電車の中での出来事
この世界では男はかんたんに電車に乗ることはできない。体が小さすぎるからだ。
平均身長が48cmの中でも自分は60cmとかなり体格に恵まれているから、かろうじて女子の助けがなくても電車に一人で乗れる。
自分の頭の高さくらいある座席をよじ登って席に腰掛ける。
僕は採用が決まった企業の初出社日で会社に向かっていた。
仕事と言ってもこの世界では男にできる仕事はごくわずか
僕は男性限定の書類整理や来客対応等の雑用などをする
総務アシスタントとして採用された。
最低身長が60cmと、ギリギリの基準で採用されたのだった。
男の中では大きくても、女の世界で仕事をするには
雑用でもかなり大きな体ではないといけなかった。
車両に客はまばらだった。
次の駅につくとセーラー服を着た女子が乗ってきた。
一番端の席にいた僕の真向かいに彼女は座った。
彼女はかばんから何かを取り出して、膝の上においた。
男だった。
彼女はスカートに包まれた太ももの上に男を載せていた。
学ランのバッヂから察するに、男が高校3年生、女は中学1年生のようだった。 
彼は男の中でもかなり小さい方だった。30cm行くだろうか?
最近、女性には小さい男が人気になっていた。
30cmくらいの大きさが、1人で生きていくことができないラインらしく
電車にも乗れない、料理もできない、猫も怖がってしまう
そんな情けなさが母性本能をくすぐるらしい。

時々電車が急に揺れると男は短く小さな腕を目一杯広げて
彼女のお腹に捕まっていた。
女子は文庫本を読むのに集中していて
男の仕草など全く気にもとめず、ページをめくり空いた手で時折男の頭をなでていた。

急ブレーキの衝撃で膝から彼が転げ落ちそうになると
本を読んだまま彼のことを見ずに、
器用に片膝を上げて、落ちないように太ももの壁を作ってあげるのだった。


まるで彼女が飼い主で男はペットのようだった。
主従関係が遠くからでも見て取れた。


駅につくと彼女は男を、膨らみかけた胸につかまらせ
右腕と胸で彼の腰を挟み込んだ。なれている動作だった。
「よーくつかまっててねーちび。」彼女は胸に必死に捕まっている小さな男に微笑みながらそう声をかけていた。
彼の名前はちびというのか?

彼女が駅から降りると、友達が話しかけていた。
「あーちび!!元気?ちゃんと御主人様のいうことはきいてる?」
「ほらちび、女の人に挨拶は?」
「かわいいー!!ちゃんとしつけできてるね♪」
ちびと呼ばれている彼はかわるがわる抱っこされては
小さな頭を撫でられたり、キスをされていた。
まさにペットのような可愛がり方だった。

最近、男の権利が失われていると報道されていて
その問題の一つとして男のペット化を聞いたことがあった。好みの男を甘やかして、しつけてペットのように飼われるらしい。
体が小さくなり、弱くなっていた男にはプライドなどなく
ペット化する男が増えていたのだった。

呆然としてみていると上から不意に声がかかった。
セーラー服を着た彼女はニコニコ見下ろしながらこう言った。「僕、何してるの?」
彼女の大きな体が落とした影から、妙な圧迫感をおぼえた。
「男の子が1人じゃ危ないよ?」
次の瞬間、しなやかな腕が伸びてきて子猫のように持ち上げられていた。

男の中では大きくたくましい体も彼女と比べるととたんに可愛らしく見えてしまう。
ドアに反射して、自分の足が彼女のへそにしか届いていないのが見えてしまった。頭は彼女の首辺り。

セーラー服のリボンは見たことないデザインと色だった。...どの学校なのかわからない。
「どうしたの?リボンなんてじっと見て笑」
彼女は察したらしい
「あたし、近くの桜華に通ってるんだ」
桜華といったら、名門の女子校だ。
男の知能ではどんなに頑張っても入れないぐらいの難関だ。そして、確か中学校ではなく小学校だ。彼女は小学生なのか?
「なに驚いてるの?あたしは今年で5年生の11才だよ。僕は何歳?」
こんなに大人びていて11才?
十分に大きな胸、落ち着いた仕草
何をとっても自分よりも大人だと感じてしまう。
劣等感と、ときめきが混ざった不思議な気持ちだった
「女の人が聞いてるんだよ!早く答えなさい!!」
「すみません、21歳です!!」
10歳も年下の女の子なのに怖かった。
強くて大きくて可愛らしい。それに引き換え自分は...
僕はすでに彼女に支配されつつあった。
「21歳なの?なのにあたしにかんたんに抱っこされちゃうなんて本当にちっちゃいね!かわいい♪」
大きな手で撫でられていた。
「僕、女の人に飼ってもらってるの?」
「い、いいえ」
「よかった♪どこ行こうとしてたの?」
「その...働こうと思って」
「働く?こんなちいちゃな体で?なんで?」
何も言い返せない。
「もう採用決まってるの?」
「はい、次の駅のビルで...」
「ふふふ、じゃあたしが連れてってあげる♪」
「でも場所は...」
「財布出して」
お金を取られるのか?彼女の笑顔に気圧されながら、渋々財布を出した。
「何怖がってるの?男の稼げる程度のお金なんて、女には必要ないのよ笑
あった!これこれ」
取り出されたのは管理カードだった。
ここには住所や年齢、勤務先等、扶養元の女性(いわゆる飼い主のこと)のあらゆる情報がQRコードで管理されていた。
男にだけ携帯が義務付けられ、これがないと働くこともできない。
身体的に精神的にも劣っている男を保護するためのもので、女性はいつでも男のカードを見る権利があった。
実際、これのおかげで飼い主とはぐれてしまった男が
女子高生に保護されて無事飼い主のもとに連れて行ってもらえたこともある。
小さく情けない男性にとって、このカードは女性との主従関係の象徴としてだけではなく生きていくために不可欠なものだった。

「QRコードかざしてと...へぇー大きいビルで務めてるんだね♪楽しみ!」
そう言うと彼女は僕を大きな柔らかい胸に押し付けて、
ビルへ向かうのだった。

ビルにつくと、受付の女性に話しかけていた。
自分で話しかけようと、胸から出ようとしたが
右腕と胸でがっちりロックされていて、
柔らかいおっぱいがむにむに動くだけだった。
「ちょっと!くすぐったいよ笑」

「あら、どうしたの?」受付の人がこちらに気づいた。
「あの、今日ここで働く予定の男の子なんですけど」
僕が話すより彼女が先に話しかけていた。
「ありがとう!!連れてきてくれたのね!」
「藤井」と書いたネームプレートをつけた受付の女性は
立ち上がると僕たちのもとまで近づいてきた。

藤井さんは小学生の彼女よりもおおきく、彼女の頭は藤井さんの胸にかろうじて届く程度だった。
女ってなんて大きいんだろう。
ここでも男の情けなさを痛感していた。

「だれだれ?新人さん?」オフィスからもうひとり女性がやってきた。
「あ、けいちゃん!そうそう、この子が連れてきてくれたの」
「うわあーおっぱいに捕まってるーーーかわいい笑
この子連れてきてくれてありがとうね。あなたは何歳なの?」
「今年で11歳!小学5年生です!」
僕に話しかけるときと違って、彼女には敬語を使っていた。
「うふふ、男の人を連れてってあげるなんてこの子のお姉さんみたいね♪」
「あのー...出してもらえませんか?」僕はそうお願いした。
「んー...ねえお姉さん、あたしこの子飼ってあげたいんです。顔がタイプで。それにちっちゃいよりもちょっとおっきいほうが好きなの
でも、カードにはすでに勤務先が書いてあって...」
「ふふ、取り消してほしいの?」
「できるんですか?!」
彼女の顔がぱあっと明るくなった。
「正直この程度の仕事だったらあたしたちで分担してやったほうがはやいの。
でも、男を雇うと助成金が出るから雇ってあげてただけ。
この子も女の世界で働くよりも、あなたに飼ってもらえたほうが幸せよね。カードをだしてくれる?」
「はい!」
彼女は自分のもののように握りしめていたカードを取り出した
このままでは働けなくなってしまう。
「や、やめて」
小さな腕を僕は精一杯伸ばして止めようとした。
「あらあら、仕方ないわね。
ねえ、この子あたしが預かってあげる」
そういうと藤井さんは僕をしなやかで長い手を伸ばして
抱っこしてしまった。
俗に言うお姫様抱っこだった。
僕はここから出ようと必死に抵抗した。
「もう仕方ないなあ!おとなしくしなさい!」
そう言うと彼女は僕の脇の下に両手を入れ、突然高く持ち上げた。
「そーれ!たかいたかーい♪」
「や、やめてください!こわい、こわい!」
「うふふ、こんな高さで怖がるなんて本当に男の子って情けないんだから♪
今度はちょっと飛ぶよー?そーれ!たかいたかーい!」

彼女の手を離れ、宙に浮く。だめ、、、おちる!
こわい!!!
僕ははるか遠い床に落下した。とおもったら
「はーいもう大丈夫だよ♡」両腕でしっかり受け止められていた。
「楽しかったかな?また遊びに来たらいつでもやってあげるね♪けいちゃん?」
「はーい!ばっちり!!採用取り消したよ。
ついでに扶養女性も登録してあげちゃった。
僕はこの子のペットになれましたー♪よかったでちゅねー♪」
「じゃ、この子返すね。あたし、さやかっていうの。あなたの名前は?」
「あたしは麗華っていいます!色々ありがとうございました!」 
「かわいがってあげてねー!」

ビルから出ると彼女は何かを企むような目で僕を見ていた。
「まずは調教しなきゃね♪よろしくね、ポチ♡」
こうして僕の名前はポチに、そして麗華様に飼われることになったのだった。