ねこ連隊、連隊本部。

「お菓子の街、ですか」
「そうだ。我が連隊は警備かつ出品を行う」

ヒゲをなでながら連隊長はカール中隊長を見る。

「お菓子…。食べられ…ますね」
「…そうだ。今度は近隣の飛行、戦車連隊が応援に駆けつける」
「おお、近代兵器とは。とても心強い。あッ、もう始まりの時間であります」
「うむ、行こう。今日のお土産には、甘味が欲しいのう」

カール中隊長、連隊長が営庭に出て、大声を出す。



「全連隊集合ッ!」




【ねこびとしりーず お菓子のまち防衛戦】





―早送りパート―

各国の、元気な行進曲が流される、お菓子のまち会場。たくさんのねこ人で、にぎわう。

「これが、わが連隊の作品だ。『主力中戦車(タンク)と随伴歩兵、速射砲』。炊事係が演習写真と首っぴきで作ったものだぞ」
「わー!かっこいい!」
「おや、これもすごい。尋常小学校だ。なんて大きさだ」
「小学生たちががんばって作った、とある。うむ、感心なことだ」
「あっ!シャム大佐だ!ぼくしってる!」
「おこづかいちょうだい!おかしもー!」

ねこ連隊をみつけ、こどもたちが集まってくる。たちまち人だかり。ねこ連隊はよく営庭に街の人々をまねいたり、街のお祭りに出店するのでこども受けがよかった。

「ねーねー、おとーさんから負け続きで全滅ってほんとー?」
「だらしがないってみんな言ってるよー!」
「きちんとした形で一度も勝ってないねー。かっこわるい!次はがんばってね」

連隊長、カール中隊長、顔が引きつる。こどもは、残酷なのだ。

「連隊長…今回は死んでも勝って見せます」
「わが輩は鬼のように戦うぞ…」

突如鳴り渡る非常呼集ラッパ。すわ何事か、連隊はお菓子のまち、最大の出し物「ピザの斜塔」前に集まる。
連隊長、米軍来寇必至の状況に陥った日本軍の指揮官よろしく訓示をする。

「いいか、わが輩はきさまらの生還を喜ばない。ただ巨人の撃破のみを喜ぶ」
「連隊長どの、まるでエンマさまだよ。こわいなあ」
「カール中隊長とかほかの将校もまるで鬼の獄卒だ…」

勝つぞ勝とうぞ、なにがなんだ巨大娘が!の意気で連隊は守りを固める。

―早送りパートおわり―




『おかし、お菓子♪』

ずしーん、ずしーん、と巨大メイドが現れた。子供のように目を輝かせ、お腹をさすりながら、丘の上にあるお菓子のまちに迫る。

ガリガリと音を立て、黒煙を上げて動く、四角いもの。タンクだ。カーキ色の中に、黄色の帯がついている。
先頭のタンクには、誇らしげに旗がひらめいている。戦車隊出動、攻撃準備ッ。

「全車停車!あれが、巨人か」
『あら、戦車?ふつうの車と見分けがつかなかったわ』
「ムムッ!ヨユーぶっこくと痛い目に遭うニャ!先制攻撃!目標、敵頚部ッ。うて!」

電光石火、戦車砲が一斉に火を吹く。
しかし、弾は下半身にすべて当たった。当たった弾は、前掛けのフリルを煤だらけにしただけだった。

「隊長、砲の仰角(上に向けられる角度)が取れないためこれ以上、上を狙えません」
「ぐぬぬ…近づき過ぎか…さがれ!砲手、次弾込めッ」

一斉にバックするタンク隊。しかし先頭の、旗がひらめく隊長車が巨メイドに捕まる。たった一歩。それであっさり追いつかれたのだった。巨メイド、手をずい、とのばす。
タンクが指で摘まれ、宙吊りにされる。恐れをなして逃げたと思ったのだろう。にへーっ、と巨メイドは笑いかける。
いくら中型タンクと言えどあっさり持ちあげられるとは。隊長その他、びっくりして騒ぐ。

「お、おっ、おっ、おっ!!?」

あ、ほかのタンクから無線が来た。

「おっ、隊長どの!『カンナムなんとか』ですね!この状況下で冗談とは、流石でありますッ」
「バカッ!なに言ってるんだ!早く助けてくれ」

タンクまた一斉に、撃つ。今度は胸や手にも当たる。
しかし気にも止めず、巨メイドはにんまりして隊長車をじーっと見つめている。

『食べてあげよか?それとも他のことがいい?』

指先を口から胸、そして股間へと下げる。プニッとやわらかそうな唇が、少しあいている。その奥は完全なる闇。
タンクは静かだった。車内に閉じこもって、乗員は怖がって震えていたのだ。
ぺろり。車体を舐めあげる。キャタピラが切断され、車体の塗料までとれた。赤茶の下地が見える。めげずにタンク隊、援護射撃を続ける。
援護射撃が思ったより効果的なのか、しかめっ面をして他のタンクを見やる。

『いい加減、うっとうしいわね。戦車に乗ってるみんな?あなたたちもこうなるのよ…フフッ』

巨メイド、股間に手をやり、パンツを引きちぎる。
そして、スカートをたくし上げる。秘部。ぷくっとした恥丘。
そして、タンクを秘部に挿入した。くちゅり、という淫猥な水音が響く。

『んっ…はぁーっ、はあーっ♪んんっ…!』

バキバキ、とタンクは膣内の圧力に締めあげられ、ベコベコになる。バコン!バコン!車体をつなぎとめるボルトが圧力によってはじけ飛び、中の乗員を傷つける。
戦車砲の鎖栓がついに外れ、砲弾が「逆流」して愛液がすさまじい勢いで侵入してきた。
悲鳴が上がるが、外に聞こえるはずもなかった。そして、車内は遂に愛液に満たされ…。

『あッ…んんーっ…んっ!』

膣内からタンクをずるり、と取り出す。完全にぺしゃんことなった、タンクが出てくる。
誇らしげにはためいていた旗は、ぐっしょり濡れて、雑巾のようだった。

『これなーんだ!そう、あなたたちの今乗ってるものだよ』

途中から声色を変えて、おどかす。戦車兵、何匹か逃げ出す。
ぺしゃんこタンクを放り投げ、四つん這いになる。タンク隊の上に被さり、いたずらっぽい笑みを浮かべる。

『わたしのタンクと、どっちがつよいかなあ?』

おっぱいがタンクに向かって降ろされた。ずしっ、ぐしゃっ。あっさりタンクは潰されて、オシャカになった。
ほかのタンクも、おんなじようにして屠った。おっぱいメイドスタイルである。

『わたしのおっぱいに耐えられないなんて…。んーん。わたしの自慢のおっぱいだもん。これに耐えるものなんて存在しないわ』

上体を起こして、ねっとりと自らのおっぱいを揉み始めた。





ふと、ブーン…と言う低い音。それは次第に大きくなり、数を増した。巨メイド、空を見上げる。

見事な飛行機の群れ。わー、と口を開ける。

「ニャハハハ!我が飛行隊を見て、驚きのあまり言葉も出ニャイかニャ!穴だらけにしてやるニャ」

戦闘機隊がぐわーん、と高度を下げ、突進する。ズダダダダ、と巨メイドに撃ちかける。
しかし、効果がない。涼しい顔。ギューン、と通り過ぎる。戦闘機隊、旋回して、戻ってくる。
勇気のある一機が、顔に向かって機銃を撃ってきた。ぴしぴし痛い。ムッとする巨メイド。
すれ違いの瞬間、戦闘機に食いついた。ぱくっ。口の中で弾ける感触。バリバリと、噛み砕く。

「あはは、これくせになりそうだわ!」

怖い笑い方しながら、巨メイド、編隊に向かって叫ぶ。口の中には、まだ機体の破片。

「やるじゃニャいか…。プロペラばかりか腕も鳴るニャ」

戦闘機が積んでる小さな爆弾を巨メイドに向かって落とす。しゅーっ、と身体に吸い込まれ、爆発する。
しかし、メイド服重装甲に阻まれ、効果なし。


「ニャら、隊長の超重爆撃機が出番だ!おねがいします!」

爆撃機が遠くからのっそりやって来た。ごごごごご…と重低音を響かせながら、その空中戦艦は、やってきた。
巨メイドの背丈ぐらいはあろうかという、超重爆。飛行連隊の、親玉である。
爆弾が翼の下、胴体の下、爆弾倉の中、ありとあらゆるところにぶら下がっている。そして、ところどころから突き出る大砲や機関銃などの防御火器。

『でっかーい!すごーい!あれは食べられるのかな?』
「友軍は退避せよ…。骨一本残さず殲滅する。全弾投下まで…三…二…一、投下」

ガキンッ、と言う金属の外れる音。ピューッ、ピィーッという爆弾の風切り板の音。
無機質な飛行隊長の号令の下、ばーっと、たくさんの大型爆弾が落とされた。爆弾バーゲンセールである。
連続して大爆発が起き、爆炎と煙が空高く立ち込めた。弾着も確認出来ないほどである。

「すごーい、すごい!」
「これが、空中艦隊思想に裏付けされて開発した、超重爆か!これでは巨人と言えど、ひとたまりもないだろう」
「それにしても、恐ろしいですね」
「我が連隊を、無辜(むこ)なる市民を手にかけた報いだ。痛快であるな」

ねこ連隊、丘から見る。もう、戦勝ムードである。「奉祝★巨人撃破祝賀会」という横断幕が既にできていた。

煙の上から、突然ぼふっ、と頭が飛び出る。巨メイドだ。ついで、白い腕、肩、そして胸。
こりゃあまずいぞ。どうやら、更に巨大化してる。いままで丘は巨メイドとおんなじぐらいの高さだったのに、今や腰の高さ、ひざ、くるぶしぐらいにしか届かない。
超巨大メイド。いまそう表現するのが正しいだろう。連隊、ざわざわし始める。飛行連隊は混乱を極めた。

『ねえ、痛かったんだけど。冗談じゃないわ…』
「あわわ、そんなぁ…。連隊長、お逃げくださいニャ!我々で食い止めますニャ」

暗雲が立ち込め、雨が降り出した。もはや、ヌードな超巨メイド。足元からの炎に照らされて、世界終末を告げるなにかのようだった。
戦闘機隊、機銃掃射、爆弾投下を行う。が、効果なし。もはやここまで大きくなったら、もうどんな攻撃も効かない。
氷のように冷たく、怒りを宿した目で、戦闘機隊を見る。そしてぐわっ、と手を開く。なんと大きな手。回避機動が間に合うはずもなく、握り潰され、全滅する。
更に強く拳を握り、細かくすり潰して砕く。パラパラと破片が地面に叩きつけられる。

超重爆がぐるりと旋回して、超巨メイドに向かってきた。ありとあらゆる種類の機関銃や、大砲が、超巨メイドに放たれる。
片舷斉射。曳光弾が糸を引いて、まるで赤いビームか、炎を吐いてるようだった。


凄まじいまでの銃砲撃も、超巨メイドには効かなかった。細いのに、とても太い腕が伸びて、ガッ、と超重爆をひっ掴む。超重爆は、振り払わんともがく。
まるで怪獣映画だ。怪獣と怪獣が戦っている。抵抗の甲斐なく、超重爆、地面に逆さまに引きずり下ろされた。
超巨メイド、外板をちぎり、超重爆の内容物をむさぼりはじめた。その瞳に、狂気の色。ガツガツ、という表現がぴったりだった。
ねこ人、爆弾、軍隊食、機関銃、燃料、エンジン。ありとあらゆるものが口の中へ、お腹の中へ消えてゆく。はだかの超巨メイド、恐るべし。
四つん這いのまま、とても大きな主翼を口にくわえながら、次なる獲物を捜す。血に飢えた獣。獣は丘の上にある、お菓子のまちと、ねこ連隊を見つける。
口からぽとりと大きな主翼を落とす。街が主翼の下敷きになる。その上から脚や膝、 手と腕が乗り、更に粉砕される。破壊と絶望をまき散らし、お菓子のまちへ迫る。

ゴゴゴ、と超巨メイド、丘を見下ろす。氷のような冷たい視線。その目には狂気。

グバァ、と巨大な口が開く。おびただしい量のよだれが、丘の上に滴る。しゅうしゅう、とお菓子が溶ける。
よだれが、糖分を一瞬にして分解するようだ。崩れ落ちる、お菓子のまち。
ねこ連隊、一般市民の周りを取り囲み、かばう姿勢を見せるが、この大きさではどうしようもない。

「さあこい、窮鼠猫を噛むだニャン!」
「僕たちが使うの間違ってません?」
「うるさい!我ら護民の鬼として、最後の一匹まで、死してなお戦わん」

ズズズ、と暗黒の大穴が迫る。ぼんやりと光を放つ巨大な白いもの、ぴくぴくと、蠢く赤いもの。大穴の中に確認できる。
穴の入口の、ぷっくりした唇と、白いものに、とてつもない長さの、銀色の橋がかかっている。降りてくる、くる。



―食べられちゃうんだ、もうダメだ―



連隊の全員が死を覚悟した、その時。


「だめっ!これはみんなが作った、頑張って作ったものなんだよ!兵隊さんも、おじいちゃんも、おねえさんも!」


小学生だ。大きな声を出す。

「そうだよっ!せんせいがいっぱい、いっぱいほめてくれた、おかしの学校があるんだよっ!そんな、らんぼうにこわしちゃうなんて、ごわ゛じぢゃ゛な゛んで、や゛だよ゛ぅ!!」

とちゅうで泣き出す、ちいさい子。なみだの、泣き声の波。やだよ、やだよう。だめだよ。
こどもの、とても純粋な訴え。狂気の中の超巨メイドは、聞く耳を持たない。暗黒が、覆いかぶさり始めた。
おねえさん!きいて!もはや彼女が我々の声を聞くはずないのに。その純真さ。おとなたちもポロポロ涙を落とした。
ねこ連隊、鬼の集団だった、将校たちが、唇を強く噛む。涙が止まらない。ひげを立派にはやした下士官も、むせび泣きをしはじめる。

「おねえさんもなかまにいれてあげるからね!だから、だから…っ」
「ひどいことしちゃダメだよ!おかしはあげるから、なかよくたべようよ!おねえさん!!そんなこわい顔しないで!!」


もういっかい、こどもの、呼びかけ。


ふっ、と超巨メイドの瞳に理性が戻る。



ゆっくりと、口が上がる。暗黒が晴れる。その暗黒は徐々に遠ざかり、ピンク色の唇の中に消えた。超巨メイドが、丘より離れる。

しばらくじっ…と丘を無表情で見つめると、きびすを返し、街より離れていく。


「帰っていく…。あの、非道な巨人が、帰っていく」


カール中隊長、口を半開きにして呆然とつぶやく。兵隊たちはへなへなと地面にへたり込む。
どしーん、どしーん。とても大きな足音を響かせ、彼女は立ち去った。


「こどもたちに救われたな。…よくわからない、力と言うか、なんと言うか…。ううむ。わが輩は考えさせられた」


連隊長、力なく言葉を発する。ひたき、空気を読まず、叫ぶ。

「サァサァ、これでお祭り再開でありますね!」

こどもたちは口々に言った。

「あの、でっかい、おねえさんも!おねえさんもいっしょ!」




【作戦成功】


完全に勢いな回!