「こんな成績でどうするの?」
年下のみなほに叱られていた。
彼女のはちきれんとする太ももが目に入ってくる。
「まぁ、こんな大きさの男が営業やるなんて無理に決まってるんだけど...」
男が縮小し、平均身長が70cmになっている世界では
男はまだ働いている人もいた。
「もう、クビにするしかないよ」
「...」
「そうだ、限定人種になったら?」
「会社にもいられるし、何より...ふふ
君には今よりもいい環境になると思うよ」
やっぱり、そうなってしまうのか。
「今の時代男は、強いよりも小さくて可愛いことが大切だよ」
彼女は券を差し出した。
「これ、無料診療券。お金なくてもこれなら
もう問題ないよね?」
彼女が渡そうとしている券は、限定人種になるための治療を受けるためのチケットだった。
近頃、限定人種になろうとする男のために渡せるチケットになっていた。
この世界では、男の限られた経済力では医療を受けることができなかった。
女性の援助を受けるしかなかった。

限定人種は通称ペットとよばれている。
通常の人権が適用されず、限定人種専用の人権が適用されるようになる。
すべての限定人種は等しく女性の保護を受ける権利を持つ。
つまり、女性に守られる前提の弱い人間を定義したものだった。
ペットになると消費をする権利がなくなる。
女性を喜ばせて飼い続けてもらうことが仕事だからだ。
昨今の男性の平均身長のみならず知能などあらゆる面での衰退により、
男性が自立して暮らすのは困難になってきた。
そのため、この制度を設けた。
この制度は一つ条件がある。
身長が50cm以下であること。

彼はいま70cm。
そのため、保護を受けられない。
そこでクリニックがあるのだった。
クリニックでは更に小さくなるための治療を行っていた。
会社では男性を「限定人種職」として雇っていた。
仕事はお茶を入れたり、小物を届けるなどの誰でもできる雑用だった。
彼は生きていくために治療を受けるしかなかった。

しかし、この体の大きさになってから湯呑みが自分の胴体くらいの大きさになった。
みなほは足元にちょこんと立っている彼に気づくなり黄色い声をあげた。
「可愛い〜!♡」
その日から仕事は一気に単純で誰でもできるものに変わった。
まず、お茶汲み。
彼女たちが片手で何気なく飲んでいる湯呑みさえ、ペットになってからは大きくて途方も無いものだった。
「うふふ、おっきくて大変でちゅね♡頑張って♪」
ああ、後輩だったはずのさやか様にもからかわれる。
「はい、ありがとうございます!」
ペットは、会社で役にも立っていないのに女性に養ってもらっている。
だから、ここにいる女性は全て後輩であろうと目上の人だった。
そして、この仕事の辛いところはこの大きさなので
セクハラをされることだった。
50cmという身長は男に残っていた尊厳のかけらさえことごとく奪ってしまった。
「えい!」
廊下で後輩に突然持ち上げられ、誰もいない非常階段でキスをされる。
おおきな太ももに両足を通され、逃げられない。
さやか様は僕の口にキスをする。
「ぼくはちっちゃくてなんにもできないんだから、こうやってあたし達を喜ばせて奉仕しなきゃね?
ふふ、ちっちゃくなったのも女の力に全く抵抗できなくなるためなんだよ?知ってた?」
彼女は息を荒らげながらキスを続けた。
年下の女の子に何も抵抗できず、キスをされるのは何故か心地よかった。
「かわいい...あたし、あなたのこと気に入った。」
突如僕を太ももから解放してくれた。
床に降ろされていた。
彼女は目線を合わせようとしゃがんでいた。
太ももの間から下着が見えていた。
つい、吸い込まれるように見てしまっていた。
「あ、見えてる?ふふ、僕みたいなおちびちゃんに見られても気にしないよ」
さやか様がしゃがんだ状態でも、僕の目線は彼女の唇にしか届かなかった。
ペットと言われるだけある、惨めな体格差だった。
どんなに体を鍛えても、強くなろうとしても取り返しがつかない体格差。
彼女は飼い主で、僕はペット。
彼女は言わずとも、身にしみて痛感していた。

「ほら、僕!お手!」5歳も年下の後輩に大きな手を出されていた。
僕はおずおずと小さな手を乗せる。
「かわいい〜♡本当に癒やされる!じゃあ、あたしの靴磨いといてね!」
小さくなってからは、仕事らしい仕事はしなかった。
むしろ、靴磨きの仕事だって女性がやったほうが早く終わる。
でも、小さな男が健気に大きな靴を一生懸命磨く姿が可愛いという理由で男はまだ社会に居場所を作ってもらっていた。
半ば愛玩動物と同じだった。