お久しぶりです。
同じような内容で書きます。
要は微スカ、微残酷?な感じです。
打ち切り、中途半端に終わるのは避けたいですがどうなるかはわかりません。



本能 第一話


郷田「西上先生、こっちです。」

筋骨隆々でまさに体育教師という感じの郷田が、至って普通の女性教師、西上(にしうえ)を連れて廊下を走っていた。
教師というものは生徒には廊下を走るなと言いつつも、自分たちは走っている。それを面白半分に突っ込む生徒もどこかにはいるだろう。
しかしこの学校ではそのような生徒はいない。

郷田「ここです。」
不良A「げ、郷田!」
不良B「てことは…」
西上「あなたたち、トイレは煙草を吸う場所じゃないわよ。」
不良A「い、いえ、吸ってませんよ~」
西上「嘘はいいから、出しなさい。」

西上が2人を睨む。不良2人は従順に、たばことライターを渡した。

西上「次、やったら問答無用だからね。」
2人「はい…」
郷田「いやぁ、ありがとうございます。」

西上と郷田は去って行った。
普通なら逆だろう。体育教師の郷田がすごい剣幕で怒鳴れば大抵の学生はひるむ。
しかし最近はモンペというやつが五月蠅い。そこで西上の出番というわけだ。
西上は人を縮小させる能力を持っていた。本人も何故持っているのかは知らない。
そこで、最初は不良学生を縮小して靴の中に入れたり、パンツの中に入れたりして懲らしめていたのだが、
最近はそれすらも楽しみにする学生が増えた。
というのも西上は勤務3年目の若手教師で、見た目は下手すると大学生や高校生にも見える。
真面目な黒髪の委員長キャラがそのまま先生になったような性格をしているので男子からの人気は高い。
見た目も悪くない。
そこで、最近は縮小した学生を郷田の靴の中に入れて懲らしめる作戦に変えたのである。
マッスルな体育教師の靴の中になど誰も入りたくないから、最近は不良学生も減ってきた。

才人「(今日も平和だな…)」

トイレのそばの廊下の窓で様子を見ていた才人はそう思ったのであった。
西上は才人のクラスの担任でもあった。



西上「ではホームルームを始めます。最近、また煙草を吸う人や、自転車の二人乗りが目立ちます。
ばれないと思ってやってはいけませんよ。では、…」

ゴゴゴゴゴ…

西上「え、地震?」
才人「(結構でかいな)」
西上「皆、机の下に隠れて!」

生徒たちは多少パニックになりながらも机の下に隠れた。

ガシャン!

蒲原「きゃっ!」

蛍光灯が落ちてくる。近くにいた蒲原が声を上げた。

井上「蒲原さん、大丈夫?」
蒲原「だ、大丈夫。」

しばらくして揺れは収まった。

西上「怪我はない!?」
蒲原「はい、大丈夫です。」
西上「そう、皆さん、校庭に避難しますから、廊下にならんで下さい。割れたガラスの破片で怪我など無いように。」

生徒たちは廊下にかけ出す。
その時、異変に気付いた。

才人「(やけに静かだ)」
西上「あれ?となりのクラス、もう避難したのかしら。」

見ると、となりのクラスがもぬけの殻になっている。
そしてもう1つ、決定的な異変がある。

西上「外が、暗い…?」

いくら夕方のホームルームとはいえまだ夕方である。季節も春。こんなに早く日は落ちない。

小野「なんか、おかしくねえ?」
五十嵐「わけわかんねえ。外は暗いし、俺たちのクラスしか人がいないし!」
井上「きゃあああああ!」

突如、井上が叫んだ。
全員の視線が井上に集まる。
彼女の足元には、真っ赤な何かが横たわっている。
何かとは何か?
それは、見なれたなりをしている。
黒い髪、二本の腕と足、学校指定のブレザー、蒲原…?

西上「え、どういうこと…?」

小野「ひ、いいいいい!」

小野が非常階段に向けて走り出した。生徒たちはそれに続いて駆け出す。
才人は1人、落ち着いていた。いや、1人ではない。他にも落ち着いている者。
1人は教師の西上。
もう1人はクラスの女子、元山(もとやま)だ。彼女も、横たわった蒲原を見ている。

才人「大丈夫なのか?元山。」
元山「行永くんは?」
才人「いや、大丈夫では無い…むしろ何が何だか分からなくて…これは…?」
元山「いいえ、大丈夫みたい、あなたは。むしろ危ないのは…」

途端、側にいた西上の顔がどアップになった。

才人「!?」
元山「来て!」

元山は才人の手を握ると非常階段に向けてダッシュした。
速い。才人は運動神経は悪くはない。だが、手を引かれてもついていくのが精いっぱいなぐらい早い。
そして、遠い。何故か非常階段が遠い。

才人「(これ、まさか…)俺たち、小さくなってる!?」
元山「ええ。」
才人「なんで!?」
元山「説明はあと!」

ダンっ!!!

黒いヒールが目の前に降ってきた。
それをサイドステップでよけつつ、2人は走る。

西上「すばしっこいわね…。」
才人「せ、先生はなんだ!?俺たちを襲ってる!?」
元山「みたいね!」
才人「なんで!?」
元山「しゃべると体力消耗する!」
西上「うらぁ!」
元山「きゃっ!!!」

背後からすごい衝撃に襲われた。
どうやら思いっきりつま先でけられたようだ。
廊下の壁に思いっきり叩きつけられる。

才人「ぐっ…」
元山「大丈夫?」
才人「頭から血が…」

才人は思わず頭に右手をやった。
右手にはべっとりと血が付いていた。

元山「立てる?」
才人「来た…」

話している間に西上がしゃがみ、こちらに手を伸ばしてくる。

元山「ねぇ、何かできない?」
才人「何かって?」
元山「超能力的な!えっと、武器を出すとか!」
才人「意味分かんねえよ!」

迫り来る手がもう少しで2人に到達する時に、才人は気づいた。
さっきまで血が付いていた右手に、一本の刃が握られていることに。

才人「(何だ、これ…?)」
元山「斬って!」
才人「おらぁ!」

才人は刃で西上の指を切りつけた。小さくなっているとはいえ、切れ味は中々のもので、西上の指からは血が噴き出した。

西上「…っ」
元山「いくわよ!」
才人「お、おう!」

元山は地面をけると高々と飛びあがり、そのまま通気口の中へ逃げていく。

西上「ちっ…。」

西上は悔しそうに通気口を見ながらも、非常階段を下りて行った。

才人「はぁ、はぁ…」
元山「とりあえず何とかなったわね。」
才人「な、なんなんだありゃ。お前、何か知ってるのか?」
元山「どっから説明しようかな…。とりあえず、やばい。」
才人「んなこた、わかってるよ。この刃だって、持った覚えないんだけど。」
元山「そうね、さっき言った、超能力ね…。」
才人「え?」
元山「ごめん、あたしもそれぐらいしか知らないの。」
才人「なんで、西上先生は俺たちを?」
元山「本能じゃないかしら?」
才人「本能?」
元山「日本人って、元々争いばっかやってたでしょ。戦国時代。そういう本能があるのよ。」
才人「説明になってないような気がするが。」
元山「蒲原さんの死体を見て、本能が出ちゃったのね。」
才人「あ、やっぱあれ、蒲原なんだ。なんであんなことに?」
元山「誰かに踏み潰されたんじゃないかしら。」
才人「はぁ?人間が人間を踏みつ…あ…。」
元山「でも先生じゃないわよ。先生と同じ、人を縮小させる能力を持った誰か。」
才人「そんな奴いるのかよ。」
元山「あなただって、能力持ってるじゃない。」
才人「この刃?」
元山「多分、血液中の鉄分を加工して作るタイプね。…ちょっとイレギュラーね。」
才人「イレギュラー?」
元山「いえ、何でもないわ。でもあなたにも戦闘本能ってあるはず。だって、蒲原さんの死体を見てもパニックにならなかった。」
才人「あぁ。」
元山「戦場でいちいち死体にビビってたら、戦えないもんね。」
才人「うーん?」
元山「まとめると、行永才人クンは、鉄を刃に変える力をゲットしましたってこと。」
才人「うーん、事実だからそうなんだろうけど、信じられないな…。」
元山「嫌でも信じられるわよ。これから、戦争が起こるんだから。」
才人「え?」
元山「あなただけじゃない。クラスの他のみんなも何かしら能力に目覚めてるはず。一体誰がこんなこと…。」
才人「これから、どうするんだ?」
元山「首謀者を叩く。私の能力は脚力強化。ま、逃げ足が速くなる程度だけどね。とりあえず、一緒に行動しましょ。」
才人「頼む。その方が助かるし。」
元山「さて、これからどうしようかな。。。」
才人「その前に、この大きさって元に戻らないのか?」
元山「あ、それもそうね。てかここで元に戻るとまずいわね。」

2人がいる通気口は女子か細めの男子がやっと一人通れるスペースしかない。

元山「多分、能力をかけた西上先生が死ぬか、能力適用範囲外に出るか、あたしたちが死ぬかで元に戻るはず。」
才人「最後のはやだな。」
元山「範囲外だとするともうすぐ元に戻るわね、でましょ。」

ボンッ!

元山「え…?」

元山「あれ?戻った?てか、せまっ!行永くん?どこー?」

元山は元の大きさに戻ったが通気口にギリギリすっぽりはまる感じである。
一方の才人はというと。

才人「(状況が分からない…)」

上に固いもの、下に柔らかいものに挟まれていた。
言うまでも無くそれは通気口の天井と元山の尻である。

才人「(あれ、元山が何か言ってる?てか元の大きさに戻った?あれ、俺は?てか、じゃあこの下にあるのって…)」

元山「んしょ…」

元山が匍匐前進で少し前に進んだ。その拍子に尻の上から転げ落ちる才人。

才人「(まったまった!てか暗くてよく見えない!)」

才人はとりあえず前に走った。そして何かにぶつかった。

才人「(ぶつかったものが柔らかくてよかったけど…何だこれ…?)」
元山「うひっ!!!」
才人「(変な声あげるな!)」
元山「ゆ、行永くん、変なところにいる・・・?」

元山は何とか腕を伸ばして股間まで持ってきた。
そして手探りで才人を探す。

元山「どこ?返事して。」
才人「(あなたの指で股間に押さえつけられて声が出ません!そしてフローラルな香りがします!)」

本当はトイレの臭いがした。もっと言うと自分の股間と同じ匂いだ。

才人「(女の子も臭いとこは臭いんだな…。)」

元山「あ、これ?」
才人「よう。」
元山「何てとこにいるのよ!」
才人「気付いたらいたんだよ!」
元山「ま、仕方ないわね…。変なとこ見てないでしょうね…。」

暗いけど何となく顔が赤くなってるのが分かる。
そして通気口を出たところで才人も元に戻った。

才人「ふぅ~やばかった~何で時間差があったんだろうな。」
元山「あまり大きな声出さないで。」
才人「え?」
元山「あくまで可能性だけど、多分、距離が離れたから戻ったんじゃない。西上先生が死んだから。」
才人「え、それはどういう…?」
元山「あたしが戻った時は半死に状態だったんでしょうね…。誰に襲われたか…。」
才人「マジかよ。」
木野「ゆ、行永くん!…美優ちゃん!」
才人「木野…?」

非常階段から泣きながら上がってきたのは背の低い、短めの髪をツーサイドアップにした少女、木野千紗。

木野「よかった、2人とも無事で!」
才人「どうしたんだ?何で泣いてる?」
木野「西上先生が…西上先生が…」
才人「や、やっぱり…」
木野「知ってたの?」
才人「そんな予感がして。でもとりあえずここにいれば多分、大丈夫だ」
木野「よかった。なんか、おかしいよね。学校。」
才人「あぁ。」

元山は2人の会話を黙って聞いていたが、コツコツと木野に歩み寄る。そして。

ドスッ…

木野「うっ…」

思いっきり拳を胸に突き付けた。

才人「おい、何してんだ。」
元山「(全然効いてない?てことは…)」
才人「おい!」
元山「逃げるよ!」

元山は才人の手を取って反対側に走り出す。

才人「いや、待てよ!」
木野「遅い!」
才人「は?」
元山「(同じ脚力増強能力…!)」


後ろを走っていた才人は肩を掴まれ、そのまま後ろに倒される。

才人「いでっ!」

廊下にあおむけに倒れた才人。そこに見えた景色。

才人「(あお、しろ、あお、しろ…)」

ドンっ!

才人「(顔面騎乗…。)」

柔らかな尻を中心に木野の全体重が才人の顔面に加わった。

元山「あー、もう!」
木野「さて、どうしようかしら…?」


才人の顔に座ったまま元山の方に笑いかける木野。

続く。