波乱万丈だった1日目の経験を生かし、2日目は割と大人しくしていた。
山のふもとまでバスで下り、中華街で食事したり、テレビ局の見学に行ったりした。
修学旅行ってこういうものだよな。
そして、最終日の3日目がやってくる。
その前に、二日目の夜。



翔子「ロン!12000!」
千陽「げ!」

千陽、翔子+2名で麻雀をしていた。
翔子には俺が麻雀を教えた。割とすぐ覚えてくれたもんだ。

翔子「じゃ、千陽は罰ゲームだねー。」

高校生の麻雀は可愛いもんだ。負けても金を取られることはない。
罰ゲームだなんて。大富豪か何かでやればいいのに、と思う。
あ、ちなみに俺は今、翔子の袖のところから状況を見ている。

女子「はい、罰ゲームあみだ。」
千陽「とほほ…。」

千陽は何をやらされるのかドキドキしながらあみだくじをやる。
まぁこの女は恥を知らないから多少のことなら簡単にやってのけそうだが。

千陽「何これ。1着の人と抱きあう…?」
翔子「えっっ!何それ!」
女子「他人を巻き込んだ方がおもしろいと思って。ほら、2,3着もあるから不公平ではないよ」
翔子「とばっちり食らうなんて…。」

とりあえず俺は退避したほうがいいのか?
しかしここから退避するとなると…外に出るのはまずいから、奥に行くことになる。
しかし奥には翔子の脇が!脇がある!流石にそれは見ちゃまずい。
が、罰ゲームのために翔子は立ち上がり、その拍子で俺は翔子の脇まで転げ落ちてしまった。

千陽「あたしたちが抱き合うのってだれが得するのかしら…ってこら!撮影禁止!」

俺に百合属正はない。だから俺からしても徳はしないのだが…。
脇に!脇に挟まれてるんですけど俺!
翔子は左腕を曲げているので見事に挟まれたのだ。
しかも麻雀に熱中して汗を書いたのか知らんが、若干湿っていて甘酸っぱい匂いがする。
悪臭ではないのだが、なんか変な気持になる。

女子「抱き合うだけじゃなく面白いことやってよー」
千陽「えー、こうかー?」

千陽と翔子は暴れている。まぁこの子らも何をすればいいのか分かってないんだろう。
しかし動けば動くほど翔子は汗をかくわけで。汗が目にしみる。口にも入る。
同じく甘酸っぱい味。初恋もこんな味がするのだろうか。
いや、てかこのままだと、俺、女の子の脇ですりつぶされてミンチにされるぞ!
気付け!俺がいるのに気付け!



そんな感じで夜中3時ぐらいまで遊んでたようだ。
この時間まで先生にばれなかった方が珍しいな。
さて、寝るぞ寝るぞ!最終日は遊園地だ!

翔子「はぁ、何か疲れたよ」
聡史「俺も疲れた。」
翔子「ほぇ?なんで?」
聡史「まぁ色々ね…。」

就寝。



先生「では、点呼を取るぞー。あれ、また川口の奴いないじゃないか」
雄太「お腹が痛いみたいです…。」
先生「修学旅行中ずっと腹痛なんて、あいつもついてないなぁ。」

本当についてない。
小さくなるし、変な中学生につかまるし、やたらガスをかがされるし。
と、いうかこの体は元に戻るのだろうか…。

千陽「ねぇね、どこ行くー?」
翔子「最初は緩いやつがいいなぁ」
雄太「これなんてどうだ?氷の国。」
千陽「何それー?」
雄太「-20度の世界を体験できる、だってさ。」
千陽「面白そうじゃん!いこ!」

-20度か…。このサイズだと一瞬で凍るんじゃないか?まぁ今は翔子の胸ポケットの中にいる。
あったかいから大丈夫だろう。ちなみに今日の翔子はチェックのスカートにポロシャツと言う、ラフな姿だ。
と、いうわけで氷の国にやってきた。

千陽「すごいすごいすごい!何これ寒い!」
雄太「あんまりはしゃいでると、転ぶぞー」
千陽「これがはしゃげずにいられる!?温度差やばい!鼻がスースーする!」

氷の国と言う名前だけあって、あたりは白い。
白クマのはく製も置いてある。
遠くの方で親子連れがいて、幼稚園ぐらいの子供がこけてた。

千陽「いてっ」

千陽も転んだ。靴が盛大に脱げている。

翔子「大丈夫!?って、きゃあ!」

翔子も転んだ

聡史「(おいおいおいおい!)」

転んだ拍子に胸ポケットから飛ばされる。
地面にぶつかったらやばい。凍死する!?冗談じゃないぞ!
ぽむっ
何か柔らかいものにぶつかった。
目の前を見る。白い壁。まぁ氷の国だからなぁ。しかし冷たくないし地面は紺色。
どこだここ。

千陽「あいたたた…」

頭上で千陽の声。
あれ、ってことはここってまさか。
そしてこの展開は…

ぷすぅ〜〜〜

聡史「やっぱりいいいいいい!!!」

白い壁からはガスが噴出された。
昨日の焼き肉が残ってるのか知らんが臭い。風圧で飛ばされる。
あ、今度こそ死ぬ…。
と思ったが着地したのは黒色の地面の上。

千陽「靴も脱げちゃったし…。」

靴下の千陽がこちらに歩いてくる。
あ、ここって千陽の靴の上ですか?だとしたらまずいですよね?
千陽の足が迫ってくる。当然、逃げられません。
一応、靴の奥へ走る!走る!しかしすぐに千陽の巨大な足に追い付かれた。

聡史「(ぬああああああ!)」

俺は靴と、千陽のつま先に挟まれてしまった。
幸い、若干隙間があったのでつぶされずにはすんだが、ギュウギュウに詰められている。
鼻には千陽の足の臭いが直に伝わる。
汗と埃の混じった何とも言えない匂い。

千陽「よし、気を取り直して行くぞ!」

そのまま、3人は氷の国を歩いて行った。



雄太「あつっ!」
翔子「温度差激しいねー。」

外のでると、中との温度差は40度ぐらいある。
外の気温は大体20度であるが、暑く感じるだろう。
千陽の足も汗をかいてきたようだ。
湿度が少し増す。それと同時に酸味のある匂いも増してきた。
いつまでこの状態が続くんだ…。

翔子「あれ?」
千陽「どうした?」
翔子「あ、ううん、何でもない。」
雄太「何?」
翔子「聡史君がいない…」
雄太「マジで!?」

翔子が俺にいないのに気づいたようだ。
いや、すぐそばにいるんだけど…。それを伝えるすべがない。

雄太「とりあえず、電話してみよう。」

聡史「(え、それはまずい!)」

ブブブ…ブブブ…

千陽「んー?」

千陽が指先をグニュグニュ動かしている。
おそらくバイブの振動で足に違和感を感じているのだろう。
靴の中の狭い空間の空気がかき回され、また新たな足の臭いが鼻に入ってくる。

雄太「出ない。」
翔子「まさか、中で…?」

2人は俺の安全を気にしているのだろうか。
その時、千陽が靴を脱いだ。

翔子「何してるの?」
千陽「あいや、さっき靴が脱げた時に何か変なものが入ったかな、って思ってね。」

靴をさかさまにする千陽。
当然、靴の中から落とされる俺。
そして千陽につままれる。

千陽「え、何これ。」
翔子・雄太「あ…。」



千陽にもことのあらましを説明する。
まぁびっくりしていた。そりゃそうだ。
しかし現実に起こっているのだから信じるしかない。

千陽「聡史…ごめんね、臭くなかった?」
聡史「お、おう、大丈夫だぜ(臭いというか酸っぱいというか)」
千陽「てかどーすんのよこれ。どうやったら元に戻れるかわかんないんでしょ?」
雄太「帰ったら聡史が食べたキノコについて、調べてみるつもりだ。それまでは、辛抱するしかないな。」
千陽「まじかよー。」
聡史「まぁ俺はこのサイズでも十分楽しめてるし、早くほかのアトラクション行こうぜ。俺、ジェットコースター乗りたい」
千陽「身長制限ひっかかるんじゃないのぉ?」
聡史「ははははは」



そんな感じで、その後も色んなアトラクションを楽しみ、夜はパレードを見て解散。
夜行バスで学校に戻ることになる。
バスではみんなお疲れの様で、ほとんどの生徒が眠っていた。
かくいう俺も寝ていたのだが、その時に翔子の肩から落ちてしまい、
また一発、黄色いガスをもらったのだから、
修学旅行というより「臭ガス旅行」と言った方が俺にはしっくりくるかもしれない。
その後の話だが、どうやら俺が食べたキノコは新種らしく、生物の細胞を縮小させる効果があるとからしい。
発見した俺には博物館から賞状が送られた。何も嬉しくない。
そして今は普通のサイズに戻っている。
貴重な体験だったが二度と経験したくないな。
ちなみにキノコは悪用されないようになっているみたいだ。
しかし、一部裏の世界では加工し、何かに使われているらしい。
それはまた、別の話ってことで。