「飼っていただけませんか?」そこにはローファーを履いた女性の膝に辛うじて頭が届くような男が立っていた。

髪は濡れて光っている。
服もびしょびしょだ。
傘もささずに立っていた。
この時代、傘を扱える男はいなかった。 濡れたくなければ女性のさす傘の下で走らなければいけない。

実際華麗な色をした傘をさして堂々と歩く女性の足元にちょこちょこ追いつかんと走っている小さな男をよく見かける。 彼らの歩幅は自分たちの4分の1に満たないと言われている。自分たちにはぐれないよう必死に追いかける彼らがなんだか滑稽に見える。自分たちが信号で止まって足元を見ると片膝をついて息切れしているのだ。なんて可愛いんだろう。そう思ってしまう。   飼われるとはそういうことを受け入れることであった。

昔は男性と言えば権力の象徴だった。
彼らは力を行使して自然や動物など周りのものを屈服させた。
女性も犠牲者だった 。痴漢や強姦事件が後を絶たなかった。2010年では過去最多となっていた。

すると2年後奇妙な事が起きた
男性の平均身長が2cm減って169になっていた
次の年も平均身長は減少傾向にあった
10年後、身長が女性と同じ161になっていた
相当速い縮小ペースだった
それからも縮小は続いていったがそこにはある法則があった。

女性への暴力が過去最多になった2010年 縮小化がはじまった
女性への暴力事件が増えるとなぜか男性の平均身長はペースをあげ下がり始めた。

2020年に女性と同じ身長になっても力は男性の方が強いため暴力事件は減らなかった

10年後2030年男性の平均身長は135cmになっていた
女性と比べて頭一つ小さい。
女性のほうが圧倒的に強くなった。この年は女性による男性への暴力事件が始めて起こった年だった。
男性の支配者の権威はなくなりはじめていた

だが武器を使った犯罪がまだ起きていた
すると10年後
2040年平均身長は40cmになっていた

この年を境に男性による犯罪は完全に途絶えた。
武器が持てないからだ。
気がつくと男性は赤ちゃん同然の弱さになっていた

そこで保護者をもとめた。
女性だった

女性は復讐の感情があったが喜んで応じた。
その行動が端を発し男性をペット扱いする行為はブームとなった。
学校でも従来はあった男性用エレベーターや微力な彼らでも開けられる下駄箱は廃止され
下駄箱は男性が到底届かない上の段に移動させられた。

簡単に言えば今まであった男性用施設は全て消え男性が縮小するまえの世界になった

つまり女性の助けを乞わないといけない社会が誕生した。
例えば朝学校にきたら大きな女性に下駄箱からとってもらい 女性でないと登れない階段を運んでもらったり女性に依存した生活。

彼らの机は女子の机の上に置かれていた
彼らは女子の椅子の座面にも届かない。 つまり女子に頼まなければ席に座ることもできないのだ

彼らの行動を常に見ていることができた。彼らには屈辱的だった
この時代では法律で危害を加えないならば男性の自由を奪ってよいということになっていた

たとえ学習の妨げであっても彼らの脇の下に手を入れ赤ちゃんにするように頭を撫でながら胸に抱くのも

太ももを少し開いてそこに出来たスカートのへこんだ空間に乗せるのも

シャツのボタンを二つ開け男性を胸にはさみ顔だけ出させるのも
自由だった

むしろ男性の保護として奨励されていた
女性だけで構成された政府は男性の保護を名目に彼らの人権を奪い取った

もちろん危害を加える事は禁じられている
彼らを「可愛がる」環境をつくるのが目的だった
しかし今の男性には教育を受ける権利や参政権はなかった
彼らは小さすぎて働くことができないので知識はいらないと言う判断だった。
一応全ての男性は学校教育を受けられるが女子の「保護」によって妨げられても抗議はできなかった。
男性が職につくのはその体格を理由に法律で禁じられていた
女性の稼いだ金で養ってもらうほかなかった
消費活動は全て禁じられていた
彼らが街に出るのは危険だからだ

彼らからみたら街はさぞかし恐ろしいものだろう

自分たちの腕くらいの太いヒールが地面を突き刺し
自分たちの身長と同じくらいのブーツが自分たちを蹴らんとものすごい勢いで近づく

成人女性が誤って歩行中男性を蹴ってしまった場合骨折は免れないという

街を歩くには自分たちに頼んで「抱っこ」してもらうしかなかった

これらの法律は男性の女性への従属を強固なものにした

また政府は男性を仕事中に施設に預けるもしくは仕事に一緒に連れて行く事を義務づけた

男性には家の中さえ危険だからだ
施設では中学3年生から高校2年までの女性が「保護」担当だった
政府が男性の保護の訓練として全ての女子に義務づけていた
保護といっても赤ちゃんにするような「お世話」をするだけではない

オムツを強制的に履かせたり
自分たちに敬語を強要したり

彼らの非力さを自覚ささせ
自分たちへの従属を強めるものでもあった


さらに女性たちは男性を捨てる権利があった

つまりケンカや気に入らないことがあったら彼らへの「保護」を放棄していいという事だ
保護されなくなることはすなわち死を意味する
捨てられた場合多くが必死に謝る。  不思議なことに謝った場合たいてい許される。しかしそのかわりに彼女たちに屈辱的な行為をさせられる。
一番多いのが靴をなめさせる行為だった屈辱的なのはそれをビデオに撮られ、後で女性の友達と共に見せられる事だった
男はテレビの前で胸に挟まれさらに胸を彼女の腕で圧迫され身動きがとれなかった。「目をつぶったらおしおきだよ」彼女に笑いながらそう言われていた。見るしかなかった。
そこにはニーハイブーツに包まれたきれいな足の下にひざまずいてブーツと相対的にとてもちいさな舌を出して必死に舐める小さな男がいた
彼女と彼女の友達は「かわいい」「みじめなとこがまたキュンときちゃう!」「そんな小さな舌で全部なめる気なの」
など思ったことをズバズバ言われていた
この上映会の主な目的は圧倒的な力を持つ自分たちを喜ぶことと
彼らがいかに自分たちに比べ劣っているかを分からせる事だった

女性からしたら男性は大人しくかわいがられていて欲しかった

難しい考えもなにも持たずただペットとして従属していろということだった

そういう考えが10年後世の中を支配し
男性の教育権利の廃止や男性用文房具の製造禁止へとつながる
男性は小説や文章を書けなくなることとなる

しかしただ何となくペットに飽きると言うことはよくある

男性はそういった感覚で捨てられるということが増えてきた
捨てられてもその小さい体では早歩きの女性に追いつくことはできない

法律で禁止されているので働くことも何かを買うこともできない。

彼らは女性の歩く危険な地帯に放り出されたのだ

彼らに出来ることは道行く女性に「保護」を求めることだけだった

「飼っていただけませんか?」
足元の男がおずおずと聞く

年齢は20くらいだろうか
なんにせよ捨てられていて気の毒だった
それに長年夢だったあんなことやこんなことができる。

いま飼ってあげるならまず抱っこが出来るだろう。
彼らは胸に抱かれたらその胸に抱きつくよう訓練されている。女性への従属化の一つの表れだった。きっと楽しいだろう

それに家に帰るとお風呂に入れられる

もちろん男性用風呂などない
女性に抱いてもらい体を洗ってもらうしかない。
胸にしがみつかせてそこにボディソープを垂らしてみたい。
しがみつく力を強めれば強めるほど肌を手が滑る。
手足をばたつかせて捕まろうとする滑稽な姿を想像するとワクワクしてしまう。
飼うときは最初ガ肝心だと友達から聞いたことがある。「飼い主とペットとしての主従関係をよーくわからせるの」
なにも言わずに抱き上げ胸に持って行く。
すると「ありがとうございます」といいしがみつく。

「ここまでは基本中の基本。問題は家に帰るまでなの」

胸にしがみつくといっても、命綱がない。
滑り落ちたら一巻の終わりだ

ここで胸元を見るなど心配することはNGだそうだ

「一応40cmあるんだし大抵落ちないよ。ここで男性と女性との差は明白にね」

彼女のアドバイスを反芻していた。
一応男性の抵抗から身を守るため長めの手袋をつけておいた

男性のリーチを考え長さは肘の少し前あたりだった

ブーツも売っていた。膝の少し上までを覆う革ブーツだった
足と腕の一部の対策だけで男性は手も足も出なくなる。

ブーツや手袋などなくても彼らの力などどうってことない。
彼女は厳かな表情を装い足元の彼を抱き上げた

彼は突然長くて白い腕に脇の下にいれられた

高度が変化していた

そして目の前に大きな球体が二つあった
これにどうするべきかは知っている

前に飼われていた時は自分を運ぶ時いつも彼女はこの方法を使っていた

何回か胸につかまる同胞を見ることがある

彼女の乳房に相対して明らかに小さい彼らの顔はいつも落ちまいと一生懸命だった

こうする瞬間に言いようのない屈辱を感じるのは自分だけでないだろう

しかしそこに喜びを感じてしまうのがもっと屈辱的だった
いまは女性の威厳を見せ男性を服従させるのが一種のブームだったが少し前までは「赤ちゃん扱い」が流行っていた

でも赤ちゃん扱いも女性の強さを見せつけるという点ではいまの流行と変わらない。

お姫さま抱っこやおしゃぶりを強制的に加えさせたり、メイド服に似たピラピラのついた赤ちゃん服を着せたり…
赤ちゃんも彼らもこれらに抵抗できない上、非力な彼らの抵抗がより一層彼女たちを興奮させた。
「私たちはこれだけ強いのよ」と主張しているようだった。
「ママのおまんま食べましょうね」
彼らに食べ物を口移しで与えていた

彼女たちは年齢は彼らと変わらないが自分たちの事をママと言っていた

彼らを本当に赤ちゃんとして見ていた

男性を施設に預けず胸に挟み通勤・通学する人も増えていた。
通学と書いたが女子学生も気に入った子がいたら「保護」すなわち飼っていいことになっていた

職場・学校に男性を持って行くのは他にも原因があった

施設に預けると非力で健気な男性に情が移り、学生の飼育員に横取りされてしまう事件が多発したからだった

彼女たちにとって男を取られるという事は自分のペットを取られることを意味していた