博麗霊夢→http://dic.pixiv.net/a/博麗霊夢
東風谷早苗→http://dic.pixiv.net/a/東風谷早苗


ねこ巫女霊夢について→http://dic.pixiv.net/a/ねこ巫女れいむ
ねこちやさにゃえについて→http://dic.pixiv.net/a/ねこちやさにゃえ

*注意:原作の霊夢はにゃーんとか言いませんよ、念のため。にゃーんって言うのはお燐だけですよ原作だと。


「な、なんですかこれは!!」

大気を振るわせ、窓ガラスを叩き割る大爆音は"それ”を目にした早苗の第一声だった。"それ”は早苗の
放ったバインドヴォイスに、耳を塞いでうずくまる。

「ねこ巫女れいむよ」

紫が早苗の耳元でそう答える。

「どうしても、本人を連れてくるわけには行かなかったから、代理」

早苗の足元で頭を抱えてうずくまるそれは、黒髪の巫女。脇の出た特徴的な巫女服は確かに博麗神社の
伝統の物。涙目で早苗を見上げるその顔は間違いなく博麗霊夢その人。けれど彼女を霊夢と同定するに
は、いささか問題があった。その生き物には人間にはあらざるべき物がついているのである。

 ひとつ。黒絹の艶やかな髪の間から覗く、獣の耳。つんと尖ったそれは、肉食獣の中でもイエネコと呼ば
れる部類の生き物が備える耳だ。外側は髪の毛に負けぬくらい黒く艶やかな毛皮に覆われ、内側は白く柔
らかな細毛に守られている。

 ふたつ。巫女服の癖にスカートという衣装が博麗の巫女の正装だ。で、そのスカートに穴を開けてにゅっと
伸びているもの。紛いもない尻尾。針金入りのやっすい作り物なんかではなく、滑らかで艶やかな毛並みの
そろった真っ黒な尻尾。彼女の気持ちに合わせて、右に左にふらふらと揺れる。

 それらを統合して、彼女を霊夢と判断するにしかねた早苗は紫に問うたのだった。

「なんですか、ねこ巫女れいむって?」

「霊夢だけど霊夢じゃない存在よ。別世界の霊夢っていう感じかしら。引き抜いても影響の無い世界から連
れて来たわ。結果猫耳と猫尻尾がついてた」

あとは、紫の能力が霊夢に及ばなかったことなどもあったのだが、それを口にするのは悔しかったのか紫は
その点に関しては言及しなかった。

「あなたは霊夢さんなんですか?」

早苗は自身の身長の10分の1程度、身長150メートルほどの猫巫女霊夢を持ち上げてその顔を覗きこ
む。
「にゃ~」

南中する満月の明かりを捉えて、ねこ巫女の瞳孔はきらきらと輝く。霊夢は早苗を見返して、ふてぶてしい

顔で一声鳴いた。
「ではあなたは霊夢さん以外の何かなのですか?」

「にゃぁ~あ、なーん」

早苗の言葉が分かっているのかいないのか、さっきとは違う長鳴きで霊夢は答える。

「にゃ~」

早苗が霊夢の真似をして鳴き。

「にゃ~ん!」

霊夢はそれに答えるように鳴いて、早苗の手をするりと抜け出し着地した。もちろん、降下地点にあったマン
ションは彼女の小さくも巨大な足に容赦なく踏み砕かれたのだが。

「ゆかりさん!!」

早苗は自分の肩の上に立っていた紫を、ビルを掴むことが出来るほど巨大な手で捕まえて目の前に持って
きた。何やら、ものすごい深刻そうな表情で紫を見据えて。

 紫も紫で、ビルのような巨大な指に挟まれて身動きが取れなくなったところで真剣な顔をされたので、何
か怒られるのだろうかと思ったのだが。彼女の口をついて出たのは。

「私もアレほしいです」

という、なんとも間の抜ける一言であった。

「アレっていうと……その、アレよね?」

「そうです! 猫耳と猫尻尾!!」

ものすごい切迫した表情で紫に迫る。そうしてくれないなら、潰しますよと言わんばかりに。あまりの勢いに
紫もドン引きするくらい。けれどまぁ、そのくらいはスキマ妖怪にとっては容易いこと。

「わかったわ、つけてあげる」

猫と人の境界を操作することで、早苗の頭には猫の耳が生え、スカートの下から尻尾が覗く。

「にゃー! 本当に出来た! これで私も霊夢さんとおそろいですね!」

満面の笑みで頭の上に生えた猫耳を触り、尻尾を振る。どっしんどっしんと、地響きを立て瓦礫を舞い上げ
ぴょんぴょんと飛び跳ねる早苗。そんな早苗に驚いてか、猫巫女霊夢は足元に広がる街の事などお構いナ
シに逃げ始めた。

「あ、まって下さいよ~、霊夢さん!」

ずっしん、ずっしん。前を行く霊夢の何倍もの被害をもたらしながら、10倍の歩幅で早苗が歩み寄る。霊夢
が住宅街を踏み潰し、マンションを蹴散らし駆けていくと、早苗が霊夢の破壊の爪跡を丸ごと踏み潰し、周
辺一帯を巨大な足跡に置き換える。

「なんで逃げちゃうんですか、怖いことなんて何にもないですよ~ぅ」

当然、1000倍の巨人から100倍のコビトが逃げられる筈もなく、霊夢はあっさりと早苗につかまってヒョイ
と抱き上げられてしまった。霊夢は早苗の豊満な胸にぎゅーっと押し付けられ、呼吸に制限を駆けられた。
じたばたともがいても彼女の柔らかな胸はむにむにと形を変えてなかなか思うように動けない。やっとの思
いでなんとか顔を出し。

「いゃ、普通に考えたらあんたが怖い……」

霊夢は早苗を見上げて不満そうに呟いた。

「あ、喋った」

「喋って悪いかにゃ?」

「い、いいえ。けど、私は別に怖いことしませんよ?」

早苗が反論すると、霊夢はまた体をひねって上手いこと早苗の腕を抜け出した。

「じゃぁ、考えてみなさい。自分の10倍もある巨人に追いかけられたらどう思うかしら? にゃーん?」

「……え?」

考えるまでもなく、早苗の体は縮んで行く。さっきまで人形サイズだった霊夢と目が合い、すれ違う。まだ、
まだ縮む。それに対して、霊夢はどんどん大きくなり、さっきの早苗と同じサイズにまで達し。

「身を持って体験するといいにゃ」

霊夢が足を持ち上げる。健康的で形の整った脚が地響きを伴って瓦礫を巻き上げ持ち上がり、家やマンショ
ンを踏み潰したため黒く汚れた足袋の裏が、見上げる早苗の視界を覆う。

「きゃ、きゃああぁっ!!」

踏み潰される! 早苗はあまりの圧迫感に平衡感覚を失い、背後の住宅街におもいっきり尻もちをついて
転倒した。160メートルもの少女の尻もちは当然恐ろしい威力で、3階建てや2階建ての住宅をいくつも尻
の下に敷き潰し、さらに振動と衝撃波で周囲を更地へと変える。身を起こすためについた手は路線バスを押
しつぶし、腰まである彼女の美しい緑髪は電柱に絡まりそれを薙ぎ倒し引き抜いた。早苗自身もこの街から
すれば立派な巨人であったが、今目の前にいる大巨人にはまるで歯が立たなかった。

「ほらほら、はやく逃げないと踏み潰されてしまうわよ?」

ずしいぃぃん! 早苗の脚を踏むか踏まないかのところに脚を踏み下ろし、続く一歩で早苗を跨ぎ越す。

「あ、霊夢さんのパンツ……」

とか言っている場合ではなかった。とりあえず今の光景は心の中で永久保存する事として、早苗は霊夢の
背後に抜けるように走り出す。

「そうそう、それでいいにゃ」

霊夢はにやりと笑うと尻尾をブンと振り抜いた。手ごたえあり。

「フギャギャーッ!!」

猫耳早苗の絶叫が背後から聞こえてくる。それはそうだ。いくら柔らかい毛に覆われているからと言っても、
早苗からすれば丸太に打ち据えられたようなものだ。ひしめく家々を押しつぶし、ずざざざーと暫く滑って止
まる。広がった袖と腕でなんとか顔だけはカバーしたようだが、それでも予期せぬ方向に吹っ飛んだため
所々に擦り傷や出血が見受けられた。

「あ、ごめん。わざとじゃない」

確かに一般人(一般猫?)が狙って出来る技ではないだろう。けれど、あの博麗霊夢ならもしかすると。そう
考えると早苗は泣きたくなった。けれど、そんな暇は与えられていない。

「ほら、捕まえちゃうわよ」

ずっしいいぃぃん! 霊夢は早苗の脚を足袋の親指と人差し指の間に挟みこんだ。それだけでもよかったの
だけれど、早苗のほっそりとした柔らかな脚の感触を指の間に感じると霊夢は無性にそれを締め付けたく
なった。

「にゃ……ふにゃああぁぁ! にゃぎゃあぁぁ! フシャアアア!! フーッ!!」

もはや痛いという言葉さえ出てこない早苗。口をついて出るのは、猫が相手を威嚇するときに使うあの声だ
け。低層住宅やアパートを叩き潰し、のた打ち回るが霊夢の足の指は早苗の脚を離さない。

「つーかまーえた! にゃーん」

霊夢はかがみこみ、早苗の襟首を引っつかんで持ち上げた。身長160メートルの巨大娘がいとも簡単に宙
に浮く。そのまま顔の前まで持ってきて彼女に反省を促そうとしたところで、霊夢はあることに気がついた。

「あ……」

早苗は泣きかけていた。人形みたいに可愛い顔を真っ赤にし、翡翠の瞳に涙を一杯に湛えて。彼女の涙腺
ダムは今にも決壊しそうな様相を呈していた。別に泣かすつもりはなかったのだ。ちょっと怖い思いをしても
らって相手のことを考えてもらおうと思っただけで。ともかく、これはまずい、気マズイ。何とかあやそうと慌て
るも、もはや手遅れであった。

「ふぇ……ふぅえぇ、ふにゃぁぁ……! ふにゃああぁぁん! にゃああぁぁぁぁぁん! ふにゃあぁぁぁん!」

涙腺決壊。口をへの字にして暫くこらえていたけれど、やっぱり無理だった。足元で沢山のコビトが見上げて
いるのにも関わらず、大音声で泣き叫ぶ早苗。

「あ、その……えと……ごめん」

早苗をここら辺で一番高いマンションの上に座らせて、ばつが悪そうに霊夢が詫びる。最期の方は殆ど聞こ
えないくらいの音量で。

「ふにゃあぁぁ! にゃあああん!」

もちろん、そんなもので早苗が泣き止むはずもなく。霊夢の10分の1の大きさしかないのに、窓ガラスを叩
き割りそうな、人間の鼓膜など簡単に破ってしまうほどの音量で彼女は泣き続ける。

「ほら、そんなに大声で泣くとせっかく可愛い声が台無しになっちゃうわよ?」

早苗は結構頭にきているらしく、困ったように語り掛ける霊夢にプイとそっぽを向いてしまった。ばしん、ばし
んとマンションに叩きつけられる尻尾が彼女の感情を如実に表している。確かに声が枯れちゃうのはいやだ
と思ったのだろうか、早苗はとりあえず大声で泣き喚くのはやめた。

「お願いよ~、早苗。私が悪かった、私が悪かったから機嫌なおして~」

「えぐ……ひっく……ヤダ」

足元の家やアパートを踏み潰し、涙声で早苗が答える。

「私のこと好きにしていいから……」

早苗は答えない。あれだけの仕打ちを受けたのだから、もう少し泣いて霊夢を困らせないと釣り合わないと
も思う。けれど、霊夢がせっかくそう言っているんだから……。

「ほら、いらっしゃい、早苗」

もういっか。早苗は立ち上がると、こくと頷いた。たちまち、目線が霊夢と同じになる。あの霊夢には大きさを
操る程度の能力が紫によって付与されているのだろうか。

「ごめんね、ちょっとやりすぎちゃって」

早苗の涙をそっと払ってやり、彼女をぎゅっと抱きしめる。

「……うん」

頬擦りするように、霊夢の肩に頭を乗せる。ほのかに香る、甘い香りは霊夢の髪の匂いだろうか。すー、
はー。その香りを胸一杯に吸い込んでゆっくりと深呼吸。気持ちが、だんだん安らいでいく。

「本当に好きにしていいんですね?」

確認するように、早苗が呟く。月明かりに青く縁取られた二人の巫女。抱き合う二人は、どんな霊峰よりも美
しく夜空に映える。

「……いいわよ」

霊夢は目を閉じた。と、意外な事に早苗は霊夢の手を引いた。てっきり押し倒されるとばかり思っていたの
だけど。

「……え?」

早苗に手を引かれ、霊夢は歩き出す。ずしん、ずしん。4本の脚が大地を、その上に張り付いた小さな人間
達の家々を踏みしめ、夜の地平により暗い闇を残して歩いていく。

「霊夢さん、こっちの世界は初めてでしょう?」

振り返って、早苗が微笑みかける。彼女の向こうの月と見比べても見劣りしないくらいの柔らかい笑顔で。
そんな笑顔に、つい心を奪われそうになった霊夢は首をふるふると振る。

「初めてじゃないんですか?」

早苗が首を傾げ。

「あ、いやそういうあれじゃない」

ただ、アンタに惚れそうになっただけ。言おうと思ったけれど、やめた。

「じゃぁどういうあれなんですか?」

不思議そうにたずねる早苗に、霊夢は猫語で。

「にゃー、なーご」

と答え、あいまいにしてはぐらかした。早苗も、あまり深く追求しないことにし。

「ほら、霊夢さん。さっきよりも大きな街に出ましたよ」

目的地についた事を霊夢に知らせた。東京の城下町、川崎市。人口100万人を抱える政令指定都市は、
真夜中にあってもきらびやかに輝いていた。アパート、マンション、団地。よりどりみどりである。

「ん、けど……どうするの?」

霊夢は早苗に尋ねる。やはり初めてと言うだけあって、あまり勝手が分からないらしい。

「霊夢さんはけっこう厚い足袋履いてますからね~。ちょっとそれを脱いでみてください」

早苗に言われるがまま、霊夢は右足の足袋をぽいと脱ぎ捨てた。厚手の生地で出来たそれは、運のな
かったマンションや住宅街の一角を容赦なく押しつぶして鎮座する。

 そして、彼女は左足も脱ごうと右足をついた。

「にゃうっ!?」

ねこ巫女霊夢の尻から生えている尻尾が、ビン洗いのブラシみたいにヴワーっと膨れ上がる。彼女はまん
丸に開いた目を数回ぱちくりやって、驚いたように早苗を見やった。

「あはは、霊夢さんは足の裏が意外と敏感なんですね~」

早苗も足袋を脱ぎ捨て素足になる。やっぱり足袋の時とは格段に感触が違う。これからは歩くたびに、足の
裏で建物が潰れるこそばゆい感覚が得られるのだと思うと自ずと興奮がこみ上げてきた。

「さて、コビトさん。今から貴方達を踏み潰すから、精一杯逃げてくださいね」

早苗はそう言い放つと、さっそく霊夢の腕を組んで歩き出す。

「ふにゃぁ、にゃぁっ!!」

一歩踏み出すごとに足裏から伝わる破壊の感触に、霊夢は全身を貫かれふにゃふにゃと声を上げる。尻尾
もふらふら、耳はあまりの快感にだらんと力なく垂れて完全に骨抜き状態だった。

「にゃぁっ……さにゃえ……これ、気持ちいい」

足に体重を乗せる事もおぼつかず、早苗にもたれかかる猫霊夢。

「ほら、もっとしっかり踏み潰して見てください。私みたいに」

しっかりと足に体重を駆けてぐりぐり。早苗の240メートル以上ある足は、街の区画をまるごと一つ以上踏
み潰し、一切合財を粉々に踏みにじる。

「こ、こう……?」

霊夢が見よう見まねでやってみると、さっきまでとは比べ物にならないほどの快楽が彼女を襲った。

「にゃあぁっ!! ちっちゃな家が足の指の間にはいって潰れて……気持ちいいよぉ……!」

本当は、ただくすぐったいだけの感覚。けれど、そこに沢山の人を踏み潰し、快楽のためだけに消費してい
るのだと思うからこそ、性的興奮にも似た何かが体を貫くのだ。人間の見方、博麗の巫女にもその背徳の
快感はしっかり備わっていた。

「霊夢さん、指の間にまだ家が残ってますよ?」

早苗は霊夢の左足に自分の右足を重ね、軽く重みをかけて霊夢の足の指を押さえた。早苗が指をぐ
にぐにと動かすと霊夢の指の間にかろうじて残っていた家も瓦礫になって土に混じり、指の間で潰れ
ていく。それらの感触に霊夢は身をよじってにゃーと鳴いた。

「ふふ……霊夢さんの足の指の間で沢山の人が死んじゃいましたね。それで気持ちよくなっちゃうな
んて、あなたもイケナイ猫ですにゃー」

ふにゃふにゃともたれかかってくる霊夢を支え、耳元でささやく。

「ふにゃ……さにゃえだってそうだにゃ~」
霊夢は後ろに一歩下がって、そこでまたビクンと肩をすくめて目を閉じた。彼女の敏感な足裏は、住
宅どころかそこに暮らす人間一人を踏み潰した事すら感知するのだ。けれどその死が、快楽となって
脳に伝わる。

「そうです。私はイケナイ猫です。見て見ます? 私は自分が気持ちよくなるためだったら何でもしますよ?」

早苗は足を持ち上げ、そして近くにあった学校の上に翳した。あそこには、自分と同じくらいの年の少
年少女が沢山いるんだ。そしてそれを、いまから一方的に踏み潰す。自分の快楽のためだけに。そう考えるだけで、早苗は全身を貫く背徳感と優越感に身震いした。今頃、女子生徒たちはキャーキャー
泣き叫びながら逃げ回っているのかな。それを男子が励まして。けれど、そんな励ましも空しく全ては
私の足の下に消えるんだ。そんな想像に、ゾクゾクと湧き上がる快感。自分でも気がつかないうちに
早苗は自分の股間をスカート越しに指でなぞっていた。

「ほらほら、今から逃げればまだ間に合うかもしれませんよ~? はやくしないとおっきなお姉さんが
踏み潰しちゃいますよ~」

ズン! 校庭にかかとをつくと、その振動と衝撃で逃げ惑っていた黒い点々は一斉に跳ね上がり、そ
のうちいくつかは動かなくなった。このまま足を下ろせば丁度指先の辺りが校舎だ。

「あらら、情けないですね。私も貴方たちとそんなに年は変わらないのに……。同い年くらいの女の子
が足を地面についただけで死んじゃうなんて悔しくないんですか~?」

クスクス。学校を見下ろし早苗は嘲るように笑う。

「ちなみに逃げそこなうとこうなりますよ?」

スッ……ずっしいぃぃん! 早苗は一旦足を上げて、そして校舎に付随している体育館を親指だけで
ぺちゃんこに叩き潰した。それでも飽き足らず、ぐりぐりと足を動かし、鉄骨だったものが鉄塊に変わ
るまで踏みにじる。それだけの事をやってのけたのにも関わらず、かつて体育館の破片だったものが
パラパラと落ちると、健康的な肌色の指がまったくの無傷で現れた。

「あはは、建物っていっても所詮中身は空っぽですからね。踏み潰してもつまんないです。やっぱり私は、私と同い年ぐらいの貴方達を……私の好きなように消費したいんです」

はぁ、はぁ。次第に荒くなっていく早苗の吐息。自分の強大な力に酔いしれ、スカートをまくってパンツ
に手を入れて股間をまさぐり。ゆっくり、ゆっくりと足を地面につけて行き、そしていよいよ校舎に足の
指をかけた。

「んっ……今、どんな気持ちですか……? 同い年くらいの少女に、オナニーのオカズにされて踏み
潰されるって。 にゃあっ……屈辱ですか? 怖いですか? もっと悔しがって下さい、もっと怖がって
ください……っにゃーぁん」

いつでも踏み潰せる状態での言葉攻め。けれど答えるものも歯向かう者も存在しない。その自分の
絶対的な力に、早苗の興奮は最高潮に達する。

「にゃぁ……もうらめぇ……みなさん、私の快楽のために……死んで下さいにゃ」

がらがらがら……ズン、ぷちっ。校舎に覆いかぶさっていた早苗の足の指は、その自重で校舎を押し
つぶしそ、そして早苗がつま先へと体重移動した事で原型が分からなくなるほどに圧着された。ぴく
ぴくと耳を痙攣させ、膝をついて彼女は崩れる。

「んっ……んにゃああぁぁーん!!」

じわぁ。早苗の下着に、彼女の愛液が染み込み、そして受け止めきれずに水滴としてその下に滴下
する。

「はぁっ……はぁっ……頑張って逃げた君たちにはさにゃえ特性ラブジュースをご褒美ですにゃ……」

それは表面張力の限界を無視した巨大な水の塊となって学校の周囲にぽたぽたと降り注ぐ。落下地
点にあった家を容赦なく押しつぶし、余った運動エネルギーによって爆散して直撃を受けなかった家にも深刻な被害を与える。アスファルトで舗装された道路を穿ち巨大なクレーターをあけるその様は
もはや爆撃であった。

「にゃ……にゃぅ……さにゃえさん、恐ろしい子……」

その様子を、ずっと黙って見据えていた霊夢は思わず本音を呟いた。

「大丈夫です、霊夢さんも何回かこっちにくればこれくらいはできるようになりますから」

早苗は霊夢の手を引く。それにつられて霊夢は一歩踏み出し、そして足の裏から全身を貫く快感に
ひにゃん!! と鳴いた。

「ふふ、気持ちいいでしょう? けれど、これが慣れてきちゃうんです、人間ってヤツは。だから、この気持ち
よさを感じながら、次の目的地に急ぎましょう、霊夢さん」







 はるか地平線の彼方から、巨大な地響きを立ててやってくる二人。月を背に、地上の明かりと星明かりを
受けてほんのりと輝いているように見える。そんな二人の巨大な猫巫女を、ビル郡の頂上から見据えるもの
がいた。

「紫だと思った? 残念、天子ちゃんでした~!!」

めっちゃカメラ目線で、蒼髪赤目の少女は言い放った。比那名居天子。今回は登場がやや遅めになった
が、毎度おなじみ天人の少女である。

「いやぁ、巫女が二人揃って……楽しみだねぃ」

そんなことを言っている間に、二人の猫巫女はビル郡の手前までたどり着いていた。それはそうだ。山も川
も踏み潰し跨ぎ越して最短距離を通っているのだから。新幹線もびっくりな速度で。

「これが、ビル?」

霊夢が早苗にたずねる。

「そう、ビルです。この中には小さな小さな人間さんたちが沢山詰まっているんですよ~」

早苗が、ビル郡を跨いで霊夢と反対側に立つ。取るに足らないと判断された小さな雑居ビルを何気なく踏み
砕いて、早苗の足袋に覆われた脚がビル郡を挟んで霊夢の物に正対する。

「にゃー、こんばんは、皆さん。私は"ねこちやさにゃえ”です。巫女にして神様で、さらに今日は猫でもあり
ますのにゃ~! 皆さんはこれから、二人の猫巫女のおっぱいでめちゃくちゃにされちゃうのですにゃ!」

わざわざ語尾に"にゃ”をつけて高らかに宣誓すると、早苗はビル郡の手前に胸が来るように調整して寝そ
べった。その過程でも、早苗のお眼鏡に叶わなかったビルは容赦なく早苗の胸に圧し掛かられ、その重み
で崩れ去る。まぁ、どの道殆ど全て同じ運命をたどることになろうが。

「何それ、おっぱい自慢? 自分の胸がちょっと大きいからって……」

霊夢がややジト目で早苗を見下ろす。

「霊夢さんのだって大きいほうですよ~?」

早苗が霊夢を見上げ、そして小さな声で白、と呟いた。

「何が白よ……。まぁいいわ。付き合ってあげる」

霊夢も同じように、その胸でビルを押しつぶして早苗と向き合う。

「壮観ね。巨乳と超巨乳に挟まれた街ってのは」

そのビル郡の中央、最も高い摩天楼の頂上に陣取る天子は霊夢の乳と早苗の乳を交互に見比べ呟く。胸
だけで、ビルなんかよりも遥かに大きく、そして重い。天子は自分の胸を触ってみる。だめだ、これではあの
二人と同じ大きさになったとしてもマンション一つ潰せない。

「あれは山を二つぶら下げて歩いてるようなものね……。肩凝らないのかしら。最近の子供はいいもんばっ
かり食べてるから体格だけはよくなって……」

はぁ。ため息が口をついて出る。桃ばっかり食べてる天人は脂肪不足で胸が大きくならないのか、それとも
遺伝のせいなのか。それはともかく、天子の上では事が進展していた。

「霊夢さん……キス、しましょう」

ずずず……ごごごご! ビル郡の一角を削り取り、早苗の胸が前進する。ビルの向こうにあった早苗のおっ
ぱいが、ビルを押し倒し、その下に巻き込んで粉々に粉砕するその様は、超巨大な重機。当然、その中に
いた人々は赤いシミになって早苗の巫女服にへばりつくことになったはずである。

 上を見上げれば、早苗の首、そして顎。透き通るように白い、いかにも少女の物らしい肌は、夜の闇の中
百万ドルの夜景を受け止めて白銀色に輝く。

「ん、いいわよ……」

霊夢がそれに応じて、前に体を押し出す。まずは右胸から、建物を外になぎ払って。そして左胸。脇の開い
た巫女服からちらりと見える横乳はとても艶やかで柔らかそうなのに、その破壊力は目を見張るものがあっ
た。基底部をやられたビルが倒れ掛かってくると、霊夢のおっぱいは一瞬形を変えてそれを受け入れたよう
に見えた。けれど、その圧倒的な弾力を持ってボインとはじき返し、件のビルは他のビルを巻き添えに粉塵
と成り果てる。

 二人の顔はお互いが吐いた息が重なるほど近づいていた。けれどそこでそのままキスに移行しないのが
巨大化暦3度目の早苗さんである。手ごろな雑居ビルを調達すると、それをぱくりと口の中に放り込んだ。

「にゃ?」

唖然とする霊夢の唇を、何か言わせる間もなくそのまま奪う。

「お~、大胆に行ったね~。つまりは最初からディープでいくつもりかな」

その様子を真下から見上げていた天子が感想を漏らした。夜空を切り取る巨大な二人の影が、一つにな
る。

「んん!!」

霊夢は早苗の舌が唇をこじ開けて中に入ってくるのを感じた。それと同時に、かつてビルだった沢山の瓦礫
と、何か動く柔らかいもの達が早苗の唾液に混じって流れ込んでくる。これは、人間だ。考えずして、理解で
きた。けれど、それを噛み潰す気にはなれなかった。だって、巫女が人間を食べたらそれはもはや巫女で無
く妖怪でしょう? そういう認識、概念の壁が霊夢を戸惑わせる。

 けれど早苗が、そんな常識の壁を容赦なく打ち破ってきた。霊夢の舌に自分の舌を絡みつかせ、その上
や下に散らばる人間達をプチプチと押しつぶして行く。その味は、思いのほか美味であった。紫によって味
覚をいじられたらしい。

「ん……ぷはぁっ」

早苗が唇を離しても、霊夢は暫くその余韻に浸っていた。ツゥ、と唾液が糸を引き、そして落ちる。

「危なっ!!」

それは真下から事を見上げていた天子をほぼ直球コースで捉えてきた。慌てて飛び退ると、唾液はその位
置エネルギーを精一杯ビルの屋上に叩きつけて爆散する。彼女達からすれば、小さくて気にも止まらない
ほどの水滴。けれどその威力は絶大で、ビルは数階層に渡って貫かれていた。

「今度は霊夢さんが私に食べさせてくださいにゃ……」

霊夢はこくりと頷くと、手探りで丁度いいビルを探し当てて口に含む。当然、その過程にあった不要なビルは
全部おじゃんだ。

「いつでもいいですよ?」

早苗が、その様子を見守ってニコニコと笑う。猫耳をぴくぴくと動かし、とても楽しそうに。

「ん……」

霊夢は暫くの間躊躇うように視線を泳がせていたが、やがて決心がついたのか早苗の目をぴたりと見据え
た。そして思い切ったように、早苗の頭に手を廻して一気に。

 そんな霊夢を、早苗は優しく抱き返す。もちろん、二人の間にある街は更なる出血を迫られていた。まずは
霊夢の胸がビル郡の半分ほどにまで進行。そして早苗が、ゆっくりと霊夢に近づいていく。

「あ~、これはラストスパートかしらね」

狭まっていく空間に、天子はいた。もはやここまでくると、二人の胸は山と言うよりも迫り来る壁であった。い
や、本当の意味での壁である天子がこんな例えをするのはあれかもしれないが。ビルを巻き込むようにして
破壊し、むにむにと形を変えながら迫ってくる。

 二人のキスもまた、長く濃厚で苛烈であった。人はおろか、鉄骨や机に至るまで全てを、二人の舌でこね
くり回し、ビルの残骸は霊夢の口の中と早苗の口の中を行き来する。そうしている間に抱擁もどんどんと硬く
なり、最終的に二人とも仰け反るような形でひしと抱きあった。胸をぐいと押し出し、その間にあるビル郡を
容赦なく挟みこむ。もうこの時点で街は崩壊状態。天子も、上でちゅーちゅーやっている二人の観測を放棄
せざるを得なくなった。しかし限界を感じた時点で離脱には遅く、霊夢と早苗の胸の間にぎゅーっと挟まれる
ことに。

「うぅ……早苗~っ! 私にその胸10グラムずつでいいからよこしなさい~!!」

そんな事を言い残し、むにむにと形を変えるおっぱいの間に飲み込まれてしまった。





「霊夢さん、今日は本当にありがとうございました」

猫耳のとれた早苗が、改めて礼を言う。

「にゃー、別に気にして無いわよ」

ねこ巫女れいむは尻尾をふりふりそう答えた。こっちの耳と尻尾はどうにも元かららしい。

「それじゃ、私は元の世界に帰る事にするわ。何かあったらまた呼んで頂戴、紫。あと、なかなか楽しかった
わよ、早苗」

そう言い残すと、ねこ巫女れいむはぴょいとジャンプし、スキマに飛び込んで消えてしまった。

「あら……あいつ、幻想郷の住人じゃないんだ?」

天子がそれを見送って不思議そうに首を傾げる。

「えぇ、ちょっと位相のずれた世界にいる霊夢と思ってくれればいいわ。幻想郷から霊夢を連れ出したら幻想
郷が滅ぶから」

紫が説明を加え、そしてスキマを開く。こちらは、幻想郷へと繋がる道だ。

「どうりでこっちの巫女よりも性格が丸いわけだわ」

天子がそう言い残してスキマに消え、早苗もその後を追う。



「あ」

 スキマを閉じ、世界の修正に入ろうとしたところ。つまり全てが終わったところで紫は大事な事を忘れてい
た事に気がついた。

「あのねこ巫女れいむから、物の大きさを変更する程度の能力を取り去るの忘れてた……」