かえでが足を広げ、仁王立ちのポーズをとると幾つかの山と
町が彼女の巨大な靴で磨り潰される。しかしかなり切羽詰って
いるかえでにはそんな事を気にしている余裕など無かった。
 スカートを穿いていたのが吉と出た。焦りながらパンツを太股
まで下ろし、そのまましゃがみこむ。その時、かえでの小ぶりな
お尻が降下する際に圧縮された大気が地上に暴風をもたらした
が、この後に起こる災害に比べたらほんの些細な出来事だった。
 そのままの意味で国を跨いでいるかえで。その両足は1つの
巨大都市を挟みこんでいる。地上に、少女の蒸れた汗の匂いが
充満していく。
 かえでの足元の、彼女から見たらちっぽけな都市では、数千万人
もの人間がパニック状態に陥っていた。巨人族の存在は知って
いる者も居たが、互いの種族が直に接触をするのは数万年振り
の出来事だった。
「んっ・・・・・・」
 かえでが下腹部の力を抜くと、まるで決壊したダムのように尿道
から勢い良く黄金水が噴出し、狙いを定めたわけではなかったが
人々が密集する高層ビル群へと直撃した。
 少女の幼い蕾から迸る直径10kmの熱い聖水は、地上を大きく
抉り取り、激流となり数秒もしない内に都市を洗い流した。
 しかし少女の放尿は止まらない。当の本人は恍惚の表情を浮か
べ、広がってゆく黄金の海を微笑みながら見つめていた。
 聖水の大津波は全てを飲み込みながら領土を広げ、結局国を
3つ沈めた後ようやく沈黙した。
 かえでの放尿の勢いが収まってきた頃、奇跡的に無事だった都市
では安堵の声が上がっていた。その都市が在る国もかえでの影
で覆われていて、その場所は丁度かえでの臀部の真下だった。
 彼女の津波も後ろ側には勢いが足りず、その都市の手前の標高
8kmを誇る山脈に遮られている。後はかえでの排泄行為が終わり
、そのまま立ち去ればその都市は平和なはずだった。
 都市から上空を見上げると、そこにはかえでの菊門の大パノラマ
が広がっている。その直径20kmという超巨大さ故に、キュッと健康
的に引き締まったスジの一本一本を数えることさえ出来た。
 誰かが空を見上げている。巨人族の少女の菊門をバックにTV
取材のヘリコプターが飛んでいるのが見えた。その菊門がぷっくり
と膨らんだのを誰かが指を刺した時、上空のヘリコプターが爆発し
た。何人かは菊門の膨らみの中心に現れた暗黒の大穴を見たか
もしれないが、大地を揺るがす爆音が鳴り響く前に、人も建物も例外
無く消し飛んだ。
 かえでが放ったガスは塵の集まりにも満たない都市を綺麗さっぱ
りこの星から消滅させ、更に大地を舐めるように放射状に広がる。
 爆風は森やちっぽけな町を飲み込み、山脈へとぶつかるとようや
く止まった。しかしぶつかった時に山肌を殆ど持っていかれた山脈
は、黄金水の海を押し留める力も無くゆっくりと崩壊していった。
 勢いを取り戻した黄金水が、かえでのガスが作り出した半径100km
のクレーターに流れ込み、新たな巨大湖を作り出していた。
「きゃっ!・・・・・・・・・誰も見てないよね・・・?」
 放尿を終え、うっかり下腹部の力を緩めすぎていたかえでは自分
の放屁の音の大きさに驚いた。顔を真っ赤にしながら辺りを見回すが、
どこを見ても地平線しか見えない。
「ガス、溜まってたのかなぁ。最近便秘気味だし」
 そう呟きながら数百万人を葬り、世界地図の形まで変貌させた菊門
をふにふにと摩る。
 かえではパンツを穿き直し、立ち上がると股間の滴を拭き取ったティ
ッシュをクシャリと丸める。
「すっきりしたことだし!今日はどこで遊ぼうかなっ♪」
 嬉しそうに背負ったランドセルを担ぎ直し、丸めたティッシュを投げ
捨て、足元の事など知らずに歩き出した。