◆優奈のおかえし◆

俺はこの日も何もすることなくただ惰性ですごした。
何の部活にも入っていない俺は授業が終わると同時に学校をでて帰途をたどる。
“なにか”忘れていたような気がするが、まあ、いいだろう。帰りにコンビニで立ち読みをして、ゲーセンに行く。まるでそれが日課であるかのように。俺は惰性を日課としてこなしていた…

そして次の日がやってきた。チャイムがなると同時に校門をくぐる。そこまでは同じだった。何も変わらない普通の常軌を逸しない平凡な行動。だがそれは一人の女子生徒の呼びかけによって変わってしまった。
「ジュンくん」
誰だ、俺を呼ぶやつは。俺は平凡が好きだが周りから白い目をされるようなことはやっていない。そっけなく振り向くと、そこにいたのは、同じクラスの倉本優奈だった。
俺と同じくらいの背丈、整った顔立ちに黒髪のショートヘア。
「どうした、倉本」
俺の感情のこもっていない返事に呼応したのか、優奈の表情は急に雷雲のように曇りがかった。はて、俺はこいつになんか恨みを買われることをしたかな、そう思い悩んでいると、いつの間にか俺の意識はなくなっていた…

俺に意識が戻った。くらくらするがとりあえず周りを見渡してみる。あたり一面銀色の無機質な壁に覆われている。ここはどこだ?ふと、上を見上げてみる。薄い木目調の空、これはどこかの家の天井か?しかし出口がない、銀色のかべにノックをしてみるが何も反応はない。俺は夢を見ているのかと思い悩みつつ、自分のほおをひっぱて見たりしたが、痛い。どうやらこれは、夢じゃあないようだ。俺が途方にくれていると、ドアのない部屋のドアが開く音が聞こえた。

戸が閉まる音がした、誰も入ってきていないのに。
いったいなにがどうなっているんだと俺が考えていると、銀色の壁のふちから巨大な人影が現れた。こ、こんなことがあるのか、平凡の繰り返しであった俺は失神しそうになった、今から俺はこいつに襲われるのか、潰されるのか…。幾秒か俺は身をかがめていたが襲ってこない、勇気を振り絞って、正体を見ようと試みた。その巨人の正体はあの倉本優奈だった。そして、何とか意識は保った。しかし、俺の心臓はまだバクバクしている。どでかい優奈がそこにいる。どういうことだ?俺はがんばって優奈の表情を見てみた。泣いているのか?かわいい顔がゆがんでいる。ナミダでぐしゃぐしゃになっている。な、なんだ?俺がどうしたのか?優奈は泣き続けていた。このままでは訳がわからないし、俺的にも目の前で泣かれていても困るので、とりあえず訳を聞いてみた。
「倉本、お前どうかしたのか?そんなに泣いていて。」
久しぶりに情がこもった声だった。しかし、優奈は泣き続けるまま。俺は執拗に質問してみた。
「何で泣いているんだ?」
「うううぅ…うぅ…」
返答がない。このままでは埒が明かないので、自分を謙らせてみる。
「もしかして俺が何かしたのか?」
優奈の泣き声が少し弱まった。なんだ、俺が悪いのか。はて、なんかしたっけな?まあいい、とりあえず謝って、泣くのをやめさせよう。
「ごめん」
なんだか、訳のわからない返答になってしまった。ごめん、っていっているのに当の本人がその原因がなんだかわかっていない。これじゃあ、優奈を逆上させてしまうんじゃないかと悔いていると優奈が口を開いた。
「謝ったって、やだよ…」
優奈らしいかわいく柔和な声だ。それはいいとして、これはどういうことだ。どうやら俺はこいつに何かしてやらかしてしまったらしい。俺は過去の関わりを模索していると、優奈は更に言葉を続ける。
「わたしがバレンタインチョコをあげたのに、昨日ジュン君からは何ももらえなかった…
どうして、どうしてなの…」
しまった、俺はこいつにバレンタインチョコのお返しをするのを忘れていた。これじゃ、優奈が起こるのも当たり前じゃないか。とにかく、謝ろう。
「すまん、倉本。俺、すっかり忘れていた。ごめんな…」
これは心の芯からの謝辞だ。こんなことでは許してもらえないだろうと思い更に俺は続ける。
「ごめん、優奈。本当にごめんな、返すの忘れてしまって。でも、お前からもらったチョコはうまかったぞ。」
「…嘘だ…」
優奈の心の傷は相当深いらしい。俺は、乙女心というのは理解できないが、せめて一人の少年として謝り続ける。
「ほんとうにごめん。でも、お前のチョコレートは本当においしかった!」
俺はまるで法廷での見苦しい弁解のように謝った。しかし、
「…わたしはジュン君のことを好きだったのに…。だからチョコあげたの…本命を…。…でもジュン君はわたしのことなんかこれぽっちも想っていないのね…」
俺は、言葉が見つからない。分不相応にあたふたしていると、優奈は突然ふっきれた。
「嫌だ、嫌だ!ジュンのばかぁ!うわああぁぁぁ!」
身を後ろに引いた。声が耳に響く。そうだ、なぜか優奈は巨人だった。耳を押さえながら、悔やんでいると、
「キャンディもらえなかった!わたしはチョコをあげたのに!」
優奈は大粒の涙を流しながらわめいている。俺は、自分のみっともなさに何もできない。うつむいていると、突然巨大な手につかまれた。俺は、抵抗するもむなしく、手の主の想うがままに運ばれた。目の前にあるのは、巨大な優奈の顔だ。どうする気だ?こんな体格差では俺をつぶす気ならいくらでもつぶせる。
「おいしそう!とってもおいしそう!」
「な、何だ?なにを言っているんだ?」
「ジュン君をキャンディ代わりにするの!」
ま、まさか!そんなわけない、優奈は俺を食う気なのか?
「いただきまーす!」
「う、うわ!ま、待て!」

優奈のうすいピンク色の唇が近づいてくる。口がゆっくりと開いていく。真っ白な歯が現れ、そこから優奈の舌が伸びてくる。俺はびくっとしたがどうしようもできない。優奈の舌が俺をひと舐めした。まるでそれ自身が生き物かのように。つばのにおいが立ち込める。そうするうちについに俺はピンクの門をくぐり、赤い洞窟に入っていった。
唇が完全に閉じられた。周りを見渡してみる。紛れもなくこれは口の中だ。足元には優奈の舌が広がっている。優奈のかわいらしさはどこ吹く風、これはまるで優奈には似つかわしくない。唾液でべとべとしていて、表面はぶつぶつしている。回り三方には四角いごつごつした優奈の歯がある。恐ろしい。これで噛み砕かれたら一塊もないだろう。目の前にはのどちんこが居座っている。これは優奈らしくかわいらしいものだと思った。唾液で輝いておりどことなく神秘的だ。しかしその奥は奈落への入り口だ。俺は、回れ右をして何とか優奈の口をこじ開けて脱出しようとしたが、まるで待ち構えていたかのように突然舌が暴れだした。優奈の舌は俺を嘗め回し、ついに俺は全身唾液まみれになった。優奈の唾液のにおいはすっぱい。舌は容赦なくなめ続ける。ぶにょぶにょした舌が俺の全身をなめる。5分ほど経っただろうか、前方に光が差した。優奈が口をあけたらしい。奈落からハアハアとかわいらしいあえぎ声が聞こえる。俺は口が開いている隙に脱出を試みたがさすがこの口腔の主、優奈。俺が舌先までついたかと思うとひょいと舌先を上げ、俺は奈落の目の前まで転がされた。あぶない、もう少しで奈落に落ちるとこだった。舌がぐにょぐにょ動いたかと思うと舌と口蓋の幅が広くなり、舌が暴れだした。俺を飲み込む気だ。俺はすかさず優奈ののどちんこにつかまり優奈の軟体生物の攻撃を防いだ。優奈ののどちんこに捕まっている俺を、その舌が振り落とそうとしてくる。しかし、人間の舌はそこまでは長くない。優奈の舌は俺の目の前でかわいらしくゴニョゴニョしている。
俺は安堵の息を漏らした。すると奈落からかわいらしい声が聞こえてきた。
「ハアハア…おいしかったのに…。ジュン、どうしてわたしを拒むの!どうしてわたしのキャンディになってくれないの!」
怖い。優奈は完全に理性を失っている。キャンディという身分になっている俺は身じろぎした。何というか、まさに優奈の本能が目覚めたのか。優奈は俺を食う気だ。優奈の舌が、目の前でうごめいている。獲物を欲する野獣のように俺の目の前で暴れている。今にも優奈の軟体生物がさらに伸びてきてつかまりそうだ。助けてくれ、正気に戻ってくれ。数秒間かたった、俺と軟体生物の絶対距離は変わらないのに俺は明らかに劣勢になっていた。つらい。俺が食われるか、優奈が俺を食うか、いくらかわいい女の子だからって食われてたまるか。何とか俺は耐えていた。脱出して優奈に謝りたい。そう思っていた。しかし、ここは優奈の口腔内だった。言うならば優奈の支配する空間である。前ぶれもなく、優奈の口がまるで野球ボール一個ぐらい入りそうなぐらい大きく開いた。そしてフォークが口の外側に見える。終わったな。優奈は俺をのどちんこから叩き落すつもりだ。こんなシチュエーションで俺が生存できる確率は万にゼロに等しい。俺が覚悟を決めてしがみついているとフォークは突然止まった。
「ジュン君、わたしがおいしくいただくからね!がっかりしないでね!ウフフフフ!」
「優奈、俺が悪かった!本当にごめんな!…だから、口の中から出してくれ!」
俺の声は少し涙がかってった。精一杯の応対もむなしく、
「ジュン君は謝らなくていいよ!わたしのキャンディになってくれればそれでいいもん!」
そう吐き捨て、フォークが俺に攻撃してきた。痛い、でもあきらめたら食われる。抵抗むなしく、俺はついにのどちんこから落とされてしまった。落下した俺を優奈の軟体生物は手厚く歓迎した。舌で嘗め回し、ときどき俺を唾液溜りで唾液漬けにし、十分すぎるほど味わられたあと、ついに俺は奈落の目の前まで来てしまった。落ちたとき覚悟はしていたが、いざくるとなると、やはり怖い。胃に落ちたら必ずといってもいいほど死ぬだろう。優奈の舌がのけぞり始めた。俺は滑り落ちるまいと必死にしがみつく。しかし最後には唾液で滑ってしまい奈落に吸い込まれてしまった。

かすかに咽頭を見て、俺は、優奈の食道に入り、やがて通過し、胃についた。
俺はついに胃まできてしまった。目の前に広がる緑色の胃液の海、そしてそれに浮かぶランチと思しき食物の残骸。優奈の体液漬けにされたそれらはゲロのにおいを放っていた。気持ち悪い。さっきまで口の中にいたことが幸せに感じられるほどだ。のどちんこがかわいかったし、優奈の狂気じみた声も聞こえた。しかしここはかわいいものなどないし、沈黙の世界である。しいて楽観視するなら胃壁がテカテカ光っていることだろうか。それも、あくまで光が織り成す偶然の産物であり、はっきりいってグロい。胃壁からは胃液が染み出してきている。これは優奈じゃない、あのかわいらしい容貌はどこに言ったのか、そう思えるほどだった。俺はとりあえず溶かされないように優奈の食べたにんじんと思われるものにつかまって胃液から脱出した。少し胃液につかっていただけで皮膚がひりひりする。
もう少しで優奈の栄養になるところだった。しかし、周りからはじゅうじゅうと解ける音がする。年頃の女の子に相応しいかなりの強酸だ。こんなところにいつまでもいるわけには行かない。俺は幽門目指して、進んでいった。そのときだった、優奈が動いたのか、胃液が大きく波打った。俺は飲み込まれ、意識を失った。

気がつくと俺はまだ優奈の中にいた。しかしここはあの胃の中ではない。ゴムチューブみたいな異様に狭い空間だ。とごろどころ大きな泡が立っている。どこだ?いやに足元がふわふわする。まるでじゅうたんの上にいるようだ。柔らかい。もしかしてこれは柔毛か?だとしたらここは小腸か。俺の優奈の体内探険も佳境に入ってきたらしいな。となると、後は小腸→大腸→肛門というルートか。いやな気がしたが仕方ない。俺は優奈の乙女心を踏みにじったんだ。下劣だ。ここから脱出して優奈に謝る義務がある。いや義務感からじゃない、なんだろうなこの感覚は。…まあいい、とりあえず俺はこの小腸地帯を抜けるため前進した。かがみながら進んだ。そうでもしないと狭くて進めない。でも居心地は悪くなかった。床はふわふわしていて気持ちいい。さっきの胃の空間に比べたらずっとましだ。そう思っているうちに分かれ道に来た。俺の知識が正しければこの二者は虫垂、大腸だろう。もちろんいくのは大腸だ。俺は迷わず進んだ。

優奈の大腸はさっきまでのところに比べて色が暗い。恐らく大腸の働きが水分を吸収することだからだろう。俺はためらわず進んでいった。早く脱出したい、そう思っていた。そして、ついにやつは現れた。目の前をふさいでいるのは茶色い粘土質の物体。胃の中と同様に強烈なにおいを放っている。いうまでもなく、これは優奈のウンコだ。俺はこんなものを見ていいものかと思った。だって、年頃の女の子のウンコだぜ。あのかわいらしい優奈のウンコだぜ。普通は見てはいけないだろう。このことを知ったら、優奈はきっとますます狂って赤面するだろう。…いろいろ考えてしまったが、今俺がすることは優奈の体内から脱出することだ。まずこのウンコをどうにかしなくてはいけない。この先に肛門があるのは間違いない。ウンコをどかすしかないのか。仕方ない、すべての責任は俺にある、そう思い、素手で掘り起こそうとした。片手を優奈のウンコに突っ込んだとき、何かが決壊する音が聞こえた。ウンコが奥へ進んでいく、いやらしい音がその奥から聞こえてくる。優奈が排便を始めたんだ。俺は流れに乗って進んでいった。やがて、肛門をくぐり、俺は優奈の体内から脱出した。

俺か落下した場所は水の中ではなかった。周りには優奈のウンコが寝そべっている。地面は…新聞紙だった。俺はなぜか安堵した。脱出できたとしても、水に流されて絶命ということも考えていたからだ。ちょっと待て、優奈は何で新聞紙の上に排便したんだ。これじゃあまるで俺を助けようとしているじゃないか。俺を殺そうとしていたのに。いったいこれはどういうことだと考えていると、白い手がここはウンコ地帯であるにもかかわらず、お構いなしに、ウンコまみれの俺をつかみあげた。

その手の主は優奈だった。優奈の顔をゆっくりと見てみた。やはり泣いている。しかしその表情はさっきまでとは違った。狂気じみていない。
「…ごめんなさい…」
かわいらしい、本来の声だ。優奈は俺に謝ってきた。どうしてだ?悪いのは俺のほうなのに。
「優奈、謝るのは俺のほうだ。…本当にごめん。お前の気持ちを踏みにじってしまって。俺は最悪の男だ。」
俺は、優奈の体内でわびていたことを言葉に出した。しかし優奈は、
「…謝らないで、ジュン君…。わたしが悪いの…。勝手にジュン君にわたしの十分勝手な恋心を押し付けてたんだもん…」
「押し付けていたなんて、そんなことはない。チョコもらったときは本当にうれしかったぞ。それに、本当にごめんな、俺が馬鹿なせいで大切なことを忘れてしまって…」
「謝らないで!…わたし、おかしくなっちゃの。だってジュン君を食べたい、だなんて。危うくジュン君を殺しそうになってしまって…。」
優奈は大粒の涙を流した。俺はどうしようもなくたたずんでいた。情けない、かける言葉一つ見つからない。
「わたし、どうかしてた!気がつくと、ジュン君を口の中に含んでいた。ジュン君を嘗め回していた。そしてそのまま飲み込んでしまった。…ごめんなさい!気持ち悪かったよね、わたしの体の中。ほんとうに、ごめんなさい…」
「そんなに謝らなくてもいいさ。」
そして俺は言葉を続ける。
「…優奈、今回のことは忘れよう。きれいさっぱり忘れよう。お互いこのままじゃあ後味悪いもんな。今回のことはなかったってことで、二人だけの秘密だ、いいよな優奈」
「…うん…。…ありがとう」
優奈はなくのをやめた。かわいらしい顔がかすかに笑った。
「…それに、優奈、もしかしたら俺、…お前のことが好きだったのかもしれない。」
俺はついに告白してしまった。優奈の体内で次第に高沸してきた気持ちだ。
「…ほんとうに?」
「…たぶんな」
優奈の顔が満面の笑みに包まれた。今まで見た優奈の中で一番かわいらしい。
俺と優奈はしばらく見つめ合っていた。どのくらい経っただろうか優奈が口を開いた。
「…くさい」
しまった。おれは優奈のウンコまみれだ。何で気がつかなかったんだろう。
「ごめん、ジュン君。わたしのウンチまみれになってしまって…。どうしよう…」
優奈は考えてこんでしまった。俺もつられて考え込んだ。
「わたしの口の中できれいにしてあげようか?」
優奈の答えは意外なものだった。俺も同じことを考えていた。
「ああっ、ごめんなさい。そんなこと…」
「別にいいさ。実は俺もお前とおんなじことを考えていたんだ。」
「えっ?」
「その代わり、口の中だけで頼むよ。俺は胃には行きたくないぜ。」
俺は正直に述べた。優奈は赤面した。かわいい。そしてうなずいて、
「じゃあ、ジュン君をきれいにしてあげるね」
といった。俺は
「よろしく頼むぜ」
と答えた。
「それじゃあ、いくよ!」
優奈の唇が近づいてくる。かわいらしいピンク色だ。白い肌にうまく調和している。そして優奈の口が開いた。かつて見たときは地獄の門だったが、今はまるで真逆だ。美しい空間が広がっている。白い歯、ピンク色のうすい舌、そして光り輝くのどちんこ。俺は今からこれをむさぼれるのだ。口の中に収まり、俺は優奈の舌に嘗め回される。気持ちいい。まさに至福のときだ。女の子の口の中ってこんなにすばらしいところだったんだ…