俺には6歳年下の従姉妹がいる。名前は舞という。
叔母さんは日本人だが、旦那さん(俺から見たら伯父さん)がでっかい白人のアメリカ人(確か2m超え)なので従姉妹はいわゆるハーフの小さくて可愛らしい女の子であった。当時から俺は葵には身長で負けていたので、俺よりも小さい舞は本当に可愛く、本物の妹のように可愛がっていた。

近所に住んでいたころはよく一緒に遊んでいたが、5年前に伯父さんの都合でニューヨークに引っ越してしまった。
そういう事情で5年近く従姉妹に会っていないが、久々に従姉妹に会えることになった。俺がアメリカに一人で行くことになったのである。

理由は簡単。俺の親父が俺の誕生日に

「恭平ももう17か。来年は受験で忙しいだろうし、今のうちに海外旅行を一人でしてみたらどうだ?いい経験になるぞ~。」

と気まぐれで言ったからだ。

そういうわけで俺は一人でアメリカの叔母さんの家に遊びに行くことになった。




アメリカの空港に着き、外に出た。
叔母さんが迎えにきてくれるはずである。

「あら~。恭平君。こっちよ~。」

叔母さんが車の横で手を振っておれを呼んでいる。

「叔母さん。お久しぶりです。」

俺は頭を下げる。

「あらやだ~。恭平君そんなに改まって~。」

「いえいえ。一週間御世話になります。」

俺は叔母さんを見上げながら言った。叔母さんは日本人女性にしては背が高い。おそらく170くらいはあるだろう。

「じゃあ車に乗ってちょうだい。うちまでいくわよ。」

車に乗って20分ほど経っただろうか。叔母さんの家に着いた。

「さあ着いたわよ。舞も恭平君に会うのを楽しみにしてるのよ。」

そう言って俺を家の中に案内した。

「ただいま~。恭平君来たわよ~。」

何も返事はない。

「まだ舞は出かけてるみたいね。とりあえず恭平君の泊まる部屋を案内するわね。」

そう言って叔母さんは俺が泊まる部屋の前まで案内した。

「この部屋よ。舞と同じ部屋になるけど勘弁してちょうだいね(笑)従姉妹だし問題ないでしょ?」

「そうですね。ありがとうございます。」

従姉妹とはいえ11歳の女の子と同じ部屋というのは少し困惑したが他にベッドが余っている部屋がないらしい。泊めてもらってるわけだしあまり贅沢も言えない。

叔母さんがドアを開けた。二段ベッドが一つは目に入った。あとは舞のごたごたした私物が置いてある。

「恭平君は二段ベッドの上の段を使ってちょうだい。」

「はい。わかりました。」

「じゃあ何か分からないことあったら呼んで頂戴ね~。」

そう言って叔母さんはリビングに戻っていった。
俺はスーツケースの中の荷物を整理し、なんとなく二段ベッドの上の段に上って横になった。長旅の疲れだろう。すぐ眠くなって俺は眠ってしまった。



「…くん。恭平くん。」

誰かが俺を呼んでいる。
目を開け、ベッドの外を見ると見覚えのある顔がのぞいている。

「もしかして舞?」

久々の再開にテンションがあがりながら尋ねた。

「そうだよ~。舞だよ。恭平くん久しぶりだね!」
5年ぶりとはいえ俺の記憶の中の舞とあまり変わらない顔に少し安心した。
寝たまま話すのも変なので、とりあえず下に降りよう座ったままベッドから身を乗り出した。

あれ。何かがおかしい。
舞の足が床に着いたままなのだ。足が地面についているにも関わらず、二段ベッドの上の段を軽々と覗き込んでいる。

「舞。おまえ身長伸びた?」

俺はおそるおそる聞く。

「うん。そうなんだよねー。ほら、私のお父さんでっかいし、お母さんも背高い方だし、遺伝なんだろうねー。けっこう伸びちゃった(笑)」

「そ、そうか。」

俺はとりあえず返事だけしておそるおそる二段ベッドのはしごを降りる。
そして、地面に足が着いてから振り向いて舞を見て驚いた。明らかに葵よりデカいのだ。
舞の顔を見上げると舞も驚いた表情をしている。驚きながら尋ねる。

「舞、お前身長何cm?」

「198cmだよ。恭平君は?」

「俺は158cm…。」

しばらく沈黙が流れる。

「そうなんだ。。。私恭平君よりでかくなってるだろうなぁとは思ってたけど、こんなに差があるとはね(笑)びっくりしちゃった(笑)」

舞は笑いながら話しだした。

「ははは…。」

俺も笑うしかなかった。

「昔は私より大きかったのにね~。なんかすごい不思議な気持ち~。恭平君こんなにかわいいサイズになってるとは思わなかったよ~(笑)」

そう言いながら舞は俺の頭を大きな手でなでる。けっこう強い力だ。ふんばらないと倒れてしまいそう。

「俺もびっくりしたよ。舞がこんなに大きくなってるなんて。」

「これじゃあ昔みたいな遊びはもうできないね(笑)」

「昔みたいな遊び?」

「そうそう。昔はよくおにごっことか相撲とかプロレスとか男の子みたいな遊びをしてたじゃん?今やったら恭平君に余裕で勝っちゃいそうだし、なんか私が小さい男の子をいじめてるみたいになりそうだもん(笑)」

「ははは…」

さすが11歳。男のプライドなんて気にせずにずけずけとものを言う。余裕で勝てるなどといわれて悔しかったが、舞の腕や足の太さ、長さは明らかに俺を上回っている。そもそも体重差がありすぎて相撲などは勝負にならないであろう。

「どう?腕相撲くらいなら恭平君でも勝てるんじゃない?」

舞が提案してきた。

「おう。いいぞ。」

俺を完全に見下した一連の発言にすこしいらいらしていた俺はその提案にのることにした。
でかいとはいえ所詮11歳の女の子。体重やリーチでは敵わなくても純粋な腕力なら負けないだろうと思った。

ちゃぶ台のような机をはさんで向かい合う。俺と舞はそれぞれ腕を差し出す。
舞は普通に腕を立てる。俺はその腕をつかもうとするが、肘を机につけたままでは不自然な角度になってしまう。舞の腕が長いので、手の位置が高すぎるのだ。

「あれ?恭平君この高さ高い?(笑)しょうがないな~(笑)」

そういいながら舞は腕の角度をゆるやかにして俺の高さに合わせてくれた。

「あ、ありがとう。」

屈辱的ではあったが大人しく礼を言いながら手をつかんだ。腕相撲の結果で見返してやると心の中で強く思った。

「じゃあはじめるよ~。準備はいい?」

「おう。」

「レディー…ゴー!」

舞の合図とともに俺は全力で舞の腕を倒そうとした。しかし、びくともしない。
勝負は拮抗しているようである。舞も俺の腕を必死で倒そうとしている。

しばらくして舞の腕が倒れ始めた。俺はここぞとばかりに最後の力をふりしぼって舞の手を倒そうとする。
ついに舞の手の甲が机に着こうかとしたその瞬間、

「なんちって(笑)」

舞がそう言ったかと思うと、今までとは比べ物にならない力で俺の手を押し上げてくる。

「ふふふ~。恭平君全力なの~?弱すぎるよ~(笑)」

そう言いながらどんどん舞は俺の腕を倒し、ついには俺の甲は机についてしまった。

「やったー。私の勝ち~(笑)」

俺はショックで茫然としていた。身長だけではなく純粋な腕力も舞に負けたのだ。

「あれ?恭平君ショックだった?(笑)しょうがないよ~。恭平君小さいんだから。よしよ~し。元気だしてくだちゃいね~。」

赤ちゃん言葉で俺をはげまそうとする舞。その態度が俺のプライドをずたずたにしているというのに。。。舞は俺の頭をなでるが、なんのなぐさめにもなってない。

「恭平君可愛いんだから力弱くてもいいじゃな~い。非力なほうが可愛いよ~。」

そう言って舞は立ち上がり、俺の後ろに行ったかと思うと、座りこみながら俺に後ろから抱きついた。右手で頭をなでなでしながら左手で俺の全身をべたべたと触る。触りながら、俺の手のひらの大きさ、足のサイズ、腕の太さ、胴の太さなどをくまなく確認しているようだった。舞の胸が背中に当たる。11歳のくせに胸もでかい。

「舞~。恭平君~。ご飯よ~。」

叔母さんの声が聞こえた。

「あ、ご飯だって!リビング行こう!」

そう言って舞は立ち上がり俺の手をにぎってリビングまでひっぱっていく。舞は大股で早歩きをするので、俺は小走りになりながら舞について行った。
これから一週間どうなるのか不安になってきた。