この前兄弟を処分してから数日が経った。また新しいオモチャが欲しくなったアタシは、お気に入りのガムを噛みながら人気のない夜道を歩く。
わざわざ普段来ないところまで歩いてみたら、公園から楽しそうな笑い声が聞こえてきた。
覗いてみたらなんか不良っぽいのが5人居る。うち1人は女子だけど、隣の男とはカップルかな? 金属バット持ってる奴もいるけど大丈夫でしょ。
周りに人は居ないし、良いカモ見つけちゃったかな……♡
ーーーーー
「いや〜! 今日も稼いだな!」
「それな! いや〜。まじでストレス発散にもなるから良いわ〜」
「あのおっさん本っ当に情けなかったわね!」
「笑えたよな! 『ひぃいいい』だってさ!」
「あんなおっさんに使われるより、俺たちが使った方が金も幸せだろうな!」
さっきまで俺たちは酔っ払ったおっさんから金を巻き上げていた。いわゆる親父狩りって奴だ。金は手に入るわ適当にボコってストレス発散も出来るわでチョー楽しい。酔っ払ってたから顔も覚えられてないだろーし。まじチョレーw
パシャッ
急にシャッター音が鳴り響いた。楽しい気分に浸ってたのに萎えるわー。
音がした方を見ると、金髪サイドテールのギャルがこっちにスマホを向けてた。
「何? いきなり写真撮るとか、ショーゾー権の侵害なんだけど?」
みんなも「そーだそーだ」とノっかってくれる。悪いのはアッチっしょ。
俺は金属バットを担いでギャルの方へ歩く。警察呼ばれるのも面倒だし、ちょっと脅かしてあげよ〜。
ってか、よく見たら結構可愛いじゃん。おっぱいもでっかいし、一発ヤらせてもらおっかな。
俺はギャルをビビらすつもりでバットを叩きつける。
ガァン!と音が鳴ったけど、全然ビビってくれない。それどころか笑いながらスマホいじってんだけど、イカれてんの?
「舐めてっと本気で殴るよ」
警察を呼んでるんだと思った俺は、スマホを壊すためにバットを大きく振りかぶった。
次の瞬間、世界が歪んだ。
ふらついた俺は四つん這いになる。バットは相手に当たらずに地面についた。避けられちゃったか?
後ろでみんなが叫んでるけどなんか声が遠くてよく聞き取れない。くっそ。ダセーとか言われてんのかな。
顔を赤くしながら立ち上がってみたら、目の前にどデカい靴があった。
「……は?」
いやまじで意味わかんねえ。人間よりでかい靴なんてあんの? ってか、どっから出てきた?
よく見ると靴は置物じゃなくて、ちゃんとでかい足に履かれてる。見上げたらバカみたいにでかい巨人がいた。
「はああああ??!!」
でかい、でかすぎる。どっから湧いた? パンツ丸見えなのに、顔はおっぱいがでかすぎて見えない。こんなにデカいのに女なのか…?!
じーっと空にあるパンツを見ていたら、凄い勢いで巨人がしゃがみ込んだ。
グオオオオオオ!!
でかいパンツが近づいてきたと思ったら、凄い風を起こして砂を巻き上げる。ヘリでも降りてきたのかと思っちまった。
砂煙が凄くて前を向けない。顔を背けたら、視界の端にみんなが見えた。いつの間にか遠くに離れてる。アイツらいつの間に逃げたんだ!
文句の一つでも言ってやろうと振り向くと、ただの公園が果てしなく広くなってた。
巨人が現れたんじゃない。俺たちが小さくなってるんだ。そう理解して巨人の方を見ると、確かにその顔はさっき見たギャルと同じだった。
股を開いてスカートを捲りあげ、パンツ丸見えのまま太ももの間から俺のことを見下ろしてる。しゃがんでるのに、立ってる俺を余裕の顔で見下しているのが腹立つ。ちょっと可愛いからって調子に乗りやがって……!!
ギャルはニヤニヤしながら口を開いた
「どーしたの〜? 本気で殴るんじゃなかったの〜?」
呑気にガムなんか膨らませてる。くそが!
「舐めんじゃねえぞコラ!」
俺は思いっきり力を込めて、金属バットでギャルの靴に殴りかかった。
ビクともしない。それどころか傷の一つもつかない。
「くそがっ! ふざけんな! しね!」
何度もバットを叩きつけるけど、なんの変化もない。靴を凹ませる前に、俺の手のほうが限界だ。
息が上がった俺はその場にへたり込む。
「はぁっ……はぁっ……どーなってんだよマジで……」
こんなの馬鹿げてる。人が縮むなんて夢に決まってる。クソつまんない夢だ。もう目が覚めるまでパンツでも眺めてよう。
仰向けになった俺にギャルが語りかける。
「もう満足した? じゃ、おつかれ〜」
パンツが靴底に遮られて見えなくなる。待って! 夢でもそれは洒落にならないって!
ギャルは立つこともなく、足首を軽く回しただけだ。それだけで俺の全身が靴底の下に隠れる。逃げようとした時にはもう遅かった。
グシャッ!
ーーーーーーーーーー
「嘘だろ……?」
目の前で人間が潰された。それも鉄骨の下敷きになったとかじゃなく、巨大な靴で、意思を持った足に潰された。
グリグリと踏み躙られ、足を上げればそこには少し赤くなった土があるだけだった。
持っていた武器はなんの意味も持たず、そこにいた証すら残さないままこの世から消されてしまった。
ニヤニヤと笑う巨人はこっちを見ると、楽しそうに話しかけてきた。
「どうしたの? 逃げないの? もしかして、アンタらも踏み潰されたいのかな〜?」
その言葉を聞いて、やっと俺たちは動き始めた。
「「「うわああああああああ!!!!」」」
「きゃああああああああ!!!」
お互いのことなんて気にしてられない。俺は脇目も振らずに逃げた。
逃げなきゃ。速く。どこに? 遠くに。逃げられるのか? 知らない。逃げるしかない!
小さくなった今、公園が砂漠みたいに広く感じる。あまりにも広すぎて、進んでいるか分からなくなってくる。
それでも走り続ける俺の頭上から、何かを吐き出す音が聞こえた。
ぷっ!
甘い匂いがしたかと思った瞬間、俺の体はやたらぬめぬめしている巨大な粘土の塊みたいなものに押しつぶされた。
ベタベタして気持ち悪い。この感じ、噛んだ後のガムだ。こんなものを吐きかけられるなんて屈辱的すぎる。こんなものに閉じ込められて出られないところが尚更だ。
とにかく抜け出そうともがいていると、何やら声が聞こえてきた。
「死ぬまでその中で暮らしなよ。虫にも怯えなくて良いっしょw お腹空いたらそれ食べれば?」
ふざけるな! 誰がこんなもん食うか! なんとしても逃げ切って、元に戻ってぶん殴ってやる!
怒りに任せてガムをかき分ける。
「ん〜。でも一生分には足りないかもね。って事で、もっと縮めてあげるね〜♪」
体にまとわりつくガムが重くなる。周りが見えないせいで見た目じゃわからないけれど、さらに小さくされてる!
嫌だ。こんなゴミみたいな死に方は嫌だ。人が噛んだものの下敷きになるだなんて。このまま唾液まみれで誰にも見つからずに死ぬだなんて!
もがいてる内にどんどんガムが重くなってまとわりつく。やがて俺は身動き出来なくなった。
ーーーーーーーーーー
また1人犠牲になった。
今度は手も足も使わず、ただガムを吐き出しただけだ。それだけでツレが2人も死んでしまった。
残っているのは3人。俺と後ろにいる彼女、そして違う方に逃げていったもう1人だ。
次の獲物は離れていったもう1人にして欲しいと思ったが、デカ女はこっちを見ていた。
くそっ! こいつが俺についてきたから、目につきやすかったじゃないか⁈
俺は舌打ちをした。しかしその音は、立ち上がったデカ女の風切り音にかき消されてしまった。
「ほ〜ら。頑張って逃げないと、踏み潰しちゃうよ〜?」
ズシィィィン!!!
大きな足がすぐ後ろに振り落とされる。ものすごい砂嵐が巻き起こり、地面が揺れる。
こんなの逃げられっこないだろ!
「立ち止まってる場合じゃないよ〜? ほらほら〜。ズシーン、ズシ〜ンっ♪」
ズシイィィン!! ズッシィィィン!!!
口では可愛く効果音を言っているけれど、実際はそんなに生易しいものじゃない。横に振り下ろされた足からものすごい衝撃が襲いかかってくる。
くそっ! このままじゃ逃げられない。こうなったら……!!
俺は後ろを走っていた彼女を突き飛ばし、その場で転ばせた。
「ちょっ……何すんのよ⁈」
「うるせーばーか! お前は囮だよ!」
「待って……待ってよ!」
「誰が待つか! せいぜい俺のためにあのデカ女を引きつけてろ!」
俺は走り続ける。あいつの体は良かったけどしょうがない。俺が死んじまったら意味ないからな。
ズシィン!
また足音が鳴り響いたかと思ったら、それ以上は鳴らなかった。もしかして一発で潰されちまったか? 使えねぇ!
振り向くと、デカ女は手を地面に伸ばしていた。
「アンタ、アイツに見捨てられたの? かわいそ〜」
結果的にデカ女の気を引いているみたいだ。今のうちにもっと遠くに逃げる!
「ねぇ、復讐させてあげよっか?」
ズゥン!!
いきなり目の前に巨大な手が降りてきて、逃げ道を塞いでしまった。回り道をする暇もなく俺は握り込まれてしまう。
指紋まではっきり見えるほどデカい手の中は湿っている上に熱くて不快だった。
やっと解放されたかと思ったら、囮にした女と一緒に手のひらに乗せられていた。
「アンタ……っ! さっきはよくも!」
ろくに囮にもなれなかったクソ女が俺に掴みかかってくる。
「2人とも死ぬより、俺だけでも生き残った方がマシだろうが!」
力もない癖に歯向かってきやがって。一発殴れば黙るだろ。
俺が拳を振り上げたところで、大きな邪魔が入った。
「はいはいストップストップー」
ズン!
俺だけが大きな指に押さえつけられてしまった。全身が手のひらに押し付けられ、熱を感じる。デカ女の息がかかって気持ち悪い。
「そのままじゃ復讐なんて出来ないでしょー? アタシが手伝ってあげるから、やるなら思いっきり……ね?♡」
大きな指は俺から離れ、スマホをいじり始めた。押さえつけられていた肺が解放されて蒸せていると、世界が歪んだ。この感覚はさっきの……!
気がつくと、俺の目の前にはデカい女がいた。それは金髪のギャルなんかじゃなく、さっき囮にしたクソ女だった。
「ほら、これなら反撃されないでしょ? 好きにやっちゃいなよ」
ビリビリと空気が震え、鼓膜が破れそうな轟音が鳴り響く。音のした方を見るとデカ女の顔が、さっき見ていなかったらこれが顔だと認識できないくらい更にバカデカくなっていた。
それを聞いたクソ女は最初こそ戸惑っていたけれど、すぐにニヤけて俺を見下ろした。
おい、待て、嘘だよな? 仮にも俺は恋人だぞ?
クソ女は足を上げる。足裏は確実に俺を狙っていた。
「なぁ! 待て! 待ってくれよ! 2人とも死ぬよりは俺だけでも生き残った方がよかっただろ⁈」
ズン!
目の前に勢いよく足が振り下ろされ、俺は腰が抜けてしまう。クソ女の口は笑っているが、目は笑っていない。
「なんかピーチクパーチク言ってる気がするけど聞こえないなぁ。。クズはクズらしく潰れちゃえば⁈」
もう一度足が振り上げられる。手のひらの上に逃げ場はないし、そもそも腰が抜けて立つことすらできない。
俺は泣きべそをかきながらデカい足裏を見上げることしか出来なかった。
ズシン!!
ーーーーーーーーーー
「うわ〜。本当に容赦ないねw」
アタシの手のひらの上で、小人が何度も足を踏み下ろしてる。よっぽど恨みがこもってたんだねw
息が切れるまで何度も踏んで、執拗に踏み躙って。満足したかと思ったらアタシの顔を見た。
「ねぇ。私囮にされたのよ? 可哀想でしょ? 私だけでも見逃してくれない⁈」
うわ〜。図々しいw 自分より小さい奴を見て態度が大きくなったのかな?
残念だけど、見逃してあげるつもりはない。元に戻しちゃったら面倒だもん。
「うんうん。可哀想だね」
「でしょう⁈ だったら」
「でも私だって可哀想だと思わない? 知らない子に何度も手のひらを踏みつけられたんだよ?」
「そ、それは!!」
「私もやり返したって、文句は言われないよね?」
ズイッと顔を近づけて、思いっきり笑顔で言ってあげる。ビクビクしちゃって、可愛い〜♡
こんな小さな手のひらだけ踏むなんて無理だし、全身潰しちゃうだろうな。
でもそんなのは勿体無いし、あとでまた遊んであげよう。
「まぁ私は優しいから、やり返さないであげる。」
ほっとしてるけどアタシ、他の子は踏み潰してるよ? 自分だけ助かれば良いのかな?
「でも後でお仕置きしてあげるから、しばらくここで待っててね」
アタシは胸ポケットを広げて、ちっちゃな女子を放り込んだ。
パツパツに貼った制服に押し付けられて苦しそ〜w
ふざけて伸びをすればもっと強く胸に押し付けられる。悲鳴をあげてるけど、アタシにしか聞こえないんだよね〜。
さて、後1人はもう見えなくなっちゃったけど、あっちに逃げたのは分かってる。となると、隠れてるのはあそこかな〜♪
ーーーーーーーーーー
俺は必死に逃げて、なんとかベンチまでたどり着くことが出来た。
他のみんなに夢中になってたおかげで、きっと俺の位置はバレてないはずだ。あとはあの巨ギャルが諦めて帰ってくれるまで、ここに隠れておこう。
「あれ〜? もう1人はどこに行っちゃったのかな〜?」
楽しそうにキョロキョロと辺りを見渡している。
頼む。こんなに小さいなら見つけられないだろ? 諦めて帰ってくれ!
「こっちかな〜? それともこっちかな〜?」
少し歩いたかと思ったら、すぐに振り向いてまた別の方へと歩き出す。
ここじゃないならどこでも良い! どうせ全部探すなんて無理だろう⁈
普段なら神様になんて祈らないけれど、今だけはこっちに来ないことを必死に祈った。
「う〜ん。決めたっ! こっちにし〜よおっと♪」
やっぱり神なんて信じない。祈りも虚しく地響きが大きくなっていく。俺は息を殺して柱の陰に隠れ、こっそりと覗き見ていた。
ズン……ズシン……
足音が大きくなり、やがてベンチの前で止まる。
もししゃがまれたら見つかってしまう。俺は覗くのも止め、ベンチの裏側で両手を口に当てて目を瞑った。
音を立てるな。呼吸も静かにだ。くそっ。心臓がうるさい。
足音が鳴らない。遠ざかってくれない。でも、近づいても来ない。一体いつまでこうしてれば良いんだ?
しっかりと閉じた目に感じるのは街灯のぼんやりとした灯りだけ。
しかし、そんな灯りが何かに遮られ、俺は暗闇に落ちる。
「見ぃつけた♪」
バグン‼︎と心臓が飛び出そうになる。目を開くと、巨大な顔が俺を覗き込んでいた。
なんで⁈ 確かにベンチの向こうに居たはずだろ⁈
首がちぎれそうな勢いで振り向くと、確かに足はベンチの向こうにある。
考えてみれば簡単な話だ。俺が登ることも出来ないこれはただのベンチ。一般人からすれば、簡単に跨いでしまえる程度の高さでしか無かったということだ。
「ひぃぃぃぃぃ!!!」
情けない声を出しながら巨大な指に摘ままれる。
顔の前に持ってこられれば、そこはバンジージャンプでも見たことのない高さだった。
「悪かった! もう2度としないから! 許してくれ!」
咄嗟に俺は謝ってしまう。きっとこいつは親父狩りの様子を見てたんだろう。それで俺たちを懲らしめる為にこんなことをしてるんだ。そうでもなきゃ、こんな残酷なことはしないだろう。
「許すって何のこと?」
その声は本当に何もわかっていなさそうだった。
それとは反対に、俺を映し出す巨大な瞳は何もかも見透かしているようで怖い。
嘘をついたり誤魔化したりすれば、すぐにでもここから落とされそうだ。
「親父狩りのことだよ! なあ、もう反省してるから元に戻してくれ!」
「ふ〜ん……。で? だから何?」
「……は?」
俺は訳が分からなかった。親父狩りは関係ない? ならなんで俺たちはこんな目に遭ってるんだ?
縮められて、踏み潰されて、噛んだ後のガムに押し潰されて……。なんでこんな酷い殺され方をしてるんだ?
「アタシはただ、ちょうど良いおもちゃがあるな〜って思っただけ。アンタらが何してたかなんてどうでも良いし、興味ないんだよね〜。必死にもがいてくれればそれで良いよ」
なんだそれ? そんな理由であいつらは潰されたのか? 誰でもよかったのに、たまたま選ばれただけだっていうのか?
そんなの理不尽だろう。怒りが込み上げてくる。
「くそがっ! ふざけんなよ!」
地面に拳を叩きつけ、思いっきり叫ぶ。
「おっ! 良いね〜。そんなふうに反抗的な方が楽しいんだよね〜♪」
俺の怒りは体と一緒に、あっけなく手のひらに包み込まれてしまった。
「せっかくの公園だし、ちょっとだけ遊ぼっか」
そう言って連れて行かれたのはブランコの上だった。俺の体は小さすぎて、上に乗っても全然揺れやしない。
自分の小ささを実感していると、頭上からパンツが振り落とされた。
「はい、ドーン!」
巨ギャルが乗った瞬間、ギシギシと軋む音がして、大きく揺れた。
今俺は太ももと股間に挟まれた空間にいる。巨大な顔はスカートに隠されて見えない。
視界も匂いも女で満たされた空間に、俺は興奮し始めていた。散々バカにされているのに、小さくて惨めな思いを受けているのに、本能には抗えなかった。
でもここがブランコの上だと認識すると、呑気に興奮なんてしている場合じゃないと気づいた。
「しっかり捕まってないと飛んでっちゃうよ〜?」
俺は慌てて捕まる場所を探した。
けれど足場に捕まる場所なんてないし、あとは太ももと股間しかない。
俺はヤケクソになってパンツにしがみついた。
「あははっ! ブランコなんて久しぶり〜♪」
グオオン。グオオオオオンッ!
まるで遊園地のアトラクションみたいに振り回される。安全バーもシートベルトもないのは地獄だ。
前に進む時はパンツに押し付けられ、後ろに下がる時は引き剥がされそうになる。
いつ終わるかも分からないまま、ひたすらに振り回され続けた。
「あ〜楽しかった♪ まだ小人くんはへばりついてるかな〜?」
太ももの間から手が飛び出し、摘ままれる。俺はグロッキー状態のまま顔の前に運ばれた。
「うんうん。ちゃんと居るね! アンタも楽しかったでしょ?」
そう言って胸ポケットをぽんぽんと叩く。そうか、あそこにも1人閉じ込められてるのか。
「じゃあそろそろ終わりって事で。手のひら踏まれたりしちゃったけど、今日起きたことも全部、水に流してあげる」
変な言い回しが引っかかる。
俺はこの巨ギャルに何もしてないのに、一体何を流すっていうんだ?
その疑問はすぐに解消した。この巨ギャルは俺を摘まんだまま、トイレへと歩き出したのだ。
俺たちはトイレに流され、人生が終わってしまった。