「……えーっと…」

体育座りをしながら辺り…主に下の方を見回す才羽ミドリ。

そこには目を丸くする才羽モモイや逆に目を輝かせる天童アリス、青ざめた顔の花岡ユズと驚いている先生がいた。



…それもそのはず。
今のミドリは身長30m近くに巨大化していたからだ。

「どうしてこうなったんだろう……?」



時は少し前に遡る。



今日は偶然にもシャーレの当番にミレニアムサイエンススクールのゲーム開発部4人が揃っていた。

ゲーム開発部は全員、先生の手伝いをすることにやる気満々だったが、

”4人も同時に手伝ってもらってやっとできる事なんてそうそう無いから、休憩してても良いよ。”

と先生は気を遣う。

だが、さすがに先生1人でシャーレの業務を続けてもらうのは気が引けたので
ゲーム開発部は相談をし、その結果、先に才羽姉妹が休憩を取ることになり、アリスとユズは先生の手伝いを続けるということになった。



「…それにしてもまさか、私たちがまとめて当番になっちゃうなんてねー。」

「すごい偶然だとは思うんだけど、そもそもシャーレの当番って一体誰が決めているんだろう…?」

「うーん。当番は先生に決める権限はありそうだけど、先生のことだしなー。」

「先生はさっきも1人で業務を続けようとしてたし、誰かに頼りきるような性格には見えないよね。」

「先生なら全部1人でやり切ろうとしてユウカ辺りに怒られてそうだよねー。」

「……あ。」

「どうしたの?ミドリ?」

「もしかしたらユウカが私たちを当番にしたんじゃ……。」

「ユウカが?…まっさかー!」

休憩中にカフェを訪問し、そんな他愛もない話をする才羽姉妹。

しばらくするとモモイは机の上にある物が置かれてあることに気付く。

「これ、何だろ?」

「…瓶…みたいだけど、中に何かの液体が入ってるね。誰かの忘れ物かな?」

その液体は少し黒めの紫色をしていた。

「でも、何かコレ、美味しそうな感じがしない?」

「……お姉ちゃん、まさか」

「丁度喉も乾いてたことだし、飲んじゃおう!」

「ちょっ…ダメだよ!お姉ちゃん!持ち主に怒られちゃうよ!!」

思いっきり栓を開けて飲もうとするモモイ。
ミドリはそれを止めようとする。

「…あっ!ミドリ!そんなに無理に奪おうとしたら…!」

瓶を奪おうとするミドリに対し、バンザイのようなポーズを取りながらモモイはうっかり瓶を高く放り投げてしまい、そのまま2人はミドリが上になるように倒れ込んでしまう。



……バシャッ!



「痛たた…」

「ミドリ!?大丈夫!?」

「…幸い、瓶は割れてないし、私は大丈夫。でも……」

放り投げられた瓶の中の液体はほぼ全部がミドリにかかってしまっていた。

「あちゃー。ミドリ、見事にびしょ濡れだね…。」

「…何か拭くもの持ってくるよ!」

そう言ってシャーレの備品のタオルを持ってきたモモイはミドリの身体を拭き始める。

「…もう、お姉ちゃん。この瓶の持ち主が分かったら一緒に謝りに行かないとダメだからね?」

「分かったよ。ミドリ。本当にごめん…。」

「…あっ。」

「そろそろユズちゃんたちと交代する時間じゃない?」

「ホントだ!そろそろ戻らないと!」

ある程度は拭き終わったので才羽姉妹はユズたちと合流しようと動く。



「…アリスちゃん、そろそろ交代の時間…だね。」

「しかし、モモイとミドリはあらわれる気配がありません。何らかのプログラムエラーでしょうか?」

「アリスちゃん、この世界に…その…バグなんてものは無いと思うよ。…多分。」

”この世界自体がプログラムで出来てたりして…?”

「…えっ!?」

”あはは、冗談だよ。”

そんな会話をしながら才羽姉妹を待つユズ、アリス、先生。
そこから5分くらい経ってからようやく才羽姉妹が現れた。

「みんな!ゴメン!少し遅れちゃった!!」

「すみません。皆さん。」

”ううん、大丈夫だよ。ってあれ?”

”ミドリ、何だか濡れているけど、どうしたの?”

…先生がそう聞こうとした瞬間。



…バタッ!



”…ミドリ!?”



ミドリはバタリと倒れてしまう。

「ミドリ!大丈夫!?ミドリ!ねえっ!」

すぐにみんながミドリの元に駆けつけ、モモイが心配そうな声でミドリに話しかける。

「ミドリは状態異常にかかってしまったんでしょうか?それならば、回復アイテムをすぐに用意する必要があります!」

「…ミドリ……あれ?」

「ミドリの身体…何か少し大きくない?」

ユズの言う通り、ミドリの身体は服まで含めて少しだけ大きくなっていた。



…その事に気付いてからは早かった。



いきなり猛スピードで大きくなりだすミドリ。
デスクなどを押しのけ、シャーレの窓ガラスを割り、外へとはみ出てしまった。

巨大化がようやく収まったかと思うとミドリは目を覚まし、現在へと至る。







「……というわけなんだけど。」

一部始終を知っているモモイはみんなに何があったかを話す。

「アリス、知っています!巨大化は敗北フラグであると!」

「何と戦うのさ!?それに私が悪役なの!?」

「そ、それにしてもミドリがここまで大きくなってしまった原因って…」

”…その瓶に入っていた液体、だよね?”

「…はい。」

そうやり取りをすると先生はしばらく考え込み、何かを思い付く。

”…サヤなら何か知っているかも?”

「サヤって、あの薬師サヤさんですか?」

”うん。サヤはこういうの手慣れてるかなって”

”サヤは前に幼体化する薬を作っていたから、”

”それと似たような感じで元に戻す薬も作れそうな気がするんだ。”

「なるほど…。でもそうなるとサヤさんは今どこに?」

”今日はシャーレには来ていないみたいだから、多分、山海経じゃないかな?”

「それじゃあ、ミドリを元に戻してもらうためにも山海経へ急がないと!」

「アリスもみんなと一緒に冒険してみたいです!」

「わ、私はちょっと…ほら、今のミドリ、目立つし…。」

「何言ってるのユズ!こんなこともあろうかと先生に頼んでシャーレ特製ユズ専用ロッカーを作って貰ったからこのロッカーの中に入って!」

「い、いつの間に……!」

そう言いながらモモイはミドリの巨大化で少し凹んでしまったシャーレ特製ユズ専用ロッカーにユズを押し込む。

「では、ユズはアリスが持ちますね!」

「先生はどうするの?」

”少し心配だからついて行きたいけど…”

ミドリの巨大化によって若干崩壊しつつあるシャーレを横目に眺める先生。

「さすがに、今のシャーレを放置するわけにはいきませんよね…。」

”…うん。”

”だからシャーレに残って待つことにするよ”と言おうとしたが、そこに早瀬ユウカが現れた。

「それなら、私に任せなさい。」

「あ!ユウカ!」

「まったく、シャーレに巨人が現れたとか何とかモモトークで聞いてたまたま近くに居たから来てみたらあなたたち、また何かやらかしたのね?」

「やらかしてないもん!ちょっと喉が乾いてただけだもん!」

「お姉ちゃんがやらかしたのは事実でしょ…。」

「うっ…。」

「せっかくあなたたちをまとめて当番にしてあげたのに、これじゃあ当番どころじゃないわね。」

「あ。やっぱりユウカが私たちを当番にしてたんだ。」

「…とにかく、シャーレの事は一旦私が引き受けるから、先生とあなたたちは山海経へ急ぎなさい。」

”ありがとう、ユウカ。”

「いえ、お礼を言われるほどの事ではありませんから。」

というわけでシャーレはユウカに任せ、先生とゲーム開発部は山海経へ向かおうとするが…



ズシーン!……ズシーン!……



「ちょっ!ちょっと待ってミドリ!早いって!」

「あ。そっか。今の私じゃ歩幅が全く違うからみんなは追い付けないんだ。」

「……それじゃあ」

ミドリは3mはありそうな手をみんなに差し伸ばす。

「私の手に乗ってください。肩に乗せますので。」

「……せっかくだから私は頭の上に乗ってみたい!」

「ちょっと、お姉ちゃん。そもそも私がこうなったのお姉ちゃんのせいだって分かってる?」

「うっ…それは…分かってるけど…。」

「アイス。」

「アイス?」

「元に戻ってからアイス1個おごってくれるなら頭の上に乗せてあげる。」

「まさかの搭乗料金!?」

…モモイはしばらく悩んだのち、アイスをおごる代わりに頭の上に乗せてもらうことにした。

そのあと、アリスとユズがミドリの左肩に乗り、今度は先生を乗せる番になった。

”…。”

「…? どうしたんですか?先生。」

”いや、ミドリの手、大きくても綺麗だなって”

「…っ! あっ、ありがとう…ございます…。」

「…。」

”…。”

お互いに少し照れてしまい、黙り込む2人。

「ちょっと!そこ、ギャルゲーみたいな会話してないで早く行こうよ!」

「ギャルゲーとか言わないで!」

モモイの声ではっとした先生は急いでミドリの手に乗る。

するとミドリの手はまるでエレベーターかのようにミドリの右肩まで上がった。
ミドリが気を遣っているのかとてもゆっくりとしたスピードだった。

「皆さん、しっかり掴まっててくださいね。」

モモイはミドリのネコミミヘッドホンの片耳に、アリスはユズの入ったロッカーを片手で持ち、もう片方の手でミドリの髪を、先生は両手でしっかりとミドリの髪をそれぞれ掴んでいた。

「スーパーミドリ号、発進!」

「……やっぱアイス2個ね。」

「料金増えた!?」

「余計な選択肢を選ぶとモモイのペナルティが増えていくシステムですね!」

そう言うアリスの持つロッカーの隙間の中から下を見下ろすユズ。

「た、高い……怖い……!」

「ユズちゃん、あんまり下は見ちゃダメだよ。」

「でも、ロッカーごと落ちたらと思うと…!」

”ユズ、アリスのことを信じてあげて。”

「アリス、この冒険が終わるまでユズのこと絶対に離しません!」

「…うん。ありがとう…。」







「それじゃあ、改めて、ゲーム開発部ごー!」

「歩くのは私だけなんだけどね…。」



ズシーン!……ズシーン!……



人や自動車などを踏まないように足元に気を付けて歩くミドリ。
しばらくするとある物が目に付いた。

「あそこは…工事現場でしょうか?」

”ちょっと気になるね。”

「ミドリ!行ってみよう!」

「寄り道クエストを引き受けてレベルアップですね!」

「…私はもう帰りたい…。」

ミドリたちが工事現場に近付くと現場の中から犬の姿をしたガタイの良いおじさんが出てきた。

「何だ何だ!でっけぇ嬢ちゃんだな!」

「すみません。今はこんな大きさでお騒がせしています…。」

「よく分からんが嬢ちゃんも大変なことになってるんだな!」

「おっ!よく見りゃ肩に乗ってるのは先生じゃないか!」

”ここは一体何の工事をしているんですか?”

”それに「嬢ちゃん”も”大変」って?”

「よくぞ聞いてくれた!この建物はこの間チンピラ共が荒らしすぎてもうダメになっちまったんだ!」

「そこで一回取り壊して建て直す…はずだったんだが手違いで壊すための道具が足りなくてだな…。」

「先生!何とかならないか?」

そう言われると先生は考え込む。

「う〜ん…。私たちに今そのような道具は持ってませんし、私たちも急いでいるので…。」

"…いや、何とかなるかも。"

「…えっ?…先生?」







「おーい!みんな避難し終わったぞー!」

「それじゃあ一応、やってみますよ?」

建物の周りから人がいなくなったのを境にミドリは思いっきり右足を高く上げる。
するとミドリのブーツは建物の屋上を軽く越えてしまった。

ミドリのブーツが屋上に触れるとミドリはゆっくり、そしてじっくりと建物を踏み付ける。



グシャァァァ……!!!



そうすると壮大な音を上げつつもそれとは裏腹に建物はまるで砂のお城を崩すかのように、いとも簡単に崩壊した。

その後、ミドリはもう片方の足を建物に下ろし、残りの残骸を躊躇なくしっかり踏み付ける。

「おおー!スーパーミドリキックが炸裂したー!」

「…キックじゃなくて踏みつけだと思う…。」

”ミドリ、もう十分じゃないかな?”

「…。」

”…ミドリ?”



ミドリはみんなの声に気付かず、足踏みを続ける。ミドリのブーツが踏み込まれる度に大きな足音が辺りいっぺんに広がっていく。
しばらくすると建物のあった場所は見事にミドリの足跡だらけになっていた。



「…これ、気持ち良い……かも♡」

「ミドリ!?」

”ミドリ!それ、目覚めたらダメな奴!”

「…へ?…はっ!先生!私、今何か言ってましたか!?」

「パンパカパーン!おめでとう!ミドリは破壊神ミドリにしんかした!」

「進化してないよ!?破壊神とかそんな称号いらないからね!?」

”…ミドリ、本当に目覚めちゃダメだからね?”

「…すみません。先生…。」







「おおー!きれいに壊してくれたなー!」

「でっかい嬢ちゃん!先生!どうもありがとうな!また今度、シャーレにお礼をしにいくぜ!」

「いえ、たまたまですから…。」

”偶然、ミドリが大きかったから何とかなった事ですから。”

そんなやり取りをしてから工事現場を後にするとミドリは再び山海経へと歩きだす。



ズシーン!……ズシーン!……



「しっかし、建物を壊すミドリ、すごい迫力だったなー!今度やる時はロケットパンチしてみよう!」

「私の腕は取れないから…。あとお姉ちゃん、アイス3個ね。」

「また増えた!?せめて1個は半分こにしない!?」

「今のミドリならラスボスにだって勝てそうです!」

「いや、この世界にラスボスなんていないから…多分。」

「…でも建物を破壊するミドリ、…ちょっと怖かった…。」

「…ごめんね、ユズちゃん。」

ミドリが歩きながらゲーム開発部の面々と会話していると大きくなったおかげかすぐに山海経へとやってきた。

「山海経に着きましたけど先生、サヤさんはいつもどこにいるんですか?」

”サヤならたしか、あっち方面かな”

「ちょっとまってミドリ!ユウカからモモトークが来てる!」

「…内容は?」







『サヤがシャーレを訪れてきたわ。』

『どうやら入れ違いのようね。』

『そっちは今どこ?』

『山海経に着いたとこ!』

『ならそっちで待っててもらえるかしら?』

『私がサヤに事情を話して、すぐに山海経へ帰るように伝えておくから』

『オッケー!』







「…だってさ!」

「なら、しばらくは山海経で待たないといけませんね。」

「…というか、最初からモモトークでサヤさんに連絡すれば良かったんじゃ…。」

”…言われてみれば確かに。”

”なんで今まで気付かなかったんだろう。”

「う〜ん。灯台下暗しってやつかな!」

「…あら?」

ミドリが山海経で突っ立っていると春原シュンが先生に気が付き、近付いてきた。

「…やっぱりそこにいるのは先生ですね?」

”…シュン!”

「巨人が現れたと騒がれてたので来てみたら先生もご一緒だったんですね。」

「…うぅ。私、そんなに騒がれているんだ…。」

「…それで、そちらの方々は…?」

先生はシュンに事情を説明する。



「…なるほど。確かに、サヤさんならミドリさんを元の大きさに戻すことが出来そうですね。」

「以前、私がサヤさんの薬で子供に戻ってしまった時のように。」

「あっ!それじゃあこの人が…!」

”そう、サヤの薬で幼体化したシュンが同じくサヤの薬で元に戻ったんだ。”

「それで、しばらくサヤさんを待つ必要があるんですよね?」

「でしたら、一旦、梅花園へ来ませんか?」

「…ほら、サヤさんにとっても山海経のどこかってだけでは分かりにくいでしょうし…。」

”わかった。それじゃあお言葉に甘えよう。”

そう言うと先生はさっそくモモトークでサヤに『梅花園で待ってる』と書き残し、ミドリに同意を求めた。

「分かりました。それではシュンさんは私の手の上に乗って、道案内をお願いします。」

ミドリはシュンを乗せるとさっそく梅花園に向かって歩きだした。



ズシーン!……ズシーン!……



「…。」

「どうしたんですか?シュンさん。」

「いえ、こうしてこの高さから山海経を見下ろしているとなんだか新鮮で…。」

「あはは!中々こういう高さから街並みを見下ろす事もないからねー。」

「アリスもこういった絶景を見るだけで経験値が貰えそうな気がします!」

「…そういうシステムのRPG…あったなぁ…。」

梅花園はそこまで遠くはなく、すぐに着いた。



...



「…というわけですので、皆さん、ゲーム開発部のお姉さん達と仲良く遊びましょうね?」

「「「はーい!!!」」」



”…シュン、もしかして最初からこのつもりだった?”

「…バレちゃいましたか?」

「丁度、園児たちを相手してくれる方々が欲しかったところなんです。」

”それは別にいい、けど”

「けど?」

”ちょっと心配…かな。”

「ふふっ。でしたら様子を見に行ってあげてください。」

「私はココナちゃんと買い出しに行ってくるので。」







「ちょっ、そんなに高いとこに登ったら危ない…ってそんなとこ触らないで!くすぐった…あははは!」

大きいミドリはほとんどの園児たちの格好の的で頭の上に登ろうとしたり、服に潜り込んだり、体育座りしているミドリの足を滑り台のように扱ったりなど一度に多くの園児たちを相手にしていた。



「それでねー、その時、私の超必殺技のウルトラモモイパンチがヒットしたの!」

一方でモモイは適当な物語を園児たちに聞かせていた。
関心を持つ園児も居れば、「つまんなーい!」とヤジを飛ばす園児などある意味好評を得ていた。



「ねえお姉ちゃん!そのロッカーの中には何が入ってるの?」

また一方でアリスとユズは園児たちに関心を持たれていて、特にアリスが決して手放さないユズ…正確にはユズの入っているロッカー…に興味津々だった。

「…私…このドアが開いたら…死ぬ……!」

「大丈夫です!ユズとユズが入ったこのロッカーは冒険が終わるまで絶対に離しません!そう約束しましたから!」

「……アリスちゃん……!」







そんな風にゲーム開発部が園児たちと遊んでいると園児たちは疲れ果てたのかみんな梅花園の建物の中で眠ってしまった。

”みんな、お疲れ様。”

「あ!先生!」

「…。」

”どうしたの?ミドリ。”

「いえ、その…。」

「何か言いたいなら話してみなよ!ミドリ!」

「…皆さんの事は信用しているんです…。信用しているん…ですけど…。」

”…?”

「もし、このまま元に戻らなかったらと思うと…なんだか悲しくなってきて…。」

「この大きさじゃあゲーム開発部としても活動できませんし、絵も描くことすら難しいです…。」

「…ミドリ…。」

「…なぁ〜んだ!そんなことか〜!」

「お姉ちゃん?」

「例えどんな大きさになっても、どんな姿になったとしても、ミドリはミドリだし、私のかわいい妹で、ゲーム開発部のイラストレーターだよ!」

「みんなもそう思うよね!」

先生、アリス、ユズがそれぞれ頷くとみんなはミドリを見つめる。

「お姉ちゃん…!みんな…!ありがとう…!…アイス1.5個…!」

「ちょっ!?減らしてくれたのと私の半分こ案採用してくれてありがたいけどまだアイスの事引っ張るんだ!?」

「パンパカパーン!ミドリとみんなの絆値が上がりました!」

「…これ以上絆を深めるとどうなるんだろう…?」

”あはは…。”







「やっと着いたのだー!」

”…サヤ!”

「ぼく様ほどの天才になると移動中でも巨大化した人間を元に戻す薬を作れるのだ!はい、先生!」

サヤから薬を受け取る先生。

”これ、どう使うの?”

「頭の上からかければすぐに元に戻るはずなのだ!」

「…それじゃあ、先生。私の手の上に乗ってください。」

先生はすぐにミドリの手に乗るとゆっくりと頭の上まで上昇した。

”…それっ!”

薬がミドリの頭にかかったのを確認するとミドリはすぐに先生を降ろす。

そして少しするとミドリの身体が段々と縮んでいき…

”元に戻った……!”

「良かった〜。いやぁ〜、一時はどうなることかと…。」

「お姉ちゃん、アイスの事、忘れないでね?」

「わ、分かってるって!」

「パンパカパーン!これで今回の冒険は終わりですね!アリスも経験値を得られたような気がします!」

「…やっと、帰れる…!」



「…それにしても、おかしいのだ。」

”…サヤ?”

「ぼく様がシャーレのカフェに忘れてしまった薬が無かったのだ。」

”…それってどんな薬?”

「ふふーん、なんと!一時的に大人になれる薬なのだ!」

「少し黒めの紫色をした薬なんだけど、どこかで見なかったか?」

「少し黒めの…」

「…紫色?」



この瞬間、モモイの脳裏にある記憶がよぎる。



「アイス1個おごってくれるなら頭の上に乗せてあげる。」
「……やっぱアイス2個ね。」
「あとお姉ちゃん、アイス3個ね。」
「…アイス1.5個…!」
「…アイス!」
「アイス!」
「アイス」



顎を引きながらモモイは銃を構える。

「ア、」

「…あ?」

「お姉ちゃんまさか…!」

「アイスおごらなきゃいけなくなったじゃ〜ん!!あなたたちのせいだよ〜!!!」



…ヂュヂュヂュヂュヂュヂュヂュヂュッ!!



…こうして、モモイが壊した梅花園の備品は無事シャーレが負担することになり、モモイとミドリは仲良くアイス2個を1:3で食べましたとさ。



おわり