チュンチュンと小鳥のさえずる声が、上り始めた太陽の光とともに教室へと差し込む。


 「えー……そういうわけであるからしてー……。」


 夏の暑さも収まりつつある、秋先の一限目。

 初老の教師が唱える授業は、生徒たちを心地良い夢の世界へと誘っていた。

 立てた教科書に隠れるように突っ伏して眠る生徒。大口を開けて欠伸をする生徒。

 そして、窓際に座るマスクをした少女もまたその一人。


 トントン、と少女の背中を誰かが軽くつつく。

 こくりこくりと舟をこぎ始めていた少女の体は、ほんの少しだけピクリと震えた。


 「……おーい。」


 囁き呼び掛ける声に答えようと振り向いた先には、ニッコリと笑う友人の姿があった。


 「この時間、リナの番だからさ……はい♪」


 リナ、と呼ばれた少女は友人の言葉を聞いて、ああそうかと何かを思い出す。

 リレーのバトンでも受け取るかのように後ろに手を伸ばすと、小さな何かを手渡される。

 
 「……ありがと。」

 「どーいたしまして♪」


 机の下を通したそのやり取りは、教壇の上からはもちろん、隣の席からも"それ"が何か確認することはできない。

 しかし、見えなくとも生徒から教師に至るまで、"それ"が何かを皆理解していた。


 少女は軽く握った手を机の上まで持ってくる。


 「久しぶりだなー……何してもらおっかなぁ……。」


 真っ白なマスクの内側、誰にも聞こえない声で少女は呟く。

 ゆっくりと開かれた手の内側には……親指サイズの男子生徒が横たわっていた。


 衣服をすべて剥ぎ取られ、産まれたままの姿の彼の身体には、手首と足首の二箇所に輪ゴムの拘束具が巻き付けられていた。

 一限目が始まるまでの間、すでに何人かの女子生徒の手を渡り歩いてきたのであろう。

 誰の何か分からない液体に塗れ、ぐったりとしている彼を少女はポケットティッシュで丁寧に拭き取る。

 柔らかく包み込むティッシュの中、はるか上空から突き刺さる巨大な少女の視線に彼の震えは止まらなかった。


 「んー……見た感じ大人しそうな子だし、今日はココで苛めちゃおっかな。」


 うん、と品定めを終えた少女は、それが当然のことであるかのようにマスクの内側へと彼を放り込んだ。



 *



 「う、うわああああああ!!!!!」

 目の前の女子に摘ままれたかと思うと、急に襲い掛かった浮遊感に思わず叫び声をあげてしまう。

 登校してからまだ一時間も経っていないのに、これで何人目かすら分からない。


 ……この学校には、全国唯一の特殊な校則が存在している。

 それは、校則違反者には違反事項に応じた量の奉仕活動が求められること。

 字面だけを見れば極々ありふれた校則なのだが、今自分の置かれている状況がその"奉仕活動"の異様さを表していた。

 今日、自分が犯したのは、ほんの数分の遅刻。

 そんな自分に課せられたのは、「縮んだ身体でクラスの女子全員への一日奉仕」であった。


 無造作に放り込まれた先は、ぼんやりと薄暗いマスクの中の世界。

 認識できるのは、背中をゆったりと支える真っ白な布と、眼前に広がる巨大な薄紅色の唇のみである。


 「う……あぁ…………。」


 あまりの光景に言葉が出てこない。

 つい先日までともに学校生活を送ってきた同級生の女子。そんな女子のぷっくらと艶やかな唇が、目の前一面に広がっているのだ。

 思春期真っただ中の男子には、あまりに刺激が強すぎる空間である。

 何とも言えない恥ずかしさと興奮が入り混じり、思わずそこから目を逸らしてしまう。

 ただ、目を逸らしただけでは制御し切れないむず痒い感情が身体中の血を押上げ、カーっと顔が熱くなるのを感じた。


 柔らかな牢獄の中は、その巨大過ぎる口元から発せられる静かな呼吸音だけが支配する。

 ひと呼吸ごとに高まる温度と湿度、そして少女の内側の香りがこの小さな世界を満たしていく。

 ……朝食はヨーグルトだったのだろうか。ふわりと呼気に乗って感じ取れる甘酸っぱい香りに、ぼうっとそんな感想が浮かんだ。



 「はぁ……はぁ……。」


 頭がぼんやりとしてクラつく……。

 ここに入れられてからどれくらい経ったのだろうか。

 5分?10分?……いや、もしかしたらほとんど時間など経っていないのかもしれない。

 低下する酸素濃度にチリチリと脳を焼かれ、時間感覚さえ失い、正常な判断が出来なく――


 「――――っ!?」


 ふいに目の前の横スジが糸を引いて分かれると、その間から巨大な舌が這い出してきた。

 その舌先が足に触れると同時に、ベロリと一気に舐め上げられ、脚、腹、胸、顔、全身唾液のローションが包み込んでくる。

 強い粘り気で纏わりついてくるそれは、口や鼻からも流れ込み、反射的にむせ返ってしまう。


 「――んぶはぁっ!!ゲッホ!ゲホッ!!」


 気道に流れ込んだ唾液を押し返すよう、大きく咳き込み肺の中が一時的に空になる。

 続けて空になった肺が空気を求め出すが、周囲に漂うのは彼女の吐息だけ。


 「――――うぅっ!!」


 すぅっと深呼吸して吸い込んだ桃色の空気は、肺を満たし血液を流れ、心臓や脳にまで行き渡っていった。

 ベッタリと顔面にへばりつく唾液は呼吸を制限するだけでなく、目を刺し、耳を塞ぎ、確実に五感を奪っていく。

 後手に縛られ拭うことが出来ないそれは、時間の経過とともに徐々に独特な香りを放ち始めた。


 ああ……もう何も考えていたくない。


 再び一文字に閉じられた唇を、鈍くモザイクのかかった目でぼうっと見つめる。

 しっとりと瑞々しい唇に、隙間から見えた大理石のような歯。

 内側にはあの真っ赤な大蛇が自分という獲物を待ち構えているかと思うと、小さな身体がブルリと震えあがってしまう。

 ……僅かにマスクから漏れ出る声と動きに、この子も楽しんでいるのだろう。少しだけ唇の端が持ち上がっているように見えた。



 「はっ……はぁっ…………はぁっ…………。」


 不織布で出来たマスクにもたれかかり、火照った頭と身体を冷まそうとする。

 しかし、このマスクの主はそんな休む暇も与えてはくれなかった。

 マスクの外側、巨大な何か――おそらく彼女の掌にググっと背中を押される。

 身を委ねていたマスクの布地ごと、ゆっくりと前に前にと押し出されていく。

 目の前の巨大な唇は先ほどまでと形を変え、中心に小さな窄まりを作り出していた。

 こ、これってもしかして……!

 そうこうしているうちに、グングンと身体が、頭が、その窄まりに寄せられていく。

 
 「ま、待って――――」


 小さな訴えは軽々と遮られ、そのまま押し出された身体は極上のウォーターベッドで出来た窄まりに飛び込んでいた。

 むちゅっ……と音がした気がするが、今はそんなことを考えている余裕などない。


 ――――圧倒的な対格差でのキス。


 普通サイズでも経験したことの無かったそれを、怒涛の勢いで叩き込まれる。

 やばいやばい、なんだこれっ……!

 上半身のすべてが沈み込むほどの女子の柔らかな唇の感触。

 窄まりに密着した顔には、脳をとろけさせる彼女の呼気をゼロ距離で浴びせられる。

 さらに真っ暗な闇から伸びた大きな舌が、いやらしく顔を舐め回し、泡立つ唾液で何重にもコーティングしてくる。

 舌の動きと合わせて耳に響くじゅるじゅるという水音が、よりいやらしさを際立たせていた。


 ついばむような優しいそれではなく、もっとディープでエロティックで、大人なキス。

 脳の理解が追いつかなくとも、身体の方はその初体験の快感に正直だった。


 「んっ!んんっ!!んむうっ!!」


 唇で揉みしだかれ、舌で舐め回され、そのたびに不自由な身体が跳ねて彼女に触れる。

 ……おそらく顎の少し上あたりだろう。

 与えられる快感に耐え切れず反り立ったペニスが、ツンツンと彼女の柔肌をつついてしまっていた。

 彼女にとって爪楊枝サイズのそれにつつかれても、特に何も感じることは無いのかもしれない。


 「…………ん。」


 しかし二度三度と触れたところで、彼女の動きがピタリと止まった。

 動きが止まったところで咥えられたままの頭は、むうむうと呻き声を挙げることしかできない。

 ただ、あのディープキスが中断されたことにほんの少し安堵感を覚える。

 ようやく解放してもらえるのか……。そんな悠長なことを考えていると――――


 「んんっ――――!!」


 それは思っていたのと逆方向。強烈な吸引が頭を襲い、引っ張られるように身体がふわりと浮く。

 頭を咥えていた窄まりが柔らかく形を変え、ジュルっと音を立てる。

 その不穏な動きを感じた時にはもう手遅れ。小さな身体は唾液溢れ、巨大な舌が蠢く彼女の口内に全身を捕らえられていた。


 「んーむぅ……ふぅ……♪」


 視覚以外で感じられる情報が、真っ暗な世界に居ながらそこがどこかを証明していた。

 このまま呑み込まれてしまう――そんな考えが頭をよぎり、縛られたままの身体を暴れさせる。


 「ひっ……い、いやだ……出して!お願い!!出してぇ!!」


 しばらくぶりに自由になった口から喉が潰れるほどの大声を吐き出すも、必死の叫びは鈍く反響するだけだった。

 なすがままの全身を余すところなく舌が這いずり回る。

 ザラリとした舌が唾液を塗りつける度、そこが性感帯になったかのようにジンジンと熱を帯びていく。

 右へ左へ、上へ下へ、頬の内側に圧しつけられ、舌に包み込まれ、唾液の海に沈められ。

 かと思えば、ドンっと硬い奥歯の上に突き飛ばされ、歯の疼きを抑えるように甘噛みされる。

 光の無い世界で巨大なモンスターが暴れ、哀れな小人を滅茶苦茶に振り回していく。


 「もう……げぼっ……やめで…………ゆるじてぇ…………。」


 もう長いこと新鮮な空気を吸っていない口と鼻は、彼女の唾液で掻き混ぜられ、胃の中、肺の中まで彼女に満たされていた。

 逃げ場のない暗闇で飴玉のように味わわれ、絞り尽くされ、自分という存在がどんどん希薄になっていく。

 心も身体もぐちゃぐちゃになって、液体と固体の境目が無くなってしまう。

 ただそんな中でも、股間の一か所だけはハッキリと主張を続けていた。


 「うぅ……イキたい……。出さ……出させてぇ……。」


 ……気付けば性欲が恐怖心を上回っていた。

 べちゃりと力なく倒れ込むと、ドロドロに煮詰められた媚薬に全身が浸る。

 手が縛られているため、自分自身でそこに刺激を与えられず、高まる興奮を発散することが出来ない。

 ぐねぐねと身体をうねらせ周りの肉壁に何とか擦り付けようとするも、上も下も分からない状況ではその徒労も空しく終わった。


 しかし、彼女にはその僅かな動きすら伝わっていたらしい。

 暴れ回っていた舌の動きが急に収まったかと思うと、口の中全体がある一方向に向けて力を加え始めたのだ。


 「むぎゅう!ぐえぇ…………。」


 良く分からないが、頭を先頭にギュウっと搾り出されるような感覚。

 圧しつけられる舌に潰されるかと思った矢先、ふと頭の先にかかっていた圧力がゼロになる。

 ブルブルと解放された頭を振り、唾液で歪んだ視界が晴れてくると、今自分がどういう状況に置かれているかをようやく理解できた。



 *



 今日のこの子はなかなかの当たりかもしれない。

 良い感じに敏感で初々しいところが私好みだ。

 口の中で彼を転がし、味わいながらそんなことを考える。

 コロコロ。モグモグ。グチョグチョ。カミカミ。


 「ん……。」


 ほぼ無抵抗だった彼が、もぞもぞと舌の上で動こうとしているのを感じる。

 そんなことしたって無駄なのだが、ぼちぼち彼も色んなところが限界なんだろう。


 「んー……んべぇ。」


 舌を器用に使って、口の中から彼の頭だけを解放してあげる。残念だけど、首から下は出してあげない。

 肩の辺りを唇で軽く挟み込み、輪ゴムで縛られた彼の身体をさらに固定する。

 口の中に残された彼の身体の大部分は、舌の上でだらりとノビているけど、アソコだけはとても元気だ。


 「あ……あうっ……あっ…………んぁつっ……っ!」


 ペロペロ。ツンツン。ずりずり。なめなめ。

 ゆっくりと舌を動かすたびに、か細い喘ぎ声がマスクの内側から聞こえてくる。

 舌の上で転がしているうちに大体彼の弱いところは見つけてしまったから、もう生かすも殺すも私の思うがままだろう。

 このまま焦らし続けるのも面白そうだけど、せっかく1限目でまだ元気も残ってそうだし、ちょっと出していってもらおう。


 「――んあっ!!――そ……だめぇっ!……イっ……!」


 そうと決めたら、無防備な彼の股間を重点的に苛める。

 ザラザラの舌でおちんちんを責められるのと、男子はみんな簡単によがってくれるから面白い。

 あ、だめだめ。必死で舌から逃げようとしても、とってもちっちゃなアナタは逃げられないんだから。

 ペロペロ。ずりずり。ペロペロ。ずりずり。

 傍から見たら真面目に授業を受けているようにしか見えないだろう。実際は同級生の男の子を口の中で犯しているっていうのに。

 ペロペロ。ずりずり。ペロペロ。ずりずり。

 お、もうちょっとかな?じゃあもっと気持ち良くなれるように、追加の唾液ローションでぬるぬるにしてあげる♪

 ペロペロ。ぐちょぐちょ。ヌメヌメ。ペロペ――――あ。


 「――――――っっっ!!!」

 「ん……。んふぅ……♪」


 ビクンっと彼の身体が大きく跳ねたかと思うと、舌の上にトロリとした液体が吐き出されたのを感じた。

 よしよし。しっかり気持ち良くなってくれたみたい。

 でもほんの少し感じた苦味は、あっという間に唾液で薄まり何も感じなくなってしまった。

 彼を挟み込む唇にほんの少し力を入れ、舌先を再び彼の股間にあてがう。

 うーん……イッたところで悪いんだけど、もうちょっと頑張ってもらおっかなー。

 確かこうやって……咥えたストローからジュースを一気に吸い込むように―……。


 「――――っ!!止め――――止めて――――吸わな――――っっ!!!」


 ぢゅうっと吸い込むのと同時に、射精直後で敏感になった彼の股間が爆発する。

 思っていた以上の反応に少し驚いたが、続けてちゅうちゅうジュルルルと下品な音を立てて彼の精液を吸い上げる。

 射精の勢いよりも早く、強く。彼のおちんちんから直接吸い出すように。

 これ、バキュームフェラっていうんだっけ。おちんちんどころか身体ごと吸い込んでしまえそうだけど。


 「イ”ッ――イ”ッ――――!!!あ”あ”あ”――――っっっ!!!」


 漏れ聞こえる彼の声も良いアクセントになって、気分が高まってしまう。

 はいもう一回♪じゅるるるーじゅるるるるー♪

 ビクンビクンと何度も彼の身体が弾け、そのたび吐き出される精液が溜まった唾液に溶け込んでいく。

 今ので、5、6回はまとめてイってくれたかな?

 彼が必死に放出したそれをゴクリと一口で飲み下す。


 ……うん、ごちそうさま♪



 *



 「……ってのが、彼と付き合うようになったきっかけ。」

 「えぇーいいなぁー。私も気の合う彼氏が欲ーしーいー!」

 「そういえば2組のあのカップルもさー。」


 放課後の教室で駄弁る女子生徒たち。

 彼女たちは特に何かをするわけでもなく、女子特有の恋愛トークに花を咲かせていた。


 「おーい、リナー。ぼちぼち帰ろうか―。」

 「あ、うん。今行くー!」


 教室後方の扉が開き、カバンを持った少年が少女に声を掛ける。

 その少年の顔はあの時奉仕活動を行っていた彼、その人だった。

 ただその背丈は年相応の大きさで、少女と比べても数センチは高いほどである。


 「ゴメン!今日は彼と一緒に帰る約束してたから、先に帰るね!」

 「おーおー、見せつけてくれちゃってー。」

 「とっとと帰れーこのリア充がー。」


 囃し立てる友人たちに手を振り、少女は廊下で待つ彼と合流する。


 「えらく盛り上がってたみたいだけど、何の話してたの?」

 「んー? 私があなたに初めてご奉仕してもらった時の話ー♪」


 一拍置いて、少年の顔がボッと赤く染まる。

 余程恥ずかしい記憶だったのだろう。慌てふためく彼を見て、少女はクスクスと笑いながらゆっくりと近づく。


 「……ねぇ。今日もまたあの時みたいに虐めてあげよっか……♪」


 彼の耳元で少女が囁く。

 耳先まで真っ赤に染めた少年は、少女の誘いにコクリと頷いた。