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以下は,ポール・アハーン博士が録音機に吹き込んだ研究日誌を書き起こしたものである.

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2011/11/1
ジェスは今日,7cmほどのヒールを履いている.ウィルスの影響もあって,ジェスは今,私よりも7cmほど背が高くなっている.
今の成長率が続けば,明日には彼女は私よりも背が高くなる.

ジェスは以前よりも,私との接触をよりオープンに図るようになった.私はそれが純粋に嬉しい.
いつでも思っていることだが,ジェスは非常に可愛らしい,とても整った顔をしている.
ジェスは日々背を伸ばし,彼女の体重は骨と筋肉に変換されていく.
そして,彼女はよりセクシーに,美しくなっていくのだ.

実を言うと,私は女性に対してシャイであった.今,ジェスは日々強く,たくましくなっている.
彼女は日々私に,様々な影響を与えているようだ.

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2011/11/2(水曜日)
今日,ジェスが私に話しかけてきた.金曜日の仕事の後のことだった.ディナーをし,映画を見て,ダンスをする予定だ.
彼女は現在,私よりも背が高い.身長差がだいぶ目立ってきた.

ああ・・・・・・早く金曜日にならないだろうか.待ち遠しい.

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2011/11/4(金曜日)
私はジェスの家に行った.その時のジェスは私よりも5cmくらい高くなっていたのだが,彼女はスパイクヒールを履いて私を出迎えてくれた.
私は口をポカンを開けていた.

「これでいいかしら? 嫌だったら,ペタンコ靴に履き替えるけれど・・・・・・」
ジェスは心配そうに,そう尋ねた.私は彼女を見上げて,ニコリと微笑んだ.そして自分が嫌な印象をジェスに与えていないことを祈った.

「何を言っているのさ,こんなに素敵な彼女を持って,僕は世界一幸せな男さ.君がそれを履きたいのなら,そのままでいてくれ」
「こんなに大きくても,大丈夫なの?」
私は首を横に振った.
「大きい小さいは関係ない,僕は君が好きなんだ! 君は僕が一夜を共に過ごしたいと思える,たった1人の女性なんだ.」

ジェスは屈みこみ,私の耳たぶを撫でながら,囁いた.
「ありがとう,ポール.期待しているわ」

私達はビュッフェでディナーを取った.私はジェスの食欲に大いに驚いた.
もしもウィルスが適切な動作をしているのであれば,食欲が増すということはない.
しかしジェスを見れば明らかなように,彼女の食欲は日々増しているようなのだ.
私はそれを,不可解に思った.

ジェスはメインディッシュを2皿食べ,デザートを待っている.私はすでにデザートまで食べ終えていた.
ジェスは私に尋ねた.
「まだ食べても,大丈夫かしら?」
私はそれに笑顔で返した.今は,こういった事を気にする時期ではない.私はただ,この贅沢なデートを存分に楽しんだ.
「構わないよ,僕はかわいい君を見ているから」
ジェスは私に微笑んでくれた.

私達はその後クラブに行き,ダンスをする.ジェスはそれを思いきり楽しんだが,同時に周りに十分注意を払っていた.
ジェスは未だ,身長のわりに体重がやや重い.それを振り回すのだ.
クラブの男たちはジェスの動きに注意していたようだった.
私はジェスと手をつないだり,横に並んだりして楽しい時間を過ごした.

ダンスの後,ジェスは屈んで私の耳に囁いた.
「ねえポール,映画はやめにして,さっさとあなたの家に行かない?」
「僕の家だって?」
ジェスは頷き,続けた.
「ここからなら,私の家よりも近いわ.あなた前に,私と夜を過ごしたいって,言っていたじゃない」

私はジェスを見上げた.・・・・・・夢でも,勘違いでもないようだ.ジェスのいたずらっぽい表情が,何よりの証拠であった.
「行きましょう,ポール」
私達は一緒に,家に向かった.

家に到着し,入ってドアを閉めた時,ジェスの興奮はピークに達していたようだった.
私達は服を脱ぎ,腕を絡ませ抱き合った.最初は普通にいちゃつき,それからは行為に移った.
最初はソファーで,その後はベッドの上へと移動した.

私は眠くなり,ジェスもウトウトし始める.
・・・・・・ある時,ジェスの背中が私に当たった.最初,ジェスの寝相のせいだと思った.
しかしよく見ると,ジェスは成長していたのだ.
私はそっと起き上がり,彼女の成長を眺めた.それは非常にゆっくりではあるが,確実なものであった.
数分後,ジェスの成長は止まった.もしも我々の計算通りであれば,ジェスは今,私よりも7.5cmほど背が高くなっている.

(編注:ここで「ポール」という女性の声が入った.以下,2人の会話を記す)

ポール「ああ,おはようジェス」
ジェス「何してるの?」
ポール「研究日誌をつけているんだ.たった今終わったところだ,ちょっと待っ――」

(編注:ここで記録は中断している.オーディオの電源を消されたようだ)

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(編注:以下はジェシカ・エゴルフの発言である)

ポール,私はジェスよ.あなたは今寝ているわ,その間に,私はあなたにメッセージを残そうと思うの.

1つめ.あなたが起き上がった時,そこに私がいなかったらそれは一時的なものだから気にしないでちょうだい.
私はあなたと一緒に週末を過ごしたいと思っているわ.
ところで,このテープがあなたの研究のために必要なら,11/5以降に,私にそう言ってちょうだい.

2つめ.あなたには,私の食欲について知ってもらいたいわ.
私はあなたが気になっていることを教えてあげられるのだけれど,あなたはタイミングを見計らっているようね.
正直なところ,私もあなたに知っていてほしいのよ.でも,私自身も,完全に把握しきれているか分からないわ.
だから,ちょっと説明がしにくいの.でも,こんな風に言ったら,わかりやすいと思うわ.

私はね,自分の身長がグングン伸びていくのが気持ちいいの.そしてね,ご飯を食べることがなによりも好きなの.
この動物的な欲求が,私の体をドンドン大きくして,同時に食欲を加速させていると思うの.
まあ,これが果たして生物的なものなのか,もしくは心理的なものなのかはわからないわ.
私は今まで,自分の体について色々と実験をしてみたのだけれど,よく分からなかったわ.
実験で確認し得るものなのかも,分からないわ.

でも,ポール,お願い.私に何か質問することを恐れないで.
私はできる限りのことは答えるつもりよ,あなたがそれを望むのなら・・・・・・全てをさらけ出すのは,さすがに怖いけどね.
私は今を後悔しているわ.私達が互いに遠慮してしまって,濃密な時間を過ごせなかったことにね.

とにかく,私は今から家に帰って,必要なものを持ってくるわ.この後数日のために,準備していたものよ.
もしもあなたが,私に戻ってほしくないと願うのなら,私の携帯に電話して.
それがなければ,私はここに戻ってくるわ.

(編注:これ以降はポール・アハーン氏の声である)

2011/11/5(金曜日)

目が覚めると,丁度ジェスが部屋に入ってくるところだった.
彼女は私に,自分が何をしていたかを説明した後,自分が私とともにいて良いかという選択を迫った.
私はジェスに本心を話した.私がこの週末を,どれほど楽しみにしているのかということを,話した.
ジェスは満面の笑みを浮かべた.

その後ジェスは,レコーダーにメッセージを残し,私が記録をする前に,それを聞くべきであると言った.
彼女は,レコーダーにはメッセージを吹き込んだだけであり,過去の記録を聞くようなことはしていないと誓っていた.

私は,研究日誌を吹き込む前に,ジェスのメッセージを再生した.
再生し終わった後,私は彼女のもとに小走りで向かい,抱きついた.

「メッセージをありがとう.君の言っていたことは,十分にしたよ.
僕は今日から,自分の本心をジェスにさらけ出して,お互いの時間を大切にしていこうと思う.
・・・・・・ジェスも,そうしてくれるよね?」
「ええ,もちろん!」
彼女はそう言った

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2011/11/7(月曜日)

今日,ジェスは新品の制服を下ろした.彼女は現在,私よりも11cmほど背が高くなった.
・・・・・・私には告白しなくてはいけないことがある.私は,毎夜毎夜ジェスが成長していく様子を見るのが楽しいのだ.
その時になると,私はジェスの体に手を添えて,成長していく様子を肌身で感じるのである.
ジェスが成長する瞬間というのは,ジェスの睡眠が一番深いときに起こる.
そのため,私は以前このことをジェスに話したが,ジェスは未だ,毎夜毎夜私がそんなことをしていることに気がついていないらしい.

朝食を一緒に取っていると,ジェスが私に同棲の提案をしてきた.
より具体的には,私が,ジェスのアパートに越してこないかという提案である.
ジェスの部屋のリビングには,キングサイズベッドと特注のマットレスが置かれ,また天井も,私のアパートよりも高い.
私はそれを承諾した.引っ越しは今週末だ.ジェスは仕事を終えた後自宅に戻り,早速準備を始めた.
私も,私達の計画が成功するように努力した.

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2011/11/11(金曜日)

今日,私達は新たな問題に直面してしまった.ジェスの成長が,あまりにも速いのである.
彼女は今日,ドアをくぐるときに頭をこすった.ジェスいわく,家でも同じような状況らしい.
しかしそれは靴を履いた状態に限るようである.
彼女の身長は,201.9cmであった.普通のドアは,おおよそ205cmと,ジェスよりも少々ゆとりがある.
また,昨日までのジェスは,ドアに触れるほど大きくはなかったのだ.
今日のジェスは厚い靴底を履いてきたために,そのようになったのである.

202cmになったジェスは,確実に私よりも強くなっている.
そのおかげで,私達の引越し作業はスムーズに進んだ.

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2011/11/14(月曜日)

今日,ジェスは泣きながら私の部屋に入ってきた.
体の成長は未だ止まらず,車に乗るのも窮屈で一苦労だそうだ.
さらに今朝,裸足であるにも関わらず部屋のドアに頭をぶつけたようだ.
幸運にも,私達の住む街にはバスが走っている.タクシーに乗るには,ジェスの背はすでに高すぎる.

また,私の計算では,ジェスはNBA選手と同じくらいに成長し,止まるはずなのだ.
そして,摂取する栄養も増加を終え,横ばいに落ち着くはずである.
しかし今のところ,そのような予兆は見られていない.

私は泣き崩れる彼女を,私にできる限りなだめた.
彼女は立ち上がり,私を見下ろし,そして微笑んだ.私も自然と,微笑み返した.
この時,私はもはや,彼女の顎よりも小さくなっていることに気がついた.
ああ神よ,我らを助けよ! そしてジェスを,背が伸びるたびに,一層美しくしてください!

ジェスは毎日2cmほど伸び続ける.これは身長の1%に相当し,この割合は最初から変わっていないのだ.
しかしその絶対値は,当然,試験開始直後よりも大きくなっている.

この調子でいけば,ジェスは今週中に7フィート,210cmの大台に乗る.
そして,8フィートもそう遠くないだろうと,私は確信している.
さらに・・・・・・この成長にそもそも終わりはあるのだろうか・・・・・・

しばらくの間,私はジェスを,車の後部座席に乗せて,ラボまで送る事になった.
しかし,私のシミュレーションによれば,少なくとも今月末には,そういったことはできなくなってしまう.