今回は完結編です。長かったなー。八割増(当連隊比)で巨メイドの大立回りをお送りします。母乳流行れ。
後半はわりかしぼのです。済ました後に最適です。ではどうぞ。


【続きの続き】





「撃てーーっ!!」

モチニャガ少将命令の下、先ほどの二十八型及び四年型十五糎榴弾砲が直接照準で巨メイドを砲撃する。小回りは効かないし弾は重いけど、さっきメイド服を破いた威力の重砲で、非常に強力である。しかし、そんな大砲でさえ今の巨メイドには取るに足りないおもちゃであった。

『さっさと逃げればいいのに……わたしは今すごく機嫌悪いの。あっ、わかった!そんなにわたしに潰されたいのね?言ってくれれば良いのにーーっ!無惨に潰してあげるわ』

ずぅん、ずぅん、と大きく足音を響かせて重砲隊に近づく。統率の取れていた操砲に次第に慌てる様子が見て取れ、ドタバタするようになった。兵隊たちの表情がこわばる。

「対ベトン弾既に弾切れ、破甲榴弾も残りわずかです!」
「先鋭弾でも榴弾でもなんでもいいっ、撃て撃て撃て!!」

15kg以上もある弾を運ぶ装填手が歯をくいしばりながらヘトヘトの身体に鞭打って弾を込める。それに対して巨メイド、ニヤニヤ笑いながら重砲隊のすぐ近くまでやってきた。

『がおーーっ、食べちゃうぞーっ。潰しちゃうぞーっ。ころしちゃうぞーっ。ウフッ、ウフフフフフ……』
「クソーッ、馬鹿にしおって!!」

指揮官怒ったのは良かった。が、目の前で大きな足が振り下ろされ、重砲ごと砲手がくしゃりと潰された。ぐりぐりと大きな足が更に踏みつけたものをズタボロに引きずり、ペラペラにしていく。

『あははっ、はははははっ。気持ちよくてヨダレが出ちゃーーう!』

榴弾砲と、仲間が潰れるその様子を見た砲手たちは文字通り尻尾を巻いて逃げ出す。しかし逃げ出せたのはほんの一部で、呆然としたり、腰が抜けて立てなくなった兵隊がほとんどだった。
巨メイドは顔を紅潮させ、沈黙した重砲を一門、また一門と重低音とともに踏み潰していく。圧倒的優位に立った快感と足裏が伝えてくる感触が彼女の興奮を高めていく。そのうち、重砲はみんなぺちゃんこになって壊滅してしまった。

「……如何なるトーチカや要塞を数えきれないぐらい打ち砕いてきた、精鋭の我が部隊がなす術なく全滅するなんて、認めん……ぜーったい認めんニャーーっ!!」

最後一人残された指揮官はジタバタと暴れながらつまみあげられると、ゆっくりと灼熱の口の中へ入れられ、舌でこね回されたあと一息に飲み込まれ、彼の嘆きは聞こえなくなった。巨メイド、舌舐めずりをして熱い吐息を漏らす。

『……もっと、もっともっともっと暴れてやるんだから。ぜーーーったい、許してあげないんだからね?』


……


「おい、おいおいおいおい。暴れ始めちゃったぞ。これ今回首都だからまずくないか?火の海になるぞ」
「ウーム、これは大変なことになったな……よし!歩兵隊移動、加害意図を挫くのだ!第二中隊先行ッ」
「了解で、ありますっ」

二等卒軍団含む二十五連隊第二中隊、大きな足跡を追って四本足で現場に急行する。と、今まで将軍たちが居た見晴らしの良い高台までやってきた。まだジュースやサンドイッチが残っている。

「よし、食えるだけ食えっ!力をつけろ」

中隊長許可のもと、夢中でお菓子やサンドイッチを頬張る第二中隊の兵隊たち。すると影でモゴモゴ何か暴れるものがあった。あっ、作者だ。

「厨尉殿なにやってんですか」
「……ぶはぁ、9ヶ月と14日ぶりに助けられた……僕縛られっぱなしで、腕とか足とか壊死してない?これ」
「また大げさな、そんなに時間経ってないですよ」
「とにかく、あのメイドさんが巨大化してたら止めなきゃ!高射砲が毒ガス弾準備してる」
「えっ!たぶんアレ間違いなく巨大化しますよ、厨尉殿」
「急がなくては!死体処理なんて書きたくないぞ」


……



巨メイドは官庁街通りへと進撃し、戦車隊と接敵、交戦していた。ニッコリと笑いながら戦車砲と、トラックの自走砲の集中砲火を一身に浴びている様子から、全く砲撃が効いてない事が見て取れた。巨メイドは余裕綽々で、腰に手を当ててわざとらしくゆっくりと、ずしん、ずしんと歩いて戦車隊と距離を詰めていく。戦車は慌てて後退をかけてバックしてどんどんと追い詰められていく。


『あらあら、たった一人に追い詰められてるなんて情けないですね〜〜。あははっ、そんなことされたらゾクゾクしちゃうわ。楽しくて楽しくて、もーーっと虐めたくなっちゃーうっ!!』


イジワルする巨メイドの後ろをフェートンの自動車が猛スピードで走り去り、防衛司令部へと乗りつける。さながら移動司令部としてモチニャガ少将は動き回っていた。

「官庁街の防衛部隊は何をしている!?」

サイレンの鳴り響く中、モチニャガ少将は苛立ちながら指揮官の所まで駆けつけてきた。部隊の司令部はただただ慌ただしくてなんにも決まらず、効果的な反撃は望めるべくもなかった。指揮官を押し退け、無線機にがなり立てる。

「モチニャガ憲兵司令官だ!非常事態につきこれよりボクが臨時に指揮を執る!!九十型列車砲、砲撃準備!巨人を撃ち殺せ!砲台場の沿岸砲台へ、海軍艦艇と協力し海岸沿いに姿を現した瞬間を仕留めろ!防衛部隊は戦車隊と協働、宮城及び内陸部への侵攻を食い止め、海へ追い落とせ!憲兵隊へ!巨人侵攻方向上の建築物を徴用せよ!!後ほど詳細な指示を出す!!急げ!!!」

防衛部隊はポカンとしつつも、はじめて出された具体的指示に慌てて従う。戦車隊に歩兵隊が加わって協同攻撃をはじめ、機関銃と速射砲の射撃が加わって熾烈な阻止砲火となった。それに対して巨メイドの微笑みに少し苛立ちが見える。

「各隊に通報、各隊に通報。敵巨人は内務省衛生局庁舎付近にて棒立ちである。各隊はこれを包囲、撃破せよ」

更に海軍陸戦隊と首都を守る第一連隊留守隊が駆けつける。ともに精鋭部隊。攻撃はいつしか総攻撃となり爆煙が官庁街全体にまで広がった。しかし、鉄砲、機関銃、それと連隊砲といった兵器が効かないのは以前のお話からも明白で、爆煙の中で巨メイドはくす、と笑うと反撃を開始する。


『フフフ、集まってきたわね……身の程知らず。じゃあ、わたしからの、プ・レ・ゼ・ン・ト♡』


ゆさり、巨メイドはおっぱいを寄せあげ、乳首に向かって丹念に揉み上げ始めた。こみ上げる快感とともに母乳が噴出し始め、辺りは黒い爆煙に代わって白い霧に包まれる。

『ウフフフフフフ、んっ、あっ……痺れるぅ……わたしの母乳が、おっぱいミルクを出すだけでこねこちゃんたちを、全てを薙ぎ払うなんて想像したらゾクゾクするぅっ……ひうっ!おっぱいミルク、先っぽまで来てて重たいよぉっ!あああああっ!大量破壊ミルク発射寸前なのぉ!はああああんん!乳首ピリピリするぅ!あはっ、はぁっ!あはははははぁぁっ!!も、もうくるわ!くるぅぅぅっ!!プレゼントぉ!!母乳うけとってえええええぇぇぇーーーーーーっっっ!!!』

思い切り乳首を捻ると、先端に溜まった途方もない量の母乳が一気に射出されて、官庁街もろとも防衛部隊をなぎ払った。歩兵や布陣していた大砲はその奔流に打ちのめされ、完膚なきまでに吹き飛ばされてしまった。
一列に並んでいた戦車隊は、次々と分厚い装甲を簡単に撃ち抜かれ、超高水圧でまっぷたつになると連鎖爆発を起こしてやられてしまった。
一回の母乳攻撃で精鋭の第一連隊留守隊、海軍特別陸戦隊、教導戦車連隊が全滅に近い被害を受け、防衛部隊の士気は粉砕され巨メイドに反撃をしようという者は存在しなかった。

『はあ、はあ……ッ、ウフッ♡わたしのプレゼント、ちゃんとうけとってくれてうれし〜〜♡』

トロリとした目を、今度は官公庁舎に向けるとニーッと口元を歪ませ、胸をゆさり、ゆさりと動かして「照準」する。少し動かすだけで母乳が漏れ出る。街をズタボロに破壊するだけに飽き足らず、国の機構までもズタボロに壊すつもりだ!

『お役人さん、ごくろうさまです。わたしからのご奉仕でーす!いーーーっぱい、飲んで下さいね。遠慮なさらなくて良いんですよぉ?嫌がるなんて選択肢、用意してませんから。1人でもそんなことしたら、絶滅させて差し上げますわ……あ……んっ!まっ、またっ!また出るわぁっ!はやいっ!今度ははやいよぉっ!!ふあああああんんっっ!!』

乳首から超高水圧の母乳が噴出し、石造りの立派な庁舎がいくつも崩壊していく。家猫帝國の国旗がビチャビチャになりながら倒れ、瓦礫に埋もれていく。崩壊していく庁舎から文官や役所に詰めていた将校たちが脱出し逃げ出す。巨メイドの警告など構わず一目散に走り去る。それを冷たく見下ろす巨メイドがゆっくりと追いかけ、すぐに追い越して行くてを塞ぐ。

『だれが逃げていいって言ったんですか?そんなこねこちゃんはおしおきです』

ゴゴゴ、と大気を揺るがす音とともに四つん這いになると、豊かなおっぱいを逃げ出した役人たちに押しつける。ぶちぶちと潰れる感触。その感触で性的興奮を感じたのか、乳首は一段と大きくなり、おっぱいはふたまわりほど膨らんだように思えた。

『あーあ……わるい子がたくさんいましたので、あなたたちはぜんぶ、ぜ〜〜〜んぶ、おしおきです。おっぱいで潰れるか、食べられるか、わたしの膣内(なか)に入れられるか、しぬ直前に言ってくださいねっ?その中以外の、断る権利はなんてありません。もしそうしたら生きたまま頭、取っちゃうからね』

巨メイドは、おっぱいがギリギリ地面に着くぐらいの高さになるように四つん這いの身体を起こすと、そのまま前に進み始めた。
崩れかかった庁舎はおっぱいに叩きつけられ、完全にとどめを刺された。ありとあらゆるものがおっぱいになぎ払われ、瓦礫が地面と柔肉に巻き込まれ、粉砕されていく。跡に残るのは、白い母乳と、粉砕された庁舎の破片のみ。
と、巨メイドのおっぱいに引っかかるもの。陸軍省だ。頑丈だった陸軍省は母乳の攻撃になんとか耐えて、赤レンガの堂々たる威容を示していた。

『ふーーーん。わたしのご奉仕が足りなかったのね。じゃあ、特別にイイコトしてあげます』

スッと胸を少しだけ上げると、おっぱいを左右に振り始めた。おっぱいの往復ビンタ。片方で数十トンあるおっぱいが陸軍省に何度も叩きつけられ、木っ端微塵に粉砕される。
軍隊の本部とも言える陸軍省は影も形もなくなり、更に見るものを絶望させた。更に陸軍省跡に母乳を勢いよく噴射して、追い打ちをかける。瓦礫は砂となり、母乳と混じりピンク色の水となって流されていった。跡形もなし。
そこまでやって、巨メイドははじめて「陸軍省」の表札を見つけて、大いに興奮と悦びを得る。

『ウフフフフフフ、アーーーーハッハッハッハッハッハ!!!!軍隊なんてわたしには無力なのよ!わたしは奉仕し、奉祀される存在!わたしは、この世界で一番強くて偉くて、かわいい存在なのよ……!』

更に愛液が秘部より垂れて、陸軍省跡に彩りを添えた。それを足で踏みつけ、巨メイドの巨躯が立ち上がる。大いなるもの。もう巨メイドがこうなったら手がつけられない。

『フフッ、もっとでっかくなって、破壊し尽くしたい……ここだけじゃないわ。この国ごと滅ぼして、地面ごと食べ散らかして、この星から消し去ってしまおうかしらぁ……ッ』

身体がぐぐっと大きくなり、超巨大化を始めようとしたとき、巨メイドを呼ぶ大声が響く。


「メイドさーん!メイドさーーーん!!」


作者の声を聞き取ると、超巨大化をやめて声のする方へ振り向く。いつもの二十五連隊の兵隊と一緒に駆け寄ってきていた。続けて大きな声で話しかける。

「でっかくなっちゃダメだよ!高射砲が毒ガス弾を準備してる!」
『えっ、なによそれ!そんなのあるの?』
「イペリット(糜爛剤)かホスゲン(窒息剤)かはわからないけど、たぶん以前の残酷描写の仕返しになるから、そういったことも控えるよーに」
『とりあえずこの大きさでみんなやっつけちゃえば問題ないんでしょ?簡単よ!!』

そう簡単にはいかないよ、色んなとこに隠れてるし、50門もあるんだよ……ってもう聞いてないか、巨メイドはまた大暴れしに違うとこへ行ってしまった。

「あー、行っちゃった……そういや暴れるのを止めなきゃいけないのすっかり忘れてた」
「厨尉殿しっかりしてください」

巨メイドはちょっと官庁街から外れた市街地に現れた。全てが小さく、壊すにも他愛もないものだった。ビル群はあるが、商店街や昔ながらの石垣のある塀、長屋がぎっちりと並び、今にも賑やかなでほのぼのとした雰囲気が伝わってきそうだった。しかし、そんな和やかな雰囲気の町は違和感を覚えるぐらいに静まり返っていた。

『こねこのみなさん、こんにちはー!今からお楽しみタイムございまーーすっ!』

……しかし返ってきたのは静寂だけであった。初めての反応に少しうろたえる。えっと……とりあえず、壊そう。なんかむなしいなあ……。

『なんにも言わないんでしたら、容赦しませんよ?じゃあ、たった今からお掃除しちゃいまーーす!!』

その声を受けてか、チョロッと見えた兵隊の姿。憲兵だ。隠れてバタバタと駆け回っているらしい。居るなら無視しないでよ!

『わるいネズミさんは駆除しましょうね……』

裸足でぐしゃり、ぐしゃりと家や塀が踏み潰され、憲兵との距離を詰める。あっという間に手の届く距離。憲兵は後ろを振り返りつつ、必死に逃げる。巨メイドはニヤニヤといじわるな笑みを浮かべて追いかけ回す。

『はーい、追いかけっこは終わりでーすッ!』

腕を伸ばし、捕まえようと少し大きな町内会館を踏み抜いた時だった。
突如として会館は爆弾のように爆発した。あんまり急なことだったので巨メイドはよろめいて、思いきり後ろに転んでしまった。やわらかなお尻が家々を押し潰し、背中が長屋を丸々一棟なぎ払い、伸びた腕が更に破壊の面積を広げる。
町内会館に、爆薬が仕込んであったのだ!和やかな下町は、いまや不気味な静寂の支配する地雷原と化していた。


「ククッ、真正面から戦うだけが軍隊じゃあないんですよ……本来、弱点という弱点を突き、罠にかけ、こちらは手を汚さず最小限の被害で勝利を得るのが軍隊と言うものです。本能だけで動く敵とは、なんと罠にはめやすいものか」


モチニャガ少将が爆音と、建物地雷原進入の報告を聞いてうそぶく。椅子に座り、マタタビタバコに火をつけて、余裕の表情でくつぐ。

「爆薬は設置し終わったな。列車砲はどうか?」
「はっ、あと少しで砲撃開始の予定であります」
「もう少し海際に来てくれれば射程内。それでおしまいです。分遣隊にはくれぐれも陽動に専念しろとだけ伝えてください」



『もーーーーっ!!卑怯じゃない!罠なんて!!!』


巨メイドは足を抱えて涙目で怒る。ズキズキと走る痛み。今までじゃ、こんなことなかったのに!つい、こみ上げる怒りと憎しみ。慌てて抑える。冷静に考えないと、負けちゃう。ゆっくりと深呼吸して、自分を落ち着かせる。

『地雷原になってるなら、避けるしかないわ……』

よっこらしょ、と立ちあがる。足は未だに痛みを伝えてくる。庇いながら歩く。ああ、なんと痛ましい……と、涙が浮かぶ視界に、煙を立てて一台の装甲車が走ってくる。その装甲車から、作者の呼びかけが聞こえてくる。

「メイドさん!メイドさん!暴れちゃダメだよ」

作者は、中にどうやって入ってたかわからないが十数人の二等卒軍団と一緒に装甲車を降りてきて、丸めた新聞紙を使い大きな声を裏返しながら巨メイドに歩み寄る。その声と話の内容に、巨メイドの大きな顔は不機嫌そのもので口を尖らせ、コビト踏み潰すべしの意思をにじませていた。

「何も考えずに街を破壊したり、人を食べたり潰したりしたら際限ないよ。簡単に罠にハマるし。少しは落ち着いて!あと、話のオチがつかないからそろそろなんとかして」

頭ごなしに怒られたあげく、最後に身もフタもないことを言われて、巨メイドはズシンと一歩、前に出る。

『ずいぶんなことを言うじゃない?わたし、あそこまでやられたらガマンの限界よ。ヘタしたら死ぬとこだったし。インガオーホーってヤツを思い知らせてやらなきゃね?』

作者以下が冷たい視線を受けてガタガタ震える。しかしそんなことに構わず、ひたきが大きな声で返事をする。

「そこだよメイドさん。頭冷やそう、いったん。また負けちゃうよ。前に、メイドさん残酷描写したとき、僕ら許したじゃん。そーゆーことだよ。今度はメイドさんの番だよ。インガオーホー!」
「ひたき君の言う通りだよ。しかも、この子が君を助けたいって強く言ってたんだって。いわば命の恩人の言うことは聞くべきなんじゃないかなと、厨尉は個人的に思うんですがー?」

もっともらしい言い分に、メイドさんは大不満を抱きつつもなんとなくひたきの言いたいことは伝わったらしく、大きなため息を吐くと一呼吸置いてから話を切り出す。

『……わかったわ。ムダに壊したり潰したりするのはやめる。けど、一個だけお願いがあるの』

その言葉を受けて作者以下兵隊軍団は円陣を組んでヒソヒソと相談を始める。一個だけだって、一個だけならいいんじゃないか?と相談になってない内容がモロバレだったが、巨メイドは成り行きを見守る。

「まあ、いーよ。一個だけね」

軍団代表、作者のテキトーな返事にイラッとしたがとりあえずお願いは聞いてくれるらしい。巨メイドは「ニッコリ」笑うと冷たい言葉を放つ。


『あのお偉いさんはどこ?憲兵司令官の。絶ッッ対タダでは済まさないって約束してあげたから……さあ早く教えて?教えてよ。ねえ、早く。早く教えなさいよ……早く、早くッ!!』


あばばばばば、そんなこと言われたって僕ら知らないよ……とパクパク魚のように口は動かすが言葉が出ない。作者は生唾を飲み込むと、かろうじて喉の奥から発した、素っ頓狂な裏声で推測を口にする。

「た、たたったぶん、防衛司令部に居るはず!え、えっと……憲兵は本来戦車とか重装備を持たないし、無線及び有線電話の通信網は憲兵隊より防衛部隊の方が優れてるはず!あとそれか、巣穴の憲兵司令部!うーん、もしそれで居なかったら、たぶんメイドさんの周りを動いているんじゃないかな……?また強力な攻撃考えてるんだとしたら危なくない範囲まで離れてさ。あ、あとは知らないっ!」

「ニッコリ」笑う巨メイドが、さらにほくそ笑むと頭を巡らせたあと、大きく伸びをする。

『……フフッ。たーーっっぷり、後悔させてあげるんだから。私の怒りを思い知るのよ……あはは』

巨メイドは、防衛司令部向けて、まっしぐらに歩いて行った。あの調子だと、残酷描写まで使って仕返ししそうだった。こわい。

『あっ、ところで司令部ってどこ?』

巨メイドが振り返って遠くから作者に聞いてくる。怒ってるんだろうけど、なんだか拍子抜けるなあ……大声出すの面倒だから地の文で伝えるよ!えーと、戒厳令の決まりと一緒なら、「猫人会館」って建物だと思うんだけど……場所?たぶんそのまま道なりにまっすぐ。



……


「なに?こちらに真っ直ぐ来ている?」

モチニャガ少将、タバコを急いで揉み消すと立ち上がり窓の外を見る。軍御用達の宿泊施設及びレストラン、会議ホールである「猫人会館」が防衛司令部で、最上階に設営されていたのだった。

「防衛部隊は何をしている?急ぎ攻撃を開始せよ」
「それが……たった今入ってきた報告によりますと、巨人の攻撃を受け全滅に近い損害を被ったとの事でありますッ。組織だった攻撃は不可能でありますッ!」

報告を受けたモチニャガ少将は言葉を失った。約2個大隊(1000人ぐらい)が自分が把握出来ないぐらいの早さで全滅した事実に青ざめる。

「……クソっ、列車砲はどうか!?」
「こちらもダメです……今撃つと我々まで吹き飛んでしまうとの事であります!海軍の警備艦隊は、損害を恐れて沖合に退避中とのことでありますッ」
「……ッ!役立たずどもめ!!!」

モチニャガ少将、まさに怒髪天を衝く勢いで毛皮を逆立てて怒鳴る。全く、ホウ・レン・ソウ(報告・連絡・相談)がなってないんだよ……!これだから寄せ集めの防衛隊は!!
モチニャガ少将は心の中でありったけの毒づきと愚痴を吐くと、大きなため息をついて心を落ち着かせると新たな指示を出す。しかしもはや今までの機械仕掛けのような、複雑かつ鮮やかな指示ではなかった。追い込まれつつある。

「逃げるぞ!司令部放棄!全員、重要書類を持ち出せ!!」

三十六計逃げるが勝ち、と言うつもりはないが、後退して体制を立て直すのは常套手段。司令部要員が慌ただしく地図や作戦書などを丁寧かつ粗雑に図嚢(ずのう、マップケース)や背嚢に詰められるだけ詰め込んでいく。
眉間にシワを寄せた顔で、巨メイドから言い放たれた言葉(猫人狂想曲・前編参照)を反芻しつつモチニャガ少将はタバコの箱に手を伸ばす。箱の中のタバコは、あと一本しか残されていなかった。

「どうやら狙いをこのボクだけにしたようですね……司令部要員だけでも脱出させたいが……?」

モチニャガ少将はタバコに火をつける。そして、ほんの少しのあいだ外の景色をぼんやり眺め、そしてタバコを灰皿に押しつける。煙を吐き終えると一瞬何かを閃いたようで、ピカピカに光る長靴をくるりと回し軍帽の顎紐をかけて、一目散に階下へと駆け下りていった。


『……どこかなー?どこかなぁーー??出ておいでー……チッ、出てきなさいよ……』


巨メイドは建物をひとつひとつ、丁寧に手で叩き潰したり、或いは指で突き潰したりと、文字通り「しらみ潰し」に壊していく。
公園に隠れていた司令部守備隊の野戦高射砲や、ビルの屋上に設置された高射機関砲、重機関銃から散発的な反撃はあるものの、野戦重砲の砲撃をものともせず、更に総攻撃をも耐えた巨メイドにはそんな攻撃など効くはずもなかった。まるで針金細工のように力任せに大砲を握り潰し、或いは兵隊ごと踏み潰していく。

『ふふん。ねこふんじゃった、ねこふんじゃったー……』

そこへ一台だけ無事だった、司令部防衛隊なけなしのタンク(【誰得設定】タンク・八十九型中戦車参照)が駆けつけて、戦車砲を撃ってくる。距離を詰めての近接戦闘を仕掛け、時間稼ぎの遅滞戦闘を目論んでいるようだった。いつも上ばっかり狙ってくるが、今回は足ばかりを集中攻撃する。

『あら〜〜、よっといでー。あげるのは、かつぶしじゃなくてふみつぶしだけどねっ』

ぐわっ、と足を上げて、タンクを脅かす。踏み下ろされようとする足裏に機関銃の銃撃が開始されるが止まるはずがない。
タンクは足の下に隠れて見えなくなった。が、すぐに健在な姿を現した。


『いっっったぁぁぁぁぁーーーぃぃっ!!』


巨メイドは足裏にグサリと刺さる感触と痛みで思わず飛び退く。よく見るとなんと、タンクに画鋲をびっしりくっつけたようなトゲがたくさんついていたのだ!踏み潰しされたり、食べられたりするのを防ぐ増加装甲である!

『もーーっ!もぉーーーっ!!そんなことするならこうしてやるんだからぁーーーッ!!!』

巨メイドはタンクの車体をがっしりと掴むと、空高く放り投げてしまった。放り投げられた戦車はもう見えなくなるとキラリと星になり、落ちてこなかった。

『ふん!せいぜい明日の朝降りてくるといいわっ。でもまさか、ここまで対策してくるなんて……』

小賢しいタンクを撃退した巨メイドは、そこら辺のビルより立派な「猫人会館」の前に到着する。とうとう司令部にたどり着いたのだ!
さあどうして遊んであげようかしら……。
彼女はいじわるな微笑みを浮かべる。屋上で必死に抵抗する、最後の機関砲部隊。くすっ、と鼻で笑うとクルリと後ろを向き、お尻を突き出してフリフリと動かす。

『全然効かないよー?全然気持ちよくないよーー??ココ狙うんだよ。ほら、はやくーー!』

巨メイドはぐばぁ、と女性器を指で開いてヒクつく膣口とデロリと垂れる愛液を見せつける。そのさまを見せつけられた高射機関砲を動かす兵隊は、顔を真っ赤にしてうつむいたり、鼻血を出してヘトヘトとその場に倒れたり、おねーさんの色気に当てられてただその場に呆然と立ち尽くしたりして、戦いなどそっちのけで沈黙してしまった。

『あははっ!ホントに純でカワイイのね。じゃあ、しっかり教えてあげる。これが女の人の身体なのよ……』

そう言うと巨メイドは猫人会館を跨ぐと、ゆっくり腰を降ろしていく。大きな股が迫る段階で、ようやく何が始まるかわかった兵隊たちは逃げ出そうとするがもう遅かった。女性器に一瞬押し付けられると、建物ごと兵隊たちは熱く火照った膣内へと飲み込まれてしまった。


『はぁーっ、はぁーーっ……はひっ、ウソっ、太ぉぉぉぉぃ!!ゴリゴリするぅ……ステキぃっ……!!!』



ずちゅっ、ずちゅっ、と巨メイドの腰が自然に上下する。それだけでない。膣が「猫人会館」全体を凄まじい力で締め上げていた。膣と会館の屋上に押し付けられた兵隊たちと機関砲は既に圧縮され、潰されてしまっていた。窓と言う窓が壊れ、灼熱の愛液が怒涛の勢いで流れ込み、建物全体が満たされていく。司令部は救援要請を無電、電話のあらゆる方法で助けを求めたがもはや、なす術はなかった。

『ウソっ、ウソぉぉぉぉ♡軽くイっちゃうぅぅ!んひぃぃぃ!!イく!イくイくイくうううう!!イっくぅぅぅぅぅぅぅっ!!!!』

建物に一段と力がかかり、猫人会館は膣内でバラバラになってしまった。地面にはもぎ取られた基礎だけが残り、威容を誇っていた建物は膣内で瓦礫となってわだかまっていた。

『ダメぇぇぇっ……膣内(なか)に残らないでぇぇ……動くだけで気持ちよくなっちゃう……わたしっ、わたし変態になっちゃうぅぅ♡』

キュッ、キュッと膣を小刻みに締めつける度に愛液が噴き出し、瓦礫が一緒に流れ出していく。その時の、膣に、膣口に擦れる感触でまた性感を得ているようだった。口の端から涎を垂らして拭うこともなく、ビクン、ビクンと身体を震わせる。

『……コレでモチニャガと言うヤツは潰してあげられたかしらぁ……?』

快感の余韻に浸りながら自分の性器内で起こっていることを想像し、ウットリして下腹部を撫で回す。キュッ、キュッと膣肉を締めると建物が砕ける感触と、もがき苦しむ兵隊たちの刺激がハッキリとわかる。快感と優越感が最大限に高まる。

『あふっ、膣内で暴れてる……フフッ、そんなわたしのお腹蹴らないでぇぇ……!あんっ、産んじゃうわ……イヤっ!その前に締めつけて潰しちゃうぅぅぅーーっ!!イヤーーーーーッッ!!!んひゃあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーっっ!!!!!』


さらに追い討ちをかけるように絶頂を何度も迎えると、崩れ残れる街並みに放蕩な影を落とす。もう夕暮れ。赤い、赤い影がゆらゆらと揺れ、心ここにあらずと大股開きになり肢体を投げ出す。あはぁん!もうっ!もう許してぇっ!許してあげるからぁ……っ!!


「この瞬間を待っていたぞバケモノ!この至近距離ッ!!対ベトン弾(対要塞用の砲弾)の直接射撃で、最期の絶頂を感じつつ息絶えるが良いッ!!撃てッ!!!!」


モチニャガ少将の号令の下、重戦車を改造して、新型大威力の「九十二型十糎加農砲」を積んだ重自走砲が擬装を捨てて動き出し、巨メイドの膣に目掛けて凶弾を撃ち込んだ。
30cm厚のコンクリートをぶち抜く砲弾は巨メイドの膣口に飛び込み、膣内に充ち満つ愛液を切り裂き、子宮口を貫通して子宮に到達し、子宮壁に着弾するとそこで炸裂した。

『ひぎぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!あ……あっ……ガッ……』

巨メイドは目を見開き、歯を食い縛り背中を弓なりに反らしながら大絶叫を上げると、そのまま後ろへと倒れてしまった。ピクリとも動かない。


「くっ、ハーーッハッハッハッハ!!バカめが!!!近代兵器の前に巨人なぞ無力なのだ!!!さぞや、快感だったことでしょうねえ……!いやいや良い事をしました……!ああ、お礼や御奉公は結構でございますよ、メイドさん。ククッ」

モチニャガ少将の勝ち誇った笑い。砲兵工廠(こうしょう、兵器工場のこと)から上手く動くか、まだわからない試作の段階であった重自走砲を持って急行し、徹底的に擬装した上で大胆にも至近距離から直接照準による攻撃を実施したのであった。巨メイド相手に二度目の勝利を収めるなんて、なんてヤツなんだ。

「死体は鋼索(こうさく、ワイヤーのこと)でしっかりと縛れ。息を吹き返しても起き上がれないぐらいにな!憲兵隊は何処の分遣隊が健在か?連絡が取れ次第、厨尉と二十五連隊の将兵を射殺せよ!」

出す命令にも抜け目がなく、まさに冷徹。もう巨メイドは、起き上がる事はないのか?投げ出された肢体は夕陽に照り映えるのみ。

「……しかし急行したと言うのに司令部は守りきれなかったな。最終手段で囮として使ったとは言え。帝都の治安を司る者として失格だ……!だが国軍史に残る、とんでもないバケモノであったことは確かですがね……ま、国軍史に腹上死などと言う単語を載せた功績も、軍事警察としては失格ですね」

短い、物思いは電話の音で中断させられた。あとは、淡々と始末していけば良い。もう、頭は使わなくていいのだ。
フフッ、そうよ。もう頭は使わなくていいのよ。やーっと、つ・か・ま・え・た。


「しまった、謀られたか……!まだ……まだ生きていたとはな!!」
『フフフ、死んじゃうかと思うぐらい刺激的だったわ♡はじめてよ、記憶に残るぐらいわたしを追いつめてくれたのは』

自走砲は息を吹き返した巨メイドの、極太で細い指に絡め取られ、空中に持ち上げられていく。巨大な顔の前で手が止まると、ギョロリと目玉が見つめてきた。モチニャガ少将と巨メイド、二度めの対面。浮かべる表情は、今度は逆だった。モチニャガ少将に打つ手はもう無かった。

『死んだフリ、なぁんてものに騙されるなんて。ホントかわいい。虐めたくなっちゃうわぁ……ウフフ、フフフフフ……』
「くっ……子供騙しの手にかかるとは、なんたる屈辱ッ……!」
『ウフフッ、お礼も御奉公も結構って言ってたわよね。じゃあ、わたしに奉仕してもらおうかしら。その屈辱のまま精一杯足掻いてわたしを愉しませて、死んじゃって』

自走砲が唐突に大砲を撃つ。最期の足掻き、狙いをつけずに撃ったその一発はカチューシャを吹き飛ばし、さらさらと流れる髪の毛を少しだけチリチリに焦がした。

『……あはっ、少しだけびっくりしたわ。わたしをびっくりさせたごほうびをあげなきゃね』

巨メイドは自走砲の大砲を指で器用に引きちぎり、装甲を爪で裂いてモチニャガ少将以外の乗員を指で摘むと膣口へ押しつけた。自走砲は、胸の谷間の牢獄にしまい込んで容易には逃げ出せないようにした。

『ココが、女の人の大事なとこよ。膣内で思う存分射精していいのよ?はははっ、わたしがこねこちゃんの子を孕んだらどうしよっか。わたしは女のコが良いなあ。そしたらまたあなたたちとわたしの子どもが生殖活動して、どんどん増えてくの。フフッ、そのうちあなたたちは絶滅しちゃうのよぉ……?』

うっとりした声をしながらも、冷たい視線を自らの性器とそこにへばりついているであろう乗員たちに向ける。モゾモゾと動く感触が搔痒感と少しの快感を伝えてきて焦れったさを感じる。しかし、性行為をしている様子はなく、ただもがき苦しんでいるだけの様だった。

『……ねーえ、もっと感じさせてよ。もーーっと、気持ちよくしてよ』

動きに変化はなく、また返事もない。わるい子。ウフフ……まあ言うこと聞いてきたらそれはそれで、少しだけ期待したけどね。

『言うこと聞かない子はしつけなきゃ。わたしはこうして気持ちよくなるのよ。よーく身体で覚えてね?』

巨メイドが腰を下ろし、小山のような手が動き出すと、女性器に覆い被さり、指が獰猛に自走砲の乗員もろとも膣口を掻き回し始める。グチャグチャと言う重々しい音が辺りに響き、愛液がしどとに、滝のように吹き出す。愛液には、まだ瓦礫と溺れて力尽きた兵隊たちが混じっていた。
凄まじい勢いで擦り上げる指の動きと、喘ぎ声から、もう乗員たちの運命は何の説明もするまでもなく察せられた。

『あッ、ああ……っ!ブチブチ言ったわ!ウフフッ……わたしの身体、覚えてくれたかな!?ああん……!これがわたしなのよッ、あなたたちをおもちゃにする美しい圧倒的な存在なのよぉぉぉーーッッ!!』


再度絶頂の波を迎える巨メイド。腰を左右に振り、臀部が辺りのものを轢き潰しながらよがり狂う。噴き出す愛液とともにぺちゃんこになった乗員が巨メイドの股をつたい、地面にドロリと落ちていく。
巨メイドはふと下腹部からの快感の他に、胸のあたりから伝わる微細な感触に気がついて、目線を胸元に落とす。
どうやらモチニャガ少将が脱出しようと自走砲を動かしているようだった。しかし胸の圧力と吸いつくように柔らかい肌に足を取られ、少しだけノソノソと進んだっきり動かなくなってしまった。

『あら?あらあらあらー?近代兵器って言うのは、おもちゃより力がないんですかー?それとも、そんなにわたしのおっぱいが病みつきなのかな?』

上体を起こしてニヨニヨと満足げな笑みを浮かべると胸をゆさゆさと動かし、自走砲に圧迫を加える。エンジンがつきっぱなしらしく、微振動がくすぐったい。

『じゃあ、将軍様には特別に胸で挟んで潰して差し上げまーす』

胸を寄せて徐々に力を強めていくとギチギチと金属が軋み、パキン、バキンと装甲を止めているボルトが折れて飛んでいく。キャタピラは連結部が外れ、車輪のシャフトは軽くポキポキと折れて小気味良い。

『次は上下に動かして参りまーす。こうやって上下に擦るのを、パイズリと言うらしいんですよ?女の子の感触を味わいつつ潰れてくださいね?』

柔肉が互い違いに動き出せば、いよいよ車体はバラバラに分解していく。左右でしっかりと万力のように保持された状態で力が反対側に加わればもうどうしようもなかった。
装甲板は割れ、砲身はグニャグニャになり、近代科学の結晶は女性の胸の前に無惨にも粉砕されてしまったのである!
ぐぐっと胸の谷間が開くとパラパラと金属片がお腹に、ヘソに落ちていく。

『あはははっ。わたしのご奉仕はどうでしたか?嬉しすぎて声も出ませんか??』

自分のやったことと、圧倒的優越感にゾクゾクして熱い吐息を漏らす。さあ、次はどうしようかな……と視線を街に戻したとき。


『……あれ?今胸に潰したはずなのに?』


モチニャガ少将がシッポを巻いて逃げ出しているのを見つけたのだ。自走砲の動きで注意を惹きつけ、振動で自分が逃げ出す感触を誤魔化していたのだ!なんというヤツ。

『あはっ、あははっ!ご奉仕がいやなんて許しません。おしおきです……』

巨メイドは立ち上がって、必死に逃げるモチニャガ少将を追っかける。わざとギリギリ踏み潰さないようにピタリと後ろにくっついていく。もっと、もっと怖がればいいのよ。みじめみじめ。あははははっ。

『ほーら、早く逃げないと潰しちゃうよー?食べちゃうよ?殺しちゃうよ?』

少将は後ろを振り返りつつ、四本足で逃げる、逃げる。もうこれ以上足掻きようも、作戦も残っていなかった。未来は、巨メイドのいいようにもてあそばれて、ゴミのように捨てられるのみ。
とうとう、転んで倒れると起き上がれなくなってしまった。くすっ、と巨メイドは笑うと足をかざしてモチニャガ少将の恐怖を煽る。

『ほーらほーら。バケモノに殺されちゃうよー?怖いんじゃないの?悔しくないのー?死にたくないんじゃないのー?きっと内臓出ちゃうよー?すごく痛いよー?逃げないのー?もっと醜く足掻いてよー』

ギッと睨むモチニャガ少将。もうそれだけしか出来ない。巨メイド、一旦足を退かすとため息を吐いて、冷たい笑みを見せつけるようにして最期の処刑宣告を言い放つ。


『つまんない。じゃあ、潰れちゃえ』


脚を高く振りかぶって、全体重をかけてモチニャガ少将に振り下ろす。ズドンと、大きな大きな音が響き、地割れが発生するほどの破壊がもたらされる。

『……?』

しかし踏み潰した感触はなかった。足元をよく見るとさっき海へ放り投げた副官がサイドカーを駆り、モチニャガ少将を助け出していたのだ!エンジン音を唸らせて、更に逃げる!!

『ちっ、アイツも潰しておけば……ふざけんじゃないわよッッ!!!』

再度、サイドカーで逃げるモチニャガ少将と副官を追いかけ回す。今度は踏み潰してやる。本気で追いかける巨メイド相手では軍用サイドカーと言えど、ゼンマイのおもちゃ同然。悠々と巨メイドに跨ぎ越されると、大きな足で道を塞がれる。
サイドカーは急ブレーキをかけるが、止まれずに足に乗り上げると宙を飛び横転して、壊れてしまった。モチニャガ少将、それでもよろよろと立ち上がってビルの陰へと逃げる。


『……まだ逃げる気?あきれた』


巨メイドはビルの陰から見せつけるように、ゆっくりと大きな姿を現す。なるべく怖がらせる為だ。しかし、怖がったのはモチニャガ少将だけでなかった。



『……あら?あなたたちはいつもの……』

我らが二十五連隊と師団長が先頭に立ち、ヨロヨロと逃げ出して来たモチニャガ少将を保護していた所に、巨メイドがゆらりと現れたものだから、一瞬恐慌状態に陥った。あ、あ、あの、これは、その……。
師団長、物怖じなどせず一人、前に進み出て巨メイドに大声量を響かせる。

「巨人よ!これ以上暴れるのであれば我が第四師団の戦力を以て対峙しよう。とりあえず話を聞けい」

巨メイド、ムッとした表情を見せると師団長を睨みつける。二十五連隊の将兵たちはハラハラして成り行きを見守る。今たぶん対峙と退治を少し聞き間違えたなアレ……。

『……今あなたたちに用はないの。そこにいる将軍様に用があるのよ。わかったならそこを退きなさい。わからなくてもあなたたちごと踏み潰すわよ』
「ワシも将軍様だ。しかもモチニャガ少将より一個上の中将だ。階級のことはとかく、話を聞けと言うとろうが!」
『話なら聞くわ。ただし、モチニャガ少将とやらを潰したあとでね』
「それはならぬ。これ以上の乱暴はなんであれやめてもらおう。その理由を説くために話を聞けと言っているのだ!」

師団長、埒があかないと踏んだか巨メイドに喋らせる暇を与えず言葉を続ける。

「首都で一度反巨人運動なる暴力運動が吹き荒れてな、無法集団と化した輩が略奪や焼き討ちを始めて誰も手をつけられぬような事態に陥った時があったのだ。断固として鎮圧したのは他の誰でもない、憲兵司令官のモチニャガ少将だったのだ。彼は自分の思想こそお前を排除せんと言うものだが、治安に関しては滅私奉公を貫く人間だ。モチニャガ少将は少し勝手な理屈ではあるものの、巨人に手を下すのは軍隊のみに任せよ、無駄な被害を増やす勝手は巨人でも国民でも許さぬと毅然とした態度で表したのだ!そのおかげで帝國は無法地帯とならずに済んでいる」

巨メイドが胡散臭そうに話を聞いているものの、師団長の長い話の目的を理解したようでビルにもたれかかって不戦の意図を示す。

『つまり、それに免じて許してやれってことでしょ?わたしが何も考えずにすっきり暴れ回れるのもモチニャガとやらのおかげってワケね……』

巨メイド、少し考え事をする仕草をすると、仕方ないと言う表情を浮かべてため息を吐く。

『わかったわ、今回だけは許してあげる。でもわたしにやった事と言った事はぜーーーーったい、忘れないからね』
「まあ良かろう」

師団長が大きく頷く。意図が通じたようで一安心したようだった。肩の力を抜いて険しい表情がやわらぐ。

「全くご都合主義が過ぎるな。そうは思わんか?モチニャガ君」

師団長はヒゲを撫でながら、意地悪な微笑みをモチニャガ少将に向ける。ボロボロのモチニャガ少将は鼻で一笑に付したものの、降参したようで表情自体は晴れ晴れとしていた。

「全くそうですよ、歯が浮きますね。巨人に助けられたなんて『猫道派』の重鎮として失格です。そして。憲兵司令官も失格ですかね。ここまで様々のものを犠牲にしてもなお、勝てなかったとは……素直に負けを認めて投了致しますか」
「まあよくやったとワシは思うがな!ピチピチの裸が見られたからのう」
「恐悦至極に存じます。ま、ボクはあの胸の谷間に入れられたのですがね。非常に柔らかでしたよ……おっと。礼を言い忘れておりました。命を助けていただいてありがとうございます」
「冷徹で知られるモチニャガ君がそんな礼を言うとはね」
「冷徹でもお礼ぐらいはしますよ、ひどい言われようですねぇ……ま。自分の歩んで来た道ですし、そう言われても文句はないですね」

ヨロヨロと立ち上がりつつも胸を張り、師団長と並ぶモチニャガ少将。赤く輝く夕陽が、彼らを照らしていた。



……



もう日はとっぷりと暮れて、夜のとばりが降りていた。官庁街やデパートと言ったところは、散々破壊され尽くしてしまったが被害のない所はまだたくさんあり、そこはネオンサインや灯りが煌々と輝いて、栄華を誇る帝國首都未だ健在を物語っていた。

海辺の遊歩道に、巨メイド、いや、メイドさんが一人海風に吹かれながら佇んでいた。ちゃっかり何処からか洋服を失敬してきたらしくワンピースドレスを着て、靴もキチンと履いてとてもキレイな女のひとになっていた。物思いにふける横顔はまさに美人と言うに相応しく、誰もが思わず振り返りそうだった。

「メイドさん、メイドさん!!!」

唐突に茂みからひたき二等卒が出てきた。メイドさんが、急に姿を現したひたきの場違いな大声にびっくりして、思わず振り返る。

「ああ、びっくりしたわ。いつものこねこちゃんじゃない……どうしたの?」
「これ……これっ!もし、もし良かったら……もらって下さい!!」

気をつけの姿勢を取ったガチガチのひたきから、可愛らしいリボンで飾り付けされた、ちょこんと小さな箱を手渡される。メイドさんは白い手をすっ、と伸ばすと、上官に渡すが如く両腕をびしっと伸ばしたひたきの手から、箱を受け取る。

しゅるりとリボンを解き、開けた箱の中身は、髪飾りだった。さっきデパート行った時にいつ間にか買っておいたのだ(猫人狂想曲・前編参照)

「あらやだ!ちょうど困ってたのよー!うれしーーっ!!」

思いもよらないプレゼントの奇襲攻撃に、キャッキャとはしゃぐメイドさん。いつも大きな姿でいる時でしか見たことない仕草に新鮮味を感じる。が、当のひたきはそんな余裕などあるはずがなかった。

「……フフッ、緊張し過ぎじゃない?それともわたしが怖い?」

メイドさんの視線の先、ひたきの顔は汗まみれでこわばり、そして真っ赤になって口元はプルプルと震え、耳は後ろに倒し毛が逆立って、おまけに耳の穴からケムリが出ていた。

「そういえば、あなたがわたしを助けて欲しいって言ってくれたんだよね。本当にありがとう。なんてじゃメイドとして失礼ね。貴殿のご厚情に深謝申し上げますわ」

メイドさんがスカートの裾を持ち上げ、敬意を表する。わーっ、こんな姿見るのはじめてだ。

「いつも上から見下ろしてばかりだけれども、同じ視線でいるのも良いと今すごく思うわ……」

失望とは違うため息を吐いて、メイドさんが艶やかな眼差しをひたきに向ける。直立不動の兵隊は、口をモゴモゴさせ何かを言おうとしているが、緊張のあまりそのまま固まってしまって動かない。

「どうしたの?頑張って言ってごらん?」

ひたきの顔を覗き込むようにして、メイドさんは首をかしげて、顔を近づける。いい匂いがひたきの鼻に入り込んで、更に言葉を詰まらせる。奥手の二等卒猫は喉から声をなんとか絞り出したが、すっとんきょうなトーンと内容でメイドさんを一瞬ポカンとさせた。


「飼われて撫で撫でされたり一緒に寝たりしたいと思うほど好きになりました!メイドさん、好きです!!」


聞いた言葉を理解した刹那、メイドさんはケラケラと笑い始める。涙を流すほど笑いこけたあと、メイドさんはひたきに向き直る。

「あははっ、わたしも好きよ?人のことはっきりキライなんて普通言わないわよ、面白いわね」

今度はひたきの方がポカンとする。どうやら恋愛感情を抜きにした好き嫌いと捉えられた事に気がつくと、しょんぼりと肩を落とす。メイドさん、くすっと笑うとひたきの頭をポンポンと叩く。

「因みにわたしのこと、メイドさんって呼ぶのをやめてよ。わたしには名前があるのよ?ヴィルヘルミーネ・エーデルシュタインっていう名前がね。館のみんなからはよくミーネと呼ばれてるわ。あなたもそう呼んでね、ひたき君?」

ひたきの顎をぐいっと持ち上げると、ミーネは軽くキスをした。ボー然となったひたきは口に手を当てると、頭がボンと爆発してそのままひっくり返ってしまった。
くすくすと言う、いじわるな笑みが夜の風に吸い込まれていった。


「おやおや、まぶいですねぇ……でもこの調子だと失恋ですかねえ?」
「いやもしかしたら脈アリかも知れんぞ、モチニャガ君」
「巨人と共存どころか、交際に発展するのか……?これは……これはすごいぞ!薄い本だ!!」
「『抑制派』なんだろ、やましい妄想も抑制してくれ、あと声も」
「種族は違えど、恋愛とは誠にめでたいことじゃ。あと同人誌はエロ本だけを指すのではない。わかってるのか、ええ?」
「まあまあ落ち着いて下さい。しかし名前まで聞けるとは驚きです。作者も知らなかったです。驚きました」
「我が輩も二十五連隊も驚きだぞ」
「連隊長殿、ではこれからは名前を表記する必要があるのではありませんか?」
「ひたきのヤツ、駄目だなあ。あれぐらいで倒れるなんて。せっかく行けーっ!って背中を押したのに」
「でも、でもキスしてもらったなんてすごいよ!!」
「うるさいですよ、ボクらは静かにしてるというのに……」

コソコソと茂みの中から、メイドさん改めミーネとひたきのやり取りを見ていた将軍たちと二十五連隊の将兵たち。

「最初からぜーんぶ聞こえてますよ、こねこちゃんたち」

くるりとミーネが振り返り、茂みの方を睨むと巨大化しつつ近づいてくる。あっ、マズい……。

「さーあ、退散しましょうかね。お先に失礼」
「あっ、待って!置いてかないでください!!」

一番最初に逃げ出そうとしたモチニャガ少将のサーベルの鞘を必死の形相で、ぐっと掴んだフクロー。それを受けてモチニャガ少将がつんのめる。先頭のモチニャガ少将がつんのめったことにより、後に続く将校や兵隊たちがつまづき、将棋倒し状態になってしまった。ねこまんじゅう。

「何をしている!早く上から退けっ!!」
「申し訳ありません少将閣下、上の師団長閣下や連隊長殿たちが降りてくれないと……」
「メガネメガネ……」
「『抑制派』って逃走まで抑制しなくてもいいじゃないか!」
「洒落にしてつまらないのう。しかし、この状況は洒落にならないぞ!ハッハッハ」


にっちもさっちもいかないところを、ミーネがやってきてジロジロ品定めしながらほくそ笑む。

『あなたたちは気安く名前で呼び捨てないで欲しいわ。まだおあずけ……フフッ』

ねこまんじゅうにミーネ女史が覆い被さるように四つん這いになると、大きな唇で地面ごとキスをして、ねこまんじゅうをペチャンコに潰してしまった。ワーッ、嬉しいけど嬉しくないっ。

『厨尉さん、女史じゃなくて、いつも通りに呼んで欲しいわ』

アッハイ。

『じゃあね、こねこちゃんたち。そして、まあ会おうね、ひたき君……』

巨メイドは夜の闇にフッと消えていった。名前で呼ぶのはまだ先になりそうだなこりゃ……と思うペチャンコのねこまんじゅうたちであった。



お し ま い