葵に告白されて最初の日曜日。

俺はいつもより遅く起きリビングでだらだらしていた。だらだらしていたが気がつくと11時45分である。この時間になっても葵が全く起きる気配がない。日曜日くらい遅くまで寝ててもいいとは思うがさすがに寝過ぎだろう。そういえばあまり寝過ぎると体にも悪いという話を昨日テレビでやっていた。

「しょうがないな。起こしてやるか。」

俺は葵の部屋のドアを強めにノックした。

「おーい。あおいー。そろそろ起きないと12時過ぎちゃうぞー。」

葵からは全く返事がない。

「しょうがないな。。。おーい。あおいー。入るぞー。」

俺はそう言うと葵の部屋のドアを開けた。ベッドに目をやると部屋の主が寝ている。

「爆睡してる。。。」

俺は呆れながらつぶやいた。

何気なくと部屋を見渡す。相変わらず女の子らしいピンクっぽい色で統一されている可愛らしい部屋だが、クローゼットのドアは開けっ放しである。クローゼットの中には葵の制服やコートがハンガーにかかっている。
さすが186cmある葵のコートである。デカい。俺はコートのデカさが気になりコートの方へ近づきハンガーごと取ろうとした。しかし、ギリギリのところで届かない。
おそらく葵にとってはなんてことない高さで、無意識にかけたのであろうが159cmの俺にはギリギリ届かない。むきになった俺は何度かジャンプしてようやくハンガーごとコートを取ることができた。
コートを取ってみたらやることは一つしかない。俺はコートを着てみた。

このコートは葵のお気に入りなので葵が着ている姿は何度も見たことがある。葵が着たときはコートのすそはひざより少し上くらいの位置にあった。ところが俺が着ると完全にコートのすそは膝より下にきている。さらに、腕の部分は余ってしまって腕が通しきれない。
鏡があったので鏡で自分の姿を見てみたが、完全に親のコートを羽織った子供のような状態になっていた。
鏡で葵のデカさをまじまじと感じているとふと葵の良い臭いがしてきた。コートに葵の良い臭いが染み付いているのである。俺は一瞬で葵に包まれたような感覚に包まれ、興奮してしまった。

もっと葵の臭いをかぎたい。

そう思った俺はコートを脱ぎ、コートの首周りを鼻に当て、臭いをかいだ。
そのとき葵の良い臭いがより強く感じられ、より強く興奮してしまった。

しばらく夢中でコートの臭いをかいでいたら、葵の制服が目に入った。葵が毎日着ている制服である。
俺は迷わず葵の制服をクローゼットから出そうとした。相変わらずハンガーの高さには苦戦したが、何度目かのジャンプで取ることができた。
制服の首元の臭いをかぐ。コートとはくらべものにならないような良い臭いが漂ってくる。俺はとろけそうになるのを我慢しながら、何度も首元の臭いを深呼吸して吸いこんだ。

「きょーちゃん。それそんなに良い臭いする?」

急に後ろから葵の声が聞こえた。
俺は心臓が止まるかと思うほど驚いた。そしておそるおそる振り返ると、葵が横になりながら目を開けて意地悪そうな顔でこっちを見ている。

「ふふふ。実は部屋に入った時からずっと起きてたの。あんなノックされたら普通目が覚めちゃうよ~。寝てると思ったの?」


俺は顔を真っ赤にしながら

「寝てると思った。。。すまん。。。気持ち悪いことして。。。」

と頭を下げて謝った。葵の制裁が怖かった。
葵は何も返事をしない。おそろおそる頭を上げると、葵はベッドに横になりながら

「本当に反省してるならこっちにおいで。」

と言った。逆らって機嫌を損ねるとそれこそどんな罰を喰らうか分からないので、おれはびくびくしながらも素直に葵のほうに近寄った。
ベッドの横まで近づくと、葵は俺の腕を掴んで、自分が寝ているベッドの中に俺をものすごい力でひきずりこんだ。そして俺を引きずりこむと同時に布団を俺にかぶせ、葵と一緒に寝る体制になった。

「うわ。」

俺はびっくりして声が出てしまった。

「本当に反省してるなら、罰としてしばらく私の抱き枕になってもらいます。」

葵はにこにこしながらそう言うと。腕と脚を俺にまきつけた。俺の目の前には葵の胸がある。顔にやわらかい胸が当たる。

「臭いをかぐのはちょっと気持ち悪いけど、少しうれしかったな。私の臭いで興奮してたんでしょ?」

葵はまるで年下の子に接するように優しく聞いてきた。

「うん。。。興奮した。」

俺は素直に答えた。

「ふふふ。うれしい。あとね、コートがだぼだぼになってるとこと可愛かったよ。」

葵はそういって俺を強く抱きしめた。少し苦しい。
が、同時に葵の甘ったるい良いにおいもただよってくる。当然である。臭いの発生源の葵本人と葵の臭いを吸いこんだ布団につつまれているのだ。

「眼が覚めたら私の制服も着てみよっか?ついでにお化粧もしてみようよ!たぶん可愛いと思うよ。ふふふ。」
俺は何も返事をせずに、正確には返事どころではないほどに葵の甘ったるい臭いにやられていた。
本物の葵の臭いに包まれたときの幸福感は何もにも代えがたいなと思い、俺は目をつぶって葵と寝ることにした。