兄 153cm(高3) 妹 141cm(小4)

高3の2月、兄は東京の大学への進学が決まった。
兄は4月からは大学生活が始まるので、慌ただしく引っ越しの準備をしている。

「お兄ちゃん、4月からいなくなっちゃうの~。さみしいよ~。」

妹は兄の腕に抱きついて涙目になりながら話しかける。妹は兄のことが大好きなのである。

「そうだよ。まあ俺も寂しいけど、すぐ慣れるよ。」

兄は笑いながら妹に返事をする。兄は小柄なので女の子には見下ろされることが多いが、小学四年生の妹はさすがに自分よりも小さい。自分を見上げながら慕ってくる妹のことが兄は可愛いくてしょうがない。そして、今も自分がいなくなることが寂しいと言って甘えてくる妹の可愛さについつい兄はにやけてしまう。
そんな兄の顔は見ずに、妹は兄の胸に顔をうずめながら

「ううー。でも東京だと遠いからめったに会えなくなるよね。」

と言う。
妹の言う通りである。兄妹は東京へは飛行機を使わないと行くことができないような田舎に住んでいる。兄妹の家から空港までは遠く、東京へ行くための交通費はけっこう高い。そう簡単に帰省することはできない。

「そうだけど、正月にはちゃんと毎年帰るよ。」

逆にいえば正月くらいしか帰ることができないということでもある。

「うん…。分かった。お正月は絶対帰ってきてね。」

「もちろんだよ。帰ってくるよ。」

そんな会話をした3日後、兄は東京へと旅立っていった。



兄 153cm (大1年) 妹 159cm (小5)

大学一年生の正月、兄は帰省した。
飛行機と列車を乗り継ぎ、家に到着した。ガラガラガラと玄関のドアを開ける。田舎なので鍵はしていない。

「ただいまー。」

兄の声が実家の廊下に響く。
すると、すぐにリビングの方向から足音が聞こえてきた。

「お帰り!お兄ちゃん!!!」

妹が兄のもとに走って駆けよってくる。兄も妹も久々の再開にうれしくてしょうがないという顔をして互いに歩み寄る。
兄は靴を脱ぎリビングの方へ歩く。

「おう!ただいま!」

そう兄が言った直後、妹は兄に抱きつこうと飛び込む。兄はいつものようにそんな妹を受けとめようとする。
妹が兄に飛びついた瞬間、兄は違和感を感じた。

兄は違和感の正体に、妹に抱きつかれてからすぐに気付いた。明らかに妹の方が背が高いのである。妹が兄に抱きつくというより、妹が兄を抱いているかのような状況である。

抱きついてくる妹をひきはがし、冷静に向き合ってみると兄の目線は妹の唇と同じ高さである。完全に妹を見上げながら妹に話しかける。

「あれ…?お前…。背伸びた?」

兄は妹を見上げながら尋ねた。
妹は待ってましたとばかりにうれしそうに答える。

「うん!!159cmになったよ!お兄ちゃんより大きいんだよ!」

得意げに兄を見下ろしながら妹は答える。
いつかは妹に身長を抜かれるとは思っていた兄だったが、こんなに早く抜かれるとは思っていなかった。まさか小学5年生に6cmも差をつけられるとは完全に予想外であった。
6cmも差があると完全に目線が違う。兄は妹を見上げ、妹は兄を見下ろしながら会話することになる。
動揺しながらも兄は会話を続ける。

「へ~。大きくなったなぁ。まあ、女の子は早熟っていうしなぁ。これ以上は大きくならないだろ。」

兄は自分に言い聞かせるように言う。

「どうだろうね~。まだ伸びてるっぽいし、もうちょっと伸びると思うよ!私の方がお姉さんみたいに見えるようになるかもね(笑)」

妹は兄を見下ろしながらしゃべる。

確かに6cmほど妹の方が背が高いが、所詮は小学5年生の身体であり、ひょろっとしている。まだまだ兄の方が年上に見えるし、体重も兄の方が重いであろう。
だが、妹がこれ以上大きくなり、体つきが女性らしくなってきたら身長で劣る兄はもしかしらた弟に見えてしまうかもしれない。
兄はうっすらとそんな恐怖を感じる。

「ははは~。小学生がお姉さんに見えるわけないだろ。」

兄は妹の発言を笑い飛ばす。
妹も笑っている。まさか自分の方が年上に見える日が近いうちにくるはずがないとお互いが確信していた。

そんな衝撃的な再開から五日後、実家での生活を満喫した兄は再び大学のある東京へ戻った。



兄 153cm (大2年) 妹 177cm (小6年)
大学二年生の正月、兄は再び帰省した。
長い時間かけて飛行機と列車を乗り継ぎ、家に到着した。ガラガラガラと玄関のドアを開ける。田舎なので相変わらず鍵はしていない。

「ただいまー。」

兄の声が実家の廊下に響く。
しばらくすると、リビングの方向から足音が聞こえてきた。

「お兄ちゃん?おかえり~!」

妹の声が聞こえる。
妹が兄のいる玄関に向かって走ってくるようである。全力で妹が走っているのか、どすどすと大きな足音が聞こえる。兄も妹に気付き、靴を脱いで妹の方へ歩き出す。

「おう!お兄ちゃんだぞ!ただいま~!」

兄がそう言って妹の方を見た瞬間、妹が兄を抱きしめた。いや、正確には妹は直前で兄に飛びつくのをやめ、兄をぎゅっと抱き寄せたと言った方が正しい。なぜ妹が兄に飛びつくのをやめ、抱き寄せたのか。それは妹が想像する以上に177cmの妹から見た153cmの兄が小さかったからである。妹は身体つきも女性らしい丸みをおびてきており、身長だけでなく体重も兄よりはるかに重いことは一目でわかる。もしも妹が飛びついたら兄はつぶされてしまうだろうと妹はとっさに判断したのである。

「お兄ちゃん、久しぶり~~~~!!!」

妹は兄を抱きしめながら言う。

「お前…身長いくつになったんだよ?」

兄は一年ぶりに会った妹の成長ぶりに驚きながら尋ねる。この間、兄は妹に抱きつかれたままである。ちょうど妹の胸に顔をうずめる格好になっている。兄はさすがに胸に顔をうずめたままの格好は恥ずかしく、妹の腕から逃れようともぞもぞ動く。しかし、妹はぎゅっと腕に力を込めて逃がすまいとする。妹にとって自分よりはるかに小さくなった兄は、まるで弟のようで可愛い。

「177cm!お兄ちゃんより20cm以上大きくなったんだよ!」

妹はぎゅっと兄を抱きしめながら答える。妹はいたずら心から、もぞもぞと逃れようとする兄を力で抑えつけて逃がさないようにした。兄は妹から逃れようとじたばたする。妹は自分の腕の中でじたばたする兄が可愛くてたまらないようである。しかし、あまり長いこと腕の中に閉じ込めるのも可哀そうだと感じ、腕の力を緩めて兄を解放した。
兄は解放されると、妹から逃げるように距離をとる。兄の目線は妹の脇の下と同じ高さである。兄は妹の大きさと力の強さに驚きながら会話を続ける。

「177cmって、お前でかくなりすぎだろ~。」

兄は妹の成長に驚きながらも、その驚きを隠すかのようにおどけて言う。
しかし、多感な時期の妹にとって「デカい」というワードは禁句であったようである。妹の顔いろが変わる。
だが一方で、兄よりも圧倒的に大きな自分が全力で兄に怒りをぶつけたら、兄が怪我をしてしまうかもしれないということを妹は頭の片隅で感じた。

「ちょっと。お兄ちゃん。女の子に対してデカいって言っちゃダメなんだよ~。」

妹はほっぺを膨らませながら、子どもに対して言い聞かせるように兄に言った。
そして、妹は兄が返事をするより先に兄の脇の下に素早く手を差し込み、「たかいたかい」の要領で兄のことを持ち上げる。
兄の目線は強制的に妹と同じ高さになる。兄の脚は床から20cm以上上でぶらぶらと揺れている。

「うわ…!ごめんごめん!そんなに気にしてるとは思わなかったよ!」

兄は急に妹に持ち上げられて驚く。慌てて妹に謝る。兄は妹に抱きあげられるという状況が恥ずかしすぎるので早くおろしてほしい気持ちでいっぱいである。
そんな兄の焦りは妹はすぐに分かった。しかし、妹は持ち上げられている状況を恥ずかしがる兄が可愛いので簡単には下ろさない。

「お兄ちゃん。人に酷いことを言ったんだから、謝るときはもっとちゃんと謝らないとダメだよ。『ごめんごめん』じゃなくて『ごめんなさい』でしょ。」

妹は兄の眼を見つめながら言う。
兄は反論しようにも確かに正論である。言い返す言葉が無い。まるで姉に叱られているような気分である。

「デカいなんて言ってごめんなさい。」

早く解放されたいという気持ちと、確かに妹の言う通り酷いことを言ってしまったことへの率直な反省の気持ちから兄は素直に謝った。

「うんいいよ。ちゃんと反省してくれたみたいだから1回で許してあげるね。」

妹はいたずらっぽく笑いながら言う。
兄は「1回」という言葉の意味が分からず不思議そうな顔で妹を見つめる。

「1回…?」

「そうだよ。せぇの…。たかいたかーーい!」

そう言うと妹は兄の脇の下に入れていた手を上に伸ばし、子どもと遊ぶときにする「たかいたかい」を兄に対してしたのである。
妹の「たかいたかい」は全く手加減の無いものであった。妹は長い手をほぼ垂直近くまで伸ばし、兄を勢いよく持ち上げた。勢い余って兄は妹の手から一瞬ふわっと離れて浮く。177cmの妹のする「たかいたかい」によって兄の目線は2mを軽く超えた。

「うわあああああああ!」

2mをはるか超えた地点で妹の支えも無く一瞬宙に浮いたのであるからたまらない。妹の手を離れた瞬間、兄はあまりの恐怖に思わず絶叫してしまう。
そんな兄の絶叫を聞いて妹はいたずらっぽくにやっと笑う。もちろん兄はそれどころではないので、妹の表情の変化に気がつかない。
そして、最高到達点を過ぎて落ちてくる兄を妹はしっかりと受け止める。兄をぎゅっと受け止めた妹は、兄をそのまま優しく床に下ろす。

「どう?怖かった?」

妹は床に下ろされた兄に話しかける。

「あ、ああ…。ひどいこと言ってごめんね…。」

兄はなんとか妹に対して返事をする。軽々と妹に持ち上げられた驚き、「たかいたかい」をされた屈辱、そして「たかいたかい」の恐怖、といろいろな感情に支配された兄は呆然としながら妹に謝る。

「うん。許してあげる。もう女の子にひどいこと言っちゃダメだよ。」

そう言って妹は呆然としたままの兄の小さな手を引いてリビングへと向かった。兄の小さな手を包む妹の大きな手は、まるで親が子の手を引くようなサイズ感であった。兄の小さな手を引きながら妹は兄への「可愛い」という感情をいっそう強く抱くのであった。