巨大な彼女に見つめられて、僕は放心状態だった。
目の前には巨大で愛くるしい瞳、そして眼下に広がる街。
「あの〜・・・、脅かしちゃいましたか???」
彼女が僕を見つめながら言った。
「か、かなり驚いてます・・・。はい・・・」
「そんなに驚かなくても大丈夫ですよ。あなたを傷つけたりなんかしませんから。それ以前に、あなたがだーい好きなんだから!」
「あ・・・あはっ・・・」
女の子に「大好き」なんて言われたのは初めてだ。だがしかし、この大きさの差は何だ・・・。複雑な気分だった。

その時、我々の100m前で何かがぶつかる音がした。どうやら交通事故らしい。大型トラックが横転し、軽自動車がそのトラックに下敷きになってしまっているようだ。
その光景を見た彼女の表情に戦慄が走っていた。
「ちょっとここで待っていて下さい!!」
僕を優しくビルの屋上に降ろすと、彼女は事故現場へものすごいスピードで駆け寄った。幸い路上には人や車といった障害物は無く、彼女は躊躇無く走っていった。ただ、大きな足跡が残されたが。
「大丈夫ですかっ!」
トラックの運転手に話しかける彼女。運転手はパニックになっていた。
「あ・・・うわあ・・・」
「怪我は無い?歩ける?」
「あ・・・。は、はい!大丈夫です!!でもまだ人が軽の中に・・・」
運転手の容態を確認し、まだ軽自動車の中に人がいることを聞くと、トラックを鷲掴みにした。僕は携帯で救急車を呼んだ。
軽々と持ち上がる大型トラック。すると、半分ほど押しつぶされた軽自動車が見えた。軽自動車を持ち上げ、耳の近くに寄せる。彼女の表情がはっとした。
「大丈夫だよ!もうすぐ助かるからね!!」
押しつぶされた車の屋根に、器用に爪を当てて持ち上げる。簡単に人が三人ほど出入りできるような穴が開いた。彼女が車の中に取り残された人たちに向かって話す。
「良いですか?ゆっくり降ろしますね。」
車をそっと傾ける。中の人たちがするすると滑り落ちてきた。全員無事のようだ。周囲から歓声が沸き起こった。

救急車が到着し、その人たちを病院に送っていった。彼女も安堵の様子を見せていた。
「ふぅ・・・良かった・・・。」
「お、お疲れ様・・・。」
たったそれだけの言葉しか言えなかった。何だか自分が情けなく感じた。
「え・・・あ、ありがとございます!私、凄く嬉しい!」
そう言って僕にほお擦りをする。いや、苦しいって・・・。みんな見てるって・・・。なんか僕たちをはやし立てる声が聞こえる・・・。
「あっ。・・・は、恥ずかしい思いをさせてごめんなさい・・・」
「そんな・・謝らなくても良いよ。」
顔を真っ赤にしてうつむく彼女。僕はその顔を見て、どきっとしまった。
「・・・ここじゃ邪魔が入るからさ、あの山ん中の神社に行こうよ。」
「えっ!?あ。はぃ・・・。」
彼女の頭の上に座らせてもらい、移動している間にどんな言葉をかけたら良いか模索していた。

そして。神社に着いた。
僕は彼女の目の前にいる。というか彼女の手に乗っている。

「えと・・・、えつこさん。」
「ひゃう!?は、はい!?」
「今日は、街の人を助けてくれてありがとう。」
「そ・・・そんな・・・」
彼女の顔が一気に赤くなる。
「その・・・えつこさん。」
「くひっ!?は、はい!?」
「僕はえつこさんのあんな格好いい姿を見れて嬉しかったです。」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
お互いに沈黙。

そして、
「僕も、えつこさんが大好きだよ。」

「—————!!!!!」
彼女の顔はより一層赤くなった。

「僕と、お付き合いしてくれるかな・・・?」
「・・・は・・・はぃぃいいい・・・。」