日本の主要都市を全て壊滅させ、その際自分の抱いていた気持ちに気付いたエリーが、地球人の彼と母星で共に暮らすようになってから数か月。エリーは彼と毎回撮影してくれる自分の都市破壊の映像のことから普段の生活での話まで、すっかり打ち解けてするようになり、日々を楽しく過ごしていた。
そして今でもエリーによる毎月お楽しみの大都市破壊は続けられており、これまでと変わったのは、エリーが地球へ赴く際に彼も一緒に来ていることであった。
地球に到着した後は彼には宇宙船に残ってもらい、以前与えた地球人が扱うサイズのゴーグル状の記録装置で、自分の都市破壊の模様を記録してもらうのが恒例になっていた。
そして今日、月に1度の地球の都市破壊のため、エリーは彼と共にシンガポールの街へやって来ていた。

「さーて着いた着いた~!うん、今回もちゃんと言い付け通り、立派に都市を再建してくれてるね。目の前いっぱいにいい感じのビル群が広がっていて、蹂躙のし甲斐があるね。」

地球人の1000倍の自身の巨体で、お楽しみに使うビル群をいきなりグチャグチャにしない様、マリーナ湾に降り立ったエリーはしっかりと再建されたシンガポールの街並みを眺め、今月も地球人達が途方もない労力と資材を投じて、自分のためだけの破壊用都市を用意していたことに満足感を覚える。
そんなエリーが自身の左手に目をやると、100メートル近い幅を誇る手のひらの上に、地球人用の保護容器に包まれた彼の姿があった。

「あなたにはいつも私の都市破壊の様子を凄く魅力的に撮影してもらっていて、本当にありがとね。それで今回なんだけど、いつもの様な撮影はお休みでいいかなって思ってるの。あなたは私の都市破壊を眺めるのがとっても好きじゃない。だから今日は撮影のことは忘れて存分に私がこの都市をめちゃめちゃにして行くのを生で見てもらおうかなって…」

エリーの提案に彼が異論を唱えるはずが無く、しっかりと目に焼き付けると即答したのを聞いたエリーは彼に向けて微笑むと、シンガポールでも特に特徴的な3棟の超高層ビルの上に船の形のような空中庭園とプールを備えたマリーナベイ・サンズに近づき、屋上に彼を優しくそっと降ろしてあげた。

「この都市にはこの面白い形のビルがあったから、あなたにここを使って貰おうと思ってたんだ…ちゃんと再建させたから、この特等席から私のことしっかり見ててね。あ、撮影の事は本当に気にしなくていいんだよ。今回はオートモードで記録しておくからね。」

エリーは彼にそう告げると、すぐ目の前に広がる金融街の超巨大ビル群をいきなり破壊することはせず、湾沿いの雑多なマンション群を次々と踏み潰しながら、15キロは離れたチャンギ国際空港へ10秒もかからずに移動した。
この都市でも飛行機をいくつも踏み潰したり街へ投げつけて遊ぶのかと彼は考えるが、エリーが空港敷地内に足を踏み入れても航空燃料を満載した飛行機が破壊されて大爆発を起こしたりする様子はなく、不思議に思っていたところへエリーからの通信が入る。

「ふふ、今回はね、飛行機での遊び方をちょっと変えてみたの。私のいる辺りの上空を眺めてみて?」

彼がエリーに促されて空を見上げると、100は超えそうな旅客機らしき機影が点在しているのが目に入って来る。

「飛行機って踏み潰すと大爆発…って私にとっては大したことないけど、その時の感触が結構いい感じなの。だから今回は全身でその感覚を感じてみようって思ってね。前もって地球人には私が来るのに合わせて、空港周辺上空に旅客機をた~くさん待機させといてねって命令してあったんだ。あ、もちろん地球人とはちゃんと私の言いつけを守ったら都市破壊の巻き添えにはしないよって約束してるし、あれは無人操縦なの。あなたに渡したようなゴーグル状の装置を渡してあって、操縦席からと全く同じ目線で動かせるようにしてるから、ちゃんと私の体に機体をぶつけてくれるはずだよ。」

彼に状況を一通り説明し終えたエリーは、通信先を100機以上もの旅客機を操縦する地球人パイロット達の管制官に切り替えた。

「準備できたから、私の全身にどんどんぶつけていって。あなた達のオモチャなんていくらぶつかっても何ともないんだから、変な気を使ったりしたらむしろ許さないからね?」

エリーの命令を受けた管制官は、一人のパイロットに機体をエリーの体に衝突させるように指示を出す。そのパイロットはゴ-グルの映像を基に機体をエリーの胸の辺りに向けてコントロールし、全速力で突入させた。
エリーの体に衝突した旅客機は、前方から順にぐしゃぐしゃに潰れて破壊され、満載の航空燃料に引火して大爆発を起こしてしまう。胸の辺りで発生した爆炎はエリーの顔の辺りにまで達したが、爆発が収まった時には露出した肌にも傷一つないエリーが悠然とその場に立っていた。

「ほら、こんなオモチャなんてちっとも痛くもないよ。分かったら3~4機くらいどんどんまとめてぶつけていってよ。」

この様子をテレビ中継で見ていたある軍高官は、かつてエリーが地球にやって来たばかりの頃、全世界の軍の戦力を結集させ、エリーとの戦闘が行われた時の前線からの記録映像を思い出していた。1680メートルの巨体を誇る異星人のエリーを相手にする以上、できる限りの火力での攻撃が必要であることは明白であり、航空機には威力のある対艦ミサイルが搭載され、その他地上発射ミサイルなども高火力の物が揃えられての攻撃が行われた。
しかし、それら世界全ての総力で立ち向かった攻撃も全く効果があがらず、現在のエリーによる支配が確立してしまった訳であるが、その戦闘の時も旅客機を突入させるような攻撃は行われなかった。
今エリーの体に激突したのは、ミサイルの中では大きいとは言え1トンは無いような対艦ミサイルではなく、燃料満載で300トンは超えるかと言う重量の旅客機である。確かにミサイルの様に炸薬は入っていないが、大きさのケタが違うのだから、その衝撃力は地球人が行いうることの中でも頭抜けているはずである。
だが、それをもってしても痛みも感じないオモチャ扱いをされたと言う事実は、あらためて地球人達にエリーには絶対に敵いようがないということを痛感させた。

「ほらほら、あまり間を開けないでぶつけ続けていってよ。この感触をもっと私に味わわせて。」

エリーに急かされた管制官は、旅客機が数機毎の単位で突入するように指示を出していたが、1つのグループが突入し終える前から次のグループにも突入態勢を取らせ、エリーが旅客機激突の感触を存分に味わえるようにペースを早めていった。

「アハハ、私の体で地球人のオモチャがどんどん壊れていっちゃう。まとめてぶつけられるとちょっとくすぐったい感じもして気持ちいいよ。あれ、もう大分減っちゃったんだ。残ってるのは15機くらいかな。管制官さん、最後は残ってる機体全部まとめてぶつけてくれない?やっぱり最後は派手にやりたいの。」

そう命じられた管制官は、残っている機体を操縦するパイロット達にエリーの周囲を円状に飛ぶように指示し、タイミングを合わせて一斉に機体をエリーの方向へ向かわせるように号令を出した。エリーの体に四方八方から残った機体が突入し、この遊びを始めてから最大級の爆炎が立ち上ったが、それらが晴れるとぶつかった跡も無いような、最初の姿のままのエリーの巨体がそこにはあった。

「うーん、全身で一気に浴びるのも結構気持ちいいね~。中々面白かったよ。あ、管制官さん、パイロットの人達にご苦労様って伝えておいて。」

旅客機での遊びを堪能したエリーは、空港に来た時とは違う地域を踏み潰しながら、彼のいるマリーナベイ・サンズから5キロ程離れた地点へ移動し、彼に向って呼びかけた。

「ねえ、さっきのどうだった?あなたも旅客機に乗ったことあるよね?あれって地球の中じゃ結構大きい乗り物でしょ?それが100機以上束になっても潰れて爆発していくだけなんだよ?生で見て、私の力感じ取ってくれたかな?でもあなたも知ってるけど、まだこんなものじゃないんだから、どんどんいくよー。」

そう言うとエリーは100メートル級のビルが大量に建ち並んだエリアを確認し、次の行動を決定した。

「じゃあ次はあなたも好きって言ってくれた、高層ビル群への飛び込みやっちゃうね。私の目の前にあるこのたくさんのビル群、ぜ~んぶ私の体ですり潰しちゃうね。」

高層マンションが無数に建ち並び、オフィスビルも擁する一帯の立派なビル街を、自分が大好きな飛び込み破壊で今から全滅させるとの思いで、エリーはゾクゾク感を抑えることができなくなっていた。助走のために高層ビル群から適度な距離を取ると、エリーは一気に走り出し思いっきり高層ビル群へ飛び込んで行った。
エリーの全身がビル街へ衝突した瞬間、何十棟とも分からない高層ビルが一瞬で一気に圧し潰され、さらに衝撃で吹き飛び崩れ去っていくビルも加えれば、100棟を超える数の高層ビルがグチャグチャに破壊されてしまう。本来であれば何十万もの人々が住み、働き、生活できるようにインフラから建物内の財物まで含めて再建されたビル街は、エリーのたった1回のお楽しみで消費し尽くされてしまった。

「アハハハ!あんなに立派だったビル街がみんなすり潰れちゃった!地球人のビルがたっくさん潰れていく感覚が目いっぱい感じられて、本当に気持ちいいんだよね!そう言えばあなたも前に東京とかで私がやった飛び込み破壊、現地で見たんだよね。でも今日は船の上じゃなくて、見晴らしのいい場所から見れてるし凄かったでしょ?」

エリーに問いかけられた彼は、目に入る光景はもちろん、衝撃や轟音などリアルに街が破壊されていくのをひしひしと感じていると最大限伝えてみせた。

「やっぱり生で見てもらって正解だったね。じゃあ次はもっとそっちに近づいて破壊しちゃおっか?」

辺り一帯をすり潰し、吹き飛ばし尽くしたエリーはうつ伏せの状態から起き上がると、彼のいるマリーナベイ・サンズ近くに広がる超巨大ビル群を擁する金融街へ向けて、途中に連なる無数の高層マンション群を、次々と何棟もまとめて踏み潰しながら移動を始めた。
世界有数の人口密度を誇り、エリーに破壊指定都市にされる前までは500万人以上が生活していた大都市のシンガポールに再建されるマンション群は、大きさも密集具合も地球の都市の中でも群を抜いていたが、彼の元に近づいて行くエリーによってどんどん壊滅してしまった地域が増えていく。もしこれらのマンション群全てにかつての様に地球人達が普通に住み暮らしていたならば、エリーが一歩踏み出すたびに3000人は下らない数の犠牲者が出ていただろう。
ただ歩いただけでもマンション群に巨大な足跡をいくつも刻み付けてめちゃくちゃに壊滅させ、目についた「いい感じ」のマンション群は、ちょっと遠回りをして立ち寄ると、足の側面を使って10棟単位で一気に薙ぎ払い破壊をして、積み重なり合ったガレキの山に変えてしまう。

「地球人が1万人以上は住めそうないい感じのマンション群だったけど、私が足で薙ぎ払うだけでどんどん全滅していっちゃう。そんなマンション群がまだまだいっぱいあるし、地球人達ちゃ~んと頑張ってこれだけの数の高層マンション、中も実際に住める様に作り上げてくれたんだよね。これだけたくさん、ぜ~んぶめちゃめちゃに蹂躙しちゃうの、とっても気持ちいいよ。」

高層マンション群を全滅させ終わり、金融街の目の前までやって来たエリーは、おもむろに靴と靴下を適当な高層ビルの上に脱ぎ捨て、靴の重さでビルが崩落していくのを横目に、超巨大ビル群の方を向いて座り込んだ。

「ここがこの都市一番の超高層ビル群で、今日のメインディッシュだね~。あなたが考えてくれた超高層ビル群への足裏押し付け、地球っぽく言えば『足裏ドーザー』。超高層ビル群が相手じゃないと足裏が満遍なく気持ち良くなれないから、やるならここだね!あなたが見たいって言ってくれた破壊方法を、こんなに近くで見れちゃうんだよ?それじゃあ早速やっちゃうからね。」

彼に向けてメインディッシュの破壊宣言をし終えたエリーは、200メートル級のビルだけでも30棟は建ち並んでいた金融街の超高層ビルへ、真横から足裏を押し付けていった。エリーの足裏に押し退けられた超高層ビルは、近くの超高層ビルにそのまま激突しグチャグチャに砕け崩れていくが、エリーの足裏を押し付ける速度は少しも衰えることなく、その先の超高層ビルも続けて押し退けていった。さらに間に存在した100メートル級の高層ビルも何棟も巻き込んで押し流し、エリーが足裏を伸ばし切った時には、足幅いっぱいの間に存在したビル群が全てグチャグチャに崩れ去って足裏の前に堆積してしまっていた。

「っっーーん!コレよコレ!やっぱり足裏での超高層ビル破壊ってすっごく気持ちいい!まだ無事なビル群もどんどん押し流しちゃうんだから!」

エリーは今度は先ほどとは逆の右足を前方の超高層ビル群へ伸ばし、またも何棟もの超高層ビルを足裏で押し流してその感触を存分に堪能し、膨大な量のグチャグチャなガレキの堆積物を生み出してしまう。

「アハハ!まだ何回分かの無事な超高層ビルが残ってる!やっぱり私が選んだ破壊のし甲斐がある大都市なだけあるね!ちゃ~んと元通り以上に超高層ビル群が再建されてるし、本当に地球でのお遊びは楽しいね!」

足裏での超高層ビル群破壊での気持ち良さを存分に味わえたエリーは、最後の1棟が足裏でグチャグチャに破壊されるまで座る位置を調節してそれを繰り返し、シンガポール最大のビル街をすっかり壊滅させてしまった。

「ふう、とっても気持ち良かった~。あ、ねえ、そこから見ててどうだったかな?今日一番の大破壊をそんなに間近で見た感想は?それもあなたが見たいって言った『足裏ドーザー』で!」

マリーナベイ・サンズから1キロやそこらしか離れていない、それこそエリーが身を乗り出して手を伸ばしたら届いてしまうような距離から、想い人のエリーが繰り広げてくれた大破壊を生で見ることができた彼は、あまりのことにうまく言葉が出てこなくなってしまい、ただただ嬉しさを伝えるだけで精一杯だった。

「さーて、この都市一番の超高層ビル群はこれで壊滅させちゃったけど、まだ破壊のし甲斐がある建物が残ってるよね?あれ、わからない?答えはあなたが屋上にいるその3棟の超高層ビルだよ。こんな特徴的で面白そうなビル、壊さずにはいられないよ。」

エリーはガレキの山と化した金融街を後にして、マリーナベイ・サンズの目の前ある大型ショッピングモールを女の子座りをして圧し潰してしまう。そうしてふとももの間に3棟の超高層ビルを収めたエリーは彼に向けて優しく語りかけた。

「今からふとももでこの3棟のビルを挟み潰しちゃおうと思うの。すぐ真下にある超高層ビルが私のふとももで潰されていくのをそこから見たらきっと凄い光景のはずだよ。でも安心して、あなたに危険が及ぶようなことは絶対にしないから。あなたのいるその屋上施設は私がしっかり持ってるから、大丈夫だよ。ただ念のため保護容器には入っていてね。」

エリーの言葉を聞いた彼は、エリーを信頼しつつも万一があってはいけないと透明の保護容器の中に入り、そこから映像では絶対に体験できないであろう、これ以上ない間近で引き起こされる大破壊を見せてもらうことにした。

「それじゃあいくね。危なく無い様にゆっくり閉じていくから…」

言葉通りエリーがゆっくりと両ふとももを閉じていくことで、右端と左端の棟の下半分がふとももでどんどん破壊されていった。贅の限りを尽くした高級ホテルは、ファミリー向けタイプからスイートルームまで、エリーの言い付け通り内装の調度品も完璧に揃えられた状態で再建されていたが、全てあっと言う間に部屋ごと無価値なガレキの一部に変えられてしまっていた。
彼の視点からは、すぐ目の前に女の子座りをしているエリーのふとももが、左右両方からビル本体へ割り込んで破壊していく光景が間近に見えるのに加え、下からの振動や凄まじい破壊音が体に伝わってくる。
そしてそれを引き起こしてくれているエリーの優しい表情が自分にしっかりと向けられているのを感じ、破壊によって引き起こされる興奮とまた別のドキドキ感も同時に感じ取っていた。
下層階が破壊された2棟のビルは、支えを失った上層階が崩落してしまうが、船の形をした屋上施設はエリーがしっかりと支えていることで、元の高さのまま存在していた。さらにエリーがふとももを閉じ密着させたことで真ん中の棟も崩落し、屋上施設を支えるものはついにエリーの両手のみとなっていた。だが施設そのものは支えていた3棟のビルが完全に破壊されたにも関わらず、ほとんど損傷していなかった。

「どうだったかな?あなたがこれだけ近づいた状態で、私がビルを破壊するのを見せたことはなかったけど、楽しんで貰えたかな?」

つい思い付きを実行してしまったものの、もしかしたらあまりの迫力に少し怖い思いをさせてしまったかもしれない。内心少しそう思いながら問いかけるも、彼からは自分のためにしてくれたことに対する喜びでいっぱいであるとの答えが返って来たことで、やはり彼と一緒に生活をして行くことを選んだのは間違いではなかったとの思いをエリーは深めるのであった。

「さて、今あなたがいるこの施設だけど、折角だし持って帰っちゃおうか。私の部屋に置いておけばあなた用のちょうどいい庭って感じになるんじゃないかな。」

長さ300メートル以上で巨大プールまで付いた、地球人にとっては途轍もなく贅沢な庭をお持ち帰りして、2人はめちゃめちゃになったシンガポールを後にエリーの母星へ帰っていくのだった。