「風夏姉。明日名古屋駅前で、新しい超大型ビルの開業記念式典があるんだって!遊びに行かない?」
「ふふ、凄く大きなビルなのね。とても楽しめそうね。行きましょう。」
「やった!明日が楽しみ!」

自宅のテレビから流れる超大型複合施設開業のニュースを聞き、明日の予定を決めた風夏と冬乃の仲良し姉妹。ニュースからは5年前からの復興~等のアナウンサーからの解説が聞こえてくるが、二人は特に興味がなかったらしく、いそいそと遠出の準備をする。


「…本日ここに、日本最長の長さを誇る大型複合施設が開業致します。今から5年前、名古屋市は未曽有の惨禍に襲われ街は壊滅し、多くの方が犠牲となられました。しかし今我々はその悲劇を乗り越え復興を成し遂げています。その象徴たる施設こそがっ…」

名古屋駅前でいよいよ開業を迎えた、高さ180メートル、横幅なんと400メートルという日本最長の長さを誇る超巨大ビル。その開業記念式典に呼ばれた市長の演説が突然の轟音と大揺れで遮られる。

「うわ~凄い!高さもだけどこんなに横長のビル見たことないね!」
「ふふ、どう壊してあげようかしらね?」

名古屋駅前に突如として普段の100倍に巨大化して現れた風夏と冬乃の美人姉妹。5年程前は姉の風夏のみが巨大化して名古屋駅とその周辺を徹底的に蹂躙してしまったが、その後妹の冬乃も巨大化能力を身に付けてからと言うもの、日本各地の大都市から地方都市まで様々なところに二人で巨大化して現れるようになっていた。妹はこれまで姉に頼むことでしか発散できなかった破壊殺戮衝動を満たすために、姉は妹にせがまれて幾度も街を壊滅させている内に目覚めた、人々が暮らす平和な街並みを踏みにじり、高価な建築物の集合体を無価値なガレキに変貌させていく快感のために、犠牲にしてきた街の数は最早100を超えていた。

「ねえねえ、やっぱりこの横幅を活かして破壊してあげるのが絶対いいよね!こういうのはどうかな?私と風夏姉がそれぞれこのビルの両サイドからビルを破壊しながら歩いて行って、最後は真ん中で向かい合うの!」
「いいわねそれ。早速やりましょうか。」

風夏と冬乃は横幅400メートルのビル、通称「ホワイトウォール」の両側面に向かい合って立つ。ホワイトウォールは高さも180メートルあり、人間の100倍の身長を誇る二人ですら視界が遮られお互いを見ることができなくなってしまう。

「風夏姉!それじゃあ行くよ!普通に歩いていく感じでいいかな?」
「そうね、じっくりこのビルが壊れていく感触を味わいましょう。」

風夏と冬乃、それぞれが巨大化した自分達の目の前に立ち塞がるホワイトウォールの両側面から歩みを進めていく。二人の身長を超える高さの超高層建築物は、横から押し入ってくる二人の巨体に端から粉砕され、最上階から1階までグシャグシャのガレキと化して崩れ去っていく。普通の超高層ビルであれば、巨大化した2人が2歩も進めばビル全体が崩壊して全て破壊されてしまうが、横幅400メートルを誇るホワイトウォールは、まだまだ無事な部分が300メートル以上残っている。もっとも、最初に破壊された部分だけで、超高層ビル2棟分に相当する膨大な量のガレキが生み出されていた。

「わ~、私が歩くのに合わせてビルのガレキがグシャグシャグシャ~って降りかかって来て、シャワーみたいに気持ちいい~。」
「今までたくさんの超高層ビルを破壊してきたけれど、歩きながらシャワーを浴びられるみたいな感覚は初めてね。」

名古屋駅前で2人の出現に居合わせた人々の中に、日本中で破壊と殺戮と繰り広げてきた美人姉妹のことを知らない者は誰一人としておらず、蜘蛛の子を散らすように逃げ出す人々。それをよそ眼に世界で一番贅沢なシャワーを浴びながら談笑する風夏と冬乃。1秒間で100億円単位の財物が2人の快感のためだけに消費されていた。

「あ、風夏姉、もうすぐ真ん中の部分まで来るね。最後は2人でハグし合いっこしようよ!」
「そうね、残った真ん中の部分を二人で抱き潰しちゃいましょう。」

人々が5年間かけて建設された超巨大建築物が、風夏と冬乃のガレキシャワーとして機能したのはわずか10秒足らずの出来事であった。名古屋市復興の象徴が、5年前に名古屋市を壊滅させた張本人の風夏と新たに日本各地を直接壊滅させるようになった冬乃の2人によってその努力を嘲笑われるかのように崩れ去っていく。

「じゃあ残りの部分は一緒に抱き潰しちゃおう!風夏姉ぎゅ~!」
「ふふ、冬乃は本当に可愛いわね。ぎゅ~。」

元々横幅400メートルを誇っていた超高層建築物であったが、最後に残った横幅30メートルの部分は、ラブラブな2人によって両サイドから抱きしめられ、爆発するように崩れ去ってしまった。

「気持ち良かったね風夏姉!」
「そうね、ビルが崩れていく感覚と冬乃の柔らかい温もりが一度に感じられてお姉ちゃんもとっても気持ち良かったわ。ところで、この後はどうする?」
「せっかくだしもっと街を破壊してもいいけど、この街は前にも1回、ってあれは風夏姉が大暴れしたからだったけど破壊しちゃってるし、今日のところはこの辺でいいんじゃないかな?たまには節約しないと街も人も足りなくなっちゃうよ!」
「ふふ、冬乃は優しいわね。じゃあ今度久しぶりに海外旅行でもする?」
「やった~!どこに行こうかな~。」

人的被害だけはそれほど出なかったものの、この街の5年間の復興の努力を無残に踏みにじりながら次の破壊のターゲットについての話で盛り上がる姉妹を見て、人々は身も心も打ち砕かれていくのであった。