部室の床に無造作に置かれていた消臭袋は、そのブヨブヨとした形状を維持したまま、少女の手で持ち上げられていた。
「ん?これ置いてるときには気付かなかったけど、底板みたいのも入ってるのか。」
「そうそう!さっき足で触ったときに分かったけど、消臭剤がコロコロ転がらないようにそこに固定されてるみたい!」
「へぇー・・・」
男がハリツケにされている地面が、まるで船上のようにグラグラと揺れ動く。
仰向けに固定されたまま不規則な揺れを受け続けたものの、不思議と酔うような気持ち悪さは感じられなかった。
これもあの女の手によって良いように改造された、この身体の恩恵だろうか。
「ま、あたしは足のにおいはそこまで気にならないから、こっちのにおいを取ってもらおうかな・・・っと。」
最初に消臭袋を利用した少女のムスッとした顔を横目に見ながら、もう一人の少女がその手に持った袋を自らの"腋"へと近づける。
ノースリーブのシャツを着た少女の腕の根元には、毛一本無いキチンと処理がされた生腋が広がっていた。
先ほどの足裏と比べ、腋は人体の中でもかなり敏感な部位である。
部活直後の火照った腋が袋に触れたとき、少女はわずかな嬌声を発するとともにピクリと身体を震わせた。
その扇情的な光景は、もし男が見ることができれば、倫理観など捨てて野獣のように襲い掛かってしまうほどの美しさであった。
しかし、男がその目に映すことができるのは、少女の肉体のごく僅かな一部のみ。
天井を覆う布地が、ミリミリと音を立てながら少女の腋をかたどり広がり始める。
―――と、次の瞬間。伸びきった天井はズボリという音とともに、少女の腋をこの狭い密室へと引き入れた。
目の前一面に広がる肌色の峡谷。
触れずとも感じられるそのしっとりとした質感は、改めてそれが人の身体の一部であることを男に認識させる。
加えて、これが少女の腋であることを証明するかのような強烈なにおい。
先ほどの足裏から発せられていたにおいよりは、幾分マシに感じられるものの、そのにおいは男の鼻を容赦なく貫いた。
使い古されたシューズやソックスの臭いも含んでいた足裏のにおいとは異なる、純粋に少女の腋汗のみで熟成されたにおい。
鼻が曲がりそうなにおいの中に感じられる、どこか性的で甘酸っぱい香りに、男の身体は無意識の内に興奮していた。
その興奮は男の股間へと集まり、ハリツケにされた身体に反して自己主張するようにペニスを直立させる。
逝きたい・・・
におい責めを繰り返される男の身体は、再び快楽を求め始めた。
足、腋と強烈なにおいを浴びるように受けた男は徐々に狂い始めていたのだ。
しかし、股間に手を伸ばそうとする男の腕は、無機質な音を立てて金属製の拘束具に阻まれてしまう。
先ほどは、押し付けられる足裏から直接的な刺激を得ることで、男はその欲望を吐き出すことができていた。
今回は脳を焼かれ、自慰を行おうとしてもそれすら許されない生殺し状態。
まるでそんな状況をあざ笑うかのように、少女の腋は男を狂わせるフェロモンを止め処なく発し続けた。
「んー・・・においが取れていってるのか分かりにくいなー・・・」
「たしかにわたしの時も『取れてってるー!』って感じはしなかったからね~」
「もうちょっと力を入れて挟んでみたらどうかしら?」
「そうですねー・・・えいっ!」
隣で様子を見ていた部長の提案を採用した少女は、その引き締まった二の腕に少しだけ力を込めた。
挟み込む力を強めたことにより、袋の中、つまり男のいる空間を少女の腋が侵食する。
間近に近づく巨大な腋から発せられるにおいは、より濃厚なものとなり、男の興奮は最高潮に達した。
逝きたい…! 逝きたい…!! 逝きたい…!!! 逝きたい!!!!
手を伸ばせば触れられるほどの距離に、少女の蠱惑的な肉体が寄せられるも、男は決してそれに触れることができない。
我慢汁をだらだらと垂らすペニスを前に、男は身体が引きちぎれそうな勢いで股間への直接的な刺激を求める。
もはや理性のタガが外れ、男の精神が壊れるのも時間の問題に思えた。
そんな男の身に、目の前の峡谷から、全身を覆うほど巨大な水のしずくがバシャリと降り注ぐ。
目の前に広がる健康的な腋の谷間で凝縮された、少女の腋汗エキスだ。
逝きたいという思考しかできなくなった男はそんなことなど露知らず、その濃厚なエキスを嚥下してしまった。
途端、ビリビリと焼けるような刺激が口、喉、そして胃へと順に流れ込み、男の全身を震え上げさせた。
続けて全身に拡散した刺激が、快感を伝える電気信号となり、男の脳へと津波のように流れ込む。
甘酸っぱい電流が一斉に脳へと到達し、処理しきれない量の快感を受けた脳は完全にショート。
次の瞬間、男は一度たりともペニスに触れること無く、限界まで溜め込んだ精を目の前の空間へと放出したのであった。
「ぼちぼちかなぁー・・・っと」
極限状態で射精し疲労困憊の男の前から、見計らったように少女の腋が袋の外へと遠ざかっていった。
直接的な責め苦は無くなったもののその爪跡は大きく、事実、少女の腋汗は男の身体を床に滴るほどの水量でグッショリと湿らせていた。
全身を湿らせる腋汗とそこから発せられるにおいから、男はまるであの巨大な腋に挟み込まれているような感覚を覚え、射精したばかりの男のペニスは再びその硬さを取り戻しつつあった。
「・・・うん!ウワサに違わず良い感じに消臭してくれてるねぇ♪」
満足そうな少女の声が聞こえ、ビクンと男はその身を震わせる。
男の身体はそんな少女の声の振動にすら反応してしまうほど、敏感な身体になってしまったのだ。
これ以上においを浴びせられたら、本当におかしくなってしまう・・・!
粉々に砕けてしまったように思えた男の精神だったが、人としての尊厳を失いたくないという、わずかな理性だけは残されていた。
心さえ折られなければ、何とかここから逃げ出す方法が見つけ出せるはず。
親指ほどの大きさに縮められた男には、そんな根拠の無い小さな小さな希望に賭けるほか無かったのだ。
しかし、巨大な少女はそんなちっぽけな希望など、いとも簡単に砕いてしまう。
「さぁーて、そんじゃあ続けて左腋もお願いしちゃおうかな♪」
先ほど見た光景がデジャヴのように、再び男の目の前へと広がる。
異なる点は左右が反転していること。ただそれだけ。
それ以外のすべてがもう一度繰り返される現実に、男の心は粉々に砕かれてしまった。
*
『・・・マイクテスト、マイクテスト。本日は晴天なりー。ところにより腋汗による濃霧でしょー・・・なんちゃって♪』
男の脳内に三度、あの忌々しい女の声が響き渡る。
時間にすれば、最初の足裏によるにおい責めから十数分後。
そのわずか十数分の間で、男は数えきれない程射精していた。
特に2人目の少女に代わってからの射精は、すべて直接ペニスに触れることなく、においや汗によるもの。
一度心が砕けてしまってからは簡単で、それらを身体に取り込む度、自分の意識とは無関係に射精を繰り返した。
計四度目の射精の時点で男は、「助かりたい」ではなく「早く殺して欲しい」と考えるようになってしまった。
『うん♪ 良~い感じに仕上がってきてますねぇ・・・♪
サービスでその身体はいくらでも射精できるようにしておいたんですが・・・どうですか?まだまだ頑張れそうですか?』
男は首を横に振ろうとするも、痺れ続ける脳と消耗し切った肉体には、それすらも困難な動作であった。
それでもわずかに動いた男の身体は、少女の汗にまみれ、ヌチャリと嫌な音を立てながら地面と擦れ合った。
『あらあら♪ 体の外も中も女の子の腋汗でベットベト・・・まるで腋汗のプールで溺れちゃったみたいですねぇ♪ 』
ゴフッ・・と男が咳き込むとその口からは少女の汗が流れ出した。
大量に胃へと流し込まれた少女の腋汗が逆流し、そのたびに男の口腔を、鼻腔を犯し続ける。
少女の腋が去った今も、男は少女の腋に挟み込まれる錯覚を感じ続けているのだ。
『んー・・・完全に壊れちゃったら面白くないですしねぇ・・・。
・・・そうだ!ここまで頑張ったアナタに、ひとつだけ"チャンス"をあげちゃいます!』
チャンス・・・?
男の身体を縮め、この仄暗い地獄へと突き落とした元凶から出された、まさかの提案。
男はボロボロになった身体に鞭を打ち、続く言葉を聞き漏らすまいと神経を集中させた。
『これから3人目の女の子、部長って呼ばれてた子がこの消臭袋を使っちゃいます。
そこでアナタはその子の消臭が終わるまで、"一度も射精しないこと"。
たったそれだけのことを達成できれば、晴れてアナタは自由の身! パチパチパチ~♪』
地獄へ垂らされた、か細き一本の希望の糸。
それが悪魔の垂らす糸だと分かっていながらも、今の男にはその希望の糸にすがらざるを得なかった。
やってやろうじゃないか・・・!
周りを支配する鈍重な空気を振り払うように、一度は砕けてしまった心を、男は再び奮い立たせる。
『あら? どうやら少しはやる気になったみたいですねぇ♪
ただやる気だけで何とかなる世界なら、消臭袋なんてものもいらないんですけど・・・♪
ま、せいぜい頑張ってみてくださいね~♪』
女の声が聞こえなくなる。
壁の向こうの少女たちは、最後のひとり、部長と呼ばれた少女が、消臭袋を使う準備を終えたようであった。
どうやら再びどこか平らな場所へと、この袋は置き直されたようだ。
「そう言えば部長はどこのにおいを取ってもらうんですか?」
「う~ん・・・私も足とか腋のにおいは気になってるんだけど、やっぱり・・・"ココ"かな♪」
「おぉ~!さすが部長!大胆ですねぇ~♪」
少女たちのはしゃぐ声が袋内にも響き渡る。
足裏、腋、悪臭と呼べるにおいを男は耐え切った。
また、先の二回と違い覚悟を決めた男には、最後の責め苦にも耐える自信があった。
ギシギシと今までに無い音を立てながら、一際大きく歪み始める天井。
耐えてみせる。
男は自分に言い聞かせるように、頭の中でその言葉を反芻した。
ズボッという音とともに、天井が一面すべて開かれる。
開け放たれた天井。その先には大きな肌色の双球と、その間を沿うように張られた薄手の布地が広がっていた。
*
「部長のその下着、すっごいオシャレで大人びてますよねぇ・・・。」
「ウフフ、ありがと♪ 近くのお店で買ったものだから、また今度一緒にお買い物行きましょうか♪」
「お、そんじゃアタシも一緒に行って良いですか?」
「もちろんよ♪ ・・・それにしてもコレ、座り心地もなかなか良いわねぇ・・・。」
ブルマを脱ぎ去り、下着一枚だけ下半身に残した状態の少女は、長椅子に腰掛けながらそう呟いた。
腰掛けながら、といっても少女の臀部は直接長椅子には触れず、僅かに浮いている。
そう。少女は例の消臭袋を、自らの股間と長椅子の間で押しつぶすような形に置いたのだ。
「激しい運動をしたあとなんかは、特に蒸れちゃって・・・ね?」
やはり仲の良い女子同士とはいえ、股間のにおいが気になる、と宣言することは恥ずかしいのだろう。
頬を紅潮させた少女は、周りに同意を求めるよう呟きながら、消臭袋の上でゆったりと動き始めた。
少女が身に着ける濃紫の下着は、上品なレースで装飾されたクロッチ部分を、消臭袋にがっぷりと咥え込まれている。
本人にすら見えなくなった、その最もデリケートな部位が、たったひとりの男の目の前に暴力的なにおいを放ちながら鎮座していた。
この三度目の責め苦が始まって間もなく、男の股間ははち切れんばかりに勃起し、その身体はガクガクと痙攣を始めた。
汗。尿。そして愛液。少女から発せられるそれら体液が、下着という密閉された空間で混ざり、蒸らされた淫臭。
先ほどまで浴びせ続けられていたにおいを、すべて凝縮したかのような激臭に男はこれまで以上に悶え苦しむ。
「それにしても何だか部長、エロティックですねぇ・・・♪」
「確かに・・・。なんていうか騎乗位でヤッてるみたいだよな・・・。」
「な、何言ってるのよ!!」
不意に下ネタを振られた少女は、ギシギシと音を立てていた動きを止め、耳の先まで真っ赤に染めながら抗議した。
動きの止まった少女の股間が、男の眼前にハッキリと映し出される。
女子高生の蒸れた股間による顔面騎乗、いや全身騎乗とも言えるこの状況。
度重なるにおいによる快楽責めを受けた男にとって、いつ狂ったように射精してしまってもおかしくはない。
皮肉にも、この責め苦の元凶の言葉を支えに、男は射精を耐え続けているのだ。
ふと、その巨大な下着の中心、少女の女性器を包む布地にジワリと新しいシミが生まれた。
ふたりの少女から囃され、否定してはいるものの、この下着のヌシはやはり頭の中でイメージしてしまっているのだろう。
溢れ出す愛液を受け止める下着は、そのにおいをより濃くしながらシミを広げ続ける。
しかし、今の男にはそんな目の前の変化に気づく余裕すら無かった。
袋内はムワリと雌の匂いが一層濃くなった空気に包まれ、目の前の下着の中に放り込まれたかのような錯覚に陥る。
あと少し・・・!あと少しだけ耐えれば・・・!
無論、ゴールなど少女の気分次第でいつになるか分からない。消臭が終わったと少女が感じるまで終わらないのだ。
それにあの悪魔が約束を反故にすることだって十分考えられる。
それでも男にはただひたすらこの地獄を耐え続けるしか、選択肢が残されていなかった。
自分のほかには巨大な少女の股間だけ。そんな異常な空間で、ただただ時間が早く過ぎることを男は祈る。
3人目の少女の消臭開始から数分。
男の祈りが通じたのか、はたまた少女の気まぐれか、射精を耐える男の耳に少女たちの声が聞こえる。
「さて・・・そろそろかしらね・・・。」
「そうですね~。私たちも大体これくらいの時間で消臭できてましたし!」
「そうね・・・。それじゃあ―――」
少女たちの会話を聞いた男は歓喜した。この地獄がとうとう終わりを告げるのだ。
もちろん自由の身になれるなんて約束を、あの悪魔が守らず助からない可能性だってある。
それでも男はヤツとの賭けに勝って一矢報いてやった、という事実だけでもう充分であった。
ズズズ・・・と音を立てながら、目の前スレスレにまで近づいていた少女の股間がゆっくりと離れていく。
この空間が再び男一人だけになるまで、残り数センチ。
数センチだけ股間を袋内に入れた状態で、少女の動きがピタリと止まった。
「んっ・・・」
動きを止めた少女がほんの少しだけあげた喘ぎ声に、男の頭には疑問符が浮かぶ。
その疑問符が浮かぶのとほぼ同時。
袋の中には暴風が吹き荒れ、男の意識はそこで途絶えてしまった。
*
『はろはろーん♪っと・・・まーた、すんごいことになっちゃってますねぇ♪』
少女の股間が引き抜かれ、消臭袋の中ひとりきりになった男の脳内に、例のごとく声が響き渡る。
袋内に取り残された男は、その声に反応することなく、ビクビクと震えながら"射精"を繰り返していた。
『惜しかったですねぇ♪ まさか部長さんがあんなタイミングで、オ・ナ・ラをしちゃうなんて♪
いや~勝負は最後の最後まで分からないって、こういうことを言うんですねぇ♪』
男の意識が途切れたあの時。少女は消臭袋の中にオナラを放ったのだ。
男と同サイズ程の肛門から放たれる膨大な量のガス。
少女の体内で生成されたそのガスは、ひどく腐敗した臭いを発しながら一瞬で袋内を支配した。
ガスが放たれた際の衝撃で一度男は気絶したものの、その強烈な臭いですぐに覚醒させられていた。
『一回気絶から覚めた後が凄かったですよ~♪
オナラの臭いで射精しちゃって・・・♪ 射精の気持ち良さで気絶しちゃったかと思えば、またオナラの臭いで起こされて・・・♪
壊れたオモチャみたいにずぅっと射精を繰り返す様子は、見ててすっごく面白かったです♪』
女が話を続ける間にも、男は射精を続ける。
その眼からは一切生気が感じられず、においを嗅いで射精をする。快楽を求め、ただそれだけの動作をする道具に成り下がっていた。
『私との勝負には負けちゃったんで、一生そこから出ることは叶いませんが・・・。
まぁオナラの臭いで射精しちゃう変態さんにとっては、天国みたいなものですからいいですよね♪』
一生出られない、という言葉に反応してか男のペニスがピクリと脈打つ。
『アハ・・・♪ 喜んでもらえて何よりです♪
・・・あぁ、あと言ってましたけど当社の製品は耐久性も一級品ですからねぇ♪
ざっと100年はどんな無茶な使い方しても死ねませんから、ご安心を・・・♪』
死ぬことさえ許されないという事実に、男はブルリと身体を震わせ、一際大きく射精した。
『うふふ・・・おや?さっきの女の子たちが、他の部員たちも連れてきたみたいですよ♪
ひぃふぅみぃ・・・あらあら♪ 先ほど以上に消臭袋としてお仕事頑張らないとダメみたいですね♪
それじゃあ存分に第二の人生、楽しんじゃってください♪』
その言葉を最後に、脳内へ響いていた女の声は二度と聞こえなくなってしまった。
ガヤガヤと遠くの方から、女子高生たちのはしゃぐ声が聞こえてくる・・・。
とある女子高のとある運動部の備品として購入された「消臭袋」。
誰にも知られることなく、その中に幽閉された男は、今も延々と女子高生の蒸れたにおいを嗅ぎ続けている。