――ひとりの若き勇者が魔王を討ち取った。


 はるか遠い昔から、世界に蔓延る魔物たちを統べ、絶対的な力を以て君臨していた『魔王』という存在。

 人々を畏怖させ続けてきたその魔王が討たれたという噂は、瞬く間に世界中へと広まった。

 そしてその噂を裏付けるかのように、年々魔物たちの数は減少し、人々の生活にも平和が戻りつつあった。


 ……しかし、平和の影には必ずいくつかの闇が潜んでいるものである。

 これは魔王亡き世界に生きる、ひとりの青年の物語。




 ***




 鬱蒼と木々が生い茂る森の中。日の光はまばらにしか届かず、辺りには動物たちの鳴き声がこだまする。

 そんな幻想的な空間に、ガサガサと音を立てながら割って入る人影がひとつ……。


 「……くそっ、完全に迷ってしまった。」


 草木をかき分け顔を出した彼は、今は少なくなった『冒険者』という職に就く青年であった。

 魔王が討伐されてからというもの、『冒険者』を名乗るものはすっかり数を減らしていた。

 それもそのはず。元々この世界の『冒険者』とは、魔王を討ち取り真の勇者を目指すものを指す職業で、いわば見習い勇者のような存在である。

 しかし魔王が討たれ、彼らにとってのゴールが失われたこの世界では、各地を放浪し魔物の残党狩りをしながら細々と生計を立てる職業に成り果てていた。

 今、大きなため息をつく彼もまた、『勇者』になれなかったその他大勢の『冒険者』の一人だった。


 「しかし、この森に入ってから魔物一匹出くわさないな……。」


 流浪の旅を続ける彼は、ふと強大な魔物の気配を察知し、この森へと足を踏み入れていた。

 手配書が出ているような魔物を討伐できれば、その懸賞金でまたしばらく生活することが出来る。

 そんなことを考えていたのが、ちょうど二時間ほど前。意気揚々と森に入ったものの、魔物には一度も遭遇せず、挙句の果てには道を見失い遭難状態に陥っていた。

 魔物との戦闘が無い分体力の消耗は抑えられているが、日も沈み始め、徐々に広がる暗闇に青年は危機感を覚えていた。

 最悪、森から出ることが叶わなくとも、せめて安全な寝床を確保しなければ危険極まりない。


 「ん? あれは……。」


 彷徨う青年は生い茂る木々の隙間から、ボンヤリと辺りに広がる人工的な光を確認した。

 しめたと思った彼は、日が沈みきる前にと急ぎ足でその明りの下へと向かった。



 *



 「いやー! 助かった助かった!」


 つい数刻前、右も左も分からぬ森の中彷徨っていた青年は、ふかふかのベッドに横たわり大きく伸びをしていた。

 彼が見つけた明りの正体は、この森で暮らす人々の村から漏れた、焚き火やロウソクの光であった。

 彼は早速そこで暮らす人々に事情を説明したところ、皆見ず知らずの青年を快く受け入れ、食事や宿までタダで準備してくれたのだ。


 「とてもありがたいが、流石に何日も厄介になるわけにはいかないな……。」


 よもや遭難するかといったところでこれだけの施しを受けるのは、青年にとって願ってもいないことだった。

 しかし、いつまでも村人たちの善意に甘えるわけにもいかない。明日、日が昇るのと合わせて村を出発しよう……。


 ――コンコン。決意を固めた彼の部屋にノックの音が響き渡る。


 「こんな夜更けに一体誰だ……?」


 深夜の来訪者を不審に思いながらも、青年は上体を起こしどうぞと招き入れた。

 ゆっくりと開かれた扉の先には、齢二十にも満たないであろう、うら若き少女が真剣な表情で佇んでいた。


 「……夜分遅くに申し訳ございません。少しだけで結構ですので、私どもの話を聞いていただけませんでしょうか。」

 「何やら深刻な話のようだな……話してくれ。」

 「…………実はひと月ほど前から、この森の奥にある神聖な祠に魔物が棲み付いているのです。

  その魔物は祠に侵入した人間を、ひとり残さず喰ってしまいます。私の両親もその魔物に……。」


 少女は俯き、言葉を詰まらせる。


 魔王討伐後、統率の取れなくなった魔物たちは、思うがままに各地で人間を襲い続けていた。

 この少女も、この村も、そんな魔物たちによる被害を受けていたがために、冒険者である彼を歓迎し、村へと招き入れたのだ。


 「冒険者様……いえ、勇者様! あなた様は大変腕の立つ方だとお見受けします! どうか、私どもを凶悪な魔物の手から救っていただけませんでしょうか……!」


 少女はつぶらな瞳に涙を浮かべながら、目の前の青年へと懇願する。


 ……これまで彼が旅を続ける中で、何度も目にしてきた救いを求める人々。

 魔王が討たれた今、いくら努力しても真の勇者にはなれない。ただ、自分の手の届く距離の人たちだけでも救いたい。

 彼の胸の内に秘めた熱い思いが、自ずと目の前の少女に救いの手を差し伸べていた。



 *



 翌日、依頼を受けた少女の案内で、青年は件の祠を訪れていた。

 村からは歩いて10分程度。神聖な祠、といっていたが外から見た限りは何の変哲もないただの洞窟のように見受けられた。

 しかし村人たちにとっては神聖な場所なのだろう。青年はそう考えながら周囲を見渡した。


 「……特に魔物の気配は感じられないな。本当にココにその魔物とやらが棲み付いているのか?」

 「……かなり高位の魔物だと聞いています。気配を悟られないようにしているのかもしれません。」


 ゴクリ、と青年は生唾を飲み込む。

 気配を消すことが出来る魔物はそう多くない。必然的に非常に高い知能を持つ最高位クラスの魔物に限定される。

 ……自分一人でそんな魔物に太刀打ちできるのだろうか。

 これまで幾度となく味わってきた魔物に対する恐怖心が、彼の背筋を撫でる。


 「勇者様……父の、母の、仇をどうか……!」


 ハッと我に返った彼は、隣で深々と頭を垂れる少女に気づいた。

 ……そうだ。俺は何を臆しているのだろう。助けを求めるあの村の人々、そして目の前の彼女を救うためこの場所へ来たのではないか。


 「ああ、任せとけ……!」


 彼は穏やかな笑みを浮かべながらも、力強く彼女の声に応えた。

 どんな魔物が待ち構えていようが、恐れを捨てて全力で立ち向かう。それこそが彼自身の目指す勇者たる姿。

 自身の目指すもの、信念を思い返した彼は、その身を奮い立たせ祠の中へと歩みを進めていった。



 *



 薄暗い洞窟の中、彼は歩みを進める。

 入り口からまっすぐ続く一本道は、高さ、道幅、どちらも4、5メートルといったところだろう。

 暗視魔法をその身に纏った彼には、岩肌の質感まで手に取るようにはっきりと見えている。

 一本道が故、まず迷うことは無いが、いつ例の魔物と鉢合わせになるか分からない。

 ひりつくような緊張感をその身に感じながら、一歩、また一歩と洞窟の奥底へ向かって歩き続けた。



 ――洞窟に足を踏み入れてからおよそ5分。


 呆然と立ちすくむ彼の目の前には、巨大な岩壁が広がっていた。

 拍子抜けするほど短い時間でたどり着いた、洞窟の終着点を眺める。

 外からの光はほとんど届かず、ゴツゴツとした岩肌が人の手を加えず自然にできたものだと物語っている。

 隠れられるような場所もなく、魔物どころかネズミ一匹すらこの洞窟の中では目にしていない。


 「…………おかしい。」


 ――ふと、青年の心に小さな疑念が浮かび上がる。


 ここはあの村にとって『神聖な祠』だと言っていた。

 それなのに入り口から此処までの間、あまりに人の手が加えられていない。

 ……それに、彼女から聞いた『侵入した人間はひとり残らず喰ってしまう』という言葉。

 "ひとり残らず喰ってしまう"のであれば、その魔物の存在は誰が村へと伝えたのだ……?


 疑惑が疑惑を生み、彼の中で点と点が線で結ばれていく。

 一本に結ばれた線が行き着く先、やがてひとつの答えへと導かれていく。

 不自然なほど魔物がいない森、人の手が加えられていない洞窟、伝わるはずのない魔物の情報……。

 ……ま、まさか――!



 「……おや? どうやら気付いちゃったみたいですねー。」


 洞窟の入口側から突然聞こえてきた声に、青年は素早く振り返り臨戦態勢を取る。

 鋭い剣先の延長線上、彼の目に映ったのは――――彼に魔物討伐を依頼した少女であった。


 「……どういうことだ?」

 「いやですねー♪ もう全部気付いちゃってるんでしょう?」


 冷や汗を滲ませ問い掛ける青年に対し、少女は嘲るように笑い、問い掛け返す。


 ――そう、ここは神聖な祠でも何でもない、自然にできた只の洞穴。

 そして彼女がわざわざこんな何もない洞窟まで俺を連れてくる理由。それは――。


 「そう。魔物の話なんて嘘っぱち……♪ 本当は私の餌になってもらうために、ここへ来てもらいました♪」


 答え合わせ、といったように少女は呟くと、その姿はみるみるうちに変貌していく。

 背中からは大きな蝙蝠の羽が、頭からは捻じれた二本の角が生え、足元には尖った尻尾が自我を持ったように蠢いていた。

 暗闇と混じる混沌としたオーラを身に纏い、ふわりと甘い香りを辺りに漂わせ始める。


 「貴様……サキュバスか……!」

 「はーい♪ ご名答~♪」


 サキュバス――淫魔の彼女がパチパチと茶化すように手を叩く。

 その一挙一動は、仮に同性であっても魅了されてしまうほど、優雅で妖艶なものであった。

 そんな余裕綽々といった様子のサキュバスを目の前に、青年の緊張の糸は極限まで張りつめていた。


 先手を打たなければやられる――!


 これまでにもサキュバスとの戦闘を何度か経験していた彼は、彼女と一対一で相対する現状がどれだけ危険か熟知していた。

 剣を握る手に力を込め、輝く刃で暗闇を切り裂き速攻する――!

 ――が、彼の身体はその意志に反し、剣を構えたままの体勢でピクリとも動くことは無かった。


 「グッ……貴様、いったい何をした……!」

 「え? 何をしたかって? これだけ狭い場所だったら、私の甘~い"匂い"、そっちまで届いてますよね?

  ……アナタとっても強いみたいですし、暴れられたら困るなぁと思って、私の"匂い"にマヒ効果を付与させてもらいました♪」

 「……マヒ……だと……っ!」


 二人が向き合うは狭い洞窟の行き止まり。内部の空気はほとんど循環せず、彼女の身体から発せられる芳香は次第に濃度を増していく。

 先手を打つどうこうではない。この洞窟に入った時点で、いや昨晩彼女の依頼を受けた時点ですでに彼は詰んでいたのだ。

 目の前の淫魔に向ける鋭い眼光だけを残し、まるで石像になってしまったかのように彼の身体は硬直していく。

 辛うじて呼吸はできるが、徐々に声帯が痺れ始め、声を発することが出来なくなる。生殺与奪を握られた彼の額に、ジワリと脂汗が浮かんだ。


 「安心してください。 このままブスッと殺しちゃう、なんて野蛮なことしませんよ♪

  ただこのままだと危ないですから、もう一つ別の魔法も掛けさせてもらいますね……♪」

 「…………っ!」


 そう言うとサキュバスは、青年が耳にしたことの無い呪文を唱え始めた。 同時にいくつもの魔方陣が宙に描かれ、彼の身体を覆いつくしていく。

 さらに無抵抗の彼に追い打ちを掛けるように、暗視魔法の効果が切れ始める。

 身体がマヒしようともハッキリと目の前に捉えて続けていた淫魔の姿が、本来洞窟の中に広がる闇にゆっくりと溶け込んでいく。


 「うふふ……久々の獲物なんですから、ゆっくり、じっくり、楽しませてもらいますよ…………。」


 その声を最後に、青年の目の前は完全な闇に包まれた。



 *



 「くそっ!ここから出せ!!」


 青年の目の前には分厚いガラスが広がり、打ち付けた拳がゴンッと鈍い音を立てる。

 そこは足元から壁面まで、一面を均一なガラスで覆われ、手の届かないはるか上空に唯一の出口が存在している。

 彼は痺れる拳を力無く下ろし、この悪魔の牢獄の中うなだれた。


 ――あの時、サキュバスが彼にかけた魔法は『縮小魔法』。

 その名のとおり対象物の大きさを、術者の意図する大きさまで縮小させる高等魔法である。

 ただ、本来"生物"に対しては効果が及ばないはずの縮小魔法。縮められた彼自身もその魔法は習得し、その効果を熟知していた。

 しかし、サキュバスの唱えた呪文はそれとは似て非なるもので、知能を持つ魔物だけが使える、"生物に対しても効果の及ぶ"古代魔法だった。


 教科書には載っていないはるか古の魔法をその身に受け、完全に無力化させられた青年。

 そんな彼が今閉じ込められているのは、"小さなガラス瓶"の中であった。


 サキュバスの手により魔法を封印され、武器だけでなく装備品の一切を剥がれた彼は、生まれたままの姿でそこへ閉じ込められていた。

 一方、彼女は洞窟の中で瓶詰めにした青年を宝物のように取り扱い、村の中にある自身の家へと持ち帰っていた。


 ガチャリとドアの開く音とともに、村娘の姿に化けたサキュバスが部屋へと入る。


 「おまたせしましたー♪ ちっちゃくなってしまった気分はどうですかー?」

 「……最悪だよ。」


 親指サイズまで縮められた彼にとって、相対的に彼女は巨大な塔のような大きさと化していた。

 無駄だと理解しながらも、青年は目の前に広がるガラスの壁を悔しそうに殴りつける。


 「うん! すこぶる良好みたいですねー♪ それじゃあ早速始めさせてもらいましょうか♪」

 「始める、だと……?」

 「ええ♪ 私たちサキュバスは、冒険者のアナタもご存じのとおり、人間の精液やリビドーを糧に生活しています。

  その精液やリビドーなんですけども、量はそんなに重要じゃなくって、質がとっても重要なんです。」


 何故今そんな話をするのか訳が分からない、といった様子の青年に向けて、サキュバスは説明を続ける。


 「で、どうすれば上質になるかというと……。

  サキュバスに対して、心から屈服させ、依存させればさせるほど、より濃厚で上質なものになるんです♪」


 巨大なサキュバスの顔が、ずいっと小瓶に近づき驚いた青年は尻餅をついてしまう。

 目の前いっぱいに広がる彼女はとても美しく魅力的で、彼自身もダメだと理解しながら少しずつ虜になり始めていた。


 「そこでなんですがー……サキュバスの体液や体臭に催淫効果があるのもご存知ですよね?」

 「…………っ! この変態ヤローが……!」

 「あ、察してもらえたみたいですね♪

  そう……これから、おっきな私がちっちゃなアナタを、徹底的に"におい責め"してあげます♪」


 サキュバスの身体から分泌される体液。

 汗や唾液、愛液、果ては涙や尿に至るまでそれらすべてが、そしてそれらの匂いが強力な催淫効果を持つことを青年は知っていた。

 ただでさえ危険なソレをこの体格差のもと浴びせられる。それがどういったことを意味するのか、聡明な彼に理解できないはずがなかった。


 「……ああ、それから少し補足させてもらうと、"匂い"よりも"臭い"の方が催淫効果が強いんですよねー…♪」


 青年の目の前で、大木のような彼女の指先が縦横無尽に空をなぞる。

 『匂』ではなく『臭』

 空に文字を描く指先が、ここから先の凄惨な未来を指し示していた。



 「ってことで、まずは手始めに私の汗でたっぷりムレムレの靴下をプレゼント♪」


 いつの間にか脱いでいた靴下を、サキュバスは瓶の真上まで持って行き無造作に手を離す。

 青年の身体の何倍もありそうな巨大な爆弾が、ドサリと音を立てて瓶の中へと放り込まれる。


 ――直後、彼の頭に鈍器で殴りつけられたような衝撃が走った。

 徐々に鼓動が早くなり、そのリズムに合わせるように呼吸が浅く短くなっていく。

 目の前に鎮座する彼女の靴下は、見ただけで分かるほどジットリと湿り気を帯び、鼻が曲がるほどの悪臭を放っていた。

 肺の隅々、脳の奥深くまで突き刺さるような刺激に、涙と鼻水が止め処無く溢れる。

 経験したことの無い強烈な刺激臭を察知した身体が反射的に息を止めようとするも、彼はその臭いを嗅ぐことを止められなかった。

 濃ければ濃いほど、臭ければ臭いほど、心が、身体が、不快感の塊であったその臭いを、ドロドロとした情欲へとシフトさせていく。

 一呼吸、また一呼吸と息をするたびに、高まる興奮が股間へと血液を流し込み怒張させる。

 たった一枚の布に文字どおり全身を制され、まるでレイプされているような歪んだ快感だけが、甘くジンジンと残り続ける。

 わずかに残る理性が必死で新鮮な空気を求めるも、そこは靴下一枚が巨大に感じられるほど小さな瓶の監獄。

 彼が求めるものは、ほんの少しも残されてはいなかった。


 「んふふ~♪ 良いですねぇ……じゃあこれで一発目、イっちゃってください♪」


 そう言うと彼女は、もう一枚の靴下を青年の真上に持っていき、そのまま手を放した。

 多分に含んだ汗でズッシリと重さの増した靴下が、小人の彼目がけ勢いよくのしかかる。

 全身を包み込む彼女の蒸れた体温、汚れた臭い、濃縮された汗の味。

 小さな脳にそれらすべてが一斉に叩き込まれた瞬間、まるでダムが決壊するかのように彼は果てていた。



 *



 翌日、青年は小さな身体になってから初めての朝を迎えていた。

 昨晩彼が果てた後、小瓶はサキュバスが一日履きつぶした靴下をその中に残したまま、厳重に封がなされていた。

 蓋が閉じられた小瓶は空気の循環が一切なくなり、中の小人を苦しめ続ける拷問器具と化していた。

 呼吸をするたび、脳に淫靡な臭いが刻み込まれ、そして果てる。ただそれが延々と繰り返される。

 1時間を超えたあたりで、彼の身体からは射精感だけで何も放出されることがなくなっていた。


 しかし、あれほど強烈に感じられていたサキュバスの淫臭に、青年の身体は徐々に慣れ始めていた。

 元々冒険者としても彼は優秀な部類だったため、催淫に対しての耐性がかなり高められていたことが原因であった。

 ひとまず正常な思考が出来るということは、彼にとって十分すぎるほど。

 常人であればとっくに精神を壊されるような状態であったが、青年はこの快楽拷問を耐え続けていた。 


 「おはようございまーす♪ どうです? 昨晩は気持ちよーく寝られましたか?」

 「……ああ、誰かさんのクッセェ靴下のおかげでな。」

 「それは何よりです♪」


 寝起きのサキュバスが机の上に置かれた小瓶に顔を寄せ、瓶の中の小人に向けて話しかける。

 青年はそんな彼女に対して、悪態を付ける程度には回復していた。


 「こっちはなかなか寝付けなくってですね……明日はアナタをどう虐めようかって考えると、アソコが疼いちゃって♪」


 そう言いながら、サキュバスは自らの下着に手を掛けると、無造作にスルスルと脱ぎ始めた。


 「私、元々汗もかきやすい体質なんですが……ほらっ♪ 汗と愛液でぐっちょぐちょ……♪」


 脱ぎたての下着を見せつけるように、小瓶の目の前に突き付ける。

 サキュバスの手に握られたそれは、彼女の指が動く度にぐじゅぐじゅと湿り気を帯びた音を立てていた。

 ガラス越しにその様子を見せつけられた青年は、つい先ほどまで彼女の秘部を包んでいた一枚の布に釘付けになっていた。

 意識をハッキリ保とうとすればするほど、サキュバスの纏う淫気に当てられ、思考力、注意力を奪われる。

 ……それは彼にとって唯一の脱出口である、小瓶の蓋が開かれていることにも気付かぬほどに。


 「……脱ぎ立てホヤホヤのパンティに興味津々みたいですし、今日はコレをプレゼントしてあげますね♪」


 彼女が話しかけた声も、下着一枚に魅了された彼には届かない。

 下着の動きに合わせて、青年の視線は徐々に上へと向いていく。

 下着を摘まむ彼女の手が小瓶の真上に来た時、青年はハッと我に返り、ようやく瓶の蓋が外されていることに気が付いた。


 「や、やめ――――」


 靴下で満たされた小瓶の中へ新たな"臭い"が追加され、青年の声は途中で途切れた。

 ドチャリと鈍い水音が瓶の中に響き渡り、同時に中でもがく小人を深い絶望と極上の快楽が包み込んだ。

 夜通しの臭い責めを耐え切った彼を包む、甘く芳しい香り。青年の心に残る反撃の意志が、瞬く間に崩れ、蕩けていく。

 心が――脳が――トロトロに――……。


 「やめるわけないじゃないですか。こんな楽しいこと……♪」


 自身が先ほどまで履いていた下着に圧し潰され、モゾモゾと動く人型をサキュバスは恍惚とした表情で見つめる。

 抗いようのない快感、襲い来る無限とも思える射精感。親指ほどの大きさの小人が、味わったことの無い暴力的な淫気にその身を震わせている。

 どうしようもないほど惨めで、どうしようもないほどちっぽけななその姿が、愛おしくて堪らないのだ。


 「うふふ……♪ たーっぷり私を感じて、たーっぷり気持ち良くなってくださいね……♪」


 受け皿を無くした股間からトロリと愛液を垂らしながら、彼女はそっと小瓶の蓋を閉めるのであった。



 *



 青年が小瓶の監獄に閉じ込められてから五日目。

 瓶の中にはさらに追加された靴下、下着が隙間なくみっちりと詰め込まれていた。

 それらすべて一度サキュバスが身に着け、体液、体臭が染みついたものであり、加えて何日にもわたって醸された小瓶の中は、ひと嗅ぎで魔物すら狂わせるほどの異臭を放っていた。


 「ん~……下着も入らなくなっちゃいましたし、そろそろ次の段階に移りますかねー♪」


 サキュバスはそう言うと、小瓶を逆さに向け、トントンと底面を叩き中身を取り出し始めた。

 どさどさと小瓶の中から大量の汚れた布が吐き出され、ムワリと異臭を保ったままの山が築かれる。

 そして最後に満身創痍といった様子の小人が、ポロリと山の上へ転がり落ちた。


 「あ、出た出た♪ お久しぶりですねー元気にしてましたか?」

 「……ああぁ…………うあぁ…………。」

 「うんうん♪ 良い感じに仕上がってきてますね♪」

 「…………グ……グゥッ……!……げほっ!げほっ!」


 どちらのものか分からぬ体液で全身を濡らし、虚ろな目をした青年に向けて、ニコニコと笑みを浮かべながらサキュバスは話しかける。

 一方、青年は何日ぶりかに小瓶の外へと出され、新鮮な空気を吸い込んだことで徐々にその意識を取り戻していた。


 「クッ……クソが……!……俺は、絶対に…………屈しないぞ……!」

 「……あら? この段階で、ここまで意識がハッキリしている人間を見るのは初めてですね♪ 流石は、勇・者・様♪」


 半分は驚嘆、半分は小馬鹿にした様子でサキュバスは話しかける。事実、ここまで意識を残したまま耐え続ける人間を彼女は見たことがなかった。

 いつもはこの時点で廃人と化しているか、ひたすら許しを請うようになるかのどちらかがほとんどだった。

 裏を返せば今回のそれは、彼が相当の熟練者であり、この上ない上物であることを証明していた。

 目の前に置かれた小さなご馳走に今すぐ飛びつきたい欲求を抑え、彼女は淡々と言葉を続ける。


 「……今までアナタが嗅いでいたのは、私の服に染みついた臭い――言うなれば残り香。

  残り香だけでこんなになっちゃってるのに……直に嗅いじゃったら、一体どうなっちゃうんでしょうねぇ……♪」

 「――――グゥッ!?」

 「あっはぁ……♪」


 サキュバスの窄めた口からふぅっと甘い吐息が流れ出し、山の上の小人へと叩きつけられる。

 青年の視界は瞬く間に桃色に染まり、股間からは出尽くしたはずの精液がドロリと流れ出す。

 今、彼女の体臭、体液には"催淫"の効果に加え、"治癒"の効果が付与されていた。

 すなわちどれだけ濃く、強く、淫靡な臭いを嗅がされ大量の精を放出したとしても、決して青年が枯れ果てることは無いのだ。

 
 「時間はたっぷりあります♪ 今日からは私の全身を使って、アナタの心……トロットロに溶かしちゃいますね……♪」


 そう告げるとサキュバスは、小さな青年の身体を優しく摘み上げた。



 *



 ――青年が縮められてから七日目。

 少女は厚手の革で作られたブーツを履き、村の中を優雅に散歩していた。

 彼女が歩を進める度、その上等な革が軋み、ギュムッギュムッと音を立てる。

 ひとしきり散歩を終えた彼女は木陰へと移り、呟くような声で自身の足元に向けて話しかけた。


 「どうですか? 私のブーツの中の居心地は……。」


 ピッタリと彼女の足に密着したブーツの爪先。一切光の届かないその空間に、青年は閉じ込められていた。

 指一本動かせない程の圧迫感もさることながら、熱帯を思わせるほどの温度と湿度、そして気が狂うほどのドス黒い臭気が彼の身体を蝕んでいく。

 下着に包まれていた日々が天国だったと感じるほどに劣悪な環境だが、それはイコール特濃の快感を浴びせ続けられるということだった。


 「暑い? 臭い? 痛い? 苦しい? ……ぜ~んぶですよね?

  その全部が気持ち良くって堪らなくって……最っ高なんですよね……♪」


 青年の鼻先と股間だけが自由になるよう、ブーツの中で爪先を器用に動かす。

 汗をたっぷり吸い込んだストッキングが、顔を、胸を、腕を、脚を、全身余すことなくヌルヌルと撫でまわしていく。

 思わず悲鳴を上げようとするも、青年の口に猿轡として咥えられたストッキングがそれを許さない。

 さらにそこから搾り出された液体が、濃厚な媚薬となり彼の身体を内側から灼き尽くしていく。


 履きつぶされたブーツの内側と、ストッキングに包まれた彼女の足。

 青年の小さな身体をサンドし、蹂躙し、包み込むそれが、彼にとってこの世のすべてのように感じられる。

 気付けばまるで彼女の問い掛けに応えるように、仄暗いブーツの底で青年は精を吐き出していた。

 その僅かな感触を足裏に感じた彼女は満足げな顔をし、足下でもがく小人を再び巨大な足裏で圧し潰した。



 ――青年が縮められてから十日目。

 雲一つない晴天の中、意外にも少女は農作業に勤しんでいた。


 「いやー……村娘を演じるのもなかなか大変なんですよねー……。こうやって農作業を手伝ったり……っと!」 


 そう言いながら鍬を振り下ろす彼女の額には、玉のような汗が滲む。


 「……ただ、いくら汗をかいても、乙女として"ココ"に汗染みを作るわけにはいけませんもんねー……♪」


 作業の手を休めながら、少女は自身の"腋"に向かって話しかける。

 この日、青年は彼女の腋の下に閉じ込められていた。

 炎天下の中、無尽蔵に溢れ出す腋汗とツンと香る彼女の体臭が、彼の味覚と嗅覚を延々犯し続ける。

 眼、喉、鼻、そして脳がピリピリと痺れ、陶酔するような感覚。

 不純物を含まない、彼女から分泌されるものだけで構成された"腋の下"という空間は、青年をより色濃くサキュバスの色に染め上げていた。


 「まだまだ、たくさん仕事は残ってるんで、しっかり働いてくださいねー……汗わきパッドさん♪」


 少女はほんの少しだけ腋に力を込める。その僅かな動作ですら、閉じ込められた青年にとっては強大すぎた。

 柔らかく包み込んでいた二枚の肉壁が、突如として万力のごとくプレスし始める。腋の窪みに押し当てられた頭蓋骨が、全方位から腋肉に圧し潰されミシリと軋む。

 有無を言わさぬ暴力的な圧力に思わず全身をばたつかせるも、その抵抗は彼女にとって逆効果であった。


 「あぁん♪ そんなに暴れたらくすぐったいですよー♪」


 チョコチョコと動く小人の感触に、彼女はピクリと身を震わせる。

 同時にキュッと締め上げた腋の間からは、白濁した液体がほんの少しだけ垂れ落ちていた。


 「これじゃあ汗を吸ってもらってる意味がありませんねー……♪」


 くすくすと失笑する少女は、精液がにじんだ箇所をぐりぐりと指先で押さえ付ける。

 衣服ににじむ白色がさらに濃くなったことを確認すると、彼女は鍬を持ち上げ農作業を再開した。



 ――青年が縮められてから二十日目。

 少女は閉め切った薄暗い部屋の中、自身の胸を揉みしだきながら、その双丘の間に向けて話しかける。


 「気分はどうですかー? ふわふわとろとろなおっぱいに全身包まれてー……とっても甘ぁい香りで満たされちゃってー……♪」


 青年は今、彼女の豊満な胸の谷間に閉じ込められていた。

 全身余すところなく柔らかな肌に圧し潰され、縦横無尽にこねくり回され、まるで全身が性器になってしまったかと勘違いするほど淫猥な行為。

 閉め切られた部屋は即席のサウナと化し、徐々に高まる温度と湿度が、青年のいる肉の牢獄をジットリと湿らせていく。

 彼女の肌から噴き出した汗が、時折彼の小さな口へと流れ込む。塩気を帯びたそれは、青年の身体から水分と正常な判断力を奪い去っていった。


 「……私の汗だけだと、喉、乾きますよね? ちょっと上を向いてください。」


 はるか上空から聞こえた声に、青年はわけも分からず真上を向く。
 
 隙間なく密着していた肌色の壁がゆっくりと左右に開き、その先にいやらしく窄められた薄紅色の唇が映る。


 「くちゅくちゅ……んべぇ~…………」


 谷間を覗き込むサキュバスの口から、白く泡立つ唾液が垂らされた。

 ほど良く粘り気を持った唾液はゆっくりと重力に従い、惚けた様子で上を向いた青年の顔目がけて垂れ落ちる。


 「――――――っっっ!!!」


 青年の全身を覆い隠すように唾液の膜が包み込んだ。彼にとっては大量すぎる唾液が、穴という穴から体内へと流れ込む。

 視界はぼやけ、口と鼻からは気泡の混じった甘ったるい液体が溢れ返り、満足に呼吸が出来なくなる。


 「さぁ……ネバネバの唾液ローションも混ぜ込んで、もーっと気持ちよくなりましょうねー……♪」


 そんな青年の様子など意に介さず、サキュバスは両手を胸に添えると、ゆっくりと揉みしだき始めた。

 ネチャネチャといやらしい音を立てながら、再び巨大な乳房が暴れ出す。

 唾液のローションが無ければ磨り潰されるギリギリの圧迫感が、青年へと襲い掛かる。

 五感のすべてを支配された青年にもはや抵抗する力は無く、ただただ快感を享受し、射精し続けるだけの道具と化していた。



 青年が縮められてから――――。



 *



 とうとう青年が縮められてから、一か月が経とうとしていた。

 机の上で横たわる青年を、サキュバスはじっと見つめる。


 「…………あぁぁ……。」

 「んー……ぼちぼち限界ですかねー。」


 ツンツンと巨大な指先で小人をつつく。

 度重なる快楽責めに、青年の精神はボロボロに砕け散っていた。

 サキュバスの指がその身体に触れる度、彼のペニスからは壊れた蛇口のように精液が垂れ流される。


 「これはこれで面白いんですが……ここまで壊れちゃったら、あんまり美味しくないんですよねー……。」


 そうぼやきながらも、彼女はどこかウキウキした様子で青年をつつき続ける。


 「……それじゃあ仕方ないので、最終段階に移りましょうか♪」


 もはや意識があるのかどうかも分からない青年に向けて、サキュバスは呪文を唱え始める。


 「……あ……あれ……? ここは一体……?」


 虚ろだった瞳に光が宿り、おぼろげだった意識が小さな青年の身体に戻り覚醒する。

 しかし、意識の戻った彼はどこか様子がおかしい。キョロキョロと辺りを見渡したかと思うと、巨大なサキュバスに気づき小さな顔を真っ青に染めた。


 「う、うわああああああ!!!!!」

 「あはっ♪、予定どおり良い反応ー♪」


 一目散に逃げ出そうとする青年を、巨大なサキュバスの指先が素早く捕らえる。


 「おっとっと! ダメですよー? 逃げ出したりなんかしちゃ♪」

 「や、やめろおおお!!! 一体お前は誰なんだよ!? な、な、なんでそんな……!!」


 わけが分からないといった様子の青年を見て、サキュバスは思わずプッと吹き出してしまった。


 たった今、彼女が青年にかけた魔法は『忘却魔法』。本来であれば、"今考えていたこと"を忘れさせる程度の魔法である。

 しかし、ボロボロになった青年の精神は、いともたやすくその魔法を受け入れ、"森に入ってから今に至るまで"すべての記憶が消去されていた。

 ただし、苦痛や快楽など彼が味わった"身体の記憶"だけはその身に刻んだまま――。

                     ・・・・
 「……何が何だか分からないと思いますが、最初だけサービスで教えてあげますね。

  ……今日からアナタには、私のココ……おまんこの中で、私だけの性玩具としてずぅっと生き続けてもらいます♪」


 サキュバスは目の前に摘まみあげた青年に対し、最初で最後の説明を始める。


 「淫魔であるサキュバスの身体の中でも、いっちばん気持ち良くって……いっちばんエッチな場所……♪

  そんなところに全身浸かっちゃったら……♪ 気持ち良すぎて、脳みそトロトロになっちゃうんでしょうか♪」


 ほんの少し触れただけでも、人を狂わせるそれを全身に浴びればどうなるかなど、サキュバスは理解していた。

 理解したうえで、抗おうにも抗えない程の強烈な刺激を、今すぐにでも彼に味わわせたくて仕方がなかった。

                 ・・・・・
 「……でも、安心してください♪ 射精する度、今と同じ要領でキレイさっぱり忘れさせてあげますから……。

  アナタだけ時間の止まった世界で、ワケも分からないまま極上の快感を味わい続けて……ずぅっと壊れることの無い玩具でいてくださいね……♪」


 話の終わったサキュバスは、小人を摘まんだ手をゆっくりと股間へと近づけ始める。

 キィキィと小人が何かを叫んでいるが、もうサキュバスの耳にその声が届くことはない。

 今日という日が待ち遠しくて堪らなかった彼女にとって、今彼が叫んでいるであろう罵声や懇願などもはやどうだって良かった。

 この一か月間、徹底的に犯し続けた彼の身体は、サキュバスから見ればじっくりと醸し続けた最高級のワインのようなもの。

 そんなものを目の前にして、性欲の化身であるサキュバスが我慢できるはずなどなかった。

 熱く煮えたぎる股間のクレバスに青年の頭がほんの少しだけ触れる――と、ビクンと身体を跳ね上げさせた彼の股間からは、白濁した液体が垂れ落ちていた。

 濃厚な媚薬とも言えるサキュバスの愛液を、頭から被ったのだから当然と言えば当然だ。


 そして、本日最初の射精を終えた青年は彼女の宣言どおり、再び先ほどまでと同じ時点まで記憶を消去される。

 彼女の股間の真下に捕らえられながら、キョトンとした顔で辺りを見渡す青年。

 ……もう彼は先ほどまで彼女が話していた内容、いや彼女自身のことすら忘れてしまっているのだろう。

 キョロキョロと辺りを見回す彼と、それを愛おしく眺める彼女の目が合う。


 クスリとサキュバスは天使のような微笑みを返す。

 それを見た青年の小さな悲鳴は、淫猥な水音とともに蜜壺の奥深くへと飲み込まれていった。




 ***




 「……あの青年もダメだったか。」

 「やっぱり森に潜む魔物を討伐してもらうなんて、到底無理なんだよ!」

 「聞いた話によると、その魔物はかつて魔王軍の幹部だったとか……。」


 村中心部の広場に集まった村人たちは、行方知れずとなった青年のことを悼み、自分たちの無力を嘆いていた。

 その中には、あの日彼とともに森の奥へと向かった少女の姿があった。


 「彼は、襲い来る魔物から私を庇って……。私が両親の仇を討ちたいなんて言わなければ……。」


 少女はその瞳に涙を浮かべ、嗚咽を抑え込むように両手で顔を覆う。

 魔物に両親の命を奪われ、助けを求めた冒険者の青年すら目の前で失った少女を村人たちは憐れんだ。

 ……そう、少女自身がその魔物であることなど露知らず。


 くちゅり――彼女だけにしか聞こえない、本当に小さな水音が彼女の秘部から響く。

 それは青年に許されたほんの僅かな抵抗だったのだが、少女が少し膣に力を込めただけでピクリとも動かなくなってしまった。

 締め上げると同時に搾り出された青年の精液を、巨大な蜜壺は艶めかしく蠢き美味しそうに飲み干していく。

 少女の頬がほんの少し赤らんだことなど、周囲の村人は誰一人気付きはしない。


 このちっぽけな存在を、弄び、嫐り、捏ね繰り回し、とことんまで搾り尽くしてしまって……。

 ……ああそうだ。搾り切って飽きてしまったら、その時は本当に食べてしまっても良いかもしれない。

 魔王の居ない平和そのものの世界。そんな世界でもまだまだ退屈せずに済みそうだ。


 顔を覆う両手の内側、サキュバスはペロリと舌なめずりをした。