※文字数制限で削りましたが、正式タイトルは「ご主人様のことが大大大しゅきなメイドさんがご主人様のために街を破壊してくれるお話」になります。長いですね。



「ご主人様~、今日はどちらへおでかけなさるんですか~。」
「そうだな、今日は渋谷に行ってみようか。」
「わ~い!都会じゃないですか!これは期待に胸が高鳴りますね!」

ここにいるのはご主人様をとっても慕っているメイドのユキと、そのご主人様だ。
ユキはロングスカートに胸から長く伸びた純白のエプロンという、正統派のメイドの装い。
対するご主人様は黒の上下スーツで、育ちの良いきちんとした身なりを整えていた。

そんな二人はとある地方のお屋敷に住んでいるのだが、今日はたまの「お楽しみ」のために、遠路はるばる渋谷まで向かうことになったのだ。

<次は渋谷ー、渋谷でございます。お降りの方は・・・>

「ご主人様、渋谷に到着しましたよ。起きてください!」
「…ん、ああ、寝てしまっていたか。寝過ごすところだったな。それにしてもユキは元気そうだな。」
「はい!だってもう電車を降りたら「お楽しみ」の時間じゃないですか!ユキはワクワクして仕方がありません!」
「はは、その様子なら今日も素敵な光景が見られそうだ。」

電車を降りた二人は改札を出て、渋谷の名所の1つである、渋谷ヒカリエを目指して歩いて行った。
ユキはご主人様の腕に自分の両腕でがっしりと抱き着きながら歩いており、傍目にはバカップルのそれにしか見えない様子だった。

「なんだぁあれ、メイドじゃん。隣のやつはどこの誰だよ。」
「ハハ!アキバと勘違いしてんのかよ。駅間違えてんぞ!」

道すがらややガラの悪そうな二人組がユキとご主人様の様子を見て、からかいの言葉を投げかけた。

「…ご主人様、あの二人ご主人様のことをバカにしてます。許せません。殺していいですか?」

ユキは周りには聞こえない程度の声で、だが冗談でなければ恐ろしいことを言ってのける。

「いいよ、放っておいて。どうせこの後この辺りにいる連中はみんな同じことになる。残り少ない人生を噛みしめる時間にしてもらえばいいさ。」
「さすがご主人様!お優しいです~。」
「さて、そろそろ目的地に着いたぞ。じゃあ「お楽しみ」の時間を始めるか。」
「きゃ~~!待ってました~!ユキ、張り切っちゃいますね!」

ユキはぎゅっと抱き着いていたご主人様の腕から手を放し、渋谷ヒカリエの中に向かって駆け出して行った。
対するご主人様はと言うと、ヒカリエの向かい正面にある渋谷スクランブルスクエアに入り、一直線に屋上展望施設へと向かって行った。

「さて、特等席からユキの勇姿を見物させてもらうか。」

丁度ご主人様が屋上に着いたのとほとんど同時に、ユキからスマホに電話がかかってきた。

「ご主人様、ユキの準備はOKです!もう始めちゃいますか!?」
「ああ、それじゃあ始めてくれ。」
「りょーかいですご主人様!今日もユキの良いところたっぷりお見せしますね!」

そう言って電話を切ったユキは、両手を胸の辺りにあてると意識を集中し始めた。
するとユキの体が見る見る巨大化していき、数瞬後には地下フロアを突き破り、かわいらしいヘッドドレスを被ったユキの頭が上の階へ上の階へと次々床を突き破って伸びていく。
ユキの巨大化に合わせて渋谷ヒカリエの内部構造は加速度的に破壊されていき、ついに限界を迎えたビルは内側に向かってへし折れるように崩壊していった。

ご主人様と同じく渋谷スクランブルスクエアの屋上で遥か高見から渋谷の景色を楽しんでいた人々は、突然向かいの渋谷ヒカリエが倒壊し、中から巨大なメイドが姿を現すという非現実的な光景に言葉を失い、茫然とユキの方を眺めていた。
そんな中ご主人様一人だけが涼しい顔をして、しかし内面では歓喜に打ち震えて巨大化したユキを見つめているのであった。

「う~ん、やっぱり超高層ビルの中から巨大化するのは爽快ですね~。ぐしゃぐしゃって感覚を全身で感じられてとっても気持ちイイです!」

ユキはうんと伸びをして、全身でビルを破壊した余韻を楽しむ。

「あ、いけないいけない!ご主人様~!どうでした?ユキの超高層ビル内からの巨大化は!?」

渋谷スクランブルスクエアの屋上を下からキラキラした目で見上げるユキ。
巨大化したユキの身長は170メートルにも達しているが、日本有数の超高層ビルである渋谷スクランブルスクエアは、そのユキであっても屋上は見上げなけれならないほどの高さを誇っている。

「最高さ。ユキの力で超高層ビルがあっという間に破壊される様子が素晴らしくないわけないだろ。」
「きゃ~~!そんな褒めて頂けてユキ感激です!じゃあこれからもっと素敵な光景を見せてさしあげますからね!」

ユキは渋谷ストリームの方に向き直り、両手を伸ばしてゆっくりと近づいていった。

「ではまずは、ご主人様の大好きな超高層ビルの抱き潰しです!一気にやっちゃいますよ!」

ビルの中に居た人々は、巨大なメイドが明らかにこのビルを破壊しようとして近づいて来るのを感じ取り、慌てて外に逃げ出そうとするが、入り口のすぐ近くにいた一部の人々以外は押し合いへし合いになり、まともに避難できずにいた。

そんなビル内の様子など知りもしないユキは渋谷ストリームの外面に両腕を回すと、普段ご主人様に甘えるようにぎゅっとビルを抱きしめた。
すると次の瞬間には、巨大化したユキの途方もない力にあっさりと屈したビルの中心部がユキの両腕で爆砕され、そのままユキが体を低層階に押し入れるようにすることで、あっという間に崩れ去りガレキの山と化してしまった。

「う~ん、抱き潰しもビルの感触が気持ち良くてゾクゾクしちゃいます。」

ビル内にいて避難もろくにできなった大勢の買い物客やオフィスで働いていた人々が残らず犠牲になったが、ユキが感じた全身がとろけそうな快感に比べれば些細なことだった。

「ご主人様~。見てください!立派なビルがユキの力でぐしゃぐしゃのガレキの山になっちゃいました!」
「ああ、やはりユキが街を破壊する姿をこうして眺めているのは、何度見ても飽きないな。」
「では、どんどん行きますね!」

ユキはJR渋谷駅のホームを停車していた電車ごと踏み潰し、少し屈んで山手線を鷲掴みにして持ち上げた。

「ご主人様は電車もお好きでしたよね。これをどう致しましょうか。」
「そうだな、せっかく何両もあるんだ、握りつぶしたり、ビルに向かって投げつけたり、色々できそうじゃないか。」
「流石ご主人様です!すぐに処分方法を思いつくなんて!ではさっそくその通りにしてさしあげますね!」

ユキはまず鷲掴みにした先頭車両を連結から切り離し、両手を使ってぐしゃぐしゃに握り潰してみせた。電車の中には逃げ損ねた乗客が大勢乗っていたが、なすすべなく電車ごとすり潰されてしまうのであった。

「んふふ~。さっき私たちが乗って来た電車がぐしゃぐしゃになっちゃいました!さて、次は投げつけですね!」

続けざまにユキは地面に置いた残りの車両を手に持つと辺りを見回してみた。

「うーん、ご主人様~。どこに向かって投げるのがよいでしょうか。」
「よく考えたら渋谷と言えば名物はビルだけじゃないな。そこのスクランブル交差点なんかはどうだ。」
「さっすがご主人様!確かに人がいっぱいいて面白そうです!じゃあいきますよ!」

ご主人様の指示を受けたユキは躊躇うことなく右手に握った車両を思い切りスクランブル交差点目掛けて投げつけた。
交差点のやや手前の広場に着弾した電車はそのまま横滑りをしながら、パニックでごった返していた人々をすり潰し、交差点奥のビルに衝突してめちゃくちゃに壊れてしまった。

「あはは!交差点が血の海になっちゃいました!」
「ユキ、汚したらメイドらしく後でちゃんと片付けるんだぞ。」
「は~い。わかりました。でもその前に目の前の繁華街をめちゃくちゃにしちゃっていいですか?ユキ、気分が昂ってきちゃいました。」
「しょうがないな、まあ好きにしていいぞ。」
「わ~い。じゃあさっそくやっちゃいます!」

言うや否やユキはセンター街の方へ向かって駆け出し、先ほど破壊した超高層ビルとは違い、腰の高さもない雑多なビル群を次々と踏み潰していった。その過程で通りを逃げ惑う人々も次々とユキの光沢のあるエナメル靴でぐちゃぐちゃに潰されていった。

「う~ん、街の蹂躙はとっても気持ちいいですね~。ユキが街を破壊するところを見たご主人様にも、とっても喜んでもらえるんですから止められません!」

そうしてしばらくユキが暴れまわった後には、人でごった返していた繁華街はガレキと生臭い血の臭いで溢れかえる凄惨な光景と化してしまっていた。

「ご主人様!見てください。ゴミゴミした繁華街が綺麗サッパリしましたよ!」
「ああ、さすがはユキだな。やはりメイドたるもの掃除はお手の物というわけだな。」
「そうですよ。ユキにかかれば街ごと全部綺麗にすることだってできますからね!という訳でそろそろ仕上げやっちゃいますか?」
「そうだな、これで今日この街にいた連中は誰一人生き残れないな。」
「あ、そうだ!ご主人様のことをバカにした許せないのがいたんでした。あいつらもう死んでるならいいですけど、確実に殺さないとですし、それじゃあ仕上げしますね!」

ユキは渋谷スクランブルスクエアの屋上にいるご主人様に向かって手を伸ばし、なにやら集中し始める。するとご主人様が透明な球体に包まれ空中に浮かんだのであった。
その様子を確認したユキは今度は最初に巨大化した時と同様に両手を胸にあてて意識を集中し始めた。すると超高層ビル並みに巨大なユキの体がさらに巨大になっていき、その過程で先ほどまでご主人様が屋上にいた渋谷スクランブルスクエアをはじめとした周囲のビル群が巨大化するユキの体に押しのけられ薙ぎ払われていった。

「よし!再巨大化完了です!」

巨大化が止まった時には、ユキの身長は先ほどの10倍の1700メートルにも達していた。
一方ご主人様はと言うと、さきほどユキが不思議な力で発生させた透明な球体の中におり、ユキの頭の周囲を漂っていた。

「ではご主人様、辺り一帯くまなく綺麗にしてみせます!」

人間の1000倍に巨大化したユキはうつ伏せに横たわり、その巨大な身体で渋谷駅周辺をあっという間に押し潰してしまった。だが、ユキの破壊はそれにとどまらずそのままごろごろっと寝返りを打つことで、それまでビル群が広がっていた渋谷一帯はあっという間に壊滅してしまった。もちろん周辺にいた人々はその一瞬の間に逃げ切れるはずがなく、ユキのメイド服越しにあっけなく押し潰されて全滅してしまっていた。

「ふぅー。これで今度こそ綺麗サッパリお掃除できましたね!ご主人様いかがですか?」
「1000倍に巨大化したユキの圧倒的な力は素晴らしいな。惚れ惚れしてしまうよ。」
「きゃ~~!惚れちゃうだなんて、ユキ感激です!ご主人様大好きです!」

動く物の居なくなったガレキの街で、バカップルぶりを見せつけるユキとご主人様。
しかし、今の二人にからかいの言葉を投げかけられる者は一人としていないのであった。