小学校から大学までが併設されている通称梅塾という名門女子校に縮小病患者の教員がいる。彼の名は山本まさきという。
縮小病患者社会復帰推進法により、縮小病患者を雇用するとその雇用主には補助金が支払われるらしく、そんな補助金目当てで彼は雇用された。彼の教員としての能力は中の下であろう。普通ならば梅塾のような名門女子校で勤務できるだけの能力はない。そして、そのことを梅塾の生徒は見抜いているようで、まさきのことを教師として尊敬している生徒は誰もいない。まさきは身長70cmで体重6kg。平均的な1歳児よりも少し小さいくらいの大きさである。彼は小学校から高校までの数学を担当しており、小学生から高校生まで幅広い年代の学生に数学を教えている。
もちろん彼の仕事は数学を教えるだけではなく生活指導も含まれている。そして今日、彼は高校校舎の掃除の見回りをすることになっており、高校部の生徒がきちんと掃除をしているかを見回りしている。

まさきは女子トイレの前に来た。トイレ掃除の担当者は人目に付かないので掃除をさぼりがちである。トイレ掃除担当の生徒がきちんと掃除をしているかどうか、まさきは確認するべく女子トイレに足を踏み入れた。

「おーい。ちゃんと掃除してるかー?」

まさきはそう言いながら女子トイレに入った。トイレを見渡すと案の定誰も真面目に掃除していなかった。トイレ掃除担当者らしき生徒は三人いたが三人はモップを持ったままおしゃべりをしていた。三人とも身長165cmくらいだろうか。まさきにしたら身長二倍以上はある巨人である。

「おいおい。ちゃんと掃除しろよ。」

まさきは掃除をしていない女子生徒に注意をした。まさきが直接に数学を教えていた生徒ではなかったがとりあえず注意した。
先生が注意をしにきたので女子生徒はびくっとしたが、注意しに来た教師がまさきだと分かると三人の生徒は顔を見合わせた後、にやっと笑った。そしてまさきのことを見下ろしながらリーダー格の女子が話しだした。

「えー。だって掃除だるいんだもん。先生も手伝ってくれるなら掃除してもいいよ~。」

明らかにまさきのことを小馬鹿にした態度であった。

「ここの掃除はお前たちの担当だろ!お前たちでちゃんと掃除しなさい!」

まさきは毅然とした態度で女子生徒達に注意をした。しかし、身長70cmの人間が注意をしても迫力はない。女子生徒の心にまさきの注意は全く響かない。

「だってどうやって掃除したらいいか分かんないんだもん~。先生お手本見せてよ。」

そう言ってリーダー格の女子生徒はまさきにモップを差し出した。モップの柄はまさきの身長よりも長く、とてもまさきには扱えない大きさである。このモップを受け取ってもモップを上手く扱えずに恥をかくだけである。

「モップはトイレの床を磨くものだ。それよりも便器の中の掃除をしっかりしなさい。」

そう言ってまさきはモップを受けとらず、便器掃除用の柄のついたタワシを持って便器をごしごしと磨いた。洋式便所と違い、低い位置にある和式便所なのでまさきの身長でも磨くことはできる。もちろん便所に落ちないように注意をする必要はある。

「こうやって、奥の方まで、たわしで磨くんだよ!」

そう言いながらまさきは一生懸命磨いている。そんな姿を見ながら女子生徒三人は顔を見合わせてにやっと笑った。

「わー。すごーい。先生掃除上手~。他の便器も先生が掃除してくださいよ~。」

リーダー格の女子生徒がそう言うと、三人は大爆笑した。完全にまさきを舐めている。

「ここはお前たちの担当だろ!自分でやりなさい!」

まさきは大きな声を出して三人を叱り、たわしを彼女たちに差し出した。

「は?ちびのくせに調子に乗るなよ?」

リーダー格の女子生徒がまさきを蹴り、まさきを和式便所の中に落とした。まさきはびしょ濡れである。

「こら!!何をするんだ!!!!!」

まさきは怒りながら立ちあがって和式便所の外に出ようとするが外に出ようとした瞬間別の女子生徒がまさきを軽く蹴って再び便所の中に叩きつける。
三人はちょうどまさきを囲むようにして立ってまさきを見下ろしており、まさきがどの方向から便器の外に出ようとしても三人はあらゆる方向から足で軽くまさきを押し倒して便器の外には出さないように蹴っている。
女子生徒の23~24cmの可愛らしい上履きも、まさきにとっては50cm以上はある巨大な上履きである。そんな巨大な上履きに包まれた巨大な足が襲いかかっても、まさきが力で抵抗できるわけがない。

「あはは。先生びしょびしょになりながら便器掃除してくれてるんですね~。さすがです~。」

そう言いながら三人はまさきが便器から出ようとするたびに足で蹴って便器の中にたたき落としている。
まさきが外に出ようとするたびに三人のうちの誰かが脚でまさきを便器の中に蹴落とす。まさきは六本の巨大な脚と10分くらい格闘していた。この巨大な六本の足に自分は一生敵わないのではないかという思いをまさきは抱き、泣きそうになりながらこの場から逃げ出そうともがいていた。

キーンコーンカーンコーン

掃除の時間が終わるチャイムが鳴った。

「あ。掃除の時間終わりだ。教室もどろうよ。」

女子生徒の一人が言った。しかし、リーダー格の女子生徒はそれをさえぎった。

「まだだめだよ。こいつの口止めしないと。」

そう言ってリーダー格の女子生徒はまさきの胸倉をつかみ自分の目線までまさきを持ち上げた。まさきにしてみたら自分の身長の二倍以上の高さまで持ち上げられたような状況である。足はぶらぶらと宙に浮いており、その足先からは水がぽたぽたとしたたっている。

「おい。ちび。このことを他の先生にチクったら踏み殺すからな?お前みたいなちびを殺しても証拠隠滅は簡単なんだよ。カバンにいれてその辺に捨てればいいんだからな。おい。分かったか?チクるんじゃねーぞ。」

リーダー格の女子生徒がぎろりと睨みながらまさきに言う。自分の二倍以上の大きさの人間にすごまれて、その迫力にまさきは完全に心が折れてしまった。巨大な女子生徒の迫力にびびってしまい、何も反論ができなかった。

「はい…。わかりました…。」

まさきは怯えながらそう答えた。

「よし。こいつ完全にビビってるしもう大丈夫でしょ。」

そう言ってリーダー格の女子生徒はまさきを掴んでいた手を離し、まさきを地面に落とした。

「おい!マジでチクったら殺すからな!わかったらさっさと帰れよ!チビ!」

そう言ってリーダー格でない女子生徒はまさきを軽く蹴った。巨大な上履きに蹴られたことに恐怖を感じて慌ててトイレからまさきは出て行った。
まさきは三人の笑い声を背にしながら逃げるようにトイレから出て行くしかなかった。