この作品はサイズフェチの方向けの小説です。サイズフェチ以外の方が読まれると、気分を害される可能性がありますのでご注意ください。
また、この作品は若干の性的表現を含みます。



千井崎高校小話集『女子のぼり』

作:夏瀬 頼重


「おしッ!」
白いハチマキを締めなおすと、オレは自分に気合を入れた。
周りの連中も顔を強ばらせながら、次の戦いへの闘志を燃やしている。高揚と緊張を抑えられないのはみんな同じのようだ。
さながら戦場に出向く騎士のように威風堂々と校庭に繰り出す。
グラウンドには大勢の観客。カラッと晴れた秋空に涼しい風が心地いい。歓声と吹奏楽部の応援とが混ざり合って、まさに体育祭って感じがする。
そして、これからスタートする種目に向けて会場はヴォルテージMAXだ。
この体育祭のメインイベント、千井崎高校名物『女子のぼり』がいま始まる。

***

千井崎高校は日本初の男女共学高校である。今となっては男女共学というのは珍しくないが、創立当時はその革新的な教育方針が話題を呼んだに違いない。

というのも、男性は女性のおよそ100分の1の大きさしかないのだから。

第二次性徴を終えると男女の大きさには顕著な違いが生じてしまう。この時期、男子はせいぜい20~30cm身長が伸びる程度だが、女子は元の100倍の大 き さにまで成長する。つまり、小学校までは別にしても、 それ以降、男女が共同生活を送るというのはあまりに危険だと見なされてきた。
しかし、新しい考え方を軸にした「男女共同参画時代」が欧米で幕を開けると、日本でも「男女隔離」という古い枠組みは崩れ落ち、男女が平等に暮らせる社会 が 築き上げられてきたのである。そんな中で千井崎高校はその産声をあげたのだ。
逆にいえば千井崎高校はそれほどの名門高校であるわけだが、やはり創立当初は男女のサイズ差に悩まされてきた。さまざまな校則が執り行われは廃止され、さ まざまな制度が導入されては消えていった。
『女子のぼり』はそういった暗中模索の時代に考案され、今もなお根強い人気を誇っている伝統ある体育祭競技なのだ。

ルールは読んで字の如く、である。
紅組と白組の両方から一人ずつ『親』となる女子を決定する。ふつう、単純に背の高い女子や、肌が綺麗で登りづらい女子を選出するのだが、まぁ、そのへんは いろいろと戦略を練るわけだ。
男子たちは敵サイドの『親』の身体をのぼり、そのタイムを競う。 女子はカチューシャを着けており、そこに固定されているスイッチを先に押したチームの勝利となる。
『親』となる女子は手と足を縛られていて、登ってくる男子たちの猛威を阻むには身体をねじったりするしかない。しかし、女子はしゃがんだり、転んだり、地 面から足が離れたりするとそのチームの負けと なってしまうので派手な動きはできないのだ。
ここで代表以外の女子は何もすることがないかと言えば、そうではない。女性陣には男子が登りづらい服装を考案し、準備をするという重要な役目がある。実 際、この代表女子の衣装が勝敗を分ける大きなカギとなるのだ。

***

だからオレが紅組の代表女子が入場してきた刹那、息をのんだのも無理はなかった。
「制服(半袖ブラウス+ミニスカート+黒タイツ+ローファー)……、だとッ!?」
まず、改めて感じる圧倒的なデカさ。
一番低いところでも3mはあるであろうローファー。第一関門となるのは間違いなくこれだ。背伸びしても届かないくらい大きいローファーをよじ登るには靴底 のでっぱりに足をかけなければならないわけだが、女子は足を縛られているとはいえ足首から先を動かす程度のことはできるのだ。たったそれだけの動きでも 男子の大半を一掃することなど雑作もなくできるだろう。
そして目線を上げると、タイツに包まれた柔らかな一対の巨塔。はるか上方では肉感たっぷりの太ももが、窮屈そうにタイツの網目を押し広げている。つまり、 登るにつ れ足場が少なくなるというわけだ。
更にその太ももを優しく取り囲む紺のミニスカート。ふわふわと風に揺られているその可愛らしさとは裏腹に、ここが最大のヤマ場となるのは確実だ。おそらく オレたち男子の力では、スカートの腰どめゴムを押し上げるなど数人がかりであっても到底不可能で、女子の身体を外側から登っていかなければならないことに な る。となると、太ももまで登りきった段階で、スカートの裏側に飛び移り、表側に回らなければならないのだ。ここまででほとんどの体力をもっていかれるだろ う が、まだ女子の体の半分にも達していない。
首が痛くなるほど見上げると、ここからではよく見えないが、どうやら上半身はブラウスを着ているらしい。タイツと違い繊維の細かいブラウスは、つるつるし ていて登りづらく、いかに足場を確保するかがポイントとなってくる。

その、もっと、さらに上空。
巨大な胸から顔をのぞかせたのは、2組の中条ことみだった。なんの因果か、オレとは「幼馴染み」というポジションにあたる。中学は別だったので、高校に 入って久々に再会したときは驚いた。なにせ100倍サイズの巨人になっていたのだ。だから高校入学当時はことみのやつに散々からかわれたっけ。今日という 今日はこのバカでかい身体を登りきって、逆に見下してくれるわ!

それよりも、なんでこいつが紅組の『親』に選ばれたんだ?
昔から運動は得意だったし、その体の柔軟性は大きな壁となるかもしれないが、ほかの女子に比べれば 身長は高い 方ではない――ま、オレたちに比べたら途方もなく巨大だが――のに、どうして?
訝しがっていると声が響き渡った。
「へぇ、こびとさんってば、そんなに小さいのにわたしの身体を登れるつもりでいるんだ? 2cmにも満たない背丈もないくせに? アハハ……、せいぜい 頑張ってわた しのつま先に弄ばれなさい」
伝統の『言葉攻め』だ。女生徒がはるか高みから見下すことによって男子の戦意を挫く。スタートする前から既に戦いは始まっているのだ。
『言葉攻め』は意外と堪える。今まで考えないようにしていたのに、直接コトバにされることによって 「あぁ、オレ は本当にアイツのつま先以下の存在なの だ」と再認識せざるを得なくなる。なにせ小学校の時まではアイツも俺より頭一つ分小さいくらいで、一緒に遊んだりしたものだったが、それが今では……

死にたくなるほどの劣等感を紛らわせるため、オレはブンブンと頭を振り、別のことを考えることに努めた。
「そういえば、アイツうまくやってるのか?」
敵陣営に目をやると、そこには我らが白組の『親』神崎美麗がそびえ立っていた。
衣装はゴスロリ風メイド服。急傾斜のハイヒールからはじまり、白ニーソ、ガーターベルトから飛び移りボリュームのあるフリルスカートへ。上半身は大きなリ ボンと細かい刺繍が男子たちの行く手を阻む。白組女子考案の対こびと用メイド服だ。
あのコスチュームには紅組の男子も苦労するだろう。全くもって完璧な衣装だ。ただひとつ問題があるとすれば……
「え、えと……紅組のこ、こびとのみなさん! わ、私のくる、くるぶしにも手が届かない……ぶ、分際で……わ、わわ私のか、身体を、登れるとでも……お、 思ってらっしゃるのかしら?」
ありゃダメだ。美麗はシャイなお嬢様で、女子のぼりの『親』には全くの不向きだ。スレンダー美人だからという理由だけで選出されたのだが、やっぱり言い 馴染 みのないセリフに完全に参っちまってる。た ぶん自分で考えたんじゃなくて白組女子が考えたセリフを言わされてるだけだろう。紅組の連中は気圧されるどころか、恥ずかしがる神崎を見て俄然やる気に 満ち溢れている。ちくしょーオレも神崎のほう登りてー!

紅組のモチベーションが最高潮に達したところで、女性教師によって各組の『親』が縛られていく。
両手を後ろに縛られ、否応なく胸を強調してしまう格好になる。縛られた両脚は太ももを密着させ、ムニムニとその生々しさを主張している。
やべえ、エロい。
なんと言っても女子高生が縛られていく様をまざまざと見せつけられているのだ。なんというか、いたいけな少女が大人の女性に孵化していく瞬間を覗いてし まったような、淫らな色気。くそっ、まさかあの中条に色気を感じる瞬間が来ようとは……。
100人近くの健全なる男子高校生の前でこんな淫行を晒しておきながら、誰も縛られた女子高生とヒャッホイ(゚ ∀゚)しようとは思わない。たとえ100人が万力を込めて足を押したところで、押し倒すどころか1mmだって足を動かすことはできないだろう。そもそも彼 女を縛ってい る縄よりも小さいのだ。縄をほ どくことさえできるかどうか……

またネガティブな思考に頭を奪われそうになったところでアナウンスが流れる。
「それでは男子生徒の諸君はスタート位置についてください」
お、そろそろか。
オレは体操着で手汗を拭うと、巨大女子高生に向かって歩き始めた。

***

アナウンスを合図に白組の男子たちがわたしの足元にわらわらと集まってくる。
改めて感じる小ささ。
授業中とかは女の子サイズの机の上で一緒に授業を受けてるから、ちょっと目線を下ろすだけで難なくコミュニケーションがとれるけど、こうやって背比べする と本当に小さい。わたしのくるぶしどころか、ローファーの高さにすら及ばない。小学校の頃、絶対的なイニシアチブを持っていたオトコのコも、今となっては 守ってあ げたいって思うくらい小さくて可愛らしい。そんな男子がわたしの足の周りでうろちょろしているのは、なんていうか、こう……キュンキュンなのだ。
そういえば、スタートラインからだとパンツ見えちゃうかも……。恥ずかしくないって言えば嘘になるけど、それは『親』に決まったときから覚悟していたから 大丈夫として、それよりもわたしのちょっとした抵抗でこびとさんを怪我させてしまわないかの方が気がかりだ。例えば、わたしのスカートから落っこちてしま わないか、とか。気付かず太ももですり潰してしまわないか、とか。さっきはセリフとして非道いことを言ったけど、やっぱりこびとさんだって人間で、オトコ のコで、友達なんだ。いくら競技と言っても怪我をさせてしまうのはこっちもツラい。ま、わたしの気にも留めないような動きで怪我しちゃうのが、男子の可愛 いところでもあるんだけどね。
わたしの周り半径1mを男子が取り囲むと、ついに緊張の一瞬が訪れた。
「それでは位置について……よーい……」
熱い視線をわたしに向けるこびとさんたち。
ヤダ、やっぱり、ちょっと恥ずかしいかも。
空砲が響いた。

***

乾いた音が鳴り響くが早いか、オレは巨大ローファーめがけて疾走した。
ローファーまでの100mは軽く13秒を切ったはずなのに、オレには無限の時間が流れているように感じた。
「見えたッ!」
誰かが叫ぶ。
そう、はるか頭上で瞬くパンツを最大限に堪能すべく、オレのエロパワーは遂に時間を限りなく凝縮することに成功したのだ。
ふわりと舞うスカートの奥。密着した太ももの隙間から申し訳なさそうに覗く白の生地。漆黒のストッキングに包み隠されよりいっそう謙虚さを醸し出している その佇いは、チラリズム的エロスを演出している。それでいて白色が元来持つ発色の良さは、清楚さと同時に存在感をアピールしてくる。たとえどんなに女の子 がス カートで、太ももで、ストッキングでパンツを見せまいとしても、その艶かしさを決して抑えることのできない白の神秘。それに付け加え、この凄まじい大きさ である。チラリと見えるその部分だけでも軽くオレなんか包んでしまえそうだ。なにせパンツに浮かび上がるあの一筋のシワにさえ、オレの身長は間違いなく及 ばない のだから。
奥ゆかしくて、大胆。清楚でいて、卑猥。
例えるならスゲー地味な図書委員の女子が、メガネとったら実はめっちゃ可愛くてついでにパイオツかいでーだったみたいな完全俺得超ウッヒョヒョイな状況な のである。

死語まで盛り込んだ例えの遠すぎる妄想を終えると、遂にローファーにたどり着いた。
何度でも言おう、でかい。
ただのローファーだというのに大型トラックの比ではない。ふつうに廊下で女子とすれ違うことはままあるが、こんなに至近距離で見たのは初めてかもしれな い。パンツが見えるほど女子の近くを歩く勇者は、ことごとく全治3ヶ月以内の重傷を負うからだ。
パンツが見えるライン=死のラインってわけだ。

「よいしょっと」
オレがローファーに手をかけようとすると上から声が降ってきた。
「じゃ、こびとさん! 今から『抵抗』するね!」
嬉しそうに告げると、縛られた足首を軸にしてローファーを動かし始めた。
ごごごごご……!!!
激しく荒ぶる黒光りの壁に、男たちはなすすべもなく吹っ飛ばされていく。アイツは 軽くつま先を動かしているだけかもしれないが、オレたちからすれば走っている電車に飛び乗るようなもんだ。
「あれ? こびとさん、もしかして拘束されたか弱い女の子にすら勝てないの? しかも動かしてるのはまだその女子高生のローファーだけだよ? アハハ、ほ んっとに惨めで哀れだね」
巨大ローファーの猛威に果敢に立ち向かう益荒男たち。しかし、ローファーに足をかける暇も無く蹴散らされていく。
「それがこびとさんの本気なの? 男のコなんだからもうちょっと頑張って! さもないと本当にわたしのローファー以下の存在になっちゃうよ!」
すらすらと並べられる『言葉攻め』にみんな心が折られはじめている。オレは女子高生のローファー以下の存在なのか、と。オレは一生女の子に虫けら扱い されて生きていくのか、と。
みんなの戦意が失われていくなか、しかしオレは勝機を見出していた。
どんなに巨大でも、この世のものである以上物理法則に縛られる。ローファーはタバコを踏みにじるような運動を繰り返しているわけだが、周期運動には必ず折 り返し地点、 つまり一瞬静止する時間があるのだ。
「今だッ!!」
オレは頃合を見計らうと一気にローファーへ突っ込む。計算通りオレが靴底に飛び乗った瞬間、ローファーは動きを止め、その隙にオレは一気にローファーの上 部へと駆け上がる。再び動きはじめる前にローファーにしがみついて安全を確保。ここまでおよそ1秒。
「ふぅ……」
ため息をつくと、オレは振り落とされないように注意しながらタイツへと間合いを詰めていった。

***

うそッ、もうローファーの上にのってる男子がいる……!
誰だろう? ちっちゃすぎて顔は見えないけど、けっこう頑張るようね。
え、あれあれ!? 最初のコを皮切りにみんなローファーに登ってきた……。
こんなに早く突破されるとは、流石ね……って!
「……ッ!?」
やだ、こびとさんがいきなりタイツに手をかけるから、声出しそうになっちゃったじゃない。
小さいこびとさんが一生懸命わたしのタイツを登ってるのを感じる……。ちょっぴりくすぐったい。これがオトコのコの重さなんだって思うと、すごくドキドキ する。なんでだろ。
あーこれからスカートの中まで登られちゃうのかとか考えると、太もものあたりが……なんていうかゾワゾワしてくる。触られてもないのにくすぐったい。
太もものこそばゆさを抑えるためにモジモジしたくなるけど、それでこびとさんをすり潰しちゃったらどうしようとも思う。
そして今となってはすごく分かる。男子たちのいやらしい視線が、わたしのパンツへと注がれていることが。
みんなどんな気分なんだろう?ちょっとだけ想像してみる。
同級生の女の子のタイツに必死にしがみつく男子たち。タイツの網目だって、こびとさんたちからすれば顔の大きさくらいあるのかな。わたしの膝のあたりだっ て、下を見れば目もくらむような高さ。上を見ればわたしのパンツがこびとさんを見下している。屈辱的……じゃないのかな?
あ、なんか……ちょっと……興奮してきちゃったかも。大勢の男子にパンツを見せびらかしている状況に? 大勢の男子に愛撫されている状況に? 自分でもわ から ないけど、ほっぺが火照ってるのだけは分かる。あ、だめ……これ以上変なこと考えたら濡れてきちゃいそう……。わたし、変態なのかなぁ。
でも、これからあの作戦を決行しなくちゃいけないんだ……。
勝つためには、仕方ないよね?
わたしは高鳴る胸の鼓動をしずめるために、ちょっとだけ深呼吸をした。

***

「お、誰かと思えばエンドーじゃね?」
名前を呼ばれて振り向くと、我がクラスの変態チャラ男ことリューヘイだった。
「なんだ、おまえか」
「おーい、つれないなー。こんなときぐらいテンション上げようずー」
「おいおいッ! オレの足揺さぶんじゃねーよ! 殺す気か!」
「ニャハハハ、大袈裟だなー。体育祭の競技ごときでさ」
「いや、いま足滑らせたら間違いなく死ぬだろ!」
膝を乗り越えたオレたちはすでに地上30mを超えていた。ビルで言えばだいたい10階あたり。落ちれば、運が良くて複雑骨折。最悪、内蔵破裂で即死か。 それでも、こんな高さまで登っても、まだ中条の膝の高さ。女子の身長って、高ぇ。
そういえば、膝を乗り越えたということは遂に太ももに突入したわけだ。今まではただ肌色の壁を登っているとしか感じなかったのに、途端に肉々しくなってき た。ムニムニと柔らかさを増した壁は、これが女の子の太ももなんだ、と意識をしてしまうほどにぷにぷにだ。柔らかいと言っても、無駄なぜい肉を感じさせな い健康的な柔肌。こころなしか少しあったかくて、女の子の香りが強くなってきている。ストッキング越しにも感じる温もりに、オレの愚息がお祭りモードだ。 ああ、いまこの抱えきれないほど大きな太ももに欲望のまま愚息をこすりつけたらどんなに気持ちいいだろう。このまま体育祭も何もかも忘れておっきな太もも で 床オナなら ぬ壁オナをしながらぷにぷにの太ももをぺろぺろと……
「おい、どした?」
オレのスーパー妄想タイムを止めたのはリューヘイだった。
「さっきからニヤついてんぞ、おまえ……。あ、ひょっとして?」
「い、いい、いやいや! 全然そんなんじゃなくて! アレだ、オレ……そう! 朝メシ食ってないからさ! な、なんかチョーシ悪いんだよ!」
「ふーん。なーんだ、おれはてっきり『中条の太ももをめちゃくちゃにしたい!……っていうかめちゃくちゃにされたい!』とか思ってんのかと思ったわー」
意外に鋭いぞこいつ。
「んなわけねーだろ! アホなこと言ってっと置いてくぞ」
「お、おーい、待ってくれよバットエンドー!」
「あっ、テメッ! 死亡フラグ立てんじゃねーよ!」

***

「一番の難関のおでましだ」
オレたちの眼前に立ちはだかるのは、そう、スカートである。
上を見上げれば巨大な紺のオーロラがゆらゆらと揺れている。当然太ももに張り付いているオレたちからはパンツ丸見えなのだが、スカートがパンツや太ももに 落 とし込む影がこれまたエロい。AVとかでパンツをどーんと見せられても「はいはい、ぱんつぱんつ」って感じだが、それがスカートで隠されてい るというだけで「ムッヒョー(゚ ∀゚)」となるだろ? つまりスカートの織り成す陰影こそが着衣フェチの真髄なんじゃ! やったねスカート! スカートバンザイ!
おっと、話がそれてしまったが、今回はそんなあどけないスカートが牙を剥くわけだ。いましがみついている太ももからスカートの裏地に飛び移らなければなら ない。失敗すれば重傷では済まないだろう。
さっきまで元気だったリューヘイも、若干……震えてる?
「こりゃ、さすがのリューへイくんも怖じ気づいたか?」
オレがスカートを指さすと、意外にもあっけらかんとした答えが返ってきた。
「へ? なんだおまえそっちルート行くの?」
「そっちルートって……。他にどんなルートがあんだよ」
「わかってねーな、エンドー、おれが目指してるのはハナからあれさ!」
ビシッと指さした先には、幾度となく話題にのぼっている中条のパンツ。
「おまえ、まじで言ってんの?」
「マジもクソもあるかよ! 『女子のぼり』ってのはな、男のロマンだ! おれは今まで幾度となく女子のパンツを見ようとしてきたんだ。だがダメだった。女 子に見つかっては暴行を受け、女子にバレては大怪我を負う毎日……。だがしかーし! 今日というこの日は学校公認で女子のおパンツ見放題! それどころか 登りつめちまえば、ナニしたっていいんだぜ? なにせ当の女子は手足を縛られて抵抗できないからなッ! 今日という今日こそ、今まで果たせなかったあんな ことやこんなことを……! おれは武者震いが止まんねーよ!」
だめだ、こいつ。正真正銘のバカだ。
え? べ、別にパンツルートに心惹かれたりなんかしてないんだからねっ!

それはそうと、確かに変だ。言われてみるまで気付かなかったが、この『女子のぼり』の衣装を考えるのは女子だ。ってことは別にスカートの中は体操着でも良 かったんじゃないか? 白組の美麗だってメイド服のスカートの中はブルマ履いてるし。
ん? え……ま、まさか……?
突如、中条の声が降ってくる。
「あら、わたしの太ももまで登ってこれたこびとさんもいるのね。えらいえらい。じゃあ、そのまま頑張ってパンツまで登ってこれたこびとさんには『ご褒美』 あげ ちゃおうか なー」
やっぱり、これは罠だ。
理性を失った男子を股間におびき寄せ、淫蕩の渦に落とし込もうってか。なんていうか、大胆っていうか、紅組の女子はビッチばっかなの?
「おい、リューヘイ! 騙されるな! これは罠だ!」
「…………」
「お、おい……、リューヘイ……さん?」
リューヘイの様子がおかしい。
いつものチャラチャラしたリューヘイからは想像もできないほど真剣な眼差し。その顔は凛と整っており、いつになくイケメンだ。
「も、もしもーし?」
「……く……だろ」
「え?」
「行く……かないだろ」
「え、ちょ、おまっ」
「ご褒美もらえるんじゃ、行くしかないだろぉ!!」
リューヘイは雄叫びをあげながら全速力でスカートの中へと消えていった。
1名脱落。

***

スカートの中は意外と暗かった。そして、少し蒸し暑い。
濃密にたちこめる女の子の香りがスカートの中いっぱいに充満している。炎天下だからか中条の汗の臭いも混じって、頭がとろけちまいそうな気分だ。
ちらと上を見ると、リューヘイが10m程上空で太もものつけ根に悪戦苦闘している。よくあいつは平気でいられるな。あいつのエロパワーには敬服だわ。そい や、これ終わったらパンツの感想でもきこうっと。
まぁいいや、また変な妄想を繰り広げてしまう前に早くスカートに飛び移るか。

高さ60m。正直、ちょうこわい。
風に身をゆだねるスカートは刻一刻と形を変える。まるでオレをあざ笑っているようだ。ま、笑われても仕方ない大きさであることは認める。いかに死を覚悟し よ うとも、たかだかここは女子の太ももの上で、女子高生のスカートの中なのだ。
「ふううううぅぅぅ」
大きく息を吐き出す。覚悟は決めた。
スカートがなびくたび、ちらちらと外の光が入ってくるのがうっとしい。
今だ。
「おらあああああ!」
決死のジャンプ。つかみかかる右手。これなら余裕だ。
しかし、刹那。
風が吹いた。右手は空を切る。
え、やばい? え、やばい? え、やばい?
スカートはふわりとオレをかわす。
うそだうそだうそだ、失敗した……!?
「ッ!?」
オレはとっさに左手を伸ばす。
「……っつ!」
グンッ!という衝撃とともに全体重が左手にかかる。
自分でも、何が起こったのか分からなかった。
ひとまず、生きてた。
オレは左手でスカートの裏地をつかんでいた。
やばい、本当に死ぬかと思った。ぜってーいま寿命ちぢんだって。
冷や汗と異常な心拍数がきもちわるい。まだ全然生きた心地がしない。
『死因:女子高生のスカートから転落死』とかだったら死んでも死にきれないとこだった。
それにしても、男子一人が飛び乗ったぐらいじゃビクともしないのね、このスカート。
ぶはっと安堵のため息をついて態勢を整える。そのままオレはスカートの外へと急いだ。

***

たぶん2,30人だと思う。わたしの太ももまでたどり着いて、スカートの中へと消えていったこびとさんの数。
そのうちの何人が、わたしの発言につられたんだろう?
でも、本当にさっきから、太もものつけ根のあたりを中心にすごくむず痒い。ちっちゃなこびとさんがわたしの蜜を求めて一生懸命ちょろちょろと……
あーだめだめ! 頭がどうにかなっちゃいそう。変なこと考えるの止め! 目を閉じて深呼吸、深呼吸。ふーはー、ふーはー。
……あーあー、でも何も考えないようにしようとすればするほど、アソコに意識がいっちゃう。
つかの間、電撃が走る。
「んんんっっ!!」
ふ、太ももの内側は、だ、だめ……だって……! ちょ、え、うそうそ? ひょっとしてお尻の方に登ってきてる子もいない?
ああもう我慢できない! こびとさんがあんまりチロチロとしか動いてくれ ないもんだから欲求不満になってきちゃった……。この手が自由だったら、いっそのこと太ももやらパンツやらに押し付けちゃいたい。拘束さえされてなければ 圧倒的 にわたしの方が優位なのにィ。こびとさんに一方的に責められることがこんなにも恥辱を感じるなんて……!
ダメよダメ! ここでひざまずいたら負け。男子に負かされる事の方が恥辱だわ。

必死に欲情に耐えていたわたしは、このときお腹のあたりをよじ登るこびとさんの存在にまだ気づいていなかった。

***

必死に中条の腹をよじ登るオレは、このとき紅組の『親』に中条が選ばれた理由にまだ気づいていなかった。
予想通り、ブラウスの繊維はオレたちから見ても細かすぎる。タイツとは違って布そのものをつかみながら登っていかなければならない。
「うぐぐぐ……」
正直、もう握力が限界だった。
スカートに飛び移ってから先、足場なんて気の利いたものはなく、ずっと両手だけで体重を支えてきた。さすがに、もうツラい。
ふと上を見上げると、硬質な出っ張り。ブラウスのボタンだ。あそこなら休める。
オレはなけなしの体力を振り絞ってプラスチック製ボタンに座った。
「ふぅ」
こうやってみると、すごい見晴らしだ。
標高100mくらいか。でかい観覧車のてっぺんに居るみたいだ。
地上では虫みたいな大きさの男子生徒たちが奮闘している。遠巻きにスカートの中を覗いて興奮している奴もチラホラ。
紅組の様子を窺うと、美麗は今にも泣き出しそうだった。男子に太ももを撫でられ、ブルマを見られ。あの美麗がその恥ずかしさに耐えれる訳もない。はやく助 けてやらねーとな。
見たところ白組はオレがトップのようだし、紅組はまだフリルスカートの森を抜けたやつはいないっぽい。
勝てるぞ。

しかし、あとどれくらい登ればいいのか。
ここまできてようやく身体の半分くらいか。でも、これから先は障害物もなくただ登っていけばいいだけのはずだ。
楽観しながら上に目をやると、オレの顔はすぐに絶望の色に染まった。
「お……お……」
完全に忘れていた難所があった。男の楽園、おっぱいである。
大きくせり出したその胸は、ブラウスを押し広げながら狭い狭いと主張している。腕を後ろで縛られているせいで、突き出された胸がよりいっそうブラウスを圧 迫している。
だが、一番目を引くのは何といってもその柔らかさだ。身体をひねるごとにぷるんぷるんと形を変え、ゆっさゆっさと上下運動を繰り返している。それでもその 程度の揺れ方で収まっているのは、おっぱいという名の暴れ馬をブラジャーがこぼれないように 死にもの狂いで受け止めているからだ。ブラジャーは役得だが重労働なのだ。
そしてその全体の大きさは半端じゃなくでかい。オレからみたらブラウスの中に一軒家が入ってるんじゃないかと思うほどのボリュームだ。中条のおっぱい程大 きい部屋があれば難なく一人暮らしができるだろう。もしかしたら片方のおっぱいだけでも十分広いかもしれない。中条のやつ、こんなに胸デカかったか?  E、 F……いやそれ以上か?

後から聞いた話だが、紅組が『親』として中条ことみを選出した理由、それは乳のデカさだった。後ろで手を縛られている以上、男子たちは背中を通っていくこ と はできない。通ろうものなら腕の猛攻に遭い脱落必定だからだ。脇もまた然り。すなわち、スカートを突破した男子は腹側から登っていかなければならないわけ だが、ここで最も効果があるのがおっぱいだと考えたそうな。紅組こえーよ。

小休止を終えたオレは、そのままおっぱいへと登っていった。
下乳にたどり着くと、急に揺れが激しくなる。
「くっそ!」
あまりの振動にしがみつくのが精一杯でなかなか前に進めない。しかも、下乳に張り付いている間は今までと重力の向きが異なる。足を滑らせれば、さながらう んていをやっているような格好になり、この揺れに耐え切れず落下することになるだろう。スカートの時と違い、地上100mからの落下は100%死を意味す る。

しかし、そんな危険極まる状況でもオレは別のことで頭がいっぱいだった。
おっぱいって、やわらけぇ。
しがみつけばしがみつくほど分かるおっぱいの感触。つかまっているブラウスは、新品なのかちょっと硬めで、それが逆に内包するものの柔らかさを強調する。 ブラジャーはブラウスよりもふわふわとした厚めの生地。ここまで近ければブラジャーの刺繍のひとつひとつだってよく見て取れる。試しに力いっぱい押してみ ると、ブラジャーがちょっと邪魔だが、それでも分かる柔らかさ。太ももはムニムニって感じだったが、おっぱいはフニフニって感じ。
匂いもお腹にいたときよりずっと濃厚だ。やっぱりちょっと汗のすっぱい臭いもするが、それより断然女の子特有のいい香りがする。ブラウスからかブラジャー からかは分からないが、干した洗濯物みたいな太陽の匂い。それらが全部混ざり合って、すごく心地いい。なんか、興奮するけど、安心もするようなとっても良 いニオイ。

それにしても、やっぱりブラジャーが邪魔だ。ブラウスはまだしも、ブラジャーの生地の厚さはオレからすれば鉄壁に等しい。渾身の力を込めて叩いても、ブラ ジャーは僅かに沈むだけで、オレにおっぱいを堪能させてはくれない。
はやく、登らなければ。
そんな思いがオレの頭をよぎる。おっぱいの上に登ってしまえばブラジャーという障害はない。そこまで行けばオレのターンだ!
オレはエロパワーを振り絞り、下乳に挑んでいった。

***

オアシス。
そんな単語を連想する。
久々の地面。あれから十数分、いまオレは乳という名の大地の上にいる。
腕にどっと疲れを感じる。それでもぷるぷると揺れ続けるおっぱいの上では、よつん這いの格好でしがみついていなければならなかった。
だが、オレの煩悩は留まるところを知らない。オレのエロパワーによって磨き抜かれた感覚は、下乳にいたときとの差異を明確に捉えていた。
ひとつは温度。ブラジャー越しに触ったときより全然あったかい。運動している分ちょっと体温が高めなのかもしれないが、人間の肌の生々しい温度をしっかり と感じることができる。片手で触っているだけなのに、おっぱいから放出される熱で全身包まれてしまい、まるで風呂に入っているような気分になる。
そしてやっぱり柔らかさが段違いだ。下乳にいたときはブラジャーに阻まれたが、ここまでくるとほぼ直におっぱいに触ることができる。さっきのように渾身の 力でおっぱいを押す必要もない。それどころか、さっきからオレは自重で軽くおっぱいに沈み込んでしまっている。おっぱいどんだけやわらけぇんだよ。
もう、我慢できない。
太もものときに封印した感情が一気にこみ上げてくる。このマシュマロみたいなおっぱいを全身で揉みしだきながられろれろしたらそのまま愚息を擦りつけてい い感じになったらふにふにおっぱいにオレの硬くなった愚息を突き立ててそのあとおっぱいとブラジャーにサンドされながら……
そうだ、ブラジャーに行こう。
「My Favorite Things」を脳内BGMにして、オレはブラウスの中に潜り込むべく胸の谷間へ向かっていった。

***

なんかさっきから胸がむずむずすると思ったら、もうおっぱいにこびとさんが乗っていた。
あぁ、わたしのおっぱいよりも小さいばかりか、わたしのおっぱいに乗れちゃうなんてすごくちっちゃい。わたしの乳首よりも小さいか、大きいか……。あー乳 首と背比べ とかしたいなー!
あれ、わたしの胸って足場悪いのかな? すごくもたもたと進んでるように見える。ふふ……かわいいっ! なんだか生まれたての子猫を見ているみたいで応援 したくなっちゃう。だけど応援したくなっちゃう気持 ちとは裏腹に、わたしのおっぱいが揺れちゃうからこの子を苦しませちゃってるんだよね。ごめんね。がんばって。

それはそうと、なんかこの子動きがおかしい。上を目指して登っている割には進んでいる方向が変だ。なんだか、まるで谷間に向かって進んでいるような……?

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「ちょ、ちょっと! 胸の上にいるあなた!」
やべぇ、バレた。
この豊満なおっぱいが中条のものだと再認識した途端、オレの愚息が若干萎える。くそっ、パラダイスはすぐそこだってのに!
上を見上げると中条の困惑したような顔。相変わらずバカでっかいな。視界いっぱいに広がる中条の顔にのぞきこまれて、否応なく目が合う。
「え、もしかして……シュウ?」
オレの下の名前「シューヘイ」を縮めて「シュウ」。アイツが昔から呼んでるあだ名だ。
見つかっちまったからには仕方がない。軽くあしらってやるか。
「よう! まさかお前が『親』に選ばれるなんてな。お前の貧相な身体で男子たちを萎えさせる作戦か?」
「…………」
あれ? 挑発にのってこない。いつもだったら「誰が貧相よ、このバカっ!」とか言って怒り出すのに……。
「シュ、シュウが……わ、私の胸の上に……」
ん、アイツ様子がおかしいぞ? 頭からプシューと煙をふいてやがる。
その様を静観していると、ハタと気づいたように表情を変えた。
「ば、バカっ! ヘンタイ! わたしの胸で何やってるのよ!」
「な、何って……。こういう競技なんだから仕方ねーだろ」
「もうバカバカ! 死んじゃえ!」
「お、おい……そう簡単に人の死を願うんもんじゃ……うわっ!」
アイツの口から突風が吹き荒れる。ブラウスにしがみついてないと吹っ飛んじまいそうだ。おいおい、マジで死ぬって。
「おま……マジ……やめっ……!」
「ふうううぅぅぅぅ!」
こりゃおっぱい探検あきらめてさっさと登り切っちまうしかねーか。お、おい反抗するでないマイサン! あとでしっかりかまってやっから……。
意を決したオレとマイサンは中条の肩を見据えた。これもローファーのときと同じだ。息を吐き出したからには必ず息を吸う瞬間がある。そこを狙えば……!
アイツが息を吸う瞬間を見計らって一気に肩まで駆け登る。
「え……あ……」
虚をつかれアイツは素っ頓狂な声を漏らした。
「ふっ、まだまだだな、ことみ」
「クッ……! で、でもここから先へは進ませないんだから!」
「できるもんならやってみな」
しかし、嘯いておきながら勝算は皆無だった。
肩から頭の上に行くためには髪の毛を登っていかなければならない。大人数で攻めるならまだしも、アイツがオレ一人を見据えている状況ではそれは不可 能だ。しかも攻撃を避けながら登るほどの体力ももうない。ちくしょう、万事休すか……!
「ふふふ……。頑張ってここまで登ってこれたようだけど、それもおしまい。ここで果てなさい、シュウ!」
首を振ってほっぺたで襲いかかってくることみ。
どうする。隙をみて髪の毛に飛びつくか? いや、距離がありすぎる。これをよけても、突風攻撃までやられたらもう勝ち目はない。くそ!   どうする?

やられる! と身構えた次の瞬間。
「あっ……」
あれ、次の攻撃がこない。
息を吹きかけられている様子も、ない。
怪訝に思い目を開けると、数センチ前にことみの顔が。
あまりに眼前にあったので驚きつつも、むしろオレはその表情に違和感を覚えた。
苦しそうな、嬉しそうな、そんなカオ。ほっぺたを真っ赤にしながら歯を食いしばっている。目尻には涙も浮かべている。すっごくトイレを我慢しているみたい な表情だった。
はじめは体調が悪いのかと心配になったが、どうやらそうではないらしい。
「んっ……そこ、は……だめぇ」
もしかして、感じていらっしゃる?

――説明しよう。実はこのとき、ちょうどリューヘイがタイツの中への侵入に成功(!)し、いざ洞窟大探検をはじめようとパンツと格闘し始めていたのだ! ――

勝機!
オレは助走をつけると、一気に耳元の髪の毛にジャンプした。ターザンよろしく髪の毛につかまるとトンネルのような耳の穴に向かって囁く。
「男子高校生に身体中を愛撫されるのはどうだい? いま何人の男子がことみちゃんのパンツに群がっているんだろうねぇ? みんな君のアソコを見たくて、触 り たくて、舐めたくて必死なんだぜ? みんなの熱い視線がことみのパンツだけに……」

***

途中から何を言われているのかすら分からなくなってきた。
太ももには夥しい数のこびとさんがこちょこちょと動いていて、おっぱいをもちょもちょ揉んでいるこびとさんが数人いて、タイツの中に入っちゃってるこびと さんも、耳元で誘惑してくるこびとさんもいる。その全員がわたしの性的衝動をくすぐってくる。
足に力を入れないと立ってらんない。おまんこの中がきゅって締まって、奥の方がジンジンして……あーもう、気持ちよすぎ! はやくイっちゃいたい! け ど、こびとさんちっちゃすぎて刺激がぜんぜん足らないよぅ……! 
もどかしい、もどかしい! 断続的な刺激で頭がどうにかなっちゃいそう! 両手さえ使えれば! 両手さえ使えれば、こんなちっぽけなこびとなんかいろんな とろに押し付けて、こびとオナニーを……。あああ! もう! こびとさんでオナニーしたいッ!

***

中条の戦意を完全に削ぎ終えると、オレはゆっくりと頭の上へ登った。
「これが……女子の、頭の上……」
標高およそ160m。地上より風量が多いが、逆にそれが気持ちいい。
腕はもうヘトヘトだ。しばらくは筋肉痛に悩まされるだろうな。
オレは苦笑するとカチューシャ沿いに道を進めた。
「あれか」
広大なカチューシャの上にぽつんとボタンが置いてある。これだけ壮大な旅をしたその最後の締めくくりが、こんなちっぽけなボタンとは……。なんというか、 あっけないもんだな。
それじゃ、勝たせてもらいますか。
そしてオレがボタンに手を伸ばした瞬間。
「パン! パン!」
乾いた轟音。
え、空砲? 勝負がついたってこと? オレまだスイッチ押してないよ?
「紅組の勝ち~!」
え、どういうこと? え、どういうこと? え、どういうこと?
オレが混乱していると、ドサッという音とともに藤堂を拘束していた縄がほどけた。
そう、スイッチは自陣の『親』の縄と連動しており、スイッチを押すとそのチームの『親』の縄がほどけるようになっているのだ。
そこから負けたチームへの「お仕置き」タイムがはじまる。
男子は思い知らされるのだ。何不自由ない女子がどれだけ圧倒的で、絶対的で、敵いっこない相手であるか。じわじわと、じっくりと、みっちりと。
惨劇が始まった。
美麗の頭上で、オレよりもワンテンポ早くスイッチを押した男が、こちらを見てほくそ笑んだような気がした。

***

後日。
「おまえこの前の体育祭じゃやらかしたなー」
「う、うっさい! バカ!」
「『女子のぼり』のお仕置きタイムでオナニーするやつなんて前代未聞だぞ」
「や、ば、バカ! い、言わないでよ、恥ずかしいんだから」
人差し指で小突かれる。
「いやー、こちとらオナニー死にするとこだったんだぜ? リューヘイなんか全治3ヶ月」
「だ、だからゴメンってば。あのとき頭真っ白になっちゃったんだって」
「おまえ、そんな性感帯強いなら『親』なんか辞退すりゃ良かったのに」
「べ、別に感じやすいわけじゃないもん! ただ、その……」
「何?」
「し、シュウが……その……い、いたか」
「ハックション!!」
「うわっ! な、なによ急に!」
「ズズ……わりーわりー、くしゃみが。で、なんだって?」
「な、なんでもない!」
「え、なんだよ、教えてくれよ」
「なんでもないったらなんでもないの! もう、置いてっちゃうよ?」
「勘弁してください」
オレはことみの手の上に乗せられたまま、過ぎ去る廊下の景色を眺めていた。
いつの間にか冬は、すぐそこだ。

(終)