心もとない軽さになって、腕を支えるのは彼らでなくボク自身の体になっていった。
 十分後、ついに彼らの感触がなくなると、ボクは腕をひらいてみる。
「……♪」
 そこには、もうネズミ以下、消しゴムよりも小さく見える二匹が転がっていた。膨大なボクの質量と熱量にさらされ続けすっかり疲弊している。丘陵のようにうねるボクのスカートにギョッとして、弱々しく目をこちらに転じた。にこりとするボクをはるか上空に見出し、恐れをなしたのか互いを抱いて震えだす。
 ボクは二人まとめて両手ですくい上げ、一つの手のひらの上に乗せる。
「ふふっ、もう人間とは到底思えない大きさだね? ボクが同じ存在だって、もうキミたちは信じられない。当然だよね? だって何十倍もボクのほうがおおきいんだもん。もうキミ達自身、最初の十分の一くらいになってるんじゃないかな? どうだい、ボクの手のひらは。ベッドよりもお部屋よりも大きいね。ボクがどんなふうに見えるかな? 顔だけで五メートルも六メートルもあるように見える? でもボクは小さな女の子なんだよ? ボクが大きいんじゃない。キミたちがゴミのように小さいだけ。わかる? キミたちはね、排水溝にさえ落ちちゃうような大きさなんだよ。ボクの喉だって滑り台のように落ちていける。本当に本当に矮小で、ゴキブリみたいな大きさなんだよ?」
 ボクは笑いをこらえきれずに言い放つ。なんて痛快なんだろう。昔生まれていれば、ボクが見上げなきゃいけなかった二人、それが今ボクの掌にすっぽり入っている。ボクの服の、膨らんだ胸元を前にすればその小ささはより際立った。見下ろせば、ボクの胸よりも、太ももよりも、つま先よりも、指よりも小さな虫が二匹。スプーンにさえ乗りそうな小虫にしてやった愉快さは、ボクの胸の中で膨れ上がっていく。これならもっと面白いことができる。もっと彼らをボクでいっぱいにしてやれる。胸が高鳴らないわけがなかった。
「これはもういらないね」
 二人にかつて住んでいた箱を見せつけ、おもいっきり踏み潰す。派手な音を立てて破壊される二人のカゴ。ボクの足では収まらないだけの大きさがあるカゴなんて、彼らにもったいないのは当たり前だ。もう体育館よりも、スタジアムよりも彼らには大きい箱。それが少女の足であっけなく壊されていくのを見たとき、彼らはボクの力を思い知ったようだった。
「ふふっ、巨人だったキミ達の家も、もっとずっと大きなボクの足ですっかりゴミの山だ。そんなゴミムシたちにも、新しいねぐらがいるかな? そうだね、これでいいかな……」
 彼らを手の中に握りこむと、ボクは腰元に手をやり、屈み込む。親指をストッキングの縁に滑り込ませると、スルスルとそれをずり下げて行った。身につけていた伸縮性ある布が縮んでいく。ぴっちり肌に密着していたせいで、ボクの湿気や香りでしっとりしていた。太ももが外気に触れて気持ちいい。そして、素足が引き抜かれると、少しくたびれた第二のボクの肌が手の中にあった。
「さ、新しいおうちに案内するよ」
 ボクは脱いだばかりのストッキングの中へ彼らを放り込んだ。ストンと中に落ちて行った二人は、ボクの股間を包んでいたところに跳ね飛ばされて二手に分かれ、さっきまでつま先があったところに墜落する。あまりにも軽すぎてストッキングは特段伸びるわけでなく、わずかに揺れるだけだ。薄い黒ストッキングの生地が透けて、ぴっちり包まれた彼らの姿がよく見える。急速に熱を失っていくその下着は、雰囲気をどんどん服から洗濯物へと変えていく。それはポチたちが一番感じているはずだ。さっきまでボクに履かれていた下着なのだと言うことを、生々しく感じている。つま先のちょっぴり湿ったところにいるのだから、洗濯物の中にいる気分はより惨めだろう。
「ふう、飼い主の務めを果たしてボクは眠いよ。キミたちはそのままおやすみ。ボクはお風呂に入ってくるから」
 ストッキングをハンガーで吊るす。みっともなく下着の中でぶら下げられた二匹が、絶望的な顔でこちらを見上げていた。

 朝までたっぷり睡眠をとったボクは、食事を終えくつろいだ後、ポチたちの存在を忘れているのに気づいた。
「エサをあげないとね」
 運んできたストッキングをひっくり返して、ポチたちをテーブルの上に放り出す。クラクラと目を回した二人は、巨大なボクの影に気づくとヒッと怯えてこっちを見上げた。いつも通りの優しい微笑みが、彼らに恐怖を与える。
 どうしてあげよう。ふつうに餌付けしてはつまらない。寝間着のまま、ボクはじっと彼らを見下ろす。
 ああ、そういえば。
 今はブラをしてなかったっけと思って、寝間着のTシャツごと、胸を下から支えてみる。柔らかな生地越しに、生の乳房が手のひらにずしりと広がった。少し手で転がしてみる。まずまずの柔らかさと弾力。
「ま、大丈夫かな」
 呟くとボクはいっぺんにシャツをたくし上げた。突然現れて揺れる乳房にポチたちがキョトンと目を丸くするけれど、そんなこと御構い無しにプハッとボクはシャツから頭を引き抜いた。そして椅子に座ると、彼らの正面にボクの裸の上半身がそびえ立つ。頭上に突き出したボクの胸は、さぞかし威圧的だろう。そう思うと悪戯してやりたくなって、ドンッ!と胸をテーブルに置いて見せた。
「ふふ、こうしてみるとますますちっちゃく見えるね。ボクのおっぱいの半分以下のペットたち。まるで虫みたいだ。だってそうだよね? きっとボクの乳首でさえ持ち上げられないチビなんだもの、虫も同然だ。キミたちからは4メートルも5メートルもあるようなボクの胸に、特別に招待してあげよう」
 胡椒の小瓶より小さな二人を見おろすと、ボクは卓上のジャムを取り出す。そして敏腕傾け、少しだけ両胸の上に垂らしてみせた。冷たい感触。ゆっくり乳輪を覆うように、イチゴのジャムが垂れて広がる。そして乳首にツヤを与えると、困惑する二人の顔をそこに映し出した。
「言わなくても、わかるよね?」
 ニコニコしながらボクは言う。よく躾けられた二匹は、言い終わるより先にボクの二つの先端へと歩み寄る。そして犬のようにチロチロとその先を舐め始めた。
「アハッ! キミたち本当に犬みたいだね! 自分で進んでボクの乳首に顔くっつけてさ、それがキミたちの餌の食べ方なんだ? キミたちの頭とボクの乳首、そんなに大きさは変わらないんじゃないかな。おっきなボクのおっぱいの、ほんの先っぽを舐めさせられる気分はどうかな? 嬉しい? 惨め? どっちにしても、キミたちホントに気持ち悪い♡ ボクからみたらキミたちなんて芋虫みたいなものだもの。でもボクは優しいからね、ちゃんと餌もあげるしスキンシップもさせてあげるよ。ほら、綺麗に掃除してよね」
 二匹の様は面白くてしょうがなかった。ボクの手のひらからも余るような乳房の陰に隠れて、二匹が必死に乳首を舐め回している。同じ人間の、女の子の乳首を! 昔は女性より大きくて強かったかもしれないけれど、もうオスなんてこの世にはいらない。好きなだけ縮められて、こうしてペット以下の扱いだ。女性抜きではもう何もできない。女性に逆らうことなんてできるはずもない。ボクはこれらの持ち主だ。踏み潰したって飲み込んだって、なんだってしていい。そう思うと本当に愉快だった。
 頬杖をついてペットの食事を見守る。少しずつジャムの色は薄くなっていって、地肌が見え始めた。そうしてしばらくして、あらかた二人がボクの乳首掃除を終える。待たされたボクは退屈そうにウエットティッシュで胸を綺麗に拭き取り、二人の体も無理やり拭いた。それから二匹に、ボクの胸をもう一度丁寧に拭かせる。
 大きなボクの乳首をせっせと二人は洗う。バスケットボール大に見えているのだろう。きっとその桃色の肉は巨大で、生々しくて、淫靡に見えているはず。そう思うと不思議と紅葉してきて、思わず胸の先が熱くなる。乳首が少し膨張してしまう。赤みと弾力を増したそれに気づいて二人がボクを見上げた。バカな子。逆効果なのに。
 ボクは少し腰を浮かして、彼らの上に覆いかぶさった。乳房が釣り鐘のように、彼らの上へぶら下がる。二人は気球のような胸の下だ。そしてボクは微笑むと、ゆっくり体を下ろしていった。胸の先が小人に触れる、と思った瞬間にはすっかり彼らにのしかかり、地面へと押し倒していた。二人はもう完全に動けない。けれどなおもボクのおっぱいは伸び広がって、接地する円を広げていく。
 ピクピクと動こうとする小人の意思を感じる。そんなバカな小虫に絶望感を与えるように、ボクは地面へ乳房を練り込むように体を揺すってみせた。それは、水のいっぱいに詰まった気球に転がされているようなもの。もがく二人の苦しみが乳首ごしに伝わってくる。乳首を抱き抱えて二人は押し潰されているのだ。のしかかる莫大な質量はとてもではないけど太刀打ちできない。彼らは全身くまなく乳房の地肌に包まれる。それが同じ人間のものだと、認識できるのだろうか。こんな小さな女の子のものだと。
「そうだ……♪」
 ボクは良いことを思いつく。そして乳房を浮かすと、乳輪に張り付いていた二匹もボトッと音を立てて剥がれた。大の字に気絶しかけの二人。そんな彼らの手足に、手頃な糸を結びつける。両手両足に一本ずつ。そしてそれらを結び合わせる。
「……できた!」
 それは、小人でできたブラジャーだった。片手片足同士を糸でつながれあい、ボクが糸をピンと伸ばすと大の字が二つ。そして、ボクはそのブラを装着する。巨大な半球の、その頂点へ押し当てられる小人たち。その体は、せいぜい乳輪を隠しきれるかどうかというところ。マイクロビキニにさえなりはしない。ボクが背中で紐を結わえると、二匹はボクのおっぱいに張り付く形になる。乳首に腹を貫かれ、抱き込むように乳輪に添えられる二人。そしてボクが手を離すと、巨大な乳房の重量を一身に受けることになる。小人たちが悲鳴をあげた。当然だ。まさにボクのおっぱいは気球大。いくらゆるく結んだとしても、そんなデカブツにのしかかられたならどうなることやら。
 でも、ボクはそんなこと構わない。ゆっくり歩いて、鏡へと近寄る。一歩進むたび、ゆさっと揺れるボクの胸。浮き上がった乳房が、次の瞬間には小人の上へ墜落する。二人の体はその都度おっぱいの中にめり込んで、悲鳴を上げることさえ許さらない。
「ほらほら見てよ。キミたちボクのブラにさせられてるんだよ? 絆創膏みたいに仲良く貼り付けられて、かわいそうだねー。アハッ! 女の子のおっぱいは重いかな? ボクのエッチなピンク色に包まれて幸せでしょ? 乳首を全身で抱きかかえて、おっぱいの重さを全身で感じて、幸せ、そうだよね? うんうん、幸せ過ぎて声も出ないね。ボクはちっこいのが乳首にあたって、少しくすぐったいかな。汚い虫にくっつかれてやっぱ気持ち悪い♡ でもいいよ、許して上げる。ボクは優しいからね。さ、散歩、行こうよ」
 そうボクは笑った。
 
 しばらくボクはそんな遊び方をしていた。でも、やっぱり飽きはだんだん回ってくる。せっかくのおもちゃだから、より良い遊びをかんがえないのは損というもの。ここが考え所だった。
「あ、あのっ」
 コロがボクを呼びかける。
「なに?」
 足元の石のような小人を、つま先で小突きながらいつものようににっこり笑う。正直なんて言っているかわからないけれど、小人たちの欲求など知れている。
「そうだね、エサ、まだだったね」
 ボクは優しく言ってやると、二人を拾い集め、風呂場へ向かった。
 なぜ風呂場? 
 二匹が訝しむ。そして脱ぎ始めるボクをみて、さらに不安を募らせているようだ。
 すっかり裸体になってしまうと、ボクはバスマットの上に座った。そして、小虫館をそばに下ろす。
「まっててね」
 ボクはあひる座りになって、太もも同士を押し付けた。スッと伸びた脚が、彼らの横にまっすぐ横たわる。小人よりもずっと長く大きくて、重い脚。そう思うだけで、優越感が沸き起こる。
 訝しみながらも、飢えた二人はそわそわと趨勢を見守っていた。そしてボクが桃の缶詰を取り出すと、パッと目を輝かす。喉も渇いて、お腹が痛いほどに空腹のはず。ボクの太ももに取り付い早く早くと待つ様は、まるで尻尾を振るようだった。
 ボクは優しく笑う。それから、缶を傾けた。もちろん甘いシロップは溢れ出した。滝のようなその液体は、ボクの脚の上にたっぷりと注がれる。おまけに小さな桃のかけらがなだれ落ちて、バシャバシャと水しぶきを上げた。隙間なくほんの少しの量、でも、二人に十分過ぎる量。甘いシロップはボクの肌に弾かれコロコロと水滴をつけながらも脚を濡らし、つるりと輝かせる。呆然とボクの腿を見上げる二人に、再びボクはにっこり笑いかけた。
「さ、エサの時間だよ」
 隙間なくくっ付き合う腿や股は少しもそのスープを漏らさない。目の前に鎮座するボクの脚が、肌でできた器になった。
「要らないのかな?」
 ボクの笑顔に威圧されたコロとポチは、弾かれたように脚の上へよじ登り始めた。でも、丸く大きなボクの脚はその手を弾き返し、たっぷりと広がる腿肉は柔らかくたわんで簡単には侵入を許さない。ふくらはぎでさえ彼ら は見上げるしかなく、ただ呆然とボクの体を前に立ち尽くしていた。一人の力では、横たわるボクの脚にも敵わない。それにに気づくと、コロがポチを押し上げ、なんとか登ったポチがコロを引き上げた。ようやく登頂した二人。そして右腿と左腿にそれぞれ陣取ると、ボクの泉の中へ頭を突っ込んだ。
 クスクスと思わず笑みが漏れてしまう。巨大なボクの体に乗る二人は、小さな人形のようだ。そして不安定な肉の地面に戸惑いながら、ボクの股に顔を突っ込んでいる。小人はそこに手を突っ込んで桃の欠片を取り、それがどこに入っていたかも忘れて頬張る。僕の笑いによって水面が波立ち、グネグネと揺らぐ太ももの大地に彼らは翻弄される。そしてつるりと足を滑らせると、一人がシロップの池へ落ちてしまった。もちろん助けたりなんてしない。後ろに手をついたままゆっくり彼の姿を見下ろしていた。
「ほらほら、何をしているんだい? もしかして溺れてるのかな? ボクのお股で? 死にかけてるの? へえ、女の子のお股で溺れたりして、恥ずかしくないのかな? ボクは嫌だなあ、そんなところで犬みたいにご飯食べさせられて、うっかり転んで溺れ死ぬなんてさ。ここからだとね、池に落ちた虫みたいですっごく気持ち悪い♡ キミも友達を助けようと必死だね? ボクの体の上で二人とも大変だ。でもわかってるかな、そこはボクの太ももと股間で、 裸のボクに笑われながら死にかけてるんだよ? アハッ、二人とも落ちちゃった! コップ一杯もないのにキミたちは死ねちゃうんだね。ほんっとうに情けないクズ虫だ。ほら、そこからは何が見える? 周囲はボクの太ももが土手のように囲んでいるね。目の前にはボクのあそこが大写し。そしてお腹が伸びてって、ボクのおっぱいに見下ろされて、キミたちに影を落としてる。ボクはどんなにおっきく見えてるんだろうね。あ、もしかして、キミたちみたいなちっさいゴミ虫ならボクのお股で死んでも恥ずかしく。ないのかな?」
小人二人を股の窪みに閉じ込めるのはとても愉快だった。もうシロップは温もりきって、興奮したボクの体熱は早くもそれを蒸発させ始めている。けれどその程度の液体でさえ彼らにとっては深い池で、もがいてももがいても脱出できない牢獄のようだ。虫のように彼らはボクの太ももに腕を伸ばす。けれど、濡れたボクの肌は掴むことも登ることもできずにそり立って、彼らに絶望を与えるだけだ。プールサイドに登るだけでもあれだけ大変なのだから、まして丸く柔らかな肉の崖を前にしては、己の非力さを噛みしめるばかりのはず。きっとこのままおしっこでもしてしまえば、彼らはあっという間に洪水に巻き込まれて溺れてしまうに違いない。いつか飽きたら、そうしてみようか。
 このまま死んでしまってもつまらないので、少し腿に隙間を作ってやる。漏れたシロップが排尿音に似た音を響かせると、少しずつ水位が低下していった。三角形の水たまりがどんどんすぼまりボクの秘部が水面に顔をのぞかせる。そしてボロボロになった二人が立てるようにすると、再び奉仕をボクは命じた。
「キレイに舐めとってね? ベタベタするのは嫌だよ。ふふ、まだ体洗ってないからどんな味がしても知らないよ」
 有無言わさない態度。二人は犬のようにかがみこんで足元の蜜を舐め始める。知らなかった。二人を巨大な太ももで挟んで、大きな股に奉仕させるのはこんなに気持ちがいいんだ。他のどんな動物より賢いはずの人間二人に、虫以下の所業を言葉で命じる、それがとっても痛快。おまけに二人の動きはぎこちなくて、逡巡や戸惑い、恥辱がよく伝わってくる。山のような太ももの表面を必死に舐め回し、腿肉同士がぶつかり沈み込んでいく境目に口をつけてすすっている。乾き始めた砂糖水でテラテラ輝くボクの太ももに跪いて、二人はなんとかこの時間を終わらせたいらしい。けれどまだダメ。二人の仕事はまだまだ終わらない。
「ダメじゃないか、ちゃんと隅々までお掃除しなきゃ、さ!」
 ボクはトントン、と自分のあそこを指し示してみせる。もう嫌という程ボクに使われてた二人はわかってたはずだ。でも、やっぱり言われないとやりたくないらしい。いや、言って欲しいのかも? なら、お望み通り言ってやるだけのこと。
「早くしてね? 早く、犬のようにしゃぶって、虫のように這いずっって、そのちっちゃい舌でボクのクリをお掃除するんだ。キミたちはこんなに矮小だから当然だよね? 嬉しいかい? 嬉しいよね。ね、ポチ、言ってごらん?」
 突然名を呼ばれたポチが、おどおどとボクを見上げる。
「う、嬉しいです」
「えー何がー?」
「 シズク様の、あ、あそこを舐めさせられるのが、う、嬉しい、です……」
「アハッ、きっもちわるーい♡ そうなんだそうなんだ、キミたちみたいな小虫はボクの汚いところを掃除させられるのが大好きなんだー。へー。なら、特別にじっくり掃除させてあげるね」
 ボクは満足そうに二人を見下ろして、その奉仕を見守った。土下座して額を寄せ合うように、二人がボクのあそこに屈み込む。そしてシロップがべったりまとわりついたそこに、口をつけ始めた。
「……んっ」
 敏感なところに伝わる微細な感覚。それが二つ同時に伝わってくれば、感じずにはいられない。思わず腿に力を入れてしまうと、挟まれた二人がネズミみたいな悲鳴をあげた。でも、絶対に奉仕はやめさせない。ボクの太ももに埋もれながらも二人はボクのあそこを舐め続けて、マメの表面や溝、その下のヒダを丁寧に丁寧に接吻していく。一人では物足りない感触も、二人ならそれなりだ。じわじわと快感が寄せては返し、まるで生殺し。思わず手が出そうになる。
「気持ちいいかも……。ぁ……、ッ、んんっ!」切なさに耐えきれず、ボクは後ろに倒れこんだ。胸を両手で鷲掴みにして、揉みしだく。疼きのせいで、絞り出るように喉から喘ぎが漏れ、快感が溜まって腰は当て所なくくねった。すり寄せる太ももの波に乗れて、さぞかし二人は大変なことだろう。なんてったって数十倍の巨人に脚で挟まれ、一番柔らかいところで揉まれているのだから。陰部に捕まりなんとか流されまいとしている。だからボクはどんどん気持ちよくなる。乳首をクリクリつまんで、捻って、もう肌の表面まで性感がにじみ出てきた。お湯がだんだん沸騰するように切ない気持ちよさが滾ってきて、耐えられず思いっきり乳首を押しつぶした、その瞬間。
「ッー〜〜!!」
 吹きこぼれた蜜が、下腹部から膣を通って出て行く感覚。そして潮が勢いよく吹き出すと、乗っかっていた小人もろとも快感を噴火させた。寄せた太もものくぼみへそれは流れだし、ペット二匹に降り注ぐ。
「ャああッ!!」
 吐き出される嬌声。そして荒い息で胸のくすぶる切なさを吐き出すと、後は静かに体を弛緩させる。お股の方で水音がした。絶頂と排泄感に放心するボクには知られず、ペット二匹が潮に溺れ、もがいていたようだった。


 ポチたちと違ってボクは社会の中に生きる人間だ。だからもちろん、外出しなければならないことは多い。
 ストッキングの中の二匹にボクは語りかける。
「今日ボクはお出かけしなくちゃいけないんだ。キミたちはそこにいてもいいんだけれど、飼い主としては心配だからね、連れて行ってあげるよ」
 不安げに顔を見合わせる二匹。なにかを問いかけてきたが、よく聞こえなかったし聞く必要もないので、特に意に介さない。
「さ、支度をしようか」
 そしておもむろに服を脱ぎ出すボク。着替えるため下着姿にならなければならない。唐突に現れた少女の下着姿に、彼らは少し落ち着きをなくす。黒のレースがあしらわれた下着はとても女性的なものだから、ペットにはまだまだ刺激が強すぎたのかもしれない。
 ボクはストッキングから二匹を取り出す。そして下着姿のまま椅子の上に座った。
「ボクはとてもペット思いな飼い主、そうだよね?」
 唐突な問いかけに、「は、はい」とか細く二人の肯定の声が聞こえてくる。
「それにポチとコロは脆い小虫、バッグの中にもポケットの中にも入れるわけにはいかない。当然だよね」
 二人はおずおずと頷いた。ボクはにっこりと笑う。
「だから、肌身離さずキミたちを連れて行くしかない、ね?」
 そして次の瞬間、二人はボクの舌に押し倒されていた。全身を舐め回し、ボクはなるべくたくさんの唾液を二人に絡める。突然自分の数倍はある粘膜の塊にのしかかられて、二人はまさに蟻のようにもがいた。そしてなんの甲斐もなくボクのよだれでべっとりになると、息も絶え絶えにボクの手の上で這いずっていた。
 ボクはショーツをずり下げる。そして二人をあそこの前に転がした。舌に蹂躙され、二人は理解が追いついていない。
 嗜虐で既に濡れ始めていたボクのあそこは、指を難なく受け入れ、こじ開けられると肉の洞窟の中を見せた。ポチをそこへ乗せる。彼より大きなボクのスジ。その中へ強引にポチを指で押し込む。訳も分からぬままがむしゃらに抵抗するが、汚い水音を立てすぐに小人は飲み込まれてしまった。
「ッ! ……ふぅ。ほらコロッ、ッ、立って……!」
 膣内で蠢く虫の感触がボクを貫く。なんとか喘ぎを飲み込んで、ボクは命じた。
 逃げられないことなど百も承知、もはや観念しつつ震えるコロは、泣きべそをかきながら立ち尽くした。そんな彼を、巨人の臀部の影が覆い尽くす。ボクは腰を浮かせて狙いを定めた。比較を絶して巨大なボクのお尻を、コロは震撼して見上げるばかりだ。陰った双丘とその割れ目が、天を覆う。刹那、地震のような衝撃が響き、彼が立っていた場所は月のような臀部が墜落していた。
「ひぎッ?!」
 肛門をおもいっきり貫かれ、視界の明滅する中ボクは悲鳴をあげた。コロの頭が入り込んだのだ。悶えそうになるのをぐっとこらえる。お尻の間に異物が挟まった感触が、具合が悪い。指をお尻の谷間に沿わせ、ハマりかけのコロを押し込んだ。ヌプッと音を立て、唾液に纏われたコロが入って行く。ワナワナ震えながら、もうひと押し。コロはどんな気分なのだろうか。自分の家よりも大きな臀部のあいだに挟まれ、もっとも汚いところへ挿入されるコロの気持ちは。ボクにはわからない。ただ、どうしようもなく気持ちいいことだけが確かだった。お尻の穴で小人を飲み込むたび、その凹凸が肛門をこするのが、もう、すごい。言葉にならない。そして丸呑みにしてしまうと、刺激に慣れないままショーツを履き、スパッツで小人を二つの性器の中に閉じ込めた。喘ぎそうになる呼吸をなんとか取り繕い、外出用の服に着替える。そして、震える足どりで外に出たのだった。
「これ、ッ、ちょっと、やばい、かも、ッ!!」
 挙動不審にならないよう歯を食いしばりながら歩いて行く。刺激を抑えるため極力ゆっくり、でも、もがき苦しむ小人の必死の抵抗があまりに快感を与えるものだから、膝が笑いそうになる。駅までの道のりが果てしなく遠い。まるで長距離走ったかのような荒く湿った息遣いを繰り返しながら、ボクは進んでいった。まだ人通りは少ない。男が街から消えたこの世界に、街行く人影は女性ばかりだ。ボクもその中に混じり、秘部に男の小人を咥え込みながら、駅への道を進んでいった。
 汗を垂らしながらも、ボクはハタから怪しまれることのないようにプラットホームへ辿り着くのに成功した。息を整える余裕さえ出てくる。小人ごときに負けるボクではない。うまくことを運んでいった。
 座席に着くまでは。
 滑り込んできた電車に、いつものように乗りこむ。当然、電車は全て女性専用車だ。もはや痴漢も働けず人間として視線を気にする必要もないから、特別乗車は制限されていない。男を乗車させる場合は犬用のカゴに入れたり、膝に乗せたり、女性の脚の間で立ちつくさせたり。……ナカに挿れてるのはボクぐらいだけれど。
 そして手頃な席に腰を下ろした。
 途端。
「ッ??!!」
 無防備な気持ちの隙間に稲妻が走って、悲鳴が破裂しそうになる。お尻を座席に落とした衝撃でふかく挿入されたコロの頭が、敏感なところに当たったようだった。口を押さえて思わず体を丸める。もちろん性感にきゅんきゅんあそこは疼いて強く締め付けるものだから、小虫たちは大騒ぎだ。その小さな叫び声さえヒダやお尻の穴を刺激して、それが余計に疼きを溜めてしまう。もう涙が滲んで、震えるほかない。
「大丈夫ですか……?」
 あたりにいた人が心配そうにこちらを伺う。二人が両隣に座って、優しく背中を撫でてくれた。
「大丈夫です、ッ。ちょっと目眩がしただけッ、ですか、ら……ッ!」
 息も絶え絶えに言うけれど、瞳を潤ませ頰を赤くしているボクの言葉に説得力など微塵もない。車酔いしたようにうずくまるボクは、ますます心配を買うだけだった。ビクビクと身をくねらせそうになるボクを気遣い、手を握り、背をさすり続ける二人。気持ちいい感覚は爆発しそうで、ショーツはもうびしょ濡れ、スパッツが滲まないかだけが心配だった。小人たちの蠢きは決壊しそうなボクの性感帯を刺激するばかり。次で降りよう、次で降りようとひたすら唱えながら、朦朧と快楽にふけるボクは本当に不埒ものだった。
「大丈夫です、本当に、ッ、大丈夫ですから、〜〜!!」
 ボクは必死で二人に言う。救急車でも呼ばれたら大変だ。ふうふうと息は熱く湿って、苦しく喘ぎを繰り返す。ここにいる誰も、まさかボクが小人を仕込んでいることなど思いもよらない。誰にも知られず、ボクの肉の牢獄に閉じ込められた二人は、蠢動する性器の襞に舐めまわされ、撫でくりまわされ、締め付けられながら、ひたすら巨大なボクに畏怖と恐怖を寄せているのだろう。互いの悲鳴は届いているだろうか。きっと、分厚いボクの肉の壁に遮られ、ごうごうと響くボクの血流と喘ぎだけが耳を犯しているに違いない。巨大洞窟の奥深くにはまりこみ、前へも後ろへも進めない二人。愛液と腸液と唾液にまみれ、無限にも思えるボクの肉体の外へ出よう出ようと動き続ける。その度ボクの体は強烈な力で二人を締め上げ、気絶しそうな意識をがむしゃらな足掻きでなんとか保ち続ける。外からわずかに漏れ聞こえるのは、ボクとボク以外の女性の声、そしてボクのお尻の下から伝わってくるじょせいのための電車の音。もう世界は男というペットには少しも優しくない。その事実が、少女の小さな小さな性器に握りつぶされることでひしひしと伝わってくる。
 苦悶の二匹と享楽のボク。主従を乗せて、果てしなく電車は走って行く。善良な女の人二人をなんとかなだめてボクが降りるまで、何度絶頂に至りそうになったかなど、数え切れようもなかった。


 それから。
「はぁ、ひぐッ、〜〜ッ!!」
 日課と化したシツケに、ボクの毎日は充実していった。可愛らしいショーツをびしょびしょにし、豊満な胸に小人を奉仕させ、前の穴も後ろの穴も小人で埋める日々。
「ッ、……はぁぁ……。ふふっ、キミたちも、仲間が増えて、嬉しいよね?」
 ニーソックスに挟んだ小人を引っ張る。と、小人に結わえられた紐はお尻の方へつながっていて、それを抜くと、ツプリ、ツプリ、と、数人の小人が穴から引き出されていった。そしてボクの体液でまみれた小人が何人もぶら下がる。それを見てボクはにっこり笑った。
 新たに何匹かの小人を拾って、ボクはさらなる遊びを楽しんでいた。もう、十数匹はくだらない。数珠つなぎに男をつなぎ、端にもう一人をつないでできた、バイブ兼アナルビーズ。ニーソックスに閉じ込めた小人が内腿を叩き、無理やりアナルに挿入された四、五人の小人が性感帯にぶつかり続ける。気持ちよくないわけがない。四、五人いれば、彼らにとってはガスタンクにも思えるボクのおっぱいだって奉仕させることができる。口に咥えると、さらに興奮は高まった。舌で飴のように転がし、口内に反響する悲鳴が喉元をくすぐる。イきそうになるのをぐっと堪えれば、ジタバタみっともなく非力な抵抗を舌に感じて、優越感を増大させてくれた。もちろん、前の穴に数人入れるのも忘れない。太ももに服従を誓わせ、足指に挟み、体の上に無数の小人をちりばめる。もはや降りることも抗うこともできず、振り落とされまいとボクの体に捕まる虫ども。世界に微塵も必要とされなくなった男を使ってあげるだけ、ボクは慈悲深い。ボクは男をいつでも捨てることができるし、その気になればこのままトイレに座って、前や後ろから排泄してしまうこともできる。ペットたちもそれをわかっているから、気に入られよう気に入られようと競うようにボクに奉仕した。もう名前をつけるなんて面倒なことはしない。どれがポチかももうわからないし、大きさもまちまちで、何匹いるかさえ知りはしなかった。米粒のようになった男どもをあそこの中に注ぎ込んで、指でかき混ぜたこともある。その時、何人か死んでしまったかもわからない。指であらかた搔き出したあと、一匹に中へ潜らせて確かめさせてはみたけれど、ヒダの間に隠れて見えなかった可能性も十分高かった。髪の毛や陰毛の中に隠れる小人たち。唇に張り付き、大陰唇に食べられた男ども。ボクの体は山脈のようで、女神のようで、乳房一つとっても富士山と変わらないかもしれない。ストッキングのつま先には小人が玉になってしまわれている。時折小人を拾ってくれば、あまりに小さな同胞に目を丸くしたその背後に針を突き立てた。少しずつ少しずつ縮め、無力感とボクの女体美、崇高さを叩き込むのがとても気持ちいい。
 もうやめられるわけがなかった。それでいい。
 なんて言ったって、男など掃いて捨てるほどこの世にいるのだから。