「オーホホホ!この街の庶民の皆さん!今日はわざわざお集まり頂きご苦労様ですわ!」

とある街の丘の上にあるだだっ広い空き地。休日のこの日、この街に住む人々が超巨大財閥のお嬢様の呼びかけで全員招集され、1万人以上の人々が壇上で高笑いをかましているお嬢様の話を直立不動で聞かされていた。

「何がお集まり頂き~、だよ。自分で招集かけておいて…」
「よせよ、聞こえるぞ。」

あらゆる業種を網羅する金宮財閥の跡取り娘である金宮お嬢様が高飛車な態度で話をしているが、それを聞かされている街の人々は重苦しいような、恨みがましいような表情でただ黙って話が終わるのを待っていた。

「さて、早速ですが今日はこの街で遊んで差し上げますわ!ワタクシがこんな庶民の街にわざわざやって来たのですから、光栄に思うが良いですわー!」

街の人達に向けて好き勝手なことを一通り宣ったお嬢様は、壇上を降り人々から距離を取ると尊大な態度を崩さないままグングンと巨大化をしていった。身長80メートル程の大きさになったところで、目の前で巨大化したお嬢様を見て動揺する人々を上から見下ろしながらさらにでかくなった態度で宣言する。

「では今からあなた達の街がワタクシに破壊されていく様子を、ここで指でも加えて眺めているが良いですわ!オーホホホ!」

丘を降りたお嬢様の目の前には一戸建てを中心とした住宅街がびっしりと広がっていたが、お嬢様はさも当然と言わんばかりに最も手前に位置していた2階建ての住居の真上に不必要なまでに脚を高く掲げると、勢いよく振り下ろして一瞬で家を踏み潰してしまった。あまりの踏み降ろしの威力に一軒家が内部から弾け飛ぶように破壊される様は、人々への見せ付けとして絶大な効果を発揮していた。

「オーホホホ!流石庶民の家。一踏みで破壊できてしまうなんて、みすぼらしい大きさですこと!ワタクシのペット用の小屋よりも小さいんじゃないかしら~!」

手始めに一軒の家を踏み潰して破壊したお嬢様は、そのまま巨大な身体で住宅街にずけずけと押し入り人々の家を次々と蹴散らし、踏み潰して破壊していった。どれだけ足元がゴミゴミしていようと、お嬢様は育ちの良さをも見せつける様に優雅な姿勢を崩すことなく、高級な、けれども品の良い自慢のヒールを履いた足で人々の家をただのガレキに変えていく。

「くそ!俺達の家が…それにペットの小屋より小さいだなんて…」
「でも実際お嬢様のインスタにアップされてるらしいぞ。お嬢様のお屋敷の敷地内にあるペット小屋が、小屋なんてものじゃない広くて豪華な戸建てだって。」
「何だよそれ…俺達は犬とかのペット以下だって言うのかよ…」

お嬢様に好き放題にどんどんと家を破壊されて悔しがる街の人々。だがそんな人々の思いを踏み躙る様に、お嬢様は挑発的な言動も交えつつ街の破壊を続けていた。

「ふーん、これが庶民が乗っている自家用車。これだと確かお値段は200万円くらいだったかしら?ワタクシがコレクションしている純金製のミニカーの方が高いですわよ!それにも劣る物になんて良くもまあ乗れたものですわね、オーッホホホ!」

ある住宅の駐車スペースに停められていた乗用車をつまみ上げて一通り観察し終わったお嬢様はチラっと丘の方に視線をやったかと思うと、顔のすぐ近くに掲げていた右手にほんの少しだけ力を込めて庶民の自家用車をグシャリと握り潰す。ただの鉄のゴミと化した車をティッシュでも捨てるかのように手首を軽く振って地面に投げ捨てると、住宅街の蹂躙を再開する。街の住宅街をあらかた破壊し終えたお嬢様は商店が軒を連ねる駅前も続けて破壊していった。

「なんてみすぼらしい店ばかりなのかしら。こんなところで売っている商品なんて洋服もバッグも、例え使い捨てであっても御免ですわね!」

商店街の人々にとっては何年、何十年も商売を続けてきた大切な自分達の店であったが、お嬢様にただ破壊されただけでなく、取り扱っている品々も徹底的に見下されたことで精神的にもズタボロに傷付けられていた。

「こっちの店は飲食店のようですわね。どれどれ、庶民にはどんなお食事を提供しているのかしら。」

お嬢様は如何にも金をかけたと分かる様な豪華な装飾が施されたスマホを取り出すと、その店の情報を調べだした。

「ププッ!何ですのこの料理!何て質の悪そうな食材を使ってるのかしら!こんな物ワタクシのペットにすら食べさせられませんことよ!」

街の人々が通う飲食店の料理をペットのエサ以下であるとバカにしたお嬢様はその店をあっさりと踏み潰すと、そのままやや大きめのスーパーなども破壊し、駅前も破壊し尽くしてしまった。

「オーホホホ!随分と汚らしい商店街でしたけど、これでもう完全に無くなりましたわね!こんな片付けなど本来はメイドの役割ですが、このワタクシが直々にして差し上げたのですから庶民共、大いに感謝することですわー!」

街1つ破壊し尽くしたお嬢様であったが、身に付けていたいかにも超一流のものと思われる高級感のあるハンドバッグの口を開き、適当に手を突っ込んだかと思うと中から取り出した何かを一面ただのガレキに変えられた街へ向けて振りかけていった。
街の人々が目を凝らしてそれを眺めると、それは何やらたくさんの小さな紙の様であった。

「こんな貧相な街で生活をしていた庶民のみなさん。ワタクシ、あまりにも不憫に思いましたから復興費用も兼ねて現金をプレゼント致しますわ!街中に振り撒いておきますから後で好きなだけお拾いになるが良いですわ、オーホホホ!」

そう言いながら、ガレキに変えられてしまった街を踏みしめつつ凄まじい量の普通の大きさの万札をあちこちにバラ巻くお嬢様。それが終わると人々を集めた丘の上に戻り声を掛けた

「さー、準備は整いましたわ。ワタクシが合図したら開始ですわよ!」

お嬢様の言葉を聞いた街の人々は、ガレキの街へ向けて駆け出す体勢を取りお嬢様の合図を待つ。

「よーーい、ドン!」

お嬢様の合図を聞いた1万人以上の人々は我先にと街へ向かって走って行く。お嬢様の身勝手により住む場所を失い、また勤め先を破壊され同時に仕事も失ってしまった人も多く、破壊される前の元の生活を取り戻そうと大量に散らばっている万札を1枚でも多く拾い集めるため誰もが必死になっていた。

「オーホホホホホ!あの程度のお金に必死になって群がるなんて、庶民の方々の気が知れませんわねー!」

お嬢様によって破壊された街で、必死にお金を拾い集める人々を見ながら今日一番の高笑いをするお嬢様。

「フフ、あなた達が必死で拾い集めているお金ですけど、そのお金で新しい家を建てても、またあの貧相な自家用車を買うにしても、身の回りの品を買うにしても、それらを作っているのは全てこの金宮財閥の系列企業!結局そのお金は全てワタクシの元に戻ってくるだけですのよ!オーホホホ!」


・・・


「あら、金宮のお嬢様、自分の所の街1つ潰して遊んでらしたみたいですけど、あんなレベルの低い街を破壊して楽しいのかしら?被害額もたったの2,000億円だなんて…どうせ遊ぶならもっと破壊のし甲斐がある大きな街で遊べば宜しいのに…」

とある大きなお屋敷で、金宮お嬢様のお遊びについて報じる経済新聞を読みながら優雅に過ごすお嬢様がまた1人。
超巨大財閥が支配するこの国では、お嬢様のお遊びは最早日常の光景と化していたのであった。