空が落ちてくる。倒れこむ白龍の少女の背中を見上げる人々は一貫して同じ感想を抱いたと思う。昼間なのに、彼女の影が落ちる町は黄昏のように暗く。クレアの身体が地面に近づくほどに収束して濃くなる影は、即ち数瞬先の運命が確定した事を表していた。
 無論クレアとて倒れたら痛いので、背中の翼を必死でぱたぱた羽ばたかせ、尻尾をブンブンと振ってバランスを取ろうとするのだが、運命を変えるためにはそれはいささか遅すぎた。彼女の身体は家々を押し潰して地面に抱きとめられ、轟音とともに盛大な砂嵐を巻き上げる事となった。縮めそこなった翼や荒ぶる尻尾が無為に被害を拡大させただけに終わった事は、言うまでもあるまい。
「な、何するの!? バハムートちゃん、ここ町の中だよ!?」
 慌てて身を起こそうとついた手が、ぐしゃりと何かを押し潰した。その感触にびくりと肩をすくめるクレア。手を退かすと、そこには鉄の箱が赤い飛沫を飛び散らして無残に潰れていた。
「ご、ごめんなさい!!」
 立ち上がろうにも、周囲には人や車や路面電車がごったがえしていて動けそうに無い。自動車はともかく、軌道を持った路面電車はクレアから一直線に離れていく事ができず、のろのろと彼女の太股のあたりを逃げている最中であった。動けば間違いなく横転させてしまうであろう。
 が、そんなクレアの気遣いは彼女の目の前で、逃げ出そうとしていた路面電車と一緒にぐしゃりと押し潰された。黒い布に覆われたその巨大なプレス機は、黒龍の少女、バハムートの膝。クレアの太股を跨ぐように、膝立ちになり彼女の肩をぐいと押す。
「何って、決まってるでしょう? あなたの性欲処理よ!!」



 事の起こりは結構前に遡る。
 東の国からの攻撃に応報し、結局のところ一国を丸ごと滅ぼしてしまったクレア。その被害は凄惨たる事、正しく天災の如しであった。山脈だったはずのものは彼女の太股や脹脛を模った渓谷に姿を変え、国があった筈の場所にはクレアが陰部をこすりつけて削り取った窪みが愛液を湛えて深く巨大な湖となっている。
 同じ天災たるバハムートから見ても、これはやりすぎだった。それも、明確な攻撃によってもたらされた訳ではなく、クレアが燃え上がった結果がこれだというのだから、もはやあきれ返るしかない。
 とはいえ、呆れてばかりもいられない。なにせクレアは自由奔放で欲求には正直。故に、一度自慰の快楽を占めてしまえばまたやりたくなるのは必至であった。
 この町の近く(と言っても身長175メートルのクレアの感覚で)には標高2000メートルにも達する立派な山脈があり、近頃クレアは深夜になるとその向こうに姿を消す事が多くなった。
 無論、彼女がそこで何をしているのかは明白。なんと言っても、そこそこ離れているはずの山の向こうから色っぽい喘ぎ声が聞こえてくるのだから。そういう声というのは、本人が聞こえていないと思っていても存外遠くまで聞こえてしまっているものである。
 バハムートやキアラはそれに深く突っ込むわけにもいかず、結局のところそれを知らない事にしてあげた。クレアだって女の子だ。したくなっちゃう時ぐらいあるだろう、と。
 そんなある日である。
 バハムートは深夜に目を覚ます事となった。いや、バハムートに限らず、キアラや町の人々全員が目を覚ました。何故って、まるで耳元で囁かれているかのような巨大な喘ぎ声と、激しい揺れを感じたからである。
 例の山脈のほうに目を向けてみれば、案の定皆の予想した出来事が起こっていた。
 クレアの巨大な頭が、山脈の向こうにちらりと見える。頭だけで、既に標高2000メートルもの山脈よりも大きい。そんな彼女が頬を赤らめ、快感に悶え、喘いでいるのだ。快楽の余り自制が効かなくなり、2万倍程に巨大化してしまったらしい。
 結局のところ、クレアは自らの姿をどうにか目隠ししていた山脈を自身の手で握り潰してしまい、周辺の地図は再び書き換えられることとなった。

 そんなわけで、さすがにこれはマズイと感じたキアラおよびバハムートは対策に迫られ今に至る。


「ダメだよ、関係の無い人たちを潰しちゃ……っ!?」
 涙目でおろおろと紡ぐクレアを、バハムートの唇が押し黙らせた。
 不意打ちに丸くなる彼女の眼。ツゥと流れ落ちる涙、そんな彼女の意思とは逆にポッと紅潮する頬。恐ろしい龍ではなく、人の心を持った少女としてのクレア。その無垢で優しく、臆病な姿に、バハムートの嗜虐心は酷くそそられた。
「本当にそう思ってるかしら?」
 言うが早いが、バハムートはクレアのパレオをめくり上げて、彼女の股間を指でなぞった。罪無き人々を既に沢山押し潰してしまい、涙をぽろぽろと溢すクレア。けれど身体は従順で、びくりと竦んで喘ぎ声を漏らす。
「あなた、最近一人でしてる事多いじゃない? けど、そんなんじゃぁ満足できないでしょう?」
「っ……!!」
 クレアの顔が真っ赤に茹で上がる。反論しようと言葉を捜しているらしいが、しかしそれは形を結ばなかった。悔しそうに唇を噛んで、ぽろぽろと涙を流すのみである。
「本当は壊して壊して、潰して潰して……沢山の人間を消費したい。そうでしょう? 欲求不満は溜めちゃダメ」
 バハムートはそのか細くも巨大な手を、10階建てのビルに突っ込んだ。上品な黒の手袋に覆われたその手は、花崗岩で組まれた外装をいとも簡単に突き破り、鉄骨を歪めて2、3フロアを一度に蹂躙する。デスクや棚、そして人が指先で転がり、あっけなく潰れる感触に高まる興奮。
 破壊と殺戮。自分以外の全てを淘汰する邪悪で凶悪な龍の本能が刺激されるのだ。そしておそらく、それはクレアも同じ。涙を流しながらも、自らの身体の下で弾けた数多もの命の感触、そして破壊という行為に快感を感じずにはいられないはずなのだ。
 設計された重心分散ができなくなったビルが、自身の腕にその重みを預けてくるのを感じると、バハムートはビルから腕を引き抜いた。ビルはまるで支柱を失ったテントのように力なく崩れ落ち、砂の津波を巻き起こす。
「バハムートちゃん、ダメ! ダメだって……!! この人たちは悪くないのに、かわいそうだよぉ……」
「大丈夫よ、この子達は慣れてるから。したくなったら、いつも相手してもらってるの」
 バハムートはクレアの腕を掴んで持ち上げ、その指でビルの壁面をツゥとなぞらせた。赤レンガの外装がボロボロと崩れ、お洒落な格子窓が甲高い音を立てて滝のように流れ落ちて行く。その破壊を目の当たりにし、クレアはびくりと肩をすくめた。
 気持ちいい。けど、ダメだ。
 東の国を滅ぼしてからというもの、あの感触をもう一度得たいという願望がクレアの中で燻っていた。どこかの国が攻めてきてくれれば、と思ったことさえあった。破壊と殺戮の衝動。けれど、ここでそれを受け入れたら……自分が本当に怪獣になってしまいそうで、怖い。
 だが、バハムートはそこに容赦なく追い討ちをかける。
「ふふっ、貴女は敵意外には本当に優しいのね。けど、たまには龍の本能をしっかりと開放してあげないと……この間みたいに溜まっちゃうと大変よ?」
 バハムートの手に握られているのは、十余名の人間達であった。皆若く、活きのいい少女達だ。
「見て、この子達……とっても可愛いでしょう?」
 クレアの目の前に突き出された手。その上で、彼女達は抱き合ってふるふると震えている。バハムートが帝国中から選りすぐったお気に入りの少女達。どの娘も、人形のように可愛らしい美少女だ。
 そしてそんな美少女達は、同じく美しく可愛らしいクレアの、豊満な胸の谷間に押し込まれてしまった。
「何を……だめ……やめて……」
 細く、震えるような声でクレアが嘆願する。けれど、その言葉とは裏腹にクレアは抵抗をしなかった。
 胸当ての隙間から両手を差込み、バハムートの巨大な手が、その巨大な手をもってしてもなお余りある山のような乳房を揉みしだく。パキ、ぽきっ……何かが砕ける音と入れ替えに聞こえなくなる悲鳴。
「どうかしら? おっぱいで貴女と同じくらいの歳の子を潰しちゃったのよ?」
 バハムートの手が鎧から抜けると、クレアの胸の谷間には赤いシミが残っているだけだった。先ほどまでの怯えきった表情がそれに重なり、クレアの罪の意識を酷く突き刺す。
 だが、それと同時に。
 残酷な快楽、その衝動が身体の中を激しく駆け回るのを感じた。クレアの中の、クレアではない何かが、もっとそれを求めている。
 故にクレアは何も応えられず、唇を噛んでただじっとバハムートの紅い瞳を見つめ返すのみ。
 優しい理性に覆われているとは言え、その実体はやはり龍。これは後もう一押しで簡単に堕ちる。
 バハムートはのろのろと走る路面電車を捕まえて、口に咥え込んだ。けれど、別にこれをそのまま挿入しようというわけではない。別方向の欲求に訴えようとしたのである。
 全高3.7メートルの車両をもごもごと咥えたまま、バハムートはクレアに顔を近づけた。当然その中には、逃げ遅れた人間達が……主にバハムートが集めてきた少女達が乗車中だ。
 龍の主食は鉱物。そして列車を構成する部品もその多くは鉱物たる金属であった。こと食いしん坊のクレアにとって、精錬された鉄で出来た列車は耐え難いほどの誘惑。
 故にクレアはそれを拒まなかった。柔らかな唇が路面電車にキスをし、そして電車はそのまま唇を押しのけてクレアの口の中に呑まれていく。
 列車の中で慌てふためく命の気配。それを分かっていながらにして、クレアの前歯は列車を裂いた。口の中で一層強くなる悲鳴。その悲鳴ごと、彼女の奥歯は電車の車体を噛み潰してしまう。
 じわりと広がる血の味、鉄の味。
 一口、もう一口。次第に近づいていくバハムートとクレアの唇。いよいよそれがくっつきそうになる頃には、クレアもすかりその気になっていたのだろう。バハムートの咥えていた部分までぐいと引っ張って自分の口の中に入れてしまった。最後の最後までどうにか頑張って耐えていた人間達が、スクラップと共に口の中に落ちてくる。
 そして、それに続いてクレアの口腔に侵入してきたのはバハムートの暖かい舌。クレアの舌を愛おしそうに抱きしめて、人間達を磨り潰しての濃厚なキスを交わす。
 二人の唇が離れ、ツゥと赤い糸を引くその頃には、クレアの瞳に涙はなかった。まるでスイッチが切り替わったかのよう。その瞳には優しさの面影はなく、冷たく残酷な光を灯した龍の瞳へと変貌していた。
「ふふっ……バハムートちゃん……」
 クレアは赤レンガの倉庫を手の下に押し潰して起き上がり、騎乗するバハムートの頬をそっと撫でた。その顔は既に残酷な快楽を求め暴走するメスの龍。
「クレアちゃん……やっとその気になってくれたのね」
 そう言いつつも、バハムートはクレアの変貌振りに若干気圧されていた。始めて出会った時と同じあの氷の瞳。同じ龍でありながら、視線から伝わる莫大な魔力に格の違いを感じずにはいられない。
「うん……気持ちいいコト、しよ?」
 ぐい、と押されるバハムートの身体。同じ100倍級の龍とはいえ、体躯の大きなクレアの力に抗うことも出来ず、バハムートはそのまま後ろに倒れこんだ。赤レンガの洋小屋が並び立つ美しい通りに巻き起こされる、大地の津波。堅牢そうなレンガの家は積み木が崩れるように砕け、路傍のガス灯が力なくふやりと歪んで折れ曲がる。
 クレアはバハムートのお尻の下から、脚を引き抜いて立ち上がった。彼女のむっちりとした太股にくっついていた瓦礫が重力に負けて雨のように降り注ぐ。
「えっと……その、優しくしてよね?」
 限界まで身体のサイズを縮めても、バハムートより26メートル大きいクレア。彼女がその気になったら、バハムートのことなどどうする事だって出来てしまう。
「うん、大丈夫だよ。ちゃんと気持ちよくしてあげる」
 幸いにして、クレアにとってバハムートは敵でもなく、獲物でもなかった。これから一緒に気持ちよくなるためのパートナーなのだ。
 クレアはバハムートのハイヒールを脱がせ、既にぐしゃりと崩れた倉庫の上に並べて置いた。木とレンガで作られた倉庫がその過積載に耐えられるはずもなく、ハイヒールはその自重だけで小屋を押し潰して入れ替わる。
 次いで、クレアはバハムートのオーバーニーソックスに指をかけた。夜そのもののような美しく上品な黒、その下から現れる客星の白。か細く可憐な少女の脚が壊れた街の瓦礫を押しのけ白日の下に眩しく輝く。
 クレアは彼女のオーバーニーソックスを手に、きょろきょろと辺りを見廻した。バハムートの襲来に慣れた人間とあってか、逃げるのが早い。手が届きそうな範囲に残っているものは皆無、おそらく建物の中もであろう。建物の中に隠れたところでその建物ごと押し潰されてしまっては仕方がない。
 仕方がないので、クレアは膝立ちのままずるずると歩き出した。オーバーニーブーツに覆われた膝が、レンガや石で作られた見事な建築を突き崩し、朦々と砂塵を巻き上げて押し進む。まるで戦車よろしく立ち塞がる全てを破砕し、彼女の通った後には見事なまでの更地しか残らない。
 道なりに逃げる事しかできない人間とは違って、クレアは何もかもを押し潰して一直線に彼らに迫る。故に彼女がのろまな人間達に追いつくことは何の苦でもありはしなかった。
「ふふっ、追いついちゃった。ごめんね、後できっとバハムートちゃんが治してくれるから……今は私達を気持ちよくしてくれるかな?」
 クレアは逃げ惑う人々をその巨大な手で追いかけ、潰さないように気をつけてそっと持ち上げた。そして手にしたバハムートのオーバーニーソックスの中に放り込んで行く。
 街灯を押し倒し、張り巡らされた路面電車の架線を引きちぎって、それ自体が怪物と見紛うほどのクレアの手が暴挙の限りを尽くす。車の中に人間が隠れているな、と思ったらその車の上に拳を翳し、容赦なく叩き潰した。馬のない馬車のような古式で美しい自動車が、巨大なプレス機によって一瞬でスクラップに変わる。ころころと転がる車輪が、今や鉄板と成り果てた車の実在を確かに物語っていた。そしてもう一度振り上げる手。人間達を乗り物から引き摺り下ろすにはそれで十分であった。青ざめる人間達とは対照的に、晴れやかな笑顔でその人間達をかき集めるクレア。可愛らしいのに、やっている事はとても恐ろしく。そのギャップが人間達の感性を酷く逆撫でする。
 程なくして、クレアの手にしたオーバーニーソックスにはそれぞれ100人ずつ程の人間達が囚われる事となった。その全てが、バハムートが見繕ってきたお気に入りの少女達。そんな可愛らしい少女達をこれから消費してしまうんだと考えると、裏返った快感がじわりと染みる。
「お待たせ、バハムートちゃん」
 満面の笑みで獲物を持ち帰ったクレアがこれから何をするのかは明白であった。バハムートの可愛らしい足にその靴下を履かせるのだ。
 けれど、クレアはそれだけでは勿論満足しない。
「ねぇ、片方借りてもいいかなぁ?」
「え? 別にいいけど……」
 言うが早いが、彼女はオーバーニーブーツから踵を引いて足をブンブンと振る。じっとりと湿ったブーツの筒が名残惜しそうに彼女の脚から離れると、瑞々しく柔らかいクレアの脚が、登場の代償となった町の上に踏み下ろされた。彼女はブーツの下に靴下を履かない。彼女の親友であり育ての親でもあるキアラがそうだから、それを真似たに過ぎないのだが。
 クレアはわざわざ、まだ壊れていない区画に腰を下ろしてバハムートと向き合った。バハムートも彼女がどうするつもりかおおよそ分かっていたのだろう、彼女の足は靴下に収まってこそいたが、中に人間はまだ無事であるらしい。彼女の足裏と布地の間で人型のふくらみが苦しそうにもぞもぞしているのが見て取れる。
 遅れて靴下を履くクレア。彼女の体格では少しきつい靴下が汗で微かに湿った脹脛をぴっちりと覆う。ぐいぐいと脚を押し込む度に重なる悲鳴が耳に楽しいのだろうか、クレアはわざとゆっくり、味わうように靴下を上げていった。
 靴下を履きかけた脚を気まぐれに上げてみる。クレアにとってはたったそれだけの動きだったが、中に囚われた少女達にとってはたまったものではない。塔のような脚が持ち上がれば、彼女達は一気に数十メートルも引っ張り上げられ強力な重力に叩き伏せられる。殺人的な加速に締め付けられる肺、必死で吸い込む空気。クレアの汗にじっとりと重く湿ったそれは肺胞を刺激した。咽返る間もなく、今度は反転した引力に引っ張られて、少女達はクレアの柔らかな足裏に落下。死にはしないが、活きた心地は皆無だった。
 そしてクレアはオーバーニーソックスをさらにぎゅっと引っ張り、いよいよしっかりと履くに至った。彼女の指が靴下を離れると、きついゴムが彼女の腿を色っぽく締め付けた。
「ひやぅっ、靴下の中でちっちゃい女の子たちが暴れて……とっても気持ちいいよぉ……」
 頬を紅潮させ眉をハの字に、とてもとても気持ちよさそうに身悶えるクレア。バハムートはそんな彼女を少し羨ましく思った。今まで散々人間達を踏み潰してきたバハムートと違って、クレアの足の裏はとても敏感なのだ。
「バハムートちゃん……来て」
 既に骨抜きと言った様子でふにゃふにゃと紡ぐクレア。その足の裏に、バハムートは自分の足を重ねる。
「温かい……」
 バハムートはその柔らかで暖かな感触に、心がとろけそうになるのを感じた。さっきまで靴下を脱いでいたため冷たく冷えた足の裏に、クレアのそれがとても心地いい。
 そしてそれに追い討ちをかけるように、圧されてもがく少女達が足の裏をくすぐる。踏み慣れたバハムートとて、この快感にはさすがに耐えかね甘やかな喘ぎ声を漏らした。
 バハムートでさえこれなのだ。クレアの反応はもはや足の裏をくすぐられたそれとはとても思えないものだった。
「んっ……っ、はぁ、はぁっ……」
 既に息は荒く、全身を駆け巡る電撃のような激しい快楽をこらえることもままならず身を捩る。快感をどうにか御そうと指を噛み、しかし対の右手はさらなる快楽を求めてパレオをめくり下着をずらして中をまさぐる。まさに発情、と言う言葉が相応しいほどにまで乱れていた。
 そんな彼女の足が、指を折り曲げてバハムートの小柄な足をぎゅっと抱きしめる。
 折り重なる二人の声。プチプチと潰える少女達の感触が二匹の龍を同時に喘がせ、空に千切れた綿雲を作った。
 もはや言葉を紡ぐ事すら叶わず、脳天を貫く激しい快感に声を上げる白龍の少女。その淫らな轟きが大気を渡り、バハムートの玩具たるこの街の隅々までを震撼させそう遠くない終末を知らせる。
 互いを確かめ合うように足の裏を擦り合わせ、かつて少女だったぬめりが残るのみとなったと知ると、クレアは立ち上がりバハムートに馬乗りになった。
「ごめん、もう我慢できないっ!!」
 バハムートが答える前に、クレアはバハムートの唇に自分の唇を重ねた。巨大な圧力に溶け合う二人の唇。
「っ……!? むー、むーっ!!」
 バハムートが慌ててクレアを引き剥がそうとする。別に、今更キス程度で驚いたわけではない。クレアの唇を通して莫大な魔力が流れ込んでくるのだ。体内に入り込み大暴れする凶暴な魔力。バハムートの身体の容量を超えてもなお、水圧に任せるかのようになだれ込んで来る。
「ぷっ……はぁ」
 クレアが口を離す頃には、バハムートの身体は既に変化を始めていた。少しも身体を動かしていないはずなのに、ノースリーブのドレス、そのむき出しの肩が8階建てのビルを押し潰したのが分かる。
「一緒に、大きくなろう?」
 にっこりと笑うクレア。対するバハムートは、クレアの魔力に体中を犯されて喘ぐ事すら精一杯だった。別に、苦しくはない。むしろその逆、気持ちよすぎてどうにかなってしまいそうなのだ。
 むくむくと大きくなっていく2匹。横たわる太股が、脹脛が、腕が、肩が、街を押し潰して大きく大きく。
 バハムートに同期して、普段小さく縮小してる身体の束縛を解くクレア。高まる鼓動に溢れ出る媚声。
「っ……大きくなるって、こんなに気持ちいいんだね……」
 巨大化がひと段落し、ようやっと声を取り戻したバハムートがクレアの頬を撫でてうっとりと紡いだ。持ちあがった腕が引きずる瓦礫に混じる自動車が、今の自分の大きさを教えてくれる。およそ人間の5000倍、クレアの本来の大きさだ。
「えへへ、分かってくれた? 私がするたびにあんなに大きくなっちゃうの……」
 クレアは言いつつ、殆ど押し潰されてしまった町の中から、辛うじて無事だった区画を根こそぎ掬い取る。10階建て程度の中層ビルがいくつも並ぶレトロな並びがまるごと、彼女の手に収まってしまった。
 そして一旦身を起こし、巨大化の快感でビクビクしているバハムートのスカートをめくり上げた。黒いレースの可愛らしい……しかし小さな町なら覆えてしまうほどの下着をずり下ろし、手にした区画を秘所に容赦なく突っ込む。
「きゃぁっ!? ぁ……クレアちゃ……んっ!!」
 まだ数百人が逃げ惑っていたであろうそのブロックを丸ごと飲み込み、バハムートの秘所は膣厚でそれを咀嚼する。膣の中で崩れ去り弾ける建物の感触、そして人間。巨大化したばかりの快楽の渦の中、そこに追い打つように畳み掛ける快感の波にバハムートは再び言葉を失う。
 けれど、クレアの攻め手はそれだけに終わらなかった。再びバハムートに圧し掛かり、人間にはないもの……つまり尻尾を器用に操って彼女の秘所にねじ込んだのだ。
「!!!!」
 一瞬駆け抜ける鋭い痛みに涙を浮かべるバハムート。けれども、その瞳はすぐに快楽にとろける事となった。いつもの凛としてお高く纏まった雰囲気はどこへやら、クレアの尻尾が膣内をかき混ぜ人間を膣壁に擦り付けて押し潰す度に息も荒く喘ぎに喘ぐ。
 しかしやられっぱなしと言うのは、バハムート的にはあり得ない。彼女は反撃するようにクレアのパレオを解き、下着をずり下ろしてその可愛らしい秘所に自分の尻尾を突っ込んだ。
「ひぁっ!! いい、凄くいいよバハムートちゃん……っ!!」
 バハムートの尻尾が陰唇を押し広げ、クレアの中にずぶずぶと飲み込まれていく。そこでバハムートは、クレアの膣内にも街が閉じ込められているのを知った。バハムートが巨大化に喘いでいる間に済ませていた……もとより反撃される予定だったのだろう。ならば遠慮は無用。
 快楽に痺れる身体をどうにか動かし、バハムートは適当に街を掴み取った。がらがらと手の中で崩れ形を失いかけるのも構わず、クレアの胸当てをぐいと押し下げそこに突っ込む。
「ふぇっ? っぁ……乳首でちっちゃい建物が沢山つぶれてるっ……!!」
 こそばゆい快感と、バハムートに犯される直接的な快感に負けて、クレアはどさりと力なくその身を預けた。もうそろそろ限界だ。けれどそれでも、バハムートの攻め手は止まない。
 それはクレアにとっては想定外のことだった。自分一人なら、危なくなったら手を止める事だってできる。けれど相手がいる時は違うんだと、当たり前のことを思い知らされたのだ。
「あっ、あっ、あぁっ、やめ……ばはむーとちゃん、だ、だめっ……」
 どうにかしようと、バハムートの膣に突っ込んだ尻尾を動かすも、快感に骨抜きにされたクレアはろくに動かす事などままならず。
 奥の奥まで入り込んで、人間を押し潰すバハムートの尻尾。そのプチプチと潰える感覚が、いよいよ彼女を絶頂へと消化させた。
 自分の声だろうか、掠れた叫びを遠く聞き、一瞬遠のく意識。快感に解き放たれたクレアは力なく崩れて目を閉じた。
 気がつけば、クレアのむっちりとした柔らかな太股を温かな水が下っているところであった。



 月が天高く輝く夜半。クレアの町に色っぽい喘ぎ声が轟き渡る。それも1匹ではなく2匹分の声が。
 ずしーん、どしーんと激しく揺れる大地。それを巻き起こしているのは当然ながら絡み合う2匹の龍だった。
「クレアちゃん……」
「バハムートちゃん、もっと、もっとして……っ!!」
 山を枕に、超巨大なクレアが求めれば、それに応じるバハムートが雲を散らしてキスで応える。二人のサイズ、実に1万倍。燃え上がる二匹を止められる者などもはやなく。
 こうして、バハムートによるクレアの性欲処理は事態の悪化を招いたのみに終わったのであった。めでたし、めでたし?


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割とどうでもいい話
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白龍少女の世界の地理の話。

クレアの町
大陸東部にぽつんと存在する小さな町。村と呼ぶには少し大きい程度で、見る人によっては村とも。周囲を樹海で囲まれており、一般的に秘境と認識されるレベルで周りに何もない。クレアの力を恐れてか、単に樹海を切り開くのが面倒なのか付近に国はなく、隣国とも100km近く離れている。
 昔はちゃんと食糧は自給していたのだが、クレアが来てからは彼女がよく畑を踏み潰してしまうため農業が出来なくなり今に至る。その代わりクレアの髪の毛やら、伸びて切った爪やらがえらい高価で売れるため食料は週1でやってくる交易船から得ている。
素材をそのまま売ることもあれば、武器やら防具やらに加工して売ることもあり。
また、龍は鉱石を食べて粘土を排出するためそれを焼き固めたレンガも輸出品となる。
 自給が出来ていないにもかかわらず不利な取引条件とならないのは偏にクレアの存在が恐ろしいからであった。クレアはただそこに居るだけで貴重な財源となるのだ。

バハムートの玩具の町
 バハムート帝国領内の東端に残された旧い炭鉱の町で、炭鉱の閉鎖以降はすっかり人がいなくなった空っぽの町だった。そのため近代化時代の名残を強く残している。それを再建し、彼女のお気に入りの人間達を集めたのが現在の姿。少女が多いが、それ以外もそこそこいる。町の臣民達からは恐れられつつも、信頼はされているらしく逃げ出すものは多くない。バハムートの不機嫌やアレを一手に背負う町である。

神聖バハムート帝国
 大陸西部の国家を強引に統合し誕生した巨大帝国。魔法技術に優れ、強大な軍事力を持つ。臣民の多くはバハムートに踏み潰された事があるため彼女を大変畏怖している。昔から小競り合いの絶えない地域であったため、バハムートという愛らしくも強力な支配者の登場によってとりあえず訪れた平和を歓迎する人間も多い。
 君主寄りの立憲君主制を取っており、議会にて作成された法案や政策をバハムートが承認する形で運営されている。司法に関してはバハムートから委任された裁判所が行う。軍の指揮権は完全にバハムートのものとして独立しており法の束縛を一切受けない。というか、帝国全ての軍事力よりバハムート本人のほうが強いため束縛できない。