「天子さああぁん!!」

 がばぁっ!!

 開幕早々。天人の少女、比那名居天子は不意を突かれて倒れこんだ。

 戦は先手必勝、虚をつけ、不意を討て。そして討たれるな。そもそも臨戦状態
に無い相手を討つ事こそが最強の一手。それをされれば、頑強で俊敏な天人でさ
えこの様である。

 要するに、比那名居天子はまさかそこに自分以外の巨大娘が先に居ようとは
思ってもいなかったのである。

 八雲紫に誘われて、いつものように大暴れして踏み潰して、あわよくばえっち
な事でもしてスッキリしてやろうくらいに考えていたのだ。

 そのはずが。なぜかスキマから一歩踏み出した瞬間、待ち構えていた緑髪の巫
女に飛びつかれ、押し倒されて馬乗りになられてしまった。

「ちょっ、早苗っ!? なんで貴女がこんなところに……!」

 どうにか頭を起こして周囲の状況を確認する。どうやら体の大きさはいつもと
同じ1000倍程度で、倒れこんだ頭は丘陵を枕にしているらしい。

 と、そんな天子の巨大な顔の前に、同じく巨大な早苗の顔がずいと迫った。

「なんでって、もちろん紫さんに誘われているからここに居るんですよ~?」

 早苗は猫のように目を細め、夢見るような調子でふわふわと答えた。一言ごと
に早苗の暖かい吐息が天子の顔にかかる。そのくらいの距離にまで早苗の顔は近
づいていて……にもかかわらず、早苗はさらに天子に顔を寄せる。

「え、あの……ちょっと? 早苗……、いったいどういう……ん~~~っ!!」

 状況がよく分からないまま混乱する天子。そんな彼女の桜色の唇に、迫る早苗
の薄紅色の唇。興奮に荒げる熱い吐息が、僅かに開かれた唇、垣間見える白い歯
の間から漏れる。

 ずしっ。

 重たいもののぶつかり合う音。小山ほどの質量のある早苗の頭が、天子の頭に
その重みを預けたのだ。そして華の唇同士が、岩ですら圧搾してしまうほどの圧
力に融けあう。

 あまりに突然で、強引なキッスに、比那名居天子はその可愛らしい目を驚きで
まん丸にする。それだけで精一杯だった。早苗を押しかえそうだとか、そんな思
考が全て消し飛んでしまう強烈な不意打ち。

 しかしそれだけに飽き足らず、唇よりもずっと熱いものが天子の唇を分けて彼
女の口腔内に侵入してきたのだ。

 早苗の舌は、巨岩のような天子の歯を分け入って、天子の口の中15メートルほ
どにまで入り込み、そして天子の舌に絡みつく。

「ん~! んっ……んーんー!!」

 天子はそこで始めて、自分の口の中に入ってきたものが早苗の舌だけではない
ことに気がついた。舌に当たる何か小さい、柔らかいもの。プチプチと弾けるそ
れは、かつて何度か巨大娘として暴れまわった天子の記憶に思い当たるものが
あった。人間だ。

 早苗の舌と、天子の舌。絡み合う二頭の怪物の間で、小さな人間たちが揉みつ
ぶされている。必死で逃げ回り、唾液の海におぼれ、そして天子の舌を弄ぶ早苗
の舌に押しつぶされる。

 早苗のされるがまま。けれど、口の中で弾ける血の味は、自分が巨人になった
のだと、たくさんの命を口の中で弄び押しつぶしてしまえる強大な存在になった
のだという事を自覚させる。不本意ながら、その力の自覚は天子の中に強い快楽
の刺激を呼び覚ますのだ。

「ぷっ……はぁ……はぁ、はぁ。これが天子さんの味ですね……なんてね」

 暫くの間、口に含んだ小人を天子の口の中で追い回し、舌を絡めあっていた早
苗。長く濃厚なキッスをようやっと終えると、天子の顔の両脇の市街地を区画ご
と押しつぶして手をつき、彼女は身を起こした。とろんとした目つきで、頬を赤
らめて呟く早苗は、なんだかとても色っぽく見える。

「はぁっ……はぁっ……もう、なによ……いきなり」

 不本意とはいえ、今の濃厚なキッスですっかり骨を抜かれてしまった天子が、
同じく頬を紅潮させて早苗に尋ねる。

「今日は何の日かご存知ですか、天子さん」

 早苗は再びかくんと力を抜いて天子の上に覆いかぶさった。そのすべらかな頬
で、天子の頬にずりりと頬ずりをし、天子の華奢な肩に顎を乗せてだらりと伸び
る。

「10月5日よね……? 何かあったっけ?」

 そんな早苗の頭を抱きこむようにして撫ぜて、天子は聞き返す。

「今日はですね、てんこの日らしいのです。紫さんが言ってました」

「あぁ、よくあるアレね……3月7日は早苗の日とか、そういうんでしょ?」

「それです。で、今日はてんこの日なので、天子さんを好きにして良いって紫さ
んが」

「そこがわかんない! 普通私が好きにする方なんじゃないの!? あと私は、
て・ん・し!! てんこじゃない!!」

「いいからいいから~。せっかくの、こういう機会ですし」

 ぎゅーっ。地面をまるで布団か何かみたいに陥没させて、天子の下に手を回し
天子を抱きしめる早苗。

「そう……よね」

 天子のほうも別段悪い気はしなかった。なにせ早苗は可愛く、そして可愛いも
のが嫌いな女の子などいないのだから。男から見ても女から見ても、可愛いは正
義なのである。

「そうですよ~。せっかくなんですから。私たちで、この町をめちゃくちゃにし
てあげましょう」

 早苗は天子を抱きしめていた手を離すと、立ち上がって天子の手を引き起き上
がらせた。

 その際に、10階はあろうかというマンションが5棟ほど早苗のブーツの下に
消えるのが見え、続いてあがる黒煙に天子は身震いする。

 あぁ、私たち大きくなっちゃったんだ。その実感が、確かな興奮を伴って天子
の体を駆け巡った。

「ふふ……いいわよ。付き合ってあげる」

 ずしん、ずしん。二人分、4本の脚が大地を踏みしめる。

 スレンダーで締まった細い足。ロングブーツを上へと辿れば、可愛らしく綺麗
な膝が僅かに突起を造り、その上へと続く太ももはすべらかで雪のよう。誰しも
が手を這わせたくなる華奢で美しい脚は、比那名居天子のもの。

 対して、女の子らしい丸みを帯びた曲線美に満ち溢れるのは早苗の脚。弧を描
くふくらはぎは、白のハイソックスを優しく膨らませて色っぽく、太ももはむっ
ちりとして埋もれたくなるような魅力を備えている。育ちがよく健康的で魅力に
満ちた脚が早苗のものだ。

 その何れもが、町にあるどんな建物よりもはるかに大きく、そして丈夫で美し
い。

「やっぱり気持ちよくなりたかったら、脱がないとダメよね」

 そんな巨大な脚が、身じろぎをするとそれだけで大地は大きく揺れ、触れても
居ない建物の窓ガラスを砕いて衝撃が走り去る。

 天子はそのロングブーツから脚を抜き、そして住宅街の中に踏み下ろした。素
履き故に、ブーツの中から現れる脚は裸足。それは白く柔らかく、日の光を受け
れば輝いて見えるほどに眩しかった。

 先ほどまで硬い皮に覆われていた脚が風に吹かれ、心地いい。そして拘束を解
いて自由になった足が、いよいよ住宅街を踏みしめる。

「ひゃん! やっぱりこれ、気持ちいいよぅ……」

 脚の裏で、小さな住宅や車、そして人間たちが弾ける感覚。砂や砂利では決し
て味わえない破壊の快楽が、足の裏から天子の脳天へと駆け巡り貫く。

 バキバキ……めきめき。住宅の断末魔が木霊し、そして地響きに飲まれて消え
た。

「分かります。いいですよね……足の裏でちっちゃな家やビルが潰れて……自分
が強くなった、全てを支配している感じがしてものすごく興奮するんです」

 早苗も同じようにブーツから脚を抜き、そして街の中に踏み下ろす。やっぱり
最初の一歩は感覚に慣れていないため、とても気持ちがいい。

 あんっ、と小さく声を漏らして、早苗は自分より一回り小さい天子に抱きつく
ようにしてもたれかかった。

「ふふ……早苗ったら、相変わらず足の裏、敏感なのね」

 天子はそんな早苗を抱きとめて、そして一歩後ろに下がった。当然天子に体重
を任せきっていた早苗はそれにあわせて一歩踏み出さざるを得なくなり、まだ踏
み潰しに慣れきっていないその敏感な足を強制的に刺激される。

 弾け飛ぶようにして壊れる家々、そして必死に逃げ回っていたであろう人々を
たったの一歩で何百と踏みしめ踏み殺してしまった背徳感、そしてそれで快感を
感じているという事に対する背徳感。それらが性的な興奮へと昇華し早苗の体を
熱く火照らせる。

「ひぅ……気持ちいいです……」

 天子の肩に顎を乗せて耳元で喘ぐ。その喘ぎがまた色っぽくて、可愛らしく
て。天子は早苗をぎゅうっと抱きしめた。

 たったそれだけの行動ではあるが、さて二人の足元は大惨事である。天子にし
てみれば腕の中にいる早苗をぴたりと抱き寄せただけなのだが、そうなると4本
の足が微妙に位置を変えて、狭い範囲で数歩を刻む事となる。ぎゅっと抱きしめ
られて、新しい重心を探す2,3歩が、マンションを、道路を、駐車場を、本来
ならば僅差で難を免れていたであろうモノたちを容赦なく踏み潰した。

「ふふっ……天子さん、見てください。私たちが抱き合っただけで、足元の町は
大騒ぎ。とっても面白いですよね」

 頬を赤らめ、早苗がふにゃふにゃと紡ぐ。語調こそ夢見心地ではあるが、その
言葉の中には早苗らしいSっ気が多分に混じっていた。

「ついさっきまでは、私たちもあそこにいる人たちと同じ大きさだったんですよ
ね……。マンションなんて、大きくて頑丈で、とても壊せそうに無かったのに。
けれど今はほら、見てください」

 早苗は天子を抱きしめていた手を離し、そしてしゃがみこんで15階建ての大
型マンションを摘み上げた。

 彼女はもう片方の手で巫女服をはだけさせると、露になった胸の谷間にそのマ
ンションをそっと設置する。マンションは不安定な足場に大層ぐらついたが、な
にせ早苗の乳、とても柔らかいそれはむにむにと形を変えてマンションを受け入
れ、谷間に安定させた。

 だがそれも一瞬のこと。早苗がその巨大な手にすら余るほどの自分の乳を両手
で持ち上げ寄せて上げると、マンションは成すすべも無くその胸の谷間に消えて
しまった。そのまま早苗が胸をすり合わせると、ごりごりという(彼女らにして
みれば)小さな音を立ててさらに細かく粉砕される。

「ほら、私のおっぱいで簡単に揉み潰せちゃうんですよ」

「なにそれ、嫌味?」

「いえいえ、天子さんだってまったく無いわけじゃないってこと、私は知ってま
すよ?」

 どん!! 唐突に早苗に押し倒され、天子は再び尻餅を付くことになった。そ
の締まった可愛らしい、しかし巨大な尻が、高さ100mはあろうかという丘陵
地帯に向かって落ちていく。

 もちろんそこには町を見渡す高級住宅が繁茂していたわけであるが、そんなも
のお構いなしだ。重力は待ってくれない。

 スカートが風を孕んでめくれあがり、彼女の白い下着に覆われた、下着に負け
ないくらい白く美しい尻が直接、丘を押しつぶす。

 そう、まさに押しつぶすといったところ。彼女の白いお尻が丘の頂上に接触す
ると、地滑りのような感じで一気に土が移動する。そうして標高が低くなっても
まだまだ天子のお尻は進撃をやめない。土を押しやり押しやり、丘を崩すどころ
か潰してめり込んでいくのだ。

 結果彼女が尻餅をついた場所はかつて丘だった場所、天子の尻を模った巨大な
クレーターへと成り果てた。

 もっとも彼女らにしてみれば100メートルの丘陵なんてほんの10センチの
段差のようなもので、ほとんどあっても無くてもかわらない。

 故に、自分の尻で丘をひとつ押し潰したことなどまるで意識せず、天子はその
まま早苗に圧し掛かられる運びとなった。

「強引、なのね……」

「はい、好きにして良いって紫さんが言ってましたから」

「……好きにしなさい」

「やった、天子さんのお墨付きですね!」

 早苗は心底嬉しそうに微笑むと、早速手を出す。天子のブラウスのボタンを上
から丁寧に外して行き、そして胸をはだけさせた。

 なるほど、早苗のものから比べたらそれははるかに小さい。いやブラなどなく
ても、ただそこにあるだけで谷間が出来る早苗の乳とはそもそも比べる事が間
違っている。
 それでも、まるで膨らみがないかといえばそんな事は無い。早苗の胸とは違った
風情のある、なだらかで優しいふくらみが確かにあった。

「下着、つけてないんですね」

 早苗が服の下に手を入れて、それをそのまま生でもみしだきながら言う。早苗
のものよりもハリと弾力に満ちていて、しかし女の子らしい柔らかさ。
 少し強めに揉めば、そのすぐ下には肋骨を感じる質素な、けれども確かに手で
覆って揉むことはできる胸があった。

「……してないほうが大きくなるって言うし」

「いいえ、天子さんはこのままでいいんですよ。抱きしめた時に、ぴったりできますから」
 早苗はそう言うと、手近なマンションを1棟引き抜いて天子の胸の真ん中に置
いた。さすがに直立した状態では置く場所がなかったのだろう。けれど横になっ
て出来るこの比那名居平野になら設置可能だ。

「ほら、ちゃんと寄せてあげれば谷間もできます」

 天子の胸の上に、マンションからぱらぱらと人が逃げ出してくる。そんな人間
もろとも、天子の胸はマンションを挟み込み粉々に粉砕してしまった。一応5階
建てくらいならばなんとかなったようである。

「ねぇ早苗、やっぱり馬鹿にしてないかしら?」

「そんな、とんでもない。私は天子さんのことが好きですよ?」

 と、早苗は天子の胸から手を離して、ある事に気がついた。

 瓦礫の大きさが明らかに小さくなっているのだ。5階建てのマンションを挟み
潰したのだとはとても思えない。

「ねぇ天子さん、私たちまた大きくなっていません?」

 早苗は手をついてあたりを見回す。するとなるほど、先ほどよりも周囲の景色
は小さく、見える世界は広く遠くなっていた。

「見てください、私の指の太さよりもマンションが小さくなっちゃってます」

「う~ん、それは私が興奮したからかしら? 早苗に胸を揉まれて、ちょっと気
持ちよかったのよね」

 先ほどの5倍ほどだろうか。正確な大きさは測れないものの、天子と早苗は確
実に巨大化していた。

「今回大きさを操る能力を貰っているのは私みたいね。紫は何も言わなかったけ
れど」

「そのようですね。私がその干渉を受けた理由が分かりませんが……」

「紫が幽々子と一緒にこっちに来たときも二人一緒に大きくなってたしそんなも
のなんじゃないかしら?」

「ふ~ん。まぁ、細かい事はいいです。興奮が冷めたら小さくなっちゃうかもし
れませんし、難しい事を考えるのはやめです」

 せっかくこんな大きさになった事だし。何かこの大きさで出来る事……と考え
た早苗は、町を区画ごと掬い取って天子の胸の上に器用に並べ始めた。こんな事
ができるのも、偏に天子の胸が平たい……いや、なだらかな丘だからである。

 そして天子の胸の上に早苗が満足できるくらいの町が出来上がると、早苗は巫
女服の前を完全に開いて、その豊満な乳房を惜しげもなく露出させた。

「天子さんの胸の上の町の皆さん、こんにちは。申し送れましたが、私東風谷早
苗と申します。これからあなたたちは、私のおっぱいと天子さんの胸の間で押し
潰されていただきます」

 早苗は右の乳房を持ち上げて、そして町の上に翳して手を離した。

 ずっしいぃぃん!!

 その乳房の自重だけで、その真下にあった街は簡単に押し潰され、そしてその
周囲の建物も跡形も無く消し飛ぶに至った。早苗が乳房を退かすと、その下には
白く美しい天子の胸。

 早苗が胸をぶるんと振るうと、そのアンダーバストにへばりついていた残骸た
ちが天子の胸の上の町にばらばらと降り注ぐ。

「ふふっ、嬉しいでしょう? こんな可愛い女の子たちのおっぱいの間で挟み潰
されるんですよ?」

 猫のように目を細めて町を見下し、早苗はクスクスと噛み殺すようにわざとら
しく笑う。

「おっぱいとおっぱいの間に居ながら、あなたたちは私にも天子さんにも手を出
す事ができない……本当に非力ですね。そうだ、今から10秒待って差し上げま
すから、天子さんか私を気持ちよくしてくださいませんか? もしどちらか片方
でも感じさせる事ができたら、助けてあげなくも無いですよ?」

 まぁ、無理でしょうけれど。そんな含みを持った煽りだった。

 早苗はうまく体制を調整し、その可愛らしい乳首を町に接触させた。もちろん
いかに乳首のみとはいえど無傷とはいかなくて、早苗の乳首はそこにあった家を
何件も押し潰してそこに鎮座する。

「さぁさぁ、口では読み上げませんけれどもうカウントは始まっていますよ
~?」

 まくし立てる早苗。実のところ真っ赤なうそである。カウントなど端からする
つもりなどありはしなかった。気が向いたところで終わりにしてしまうつもり
だ。けれどこうして、いつ終わりが来るか分からない恐怖を与えたほうが楽しい
でしょう? と早苗は唇の端を楽しそうに吊り上げる。

「どうですか? 天子さんはなにか感じますか?」

「全然?」

「あら、残念。私も何も感じません……」

 本当のところ、まるで何も感じないかといえばそんな事は無いのだけれど。足
の裏でも、人が潰れれば分かるほどの鋭敏な感覚の持ち主たちだ。小人たちが乳
首の周りで必死になって暴れまわれば分かるにはわかる。気持ちよくないかと効
かれれば、確かにそこそこ気持ちよくはある。

 けれどそう、つまるところ早苗は潰したいのである。

「ふふっ、みなさん残念でしたね。せっかく頑張っていただいたのに……」

 早苗はにっこりと笑うと、ぺろりと舌を出した。その様子は彼女の美しい顔と
相まって非常に可愛らしかったのだが、しかしそうも言っていられない。

 早苗は天子の乳首に顔を近づけて、それをよくよく観察してみた。さすがに生
身で乳首にくっついている人間はほとんどいない。車で体当たりしたり、重機で
引っかいたりだ。

 少女の乳首を感じさせるために、家をも破壊できる重機を用いなければならな
い。

 そんな彼らを見て、なんとも言えない滑稽さと自分の大きさ、強さを再認識し
た早苗に駆け巡る興奮。理性のリミッターが鼓動のたびに揺らぎ、そして外れ
る。

「えいっ!」

 ちゅぱっ。

 早苗は天子の可愛らしい桃色の乳首に吸い付いたのだった。その唇で、天子の
胸に乗っかっていた家を何件も押し潰し、そして怪物のような巨大な舌で乳首を
舐め取る。もちろんそこにいた人間たちも。

「ひゃぅん!! 早苗!! それはさすがに……っ!! んぁ……だめっ、ら
めぇっ!!」

 早苗のあまりに突然の行動に3度不意を突かれ、天子は思わず声を漏らしてあ
えいだ。風にさらされていたため冷たくなっていた乳首に、早苗の舌が暖かく、
そしてそのざらざらした感覚に身を捩るほどの快感を覚える。

 胸の上に町があることなどすっかり忘れて身を捩ったため、町は酷く傾き、そ
の一部はずり落ちて天子の腋から地面へと落下し粉々に砕け散ってしまった。

 少女の体の上の、少女が喘いだだけで翻弄される町。なんと小さく、なんと滑
稽なことか。あるいはその少女たちのなんと巨大で強大なことか。

 両の乳首を舐め取ると、早苗は今度は自分の乳首を天子の口に含ませた。残念
ながら何も出はしないが、そこには早苗を気持ちよくしようと必死ですがってい
る小人たちが居る。

 天子はそれをしっかりと舐め取ると、ごくりと喉を鳴らした。彼女の華奢で小
さな喉仏がぴくりと動くその様に、早苗は恍惚を覚える。

 天子さんが人間を食べた。それも何十人も。彼らは天子さんの食道を運ばれて
……そしてその胃液の海で消化されるんだ。

 そう、そして私の口の中にいるこの人たちも。

 ごくり。天子を追って、早苗も喉を鳴らす。唾と一緒に、食道を人が落ちてい
く。自分の胃の中で、さっきまでの自分と同じような存在、人間が消化される。
それはなんとも言えない背徳と、自分が人間を好きなように扱える、食べてしま
えるという超越感を早苗に与えた。

 いよいよ早苗の興奮は絶頂へと近づく。

「天子さん……私たちのえっちで、この町を……いいえ、この星をめちゃくちゃ
にしちゃいましょう?」

 天子の胸の上の町に自分の乳をずっしりと乗せ、そしてずりずりとすり潰す。
もはやこんなものでは満足できない。

 天子も同じように興奮が高まっていたのか、早苗の要求をすんなりと受け入れ
こくと頷いた。

 気がつけばさらに体は巨大化しており、その大きさは既に1万倍を優に超えて
いるらしいことが周囲の状況から窺い知れた。

天子が枕にしているのは、丘か何かだと早苗は思っていたのだが、今こうしてみ
るとそれは山脈であった。雲をかぶるような霊峰を枕に、天子は寝そべっている
のだ。さっきまではその麓のあたりに頭を置く感じだったが、今では完全にそれ
を枕に敷けている。

 ずずず、ずごごご……身じろぎの度にひどい地響きを立てる二人の巨人。その
巨人たちの唇が、重なる。

 ずっしいぃぃん!! 

 まさしく山のような質量がぶつかりあう衝撃。早苗の緑の髪、天子の青い髪が
絡み合い、まるで森林地帯を幾重にも川が駆けているかのようだ。

 ちゅっ、くちゅっ……。早苗と天子の舌が絡み合う音は大気に幾重にも木霊
し、宇宙へと消えていく。もはやこの空間全てが二人のものであった。
 やがてそのキスを終えると、1万倍の巨人となった早苗は膝立ちになり、そし
て後ろへと下がった。いよいよ本番だ。

 まずは天子の下着に手をかける。紐を解くと、それは簡単にはらりと脱げてし
まった。なるほど、そういえば天子はもとよりこちらの世界にはえっちをするつ
もりで来ていたんだっけな、と早苗は思いだす。ならば遠慮は無用。

 早苗はその巨大な舌をまずは町に這わせた。ずりずり……ずごごご……地面を
はがし取り、早苗の舌が町を数百メートルに渡って削り取る。

 そして町を口に含んで、比那名居天子の秘所へと口付けをした。

 天人という生き物は排泄をしない。故に、天子のそこが汚くないというのを早
苗は兼ねてより知っていたため、別段抵抗は無い。そのまま、口でやったのと同
じように舌をねじ込むだけだ。

 膣口を優しく押し開け、そしてその中に町を流し込む。

「ひゃうっ……!! ひぅっ……!!」

 早苗の舌が町を送り込み、そして天子の膣の中でそれを押し潰すたびに、天子
は喘ぎ身もだえする。そうしなければ理性が保てないほどの快楽が全身を駆け巡
るのだ。

 暖かく柔らかい早苗の舌。そしてぱちぱちと砕ける町の建造物たち。それらが
膣壁を刺激し、最高の快感を作り出す。

「んぁっ……いいよ、すごくいい……っ!! あっというまに大きくなっちゃっ
たね。ほら、見てみて。早苗、あなたの胸……この世界のどんな山より大きいよ
……」

「天子さんの胸も、関東平野より大きいですね」

 なんで平野と比べるのよ!? 後で絶対殴る!! とか思ったけれども、すぐ
に早苗の攻め手が再開されて、そんな事を考える間もなく天子は再び快楽の渦に
おぼれる。

 気がつけば、あっというまに100万倍を通り越してどんどん巨大化してしま
うほどのインフレ的な快感だった。いつの間にやら日本列島は早苗のふくらはぎ
に押し潰され、ユーラシア大陸のほとんどを天子が押し潰してしまっていたが、
それでも彼女らはとまらない。

 地球が二人の引力に引かれて、早苗と天子の重心にむかって落下していくとこ
ろになって、ようやっと天子が絶頂を迎えるまで。

「あははっ、結局太陽と同じくらいの大きさになってしまいましたね」

 二人の目の前に浮かぶビー玉みたいな小さな球体が地球。よくよく見ると、天
子が快楽に暴れまわってつけた巨大な破壊の痕跡が赤いマグマの地図になって見
て取れる。

 けれども今の二人からすると、かつて自分たちがそこにいて、超巨人になった
つもりで大暴れしていたことすら信じられないほど小さいものだった。

「貴女のせいよ? ほんとう、ぎりぎりのところで何度止められたか……」

 天子は早苗の胸に向かって落下していく地球を手で受け止めて、また目の前に
持ってくる。

「お褒めに預かり光栄です! それじゃ、天子さん。そろそろおしまいにしま
しょう」

 早苗が、青い星をその唇に挟み、にっこりと笑みを浮かべる。

「えぇ、そうね」

 早苗をぎゅっと抱きしめ、天子は早苗の唇に自らの唇を重ねた。

 そして早苗の唇を分けて、彼女の口腔内に地球を押し込み舌を絡ませる。

 暫くの間天子は地球の味を確かめるように早苗の舌と絡ませて弄んでいたが、
結局何の味も無く飽きたのか、早苗の舌に押し付けるようにして押し潰してし
まった。

 ごくり。早苗の食道を地球が落ちていくのを確かめると、天子は早苗の手を引
いて、背後に開いた隙間に姿を消した。





 その後に現れるのは仕掛け人、八雲紫。

「天子ちゃんには黙っていたけれど……今回の早苗さんには実は少しばかりお酒
を飲ませていたのよね……本当に少しだけれど。あの子は酒耐性がマイナスだか
らね」

 紫が手を翳すと、そこには先ほど早苗に飲み込まれたはずの地球が、まるで手
品みたいに現れる。

「ネタばれも修正も終わったし、今回はこれでおしまい。けれどそうね……早苗
さんをあそこまでさせたのが果たしてお酒の力だったかどうかは本人のみの知る
ところ、といったところかしらね」