『門前女神(後)』


「……あ、あれ?」
ところが、一体どうしたことでしょう、誰一人として動こうとはしませんでした。
もしかして、また私が気づけない内に、何かを壊してしまって行き道を阻害してしまっているのでしょうか?
……い、いえ、そんな筈はありません。
だって今回に関しましては、指は地面に着けないように注意しましたし、
それに、周囲の壁が崩れてきて皆さんを危険に晒したり、行き道を塞いでしまったりしないようにと考え、
門扉の部分だけではなく、周囲の壁もほんの少しだけ多めに、一緒にもぎ取ったのです。
現に改めて壁の辺りを見てみましても、ぼっかりと、それはもう、十分すぎるほどに、大きな通り道が出来ております。
残念ながら瓦礫なんかもないわけではありませんが、避けて通れば良いだけのこと。
私は少々迷いましたが、群衆の方へと視線を落とし。おずおずと声をかけてみます。
「あのー…何か……?」
ですが、ある意味案の定と申しましょうか、答えはどなたからも返ってきませんでした…。
「えーと…その…お、お礼には及びません…けれども…?」
……まぁ、そういうことじゃないですよね。
どうせ違うのでしょうねと思いつつ、それでも一応言ってみましたが、見事に反応は無く。
やっぱりそういうことでもないらしいです。
うー…何と言いましょうか、どうにも様子がおかしいように思われます。
と言うのも、これまでとは一転して、狼狽や動揺などと言った気配が、
反応そのものがものすごく希薄で、どこかとても落ち着いたかのようにすら思われました。
あ!これは…もしかして、私が危害を加えるつもりがないことを理解し、安心してくれたのでしょうか?
と、一瞬嬉しくなりかけましたが、よくよく考えてみれば相手は猛悪卑劣の軍事国家の人達なのですから、
あんまり仲良しさんになるというのも考え物です。
勿論ずっとそばに居られても困りますし。
そう思い直した私は心苦しく、気が進まなかったものの、
暫く思案を巡らした末に強硬手段をとることを決意します。こほんと一つ咳払いをし、それから…
「そ、そんな風にのんびりしていたら、あの……その……」
恫喝。けれども、言い出してみたは良いものの何と言えば良いのか分からず、
言葉の途中で詰まって口ごもってしまう私。
えーと、えーと…!散々考えに考えて、やっとのことで、一つの文言を閃きます。
え?でも、これ本当に言うの?
「……………えと、あの…た、食べちゃうかも、ですよ?…が、がうー……なぁんて…」
思いついたその後も、散々もじもじもごもごとした末に、ついに覚悟を決して、
やっとの思いでか細く絞り出してみたその言葉。
けれども、やっぱり反応は一切ありませんでした、それはもう!これでもかというくらいに!
ああああ…!無し、無しです!今の私の発言、丸ごと無かったことにして下さい!
頭を抱えて泣きたくなる私と、驚くほど冷酷にただただ淡々と流れ続ける沈黙の時間。
…ああ、酷いです、とんでもない辱めです。もう、頬っぺから火が出そう…。
い、いえ、そうじゃないです、きっとそうではないのです!そう、逆転の発想で……
つまり反応が無かったのは、単純に聞こえなかっただけと言うことに違いないのです…よね?
うん、きっとそうです、自分でも本当に小さな声しか出なかった自覚がありますから。よし!…よし…!
そう無理やり割り切ってみても尚くよくよと考えて、挫けそうになってしまう心を何とか切り替えます。
何はともあれ、これでは埒があきません。一体全体どうすれば…?
と、その時不意にやたら陽気で呑気な声が、再び私の頭に響きました。
【だったら心を読んでみれば良いんじゃないでしょかねー?】
え?あ!うわ、出ました。私の中の私さん。とは言え確かにそれは良いアイディアかと思います。
思うのですが…具体的にはどうやって…?
【んー、出来ると信じて、がんばりましょー】
…漠としすぎです。
【こう、ぐっと、目力を入れる感じで。ぎゅいっと、ぐわっとー】
…はぁ。とは言え他に妙案が浮かぶでもなく………まぁ、やってみましょう。
【それにしても、食べちゃうぞーがうーは無いですよねー、流石にー……ぷふー】
………………こほん。
私は凍り付いている群衆へと向けて、手探りの心持ちのままそれを試みることにします。ぐっと。
………え…!?わわっ、本当に聞こえてきましたよ!?
本当にそうしようと思うだけで、こんなにもあっさりと出来てしまうのだから、やっぱり女神様と言うのはすごいものですね…。
ただ、困ったことにそこにいた全ての方の心の声を拾ってしまい、
まるで雑踏の真ん中にいるかのような、ごちゃごちゃの良くわからない状態になってしまいました。
そこで私は一旦それを打ち切り、今度はその内のお一方に照準を絞る様な心持ちでやってみます。
ちなみにその方は若い女性でした。年頃は私と殆ど変わらないと思います。
艶やかな金の髪と白い肌、そして整った顔立ちをしており、欧風の可愛らしい美少女さんです。
そして、何と!その胸に守るようにして小さな、小さな、赤ちゃんを抱いているのでした。
幸いにも赤ちゃんは周りのただならぬ空気などどこ吹く風、すやすや眠っているようです。
……とっても可愛いです。
という、極個人的な感想はさておきまして、たまたま目を引かれたその愛らしいお二人の、
お姉さん(…もしかして、お母さん?)の方に集中する心積もりで、再びぐっとやってみます。
……あ、なるほど、そういうことでしたか。すとんと合点はいきました。
どうやら国にとってこの門と壁は人々が絶対的な信頼を寄せる、言うなれば国を守護する最後の砦だったようです。
実際敵国軍の上陸に際して、その侵攻を尽く阻んできた、という史実記録も残っているそうで。
ところが私がそれをこんなにも労無く、門扉を(…と言うより門全部及び壁そのものを、なのですが)
破ってしまったものですから、最早何もかもが無駄であると、諦めてしまった、と……。
一見落ち着いているかのように反応が異常に薄かったのも、要するに呆然自失の諦観状態だった、ということなのですね。
あと、それから…へ?あ、あああ…すみません。ついつい凝視してしまっておりました。
ああ、ち、違いますよ?睨み付けていたわけじゃありませんって。
そこで新たに加わった心の声に気がつき、私は慌てて目を逸らします。
あああ、それと食べませんって!本当に食べませんからね!?
えーん…さっきの言葉はしっかり届いていたわけですか…もう…。
何はともあれ、状況は理解できました。それは確かにその通りだと私も思います。
こんな低くて薄くて小さな壁なんて、足元に注意を払っていなければ絶対気が付くことすらなかったでしょうから……
【うんうん、そうですよねー。私がその気になっちゃいましたなら、彼等には為す術はありませんからねー。
 あ、どうですか?折角ですからここはひとつ景気よくどーんとやっちゃいましょーかしらー?】
やっちゃいません。って言うかその気ってどの気ですか…。
【もう、分かっているくせにー】
分かりませんから、もう引っ込んでいてください。
【はいはーい】
私の中の私って、何でこんなキャラクターなのでしょうか…。とにかく気を取り直して、と。
さて、状況は的確に呑み込むことができました。ですから早速……どうしましょうか…。
………………ごめんなさい、何とフォローすればいいのか、さっぱり思いつきません…。えと…えーと…
「だ、大丈夫ですよ!ほ、ほら、確かに門は何とかできましたけれども、
余りにも狭すぎて通り抜けられそうにありませんから、ね?」
実際、握りこぶし一つにも遥かに満たない隙間です。…ダ、ダメ?…ダメ…ですか…。そ、それなら…!
「そ、そうだ!…大きなお屋敷とか教会!」
私はぽんと手を打ち、何とかかんとか言葉を捻り出し続けます。
「そういう、大きくて、頑丈な建物の中とか………あと…あとあと………
うん、そう…お城よりも遠くまで逃げてられてしまったら、幾ら私でも、ど、どうにもできないかもー!」
声は徐々に上ずり、しどろもどろ。
「………」
「ワ、ワー!ドウシマショウ?」
く、苦しいです…。
「………」
でも、実は満更嘘でもないのですよ?…いえ、嘘ですけれども…。
ただ、実際大きな建物だけに固まってくれていれば、私も注意し易いですし、
私の目的は都の中心に位置するお城、きっとそこにいるであろうこの国の王様、リーダーさんなのですから、
お城より向こう側に移って頂きさえすれば、危害を加えてしまう可能性は、ほぼ零になるのではないでしょうか。
更にたっぷり居た堪れない空気に満ち満ちた間があった後、漸く人々に動きが見え始めました。
門をくぐり抜け、やがて幾つかのグループに別れながら、めいめい目的地を目指している様です。
やった!やりました!私もなかなかの演技派ですねっ!…などということは全くありません…。
本当は私の言葉なんて微塵も信じられないのでしょう。
心を読むまでも無くわかります。
言っていて自分でも無茶苦茶であったと思います。
でも、それでも一縷の望みにかけて、一生懸命に走っているのでしょう。お気の毒に…。
ですから、私もせめてそれを裏切ってしまたりすることの無いよう、
細心の注意を払って…行動を…心がけ…よう…と……あれ…?と、そこで私はあっと気がつきます。
確かにこんな風にすぐ近くに居られたり、跨ぎ越したりすることになれば、それは危険だったかもしれません。
ですが、よくよく考えてみれば私がこれから立ち入る予定である都内部なんかに入るより、
私からは遠く離れて外に残って頂いた方が余程安全…
「あ!…ああああああっ!?あのっ!ちょっと待って下さい!」
そこまで考えが至って慌てて呼び止めますが、誰も応じてはくれません。
聞こえていない…?いえ、そんな筈はありません。
私の感覚では、どなたもまだ1メートルも離れてないのです。
幾ら大きな声を出すのが苦手な性質である私であったとしても、届かないはずが…
と、現に彼等を注視すれば、咄嗟に出てしまった私の声に、耳を塞いで苦しそうにしている人が何人も。
あぁぁぁ…すみません、すみません…。私は慌てて口に両手を当てます。
そして、そんな状態にあっても、どうにか離れて行こうとする人達。
何とか留まってもらおうと、少しだけ逡巡した後、
私は思い切って先程同様の通せん坊を再び試みようと、一度は身を乗り出して、手を伸ばしかけます。
「うう…」
けれども数が多すぎる上に、皆さんの走る方向もバラバラ…
加えて都の中は建物の密度も高く、路地も複雑に入り組んでおり、そこに入ってしまう人も少なくありません。
ああ…これは、もう無理です…。程なく諦めてすごすごと手を引っ込める私。
ですが、やっぱり戻ってきて頂いた方が絶対に安全に違いないのですから、せめてもの思いから、もう一度呼びかけます。
極力声量を抑えつつ、でもやっぱり言葉を届けなければ、という葛藤をそのまま表したかのような、
何とも安定しない大きさの、それでいて掌を口にあてがって覆い、くぐもった、実に変てこな声色で。
「うう…お、お願い、止まって…と言うか戻って下さい…!あの…!あのぉっ…」
幸いにも今回の声はそれほど大きなものにならなかったらしく、彼等に苦痛を与えることはなかったようです。
ですが、やっぱり誰も聞き入れては下さいません…。
最早彼等をとめる術は私にはなく、散り散りに消えていく人々をぼんやりと見送る他ありませんでした。




不条理。
その状況を示すのに一体どんな単語があるのだろうか。
父の顔を殆ど覚えていない。三歳の時に隣国との戦争に赴き、戦死したと聞いた。
兄は二年前の戦役にて、とうとう帰らぬ人となった。
そして今日、夫が幼子と自分のを残し、征戦に発つことになっていた。
それは抗いようのない決定づけられた定め。
必定であるかのように何度も、何度も、何度も、何度も繰り返されてきた戦争。
何の成果も得ることなく繰り返されるそれに疑問を差し挟む者もいるにはいた。
が、所詮少数派。逆徒だ、非国民だと謗りを受け、捕縛され、その後の行方は知れない。
実際自身も悪の権化とも言うべき隣国を野放しにしておくことを良しとは到底思えない。
それでも、折り合いがつかなくて、受け入れることができなくて。
だからささやかに願った。神に。この悲しい状況をどうにかして欲しい、と。


そしてそれを今、心より後悔していた。悔悟していた。
太腿からふくらはぎにかけてじくじくと痛み、更には感覚を失いつつあった。
吐き出した空気を満足に引き戻すことができず、胸がぎりぎりと締め付けられる。
時々嫌なものがこみ上げて来て、何度も唾を飲み込み、無理やり下す。
額に噴出した大量の汗は流れ落ちて来て時折目に入り、酷く染みた。
それでも、彼女は力の抜けていく両足を叱咤して懸命に動かし続けた。
未だかつて、これほど必死に、これほどの距離を、これほど続けて走ったことなどあろう筈も無かった。
それでも脇目も振らず、ただひたすら走って、走って、走って、走って、走り続けた少女だったが、
いよいよ上手く足が動かなくなってもつれ、幾度となく危うく前につんのめりそうになり、
ついには大きくバランスを崩してしまう。
意地でも前には絶対転ばない!胸の中に感じる我が子を守るつもりで抱きしめながら、
僅かに残された最後の力を全て込める積もりで懸命に踏ん張る。
どうにか前に倒れることは気力で回避できたものの、そうして一度立ち止まってしまうと、
気持ちでは走らなければと思いながらどうしてももう足は前には出ず、
門をくぐってからとうとう初めて、彼女は立ち止まってしまったのだった。肉体的にも精神的にも限界だった。
よたよたと建物に寄って行ってその壁に体を預け、俯いたまま暫く何もできず、
時々えずきながら肩を落として全身で荒々しく息をする。
暫くそうしていた後、やっと少し落ち着いてくると、彼女はくらくらとする頭を力なく持ち上げ、周囲を見渡した。
取り残されたか、別の道を行ったか、門の前に居た人を含め、周りに人の姿は無かった。
比較的大きな通り、正確な場所は分からない。遠く彼方に目に入った巨城の存在だった。
それは港から大分離れたことを意味していた。
城の見え方と大きさから察するに、大体あの門と城のちょうど中間地点辺りまで、
一気に駆けて来たと言うことになる。彼女の故に仄かに安堵が灯る。
だから彼女はつい振り返り、見てしまった。
「ぁ…」
そして目に映る光景に少女は絶句したまま、凍り付いてしまったのだった。
前方に見えたあの巨城よりも未だに遥かに大きく、圧倒的に聳えて座る巨人の姿を目の当たりにして。
絶望に当てられ、思わず腰が砕け、彼女はその場にへなへなと崩れ落ちてしまう。
真っ白になった頭に次々とフラッシュバックして流れ込んでくる人智を超えた巨人の娘の所業。

まるで手遊びでもするかのように次々に空に攫われ、拉げられ、引き裂かれ、捻り潰され、
そうして一分の容赦もなく、大小一隻も見逃されることなく、あっという間に破壊し尽くされた艦隊。
膨大な量の海水を、さながら滝の様に大地に叩き落としながら、天高く掲げられた足の上陸によって、
踏み潰され、埋め込まれ、瞬く間に跡形もなく消え失せてしまった無数の建物達。
恐ろしい轟音と共に大地を上へ下へと激しく揺さぶりながら、たった数歩で自分達に追いついてしまった巨人が、
白い衣を大きく広げながら座り込み、視界を全て埋め尽くしながらこちらを覗き込んできた時の絶望感。
そうして座ったままの状態で身を乗り出してきたり、体勢を変えたりするそのたびに、
低く重しく大地を軋ませながら動く巨躯によって、等しく薙ぎ倒され、敷き潰されていく町並み。
運よく全壊を免れ、辛うじて建ち並ぶ建物は三階建ての大きなものですら、背後に聳える巨人…の極一部と比較しても、
余りにも小さく、頼りなく、儚く、どうしようもなく惨めに感じられた。ましてや人など……
どんなにそれを振り払おうとしても、考えまいと固く目をつぶっても、
まるでこびりついたかのように、消すことも、終わらせることも出来ない。
周囲をすっぽりと包み、まるで空が落ちて来たのではないかと思わせるくらいの威圧感で迫り来る巨人の掌、
眼前で見せつけられた聞いたことも無いようなおぞましい軋み音と共に、あの分厚く巨大な門扉が目に見えて歪んでいく様、
かと思えば今度は自力で門を開けろ、などという、まるで自分達を弄び、楽しむかのような無茶苦茶な命令。
挙句、結局はその指先であっさりと門というよりも壁をむしり取り……
もたらされたものは、最早震撼や戦慄などと言った生ぬるいものではなく、
絶望に塗り潰された諦観に違いなかった。

それなのに……

周囲の風景から逸脱し、破綻させている巨人は、こうして遠目から見る分には、
どこかしょぼくれた様子で考えに耽ってぼんやりと座る、自分と年頃の変わらない、
いや、もしかすると自分よりも年端のいかない少女でしかない。
そこからは攻撃性だとか嗜虐性だとか、そういったものは全く見て取ることはできず、
たった今、港町を、海軍を一瞬で壊滅させた化物とはどうしても一致しない。
と、不意に巨人に動きがあった。
とは言っても、立ち上がるだとか、動き出すとか、そういったものではない。
何か閃いたように表情を明るくすると、唐突に海の方へと振り返ったのである。
果たして海に何かあるのだろうか、こちらからではその黒髪の向こうにある表情を窺い知ることはできない。
が、やがて再び都に向き直った巨人の娘の表情は一転苦悶に歪んでおり、何故か瞳の端に涙を浮かべていていた。
よく耳を澄ませば、ふうううううううんという、まるで仔犬の様な情けない声を微かに零しているのがわかる。
そして、よくよく見ればその手は腰の辺りをさすさすと撫でたりしていたりする。
その様相から巨人が勢いよく捻ってしまったが為に腰を痛めてしまったらしいことを想像するのは余りに容易かった。
暫く情けない風体を見せていた彼女であったが、
やがて嬉しそうな表情で一人何やら大きく一つ頷いたかと思うと、再びその表情を真剣なものに変化させる。
今度は考え事でもしているのだろうか、五指の指先を軽く合わせて、口元辺りに持っていき、
小さく唸りながらその視線を都のあちらこちらへと向けている。
まるでどこから踏み潰そうか品定めし、吟味しているか……の様には到底見えなかった。
それから暫く、再びその巨躯に動きが生まれようとしている気配を察して、漸く彼女は我に返った。
現状が相変わらず、途轍もなく絶望的なことにかわりないことに。
にもかかわらず、こんな風に悠長に佇んで巨大な化物を観察し、
それどことか危うくそれに対して好意すら抱きそうになっている自分の間抜けさに。
顔面から血の気が引き、歯を食いしばり、踵を返し、再び懸命に駆け出す。

その背後で巨大な存在が、大気を震わせながら、高く、高く、伸び上がっていく気配を確かに感じながら。