それは、僕が家の中にいた時だった。
僕のギターが細かく振動している。そして、窓や鏡も。
何かの工事だろうか、低い音が周期的に聞こえる。いや、工事の音なんかじゃない。何かが近づいて来る。
僕は部屋のブラインドを開けた。すると、緑色のワンピースを着た、黒い長髪の大きな女の子が街中を歩いていた。
映画なんかじゃない。現実だ。
僕は近づいて見てみようと考え、自転車にまたがった。
街中の人が皆、唖然としてその大きな女の子を見ている。特にパニックにもなっていない。時々子供が巨大な女の子に手を振り、女の子も手を振り返している。顔は可愛らしい笑顔だ。
ようやくパトカーが到着したが、警察官はどうしたら良いものか、迷っている様子だった。
僕は街の外れにある、小高い丘に登った。友達からメールが来た。
「何あれ?何かのコマーシャル??」
そりゃ某電話会社のCMじゃ巨大ロボットが出てるけど…。僕は友達のメールの返信をしないまま、巨大少女を見つめていた。
すると、彼女もこっちを見た。目が合った。
「あは♪やっと見つけた!」
み、見つけたって…。そ…それは誰の事かな???
近くを確認したが、僕しかいない。まさか…僕を!?
彼女がだんだん近づいて来る。そして僕は彼女の伸ばした手にいとも容易く捕まってしまった。
このまま殺されるのかな…
あまり苦しんで死にたく無いなぁ。
短い人生だったけど、それなりに楽しかったなぁ…。

………
?何だ?何もしないの???
恐る恐る目を開いたら、そこには僕を見つめる円らで透き通った、可愛らしい大きな瞳があった。
「はじめまして!」
「ど…ども……」
僕は突然の挨拶に、たった二文字で返してしまった。
「あなたが私の彼氏だね。私はえつこ。よろしくね!」
「ど…ども……」
またまた二文字挨拶。
こんな巨大少女が僕の彼女!?ていうか、何で僕の事知ってんの?!