どこかの街の、どこかの家。


そこに、甚平姿の一人の男が居た。冷房のよく効いた部屋で、腹を出してスヤスヤと眠っていた。
そこへジリリ、と電話が鳴る。手探りで電話の受話器を取ると、寝ぼけまなこで耳に当てる。


「んー、お電話ありがとうございます…作者です」
『ちょっと!どーゆーこと!?』


電話の相手は、メイドだった。電話口で怒鳴る。たまらず飛び起きる作者。


「す、スミマセン!自分の不手際でなんか爆破炎上でもしたんですか…!?」
『最近仕事が来ないと思ったら…なにしてんのよ!』
「え、あー…。なんだ、良かった。メイドさんか…。申し訳ない、ネタが思いつかないもんで…。と言うわけだからあと三十分寝かせて」
『…。そっちで暴れて、いやでもおもいつかせてもいいけど…?ウフフ…』
「ごめんなさいやめてください。でもネタが出て来ないのは本当なんだよ…ん?」


そこまで言って、ハッとする。目の前には、さかなと銘打たれた、図鑑。
魚と「コバルトブルー」の海が、きらびやかに描かれている。


「海だ!早速海へ行ってらっしゃい」
『突拍子ないわね…』
「兵は拙速を尊ぶ、だよ!はりー、はりー!」


ガチャッ、と電話が切れた。


『…いつか行く。絶対行ってやる」


怒りの言葉を発しながらも、メイドは自分の部屋のタンスやクローゼットの中身をがさごそ、ひっくり返すのだった。






【ねこびとしりーず 海水浴場へ出動!】




―はやおくりぱーと―


海開きである。


海水浴場である砂浜には、早くも「海の家」と呼ばれるお店が何件もたち、砂浜に人だかりができる。


「やー!すごい人出ですねぇ。しかし休日と海開きが重なって良かったです」
「だからといって、中隊長の私まで海水浴に来ることはなかったはず」
「どうせなら中隊みんなで、ってことででして…えへへ」


中隊を乗せた、何台ものトラックがエンジン音を響かせて、海っぷちの道路を走る。
潮風が、気持ちいい。
キラキラ光る海と、茶色いカーキ色のトラックは「ミスマッチ」だったが、車体の茶色はちょっと日に焼けた肌そっくりだった。




「中隊ッ、海水浴場に到着ッ」
「さあさあ、布陣用意でありますねッ」


中隊がサッ、と何班かに分かれる。
あるひとつの班は、まるで陣地を作るように、手早く「パラソル」を突き立て、テーブル、折りたたみイスを設置する。
またある班は、浮き輪やボールを膨らます。
最後の班は、歩哨(にもつばん)である。


「いいか貴様ら。そこらへんの女性を口説くなどと言うことは絶対にするなよ。それ以外にも、軍人精神に悖(もと)ることはならんぞ」
「中隊長殿は相変わらずうるさいですね」
「引率の先生みたい」
「軍曹殿、キャンプファイヤー用に持ってきた火炎放射器をここに置いときますね」
「軍曹、火炎放射器まで…」
「ははっ、火起こしには便利なもので」
「軍曹、お前は頼りにしてたのに…。むむぅ…。ええい、シャワーを浴び終わった班から順次、海水浴を開始せよ」
「待ちかねてました。お前ら、シャワーは浴び終わってるなッ。よーし、海水に向かって、躍進距離五十ッ。突撃にーッ!前へ!!」


木銃軍曹がふざけて号令をかける。ワーッ、と走り込む分隊(※広報課注釈:水辺では走らないこと)。
ボールや浮き輪が右に左に揺れて、ぴかぴか光る。


「こら、バカども!静かにせんかッ!」
「予備隊続けッ!突撃にぃーっ!」


水嫌いもどこにやら、バッシャバッシャとはしゃぐ第二中隊。いつもの軍務も忘れ、多いに羽を伸ばしていた。





―ひょっとして、兵隊さんですかニャ?


市民が、日陰でキンキンに冷えたカ○ピスを飲んで涼むカール中隊長に、声をかける。ほとほと困った表情だ。


「はい、如何にもそうですが。なにかありましたか?」
「この先で巨人がウンウンうニャっておりまして…。出動していただけませんかニャ?」
「わかりました。直ちに出動します」


中隊長、すぅーっと息を吸うと大声量の号令をかけた。




「中隊集合ッ!非常呼集!!」






ーはやおくりぱーと終わりー






―うーん、うーん…。




「あーあ。ダメだよ、一日で焼こうとしちゃあ」


巨メイドの、身体。水着姿で白い肌を砂浜に晒していた…はずなのだが、今やまっかっか。
すごく痛そうである。中隊のみんなは、呆れてしばらく眺めていた。中隊長が動き出す。


「今回は敵に塩を贈る。軍曹、自動貨車(トラックのこと)に中隊の消火ポンプを積み込み、戻ってこい」
「おや、助けるので?」
「今日、我が軍は休日だ。助けるなどと言っても、応急処置程度だがな」
「了解であります」


バーッ、とトラックは走って行き、ポンプを積んでバーッと戻ってきた。
到着すると、軍曹や古兵(軍隊生活の長い兵隊)が手早くポンプを降ろし、ホースを伸ばして放水の準備を整える。


「全ポンプ、放水用意ッ」


中隊長がどこからか木の棒を持ってきて、号令とともに振り回す。軍刀の代わりがないと落ち着かないようだ。


「撃てっ!」


バリバリと音を立て、ホースが膨らむ。号令一下、怒濤のような放水が行われた。
その水流は、巨メイドの背中に、胸に、お尻に当たって砕ける。
砕けて粒となった水が虹を作り、砂漠のような肌に微かな涼を添える。


『うー、うーん…背中と肩を重点的にー…』
「一番ポンプッ。目標変換だ」


「みんなすごいなあ。僕ヒマだよ。虫取りしてよ」


ひたきは持ってきた虫あみと虫かごを構え、トンボを追いかけまわす。そこへ、ひらひらと珍しいオオムラサキが飛んできた。目を輝かすひたき。


「ちょっ、すごっ!まってまって!!」


駆け出すひたき。ぎゅむっ、と踏みつける何か。


不思議な感触。


それは、長くて丸いもの。


踏んづけたところが瞬く間に丸く膨らみ、大量の水をまき散らしながら破裂した。
ひたきが踏んだもの。それはホースだった。高圧放水していた為、ホースが水圧に耐えられず、破裂してしまったのだ。


「バカっ、なんてことをするんだ!」
「はは、ハイーッ!すぐに代わりをーッ…」


怒られる前にすっ飛んでいく。慌てて、代わりを探す。ホース、ホース…。


「あった!」


中隊のパラソル近くで見つけたもの。車輪がついたタンクと、そこから伸びるホース。あった、これだ!
ひたきは現場へさっそく戻り、放水準備を整える。


「代わりがありましたーッ!早速放水しまぁーすッ!!」


ひたきがホースの口を巨メイドに向ける。中隊長や軍曹が走ってくる。
あらかた手伝いに来てくれるのだろう。でも大丈夫、ひとりでできるもん。


「メイドさん!こないだのお礼、いっくよー!放水ッ!」

かっこつけの叫びとともにゴーッ、と言う無機質な音が辺りに響く。
あれほど目標指示などでうるさかった周りは一瞬で静かになり、ジャーッとポンプの放水音だけが聞こえる。
ジャーッ?じゃあこのおとは?


『きゃあああああああああっ!!』


凄まじい悲鳴。耳をつんざく、叫び。
ひたきがポンプだと思ったもの、それは火炎放射器だった。
赤い柱が巨メイドの火照った身体を舐める。


「バ、バカバカッ!!さっさと止めるニャ!」
「ニャ、そんニャこと言われても…止め方が」
「まぬけ!引き金から指を外すニャン!」
「お前というやつは…」


軍曹、火炎放射器をひったくって、そのままひたきに拳骨を一回くらわす。


「はやとちりしおって、バカめ!」
「いったー…ごめんなさい…」
『謝って済むなら、軍隊って要らないんじゃない…?』
「軍曹だってそう言ってるぞ」
「中隊長殿、私はなにも」
「え…?」


ゆらり、と動く影。ず、ずんと揺れる大地。空気が音を立てて動く。影が陽光を隠し、辺りを暗くする。


『死ねえええええ!』


巨大な足が、ひたきたち三人に向かって降ろされた!
ドズゥゥゥン!と言う、轟音。火炎放射器がいっしよに潰れ、大爆発を起こす。


『えへ、えへ、えへへ…』


怒りの薄笑いを浮かべ、兵隊を見やる。兵隊たちは、ホースをほっぽり投げて一目散に逃げ出す。三十六計逃げるが勝ち。


『ゆるさない…ぜったいにゆるさない…』


ゆらりと、巨大な赤い身体が街に向かう。


『みーんな、根絶やしにしてあげるわ!私をおこらせたんだからねッ!!』


怒りの咆哮。その雄叫びは、街や海水浴場は大混乱に陥る。逃げ惑う人々。
ずしぃぃぃん!と白い足が街中に落ちる。左右に動かし、木で出来た家や商店街をねこびとごとなぎ倒し、破壊していく。
普段なら、「ダイビング」して街を根こそぎ破壊していくところだが、日焼けの為に不可能であった。
お祭りの提灯や万国旗が巨大な脚にかかり、ひとたまりもなくひきちぎられる。
提灯は抱えるほどの大きさだというのに、脚と比べるとおはじきのように小さかった。
道幅より大きな足は、ついでにお祭りの告知が貼ってあるガス灯もひん曲げていった。

『あっははははは!せいぜい逃げ惑いなさいよ!!ぜっったい、にがさないけどね!!!』


逃げ惑う人々ごとあらゆる建物が蹴り壊され、踏みつぶされる。その度にバリバリ、ガラガラという硝子や柱が折れる轟音が、街中に響く。
規則正しく揃っていた商店や石作りの、まっしろいモダンなビルの街並みは、巨メイドの蹂躙によって跡形も無く破壊された。

さざなみのきこえる風光明媚な街は今やどこにもなかった。聞こえるのは、ねこびとの悲鳴や巨メイドの哄笑、街が滅びゆく音が轟くのみだった。


港湾砲兵隊は、通報が相次ぎ、混乱を極めた。


「一体何が起こっている!?」
「きょ、巨人がどうとか」
「こんなときに船舶砲兵連隊本部と連絡取れないとは…」




巨メイド、ひときわ大きな旅館の目の前で足を止める。
おもむろにしゃがみ込むと、指を旅館の窓にに突っ込む。この部屋には宿泊客や、逃げてきた人々が震えながら引きこもっていた。
ねこびとから見れば、トラックより大きい肌色の塊がうねうねと動き回り、部屋の中に破壊の「つめあと」を作るさまは悪夢でしかなかった。


『みーつけた』


巨大な目が、穴からねこびとたちを見つめている。目がキュっ、と細まる。
巨大な目が離れた。次の瞬間、ぷっくりと膨らんだ唇が穴いっぱいになる。
唇が重々しく開き、ゴーッという生暖かい風が吹き抜ける。そして、無限の暗黒の中からねばっこいピンク色の塊が這い出てきた。
ピンクの塊は、部屋の中のあらゆるものをその身に纏わせると、暗黒の中へと戻って行った。
あとに残るは透明な、ねばっこい液体と、わずかな瓦礫のみ。生き物の影は無かった。


バキバキ、ボキボキというくぐもった音が巨メイドの口の中から聞こえる。悲鳴は、聞こえない。
口の中のそれらは、喉を通り過ぎるとどうなったか、もはやうかがうすべもなかった。


『はぁ…ッ…。久しぶりで興奮しちゃうわ…ッ!』


恍惚の息を漏らし、とろんとした目で旅館を見やる。


『私のおまたで、跡形もなく潰してあげるね!だいさーびす!」


旅館にまたがり、思い切り体重をかける。哀れ和洋折衷のモダンな旅館は、その一撃で半壊した。
木の梁が深々と布に食い込む。しかし、巨メイドからしてみれば取るに足らない程度だった。


『水着一枚隔ててるだけでなんも感じないわ…。もう少し気持ちよく作ってよっ!』


訳のわからない悪態をつきながらも、更に崩れ残れる離れを、三角の布がゴリゴリとすり潰す。
巨メイド、旅館へのトドメとしてお尻を思い切り押しつけ、更にズンズン、と叩き潰してガラクタの山に変える。
はあっ…ぅ。熱い吐息が、悩ましく響く。

『こわすのは裸のほうが良かったんだろうけど、今じゃ水着脱ぐのもきつそうだわ…うぅ』


瓦礫のまんなか、痛みを思い出す巨メイド。うっとりした表情はどこへやら、渋い顔を浮かべている。





軍隊はこの痴態の間に反撃の準備を着々と進めていた!

「我輩がシャム大佐だ。巨人により通信線が破壊された。非常事態につき、これより我輩が臨時に指揮を取る。巨人は海岸部にある市街地を狙っている。動きを止めた瞬間を仕留めろ。砲弾から信管を抜け。街を傷つけるな」


ガリガリガリ、と音を立てて、小高い崖に据えつけられているいくつもの海岸砲が、市街地へと砲門を向ける。
海岸砲とは対軍艦用の重砲である。今回信管を抜いて爆発しないとはいえ、その威力は変わらない。
巨メイドの真っ赤な背中が、照準器いっぱいに広がる。砲手にとって最高の瞬間。


巨メイドがやおら立ち上がり、キョロキョロと周りを見渡して一息ついたとき!


「撃てッ!!!」


バウッ!!と海岸砲が火を吹いた。一瞬で砲弾は真っ赤な背中に着弾する。
重砲弾を受け、たちまち倒れ伏す巨メイド。ぴくりとも動かない。


「ワーッ!!」


どこから湧いて出てきたのか、歓声を上げて駆け寄る兵隊たち。


「おお…?へへ、イチコロだ!」


兵隊は民間人救出の為、ついさっきまで旅館だった、瓦礫の中を探索する。と、瓦礫に埋まる、ねこ連隊の兵隊を見つける。


「おい、お前兵隊だろ、ここで倒れてるなよ」
「うぅ、ひどいなあ…」


「ほら起きろ!立て!!」


その一声と同時に巨メイドが起き上がる。


「うわあ!!?」


驚きの声が上がる。巨メイドの平手がググッと上がる。その手は、勢いよく一人の兵隊に振り下ろされる。
バァン!という大音量。間一髪避ける。更にもう片っぽの手が降ってくる。これも紙一重。


ゆっくりと立ち上がる、巨大な影。


仁王立ち。怒りの無表情。無表情とは言え、目や眉はキツく釣り上がり、とても怖い。


周りの兵隊は銃を放り投げて、一目散に逃げ出していた。巨メイドは目標を、彼らに変えた。
転んだり、固まって逃げる一団は、白い足の下へと消えた。
逃げる兵隊を疲れるまで追い回す。ヘトヘトになって、へたり込んだ所に足をゆっくりと被せ、踏み潰していく。


海岸砲が、再度照準を合わせ、砲撃を行う。弾がお腹や胸に当たる。命中したところは日焼けした所で、しかめっ面をする。が、それだけ。
巨メイド、むんずと何かを引っつかんで海岸砲に投げつける。
投げたものは、巨大な打ち上げ花火の玉。花火大会の時期の為、何処かの建物に保管してあったのだろう。
綺麗な花が崖の上に咲いた。次の瞬間、それはまばゆい火柱に変わる。


「うわっ!!」


指揮所にいたシャム大佐が爆風と閃光に、驚きの悲鳴をあげる。
巨メイドが、更になにかを投げつけた。ガスタンクだ。爆発に気を取られてる内に何処からか持ってきたのだろう。
ガスタンクは指揮所に命中して、大爆発した。その爆発やすさまじく、崖の形を変えてしまった。

ずん、ずんと海岸砲のある崖に歩み寄る。近づいてくる巨メイドに、狂乱のごとく機関砲が火を噴く。
ぐわっ、と大きな手が広がり、機関砲、ついで海岸砲を握りつぶす。
手の中で起こる、大爆発。爆煙が晴れると、傷一つない、日焼けした巨メイドの姿が現れる。

くるりと振り向き、街の方を見やる。街はいつの間にか炎に包まれつつあった。大方火の始末をせずに、飛び出した家があったのだろう。
今や巨メイドの身体は炎に照らされて、全身が赤く見える。その炎を冷たく見下ろす巨メイド。


足が一歩、一歩とまた街を踏みつけていく。巨大な身体は、惨禍の中心にそびえ立っていた。




「海水浴場までとは、いいですなあ。自分も海水浴したいですよ、お客さん」
「やー、厳密には海水浴ではなく、人を待たせてるのですよ。『海へ行け!はりーはりー!』と僕が執拗に急かして」
「人を待たせてるのに、お客さんが急かすってのは、おかしな話ですねえ…そろそろ海水浴場見えますよー」
「おっ、あれ…あれ…?あれ、か?」


タクシーの窓から見えた光景は、海は海でも、炎の海。その中に、巨大な人影。運転手と乗っていた作者は言葉を失う。


「…どうしたんだい、まるで戦だよ…」


作者は一言、呟くのみだった。


『元はと言えばー…』


破壊の限りを尽くしていた巨メイドだったが、タクシーを見つけるとそちらに一直線に向かう。


「あわわ、こっちにくるぅ!あッ!?運転手さん逃げないで…!!」


タクシーには、作者ひとり。


ズン…ッ…。足音が止まる。すぐそこにいる。すぐ上から見ている!
大きな声が、タクシーと作者の体を揺さぶる。

『ねえ、最後のお願いぐらい聞いてあげよっか?』


タクシーごと手の上に乗せられ、顔のめのまえ。


「無事にここから帰りたいです、むしろ帰らせて下さい、オナシャス」
『考えといてやるよ、なんて言うと思った?絶対ゆるさない』


ニヤリ、と禍々しい笑みを浮かべると胸元にタクシーを放り投げる。


『おっぱい好きだったよね?じゃあ…好きなだけ味わせてあげるわよっ!!!』


タクシーの左から、右からやわらかな肉の壁が迫る。母性と、豊穣の象徴。
ぎりぎりぎり、バキン!ギシギシ…と言う金属が曲がり、折れる音がする。
完全にぺしゃんこになるまえに、タクシーは爆発を起こした。作者は爆発で吹っ飛び、どこへきえたかわからなくなった。


『あーあ。残念だったね。日頃から胸で挽き肉にされたい!って言ってたのに。ばいばい』

飛んでいった方角を、蔑むような目で見やる。そのうち、巨メイドは歩きだしどこかへ消えたいった。




―負傷者を収容しろ!海も探せ!!

「あッ、厨尉どのだ。厨尉どのが浮いてる」

捜索に出ていた舟艇に引き上げられる作者。

「よくご無事で」
「作者だからね。で、メイドさんは?」
「引き揚げました。あの地平線です、輝いてるのです」

見ると、街からの煙で確認しづらいが、確かに大きなものがかすかにうごいている。悠々、という表現がぴったりだった。

「ぐぬぬ…なにをぼやぼやしてる!街の火を消せ!追跡隊を組織しろ!!」

カンカンに怒る作者。艇長はひとこと、あきれたように言った。



「ネタに走るのは、厨尉どのの悪い癖ですよ」




【作戦失敗】