「さて、前回からだいぶ時間が経ってしまったわね」
縁側。散りゆく落ち葉が降り積もる迷い家の庭園を眺め、妖怪の賢者は呟いた。秋の幻想郷。木々
の葉は真っ赤に燃えあがり、終わりゆく命を精一杯に演出する。
「体がなまっちゃってありゃしないわ……誰か適当に外の世界に送りこんでリハビリでもしようかしら」
前回は……まだ暑さの残る夏の終わりのことだったか。そう考えると二カ月近く経ってしまっている。
あの現代入りは、いつもとは少し違う力の使い方をするため少しコツが要るのだった。
「誰がいいかしらね~」
八雲紫はこたつのなかに足を突っ込み、考える。ちょっと前までは心地よかったはずの風が、少し肌
寒く感じる秋の只中。
「すぐにお願いできる人と言えば……」
藍は、今日は里に出かけている。橙も同じ。となると、親しい人間や妖怪は……。博霊の鬼巫女……
は、なまった体では少々危険すぎる。連れ出すにしても大結界関連が色々面倒。
 あーだこーだと考えて、脳裏に一人の人間が像を結ぶ。
「そうだ。幽々子の所のあの子なら! 最近新作にも再出演してるし」
紫は思い立つなり、境界を裂いて姿を消した。



「そう言えば、もう2カ月以上踏まれてないなぁ……」
花の咲き乱れる大地が遥か彼方で澄み渡った青い空と入り混じる。地上から浮き上がった巨大な要
石、偽りの大地の上に少女は寝転んでいた。陽光を捉えて艶やかにきらめく彼女の髪は空にも負け
ぬ澄んだ蒼。
 手をかざす。逆光に黒く切り取られた手。垣間見える空が影とのコントラストで白く霞む。想起する
あの一瞬。圧搾されてゆく空気、降り注ぐ瓦礫、立ち込める黒煙と瘴気。逃げ惑う人々。そして落ちて
くる1000倍少女の巨大な足裏。
「もう普通じゃ満足できないかも」
物憂げな表情で、少女は腕を投げ出して大の字になり天を仰ぐ。少女の名は比名那居天子。人呼ん
で不良天人とかドM天人とか。彼女がドMかどうかは別としてもここはあまりに平穏で退屈だった。彼
女の求める快感は、ない。
「つま~んな~い! たすけてゆかり~ん!」
天子は、かつてあの遊びに誘ってくれた妖怪の名を呼んだ。あの妖怪なら、どこかで聞いていて駆け
つけてくれるかもしれない、と。
 しかし、天界の空は相変わらず穏やで腹立たしいほど平和だった。風が大地をそっと撫で、花弁が
数枚蒼空に舞う
「ったく……年を取ると腰が重くなるのかしらね」
ぼそっと呟くと同時に、彼女は寝転んでいる地面が消失するのを感じた。重力から解き放たれ、空が
遠くなる。そして視界の両端から境界が現れ、閉じる。おどろおどろしい空間、世間の目と欲望の手
が渦巻く混沌の亜空間の中に彼女は落ちた。
「誰が年寄りですって?」
重力のない空間。彼女の視界に逆さまに映った少女。紫のドレスに、蜂蜜色の髪。八雲紫その人で
あった。
「ほら、やっぱり聞いてた」
天子は答えず、そう言った。
「えぇ、まぁ聞いていたわ。丁度、私もあの遊びを再開しようと思って」


 白玉楼。春は満開の桜が舞う庭園だが、ここも例外になく秋の色に染まっていた。紅く、そして黄色
く色づき散っていく落ち葉が池の水面を錦に彩る。静かで、風情のある光景であった。
 けれども、そうも言っていられない人間がいた。
「う~、片づけても片づけても、キリが無いなぁ……」
この白玉楼の庭師……魂魄妖夢は、掃けども掃けども降り積もる落ち葉にいい加減うんざりしてい
た。何せこの白玉楼の庭園は広大。あっちを掃除していればこっちに積もり、こっちを掃除すれば
あっちに積もり。全ての葉が散り終えるまでこんなことが延々と続くのだと思うと、妖夢はいい加減に
うんざりしてきた。疲労と倦怠感が蓄積していく。
 と、そんな時。この庭の主である幽々子の声が妖夢の耳に届いた。
「妖夢~、お客様よ」
単調で、しかも延々と続く落ち葉掃き。それを中断する理由ができたのは妖夢にとっても有難かっ
た。誰だろう、と思いつつも箒を置いて返事をする。
「はーい、今行きます!」
サクサク。舞い落ちて乾燥した落ち葉が彼女の足元で心地よい音を立てて細かく砕ける。歩みを進
める彼女の小さな足が、赤や黄色の自然の絨毯に可愛い足跡を残した。
「妖夢ちゃん、久しぶりね」
そこにいたのは八雲紫。西行寺幽々子の友人であり、九尾の狐を式に従えるほどの大妖怪である。
妖夢が、縁側に座り込む彼女の元に歩いていくと、彼女はいつもの、なんか胡散臭い笑顔で妖夢に
挨拶をした。
「こんにちは紫様。お久しぶりです。今お茶をお持ちしますので少々お待ちください」
妖夢は靴を脱いで家の中に上がり、台所の方にトテトテとかけて行く。
「紫。妖夢に用って……?」
ふらりと、幽々子が現れて紫の隣に腰掛けた。
「んや、またあの遊びを再開しようと思ってね~。リクエストが来てるし、最近新作に自機として出演し
てるし。みょんちゃんでいいかー、ってこと」
「なるほど……。妖夢の恥ずかしいところがいっぱい見れるわけね」
「あんたも行くのよ。あと今回はエッチよりも破壊メインだから」
錦に染まる池に小石を投げ込んで、紫は言った。ぽちゃん。小石はキラキラと光る飛沫を残して池の
中に沈み、そして次の瞬間には紫の手の中に戻っていた。
「あら。私は二回目だけどいいのかしら?」
幽々子が紫の手から石をとって池の中へ投げ入れる。ぽちゃん。また、飛沫をあげて石は池の中に
消える。小さな波紋が水面を渡り、へりに当たってはねかえる。
「いいのよ。あの遊びは何回も同じ小石を投げているようなもの。その飛沫を、あるいは波紋を愉しん
でるだけ」
ぽちゃん。小さな音と飛沫を残して石が濁りの中に消えた時。彼女が戻ってきた。
「お待たせしました。粗茶ですがどうぞ」
妖夢から湯飲みを受け取り、軽く礼を述べる紫。
「さて。今日白玉楼にやって来たのは他でも無い貴女に用があってなのよ」
そう切り出す紫に妖夢が身構える。彼女の用というのは、だいたいの場合において普通のものでは
ない。普通の事なら式神を使えばいい。つまり式神には任せられず、けれど自分でやるのは面倒な
用事であったり、あるいはある特定の人物にやらせる事に意義がある用事であったりする。
「あらあら、そんなに身構えなくても……。貴女にはちょっと、暴れて貰いたいだけよ」



さて、こちらは外の世界。道ゆく人々の服装も暖かそうなものが目立つ晩秋。散ってゆく街路樹の
葉が、僅かながらの秋を感じさせる。学校は今、文化祭シーズンだろうか。衣替えの済んだ学生達が
楽しそうに会話を弾ませ家路についているようだ。
無論彼等は何も覚えていない。二ヶ月以上前に、天を多い尽くすような巨大な少女にこの街が蹂躙
された事について。故にこれから起こるであろう惨劇など誰一人として予想する事は出来なかった。
そんな平和な街の天が、割れた。蒼い秋晴れの空が、紫色の直線によって分断されているのだ。そ
れに気がついた人間は、ごく僅かであった。しかし次の瞬間には、人々は否応なしにそれに気がつ
かされた。その紫色の直線が、ぐわっと開いた。その様はまるで巨大な生き物の目。空を左右に押し
分けて、歪な形にゆがませるそれは、人々を混乱に陥れるに十分であった。誰もが、その奥にあるな
にか強大なものの気配を感じていた。
そして、程なくしてそれは姿を現した。ふわり。ゆっくりと降りてくる何か巨大なもの。近くから見上げ
るようにしても、それが何であるかを認知する事は出来なかった。
 だが、それが何たるかをあらかじめ知っている者には、誰であるかの判別までついた。
「あれは……西行寺家のお嬢様かしらね」
腰のあたりまで伸ばした蒼い髪が、降りてくる巨大な少女にの起こす風圧に激しくたなびく。比那名
居天子。彼女はこの瞬間を心待ちにしていた。地面に緋想の剣を突き立てて、風圧で吹き飛ばされ
ないように姿勢を低くする。そう、これだ。この感覚。久々の遊びに、その感触に笑みがこぼれる。激
しい風に、家の屋根が吹き飛ばされ、電柱は曲がり、自動車がゴミみたいに転がされる。
そして、白い足袋に包まれた足が地面についた瞬間。衝撃とともに、アスファルトの舗装が粉々に
砕け散って中に舞う。衝撃は波のように伝播して行き、少女が舞い降りた周辺の構造物を跡形もなく
粉砕した。
「あら、今日は1000倍スタートなのね」
身長1700m超に巨大化した亡霊少女が足元を見下ろして言う。彼女の見下ろすその足元は、きちん
と揃えた両足を中心に半径100mもの領域が更地となっていた。幽々子にとっては半径10cm程度の
小破壊に過ぎないが人間からみれば恐ろしい範囲である。その面積、実に3ヘクタールにも及ぶのだ
から。甲子園球場が余裕で消し飛ぶ強烈な範囲攻撃である。
「妖夢~、いらっしゃい。面白いわよ~」
幽々子が、すきま風中に向かって呼びかける。すると、銀髪を短く切り揃えた少女がスキマの中から
みょんっ、と顔を覗かせた。ついこの間までは前髪ぱっつんだったのだが、それはやめたらしい。どこ
ぞの神主の趣味が変わったのだろうか。彼女の名、魂魄妖夢。白玉楼の庭師にして西行寺幽々子
の剣術指南役。一部方面からはみょんとか呼ばれている半人半霊の少女。
「えぇ~、けど私スカートですよー?」
「スカートだと何かしら。私もスカートだけど?」
幽々子が、そんな彼女の恥じらいをみて取り、わざとロングスカートをひらひらさせる。彼女のその動
作よって発生した風圧が、街を薙いでいく様子が上空からは見て取れた。家の屋根が吹き飛び、電
柱が引き倒され、気流が複雑にうねっている部分ではつむじ風を巻き起こして車や人を粉塵のごとく
巻き上げた。
「ゆ、幽々子様! はしたないですよ~! パンツ見えちゃいますって!!」
そんな幽々子を見て、妖夢は顔を赤らめる。
「ふふ……いいからいらっしゃい。そうしない事には始まらないわ」
幽々子に言われ、渋々スキマの中から片足を出す妖夢。ビルなんかよりずっと大きい足が、開かれ
た境界から降りてくる。そしてもう片方。スキマの縁に腰掛けるようにして彼女はピョンと飛び降りた。
「っ!? やりやがった!」
天子は慌てて雑踏の中に身を伏せ、目をぎゅっと瞑って耳を塞いだ。突如現れた巨大娘によってパ
ニックに陥った人々はそれでも幽々子から遠ざかろうとして天子を踏みつけて逃げて行く。
 あの高度からあの質量の物体が落下したら……当然ただでは済まない。天子は何が起こるかがあ
る程度予想出来てはいたが、その予想は程無くして現実となり彼女を襲った。
 最初に彼女を襲ったのは、強烈な地震。この状況下では、光の次に伝播の速い物だった。しかしそ
こは地震を治める能力を持った那居の一族。天子は落下の直前に、地底深く要石を挿していた。そ
れにより地震の運動エネルギーを分散させ、被害を抑える。そうでもしなければ、自分の命でさえ危
ないと感じたが故の判断だった。
 しかし、分散させられたエネルギーと言うのは必ずどこかで仕事をする。それは、地震の次に伝播
が速いもの、つまり音エネルギーとして変換された。
が……それはもはや音ではなかった。あまりのエネルギーに、音が音速の限界を超えて伝わる。よ
うするに音ではなく、驚異的な圧力の”空気の壁”に叩きつけられた形になる。それも、連続で。
「……!!」
いつも被っている帽子が爆圧に吹き飛ばされたが、体の頑丈な天人とてそれを追う事は出来なかっ
た。起き上れば、衝撃波をもろに受けてしまう。
 やがて、衝撃波が爆音になり、そしてそれが収まった頃。天子は顔を上げた。そこには、荒廃しきっ
た住宅街があった。衝撃波の爆心地に向いていた壁や塀はことごとく吹き飛ばされ、鉄骨のフレーム
だけを残している。
 そして、ついさっきまで天子を踏みつけてでも逃げようとしていた人間達の姿は……一人として見
当たらなかった。
「う~ん、地震よりも被害の範囲は狭いはずなんだけど」
天子は飛翔して、その範囲を確認する。この手の爆風の被害は割と狭く、そして空間を伝っていくう
えでその威力は急激に減衰する。故に彼女には、被害の範囲が同心円状に広がっているのを容易
に目視することができた。
「うわ……これはひどい。死人が出たのは半径500メートルくらいかしらね。信じられないわ……」
確認をすませると、天子は被害の範囲外へと着地する。半径500メートルの円。1000倍の巨体を持つ
彼女らならばたったの1歩で出ることのできる距離だ。故に、さっきよりは遠くにいるはずなのに全然
遠ざかった気がしない。
「さて、これだけの被害をもたらしておきながら、この二人はただこの世界に登場しただけ……。どん
な暴れ方をするのか、見せてもらうわ」





「みょ~ん! やっぱり、沢山の人の視線を感じますよ~ぅ」
妖夢は、恥ずかしそうにスカートを押さえて内股になる。あれほどの大破壊をもたらしておきながら、
その姿は恥じらう乙女。恐ろしいギャップである。
「大丈夫よ、妖夢。例え見られたとしても小人さんは私たちの脚に触れることすら出来ないわ」
幽々子が、地上を見降ろしてクスクスと笑った。彼女の重たそうな胸が、ぅんぶぅんと大気を引きずっ
て揺れる。
「ほらほら、小人さ~ん。覗いてもいいわよ~? プチってなってもいいなら」
幽々子はそう言って、くるりと回って見せた。ずしん、ずしんずしん。足の動きに合わせて重々しい地
響きが大気を震撼させ、アスファルトに転げた小石が振動でコトコトと転がる。遠心力に引っ張られ、
風を巻き起こして彼女のスカートがふわりと開いた。
「お~、西行寺のお嬢さんは黒なのね……」
それを遠くの地面から眺めていた天子が呟く。
「幽々子様っ!」
妖夢が顔を赤らめ彼女の腕を掴む。それでもなお片手はスカートを押さえている辺り、この生真面目
剣士娘は破廉恥なことが苦手と見える。
「あら、妖夢。私は”プチってなってもいいなら”覗いてもいいって言っただけよ?」
「はい?」
妖夢は首を傾げる。
「つまり、いま私のパンツを見た人はプチってなってもいいのよ~」
幽々子はうふふと笑ってそして足を高らかに上げた。その動きから、次の動作がどうなるか、どうある
べきかは妖夢から見ても明白であった。
 幽々子は先程言ったことを実行に移した。もちろん、プチっ……どころの騒ぎではなかったが。彼女
の足袋に包まれた足がまずその下にあった不運な家々やマンションを突き崩す。それも、普通の崩
壊ではない。彼女の脚に触れた途端、あまりの重量と速度に爆ぜるようにして消え去るのである。コ
ンクリの、あるいはアスベストの粉塵を盛大に撒き散らし、そしてそのコンマ001秒後には完全に幽々
子の脚の下に消える。
 今の一歩でどれほどの家が彼女の足の下に消えたろうか。考えるのも恐ろしい。なにせ幽々子の
脚は縦240メートル以上の大きさなのだから。家を240メートル縦に並べるだけでも相当な棟数なの
に、その足はさらに幅を持っているわけで。幽々子は、その破壊劇を足袋ごしに感じ取った。サクッと
した、小さな刺激として。
「ふふ……小さいくせに結構気持ちいいじゃない」
幽々子は足をぐりぐりと動かして破壊の範囲を広める。彼女にとっては簡単な動作だが、それによっ
てまた家が数十軒瓦礫と化す。
「……みょん! なるほど~! つまり、見られたら抹消してしまえばいいんですね?」
妖夢は幽々子のやり方に合理性を感じたのか、みょんっと小さく鳴いて足を持ち上げた。
「ちょ~っとまったぁ~」
と、妖夢の高く掲げた太腿に、突然幽々子が抱きついた。当然、足元にある街のことなど一切気にせ
ず膝まずいてそうしたため、途方もない爆音と地震がその周囲を薙ぐ。
「な、なんですか幽々子様……!?」
「ハァハァ……妖夢の太腿ハァハァ……じゃなくって、せっかく踏み潰すならやっぱり靴はなしじゃな
いと気持ちよくないわよ?」
そう言って妖夢のパンプスの踵に指を入れ、それを脱がせようとする幽々子。
「気持ちいい必要があるのでしょうか……。私はパンツを覗いた変態紳士諸君を踏みつぶせればそ
れで」
「じゃぁ聞くわ、妖夢。貴方は腹に穴をあけられてそこに食べ物を流し込まれるだけで満足するかし
ら?」
妖夢の言葉を遮って、幽々子が尋ねる。
「え……そ、それは嫌です。食事なんて美味しくないと意味がないですよ」
戸惑った妖夢に、すかさず幽々子がたたみかける。
「けれど、生きるためのエネルギーの摂取としてはそれで十分よね……?」
「みょん……確かに」
「それと同じよ。ただ潰すだけじゃ意味がないの。破壊なんて気持ちよくないと意味がないのよ。さぁ、
ぬぎぬぎしましょ?」



「う~ん、さすが白玉楼のお嬢様。見事な理論のすり替え。掴みどころは無いけれど頭は良いのよね
……。私が起こした異変を最も早く察知した人でもあるし」
そんな様子を地上から眺めていた天子が呟いた。全長240メートルの……100倍娘すら踏みつぶせ
てしまうパンプスが空を舞い、遥か彼方の山の山頂を吹き飛ばしてそこに鎮座する。
「みょ~ん。けど私だけ素足はなんか恥ずかしいです~。幽々子様だけずるいですよ~」
身長1500メートルの超巨大娘が、靴下を無理やり脱がされる。露わになる、雪のように白い肌。薄雲
を突き抜けかき混ぜ、この脆く壊れやすい世界に悠然と絶対的な存在感を示している。
 そして天子は見た。幽々子がにやりと笑うのを。
「あぁ、妖夢ちゃん自爆したわね……」
天子はその様子から幽々子が何を考えたのか大方想像がついた。
「あら、じゃぁ私が脱げばずるくないのね?」
妖夢の靴下を脱がせ終わった幽々子は立ち上がり、妖夢に問う。
「……はい」
妖夢の返事は幽々子の予想通りだった。まさに幽々子の手中。
「そう、それじゃ……脱がせてもらうわね」
と、幽々子が手をかけたのは足袋ではなく……着物の方。 襟に手をかけ胸元を開けば、ビルすら
挟み潰せる巨大な谷間が現れ、そして黒色の下着が覗く。そしてそのまま紐を解きながらお腹、太腿
……と段々と姿を現す幽々子の女体。豊満でありながら、締まるところは締まった文句のつけようが
ないパーフェクトボディだ。
「あわ……あわわ……幽々子様、そっちじゃありません!」
妖夢が止めに入ろうとしたが時既に遅し。着物に通していた腕を、するっと抜いて脱衣完了であっ
た。絹の着物が、圧倒的な重量を持って住宅街に圧し掛かり家々を軋ませる。
「あら妖夢。何を脱ぐか言ってくれないと分からないじゃない……」
幽々子はクスクスと笑った。
「ほら、妖夢も脱ぎましょ? 私だけ下着一枚なんてずるいもの」
「なるほどずるい。確かにずるいよ、お嬢様……」
つい、天子は呟いた。妖夢の求めた代償として(ずれていたとはいえ)脱いだのだから本来これで平
等な筈なのだが。
「幽々子様……さすがにそれは……って、最初から全部脱がせるつもりでしたね!?」
妖夢も、この理不尽さにはどことなく違和感を覚えたのかそれは断ろうとした。が。
「フフフ……今更気がついたのね。けれど残念、もう遅いわ。そうよ、全ては妖夢を脱がすための計
画だったのよ~! がば~っ!!」
下着姿の幽々子が妖夢に思いっきり飛び付き、そして押し倒す。丁度背後にあった標高50メートル
ほどの丘を枕に、身長1500メートルの銀髪少女が地響きを立てて倒れ込んだ。その衝撃もさることな
がら、すごいのは幽々子の手の速さであった。ベストのボタンもブラウスのボタンも、目にもとまらぬ
ような早業で外し、どさくさにまぎれてブラのホックまで外し。
 もちろん妖夢だってその間何の抵抗もしなかったわけではない。足を精一杯ばたつかせ、手も動か
して。彼女の踵が、そしてふくらはぎが大地を打つたび、立っていられないほどの地震が周囲を襲う。
「おっと……とっ!?」
地震の揺れに気を取られていた天子は、突然自分の周りが暗くなったことに気がついた。それが何
故かは経験からしてすぐに察しがついたが、対処する間もなく彼女は妖夢が必死に振り回していた
右手の手の甲に押しつぶされていた。もちろん、周りの建造物などは天子が押し潰されるほんの一
瞬前に妖夢の手の甲に接触し、吹き飛んでいたわけだが。
「ゆ、幽々子様っ……ちょ、やめ……」
マンションや家々をまとめて、右の手の甲だけで10軒以上叩きつぶしたというのに、当の本人はそれ
どころではないようであった。
「ふぅ……ごちそうさまでした」
全ての脱衣を完了したところで、幽々子は妖夢の服を遠くに放り投げてニコッと笑った。全て、であ
る。ブラウスやスカートはおろか、ブラジャーやパンツも。唯一、いつも彼女が頭に付けているリボン
はアイデンティティーとして外さないでおいたようだが。
「うぅ……ぐすん」
妖夢は諦めたのか、幽々子の肩をそっと押して自分の上から降りるように促した。そして、ずっしん
ずっしんと地響きを立てて立ち上がり仁王立ちになる。腰に手をあて、胸も、秘所も、まったくもって隠
そうとしない。
「こうなったら……もういいです。吹っ切れました。……さぁ、小人さん達! 見るなら全力で見て下さ
い! この、魂魄妖夢の一糸まとわぬ姿を! その代わり私も全力で貴方達を潰します! いいです
ね!?」
半分涙目で叫ぶ妖夢。もはややけくそと言ったところだろうか。言うが早いが、彼女はおもいきり、足
元の地面を踏み付けた。既に崩れていた家々の瓦礫が、そして車が衝撃で宙に舞い上がる。
「うぅ……ちょっと気持ちいいところが悔しいです」
妖夢は足の指をギュッと握って、瓦礫を持ち上げ空中で離した。高さ200メートルから、鉄や石がばら
ばらと降り注ぐ。
「ふふ……やっとその気になったのね? ならせっかくだし、もっと沢山の人がいるところに行きましょ
う」
下着姿の幽々子が、素っ裸の妖夢を引っ張って歩きだす。
「あっ……あぁ、くすぐったいですよ~ぅ」
足の裏でプチプチと潰れる感触を強制的に味わわされ、身をよじる妖夢。けれど別にいやそうではな
い。むしろ、楽しそうであった。敷き詰められた砂利のような家を踏みつぶし、小さな山を跨ぎ越し。二
人のくるぶしにも満たないような丘陵地帯は気付かれることすらなく踏みつぶされて周囲よりも低い
陥没に変えられて。一人の亡霊と、0.5人が都市部へと向かう。




「巨大娘が暴れると山が崩れ川が埋まるため地図を書き換える必要がある……っていうのは本当の
ことだねぃ」
大阪府大阪市北区、梅田の街。日本でも屈指のビル群で、100メートルを超える高層ビルが60以上
ひしめいている大都市である。100メートルに及ばないビルを数えるともっと多い訳で、立ち並ぶ摩天
楼は東京のそれに勝るとも劣らない。
 そんな超高層ビル群の一角、特に高いものの屋上に腰掛けていた少女が呟いた。某2Pキャラに似
た緑色の帽子をかぶり、蒼い髪をツインテールにまとめた少女。服やスカートには数多のポケットが
連なり工具と思しきものがそこから顔を覗かせている。少女の名、河城にとり。河童である。
「いやぁ~、遠くで見ている分にはどっちも可愛い女の子なんだけど……もうすぐそうも言っていられ
なくなるわね」
段々と大きくなる地震、そして彼女らの足元で砕かれるコンクリートの断末魔。まだまだ遠くにいるよ
うに見えたそれは、山脈をたったの数歩で上り、そして降りて峰のこちら側に全貌を現す。
「ほら妖夢、こっちであってるじゃない」
「いや、けど絶対東に歩いた方が近かったと思いますよ? ここに来るまで結構歩きましたけど、今の
私たちの大きさであれだけ歩いたってことは……」
全裸の少女と半裸の少女が、そんなことを話しながらこちらに向かってくる。近付くにつれ、彼女らの
大きさがどれほどなのかがはっきりと分かる。片方は1700メートルほど、もう片方は1500メートルほ
ど。
「いいじゃない。いっぱい踏みつぶせて楽しかったでしょ?」
色々な意味で大きい方……幽々子がビル群に歩み寄る。その過程で雑居ビルがいくつも踏み砕か
れたが、幽々子はそれをビルとは認識しなかった。
「そうですけど……そろそろ踏みつぶす感触にも飽きてきました」
妖夢はそう言って膝を抱えてその場に座り込んだ。もちろん、沢山のビルや車や橋やらを下敷きに
し、膨大な量の砂塵と音を巻き起こしてである。
「そう? じゃぁこんなのはどうかしら……?」
幽々子はそう言って、まずは膝立ちになりブラのホックをはずした。彼女の白く豊満な乳が、拘束を
ふりきってぶるんと躍り出る。そして、ブラを投げ捨てるとこんどは手をついて四つん這いになった。
「え~い!」
ぶぅん! 幽々子が肩を揺らすとその動きに伴って彼女の巨大な胸が揺れ、ビルを直撃した。当然、
ビル本体よりも巨大な胸の直撃を受けてビルが無事な筈もなく、窓ガラスや鉄骨、コンクリートの破
片にわかれて吹き飛ばされ、無事だったビルに突き刺さる。
「のわ~!! やめろよ~ぅ!!」
にとりは慌てて飛び上がって、迫りくる鉄骨や瓦礫の弾幕をぎりぎりの所でグレイズする。危うく被弾
して吹き飛ばされるところであった。と、一息つく間もなく、こんどは幽々子が胸を地面に押し当てる。
「……それは幽々子様の胸が大きいから出来ることで……私などでは」
ビル群の反対側に妖夢が回り込み、そういいつつも手をついてぐいっと胸を前に突き出した。まだ発
展途上の彼女の胸が、不運なビルに当たってそれを押し倒す。発展途上とは言え、その大きさはC
からD程度。色々な意味で、とても小さいとは言えない。
「あら妖夢。それだけあれば十分よ」
幽々子が胸を地面に押し当てると彼女の柔らかい胸がむにゅむにゅと形を変えてその周囲にあった
ビルをなぎ倒し、そして覆いかぶさり轢き潰す。
 危ないところで難を逃れたにとりの立ち位置からは、幽々子の胸が形を変えて押し広がっていく様
が、まるで肌色の壁が迫ってくるかのように見えた。
「ほら、妖夢もこうやって街におっぱいをあててごらんなさい。気持ちいいわよ~」
幽々子上半身を起こした。彼女の胸が押し当てられた一帯は、すり鉢状のクレーターとなり、整然と
立ち並ぶビル群の一角に異様な存在感を放っていた。幽々子が胸をぶるんっと震わせると、そこに
へばりついていた泥や瓦礫が飛び散り、街の中にプチメテオが降り注ぐ。
「こう……でしょうか」
妖夢が、体を低くしてそーっと、ビルの上に胸を降ろしていく。最初、ビルは妖夢の乳の重さを受け止
めたかのように見えた。だが、妖夢の乳の重心が段々と移動していくにつれてみしみしと音を立ては
じめ、そしていよいよ重さに耐えきれなくなったビルは胸の弾力に負けるようにして爆ぜてしまった。
「私のおっぱいも受け止められないなんて……随分と脆いものを作ったんですね」
妖夢は、その感触と、そして滑稽さについ失笑してしまった。女の子の体の中でも、特に柔らかく優し
い部分であるはずの胸。それすら凶器になるのだという、おかしさに。
「そりゃ、そんな重たいもん乗っけられたら崩れるって……」
二人の巨人に挟まれた街。その中にいるにとりはちいさくつぶやいた。
「それじゃぁ、妖夢。競争しない? どっちが多く建物を壊せるか。もちろんおっぱいでね」
幽々子がそう言って胸を振り、近くにあったビルが塵となって消し飛ぶ。
「いいですけど勝敗はどうやってつけるんです?」
妖夢も負けじと、ぐいと胸を張って、すぐ傍にあったビルを倒壊させる。街の人々の意思など関係な
く、ここは超巨大娘たちの戦場且つ遊び場と化す予定らしい。もっとも最初からわかってはいたのだ
が。
「面積で計りましょう。範囲はこの高層ビル群の一帯で。それじゃ、スタートよ!」
幽々子が開始の宣言を行い、先ず先手を打った。その、等身大でも巨大な胸をずっしんと地面にた
たきつけて、その衝撃だけで周囲のビルを傾かせる。次に、上半身をやや起こして胸をぐいと前に張
り、そこにあったビルに乳首を押しつけた。
「あぁん、気持ちいい……」
勃起した乳首がビルの中ほどまで貫き、そして胸の本体がビル全体をむにゅむにゅと包み込むよう
に変形し……次の瞬間には押し倒す。それだけに飽き足らず、幽々子は倒れたビルを味わうかのよ
うに胸を動かし、大地と胸の間でビルをゴリゴリとすり潰した。
「貴方の賢者タイムをサポートする、妖怪の大賢者、八雲紫よ。最近カメラやってなかったからすっか
り勘が鈍っちゃったわぁ~」
のっしのっし。通常の人間の10倍に巨大化した紫が、通常の10倍の歩幅でビルの間を抜け、その
様子を撮影する。かろうじて倒壊から逃れた人間達が、むにゅーっと押し寄せる肌色の壁に次々と飲
み込まれ、断末魔の悲鳴を上げて消えていく。
「もう、私をこんな気分にさせるんだったら、最後まで付き合ってよね」
ぐぐ……。上体を起こして、胸を持ち上げる。するとそこには、彼女の両胸の形に抉れた大地があっ
た。天から、その大地を形作っていたもの、その上に建設されていたものの残骸がばらばらと降り注
ぎ、突き刺さる。
「次はこっち」
ぐいっ。幽々子が上体を動かして、そして紫がいるビルのあたりに胸を持ってくる。その過程で、中で
も特に高いものが彼女の乳房に衝突し、その上層部が粉塵となって消し飛ぶ。その一部が紫の顔に
ばらばらと降りかかり、10倍に巨大化した少女は頭を覆って降り注ぐ瓦礫から身を守らねばならな
かった。いや、そんなことをしなくても良かったのだが、そうすることが遊惰なのである。そして紫の体
に当たって跳ね返った鉄骨やらコンクリート片は、近くのビルに突き刺さったり、逃げ惑う人間の上に
落下したりして彼らを容赦なく圧し潰した。あの高度から落下すれば1Kgのダンベルだって凶器であ
る。それがビルの鉄骨ではひとたまりもない。
 さて、その一挙動で数多の命を消し去った幽々子であったが、当の本人はそんなことはまるで気に
留めていなかった。そのまま、狙いを定めるように胸を安定させ、そして体を寝かせて行く。最初、ビ
ルは幽々子の柔らかい胸に突き刺さったかのように見えた。しかしそれも束の間。重さに耐え切れな
くなったビルの基底部が断末魔の悲鳴を上げ、金属の放つきな臭いにおいと共に地面に沈み込むよ
うにして崩壊していく。その際の揺れたるや、身長17.5mの巨人である紫がよろめくほどの。そうし
てバランスを取ろうと出した左足が、そこにいた不運な人間を踏み潰したうえでアスファルトを叩き割
り亀裂を入れた。が、そんなことはもはやどうでもよかった。ここはもうすぐ、あの乳の下敷きになっ
て、巨大なクレーターに姿を変えるのだ。
 幾つものビルが地面に呑みこまれるようにして倒壊するのと同時に、乳首の先端が地面につく。乳
首は地面などまるでないかのように簡単に沈み込み、それに続いて乳肉全体が地面に接触、被害
の範囲を拡大させていく。
 その一瞬前に、紫は境界を裂いてその外に脱出していた。バキバキ、メリメリ……。幽々子の乳の
下から、硬いもの同士が擦れる音、そして砕ける音が聞こえてきた。あのビル街にいたであろう数千
人の人間が、一人の少女の胸の下ですり潰されているのだと思うと、紫は自身のことではないにもか
かわらず興奮を覚えた。
「私のおっぱい、柔らかいでしょう……? もっとしっかり堪能してよぉ」
幽々子は体を起して、ぐいと胸を前に張り出した。胸は地面を何のことなく削り取り、そして乳首を前
に、ビル群の中にどっしりと鎮座した。
「うふふ……私、妊娠したことないからお乳は出ないんだけど……それでも無用の長物じゃないの
よ。私のおっぱいはこうして貴方達を気持ちよくできるんですもの」
胸の谷間に手を入れて、そして開く。何をするかと思えば、そのままずいと進み出て彼女にとっては
15センチ程度のビルをその間に挟んだ。
「ほら……男の人って、こうされるの好きでしょう?」
そ~っと、幽々子は胸に添えた手を離す。簡単に壊れてしまわないように。幽々子の胸はその弾力
で元に戻ろうと、その間にあるビルをバキバキと轢き潰しながら目標のビルへと近付いて行く。数秒
もしないうちに、彼女の乳房は元の状態に戻った。その間では、150メートルほどのビルがみしみし
と悲鳴を上げ、乳房にうずもれている。数秒、ほんの数秒だった。拮抗状態はそう長く続く訳もなく、
幽々子の乳圧に負けて谷間の中でぺしゃんこに潰されてしまった。
「あら……私、まだ何もしてないわよ? これから私の谷間でじっくりもみもみしてあげようと思ったの
に……」
仕方なく、むにむにとおっぱいをこね回し崩れたビルの感触を確かめる幽々子。その台詞には惜しさ
と言うより嘲りが多く含まれているようにも思えた。
「あぁ、もう……それなら私をぱふぱふしなさい!」
とうとう我慢できなくなった紫が、100倍サイズにまで巨大化してビルを押し倒しながら幽々子の乳
の前に進み出た。
「あ……紫、いたんだ」
幽々子が、自分の10分の1ほどの友人を見つけて目を輝かせる。
「いたわよ。本当は撮影に徹するつもりだったんだけど……。そのたゆんたゆんな胸があまりにもけ
しからん、というかもう辛抱たまら~ん!! って事で出てきちゃった」
紫はてへっと舌を出し、そして幽々子の巨大な胸に飛びついた。その際足元の雑居ビルが踏み砕か
れたが、もうそんなことを気にするほどの身長ではない。何せ100倍、幽々子がいなければ普通に
巨人なのである。今は小さな巨人と言ったところか。
「あ~、やわらか~い。こんな柔らかいおっぱいで崩れちゃうなんて、人間のビルは脆いわね……」
そんな紫の上から幽々子は乳に手をあてがって、そしてぎゅっと押しつけた。
「ふふ……けどこうして押しつけられるとさすがに苦しいでしょう?」
じたばたともがく紫ごと、胸を揉む幽々子。反対側の手にはビルを掴み、そしてそれを同じようにして
胸にあてがい揉み潰す。
「むぎゅぅ……物は使いようね」
紫は彼女の胸に埋もれて呟いた。反対側の乳房では建物の崩れる音がする。幽々子がビルを揉み
潰しているのかと思うと、その圧倒的な力にさらに興奮が高まった。
「はい、おしまい」
幽々子がぱっと手を離し、紫は雑居ビルの中に背中から倒れ込んだ。その際に粉砕したビルの破片
が空に舞い上がり、そしてそれから眼を護るために目を瞑る。そうして眼を開けると、そこには友人の
巨大な乳があった。空を覆い尽くす彼女の乳房と、そして均整のとれた美しい顔立ち。
「どう? これで満足したかしら? 私はまだ不満足だからもう少しビルを壊しに行くわ」
ずしいぃぃん、ずしぃぃん。四つん這いで進んでいく幽々子。通りすぎていく綺麗なお腹、そして下着、
太腿。左右を彼女のふくらはぎが通り抜けたところで、紫は立ち上がって彼女の方を振り返った。胸
板から重たそうにぶら下がった彼女の豊満な胸は、地上から生えるようにして天に伸びる魔天楼を
なぎ倒していた。
「ふ……ふふっ……あははっ、さすがは幽々子。人を死に導く程度の能力というだけのことはあるわ
ね」
そんな彼女を後ろから眺めつ、少女ゆかりは元の大きさに縮小した。



「え~っと、あんまり大きくなくてすみません。けど皆さん、私の胸で我慢して下さいね」
巨乳を用いた、圧倒的でダイナミックな幽々子の攻めに対して、妖夢はやや遅れを取っていた。それ
でも別に、妖夢は構わなかった。自分の胸で、人間が作った巨大な建造物がいとも簡単に崩れ去っ
てしまうこの優越感。それがたまらなく、彼女を興奮させた。
「えいっ!」
妖夢が体を下げると、半球状の柔らかい胸がビルの頂上と接触し、屋上から下の階層へと乳首を打
ちこむ。そしてそのまま力を加えると、呆気なく崩れ去ってしまう。幽々子の真似をして、地面にぐりぐ
りと胸を押し当ててビルをすりつぶすと、その中に柔らかい粒があることに気がつく。言うまでもなく、
それは人間だった。
「ふふ……どうですか? 私のおっぱいは気持ちいいでしょうか」
クスクス。思わず笑いがこみあげてくる。自分の胸で一度に数百人もの人間をすり潰している、その
優越感からか。
「私のおっぱい、触ってもいいんですよ……? どうしたんですか、男性の皆さん」
ぶん。体の向きを、胸の向きを変える。それだけで、その胸に接触したビルが力なく崩れ去って行く。
「あ、すみません。これじゃぁ高すぎて触れませんよね。じゃぁチビでグズな貴方達にも触れるように
降ろして差し上げますから」
敬語でありながらなかなか過激な言葉攻めであった。普段は庭師として、仕えるものとして抑圧され
ているあれそれが全開になっている。
 そして、徐々に体を低くしていき、またビルを押し潰す。ぷちぷち。胸の表面で、生温かいものが潰
れていく感触。その感触にすっかり取りつかれた妖夢は、ビルから飛び出して逃げ回っている人間達
に目をつけた。
「あら? せっかく女の子が裸で街に遊びに来てるんですから、逃げたりしないで私と遊びましょうよ」
妖夢は身を乗り出して、その人間達の行く手に胸をぐいと張った。もちろん、その大きすぎる胸は道
の左右にあったビルを容赦なく倒壊させた。そこでさっきと同じように、胸を押しつけてごりごりとすり
潰す。
 逃げ惑っていた人間……そしてその中にさりげなく混ざっていたにとりは、それはもう大変な光景を
目の当たりにすることになった。上を見上げれば、天を覆い尽くす少女の裸体。そして前を見れば巨
大な二つの乳房が、高層ビルを押しつぶし、そしてむにむにと形を変えながら入念にすり潰してい
る。その作業が終わったら、その胸が次にどう動くのかは明白であった。
 ごごご……地鳴りを伴って、彼女の胸がこちらに向かってスライドしてくる。もちろん、その両サイド
にあるビルを木端微塵に粉砕しながら。右胸の乳首がアスファルトをバキバキと砕き、目の前に迫
る。
「っ!! 避けられない弾幕は反則だぞ~ぅ!!」
にとりは慌てて飛翔したため乳首にすり潰されることは避けられたが、妖夢の下乳の部分に思いっき
り衝突した。幸いにも柔らかい彼女のそれはその衝撃を吸収してくれたのだが。しかし地上は大変な
ことになっていた。逃げ回る人々が、迫りくる乳首に轢かれ、そして見えなくなる。にとりの位置からは
確認できないが、きっと乳首が通りすぎた後は血の道筋が出来ているに違いない。

 さて、幽々子の方はその圧倒的な乳を武器に思いっきり暴れまわり、ものすごい勢いで街を粉砕し
ていた。
「あ~あ、もうこっちは大体壊しちゃったしなぁ……。あとは……」
と、妖夢のいる近辺を見る。妖夢も大分壊しているようだが、まだ十分に楽しめそうであった。
「妖夢~、そっちのもらうわよ~」
勝負、とは言った物の妖夢はもう既に自分の世界。乳首で小人を追いまわしては、胸でビルを次々
になぎ倒し押しつぶしすり潰している。
「いいや、かってにもらっちゃおう」
幽々子はハイハイでそこまで行き、そしてまた胸を押し当てた。幽々子の一手は非常に広範囲で重
く、そして周辺へ被害を拡大させる。変幻自在の乳の壁が、ビルを包んではなぎ倒し上に乗っては押
しつぶす。あるいは、胸の谷間にビルを挟みこんで、揉みしだいたりと、やりたい放題であった。
 そうして、妖夢の周りにあったビルもあっという間に平らげてしまうと、いよいよ妖夢の方に向き直っ
て彼女のテリトリーへと侵入する。
「あ……幽々子様」
そこにきて、妖夢はハッと顔を上げた。
「えへへ……もう大体全部壊しちゃった。あとはここだけなの」
そう言うが早いが、幽々子は胸をぐいっと突き出して妖夢の胸に押し当てた。当然、その間に挟まれ
たビルは二人の乳圧でぺしゃんことなる。が、当然それだけでは終わらない。幽々子が妖夢の背中
に手を廻し、そしてぎゅっと抱きよせる。むにゅむにゅ。幽々子の超巨大な乳と、妖夢の巨大な乳が
合わさってその間にあるものを容赦なく粉々にする。
「幽々子様……私をあまり変な気持にさせないで下さいよぅ……」
さっきまで圧倒的でドSな超巨大娘だった妖夢が、顔を赤らめ、恥ずかしがる。やはり幽々子の前で
はいつもの妖夢だった。人間だれしも、弱きに強く強きに弱いのである。
「変な気持になっちゃうなんて……妖夢ったら、おませさん」
幽々子は彼女をごろんと転がしそして仰向けにする。妖夢も、あえてかそれに抵抗はしなかった。そ
して幽々子が向きを変え、妖夢の上にのしかかる。二人の乳が合わさり、むにゅーっと形を変えては
み出す。
「ゆ……幽々子様……」
妖夢は顔を赤らめ、恥ずかしさと、若干の期待を込めた目で幽々子を見つめた。が。
「はい、今日はここまで」
幽々子は体を起こし、そして立ちあがった。
「え? えっ!? そんなぁ~、期待させておいてひどいですよぅ」
妖夢は手をついて起き上り、幽々子に抗議する。
「あら、私は妖夢のおっぱいに河童がくっついていたからそれを押しつぶしただけよ……? いったい
何を期待したのかしら?」
ふふ、と悪戯げに笑う幽々子。
「みょん……」
答に窮して、妖夢はみょんと鳴くほかなかった。
「そう言うのは、ほら。お家に帰って……お布団の中で、ね?」
幽々子は妖夢を抱き起こし、そしてその手をひいて地平線の彼方へと歩き出した。





「うぅ……今回は無傷で済むと思ったのに……なんでいつもこうなんだよ~ぅ」
瓦礫の街。その瓦礫を跳ね除けて、河童のにとりが姿を現した。さすがに妖怪と言うだけあって怪我
らしい怪我はなかったが。
「いいじゃない。私はこれで満足よ?」
いつの間にやら、遅れてこの街に到着した比那名居天子がにとりの肩を叩いて言った。
「なんだかんだで貴方もほぼ毎回参加してるんだし、実はこう言うの好きなんじゃないの……? 認
めちゃいなさいよ~、私と同族だってこと~」
天子がにとりの肩を抱き、頬をつついてからかう。
「やめろよ~ぅ、私は別にドMじゃないぞ~ぅ」
「ドMじゃないってことはMなのね~」
「ち、ちがうってば~」
そんな二人のもとに、紫が歩み寄ってきた。
「二人とも、お疲れ様」
手には、衝撃で吹き飛んだ天子の帽子。どこからどうやって回収したのか、そもそも原形をとどめていた
のかは紫のみぞ知る。
「あ、おつかれ~っす」
天子はその帽子を受け取って、しっかりとかぶり直す。これがあるとないとでは、大分印象が違う。
「さて、今後の予定なんだけど……。次はちょっと大変な相手よ。あと、久々に夜の現代入りになりそ
うね」
紫は瓦礫の上に腰かけて、2人に説明をする。
「あ~、大体誰だかわかったわ。あの二人のうちのどっちかかしらね」
「いいえ、そのどっちもよ」
「なん……だと……」
瓦礫の街に、乾いた風が吹き抜けしばしの沈黙を埋める。
「ま、とりあえず今日は帰りましょう。今度の事は、また今度」
紫が境界を裂く。次回のことについて一抹の不安を残しつつも、天子はその中に踏み込み幻想に帰
す。
「あの二人って誰なんだ~?」
にとりが、境界を跨ぐ際に紫に尋ねる。
「ヒント、吸血鬼。以上よ」
にとりが問い返す間も与えず、紫は隙間を閉じた。多分、彼女は思いっきり反論するだろうから。なに
せあの二人は危険だ。能力も強い。
「ま、私にかかれば所詮はお子様ってところだけどね~」
パチン。紫が指を鳴らすと、今までそこにあったはずの瓦礫の山は幻想となり、そしていつもと変わら
ぬ現実が、そこにあった。