軍は国家の誇る暴力装置であり、ディフェンスフォースとも呼ばれるそれはその国の矛であり盾てもある。
隣国エルルアに突きつけたその最強の矛は、可愛らしいピンクのコスチュームに身を包んだ魔法少女によって一瞬で消し炭にされた。
この世界で一番の実力を誇るナチロ軍の中央方面軍とエルルア方面軍。その最強の矛とともに街を守る盾を失った、ナチロ連邦国境の町ナチル。
そんな無防備となった街に、ピンク色のメルヘンな衣装で包まれた魔法少女の白いロンググローブをした魔の手が迫っていた。
今にも鼻歌を歌いだしそうなご機嫌な様子で一歩ずつ街へ向かって進んでいくノノカ。
一度街全体をきちんと見てみたくなったノノカは、再び自分の大きさを変えてみることに決めた。
そうすれば自分のことを街のニンゲンどもに知らしめることもできて一石二鳥思うし、そんなニンゲンの慌てるところも見れそうだしね。
「リサイズ」
体中に魔力を巡らせながら魔法の台詞を紡ぐ。
ぐんぐんと目線が高くなりおよそ1400mほど、1000倍の大きさになったところでとまる。
ノノカは目の前には6畳間である自分の部屋ほどの空間に隙間なく建物が立ち並んでいる、ナチルの街が広がっていた。
ナチルの街は面積は小さいながらもそれなりに栄えている街であった。
中心部には近代的な高層ビルが立ち並び、その周りへ放射状に街並みが広がっている。
繁華街や、商業施設、学校といった様々な施設の他、数多くのマンションや、一戸建ての住宅が立ち並ぶ住宅街。
そしてここで今の今まで普段どおりの生活を送っていたであろうニンゲンたち。
これから自分の玩具となるその街の様子に胸がどうしようもなく高まるのを感じた。
それとは逆に、突然の出来事にナチルの街の住人たちの間に混乱が広がっていた。
先程テレビやラジオで隣国エルルアに向かって自国の軍隊がこの街を出発したというの報道を聞いたばかりだった。
その軍が向かったはずの方向から突如現れた巨大な少女。
あらゆるメディアが速報で、この少女が軍を蹂躙しこの街へ向かってきていることを伝えていた。
「ねぇロロ、私の言葉はこの国の人に通じるの?」
片手に握ったままのロロに話しかけるノノカ。
なくしてしまわないようにロロのことも自分の1/20ほどの大きさまでついでに巨大化させておいた。
それはまるで手のひらサイズの子供用の人形の人形のようだった。
「もちろんロロ。通じるロロよ」
「そう。よかった」
「何をするロロ?」
「ふふっ」
質問に答える代わりにノノカは楽しそうに笑う。
その楽しそうな声に、ロロの顔は絶望に歪んだ。
「そうだ、その間ロロはここにいてね」
人差し指で白のニーハイソックスのゴムの部分を広げると、ノノカは太ももとの間にできた隙間へロロを挟み込んだ。
まだ未成熟な少女の肉付きの薄い太もも。その前側に自らが用意したニーハイソックスで挟み込まれることになったロロ。
形の整ったな胸元がしっかりとソックスのゴムと裏地によって固定され身じろぎすらできない。
かろうじて動かすことのできる顔を上へ向けると、そこにはまるでオーロラのように壮大なピンク色のスカートの中で、白いパンツの空へ向かって未熟な少女の肌色の絶対領域がすらりと伸びているのが見えた。
「私はノノカ。チキュウという星からきたの。よろしくね」
カーテシーの要領で、スカートをつまんで裾を少し上げ街に向かってお辞儀をするノノカ。
この街で一番高いビルよりも高い位置にある、魔法少女のコスチュームらしく丈の短いスカートの中身は、街から丸見えだった。
そんなことを知ってか知らずか、上機嫌なソプラノの声でノノカは言葉を続ける。
「この街はこれからノノカのものになるから、それを伝えておこうと思ったの」
自分を見上げてくる戸惑いの目。
これを上から見下ろすように目線を下げながらニッコリと微笑む。
「だからもう勝手に外に出ちゃだめだよ。あ、そこにいるのはテレビ局のヘリコプターかな?これからすごくいいものを見せるからあそこを飛んでいる飛行機を映してね」
唐突に指名されたこの街唯一のテレビ局の空色の報道ヘリ。気付かれないように距離をとっていたと思いこんでいた彼らは慌ててカメラの向きを巨大少女から、その少女に指定された飛行機へ向かって切り替える。
街の上空を飛んでいた160人乗りのジェット旅客機。
右手にステッキを具現化させると、自分から離れるように高度と速度を上げて飛んでいるソレに向かってピンク色の光線を放つ。
住民たちへ見せつけるように放たれた凶悪な威力を持つピンク色の光線は、街の上空を何にも遮られることなく一直線に旅客機へと向かって伸びていく。
そして寸分の狂いなく旅客機をかすめたと思うと、ピンクの光線の中で粉々に砕けて溶けて蒸発しその巨大なはずの金属の塊が跡形もなく消失していく。
報道ヘリのカメラマンは恐怖に震えながらその光景をカメラに収めていた。
旅客機が跡形もなく消失させられるひどく手ブレしたその映像は、街の各地のテレビへ生中継された。
この少女が自国の軍を上回る軍事力を持つこと。そして軍を打ち破ってこの街へ侵攻してきたしたことを理解させられた街の住人たちは我先にと逃走を始めた。
目の前の少女から出来るだけ遠くに、できるだけ早く。

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街のニンゲンどもが自分に向ける目が戸惑いから恐怖に変わる。
そのことに満足感を覚えながら、街の外周をぐるりと歩いていくノノカ。
予想したとおりではあるけれど、禁止したにも関わらず中の小人たちは街の外へ逃げ出そうとしているようだった。
まず手始めにノノカは街の周りをお堀のように大きな穴で囲ってそれを防ぐことにした。
この大きさならただ足跡をつけるだけで小人には乗り越えられないような大穴となるため、作業自体は今のノノカにとってとても簡単なものだった。
そのピンク色のストラップシューズは着地の衝撃で地震を発生させると同時に、小人が乗り越えられないような大穴を大地に穿つ。
中のニンゲンたちが逃げ出す隙間が残らないように半歩ずつ歩みを進めていく。
時折街の方に目を向けると自分が引き起こす振動で慌てふためく街の様子が目に入った。
街を逃げ惑おう人々が足を取られて転倒し、乗用車やバスが飛び跳ねて横転して道を塞ぎ、さらに古い建物が崩壊し、まちのあちこちから火の手があがる。
小学生である私が街の周りをただ歩いただけで、オトナたちの街は見るも無様な有様になっている。
どんな気持ちでいるのかな。怖いのかな、怒っているのかな、悔しいのかな。
そして・・・自分が直接手を下したらどうなるのかな。
心のそこから湧き上がる優越感と支配欲に心臓の鼓動が高まり体温が上がるのを感じる。
ふと違和感を覚えてスカートの中に手を入れて、パンツ越しに股間をなぞる。
ねっとりとした感覚が指先に伝わった。
「?」
保健体育の授業でこういうのを習ったし、ませた同級生ははこういうことをよく話しているけれど・・・今の私はいまそういうことはしていないし・・・
魔法少女になった影響なのかな?
そんなことを思いながらをパンツの布地へネバネバしたそれを拭って移す。
「んっ」
触れたところから脳の奥の方へ向かってピリッと電流のような流れた。
なにこれちょっと気持ちイイ。
しばらくスカートの中をいじったあと、拭き取ったというより布地がこれ以上水気を吸い取れなくなったと感じて、なぜだか少し名残惜しさを感じながら中から手をだした。
絶対領域からその光景を見ることになったロロは嫌悪感と恐怖に震えていた。
真っ白なロンググローブに包まれたノノカの巨大な手が自分の頭上、スカートの中へ入ってきて股間部を弄る様子をある意味特等席で見せつけられていた。
背中からノノカの太もも越しに伝わってくる興奮した女の高まった体温と、手を飛ばせば届きそうな位置にあるクロッチ部分がべっとりと濡れたパンツ。
同じ人間をいたぶることで性的に興奮し、恥ずかしがる様子もなくそれをいたぶる当の本人たちに見せつけている。
それを自分の知っている人間が行っていることがおぞましく・・・そしてそれをなし得る強大な力に本能的な恐怖を覚えていた。
そして自分が用意したの純白のニーハイソックスに囚われたロロにそれを咎める気力は残されていなかった。
街の外周を1/4ほど踏み固めた頃、軍の基地が街から少し離れたところにあることにノノカは気づいた。
緑色の服を着たニンゲンたちが慌てた様子で頑丈そうなコンクリートで囲われた敷地の中を走り回っている。
基地に何台か残されていた自走砲がこちらへ砲弾を発射しようと準備が行われているのが目に入った。
「そんなの私に効くわけないのに」
そんな健気なむくむくと嗜虐心が湧き上がる。
少し離れたと言ってもノノカの足で数歩もないその場所へ足早に近づくとくるりと回って彼らに背中を向けた。
「えいっ」
そして重力に任せ、基地に向かって自分のお尻を落とす。
信じられないほど巨大な白い・・・けれどクロッチが染みているパンツがミサイル以上のスピードで向かってくるのを、基地に残された軍人たちは呆然と眺めるしかなかった。
頑丈なはずな軍事基地は巨大な魔法少女のヒップドロップになすすべもなく、少女のお尻の形に凹んだただの大地へと一瞬でその姿を変えた。
「えへへ」
パンツ越しに基地が兵器やニンゲンごと潰れるのを楽しんだノノカは、最後に腰を前後に動かし完全にとどめをさす。
そしてお尻についた汚れを払いながら立ち上がると、また街の外周を踏み固める作業に残っていく。
あとには幼い少女の恥部の匂いだけが残された。

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軍事基地の跡地から少し進んだところには、ナチルの街をナチロの他の街とつなぐ高速鉄道の線路が敷設されていた。
さらに外周を踏み固めていたノノカは、町の外へ向かって1編成の列車がここを速度を上げながら走行しているのを見つけた。
列車を脱線させないよう、あまり振動を発生させないよう慎重に線路の横へうつ伏せに身体を降ろし、ニヤニヤしながら線路を見下ろす。
そして白のロンググローブに包まれた人差し指で線路を塞いだ。
ノノカから見て鉛筆よりさらに細い高速鉄道の流線型の車両はほとんど速度を落とすことなくロンググローブと衝突した。
そして大破・脱線しながらもなかなか停止仕切ることはできず、まるで床に落としたうどんの麺のようにノノカの指に絡まりながらようやく車両は停止した。
「なんか気持ち悪い」
手を振り車両を振り落とすと、線路ごと車両を叩き潰した。
満員であったらしい高速鉄道の車両の残骸からは赤い何かがにじみ出てきていた。
魔力をこめてグローブを浄化すると、胸元を払いながら立ち上がる。
そして高速鉄道の線路をピンク色のストラップシューズで思いっきり踏みつけ、もう使い物にならないようにする。
「勝手に外に出ちゃだめって言ったのに、逃げようとするからこんなことになるんだよ」
避難民を1000人以上載せた臨時列車をまるで虫のように叩き潰したノノカは、まるで羽虫を始末したあとのような嫌な顔をしてそこから足早に立ち去った。
そこから少し進んだところにこの街へ電力を供給するための送電用の鉄塔が立ち並んでいた。
しゃがみ込みそのうちの一本を人差し指でかるく弾く。
山の向こうの発電所の方へ向かっているであろう他の鉄塔も、つながった送電線に引っ張られて時間差をつけて倒れていく。
そしてときおり黒い何本かの送電線が切れ、パチンと火花がとぶとともに鉛筆の芯が折れたような音がした。
その様子をクスリと鼻で笑ったノノカは、大半の電力を失い消えた信号機や止まったエレベーターなどでさらに混迷を深める街の様子を気にすることなく歩みをすすめる。
そして外周を1/2と少し回ったところにナチロの街と他の街とを結ぶ高速道路があった。
「ここにも逃げようとしてる悪い子がたくさんいる」
高速道路の上では自家用車で逃げようとしていた車両でひどい渋滞が起こっていた。
本来は走行が禁止されているはずの路肩にも車両が溢れ、道路上は完全に身動きが取れなくなっていた。
高速道路道路を両足でまたぐように立つとゆっくりと道路上に腰を下ろしていく。
何台もの車を染みたパンツのクロッチ部分で押しつぶし女の子ずわりの形で路上へ腰を下ろす。道路からはみ出た両足はナチロの大地にノノカの太ももの形を刻み込んだ。
ノノカの太ももの間には何十台もの車両が渋滞で立ち往生していた。
両側を突然巨大な肌色の壁に囲われた彼らはパニックに陥っていたが、ノノカのいたずら心によって彼らの恐怖はすぐに解消されることになる。
次の瞬間、ノノカはクスクスと笑いながら足を閉じると幼い少女のみずみずしい太ももで彼らを車両ごとすりつぶした。
「これ、ちょっと気持ちいい」
そして、太ももの中で中のニンゲンごとたくさんの車が潰れる感触を楽しんだあと、ノノカはぐっと背中の方向、街の方向へ向かってお尻を動かした。
巨大なお尻はよって数多の車両と道路が瓦礫となり後ろに押し出され、巨大な壁となって高速道路を塞いだ。
ノノカは首を回して後ろの方を向くと、まるで幼い子どもを諭すような表情でこういった。
「まだ君たちは街を出ていなかったから、今のところは許してあげる」
そして前に向き直ると、機嫌が悪いことをアピールすようなこえでこういった。
「でも私の言うことを聞かないで街から君たちには罰を与えなきゃ。もちろん死刑ね」
いうが早いが、地平線の向こうまでピンク色の光線を放つと道路上のすべての車両を道路ごと焼き払う。
ナチロの国力の象徴である高速道路は、魔法少女の破壊力の象徴であるピンク色のマグマへと姿を変えた。
地平線の向こうまで続くそれをノノカは満足そうに眺めていた。

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この大きさで遊んだらすぐにおもちゃが壊れてしまいそう。
自分の千分の一スケールの、ミニチュアの街を見ながらふとそう思った。
どうするのがいいかなと考えながら歩みをすすめていると、何機か飛行機が離陸準備を続けている空港にたどり着いた。
反時計回りにぐるりと街の外周を踏み固めてきたノノカ。空港は外周を3/4ほど回ったところにあった。
2000mの滑走路が一本と真新しいガラス張りのターミナルビルを備えたその空港は、空路で街から脱出しようと多くの人が詰めかけていた。
悩み事は一旦棚に上げ、ノノカは目の前のおもちゃで目一杯楽しむことを決めた。
先程旅客機を撃墜したときから目はつけていた、とっておきのおもちゃの一つだった。
楽しんでいる間に万が一にでもニンゲンどもが逃げ出さないようにするために、まだ踏み固めていない街の外周の残りのは光線で跡をつけることにする。
ピンクの光でなぞられた部分からは、爆発するようにメルヘンチックなピンク色の炎が上がる。
爆炎が引いた跡の残されたのはドロドロに溶けた灼熱のピンク色のマグマだった。
空港敷地内に侵入したノノカは早速、米粒ほどの大きさの乗用車で溢れた空港駐車場をまだ車の中に残っていた人や、ターミナルに向かって車の間を縫うように走っていた人たちごとピンクのストラップシューズで蹴り飛す。
ナチロの工業力の象徴である多数の自家用車を血肉が染み出る産業廃棄物の山へと姿を変えた。
「君たちは後で遊んであげるね」
次に、文庫本ほどの大きさの空港ターミナルのメインエントランスを踏み潰したあとに魔法の力でその他の出口を開かないように固定して中にいる人達を閉じ込めた。
パニックに陥るターミナルビルをまたぎ越し駐機場に侵入すると、頑丈なはずのコンクリートに巨大な足跡を残しながら滑走路へ向かって大股で足をすすめる。
この空港が持つ唯一の滑走路では1機の旅客機が今まさに離陸滑走を始めたところだった。
「そんなにゆっくり走ってノノカから逃げられると思ってるの?」
先程撃墜させたのと同じ機種。全長40mほどの機体が空に逃げるのに必要な揚力を稼ぐため時速200キロを超え更に加速を続けていた。
ノノカから見て長さが4cmほど、使い込んだ消しゴムより小さいモノが毎秒6cmほどの速さでノロノロと進んで行く姿は、これが自分から必死で逃げているのだと思うと、ひどく滑稽に見えた。
ようやく浮き上がったその旅客機の目の前に自分の足を差し出す。
白いニーソックスに包まれたノノカのくるぶしへ回避行動を取ることすらできず衝突し、ホコリがあたった程度の感触を与えると、大きな炎を上げながら粉々に砕け散った。
あまりにも無様な様子に嘲笑を浮かべたノノカは、滑走路をめちゃくちゃに踏みつけ二度と使えないようにすると格納庫へ向かった。
格納庫の前に膝をつくと、その横にあった管制塔を戯れに人差し指で押しつぶし、器用に屋根を剥がしていく。
中には何機かセスナ機や数人乗りのプライベートジェットが収められているのが見えた。
ノノカから見て1cmほどの大きさしかないそれらを、慎重に一つづつつまみ上げすべて手のひらの上へ移す。
もう用は済んだ格納庫を叩き潰すと、もう片方の手に載せた新しいおもちゃを壊さないように気をつけながらターミナルビルへ戻る。
そしておもちゃを駐機場に丁寧に並べると、頬杖を付きながらガラス越しに中がよく見える位置へ仰向けに寝転んだ。
目の前にあるのは3機の数人乗りの小型機と、ボーディングブリッジに接続された2機の旅客機。そして自らニンゲンたちを閉じ込めた空港ターミナルビル。
「これからノノカは、ビルの上に飛行機を落とすから。もし死にたくなかったら頑張って逃げてね」
左手で頬杖を付きながら右手で飛行機をつまみ、それをターミナルビルの中にいるニンゲンたちに見せつけるようにしてから、自分の目線の高さである地上数百メートルの位置まで持ち上げる。
ターミナルビルのガラス張りの構造のおかげで、ノノカは中にいるニンゲンたちが慌てふためき、泣き叫び、恐怖に震える様子を余すことなく見ることができた。
この何百人もの大人たちの生殺与奪権を少し前までただの小学生だった自分が握っているという事実。その優越感にだらしなく顔を緩ませながら、つまんでいた手を離した。
1機目の小型機はターミナルビルを震わせた。
2機目の小型機はいくつかのガラスを割り、割れた破片が中の人達を傷つけた。
3機目の最後の小型機は、その衝撃で屋根の崩落を招き、中の人達へその瓦礫が降り注いだ。
4機目の旅客機はついに建物を半壊させ、中にいた多数の人々を死傷させた。
そして5機目、離陸準備が済ませられ、満載の燃料と飛行機で逃げられるという願望にすがるしかなかった多数の乗客たちを乗せた最後の旅客機が、ターミナルビルへ向かって落下を始める。
ビルの中からも、これまでのノノカのお遊びで屋根に開けられた穴からその様子がよく見えた。
ターミナルビルは大破炎上して中にいる人達を瓦礫で押しつぶし、そして生き残ってしまった人たちを焼き殺した。
自分の行為の結果としてニンゲンが生きたまま焼かれる様子をノノカは興味深そうに眺めていた。
そして満足すると、まだ炎上を続けているターミナルビルをピンク色のストラップシューズで踏み潰し完全に止めをさした。
「スッキリ」
これで鉄路も道路も空路もすべて街の人々が外へ逃げる手段はノノカによって破壊され、さらに街の外周には絶対に脱出できないように巨大な堀が築かれた。
住民達の生への希望を完全に断ち切ったノノカは街に向かって向き、得意げに胸を張ってこう告げた。
「えへへ、これでもう逃げ道はないよ」
この街のすべてのニンゲンどもがすがるような目で自分を見つめている。
その事実に背筋がゾクゾクするような快感を覚えながらノノカは言葉を続ける。
「みんななぶり殺しにしてあげる」
可憐な笑顔で告げられたその台詞に街は恐怖の坩堝と化した。