「さて、次のターゲットは……リクエストが来てるわ。東風谷早苗さんね。今日の早苗さんは綺麗な早
苗かしら。それとも常識を捨てた早苗さんかしらね……」
マヨヒガ。迷い家。どこかにあって、どこにもない場所。そこに、彼女はいるようでいなかった。身体の
下半分はマヨヒガの自宅の、座敷の上。そして上半分はスキマの中である。彼女の名を、大妖怪・八
雲紫と人は呼ぶ。
「早苗ちゃんはどこにいるのかしら……あ、あそこね。守屋神社の……湖の方かしら」
体の上半分を、その空間にねじ込む。2か所以上の場所に同時に存在できるのは、彼女の特権で
あった。
「どうもこんにちは、早苗さん」
湖の湖面にスキマを合わせ、上半身だけそこから現す。一見すると水の中から人が出てきたかのよ
うである。
「あなたは……八雲紫! こんなところまでわざわざ何を……」
驚いて答えたのは、東風谷早苗その人であった。背中から腰まである碧の髪、やや青みがかった
瞳。均整の取れた顔立ちは17か18そこそこの少女のものだった。脇の出た、巫女服を纏っている。
「あなたこそ、こんなところで何を?」
紫はその問いをそのまま返した。
「私は、このマイナス10℃の中、晩御飯のシジミが採ぅるるって頑張ってんですよ」
「よくわからないわ……。博霊の巫女なら確かにそれぐらいやりそうだけど。貴方の所はそんなに資
金繰りに困っていたかしら。あと、どう考えても水温がマイナス10℃よりぬるい件について」
確かに彼女は巫女服の袖をまくり上げ、スカートをたくしあげて水に入り、ざるのようなものを使って
貝類を採っているようだ。それがシジミなのかカラス貝なのかタニシなのかは遠目に見て不明だが。
「ま、いいわ。私と一緒に楽しいことして遊びましょ」
紫は一旦消え、そして彼女の後ろに出現し、おもむろに羽交い絞めにした。
「ちょ……私のシジミはどうなるんですか!? 今日のおみそ汁のダシかつ具なんですよ
~!」
さすが早苗さん、羽交い絞めにされたことよりも、それによってざるから手を離してしまったことを気に
かけている。
「味噌汁ならおごるわよ。だからその前に遊びましょ」
と、紫が耳元で囁くと、突然彼女は大人しくなった。
「……約束ですよ?」
「えぇ、約束するわ。ウチの式がつくる味噌汁は最高よ」




 その頃、マヨヒガ。
「っくしょん! はっくしょんっ!」
彼女の式神が、くしゃみを二つほど。9本の、ふさふさした金色の尻尾を持つ女性だ。きっと狐の化生
であろう。名を、八雲藍。
「らんしゃま、風邪ですか……?」
式神の傍らでそれを手伝っていた、式の式が心配そうに彼女を見上げる。
「う~ん、花粉かな……」
「ネコアレルギーですか?」
式の式が言う。彼女の頭には、猫の耳が。要するに彼女は猫の妖怪なのだが。
「猫……アレルギー……だと!? ちぇえぇぇぇぇん! そしたら私はどうすればいいんだ! 涙と鼻
水にまみれてチェンを愛し続けなくてはいけないじゃないかあぁぁ!」
「そんならんしゃまは 嫌 で す 」
にこっと笑って、チェンと呼ばれた式の式が言い放った。
 ぴしぃっ! 何かにひびが入る音が聞こえた。無論、その音は、自分の式に嫌われた藍の心が砕
け散る音。
「ちぇええええええええええぇぇぇぇぇん! うわあぁぁぁぁぁあああ、私はっ、私はああぁぁっ!」
「だから、もしネコアレルギーになったら……頑張って治して下さいね」
アレルギーは治るものじゃないんだけどな。藍はそう思いつつ、ティッシュを差し出してくれる自分の
式を愛おしく思った。よかった、まだ嫌われてはいないようだ。




 そんなことをしている間に、早苗は腰のあたりに雲の掛る、晴れ渡った世界に連れて来られてい
た。
「綺麗ですね……妖怪の山の山頂から見ても、こうはなりませんよ」
高く澄み渡った空、所々、島々のように突き出した山頂。白銀の雲海を、少女は数歩歩いて振り返
る。
「そうね、等身大で見降ろしてもそうはならないわ」
紫がスキマの中から現れ、彼女に言う。
「等身大……?」
早苗が首をかしげる。それと同時に、紫は手にした扇で雲海を一打ち。
「開海……雲海が割れる日! なんちゃって」
雲海が、暴風に吹き飛ばされ、その下に隠されていた風景を露わにする。そう、それは1000分の1に
縮小された街、川、そして森。
「……じゃぁ今私は」
「そうよ、今貴方は普通の人間の1000倍の大きさにまで巨大化している。どうかしら、人間の巣を踏
みつぶした感覚は」
早苗は絶句した。もう既に数歩、歩いてしまっている。足の裏に当たる感触は、砂利か砂だろうと思っ
ていた。けれど、そう。それは砂利や砂などではなく、人間の立てた家だった。
 自分の残した足跡を見て、彼女の明晰な頭脳は一体何人を踏み殺してしまったのかを即座に概算
した。千倍。自分の足の大きさは最低でも230から240メートル。その足の下一メートルおきに一直線
に人間を並べても240人……ある程度分散していることを考えて、1歩につきおよそ500人以上は踏
みつぶしてしまっている。
「そ、そんなぁ……私、人を殺しちゃいましたよ……」
早苗は顔を両手で覆った。そして、自分が1000倍の巨人であることも忘れてその場にぺたんと座りこ
んでしまう。その動き、彼女の太腿やふくらはぎによってさらに被害は拡大する。地震、地割れ。鉄筋
コンクリートの近代建築も、1000倍の巨大少女の真っ白な太腿に一瞬食い込んだかと思えば、その
重量と張りに耐えかねて粉々に粉砕される。
「……ぐすっ、ぐすん……やだ……私、こんなの」
彼女は両手で顔を覆って泣きだしてしまった。涙がこぼれ落ち、大地を穿ちしょっぱい池を作る。
「では早苗さん。貴方は幼いころ……アリの行列を見つけて」
紫が、ずしいぃんと歩を進める。早苗の目の前で、住宅街が踏みつぶされ、そして踏まれなかったも
のたちが衝撃で崩れ舞い上がる。
「それをつけて行って踏みつぶしたりした経験はないかしら?」
早苗が顔を上げて、紫を見上げる。答えはない、けれどその答えは無いからして明白であった。
「虫も人間も、同じ重さの命なのよ。ついでに言っておくけど、この意味で一寸の虫にも五分の魂って
言葉を使う人がいるわ。けど、その用法は間違いだから、現役JKの早苗さんは使わないように」
紫はそう言って早苗の手を掴んだ。早苗は答えず、ただ涙をいっぱいに湛えた目で紫を見つめ返し
た。反論が出来ないらしい。
「いじめてごめんなさい、もうそろそろネタばらししてもいいかしらね。貴方が人を殺した事実はなかっ
たことに出来るの。私の能力でね。史実と虚偽の境界を操って」
手を引いて、早苗を立ち上がらせる。湖でシジミ漁(?)をしていたため裸足の彼女を。
「ぐすっ……本当ですか?」
「本当よ。私の能力は貴方の常識が通用しないぐらいチートだから」
紫は彼女の涙をそっと手でぬぐってやり、そしてその雫をぺろりとなめた。
「あぁ、幻想郷では常識にとらわれてはいけないんでした……」
「ここは思いっきり外の世界だけどね」
1000倍に巨大化した早苗さんが、ずしん、と大地を踏み付ける。
「そうと分かれば何も気にすることはないじゃない……ふふ、はははは、あーっはっはっは! 壊して
殺して踏みつぶして……やりたい放題よ!!」
ずしん、ずずん! 手を腰に当て、そして家々を踏みつぶして仁王立ちになる早苗。さっきまでの、純
情な乙女の姿はどこへやら、綺麗な早苗さんタイムは終了と言ったところか。
「私を恐れなさい、信仰しなさい! この、現人神たる東風谷早苗を! あーーーーーっはっはっはっ
はっははっはははははは」
彼女の高笑いによって発生した空気振動が、気圧の山となって窓ガラスを割る。ひどいものでは、家
の屋根にひびが入ったりもした。
「きゃは! 潰れちゃえー!」
ずずん! 12階建ての団地が、一瞬で少女の足の下に消え去り、そして地下深くに埋められる。彼
女が足の親指だけをゆっくりと持ち上げ、そして少しずれた場所に降ろすと、それだけで家屋が一
軒、その重量を支え切れずに崩壊した。
「くすっ……脆いね。女の子の足の指一本も支えられないんだ。私、なんの力も入れてないのに」
そんな早苗さんの様子を見て、紫はつぶやく。
「人間は……生まれながらにして、破壊したい、侵略したい衝動を内に秘めている。それが出来る力
を手に入れた時……人間は妖怪よりも妖怪的である。やれやれ、恐ろしい子」
ずしぃぃん、ずどぉん! 地震と地鳴りがあらゆる場所で発生し、破壊をもたらす。早苗さんが、普通
に一歩踏み出しただけで周囲は大地震に見舞われ、崖が崩れ川は埋まる。逃げなかったものは瓦
礫に埋もれ、逃げたものは乱れた気流に巻き上げられるか地震に足を取られた。そしてそのまま、次
の一歩の下敷きとなり……早苗さんの足の裏に着いた小さなシミとなり果てた。もっとも、彼女は人を
踏みつぶしたことを意識こそすれ、感じることは無かったろうが。
「どれもこれも手ごたえがまるでないわぁ……これじゃつまんない」
彼女は大気に霞む都心を見据える。
「せっかく大きくなったんだし、無かったことに出来るんならもっとイケナイことをしないとね」








 昼の新宿。小田急線、山手線などの各種鉄道会社によって栄えた副都心。今日も忙しい人々が、
忙しいいつも通りの日常を送る街。
 そんな街を襲った小さな揺れ。初期微動。やがてその揺れは大きくなり、人々は地震を感知するに
至った。しかし、その揺れに周期があることに気が付いた者はごくわずか。多くの人はしばらくすれば
収まるだろうと、それでもなお仕事を続けた。ところが揺れは収まるどころか大きくなってくる。そして、
普通の地震には伴わない不可解な音を聞く。


 ずん、ずん、ずしん、ずしん、ずっしん、ずっしん、ずしいぃぃん、ずしいぃぃぃん!



「こんにちは皆さん。私は東風谷早苗! リアル神様です!」
新宿の、密集したビル群に降り注ぐ大音響。もちろん声の主は1000倍に巨大化した少女、早苗のも
のだった。
「いまから、私の力を皆さんに見せ付けてあげようと思います」
窓ガラスが割れ、オフィスにいた人々はそのあまりの音圧に吹き飛ばされて気を失った。大体の生物
が気絶する音量は1200デシベル。これはジェット機のエンジンの音を1メートル程度の距離で聞いた
時に相当するとか。彼女の声量はそんなものを軽く凌駕していた。
 そう言いつつ、現人神早苗は巫女服を脱ぎ捨てると、彼女はそのたわわな胸を露出させた。
「これから、私のおっぱいだけで、貴方達が何年もかけて作り上げたビルを壊して見せます。いきま
すよ~」
彼女が地響きを立てて座りこむと、巨大な胸が重たそうに揺れ、大気を振動させる。
「まず1本目!」
ずしっ……彼女が寝そべりそしてその重たい胸を端っこのビルに乗せる。と、ビルは壁面に亀裂を生
じ、何の抵抗もなくガラガラと崩れ去っていく。
「あら……?まだ乗せてないと思ったのに……残念。もういいや、いちいち狙い定めるのも面倒に
なっちゃった」
地面に当たってむにっと形を変えた胸に、周囲のビルがなぎ倒される。さらに早苗が肩をだして胸を
押しすすめると、それに巻き込まれたビルが倒され、そして下敷きになり、すり潰される。柔らかいは
ずの、女の子の乳で、である。
「あん、なんだか気持ちいい……あと、股の間でもちっちゃいビルがつぶれて……なんだかエッチな
気分」
ずずずずず……ごりごり。彼女の胸はそれよりも小さいビルを次々に押し倒しそして粉砕した。その
様を地上から見上げれば、まさしくそれは天変地異であった。
 乳肉が、一瞬建物を優しく包む。次の瞬間には、その胸の持ち主によって押し出された胸によって
倒されるのだ。轟音と、鉄の曲がる甲高い音、きな臭いにおい。外壁がぼろぼろとこぼれ落ち、そし
て絶対に曲がらないと思っていたビルの外形がいびつに歪み……。そして、巨大な乳の下敷きに
なって姿を消す。
 そして彼女はいよいよ都庁ビルに到達した。さすがにこれは一瞬で葬り去るのはもったいないだろ
うと思ったのか、その手前で早苗は前進をやめた。そしておもむろに両胸を手でつかみ、広げた。
「やっぱり都庁は特別ですから……超巨大巫女さんがパイズリをして差し上げましょう」
都庁ビルを、それよりは少し小さいながらもやはり巨大な乳肉が包み込む。壊れないように、そっと、
そーっと、優しく。早苗さんの胸の谷間に抱かれた。
「こう見えても私、ちょっと知ってるんですよ? こうやって、先っぽを舐めるんですよね」
胸の谷間からちょっと出た、都庁の2本の頭。舌をちょっとだけ出してぺろっと舐める早苗さん。する
と、ほんの少し舐めただけなのにビルは削れてしまう。
 口の中に入ってきたものの中に、早苗は動くものを感じた。彼女からすればたった2ミリにも及ばな
い小さな存在。けれどそれを、確かに舌の上で感じる。人間だ。避難が間に合わなかったのだろう。
「……ん」
ごくん。彼女は迷うことなくそれを飲み込んだ。人間を、飲み込む。その行為自体に、彼女は性的な
興奮を覚えた。
「あはは、本当に脆いんですね。もしかしたら揉むまでもなく潰れちゃうのかな?」
そう言って彼女が胸から手を離すと、たわわな胸が元に戻ろうとして都庁を両側から押し、そして哀
れ。都庁は無残にも二つの肉の山の間でぺしゃんこに潰れてしまった。
「あはは、本当に弱いのね。いや、私が強すぎるだけかしら」
早苗さんは胸の上に残った部分を拾い上げ、口の中に放り込む。そして舌でそれを口蓋に押しつけ
ると、ガラガラと言う崩壊の感触のほかに、ぷちぷちと、弾性のあるものが潰れる感触があった。
「あはは、数の子を食べた時みたい!」
そう言って彼女は手じかにある小さな雑居ビルを引き抜いて、顔の高さにまで持っていく。
「どう? 怖い? けれどもう遅いわ。私の口の中で潰されてちょうだい」
早苗さんが、桜色の美しい唇をそっと開いた。男性ならだれもが、キスしてみたいと思うような形のい
い柔らかな少女の唇。その中には、並びの良い真っ白な歯と、艶めかしい舌。
「ん……うん」
もぐもぐ、ごくり。のどを伝う、粉々に砕かれた瓦礫の感触。今、一体何人食べただろうか。そう考える
だけで、興奮は高まる。
「あ、いけない。おっぱいだけで壊すって言ったのに……手を使っちゃいましたね。それじゃぁ、お詫
びに早苗の恥ずかしいところを見せてあげちゃいます……」
はぁはぁ、と息を荒げ、顔を赤らめて彼女は言った。そして両の足を、残ったビル群を間に挟むように
投げ出す。
 その様子を、八雲紫は人間の10倍の大きさにまで収縮して見ていた。彼女の、足の間からである。
時折気が向くと、足元を逃げ惑う小さな人間たちを踏みつけたりけり飛ばしたりしていた。
「巫女は博霊のが一番……とか思ってたけど、この子もなかなかいいわね……特にふくらはぎのあ
たりが綺麗だわ……」
早苗がパンツをおろし、そして手頃なビルを選択して引き抜く。ビルの間から自分の股間を見上げて
いる紫には気が付いていないようだ。それもそのはず、10倍娘と言うのは彼女からしてみれば100分
の1の小人なのだから。
「んっ……あっ」
早苗がビルを股間に挿れる。100メートル級のビルではあるが、彼女のあれは何のことなくそれを飲
み込み、ずぷずぷと沈めていく。
「ほら、女の子のおなにーですよ。滅多に見られたものじゃないんですから……あんっ」
ぐしゅっ、ぐしゅっ……早苗の股間からは嫌らしい音が漏れ聞こえてくる。もう大分濡れていたようだ。
と、彼女はビルを、その根っこまで入れてしまった。完全に飲み込んで、早苗の秘所はぴたりと閉じ
る。
「あ……もう、100メートルじゃ私満足できませんよう……もっと、もっと奥まで届くのが欲しいのに」
彼女はそう言って自分の膣をきゅっと締めあげる。
「あんっ……でもこれはこれでいいかも」
ビルの、角張ったところが当たり、彼女を刺激する。
「今……私のあそこにたくさんの人間が入ってるんだ……はぁ、興奮しちゃうよぉ」
早苗はそのままごろんと横になる。彼女の巨大なおっぱいがその動きに合わせて地面にたたきつけ
られ、たくさんのビルを一瞬のうちに瓦礫へと解体した。
 紫の遥か上を、瓦礫を吹き飛ばして巨大な足が通りすぎた。ずずうぅぅん! 地響きと衝撃を伴っ
て、足が閉じ、こちらにお尻が向く。
「あら、視点変更しなくちゃ」
紫はスキマに入り、そして今度は早苗の股間の真ん前に陣取った。
「あーん、あっ、いいっ……」
緑色の陰毛の林の奥で、ヒクヒクと彼女の秘部が脈打っている。早苗が身を捩じらせるたびに地面
が揺れたが、紫は何せ普通の人間の10倍なのでどうにか立っていることが出来た。
「あ……やっちゃった」
どうやら、早苗の中でビルが潰れてしまったらしい。加減していたつもりではあったが、それでもやは
り千倍に巨大化した少女の膣圧は強力であった。
「うふふ……ごめんね。きっと2000人ぐらいかな、私の中で潰れちゃったのは。でもまだまだ行くわよ
~」
早苗はそう言って自分の秘所に指を突っ込み、鉄骨の残骸を掻きだす。
「あん……なんか指の方が気持ちいいような……って、それじゃぁ大きくなった意味がないもんね」
早苗は次のビルを手に取りそして自分の中に入れる。そう、たくさんの人間を使って、性的な快楽を
得ている。この背徳感が何とも言えなくいいのだ。
 今度はちゃんと手を離さず、出したり入れたりを繰り返す。中に入っていただけで感じるほど繊細な
早苗のあそこは、当然それに耐えきれるはずもなく。
「う……あっ、ああぁっ、ああ……んっ……」
留めなく溢れ出す愛液。しかしそれが溢れてきても早苗は動きを止めない。快感のあまり、自身が絶
頂に達してもなおそれを続けようとしたのだ。
「ん、んっ、んっ!」
愛液は津波となって紫のもとにも押し寄せた。彼女は宙に浮かびあがってそれを回避したが、そんな
ことが出来ない人間たちは当然のごとく押し流される。その様子を見て、紫は満足げに微笑んだ。
 口の方では、彼女がたらしたヨダレの池につかまって事切れている人間もいた。彼女がビルを押し
こみ、引き抜き、それによって起きる地震で家屋の倒壊に巻き込まれたものもいた。
 そんな大惨事をよそに、超巨大少女のオナニーは、そのビルを膣圧で押しつぶすまで続いた。





「っはぁ……はぁ……ゆかりさん、いるんでしょう」
たくさんのビルを下敷きにして、スカートのみを身に纏った早苗が言った。
「えぇいるわよ」
どこからともなく声が聞こえる。
「もう……疲れて、動けないから……神社まで送って」
早苗がそう言うと、彼女の体が持ち上がった。身長およそ1700メートルの彼女を、まるで人形のよう
に持ち上げる八雲紫。
「いいわよ。お疲れ様」
指先で彼女の胸をくりくりと揉むと、彼女は小さく喘ぎ声を洩らす。こうしてみると、小さく見えるけれ
ど、それでもまだビルを踏みつぶし、山を跨ぐほどの巨人なのだ。つまり、その彼女を片手に持つ八
雲紫はさっきまで彼女がいた一帯を全て足の下に敷いて立っていた。
 紫の返事を聞くと、彼女は安心したのか紫の手の中ですやすやと寝息を立てはじめた。
「あ~可愛い。お持ち帰りしちゃいたい……。むしろこの子を私の中に挿入したい……でもそれはさ
すがに酷よね」
ふふ、と紫は笑って、スキマの中に姿を消した。






 その晩、守屋神社本殿にて。
「ねぇ、どうしたの早苗~そんなにつやつやして」
この神社に住まう二柱の神のうちの一人が早苗に尋ねた。金髪の幼女、頭にはくりくりした目が二つ
付いた帽子。こんな形でも一応祟り神で、かつその頂点に居座る少女。名前は、守屋諏訪子。
「いえ、なんでもありませんよ」
早苗はニコニコして答えた。もうすっかり、綺麗な早苗さんに戻っているようだ。
「何かいいことでもあった?」
諏訪子が早苗の顔をしたから覗きこむ。
「そうですね……。やっぱり秘密です」
早苗は諏訪子のほっぺたを掴んで、むにむにといじくりまわす。と、そこで玄関のチャイムが早苗を
呼んだ。
「は~い、今行きます~!」
なんだかやたら家庭的な構造の神社だった。ふすまを開けて、廊下を小走りに彼女は玄関に急い
だ。
「味噌汁をお持ちしました……」
玄関の戸を開けると、そこにいたのは9本のふさふさした尾を持った狐の化生。八雲藍だ。両手に鍋
を持って立っている。提灯はない。さすがにそこは狐、闇の中でも夜目が利くのだろうか。
「あら、わざわざどうも!」
早苗はそれを受け取り、礼を言った。
「今日はお疲れさまでした……紫様からお話は聞いております」
「え……紫さん……話したんですか!?」
早苗は、自分の恥ずかしいことを知られたとあって、真っ赤になる。
「いや、気になさらないで下さい。そういう状況に置かれたら、だいたい皆そうなります」
八雲藍はその様子を見てけらけらと笑った。
「それじゃ、私は紫様の所に帰りますので」
「あら、せっかくいらしたのに。お茶でもいかがですか?」
「お誘いありがとうございます。けれど実は紫様とちぇんが家で待っておりますので……」
八雲紫の式、八雲藍は丁重にそれを断った。すると早苗は何を思いついたか。
「ちょっと待っていてくださいね!」
奥の方へとかけて行く。
「ではせめてこれを持って行って下さいな」
戻ってきた早苗が持ってきたのは、油揚げ。彼女が狐であることを知っての、洒落た手見上げであ
る。
「あら、わざわざ……ありがとうごさいます。それでは失礼」
今度は彼女もしっかり受け取り、そして闇の中へと姿を消した。
「早苗~、誰だったの? 文ちゃんが新聞の集金に来たとか?」
諏訪子が居間の方から顔を出す。
「いいえ、味噌汁の出前ですよ。さ、加奈子さまを呼んでご飯にしましょう」
守屋神社の暖かな、夕食時。人間のデュアリズムを如実に体感する一時であった。
「常識を捨てた早苗さんも綺麗な早苗さんも、同じ一人の人間。これだから人間と言うのは面白いの
よね」
そんな様子をスキマから覗きこんでいた紫が呟き。
「さて、早苗さんも面白いけど明日は他の予定が入ってるわ……。今度のターゲットは妖怪一人と
……人間一人ね」
スキマを閉じ式の帰りを待つ、八雲家の夕食時。