「おにいちゃ~ん!!!!」
ベッドで眠っているたかしの上に結衣がのしかかった。
「ぐえ!!???」
突然の結衣の襲撃にたかしは驚いて目を覚ました。最近は熱帯夜が続いており、たかしは布団をかぶらずに寝ていた。
そんなたかしの上にダイレクトで結衣がのしかかっている。結衣はパジャマとして使っている薄手のTシャツとショートパンツという長い手足を惜しげもなくさらけ出す格好である。
たかしは抵抗しようとするが、結衣はたかしの両手首をがっしりとつかみ、又、たかしの両脚に長い美脚をからませてベッドに押さえつけた。
「えへへ~。抵抗してもいいんだよ?」
結衣はにっこりとたかしに微笑む。たかしは結衣から逃れようと手足に力を入れるが、90kgの結衣の身体はまったくびくともしない。結衣は体重がたかしの倍以上あるのだから当然といえば当然である。
それに身長196cmで現役でスポーツをしている結衣と142cmでスポーツをしていないたかしでは筋肉量も全然違う。たかしの両手首をつかんでいる結衣の手すら外すことが出来ない。
「ぐぐぐぐ。何の用だよ…。」
力づくで結衣を動かすのは無理だと感じたたかしは結衣の体重に耐えながら尋ねた。
「ああ。そうそう。今日一緒にプール行かない?」
「プール?はるなと行ったらいいだろ?」
「うん。はるなも行くんだけどお兄ちゃんも一緒にどうかなーと思ってさ。」
「俺はいいよ。行かない。」
身長142cmのたかしが196cmと175cmの妹と外出したところでどうせ妹たちに振り回されるに決まっている。すぐにたかしは断った。
しかし、たかしで遊びたい結衣がそんな簡単に諦めるわけがない。
「え~~~。いこうよ~~~。」
結衣はたかしにさらに体重をかけながら頬をふくらませて言う。90kgの巨体がたかしの身体を押しつぶそうとする。さらに、結衣に長い脚はよりきつくたかしの短い脚にからみつきしめつける。
「ぐ…。行かないよ。俺は今日はゆっくり休みたいんだよ!」
結衣につぶされそうになりながらもたかしは断る。
「嫌だ嫌だ。お兄ちゃんも行こうよ~~。」
結衣はたかしの上でだだをこねるように暴れた。
たかしを押しつぶすように90kgの結衣が暴れるのであるから、たかしにはとんでもない激痛が走る。
「ぐええええええ。や、やめろ…。暴れるな…。」
「嫌だよ~。お兄ちゃんがプール行くって言うまで暴れるもん!!!」
そう言って結衣はたかしの上でじたばたと暴れ続ける。
「わかったよ!!!行くからもう暴れないでくれ!!」
本心ではプールに行きたくなかったのだが、これ以上暴れられては結衣に本当につぶされると感じ、たまらずプールに行くと言ってしまった。
「わーい。ありがとう!!!お兄ちゃん大好き!!!」
プールへ行くと言った瞬間、結衣は喜びのあまりたかしをきつく抱きしめた。結衣の胸がたかしに押し付けられ、たかしは思わずどぎまぎしてしまうが幸い結衣は気付いていない。
結衣はさらにたかしに頬ずりをする。
妹とはいえ女子高生である。女子高生が密着して男としてなにも反応しないわけがなく、たかしの股間は膨らんでしまう。こちらも結衣には気付かれず、結衣はすりすりとたかしに二、三回頬ずりをした後たかしを解放した。
「よし!1時間後に家をでるからお兄ちゃん準備してね!」
そういって結衣はたかしの部屋から出て行った。
結衣の身勝手さに茫然としつつもたかしはプールへ行く準備を始めた。
一時間後、たかしと結衣とはるなはプールへ行くべく家を出た。
結衣は5cmのヒールのサンダルで、はるな7cmのヒールのサンダルを履いているので、それぞれ201cm、182cmの身長になっていた。こんな長身の女性二人が歩いて目立たないはずがなく、道行く人は皆結衣とはるなとすれ違うたびにぎょっとした顔で二人を見上げていた。
目的のプールへは電車に乗っていくのだが、あいにく車内は人が多く混んでおり二人分の席しか空いていなかった。
「結衣、はるな、二人分空いてるから座れよ。」
たかしは兄として妹二人に席を譲った。さすがに妹を差し置いて兄が座るわけにはいかない。
「ええ~。でも…。」
結衣とはるなは困惑しているがたかしも座るわけにはいかない。
「いいからいいから。座れよ。」
たかしが珍しく強く言うので二人は大人しく座った。
すると、結衣とはるな間の席の横に座っていた50代くらいのおばさんが急に立ち上がった。
「僕、お姉さん二人に席を譲って偉いね~。おばさん次の駅で降りるからここに座りなさい。」
おばさんにはたかしが姉二人に席を譲る弟に見えたようである。
「いえいえ。いいですよ。」
たかしは慌てて遠慮するがおばさんは引かない。
「いいからいいから。座りなさい。」
そう言っておばさんはたかしの手を引いて自分の座っていた席にたかしを座らせた。はるな、たかし、結衣が三人仲よく並んで座る形になった。たかしははるなと結衣の間に座っている。
無理やり座らされたたかしは仕方なくおばさんに礼を言って座った。
次の駅でおばさんは宣言通り下車した。
下車すると結衣が笑いながらたかしに話しかけた。
「お兄ちゃん、私たちの弟に見えたんだね。」
「そうみたいだな。」
たかしは苦笑しながら答えた。
「ねえ。せっかくだから今日だけ弟になってみない?お兄ちゃん可愛いから全然弟として見れるよ。」
結衣はきらきらした顔でたかしを見下ろして言う。座った状態でも結衣の方が目線は高いのである。
「はぁ?嫌だよ。」
当然たかしは拒否する。
「ねえはるなも弟欲しいでしょ?」
結衣はたかしの頭越しにはるなに話しかける。
「うーん。そうだねー。私も弟欲しいかも。」
はるなはわくわくした顔で答える。はるなはたかしが縮小病で小さくなったときから、たかしのことを弟のように思っていただけになんとしてもお姉ちゃんと呼んでほしかった。
「じゃあ決まりだね。今日だけお兄ちゃんは私たちの弟ね。私の事は結衣お姉ちゃん、ははるなのことははるなお姉ちゃんって呼んでね。」
結衣は勝手に話を進める。
さすがに妹のことをお姉ちゃんと呼べるわけがなく、たかしは反論する。
「はぁ?嫌に決まってるんだろ?」
たかしがそう言った瞬間、結衣はたかしの耳をつかんで引っ張った。
「たかしくん?お姉ちゃんに向かってその口のきき方は何?」
結衣はぐいぐいと耳をひっぱる。
痛さに耐えられず結衣の指を外そうとするがたかしの握力では結衣の指を外せない。
公衆の面前で妹に耳を引っ張られている状況から早く逃れたいたかしはすぐに結衣の言うことを聞くことにした。
「わかった。わかったからもう引っ張らないでくれ。」
「たーかーしくん。それがお姉さんへの口のきき方かな?許してほしいなら『結衣お姉さんごめんなさい』でしょ?」
結衣はさらに強くたかしの耳をひっぱる。
屈辱的ではあるがたかしは結衣に謝った。
「ゆ、結衣お姉さん…。ごめんなさい。」
たかしは顔を真っ赤にしながら言った。
すると結衣は耳から指を離し、満面の笑みでたかしの頭をなでた。
「うんうん。素直な方が可愛いよ。た・か・し・く・ん。もう生意気なこと言っちゃだめだぞ。」
結衣に頭をくしゃくしゃになでられながらもたかしはひたすら耐えた。
そんなたかしの姿を見ながらはるなが口を開いた。弟が欲しかったはるなにとってこのチャンスを逃すわけにはいかない。
「たかしくん。私の事もはるなお姉さんって呼んでね。」
「…。」
たかしは末っ子で小学五年生のはるなのことまでお姉さんと呼ぶことはさすがにためらっていた。
「たかしくん。お返事は?」
そう言ってはるなはたかしの足をぎゅっと踏んだ。たかしは今日はビーチサンダルでほぼ素足である。22cmの小さな素足の上にはるなの26cmの大きなサンダルがのしかかる。ヒールのついたサンダルなので底は固く、たかしの小さな素足をつぶさんばかりの激痛が走る。結衣が耳をひっぱったとき以上の痛みである。
「っっっ!!!!!!!」
あまりの痛みにたかしは声がでない。
ヒールのついたサンダルははるなの美脚をより引きたてるアイテムであり、はるなの女性らしさを強調するものであったが、今のたかしにとっては凶器でしかない。
「あはは。はるなえげつないね~。」
結衣はにこにこ笑いながらはるなに話しかける。
「だってたかしくんが言うこと聞かないんだもん。」
はるなも笑って答える。
笑いながらもぐりぐりとたかしの足をつぶそうとする。
「はるなお姉さん。すいませんでした!!!!」
たかしは痛みに耐えられずすぐに謝った。
小学五年生に謝る大学生の兄。非常に情けないが圧倒的な力の差がある以上はやむをえない。それに端から見たらたかしが兄だとは誰も思わないだろう。
「うんうん。最初から素直になればいいのに。」
そういってはるなはたかしの足の上から自分の足をどかした。
こうして今日一日の上下関係が確定したところで三人は目的の駅に着いたのだった。